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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057371
(43)【公開日】2024-04-24
(54)【発明の名称】斜視検査器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/08 20060101AFI20240417BHJP
   A61B 3/113 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
A61B3/08
A61B3/113
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164068
(22)【出願日】2022-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】399086263
【氏名又は名称】学校法人帝京大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 翔
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA16
4C316FC04
4C316FY05
(57)【要約】
【課題】眼位ずれの程度を簡単に、かつ、リニアに定量できる斜視検査器具を提供する。
【解決手段】斜視検査器具1は、視線が通る覗き窓部2を備える斜視検査器具1であって、覗き窓部2は、多数の平行溝9を一面に有する一対の第1フレネルプリズム6、7を備え、一対の第1フレネルプリズム6、7は、一面を対向させた状態で、一対の第1フレネルプリズム6、7の各基底が互いに反対を向く初期状態から、各基底の向きが一致する一致状態に向けて、相対回転可能に支持される。
【選択図】図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
視線が通る覗き窓部を備える斜視検査器具であって、
前記覗き窓部は、多数の平行溝を一面に有する一対の第1フレネルプリズムを備え、
前記一対の第1フレネルプリズムは、一面を対向させた状態で、前記一対の第1フレネルプリズムの各基底が互いに反対を向く初期状態から、前記各基底の向きが一致する一致状態に向けて、相対回転可能に支持される、
斜視検査器具。
【請求項2】
前記一対の第1フレネルプリズムを相対回転させる一対の第1ギアと、
前記一対の第1ギアに噛み合う第1ピニオンギアと、
前記第1ピニオンギアに回転力を付与する第1操作部と、を備える、
請求項1に記載の斜視検査器具。
【請求項3】
前記第1操作部は、前記覗き窓部を支持する握り部に配置される、
請求項2に記載の斜視検査器具。
【請求項4】
前記第1操作部は、前記握り部の軸と直交する方向に回転操作される、
請求項3に記載の斜視検査器具。
【請求項5】
前記覗き窓部は、多数の平行溝を一面に有する一対の第2フレネルプリズムを備え、
前記一対の第2フレネルプリズムは、一面を対向させた状態で、前記一対の第2フレネルプリズムの各基底が互いに反対を向く初期状態から、前記各基底の向きが一致する一致状態に向けて、相対回転可能に支持され、
前記一対の第1フレネルプリズムと前記一対の第2フレネルプリズムとは、初期状態における前記第1フレネルプリズムの前記平行溝と、初期状態における前記第2フレネルプリズムの前記平行溝とが直交するように設置される、
請求項1に記載の斜視検査器具。
【請求項6】
前記一対の第2フレネルプリズムは、前記覗き窓部から取り外し可能である、
請求項5に記載の斜視検査器具。
【請求項7】
前記一対の第2フレネルプリズムを相対回転させる一対の第2ギアと、
前記一対の第2ギアに噛み合う第2ピニオンギアと、
前記第2ピニオンギアに回転力を付与する第2操作部と、を備える、
請求項5に記載の斜視検査器具。
【請求項8】
前記第2操作部は、前記覗き窓部を支持する握り部に配置される、
請求項7に記載の斜視検査器具。
【請求項9】
前記第2操作部は、前記握り部の軸方向に回転操作される、
