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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057350
(43)【公開日】2024-04-24
(54)【発明の名称】船舶推進システムおよび船舶
(51)【国際特許分類】
   B63H 25/04 20060101AFI20240417BHJP
   B63H 21/21 20060101ALI20240417BHJP
   B63H 20/00 20060101ALI20240417BHJP
   B63H 25/42 20060101ALI20240417BHJP
   B63B 49/00 20060101ALI20240417BHJP
   B63B 79/15 20200101ALI20240417BHJP
【FI】
B63H25/04 G
B63H21/21
B63H20/00 803
B63H25/04 Z
B63H25/04 D
B63H25/42 B
B63B49/00 Z
B63B79/15
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164034
(22)【出願日】2022-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】濱田 曉
(72)【発明者】
【氏名】尾上 昭博
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】末森 勝
(72)【発明者】
【氏名】門林 義幸
(72)【発明者】
【氏名】小山 真奈未
(57)【要約】
【課題】船舶の速度を低下させることなく、船舶に向かってくる波を船舶が乗り越える際に船舶の姿勢が不安定になるのを抑制することが可能な船舶推進システムを提供する。
【解決手段】この船舶推進システム100では、制御部14は、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して第1角度A1未満である場合に、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して第1角度A1以上の所定の角度θとなるように、船舶進行方向制御を行うように構成されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶を推進するための船舶推進システムであって、
前記船舶を推進するための推進力を発生する推進力発生部と、
前記船舶の進行方向を変更するように前記推進力発生部による推進力の向きを変更する船舶進行方向制御を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、前記船舶の進行方向が前記船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度未満である場合に、前記船舶の進行方向が前記船舶に向かってくる波の進行方向に対して前記第1角度以上の所定の角度となるように、前記船舶進行方向制御を行うように構成されている、船舶推進システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記船舶の進行方向が前記船舶に向かってくる波の進行方向に対して前記第1角度未満である場合に、前記船舶の進行方向が前記船舶に向かってくる波の進行方向に対して前記第1角度以上かつ前記第1角度よりも大きい第2角度以下の前記所定の角度となるように、前記船舶進行方向制御を行うように構成されている、請求項1に記載の船舶推進システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記船舶の航行モードが、設定された目標位置に向かって前記船舶が自動で航行する自動航行モードである場合で、かつ、前記船舶の進行方向が前記船舶に向かってくる波の進行方向に対して前記第1角度未満である場合に、前記船舶を前記目標位置に向かって進ませながら、前記船舶の進行方向が前記船舶に向かってくる波の進行方向に対して前記第1角度以上の前記所定の角度となるように、前記船舶進行方向制御を行うように構成されている、請求項1に記載の船舶推進システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記船舶の航行モードが前記自動航行モードである場合で、かつ、前記船舶の進行方向が前記船舶に向かってくる波の進行方向に対して前記第1角度未満である場合に、前記船舶の進行方向が前記船舶に向かってくる波の進行方向に対して前記船舶の左右方向の一方側へ前記第1角度以上の前記所定の角度となるように、前記船舶進行方向制御を行う一方側船舶進行方向制御と、前記船舶の進行方向が前記船舶に向かってくる波の進行方向に対して前記船舶の左右方向の他方側へ前記第1角度以上の前記所定の角度となるように、前記船舶進行方向制御を行う他方側船舶進行方向制御とを、交互に繰り返し行うように構成されている、請求項3に記載の船舶推進システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記船舶の航行モードが前記自動航行モードである場合で、かつ、前記船舶の進行方向が前記船舶に向かってくる波の進行方向に対して前記船舶の左右方向の一方側へ前記第1角度未満である場合に、前記船舶の進行方向が前記船舶に向かってくる波の進行方向に対して前記船舶の左右方向の一方側へ前記第1角度以上の前記所定の角度となるように、前記船舶の進行方向を前記船舶の左右方向の一方側へ第3角度だけ変更する前記船舶進行方向制御を行う前記一方側船舶進行方向制御と、前記船舶の進行方向が前記船舶に向かってくる波の進行方向に対して前記船舶の左右方向の他方側へ前記第1角度以上の前記所定の角度となるように、前記船舶の進行方向を前記船舶の左右方向の他方側へ前記第3角度よりも大きい第4角度だけ変更する前記船舶進行方向制御を行う前記他方側船舶進行方向制御とを、交互に繰り返し行うように構成されている、請求項4に記載の船舶推進システム。
【請求項6】
前記制御部は、
前記船舶の進行方向が前記船舶に向かってくる波の進行方向に対して前記第1角度未満である場合で、かつ、前記船舶に向かってくる波の高さが第1高さ以上である場合に、前記船舶の進行方向が前記船舶に向かってくる波の進行方向に対して前記第1角度以上となるように、前記船舶進行方向制御を行うとともに、
前記船舶の進行方向が前記船舶に向かってくる波の進行方向に対して前記第1角度未満である場合であっても、前記船舶に向かってくる波の高さが前記第1高さ未満である場合には、前記船舶進行方向制御を行わないように構成されている、請求項1に記載の船舶推進システム。
【請求項7】
前記制御部は、
前記船舶の進行方向が前記船舶に向かってくる波の進行方向に対して前記第1角度未満である場合で、かつ、前記船舶に向かってくる波の高さが前記第1高さ以上かつ前記第1高さよりも大きい第2高さ以下である場合に、前記船舶の進行方向が前記船舶に向かってくる波の進行方向に対して前記第1角度以上となるように、前記船舶進行方向制御を行うとともに、
前記船舶の進行方向が前記船舶に向かってくる波の進行方向に対して前記第1角度未満である場合であっても、前記船舶に向かってくる波の高さが前記第2高さよりも大きい場合には、前記船舶進行方向制御を行なわずに、前記推進力発生部による推進力を小さくすることを操船者に促すように前記操船者に報知する制御を行うように構成されている、請求項6に記載の船舶推進システム。
【請求項8】
前記制御部は、前記船舶の進行方向が前記船舶に向かってくる波の進行方向に対して前記第1角度未満である場合で、かつ、前記船舶に向かってくる波の高さが前記第1高さ以上かつ前記第2高さ以下である場合に、前記船舶の進行方向が前記船舶に向かってくる波の進行方向に対して前記船舶に向かってくる波の高さに応じて調整された前記第1角度以上の前記所定の角度となるように、前記船舶進行方向制御を行うように構成されている、請求項7に記載の船舶推進システム。
【請求項9】
前記制御部は、前記船舶進行方向制御を行う船舶進行方向制御モードが設定されている場合に、前記船舶進行方向制御を行うように構成されている、請求項1に記載の船舶推進システム。
【請求項10】
前記制御部は、前記船舶進行方向制御を行う場合に、前記船舶進行方向制御を行うことを操船者に報知する制御を行うように構成されている、請求項1に記載の船舶推進システム。
【請求項11】
前記制御部は、前記船舶進行方向制御を行っている場合に、前記船舶進行方向制御を行っていることを操船者に報知する制御を行うように構成されている、請求項1に記載の船舶推進システム。
【請求項12】
前記制御部は、前記船舶の進行方向が前記船舶に向かってくる波の進行方向に対して直交する方向に沿った方向である場合に、前記船舶の進行方向が前記船舶に向かってくる波の進行方向に対して前記第1角度以上かつ前記第2角度以下の前記所定の角度となるように、前記船舶進行方向制御を行うように構成されている、請求項2に記載の船舶推進システム。
【請求項13】
前記制御部は、前記船舶の航行モードが、設定された目標位置に向かって前記船舶が自動で航行する自動航行モードである場合で、かつ、前記船舶の進行方向が前記船舶に向かってくる波の進行方向に対して直交する方向に沿った方向である場合に、前記船舶を前記目標位置に向かって進ませながら、前記船舶の進行方向が前記船舶に向かってくる波の進行方向に対して前記第1角度以上かつ前記第2角度以下の前記所定の角度となるように、前記船舶進行方向制御を行うように構成されている、請求項12に記載の船舶推進システム。
【請求項14】
前記制御部は、前記船舶の航行モードが前記自動航行モードである場合で、かつ、前記船舶の進行方向が前記船舶に向かってくる波の進行方向に対して直交する方向に沿った方向である場合に、前記船舶の進行方向が前記船舶に向かってくる波の進行方向に対して前記船舶の左右方向の一方側へ前記第1角度以上かつ前記第2角度以下の前記所定の角度となるように、前記船舶進行方向制御を行う一方側船舶進行方向制御と、前記船舶の進行方向が前記船舶に向かってくる波の進行方向に対して前記船舶の左右方向の他方側へ前記第1角度以上かつ前記第2角度以下の前記所定の角度となるように、前記船舶進行方向制御を行う他方側船舶進行方向制御とを、交互に繰り返し行うように構成されている、請求項13に記載の船舶推進システム。
【請求項15】
船舶を推進するための船舶推進システムであって、
前記船舶を推進するための推進力を発生する推進力発生部と、
前記船舶の進行方向を変更するように前記推進力発生部による推進力の向きを変更する船舶進行方向制御を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、前記船舶の進行方向が前記船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度未満である場合、および、前記船舶に向かってくる波の高さが第1高さ以上である場合の少なくともいずれかである場合に、前記船舶の進行方向が前記船舶に向かってくる波の進行方向に対して前記第1角度以上の所定の角度となるように、前記船舶進行方向制御を行うように構成されている、船舶推進システム。
【請求項16】
船舶を推進するための推進力を発生する推進力発生部と、
前記船舶の進行方向を変更するように前記推進力発生部による推進力の向きを変更する船舶進行方向制御を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、前記船舶の進行方向が前記船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度未満である場合に、前記船舶の進行方向が前記船舶に向かってくる波の進行方向に対して前記第1角度以上の所定の角度となるように、前記船舶進行方向制御を行うように構成されている、船舶。
【請求項17】
前記制御部は、前記船舶の進行方向が前記船舶に向かってくる波の進行方向に対して前記第1角度未満である場合に、前記船舶の進行方向が前記船舶に向かってくる波の進行方向に対して前記第1角度以上かつ前記第1角度よりも大きい第2角度以下の前記所定の角度となるように、前記船舶進行方向制御を行うように構成されている、請求項16に記載の船舶。
【請求項18】
前記制御部は、前記船舶の航行モードが、設定された目標位置に向かって前記船舶が自動で航行する自動航行モードである場合で、かつ、前記船舶の進行方向が前記船舶に向かってくる波の進行方向に対して前記第1角度未満である場合に、前記船舶を前記目標位置に向かって進ませながら、前記船舶の進行方向が前記船舶に向かってくる波の進行方向に対して前記第1角度以上の前記所定の角度となるように、前記船舶進行方向制御を行うように構成されている、請求項16に記載の船舶。
【請求項19】
前記制御部は、前記船舶の航行モードが前記自動航行モードである場合で、かつ、前記船舶の進行方向が前記船舶に向かってくる波の進行方向に対して前記第1角度未満である場合に、前記船舶の進行方向が前記船舶に向かってくる波の進行方向に対して前記船舶の左右方向の一方側へ前記第1角度以上の前記所定の角度となるように、前記船舶進行方向制御を行う一方側船舶進行方向制御と、前記船舶の進行方向が前記船舶に向かってくる波の進行方向に対して前記船舶の左右方向の他方側へ前記第1角度以上の前記所定の角度となるように、前記船舶進行方向制御を行う他方側船舶進行方向制御とを、交互に繰り返し行うように構成されている、請求項18に記載の船舶。
