(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057353
(43)【公開日】2024-04-24
(54)【発明の名称】食品の超高圧殺菌方法
(51)【国際特許分類】
A23L 3/015 20060101AFI20240417BHJP
A23L 5/10 20160101ALI20240417BHJP
【FI】
A23L3/015
A23L5/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164039
(22)【出願日】2022-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】504036279
【氏名又は名称】バイオジェニック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100140888
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 欣乃
(72)【発明者】
【氏名】沼沢 徹
(72)【発明者】
【氏名】水野 公太郎
(72)【発明者】
【氏名】渡部 大地
【テーマコード(参考)】
4B021
4B035
【Fターム(参考)】
4B021LP07
4B021LW09
4B021LW10
4B021MC01
4B035LC05
4B035LG48
4B035LK19
4B035LP44
4B035LP55
(57)【要約】
【課題】本発明は酵素を含む食品に対して、酵素活性を維持しつつ、殺菌できる殺菌方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の酵素を含む食品の殺菌方法は、上記食品を200~400Mpaの圧力で処理し、酵素活性を維持しつつ殺菌する超高圧処理工程を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酵素を含む食品の殺菌方法であって、前記食品を200~400Mpaの圧力で処理し、酵素活性を維持しつつ殺菌する超高圧処理工程を含む、殺菌方法。
【請求項2】
前記超高圧処理工程が、前記食品を前記圧力で1分以上処理することを含むことを含む、請求項1に記載の殺菌方法。
【請求項3】
前記超高圧処理工程が、前記食品を15℃~80℃の温度で前記圧力で処理することを含むことを含む、請求項1又は2に記載の殺菌方法。
【請求項4】
前記食品が、穀物麹、植物由来酵素、及び食用生薬からなる群より選択される、請求項1又は2に記載の殺菌方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品の超高圧殺菌方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年まで食品の殺菌を目的とする加工には、殆ど加熱を利用してきた。しかしながら、熱処理によって、ビタミンや色素などの成分の変性、熱に弱い酵素の失活、さらに、香気の喪失などの問題点がある。
【0003】
また、食品の殺菌には塩素処理、放射線処理などを用いられることもあるが、前者は酸化反応により食品の変質を伴い、発がん性の危険性もあると言われている。後者の場合は、日本では規制によって食品の殺菌レベルの放射線照射は認められていない。
【0004】
一方、食品の高圧処理も知られている(非特許文献1、2)。食品への高圧処理によって、熱を利用した際とはまったく異なる現象が起こり、例えば、共有結合は開裂しないため、栄養素の破壊、異臭の発生が少なく、安全性を脅かす異常物質が生じないこと;容器内のすべての部位で均一な処理ができること;エネルギーの消費が小さいことなどが挙げられる。また、高圧処理後の食品は、食感や消化性などの性質の変化を伴うことが知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】食品への高圧処理 超高圧技術 知る・楽しむ 越後製菓株式会社(https://www.echigoseika.co.jp/enjoy/high-pressure-technology/04.php)