請求項8に記載の斜視検査器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリズムを用いることにより、眼位ずれの程度を定量する斜視検査器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、眼位ずれの程度を定量するため、視線が通る覗き窓部にプリズムを組み込んだ斜視検査器具が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平2-114007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載のような斜視検査器具には、覗き窓部にブロックプリズムが組み込まれる器具がある。しかしながら、この種の斜視検査器具は、覗き窓部にブロックプリズムを組み込んでいるために覗き窓部の厚さが厚く、しかも、覗き窓部の口径が小さいために眼位ずれを定量する際の取り扱いが難しく、眼位ずれの程度を簡単に定量できないという課題がある。また、特許文献1記載のような斜視検査器具は、眼位ずれの程度をリニアに定量できないという課題がある。
本発明は、眼位ずれの程度を簡単に、かつ、リニアに定量できる斜視検査器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、視線が通る覗き窓部を備える斜視検査器具であって、前記覗き窓部は、多数の平行溝を一面に有する一対の第1フレネルプリズムを備え、前記一対の第1フレネルプリズムは、一面を対向させた状態で、前記一対の第1フレネルプリズムの各基底が互いに反対を向く初期状態から、前記各基底の向きが一致する一致状態に向けて、相対回転可能に支持される、斜視検査器具である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、眼位ずれの程度を簡単に、かつ、リニアに定量できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1A】斜視検査器具の斜視図である。
図1B】斜視検査器具の平面図である。
図1C】斜視検査器具の側面図である。
図1D】斜視検査器具の端面図である。
図1E】斜視検査器具の端面図である。
図2A】斜視の説明図である。
図2B】斜視の説明図である。
図2C】斜視の説明図である。
図3】一対の第1フレネルプリズムの回転機構を示す図である。
図4A図1BのIV-IV線断面図である。
図4B】一対の第1フレネルプリズムが90°分ずつ回転した場合の図1BのIV-IV線断面図である。
図5図1Bの拡大図である。
図6】斜視検査器具の斜視図である。
図7】斜視検査器具の分解斜視図である。
図8】斜視検査器具の平面図である。
図9】一対の第2フレネルプリズムの回転機構を示す図である。
図10A図8のX-X線断面図である。
図10B】一対の第2フレネルプリズムが90°分ずつ回転した場合の図8のX-X線断面図である。
図11】第3実施形態に係わる斜視検査器具の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
[第1実施の形態]
図1A図1Eは、第1実施形態に係わる斜視検査器具1を示す図である。
図1Aは斜視検査器具1の斜視図であり、図1Bは同平面図であり、図1Cは同側面図であり、図1D及び図1Eは同端面図である。
【0009】
斜視検査器具1は、眼位ずれの程度を定量する器具である。以下、眼位ずれを適宜に「斜視」という。斜視検査器具1は、覗き窓部2と握り部3を備える。斜視検査器具1は、一対のケース4、5を備える。一対のケース4、5の覗き窓部2の内側には、一対の第1フレネルプリズム6、7が収容される。一対の第1フレネルプリズム6、7は、一対のケース4、5に収容されることで、一対のケース4、5に支持される。覗き窓部2は、斜視検査器具1により検査される被検査者の視線が通る部位である。一対のケース4、5の握り部3の内側には、一対の第1フレネルプリズム6、7を相対回転操作する第1操作部8が収容される。
【0010】
図2A図2Cは、斜視の説明図である。
斜視には、水平斜視や、上下斜視等がある。通常は、図2Aに示すように、左眼ELの視線F1及び右眼ERの視線F2が、目視対象として示した星印STに向かう。しかしながら、斜視がある場合、例えば図2Bに示すように視線F1が星印STに向かわず、複視が起こる。斜視を中和するには、例えば図2Cに示すようにプリズムPZを配置して、視線F1を星印STに向けさせる。
【0011】
斜視検査器具1の説明に戻り、斜視検査器具1は、図2Cに示す斜視の中和に要するプリズムPZのパワー、すなわち眼位ずれの程度を定量する。斜視検査器具1は、水平斜視における眼位ずれの程度を定量する。
【0012】
一対の第1フレネルプリズム6、7は、無色透明の樹脂製円板である。一対の第1フレネルプリズム6、7は、一面がのこぎり状に形成されており、図1A及び図1Bに示すように一面に多数の平行溝9を備える。なお、各図では、第1フレネルプリズム6、7の各々が8本の平行溝9を備える場合を図示しているが、これは説明便宜のための本数であり、第1フレネルプリズム6、7の各々はさらに多くの平行溝9を一面に備える。各図では、第1フレネルプリズム6が備える平行溝9を実線で示していて、第1フレネルプリズム7が備える平行溝9を破線で示している。