【請求項20】
前記制御部は、前記船舶の航行モードが前記自動航行モードである場合で、かつ、前記船舶の進行方向が前記船舶に向かってくる波の進行方向に対して前記船舶の左右方向の一方側へ前記第1角度未満である場合に、前記船舶の進行方向が前記船舶に向かってくる波の進行方向に対して前記船舶の左右方向の他方側へ前記第1角度以上の前記所定の角度としての第3角度となるように、前記船舶進行方向制御を行う前記一方側船舶進行方向制御と、前記船舶の進行方向が前記船舶に向かってくる波の進行方向に対して前記船舶の左右方向の一方側へ前記第1角度以上の前記第3角度よりも小さい前記所定の角度としての第4角度となるように、前記船舶進行方向制御を行う前記他方側船舶進行方向制御とを、交互に繰り返し行うように構成されている、請求項19に記載の船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、船舶推進システムおよび船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、船舶の進行方向を変更する制御を行う制御部を備える船舶が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、船舶の周囲の波を含む対象物を検出するレーザレーダと、レーザレーダの検出結果に基づいて、船舶の周囲の波の向きを推定するデータ処理部と、船舶の操舵を行う操舵装置と、操舵装置を制御する制御部と、を備える船舶が記載されている。上記特許文献1に記載されている船舶では、制御部は、推定された船舶の周囲の波の向きと船舶の進行方向の角度とが所定の角度(たとえば、30度)よりも小さくなるように、操舵装置を制御する(すなわち、船舶の進行方向を変更する制御を行う)ように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-58322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記特許文献1には記載されていないが、上記特許文献1のような従来の船舶において、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して比較的小さな角度(たとえば、30度未満)である場合、船舶に向かってくる波を船舶が乗り越える際に、船舶に向かってくる波が船舶に衝突する速度が比較的大きくなる。これにより、船舶に向かってくる波を船舶が乗り越える際に生じる船舶への衝撃が比較的大きくなる。そして、船舶への衝撃が大きくなる分だけ、船舶の姿勢が不安定になりやすい。これに対して、上記特許文献1には記載されていないが、上記特許文献1のような従来の船舶では、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して比較的小さな角度である場合、船舶に向かってくる波を船舶が乗り越える際に船舶の姿勢が不安定になるのを抑制するために、船舶の速度を低下させていた。このため、船舶の速度を低下させることなく、船舶に向かってくる波を船舶が乗り越える際に船舶の姿勢が不安定になるのを抑制することが可能な構成が望まれている。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、船舶の速度を低下させることなく、船舶に向かってくる波を船舶が乗り越える際に船舶の姿勢が不安定になるのを抑制することが可能な船舶推進システムおよび船舶を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による船舶推進システムは、船舶を推進するための船舶推進システムであって、船舶を推進するための推進力を発生する推進力発生部と、船舶の進行方向を変更するように推進力発生部による推進力の向きを変更する船舶進行方向制御を行う制御部と、を備え、制御部は、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度未満である場合に、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度以上の所定の角度となるように、船舶進行方向制御を行うように構成されている。
【0008】
この発明の第1の局面による船舶推進システムは、上記のように、制御部は、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度未満である場合に、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度以上の所定の角度となるように、船舶進行方向制御を行うように構成されている。これにより、船舶の進行方向を船舶に向かってくる波の進行方向に対して比較的小さい第1角度(たとえば、30度)未満から比較的大きい第1角度以上の所定の角度に変更することによって、船舶の速度ベクトルのうちの船舶に向かってくる波の進行方向と平行な成分を小さくすることができる。これにより、船舶に向かってくる波を船舶が乗り越える際に、船舶に向かってくる波が船舶に衝突する速度を小さくすることができる。すなわち、船舶の速度を低下させることなく、船舶に向かってくる波を船舶が乗り越える際に生じる船舶への衝撃を小さくすることができる。その結果、船舶の速度を低下させることなく、船舶に向かってくる波を船舶が乗り越える際に船舶の姿勢が不安定になるのを抑制することができる。
【0009】
上記第1の局面による船舶推進システムにおいて、好ましくは、制御部は、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度未満である場合に、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度以上かつ第1角度よりも大きい第2角度以下の所定の角度となるように、船舶進行方向制御を行うように構成されている。このように構成すれば、船舶進行方向制御により変更される船舶の進行方向に対する船舶に向かってくる波の進行方向の角度に第2角度という上限を設けることができる。これにより、船舶の進行方向に対する船舶に向かってくる波の進行方向の角度が過度に大きくなるのを抑制することができる。これにより、たとえば、第2角度を、船舶に向かってくる波の進行方向に対して直交する方向に沿った方向よりも小さい角度(たとえば、60度)に設定することによって、船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度以上かつ第2角度以下に変更した後の船舶の進行方向を、船舶に向かってくる波の進行方向に対して直交する方向に沿っていない方向にすることができる。これにより、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して直交する方向に沿った方向となっていることに起因して船舶に向かってくる波を船舶が乗り越える際に船舶に横揺れが生じるのを抑制することができる。
【0010】
上記第1の局面による船舶推進システムにおいて、好ましくは、制御部は、船舶の航行モードが、設定された目標位置に向かって船舶が自動で航行する自動航行モードである場合で、かつ、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度未満である場合に、船舶を目標位置に向かって進ませながら、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度以上の所定の角度となるように、船舶進行方向制御を行うように構成されている。このように構成すれば、船舶の航行モードが自動航行モードである場合において、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度以上の所定の角度となるように船舶進行方向制御を行うことによって船舶の進行方向が変更されたとしても、船舶を設定された目標位置に向かうように進ませることができる。
【0011】
この場合、好ましくは、制御部は、船舶の航行モードが自動航行モードである場合で、かつ、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度未満である場合に、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して船舶の左右方向の一方側へ第1角度以上の所定の角度となるように、船舶進行方向制御を行う一方側船舶進行方向制御と、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して船舶の左右方向の他方側へ第1角度以上の所定の角度となるように、船舶進行方向制御を行う他方側船舶進行方向制御とを、交互に繰り返し行うように構成されている。このように構成すれば、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して船舶の左右方向の一方側となる状態と他方側となる状態とを交互に繰り返すことによって、船舶の最終的な進行方向が変わらないように船舶をジグザグ状に進ませることができる。これにより、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度以上の所定の角度となるように船舶進行方向制御を行うことによって船舶の進行方向が変更されたとしても、船舶を設定された目標位置に向かうように容易に進ませることができる。
【0012】
上記制御部が一方側船舶進行方向制御と他方側船舶進行方向制御とを交互に繰り返し行う構成において、好ましくは、制御部は、船舶の航行モードが自動航行モードである場合で、かつ、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して船舶の左右方向の一方側へ第1角度未満である場合に、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して船舶の左右方向の一方側へ第1角度以上の所定の角度となるように、船舶の進行方向を船舶の左右方向の一方側へ第3角度だけ変更する船舶進行方向制御を行う一方側船舶進行方向制御と、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して船舶の左右方向の他方側へ第1角度以上の所定の角度となるように、船舶の進行方向を船舶の左右方向の他方側へ第3角度よりも大きい第4角度だけ変更する船舶進行方向制御を行う他方側船舶進行方向制御とを、交互に繰り返し行うように構成されている。このように構成すれば、設定された目標位置の方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して船舶の左右方向の一方側に偏っている場合でも、船舶の進行方向を船舶の左右方向の一方側へ第3角度だけ変更する船舶進行方向制御を行う一方側船舶進行方向制御と、船舶の進行方向を船舶の左右方向の他方側へ第3角度よりも大きい第4角度だけ変更する船舶進行方向制御を行う他方側船舶進行方向制御とを、交互に繰り返すことによって、船舶の最終的な進行方向が変わらないように船舶をジグザグ状に進ませることができる。これにより、設定された目標位置の方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して船舶の左右方向の一方側に偏っている場合でも、船舶を設定された目標位置に向かうように容易に進ませることができる。
【0013】
上記第1の局面による船舶推進システムにおいて、好ましくは、制御部は、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度未満である場合で、かつ、船舶に向かってくる波の高さが第1高さ以上である場合に、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度以上となるように、船舶進行方向制御を行うとともに、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度未満である場合であっても、船舶に向かってくる波の高さが第1高さ未満である場合には、船舶進行方向制御を行わないように構成されている。このように構成すれば、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して比較的小さい第1角度未満である場合であっても、船舶に向かってくる波の高さが比較的小さい第1高さ未満である場合のように船舶に向かってくる波を船舶が乗り越える際に生じる船舶への衝撃が大きくなりにくく船舶進行方向制御を行う必要がない場合に、船舶進行方向制御が行われるのを回避することができる。
【0014】