【非特許文献2】越後発の新技術 高圧技術が世界を変える(https://www.echigoseika.co.jp/enjoy/high-pressure-technology/)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明は、酵素を含む食品に対して、酵素活性を維持しつつ、殺菌できる殺菌方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究の結果、穀物麹粉末を200Mpaの圧力で高圧処理すると、殺菌できるとともに、アミラーゼ及びプロテアーゼの酵素活性を維持できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0008】
すなわち、本発明は、例えば以下の各発明に関する。
[1]
酵素を含む食品の殺菌方法であって、上記食品を200~400Mpaの圧力で処理し、酵素活性を維持しつつ殺菌する超高圧処理工程を含む、殺菌方法。
[2]
上記超高圧処理工程が、上記食品を前記圧力で1分以上処理することを含むことを含む、[1]に記載の殺菌方法。
[3]
上記超高圧処理工程が、上記食品を15℃~80℃の温度で上記圧力で処理することを含むことを含む、[1]又は[2]に記載の殺菌方法。
[4]
上記食品が、穀物麹、植物由来酵素、及び食用生薬からなる群より選択される、[1]又は[2]に記載の殺菌方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の殺菌方法によれば、食品中に含まれる酵素の酵素活性を失われることなく、食品として許容されるレベルまで殺菌できる。また、本発明の殺菌方法は、加熱処理よりもエネルギーの消費が小さいため、環境にやさしい殺菌方法である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の酵素を含む食品の殺菌方法は、上記食品を200~400Mpaの圧力で処理し、酵素活性を維持しつつ殺菌する超高圧処理工程を含む。
【0011】
超高圧は一般的に100Mpa以上の圧力を意味し、これは凡そ1,000気圧以上に相当する。本実施例形態にかかる超高圧処理工程において、200~400Mpaの圧力で処理することが好ましい。200Mpa未満の場合は、十分な殺菌効果を得られないおそれがあり、一方、400Mpaを超える場合は、殺菌効果を奏するものの、タンパク質や糖類などの高分子化合物の変性を引き起こすおそれがあり、また、1,000Mpaを超えてしまうとビタミンや香味成分の失活を引き起こすおそれがある。一実施形態において、超高圧処理工程における圧力は、200~400Mpaの範囲内の任意の圧力であってよく、使用される高圧装置の観点から、200又は400Mpaであることが好ましく、さらに200Mpaであることがより好ましい。
【0012】
超高圧処理に用いられる高圧装置としては、上記範囲の圧力を達成できるものであれば特に限定されず、例えば、神戸製鋼所製ピストン式高圧処理装置、越後製菓株式会社社製L2 series及びM series高圧装置、IHI製食品用高圧特機が挙げられる。
【0013】
超高圧処理工程における、超高圧での処理時間は1分以上であればよく、例えば、1分~30分、5分~30分、10分~30分、5分~25分、5分~20分、又は10~20分であってよい。この時間は、加圧及び減圧の時間を含まない。1分よりも短いと十分な殺菌効果が得られないおそれがあり、30分を超えると、30分以下の処理時間と比べてさらなる殺菌効果の向上が難しく、むしろエネルギーの消費が増大するため好ましくない。ここで、超高圧での処理時間は、所定の圧力が維持されたままの処理時間であり、所定の圧力になるまでの加圧時間、及び所定の圧力から常圧までの減圧時間を含まない。
【0014】
超高圧処理工程における処理温度はタンパク質を変性させない温度であればよく、酵素の種類によって異なり得るが、例えば15℃~80℃の範囲であってよく、また、15℃~70℃、15℃~60℃、15℃~50℃又は15℃~45℃であってもよく、さらに、常温(15℃~30℃)又は室温(15℃~25℃)であることが好ましい。
【0015】