【0013】
図3は、一対の第1フレネルプリズム6、7の回転機構10を示す図である。
一対の第1フレネルプリズム6、7は、それぞれの一面を対向させた状態で、一対のケース4、5の覗き窓部2の内側に収容される。一対の第1フレネルプリズム6、7は、夫々の外周部に円環部材11を備える。一対の円環部材11の対向する面には、円環状の第1ラックギア12(第1ギア)が形成されている。
【0014】
回転機構10は、一対の第1ラックギア12に挟まれて、第1ラックギア12のそれぞれに噛み合う第1ピニオンギア13を備えている。第1ピニオンギア13の回転軸14には、第1ピニオンギア13に回転力を付与する第1操作部8が取付けられる。なお、回転機構10は、第1ピニオンギア13の回転軸14の軸方向と、握り部3の軸3Aの軸方向とが一致した状態で、一対のケース4、5の内側に収容される。
【0015】
第1操作部8は、握り部3の軸3Aと直交する方向Xに回転操作される。第1操作部8が図1Bにおいて右方向に回転すると、第1ピニオンギア13が図3において時計回りに回転し、この第1ピニオンギア13の回転に伴って、第1フレネルプリズム6は矢印X2方向に回転し、第1フレネルプリズム7は矢印X1方向に回転する。第1操作部8が図1Bにおいて左方向に回転すると、第1ピニオンギア13が図3において反時計回りに回転し、この第1ピニオンギア13の回転に伴って、反対の方向、即ち、第1フレネルプリズム6は矢印X1方向に回転し、第1フレネルプリズム7は矢印X2方向に回転する。
【0016】
図4Aは、図1BのIV-IV線断面図である。
第1フレネルプリズム6は、基底6Aの各々が同じ方向を向いているプリズムである。第1フレネルプリズム7についても同様である。一対の第1フレネルプリズム6、7は、図4Aに示すように、第1フレネルプリズム6の基底6Aと、第1フレネルプリズム7の基底7Aとが互いに反対を向く初期状態で、覗き窓部2に対し配置される。初期状態では、視線F3が一方の第1フレネルプリズム6で屈折し、第1フレネルプリズム7によって第1フレネルプリズム6での視線F3の屈折が打ち消される。
【0017】
図4Bは、一対の第1フレネルプリズム6、7が90°分ずつ回転した場合の図1BのIV-IV線断面図である。
一対の第1フレネルプリズム6、7が相対回転を開始し、90°分ずつ回転すると、図4Bに示すように、各基底6A、7Aの向きが一致する。図4Bでは、第1操作部8が図1Bにおいて右方向に回転した場合を例示しているため、各基底6A、7Aが図4Bにおいて右方を向く。なお、第1操作部8が図1Bにおいて左方向に回転した場合、各基底6A、7Aは図4Bにおいて左方に向くことになる。この各基底6A、7Aの向きが一致する一致状態では、視線F4が第1フレネルプリズム6で屈折し、さらに第1フレネルプリズム7において屈折する。
【0018】
図5は、図1Bの拡大図である。図5に示すように、一方の第1フレネルプリズム6には矢印15が付され、覗き窓部2には、眼位ずれの程度を示す表示部16が設けられている。表示部16は、眼位ずれの程度を示す目盛りSを有している。目盛りSは、覗き窓部2において環状に付されている。目盛りSは、細かく分割して付されている。一対の第1フレネルプリズム6、7が回転すると、矢印15が一体に回転し、一対の第1フレネルプリズム6、7の回転角度に対応して、矢印15が目盛りSを指し示す。図4Aに示す初期状態では、矢印15が目盛りS1を指し示し、図4Bに示されるような一致状態では、矢印15が目盛りS2又は目盛りS3を指し示す。
【0019】
斜視の検査にあたっては、医師などの検査者が握り部3を握り、覗き窓部2を被検査者の左右何れか一方の目に宛てる。そして、検査者は、被検査者に覗き窓部2を通じて目視対象を目視させ、斜視検査器具1によって眼位ずれの程度を定量する。初期状態において眼位ずれがないと、斜視の中和が不要である。一方、初期状態において眼位ずれがある場合、斜視の中和が必要となる。検査者は、第1操作部8を回転させることで、一対の第1フレネルプリズム7、8を初期状態から一致状態に向かってゆっくりと相対回転させ、複視が生じない時点、もしくは各眼の遮蔽時の整復運動が生じなくなった時点で相対回転を停止させる。この時点で、矢印15が指し示す目盛りSが眼位ずれの程度を表す。検査者は、矢印15が指す目盛りSを確認するだけで、被検査者の眼位ずれの程度を簡単に検査できる。なお、斜視の治療では、斜視検査器具1が示す眼位ずれの程度に応じたプリズムを製作し、これを眼鏡に組み込む。
【0020】