この場合、好ましくは、制御部は、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度未満である場合で、かつ、船舶に向かってくる波の高さが第1高さ以上かつ第1高さよりも大きい第2高さ以下である場合に、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度以上となるように、船舶進行方向制御を行うとともに、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度未満である場合であっても、船舶に向かってくる波の高さが第2高さよりも大きい場合には、船舶進行方向制御を行なわずに、推進力発生部による推進力を小さくすることを操船者に促すように操船者に報知する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、船舶の進行方向を船舶に向かってくる波の進行方向に対して比較的大きい第1角度以上の所定の角度にするように船舶進行方向制御が行われる条件として、船舶に向かってくる波の高さに第2高さという上限を設けることができる。これにより、船舶に向かってくる波の高さが過度に大きい場合に、船舶の進行方向を船舶に向かってくる波の進行方向に対して比較的大きい第1角度以上の所定の角度にする船舶進行方向制御が行われてしまうのを抑制することができる。これにより、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度未満である場合で、かつ、船舶に向かってくる波の高さが第1高さ以上であっても、船舶に向かってくる波の高さが過度に大きい場合に、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して比較的大きい第1角度以上となるように船舶進行方向制御が行われてしまうのを抑制することができる。すなわち、船舶に向かってくる波を船舶が乗り越える際に船舶に横揺れが生じやすくなる場合に、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して比較的大きい第1角度以上となるように船舶進行方向制御が行われて船舶に向かってくる波を船舶が乗り越える際に船舶に横揺れが生じるのを抑制することができる。また、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度未満である場合で、かつ、船舶に向かってくる波の高さが第2高さよりも大きい場合に、推進力発生部による推進力を小さくするように操船者を促すことができる。これにより、操船者が推進力発生部による推進力を小さくする必要がある場合に、操船者が推進力発生部による推進力を小さくする必要があることを操船者に容易に認識させることができる。
【0015】
上記制御部が船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度未満である場合でかつ船舶に向かってくる波の高さが第1高さ以上かつ第2高さ以下である場合に船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度以上となるように船舶進行方向制御を行う構成において、好ましくは、制御部は、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度未満である場合で、かつ、船舶に向かってくる波の高さが第1高さ以上かつ第2高さ以下である場合に、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して船舶に向かってくる波の高さに応じて調整された第1角度以上の所定の角度となるように、船舶進行方向制御を行うように構成されている。このように構成すれば、船舶に向かってくる波の高さが大きくなるにしたがって、または、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して大きな角度となるにしたがって、船舶に向かってくる波を船舶が乗り越える際に船舶に横揺れ生じやすくなることを考慮して、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度以上の所定の角度となるように船舶進行方向制御を行うことができる。これにより、船舶に向かってくる波を船舶が乗り越える際に船舶に横揺れが生じるのを抑制しながら、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度以上の所定の角度となるように船舶進行方向制御を行うことができる。
【0016】
上記第1の局面による船舶推進システムにおいて、好ましくは、制御部は、船舶進行方向制御を行う船舶進行方向制御モードが設定されている場合に、船舶進行方向制御を行うように構成されている。このように構成すれば、船舶進行方向制御を行いたい場合に、船舶進行方向制御モードが設定されることによって、船舶進行方向制御が行われるようにすることができるとともに、船舶進行方向制御を行いたくない場合に、船舶進行方向制御モードが設定されないことによって、船舶進行方向制御を行われないようにすることができる。
【0017】
上記第1の局面による船舶推進システムにおいて、好ましくは、制御部は、船舶進行方向制御を行う場合に、船舶進行方向制御を行うことを操船者に報知する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、船舶進行方向制御が行われる場合に、船舶進行方向制御が行われることを操船者に予め報知することができるので、船舶進行方向制御が行われることを操船者が認識していない状態で船舶進行方向制御が突然行われることによって、操船者に不快感を与えてしまうのを抑制することができる。
【0018】
上記第1の局面による船舶推進システムにおいて、好ましくは、制御部は、船舶進行方向制御を行っている場合に、船舶進行方向制御を行っていることを操船者に報知する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、船舶進行方向制御が行われている間、船舶進行方向制御が行われていることを操船者に報知することができるので、船舶進行方向制御が行われていることを操船者が認識していない状態で船舶進行方向制御が行われることによって、操船者に不快感を与えてしまうのを抑制することができる。
【0019】
上記制御部が船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度以上かつ第2角度以下の所定の角度となるように船舶進行方向制御を行う構成において、好ましくは、制御部は、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して直交する方向に沿った方向である場合に、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度以上かつ第2角度以下の所定の角度となるように、船舶進行方向制御を行うように構成されている。このように構成すれば、第2角度を、船舶に向かってくる波の進行方向に対して直交する方向に沿った方向よりも小さい角度(たとえば、60度)に設定することによって、船舶の進行方向を、船舶に向かってくる波の進行方向に対して直交する方向に沿った方向から、船舶に向かってくる波の進行方向に対して直交する方向に沿ってない方向に変更することができる。これにより、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して直交する方向に沿った方向となっていることに起因して船舶に向かってくる波を船舶が乗り越える際に船舶に横揺れが生じるのを抑制することができる。
【0020】
この場合、好ましくは、制御部は、船舶の航行モードが、設定された目標位置に向かって船舶が自動で航行する自動航行モードである場合で、かつ、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して直交する方向に沿った方向である場合に、船舶を目標位置に向かって進ませながら、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度以上かつ第2角度以下の所定の角度となるように、船舶進行方向制御を行うように構成されている。このように構成すれば、船舶の航行モードが自動航行モードである場合において、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度以上かつ第2角度以下の所定の角度となるように船舶進行方向制御を行うことによって船舶の進行方向が変更されたとしても、船舶を設定された目標位置に向かうように進ませることができる。
【0021】
上記制御部が船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して直交する方向に沿った方向である場合に船舶を目標位置に向かって進ませながら船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度以上かつ第2角度以下の所定の角度となるように船舶進行方向制御を行う構成において、好ましくは、制御部は、船舶の航行モードが自動航行モードである場合で、かつ、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して直交する方向に沿った方向である場合に、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して船舶の左右方向の一方側へ第1角度以上かつ第2角度以下の所定の角度となるように、船舶進行方向制御を行う一方側船舶進行方向制御と、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して船舶の左右方向の他方側へ第1角度以上かつ第2角度以下の所定の角度となるように、船舶進行方向制御を行う他方側船舶進行方向制御とを、交互に繰り返し行うように構成されている。このように構成すれば、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して船舶の左右方向の一方側となる状態と他方側となる状態とを交互に繰り返すことによって、船舶の最終的な進行方向が変わらないように船舶をジグザグ状に進ませることができる。これにより、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度以上かつ第2角度以下の所定の角度となるように船舶進行方向制御を行うことによって船舶の進行方向が変更されたとしても、船舶を設定された目標位置に向かうように容易に進ませることができる。
【0022】
また、上記目的を達成するために、この発明の第2の局面による船舶推進システムは、船舶を推進するための船舶推進システムであって、船舶を推進するための推進力を発生する推進力発生部と、船舶の進行方向を変更するように推進力発生部による推進力の向きを変更する船舶進行方向制御を行う制御部と、を備え、制御部は、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度未満である場合、および、船舶に向かってくる波の高さが第1高さ以上である場合の少なくともいずれかである場合に、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度以上の所定の角度となるように、船舶進行方向制御を行うように構成されている。
【0023】
この発明の第2の局面による船舶推進システムでは、上記のように、制御部は、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度未満である場合、および、船舶に向かってくる波の高さが第1高さ以上である場合の少なくともいずれかである場合に、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度以上の所定の角度となるように、船舶進行方向制御を行うように構成されている。これにより、上記第1の局面による船舶推進システムと同様に、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して比較的小さい第1角度未満である場合に、船舶の進行方向を船舶に向かってくる波の進行方向に対して比較的小さい第1角度未満から比較的大きい第1角度以上の所定の角度に変更することによって、船舶に向かってくる波を船舶が乗り越える際に、船舶に向かってくる波が船舶に衝突する速度を小さくすることができる。また、船舶に向かってくる波の高さが比較的大きい第1高さ以上である場合のように船舶に向かってくる波を船舶が乗り越える際に生じる船舶への衝撃が大きくなりやすい場合で、かつ、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して比較的小さい角度となっている場合に、たとえば、船舶の進行方向を船舶に向かってくる波の進行方向に対して比較的小さい角度から比較的大きい角度に変更することによって、船舶に向かってくる波を船舶が乗り越える際に、船舶に向かってくる波が船舶に衝突する速度を小さくすることができる。これらの結果、上記第1の局面による船舶推進システムと同様に、船舶の速度を低下させることなく、船舶に向かってくる波を船舶が乗り越える際に船舶の姿勢が不安定になるのを抑制することができる。
【0024】
また、上記目的を達成するために、この発明の第3の局面による船舶は、船舶を推進するための推進力を発生する推進力発生部と、船舶の進行方向を変更するように推進力発生部による推進力の向きを変更する船舶進行方向制御を行う制御部と、を備え、制御部は、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度未満である場合に、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度以上の所定の角度となるように、船舶進行方向制御を行うように構成されている。
【0025】