本実施形態の殺菌方法に用いられる食品は、酵素を含む食品であれば特に限定されない。酵素は、生物由来の、生体内外の化学反応を触媒する分子の総称であり、タンパク質(ポリペプチド)を主成分とする。酵素は、酸化還元酵素(オキシドレダクターゼ)、転移酵素(トランスフェラーゼ)、加水分解酵素(ヒドロラーゼ)、脱離酵素(リアーゼ)、異性化酵素(イソメラーゼ)、合成酵素(リガーゼ)、及びトランスロカーゼに分類することができる。現在知られている酵素は10万以上あると言われており、本実施形態において酵素としては食品に含んでよい酵素であれば特に限定せず、その由来も特に限定されず、例えば、植物、微生物、キノコ、昆虫、動物などの生物由来の酵素であってよい。具体的には、プロテアーゼ(酸性プロテアーゼ、中性プロテアーゼ、アルカリ性プロテアーゼ)、アミラーゼ(例えばα-アミラーゼ、β-アミラーゼ)、グルコアミラーゼ、カルボキシペプチターゼ、ガラクトシターゼ、セルラーゼ、ラクターゼ、リパーゼ、ペクチナーゼ、へミセルラーゼ、マルターゼ、シュクターゼ、トリプシンなどが挙げられる。
【0016】
本実施形態の酵素を含む食品は、酵素活性を有する酵素を含み、かつ、酵素活性が測定限界以上の酵素を含んでいる食品を意味する。酵素を含む食品としては、例えば、酵素を含む農産物(穀物、野菜、果物、キノコ、種実類など)又はその加工食品が挙げられる。
穀物(豆類を含む):白米、もち米、黒米、玄米、赤米、大麦、小麦、オーツ麦、ハトムギ、ライムギ、ヒエ、キビ、タカキビ、アワ、トウモロコシ、大豆、黒ゴマ、白ゴマ、黒豆、アズキ、エゴマ、レンズマメ、ヒヨコマメ、リョクトウ、栗、紫黒米など;
果物:アサイー、アセロラ、アケビ、アンズ、イチゴ、イチジク、イヨカン、ウメ、オレンジ、温州ミカン、柿、カボス、カリン、キンカン、グアバ、サクランボ、ザクロ、ザボン、スイカ、西洋ナシ、スモモ、ドラゴンフルーツ、夏ミカン、ネーブルオレンジ、バナナ、パインアップル、ハッサク、パッションフルーツ、パパイア、ビワ、ブドウ、ブラックベリー(果実)、プラム、ブンタン、ポンカン、マンゴー、ミカン、メロン、山ブドウ、山モモ、ユズ、クランベリー、ライチ、ライム、ラズベリー(果実)、リンゴ、レモンなど;
野菜(海藻類を含む)・キノコ類:アーティチョーク、青ノリ、アシタバ、アスパラガス、アボカド、赤カブ、アサツキ、アルファルファ、インゲンマメ、エシャロット、ウド、枝豆、エノキ、エリンギ、オクラ、オリーブ、カイワレダイコン、カブ、カブの葉、カボチャ、カラシナ、カリフラワー、菊芋、キクラゲ、空心菜、キャッサバ、キャベツ、キュウリ、クワイ、ケール、小松菜、ゴボウ、コリアンダー、コンブ、里芋、サツマイモ、山椒(実)、シソ、春菊、ジュンサイ、生姜、食用菊、白瓜、水前寺菜、椎茸、シシトウ、ジャガイモ、セリ、セロリ、スギナ、スグリ、スターアニス、スターフルーツ、スダチ、ズッキーニ、セロリ、ソラマメ、タアサイ、大根、大根の葉、ダイズモヤシ、タイム、筍、タマネギ、チコリ、チンゲンサイ、トウガラシ、トウモロコシ、冬瓜、トマト、長芋、ナス、菜花、苦瓜、ニガヨモギ、ニラ、ニンジン、ニンニク、ネギ、ネコンブ、野沢菜、ノリ、白菜、二十日大根(根)、二十日大根(葉)、バジル(葉)、パセリ、パプリカ、バナナピーマン、ピーマン、ヒジキ、蕗、ブロッコリー、ヘチマ、ホウレンソウ、舞茸、水菜、三つ葉、ミニキャロット、ミニトマト、茗荷、ユリ根、モロヘイヤ、ヤーコン、ラッキョウ、ルッコラ、レタス、レンコン、ワカメ、ワケギ、ワサビ(葉)、蕨など;
種実類(ナッツ類):アーモンド、クルミ、マカダミアナッツ、パプリカ、ピーカン、ヘーゼルナッツ、カシューナッツ、ピスタチオナッツなど。
【0017】
農産物の加工品としては、特に限定されないが、例えば、米粉などの穀物を粉末化したもの、発芽玄米など発芽処理した穀物、煎りゴマ、煎り大麦、煎り大豆などの加熱処理した穀物、麹又は酵母によって発酵された穀物が挙げられ、これらの加工食品は、1種類又は複数種類の穀物を含んでよく、また、穀物以外の酵素を含む食品を含んでもよい。具体例としては、米麹、穀物麹などが挙げられる。
【0018】
酵素を含む食品としてはまた、微生物由来の酵素を含む食品が挙げられる。微生物としては、例えば、麹(黒麹、赤麹、黄麹、白麹など)、酵母(ビール酵母)などが挙げられるが、これらに限定されない。微生物の乾燥物(乾燥麹、乾燥酵母など)又はそのエキス(麹エキス、酵母エキスなど)、或いはこれらを含む食品であってよい。
【0019】