この発明の第3の局面による船舶は、上記のように、制御部は、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度未満である場合に、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度以上の所定の角度となるように、船舶進行方向制御を行うように構成されている。これにより、上記第1の局面による船舶推進システムと同様に、船舶に向かってくる波を船舶が乗り越える際に、船舶に向かってくる波が船舶に衝突する速度を小さくすることができる。その結果、上記第1の局面による船舶推進システムと同様に、船舶の速度を低下させることなく、船舶に向かってくる波を船舶が乗り越える際に船舶の姿勢が不安定になるのを抑制することができる。
【0026】
上記第3の局面による船舶において、好ましくは、制御部は、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度未満である場合に、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度以上かつ第1角度よりも大きい第2角度以下の所定の角度となるように、船舶進行方向制御を行うように構成されているこのように構成すれば、上記第1の局面による船舶推進システムと同様に、船舶の進行方向に対する船舶に向かってくる波の進行方向の角度が過度に大きくなるのを抑制することができる。これにより、上記第1の局面による船舶推進システムと同様に、たとえば、第2角度を、船舶に向かってくる波の進行方向に対して直交する方向に沿った方向よりも小さい角度に設定することによって、船舶に向かってくる波を船舶が乗り越える際に船舶に横揺れが生じるのを抑制することができる。
【0027】
上記第3の局面による船舶において、好ましくは、制御部は、船舶の航行モードが、設定された目標位置に向かって船舶が自動で航行する自動航行モードである場合で、かつ、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度未満である場合に、船舶を目標位置に向かって進ませながら、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度以上の所定の角度となるように、船舶進行方向制御を行うように構成されている。このように構成すれば、上記第1の局面による船舶推進システムと同様に、船舶の航行モードが自動航行モードである場合において、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度以上の所定の角度となるように船舶進行方向制御を行うことによって船舶の進行方向が変更されたとしても、船舶を設定された目標位置に向かうように進ませることができる。
【0028】
この場合、好ましくは、制御部は、船舶の航行モードが自動航行モードである場合で、かつ、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度未満である場合に、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して船舶の左右方向の一方側へ第1角度以上の前定の角度となるように、船舶進行方向制御を行う一方側船舶進行方向制御と、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して船舶の左右方向の他方側へ第1角度以上の所定の角度となるように記船舶進行方向制御を行う他方側船舶進行方向制御とを、交互に繰り返し行うように構成されている。このように構成すれば、上記第1の局面による船舶推進システムと同様に、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度以上の所定の角度となるように船舶進行方向制御を行うことによって船舶の進行方向が変更されたとしても、船舶を設定された目標位置に向かうように容易に進ませることができる。
【0029】
上記制御部が船舶進行方向制御を行う一方側船舶進行方向制御と他方側船舶進行方向制御とを交互に繰り返し行う構成において、好ましくは、制御部は、船舶の航行モードが自動航行モードである場合で、かつ、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して船舶の左右方向の一方側へ前記第1角度未満である場合に、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して船舶の左右方向の他方側へ第1角度以上の所定の角度としての第3角度となるように、船舶進行方向制御を行う一方側船舶進行方向制御と、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して船舶の左右方向の一方側へ第1角度以上の第3角度よりも小さい所定の角度としての第4角度となるように、船舶進行方向制御を行う他方側船舶進行方向制御とを、交互に繰り返し行うように構成されている。このように構成すれば、上記第1の局面による船舶推進システムと同様に、設定された目標位置の方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して船舶の左右方向の一方側に偏っている場合でも、船舶を設定された目標位置に向かうように容易に進ませることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、上記のように、船舶の速度を低下させることなく、船舶に向かってくる波を船舶が乗り越える際に船舶の姿勢が不安定になるのを抑制することが可能な船舶推進システムおよび船舶を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の一実施形態による船舶推進システムのブロック図である。
図2】本発明の一実施形態による船舶の模式図である。
図3】本発明の一実施形態による船舶の船外機を示した側面図である。
図4】本発明の一実施形態による船舶推進システムにおいて、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度未満としての0度である場合に行う船舶進行方向制御を説明するための模式図である。
図5】本発明の一実施形態による船舶推進システムにおいて、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して船舶の左右方向の一方側へ第1角度未満である場合に行う船舶進行方向制御を説明するための模式図である。
図6】本発明の一実施形態による船舶推進システムにおいて、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度未満である場合に船舶進行方向制御を行う際の船舶に向かってくる波の高さの条件を説明するための図である。
図7】本発明の一実施形態による船舶推進システムにおいて、船舶進行方向制御を行う旨のメッセージを表示部に表示させた状態を示した図である。
図8】本発明の一実施形態による船舶推進システムにおいて、船舶進行方向制御を行っていること示すマークを表示部に表示させた状態を示した図である。
図9】本発明の一実施形態による船舶推進システムにおいて、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して直交する方向に沿った方向である場合に行う船舶進行方向制御を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0033】
図1図9を参照して、本発明の一実施形態による船舶推進システム100および船舶110について説明する。なお、図中のFWD、BWD、LおよびRは、それぞれ、船舶110の前方、後方、左方(左舷側)および右方(右舷側)を示している。
【0034】
(船舶推進システムおよび船舶の全体構成)
図1に示すように、船舶推進システム100は、船舶110に設けられている。船舶推進システム100は、船舶110を推進するためのシステムである。船舶110は、たとえば、遊覧や魚釣り等に用いられる比較的小型の船舶である。
【0035】
船舶推進システム100(船舶110)は、船体10と、船外機20と、を備える。図2に示すように、船外機20は、船体10の船尾11に1つのみ取り付けられている。
【0036】
(船体の構成)
図1に示すように、船体10は、操作部13と、制御部14と、表示部15と、検出部16と、を備える。
【0037】
操作部13は、船舶110を操縦(操船)するためユーザの操作を受け付けるように構成されている。操作部13は、リモートコントローラと、ステアリングホイールと、ジョイスティックと、を含む。操作部13は、船舶110の航行モードを設定する操作を受け付ける。船舶110の航行モードは、船舶110の操船者等により設定された目標位置Gに向かって船舶110が自動で航行する自動航行モード、後述する船舶進行方向制御モード、等を含む。
【0038】
制御部14は、操作部13に対する操作に基づいて、船外機20のECU(Engine Control Unit)28およびSCU(Steering Control Unit)29を制御するように構成されている。制御部14は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を含む制御回路である。
【0039】
表示部15は、船舶110の情報を表示するように構成されている。船舶110の情報は、たとえば、船舶110の速度、船外機20のエンジン22の回転数、船外機20のシフト状態、船舶110の航行モード等を含む。表示部15は、たとえば、液晶ディスプレイである。なお、表示部15は、タッチパネルであってもよい。その場合、タッチパネルである表示部15が、操作部13の代わりに、船舶110を操縦(操船)するためユーザの操作を受け付けるように構成されていてもよい。
【0040】
検出部16は、船舶110の進行方向に対する船舶110に向かってくる波W(図4参照)の進行方向、船舶110に向かってくる波Wの高さH(図6参照)、等を検出するように構成されている。検出部16は、たとえば、カメラ、レーザー等のうちの少なくともいずれかを含む。
【0041】
(船外機の構成)
図3に示すように、船外機20は、船外機本体20aと、ブラケット20bと、を含む。船外機本体20aは、ブラケット20bを介して、船体10の船尾11に設けられたトランサム12に取り付けられている。
【0042】
船外機20は、推力を発生させるプロペラ21を駆動させるエンジン22を含む。すなわち、船外機20は、エンジン22によりプロペラ21を駆動させるように構成されたエンジン式船外機である。具体的には、船外機本体20aは、エンジン22と、ドライブシャフト23と、ギア部24と、プロペラシャフト25と、プロペラ21と、を含む。エンジン22は駆動力を発生させる内燃機関である。エンジン22の駆動力は、ドライブシャフト23、ギア部24およびプロペラシャフト25を介して、プロペラ21に伝達される。プロペラ21は、伝達されたエンジン22の駆動力により、水中において回転することにより、船舶110を推進するための推進力を発生させる。なお、プロペラ21は、特許請求の範囲の「推進力発生部」の一例である。
【0043】
船外機本体20aは、船外機20のシフト状態を切り換えるシフトアクチュエータ26を含む。シフトアクチュエータ26は、ギア部24の噛み合いを切り換えることにより、船外機20のシフト状態を、前進状態と後進状態とニュートラル状態との間で切り換えるように構成されている。前進状態は、プロペラ21からFWD側への推力を発生させるようにエンジン22の駆動力をプロペラ21に伝達する状態である。後進状態は、プロペラ21からBWD側への推力を発生させるようにエンジン22の駆動力をプロペラ21に伝達する状態である。ニュートラル状態は、プロペラ21の推力を発生させないようにエンジン22の駆動力をプロペラ21に伝達しない状態である。
【0044】
船外機20は、船舶110の進行方向を変更するようにプロペラ21による推進力の向きを変更するための転舵装置27を含む。具体的には、ブラケット20bには、転舵装置27が設けられている。転舵装置27は、上下方向に延びる転舵軸27aを含む。船外機本体20aは、転舵装置27により、ブラケット20bに対して転舵軸27aを回動中心として左右方向に回動可能に構成されている。船外機本体20aが、転舵軸27aを回動中心として左右方向に回動した場合、プロペラ21の向きも左右方向に回動する。これにより、プロペラ21による推進力の向きが変更される。すなわち、船外機20が転舵される。
【0045】
図1に示すように、船外機20は、ECU28と、SCU29と、を含む。ECU28は、制御部14による制御に基づいて、エンジン22の駆動およびシフトアクチュエータ26の駆動を制御するように構成されている。SCU29は、制御部14による制御に基づいて、転舵装置27の駆動を制御するように構成されている。すなわち、制御部14は、SCU29を介して転舵装置27の駆動を制御することによって、船舶110の進行方向を変更するようにプロペラ21による推進力の向きを変更する船舶進行方向制御を行うように構成されている。ECU28およびSCU29の各々は、CPU、ROM、RAM等を含む制御回路である。
【0046】
(船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度未満である場合に行う船舶進行方向制御)
図4に示すように、制御部14(図1参照)は、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して第1角度A1(30度)未満である場合に、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して第1角度A1(30度)以上かつ第1角度A1(30度)よりも大きい第2角度A2(60度)以下の所定の角度θとなるように、船舶進行方向制御を行うように構成されている。なお、図4では、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して第1角度A1(30度)以上かつ第2角度A2(60度)以下の所定の角度θとなるように制御部14が船舶進行方向制御を行う前に、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して0度である場合を示している。また、図4では、所定の角度θが45度である例を示している。
【0047】
制御部14(図1参照)は、船舶110の航行モードが、設定された目標位置Gに向かって船舶110が自動で航行する自動航行モードである場合で、かつ、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して第1角度A1(30度)未満である場合に、船舶110を目標位置Gに向かって進ませながら、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して第1角度A1(30度)以上かつ第2角度A2(60度)以下の所定の角度θとなるように、船舶進行方向制御を行うように構成されている。具体的には、船舶110の航行モードが自動航行モードである場合、船舶110の進行方向は、概ね、設定された目標位置Gに向かう方向となっている。このため、船舶110の航行モードが自動航行モードである場合に、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して第1角度A1(30度)以上かつ第2角度A2(60度)以下の所定の角度θとなるように制御部14が船舶進行方向制御を行うことによって船舶110の進行方向がたとえば1回だけ変更された場合、船舶110の進行方向が、設定された目標位置Gに向かう方向とは異なる方向となってしまう。そこで、制御部14は、船舶110の航行モードが自動航行モードである場合で、かつ、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して第1角度A1(30度)未満である場合に、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して船舶110の左右方向の一方側へ第1角度A1(30度)以上かつ第2角度A2(60度)以下の所定の角度θとなるように、船舶進行方向制御を行う一方側船舶進行方向制御と、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して船舶110の左右方向の他方側へ第1角度A1(30度)以上かつ第2角度A2(60度)以下の所定の角度θとなるように、船舶進行方向制御を行う他方側船舶進行方向制御とを、交互に繰り返し行うように構成されている。なお、図4では、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して第1角度A1(30度)以上かつ第2角度A2(60度)以下の所定の角度θとなるように制御部14が船舶進行方向制御を行う前に、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して0度であるので、一方側船舶進行方向制御における所定の角度θと、他方側船舶進行方向制御における所定の角度θとが、等しくなっている。
【0048】
図5に示すように、船舶110の航行モードが自動航行モードである場合において、設定された目標位置Gの方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して船舶110の左右方向の一方側に偏っている場合がある。図5では、設定された目標位置Gの方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して船舶110のL側に角度αだけ偏っている例を示している。このような場合でも、制御部14(図1参照)は、船舶110を目標位置Gに向かって進ませながら、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して第1角度A1(30度)以上かつ第2角度A2(60度)以下の所定の角度θとなるように船舶進行方向制御を行う必要がある。そこで、制御部14は、船舶110の航行モードが自動航行モードである場合で、かつ、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して船舶110の左右方向の一方側へ第1角度A1未満である場合に、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して船舶110の左右方向の一方側へ第1角度A1(30度)以上かつ第2角度A2(60度)以下の所定の角度θとなるように、船舶110の進行方向を船舶110の左右方向の一方側へ第3角度A3だけ変更する船舶進行方向制御を行う一方側船舶進行方向制御と、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して船舶110の左右方向の他方側へ第1角度A1(30度)以上かつ第2角度A2(60度)以下の所定の角度θとなるように、船舶110の進行方向を船舶110の左右方向の他方側へ第3角度A3よりも大きい第4角度A4だけ変更する船舶進行方向制御を行う他方側船舶進行方向制御とを、交互に繰り返し行うように構成されている。なお、船舶110の進行方向(設定された目標位置Gの方向)が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して船舶110の左右方向の一方側へ第1角度A1(30度)未満であるので、一方側船舶進行方向制御が行われている間に進む船舶110の距離L1は、他方側船舶進行方向制御が行われている間に進む船舶110の距離L2よりも大きい。すなわち、一方側船舶進行方向制御が行われている間の時間は、他方側船舶進行方向制御が行われている間の時間よりも長い。なお、図5では、角度α、第3角度A3および第4角度A4が、それぞれ、15度、30度および60度の例を示している。
【0049】
図6に示すように、制御部14(図1参照)は、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して0度以上かつ第1角度A1(30度)未満である場合であっても、船舶110に向かってくる波Wの高さHが所定の条件を満たす場合のみ、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して第1角度A1(30度)以上かつ第2角度A2(60度)以下となるように、船舶進行方向制御を行うように構成されている。具体的には、制御部14は、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して0度以上かつ第1角度A1(30度)未満である場合で、かつ、船舶110に向かってくる波Wの高さHが第1高さH1以上かつ第1高さH1よりも大きい第2高さH2以下である場合に、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して第1角度A1(30度)以上かつ第2角度A2(60度)以下となるように、船舶進行方向制御を行うように構成されている。第1高さH1および第2高さH2は、船舶110の大きさや形状等に応じて設定される。一方、制御部14は、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して第1角度A1(30度)未満である場合であっても、船舶110に向かってくる波Wの高さHが第1高さH1未満である場合、または、船舶110に向かってくる波Wの高さHが第2高さH2よりも大きい場合には、船舶進行方向制御を行わないように構成されている。また、制御部14は、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して第1角度A1(30度)未満である場合であっても、船舶110に向かってくる波Wの高さHが第2高さH2よりも大きい場合には、プロペラ21による推進力を小さくすることを操船者に促すように操船者に報知する制御を行うように構成されている。操船者への報知は、たとえば、表示部15(図1参照)へのメッセージやマーク等の表示によって行う。
【0050】
制御部14(図1参照)は、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して第1角度A1(30度)未満である場合で、かつ、船舶110に向かってくる波Wの高さHが第1高さH1以上かつ第2高さH2以下である場合に、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して船舶110に向かってくる波Wの高さHに応じて調整された第1角度A1以上の所定の角度θとなるように、船舶進行方向制御を行うように構成されている。具体的には、制御部14は、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して第1角度A1(30度)未満である場合で、かつ、船舶110に向かってくる波Wの高さHが第1高さH1以上かつ第2高さH2以下である場合に、船舶110に向かってくる波Wの高さHが大きくなる程、所定の角度θを小さくするように船舶進行方向制御を行う。すなわち、制御部14は、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して第1角度A1(30度)未満である場合で、かつ、船舶110に向かってくる波Wの高さHが第1高さH1以上かつ第2高さH2以下である場合に、船舶110に向かってくる波Wの高さHが第1高さH1に近くなる程、所定の角度θを第2角度A2に近くするとともに、船舶110に向かってくる波Wの高さHが第2高さH2に近くなる程、所定の角度θを第1角度A1に近くするように船舶進行方向制御を行う。
【0051】
図7に示すように、制御部14(図1参照)は、船舶進行方向制御を行う場合に、船舶進行方向制御を行うことを操船者に報知する制御を行うように構成されている。具体的には、制御部14は、船舶進行方向制御を行う場合に、船舶進行方向制御を行うことを操船者に報知する制御として、船舶進行方向制御を行う旨のメッセージ15aを表示部15に表示させる制御を行う。また、図8に示すように、制御部14は、船舶進行方向制御を行っている場合に、船舶進行方向制御を行っていることを操船者に報知する制御を行うように構成されている。具体的には、制御部14は、船舶進行方向制御を行っていることを操船者に報知する制御として、船舶進行方向制御を行っていること示す文字15bを表示部15に表示させる制御を行う。なお、制御部14は、船舶進行方向制御を行う船舶進行方向制御モードが設定されている場合に、船舶進行方向制御を行うように構成されている。船舶進行方向制御モードは、たとえば、操船者により操作部13が操作されることにより設定される。図7および図8では、船舶進行方向制御モードが設定されている状態を示している。
【0052】
(船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して直交する方向に沿った方向である場合に行う船舶進行方向制御)
図9に示すように、制御部14(図1参照)は、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して直交する方向に沿った方向である場合に、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して第1角度A1(30度)以上かつ第2角度A2(60度)以下の所定の角度θとなるように、船舶進行方向制御を行うように構成されている。なお、図9では、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して第1角度A1(30度)以上かつ第2角度A2(60度)以下の所定の角度θとなるように制御部14が船舶進行方向制御を行う前に、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して直交する方向(90度の方向)である場合を示している。
【0053】