酵素を含む食品としてはまた、上記に挙げられたような農産物以外の、食用可能な植物、例えば、香辛料・調味料・着色料、食用生薬、又はそれらの加工食品が挙げられる。このような食用植物として、アイスランドモス、アイブライト、アカザ、赤芽柏、アガリクス、アップルミント、アニス、アマランサス、アマチャ、アマチャヅル、アムラ、アラサボイ、イチョウ、ウコン、エキナケア、エゾウコギ、エビスクザ、エルダーフラワー、エンドウマメ、オオバゲッキツ、オールスパイス、オカヒジキ、オタネニンジン、オリーブ(葉)、オレガノ、大麦若葉、オオバコ、オレンジフラワー、甘草、柿の葉、ガジュツ、キイチゴ(葉)、キキョウ、銀杏、枸杞の実、枸杞の葉、桑の葉、桑の実、カキドウシ、カツアバ、カノコソウ、カバアナノタケ、カムカム、カミメボウキ、カモミール、ガラナ、カルダモン、カルケージャ、カレンデュラ、カワラケツメイ、キウイフルーツ、ギムネマ、キャッツクロー、キャラウェイシード、クチナシ、クビュー、隈笹、クミン、グラビオーラ、クローブ、胡椒、ケツメイシ、ケルプ、コウベマンティガ、コゴミ、コラノミ、コロハ、サツマイモ(茎・葉)、里芋(葉柄)、サフラン、サラダナ、サンザシノミ、山椒(葉)、サンシュユ、スイカズラ、ジェニバブ、シナモン、ジャスミン、シャペウデコウロ、ジュニパーベリー(実)、ステビア、ストロベリー(葉)、セイボリー、西洋アンゼリカ、西洋エビラハギ、西洋ニワトコ、西洋ニンジンボク、セージ、セスバニア、ゼニアオイ、センソウ、タペレバ、タラゴン、タンポポ(根)、チャ、チャイブ、ツボクサ、ツユクサ、ツルムラサキ、デーツ、田七人参、ドクダミ、ナスタチウム、ナタマメ、ナツメ、ナツメグ、ナルコユリ、ハイビスカス、バオバブ、パクチョイ、朴の葉、パタ・デ・ヴァカ、バックホーン・ブランデイン、パッションフラワー(花)、ハナビラタケ、ハニーブッシュ、パフィア、ハヤトウリ、パラナッツ、ピカオプレト、ヒース、ヒソップ、ヒバマタ、ヒロシマナ、枇杷(葉)、フェイジョアジャロ、フェイジョア プレト、フェイジョア ロキシンホ、フェンネル(種子)、フェンネル(葉)、ブナシメジ、ブラックベリー(葉)、プランタゴ・オバタ、プリムローズ、ブルーグリーンアルジー、ブルーベリー、プルーン、ペドラ・ウメ・カ、ベニノキ、紅花、ペパーミント、ホップ、マカ、マキベリー、マタタビ、マッシュルーム、松葉、マテ、マリーゴールド、マロー、ムイラプアマ、紫イペ、ムーレイン、メキャベツ、メヒジキ、メンジツ、モリンガ、ヤロウ(花)、ヤロウ(葉)、ユーカリ、ヨモギ、ラカンカ、ラズベリー(葉)、ラベンダー、ラングワート、リーフレタス、リュウガン(果実)、リンデン、ルイボス、レイシ、レッドクローバー、レッドポピー、レディズマントル、レモングラス、レモンタイム、レモンバーベナ、レモンバーム、レモンマートル、ローズヒップ、ローズマリー、ローレル、ワイルドストロベリー(葉)などが挙げられる。このような食用植物の加工品としては、食用植物の乾燥物、食用植物由来の酵素を含むエキス、又は、食用植物を発酵して得られた植物酵素エキスなどが挙げられる。
【0020】
酵素を含む食品として、穀物麹、植物由来酵素、及び食用生薬からなる群より選択されることが好ましい。穀物麹は、1種類の穀物(例えば、白米又は玄米など)又は複数種の穀物(例えば、白米、大麦、玄米、赤米、粟、ヒエ、キビ、タカキビ、及び黒米など)を麹(例えば、黒麹、赤麹、黄麹、白麹など)にて製麹して得られたものであり、その製造方法は当業者にとって既知である。植物由来酵素の植物は特に限定されず、上記の穀物、野菜・キノコ・海藻、果物、ナッツ、それら以外の食用植物などのいずれであってもよく、またこれらの複数種由来のものであってもよい。植物由来酵素は、植物由来酵素エキスであってよく、植物由来酵素エキスは一般的に知られている方法によって製造すればよく、例えば、複数の植物原料を一定に比率で混合し、自然発酵・熟成させることで得ることができる。エキスは、乾燥粉末であることが好ましい。
【0021】
酵素を含む食品は栄養補助食品、機能性食品など、所定の機能を有する食品であることが好ましい。
【0022】
本実施形態の殺菌方法に用いられる食品の形態として、固形、半固形、液体のいずれであってもよく、取り扱い易い観点から、固形又は半固形であることが好ましく、固形としては、粉末、顆粒、粒状、塊状などが挙げられ、半固形としてはゼリー状食品、ジャムなどが挙げられる。
【0023】