制御部14(図1参照)は、船舶110の航行モードが、設定された目標位置Gに向かって船舶110が自動で航行する自動航行モードである場合で、かつ、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して直交する方向(90度の方向)に沿った方向である場合に、船舶110を目標位置Gに向かって進ませながら、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して第1角度A1(30度)以上かつ第2角度A2(60度)以下の所定の角度θとなるように、船舶進行方向制御を行うように構成されている。具体的には、上述したように、船舶110の航行モードが自動航行モードである場合、船舶110の進行方向は、概ね、設定された目標位置Gに向かう方向となっている。このため、上述したように、船舶110の航行モードが自動航行モードである場合に、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して第1角度A1(30度)以上かつ第2角度A2(60度)以下の所定の角度θとなるように制御部14が船舶進行方向制御を行うことによって船舶110の進行方向がたとえば1回だけ変更された場合、船舶110の進行方向が、設定された目標位置Gに向かう方向とは異なる方向となってしまう。そこで、制御部14は、船舶110の航行モードが自動航行モードである場合で、かつ、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して直交する方向に沿った方向である場合に、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して船舶110の左右方向の一方側へ第1角度A1(30度)以上かつ第2角度A2(60度)以下の所定の角度θとなるように、船舶進行方向制御を行う一方側船舶進行方向制御と、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して船舶110の左右方向の他方側へ第1角度A1(30度)以上かつ第2角度A2(60度)以下の所定の角度θとなるように、船舶進行方向制御を行う他方側船舶進行方向制御とを、交互に繰り返し行うように構成されている。なお、図9では、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して第1角度A1(30度)以上かつ第2角度A2(60度)以下の所定の角度θとなるように制御部14が船舶進行方向制御を行う前に、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して直交する方向(90度の方向)であるので、一方側船舶進行方向制御における所定の角度θと、他方側船舶進行方向制御における所定の角度θとが、等しくなっている。
【0054】
(実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0055】
また、本実施形態では、上記のように、制御部14は、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して第1角度A1未満である場合に、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して第1角度A1以上の所定の角度θとなるように、船舶進行方向制御を行うように構成されている。これにより、船舶110の進行方向を船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して比較的小さい第1角度A1(30度)未満から比較的大きい第1角度A1以上の所定の角度θに変更することによって、船舶110の速度ベクトルのうちの船舶110に向かってくる波Wの進行方向と平行な成分を小さくすることができる。これにより、船舶110に向かってくる波Wを船舶110が乗り越える際に、船舶110に向かってくる波Wが船舶110に衝突する速度を小さくすることができる。すなわち、船舶110の速度を低下させることなく、船舶110に向かってくる波Wを船舶110が乗り越える際に生じる船舶110への衝撃を小さくすることができる。その結果、船舶110の速度を低下させることなく、船舶110に向かってくる波Wを船舶110が乗り越える際に船舶110の姿勢が不安定になるのを抑制することができる。
【0056】
また、本実施形態では、上記のように、制御部14は、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して第1角度A1未満である場合に、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して第1角度A1以上かつ第1角度A1よりも大きい第2角度A2以下の所定の角度θとなるように、船舶進行方向制御を行うように構成されている。これにより、船舶進行方向制御により変更される船舶110の進行方向に対する船舶110に向かってくる波Wの進行方向の角度に第2角度A2という上限を設けることができる。これにより、船舶110の進行方向に対する船舶110に向かってくる波Wの進行方向の角度が過度に大きくなるのを抑制することができる。これにより、第2角度A2を、船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して直交する方向に沿った方向よりも小さい角度(60度)に設定することによって、船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して第1角度A1以上かつ第2角度A2以下に変更した後の船舶110の進行方向を、船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して直交する方向に沿っていない方向にすることができる。これにより、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して直交する方向に沿った方向となっていることに起因して船舶110に向かってくる波Wを船舶110が乗り越える際に船舶110に横揺れが生じるのを抑制することができる。
【0057】
また、本実施形態では、上記のように、制御部14は、船舶110の航行モードが、設定された目標位置Gに向かって船舶110が自動で航行する自動航行モードである場合で、かつ、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して第1角度A1未満である場合に、船舶110を目標位置Gに向かって進ませながら、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して第1角度A1以上の所定の角度θとなるように、船舶進行方向制御を行うように構成されている。これにより、船舶110の航行モードが自動航行モードである場合において、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して第1角度A1以上の所定の角度θとなるように船舶進行方向制御を行うことによって船舶110の進行方向が変更されたとしても、船舶110を設定された目標位置Gに向かうように進ませることができる。
【0058】
また、本実施形態では、上記のように、制御部14は、船舶110の航行モードが自動航行モードである場合で、かつ、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して第1角度A1未満である場合に、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して船舶110の左右方向の一方側へ第1角度A1以上の所定の角度θとなるように、船舶進行方向制御を行う一方側船舶進行方向制御と、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して船舶110の左右方向の他方側へ第1角度A1以上の所定の角度θとなるように、船舶進行方向制御を行う他方側船舶進行方向制御とを、交互に繰り返し行うように構成されている。これにより、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して船舶110の左右方向の一方側となる状態と他方側となる状態とを交互に繰り返すことによって、船舶110の最終的な進行方向が変わらないように船舶110をジグザグ状に進ませることができる。これにより、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して第1角度A1以上の所定の角度θとなるように船舶進行方向制御を行うことによって船舶110の進行方向が変更されたとしても、船舶110を設定された目標位置Gに向かうように容易に進ませることができる。
【0059】
また、本実施形態では、上記のように、制御部14は、船舶110の航行モードが自動航行モードである場合で、かつ、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して船舶110の左右方向の一方側へ第1角度A1未満である場合に、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して船舶110の左右方向の一方側へ第1角度A1以上の所定の角度θとなるように、船舶110の進行方向を船舶110の左右方向の一方側へ第3角度A3だけ変更する船舶進行方向制御を行う一方側船舶進行方向制御と、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して船舶110の左右方向の他方側へ第1角度A1以上の所定の角度θとなるように、船舶110の進行方向を船舶110の左右方向の他方側へ第3角度A3よりも大きい第4角度A4だけ変更する船舶進行方向制御を行う他方側船舶進行方向制御とを、交互に繰り返し行うように構成されている。これにより、設定された目標位置Gの方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して船舶110の左右方向の一方側に偏っている場合でも、船舶110の進行方向を船舶110の左右方向の一方側へ第3角度A3だけ変更する船舶進行方向制御を行う一方側船舶進行方向制御と、船舶110の進行方向を船舶110の左右方向の他方側へ第3角度A3よりも大きい第4角度A4だけ変更する船舶進行方向制御を行う他方側船舶進行方向制御とを、交互に繰り返すことによって、船舶110の最終的な進行方向が変わらないように船舶110をジグザグ状に進ませることができる。これにより、設定された目標位置Gの方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して船舶110の左右方向の一方側に偏っている場合でも、船舶110を設定された目標位置Gに向かうように容易に進ませることができる。
【0060】
また、本実施形態では、上記のように、制御部14は、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して第1角度A1未満である場合で、かつ、船舶110に向かってくる波Wの高さHが第1高さH1以上である場合に、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して第1角度A1以上となるように、船舶進行方向制御を行うように構成されている。また、制御部14は、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して第1角度A1未満である場合であっても、船舶110に向かってくる波Wの高さHが第1高さH1未満である場合には、船舶進行方向制御を行わないように構成されている。これにより、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して比較的小さい第1角度A1未満である場合であっても、船舶110に向かってくる波Wの高さHが比較的小さい第1高さH1未満である場合のように船舶110に向かってくる波Wを船舶110が乗り越える際に生じる船舶110への衝撃が大きくなりにくく船舶進行方向制御を行う必要がない場合に、船舶進行方向制御が行われるのを回避することができる。
【0061】
また、本実施形態では、上記のように、制御部14は、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して第1角度A1未満である場合で、かつ、船舶110に向かってくる波Wの高さHが第1高さH1以上かつ第1高さH1よりも大きい第2高さH2以下である場合に、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して第1角度A1以上となるように、船舶進行方向制御を行うように構成されている。また、制御部14は、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して第1角度A1未満である場合であっても、船舶110に向かってくる波Wの高さHが第2高さH2よりも大きい場合には、船舶進行方向制御を行なわずに、プロペラ21による推進力を小さくすることを操船者に促すように操船者に報知する制御を行うように構成されている。これにより、船舶110の進行方向を船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して比較的大きい第1角度A1以上の所定の角度θにするように船舶進行方向制御が行われる条件として、船舶110に向かってくる波Wの高さHに第2高さH2という上限を設けることができる。これにより、船舶110に向かってくる波Wの高さHが過度に大きい場合に、船舶110の進行方向を船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して比較的大きい第1角度A1以上の所定の角度θにする船舶進行方向制御が行われてしまうのを抑制することができる。これにより、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して第1角度A1未満である場合で、かつ、船舶110に向かってくる波Wの高さHが第1高さH1以上であっても、船舶110に向かってくる波Wの高さHが過度に大きい場合に、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して比較的大きい第1角度A1以上となるように船舶進行方向制御が行われてしまうのを抑制することができる。すなわち、船舶110に向かってくる波Wを船舶110が乗り越える際に船舶110に横揺れが生じやすくなる場合に、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波の進行方向に対して比較的大きい第1角度A1以上となるように船舶進行方向制御が行われて船舶110に向かってくる波Wを船舶110が乗り越える際に船舶110に横揺れが生じるのを抑制することができる。また、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して第1角度A1未満である場合で、かつ、船舶110に向かってくる波Wの高さHが第2高さH2よりも大きい場合に、プロペラ21による推進力を小さくするように操船者を促すことができる。これにより、操船者がプロペラ21による推進力を小さくする必要がある場合に、操船者がプロペラ21による推進力を小さくする必要があることを操船者に容易に認識させることができる。
【0062】
また、本実施形態では、上記のように、制御部14は、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して第1角度A1未満である場合で、かつ、船舶110に向かってくる波Wの高さHが第1高さH1以上かつ第2高さH2以下である場合に、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して船舶110に向かってくる波Wの高さHに応じて調整された第1角度A1以上の所定の角度θとなるように、船舶進行方向制御を行うように構成されている。これにより、船舶110に向かってくる波Wの高さHが大きくなるにしたがって、または、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して大きな角度となるにしたがって、船舶110に向かってくる波Wを船舶110が乗り越える際に船舶110に横揺れ生じやすくなることを考慮して、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して第1角度A1以上の所定の角度θとなるように船舶進行方向制御を行うことができる。これにより、船舶110に向かってくる波Wを船舶110が乗り越える際に船舶110に横揺れが生じるのを抑制しながら、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して第1角度A1以上の所定の角度θとなるように船舶進行方向制御を行うことができる。
【0063】
また、本実施形態では、上記のように、制御部14は、船舶進行方向制御を行う船舶進行方向制御モードが設定されている場合に、船舶進行方向制御を行うように構成されている。これにより、船舶進行方向制御を行いたい場合に、船舶進行方向制御モードが設定されることによって、船舶進行方向制御が行われるようにすることができるとともに、船舶進行方向制御を行いたくない場合に、船舶進行方向制御モードが設定されないことによって、船舶進行方向制御を行われないようにすることができる。
【0064】
また、本実施形態では、上記のように、制御部14は、船舶進行方向制御を行う場合に、船舶進行方向制御を行うことを操船者に報知する制御を行うように構成されている。これにより、船舶進行方向制御が行われる場合に、船舶進行方向制御が行われることを操船者に予め報知することができるので、船舶進行方向制御が行われることを操船者が認識していない状態で船舶進行方向制御が突然行われることによって、操船者に不快感を与えてしまうのを抑制することができる。
【0065】
また、本実施形態では、上記のように、制御部14は、船舶進行方向制御を行っている場合に、船舶進行方向制御を行っていることを操船者に報知する制御を行うように構成されている。これにより、船舶進行方向制御が行われている間、船舶進行方向制御が行われていることを操船者に報知することができるので、船舶進行方向制御が行われていることを操船者が認識していない状態で船舶進行方向制御が行われることによって、操船者に不快感を与えてしまうのを抑制することができる。
【0066】
また、本実施形態では、上記のように、制御部14は、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して直交する方向に沿った方向である場合に、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して第1角度A1以上かつ第2角度A2以下の所定の角度θとなるように、船舶進行方向制御を行うように構成されている。これにより、第2角度A2を、船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して直交する方向に沿った方向よりも小さい角度(60度)に設定することによって、船舶110の進行方向を、船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して直交する方向に沿った方向から、船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して直交する方向に沿ってない方向に変更することができる。これにより、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して直交する方向に沿った方向となっていることに起因して船舶110に向かってくる波Wを船舶110が乗り越える際に船舶110に横揺れが生じるのを抑制することができる。
【0067】
また、本実施形態では、上記のように、制御部14は、船舶110の航行モードが、設定された目標位置Gに向かって船舶110が自動で航行する自動航行モードである場合で、かつ、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して直交する方向に沿った方向である場合に、船舶110を目標位置Gに向かって進ませながら、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して第1角度A1以上かつ第2角度A2以下の所定の角度θとなるように、船舶進行方向制御を行うように構成されている。これにより、船舶110の航行モードが自動航行モードである場合において、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して第1角度A1以上かつ第2角度A2以下の所定の角度θとなるように船舶進行方向制御を行うことによって船舶110の進行方向が変更されたとしても、船舶110を設定された目標位置Gに向かうように進ませることができる。
【0068】
また、本実施形態では、上記のように、制御部14は、船舶110の航行モードが自動航行モードである場合で、かつ、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して直交する方向に沿った方向である場合に、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して船舶110の左右方向の一方側へ第1角度A1以上かつ第2角度A2以下の所定の角度θとなるように、船舶進行方向制御を行う一方側船舶進行方向制御と、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して船舶110の左右方向の他方側へ第1角度A1以上かつ第2角度A2以下の所定の角度θとなるように、船舶進行方向制御を行う他方側船舶進行方向制御とを、交互に繰り返し行うように構成されている。これにより、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して船舶110の左右方向の一方側となる状態と他方側となる状態とを交互に繰り返すことによって、船舶110の最終的な進行方向が変わらないように船舶110をジグザグ状に進ませることができる。これにより、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して第1角度A1以上かつ第2角度A2以下の所定の角度θとなるように船舶進行方向制御を行うことによって船舶110の進行方向が変更されたとしても、船舶110を設定された目標位置Gに向かうように容易に進ませることができる。
【0069】
[変形例]
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であり制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更(変形例)が含まれる。
【0070】
たとえば、上記実施形態では、制御部14は、船舶110の航行モードが自動航行モードである場合で、かつ、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して直交する方向に沿った方向である場合に、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して船舶110の左右方向の一方側へ第1角度A1以上かつ第2角度A2以下の所定の角度θとなるように、船舶進行方向制御を行う一方側船舶進行方向制御と、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して船舶110の左右方向の他方側へ第1角度A1以上かつ第2角度A2以下の所定の角度θとなるように、船舶進行方向制御を行う他方側船舶進行方向制御とを、交互に繰り返し行うように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部は、船舶の航行モードが自動航行モードである場合で、かつ、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して直交する方向に沿った方向である場合に、上記一方側船舶進行方向制御と、上記他方側船舶進行方向制御とを、交互に繰り返し行わないように構成されていてもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、制御部14は、船舶110の航行モードが、設定された目標位置Gに向かって船舶110が自動で航行する自動航行モードである場合で、かつ、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して直交する方向に沿った方向である場合に、船舶110を目標位置Gに向かって進ませながら、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して第1角度A1以上かつ第2角度A2以下の所定の角度θとなるように、船舶進行方向制御を行うように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部は、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して直交する方向に沿った方向である場合であっても、船舶の航行モードが自動航行モードでない場合には、目標位置に関係なく、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度以上かつ第2角度以下の所定の角度となるように、船舶進行方向制御を行うように構成されていてもよい。その場合、制御部は、上記一方側船舶進行方向制御と上記他方側船舶進行方向制御とを、交互に繰り返し行わなくてもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、制御部14は、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して直交する方向に沿った方向である場合に、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して第1角度A1以上かつ第2角度A2以下の所定の角度θとなるように、船舶進行方向制御を行うように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部は、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して直交する方向に沿った方向である場合に、船舶進行方向制御を行わないように構成されていてもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、制御部14は、船舶進行方向制御を行っていることを操船者に報知する制御として、船舶進行方向制御を行っていること示す文字13bを表示部15に表示させる制御を行うされている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部は、船舶進行方向制御を行っていることを操船者に報知する制御として、たとえば、船舶進行方向制御を行っている旨の音声を発生させる制御等、船舶進行方向制御を行っていること示す文字を表示部に表示させる以外の制御を行ってもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、制御部14は、船舶進行方向制御を行っている場合に、船舶進行方向制御を行っていることを操船者に報知する制御を行うように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部は、船舶進行方向制御を行っている場合に、船舶進行方向制御を行っていることを操船者に報知する制御を行わないように構成されていてもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、制御部14は、船舶進行方向制御を行う場合に、船舶進行方向制御を行っていることを操船者に報知する制御として、船舶進行方向制御を行う旨のメッセージ13aを表示部15に表示させる制御を行う例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部は、船舶進行方向制御を行う場合に、船舶進行方向制御を行っていることを操船者に報知する制御として、船舶進行方向制御を行う旨のメッセージを表示部に表示させる制御を行わなくてもよい。