本実施形態の殺菌方法において、超高圧処理工程によって、食品に含まれる一般細菌は殆ど死滅し、好ましくは一般細菌数(生菌数)が300CFU以下/gとなり、より好ましくは大腸菌群が陰性である。一般細菌数及び大腸菌群の試験は、食品衛生法の規格に準じた方法、例えば、標準寒天平板培養法、BGLG法で測定することができる。
【0024】
超高圧処理によって、食品の形態によって体積が小さくなる場合がある。また、食感なども変化する場合がある。例えば、高圧処理した生卵は、生卵のままであるが、これをゆで卵とした際、超高圧処理していない卵に比べて、黄身がなめらかでこしがある食感に変わり、指で押し潰しても崩れない。したがって、本発明の殺菌方法に用いられる食品は、これらの変化が許容される食品であることが好ましい。また、本発明の殺菌方法によって、変色、変性及び香味の消失は、加熱に比べて低減できるので、変性・変色などの理由で加熱殺菌に適さない食品も本発明の殺菌方法に適している。
【0025】
以下、本発明を実施例に基づいてより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例0026】
実施例1 寿穀麹超高圧殺菌
寿穀麹(バイオジェニック)は、白米、大麦、赤米、玄米、粟、キビ、黒米、タカキビ、ヒエの9種類の穀物と、白麹菌、黒麹菌、黄麹菌とを含み、アミラーゼ、プロテアーゼを含むものである。表1に示すような高圧処理条件((1)~(4))で、寿穀麹を高圧処理した。(1)~(3)においては、食品用高圧特機(株式会社IHI製)を用い、(4)においては、高圧処理装置L2-200/3(越後製菓株式会社製)を用いた。比較として、オートクレーブSX-500(株式会社トミー精工)にて殺菌)を行った。
【0027】
酵素力価については、(1)においては旧国税庁所定分析法、(2)~(4)のプロテアーゼ活性のみ発色合成基質分析法にて分析した。
旧国税庁所定分析法:
α-アミラーゼ活性:試料を採取し、滅菌水で希釈して、10倍段階希釈試料液を調製した。澱粉溶液2mlを試験管にとり、40℃で5分間余熱した。試料液0.1mlを加えて反応を開始し、反応液中よりその0.1mlずつをピペットで経時的に(0.5分あるいは1分おき)に、予めヨウ素溶液10mlをいれた試験管にとり、よく混合して、生じた色を25℃に保ちながら、厚さ10mmのセルを通して670nmd比色し、透過率を測定した。比色の際の対照液には、水2mlに10倍段階希釈試料液0.1mlを混ぜたものから0.1mlを取り出し、10mlのヨウ素溶液に加えたものを用いた。所定の計算式によって、α-アミラーゼ活性を求めた。
酸性プロテアーゼ活性:試料を採取し、滅菌水で希釈して、10倍段階希釈試料液を調製した。カゼイン溶液1.5mlにpH3.0のマツキルベイン緩衝液1.0mlを加え、40℃に余熱した。これに10倍段階希釈試料液0.5mlを加え、40℃で60分間反応させた後、TCA溶液3mlを加えて反応を停止させ沈澱をろ過した。そのろ液1mlに炭酸ナトリウム溶液5mlとフェノール試薬1mlを加えて40℃で30分間の発色を行い、660nmの吸光度を測定した。別の対照として10倍段階希釈試料液をTCA溶液の添加直前に加えて、上記と同様な操作を行い吸光度を測定した。試験液と対照液との吸光度の差を求め、検量線により生成チロシン量を求めた。所定の計算式によって、酸性プロテアーゼ活性を求めた。
【0028】
一般生菌数は標準寒天培地法(抗真菌剤無添加)、大腸菌群はBGLG法で分析した。発色合成基質分析法:株式会社ペプチド研究所の酸性プロテアーゼ測定キットを用いて、使用説明書とおりに測定、分析した。
標準寒天培地法:試料を採取し、滅菌水で希釈して、10倍段階希釈試料液を調製した。標準寒天培地を用い、35.0±1.0℃で48±3時間培養し、培地に形成したすべての集落(コロニー)を数え、その数を一般細菌数とした。生菌数は、集落数×希釈倍数であった。
BGLG法:試料を採取して、滅菌水で希釈し、10倍段階希釈試料液を調製した。10倍段階希釈試料液をBGLBブイヨンに接種し、35±1℃のインキュベーターで48±3時間培養した。培養48時間後にガスの発生が認められなければ「大腸菌群陰性」とした。
【0029】
【0030】
分析結果を表1に示す。表1から、超高圧処理した寿穀麹は、殺菌され、かつ、その酵素活性も維持されたことが分かった。一方、オートクレーブで加熱処理した寿穀麹は、殺菌できたものの、その酵素活性を失った。また、高圧処理前後で含水率はほぼ変わらなかった。