また、制御部は、船舶進行方向制御を行う場合に、船舶進行方向制御を行っていることを操船者に報知する制御として、たとえば、船舶進行方向制御を行う旨の音声を発生させる制御等、船舶進行方向制御を行う旨のメッセージを表示部に表示させる以外の制御を行ってもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、制御部14は、船舶進行方向制御を行っている場合に、船舶進行方向制御を行っていることを操船者に報知する制御を行うように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部は、船舶進行方向制御を行っている場合に、船舶進行方向制御を行っていることを操船者に報知する制御を行わないように構成されていてもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、制御部14は、船舶進行方向制御を行う船舶進行方向制御モードが設定されている場合に、船舶進行方向制御を行うように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部は、船舶進行方向制御モードに関係なく、船舶進行方向制御を行うように構成されていてもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、制御部14は、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して第1角度A1未満である場合で、かつ、船舶110に向かってくる波Wの高さが第1高さH1以上かつ第2高さH2以下である場合に、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して船舶110に向かってくる波Wの高さHに応じて調整された第1角度A1以上の所定の角度θとなるように、船舶進行方向制御を行うように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部は、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度未満である場合で、かつ、船舶に向かってくる波の高さが第1高さ以上かつ第2高さ以下である場合に、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して船舶に向かってくる波の高さに関係なく、第1角度以上の所定の角度となるように、船舶進行方向制御を行うように構成されていてもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、制御部14は、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して第1角度A1未満である場合であっても、船舶110に向かってくる波Wの高さHが第2高さH2よりも大きい場合には、船舶進行方向制御を行なわずに、プロペラ21による推進力を小さくすることを操船者に促すように操船者に報知する制御を行うように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部は、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度未満である場合であっても、船舶に向かってくる波の高さが第2高さよりも大きい場合には、船舶進行方向制御を行なわずに、かつ、プロペラによる推進力を小さくすることを操船者に促すように操船者に報知する制御も行わないように構成されていてもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、制御部14は、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して第1角度A1未満である場合で、かつ、船舶110に向かってくる波Wの高さが第1高さH1以上かつ第1高さH1よりも大きい第2高さH2以下である場合に、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して第1角度A1以上となるように、船舶進行方向制御を行うように構成されており、制御部14は、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して第1角度A1未満である場合であっても、船舶110に向かってくる波Wの高さが第1高さH1未満である場合、および、船舶110に向かってくる波Wの高さが第2高さH2よりも大きい場合には、船舶進行方向制御を行わないように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部は、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度未満である場合に、船舶に向かってくる波の高さに関係なく、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度以上となるように、船舶進行方向制御を行うように構成されていてもよい。
【0081】
また、上記実施形態では、制御部14は、船舶110の航行モードが自動航行モードである場合で、かつ、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して第1角度A1未満である場合に、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して船舶110の左右方向の一方側へ第1角度A1以上の所定の角度θとなるように、船舶進行方向制御を行う一方側船舶進行方向制御と、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して船舶110の左右方向の他方側へ第1角度A1以上の所定の角度θとなるように、船舶進行方向制御を行う他方側船舶進行方向制御とを、交互に繰り返し行うように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部は、船舶の航行モードが自動航行モードである場合で、かつ、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度未満である場合に、上記一方側船舶進行方向制御と、上記他方側船舶進行方向制御とを、交互に繰り返し行わないように構成されていてもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、制御部14は、船舶110の航行モードが、設定された目標位置Gに向かって船舶110が自動で航行する自動航行モードである場合で、かつ、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して第1角度A1未満である場合に、船舶110を目標位置Gに向かって進ませながら、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して第1角度A1以上の所定の角度θとなるように、船舶進行方向制御を行うように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部は、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度未満である場合であっても、船舶の航行モードが自動航行モードでない場合には、目標位置に関係なく、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度以上の所定の角度となるように、船舶進行方向制御を行うように構成されていてもよい。その場合、制御部は、上記一方側船舶進行方向制御と上記他方側船舶進行方向制御とを、交互に繰り返し行わなくてもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、制御部14は、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して第1角度A1未満である場合に、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して第1角度A1以上かつ第1角度A1よりも大きい第2角度A2以下の所定の角度θとなるように、船舶進行方向制御を行うように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部は、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度未満である場合に、船舶進行方向制御により変更される船舶の進行方向に対する船舶に向かってくる波の進行方向の角度に第2角度という上限を設けずに、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度以上の所定の角度となるように、船舶進行方向制御を行うように構成されていてもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、制御部14は、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して第1角度A1未満である場合に、船舶110の進行方向が船舶110に向かってくる波Wの進行方向に対して第1角度A1以上の所定の角度θとなるように、船舶進行方向制御を行うように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部は、船舶に向かってくる波の進行方向に関係なく、船舶に向かってくる波の高さが第1高さ以上である場合に、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度以上の所定の角度となるように、船舶進行方向制御を行うように構成されていてもよい。すなわち、制御部は、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度未満である場合、および、船舶に向かってくる波の高さが第1高さ以上である場合の少なくともいずれかである場合に、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して第1角度以上の所定の角度となるように、船舶進行方向制御を行うように構成されていてもよい。これにより、上記実施形態と同様に、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して比較的小さい第1角度未満である場合に、船舶の進行方向を船舶に向かってくる波の進行方向に対して比較的小さい第1角度未満から比較的大きい第1角度以上の所定の角度に変更することによって、船舶に向かってくる波を船舶が乗り越える際に、船舶に向かってくる波が船舶に衝突する速度を小さくすることができる。また、船舶に向かってくる波の高さが比較的大きい第1高さ以上である場合のように船舶に向かってくる波を船舶が乗り越える際に生じる船舶への衝撃が大きくなりやすい場合で、かつ、船舶の進行方向が船舶に向かってくる波の進行方向に対して比較的小さい角度となっている場合に、たとえば、船舶の進行方向を船舶に向かってくる波の進行方向に対して比較的小さい角度から比較的大きい角度に変更することによって、船舶に向かってくる波を船舶が乗り越える際に、船舶に向かってくる波が船舶に衝突する速度を小さくすることができる。これらの結果、上記実施形態と同様に、船舶の速度を低下させることなく、船舶に向かってくる波を船舶が乗り越える際に船舶の姿勢が不安定になるのを抑制することができる。
【0085】
また、上記実施形態では、第1角度A1および第2角度A2が、それぞれ、30度および60度である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1角度A1が30度以外の角度であってもよいし、第2角度A2が、60度以外の角度であってもよい。
【0086】
また、上記実施形態では、船外機20は、エンジン22によりプロペラ21を駆動させるように構成されたエンジン式船外機である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、船外機は、電気モータによりプロペラを駆動させるように構成された電動式船外機であってもよい。
【0087】
また、上記実施形態では、船外機20は、船体10の船尾11に1つのみ取り付けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、船外機は、船体の船尾に複数(2つ以上)取り付けられていてもよい。
【符号の説明】
【0088】
14 制御部
21 プロペラ(推進力発生部)
100 船舶推進システム
110 船舶
A1 第1角度
A2 第2角度
A3 第3角度
A4 第4角度
G 目標位置
H (船舶に向かってくる波の)高さ
H1 第1高さ
H2 第2高さ
W (船舶に向かってくる)波
θ 所定の角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9