以上、説明したように、斜視検査器具1は、視線が通る覗き窓部2を備える。覗き窓部2は、多数の平行溝9を一面に有する一対の第1フレネルプリズム6、7を備える。一対の第1フレネルプリズム6、7は、一面を対向させた状態で、一対の第1フレネルプリズム6、7の各基底6A、7Aが互いに反対を向く初期状態から、各基底6A、7Aの向きが一致する一致状態に向けて、相対回転可能に支持される。
【0021】
これによれば、覗き窓部2に、一対の第1フレネルプリズム6、7を配置したため、ブロックプリズムを配置したものと比べて、覗き窓部2の厚さが薄くでき、且つ、覗き窓部2の口径を大きくできる。そのため、眼位ずれの程度を定量する際の斜視検査器具1の取り扱いが簡単となり、眼位ずれの程度を簡単に定量できる。また、一対の第1フレネルプリズム6、7が相対回転可能であるため、被検査者の視線をリニアに屈折させることができ、眼位ずれの程度をリニアに検査できる。よって、斜視検査器具1は、眼位ずれの程度を簡単に、かつ、リニアに定量できる。
【0022】
斜視検査器具1は、一対の第1フレネルプリズム6、7を相対回転させる一対の第1ラックギア12と、一対の第1ラックギア12に噛み合う第1ピニオンギア13と、第1ピニオンギア13に回転力を付与する第1操作部8と、を備える。
【0023】
これによれば、第1操作部8を操作することで一対の第1フレネルプリズム6、7を相対回転させることができるため、眼位ずれの程度をより簡単に定量できる。
【0024】
第1操作部8は、覗き窓部2を支持する握り部3に配置される。
【0025】
これによれば、斜視検査器具1を持つ手によって、一対の第1フレネルプリズム6、7を相対回転させることができるため、眼位ずれの程度をより簡単に定量できる。
【0026】
第1操作部8は、握り部3の軸3Aと直交する方向に回転操作される。
【0027】
これによれば、被検査者の視線を移動させたい方向に沿って、握り部3を握った手の指を動かすことができるため、眼位ずれの程度をより簡単に定量できる。
【0028】
[第2実施の形態]
第2実施形態の斜視検査器具17は、第1実施形態の斜視検査器具1と、斜視検査器具1と異なる斜視検査器具18とを備え、斜視検査器具1に対して斜視検査器具18が取り外し可能に組み合わされる。
【0029】
図6は、第2実施形態に係わる斜視検査器具17の斜視図である。図7は、第2実施形態に係わる斜視検査器具17の分解斜視図である。図8は、斜視検査器具18の平面図である。
斜視検査器具17は、覗き窓部19と握り部20とを備える。覗き窓部19は、斜視検査器具1に対して斜視検査器具18が取り付けられている場合、斜視検査器具1の覗き窓部2と、斜視検査器具18の覗き窓部21とを含む。一方で、覗き窓部19は、斜視検査器具1に対して斜視検査器具18が取り付けられていない場合、斜視検査器具1の覗き窓部2を含む。握り部20は、斜視検査器具1に対して斜視検査器具18が取り付けられている場合、斜視検査器具1の握り部3と、斜視検査器具18の握り部22とを含む。一方で、握り部20は、斜視検査器具1に対して斜視検査器具18が取り付けられていない場合、斜視検査器具1の握り部3を含む。
【0030】
斜視検査器具18は、一対のケース23、24を備える。一対のケース23、24の覗き窓部21の内側には、一対の第2フレネルプリズム25、26が収容される。覗き窓部21は、被検査者の視線が通る部位である。ケース23の握り部22と、一対のケース23、24の覗き窓21とが連結する付近には、一対の第2フレネルプリズム25、26を相対回転操作する第2操作部27が設置される。
【0031】
一対の第2フレネルプリズム25、26は、無色透明の樹脂製円板である。一対の第2フレネルプリズム25、26は、一面がのこぎり状に形成されており、図7に示すように、一面に多数の平行溝28を備える。なお、各図では、第2フレネルプリズム25、26の各々が8本の平行溝28を備える場合を図示しているが、これは説明便宜のための本数であり、第2フレネルプリズム25、26の各々はさらに多くの平行溝28を一面に備える。各図では、第2フレネルプリズム25が備える平行溝28は実線で示していて、第2フレネルプリズム26が備える平行溝28は破線で示している。
【0032】
図9は、一対の第2フレネルプリズム25、26の回転機構29を示す図である。
一対の第2フレネルプリズム25、26は、それぞれの一面を対向させた状態で、一対のケース23、24の覗き窓部21の内側に収容される。一対の第2フレネルプリズム25、26は、それぞれの外周部に円環部材30を備える。一対の円環部材30の対向する面には、円環状の第2ラックギア31(第2ギア)が形成されている。
【0033】
回転機構29は、一対の第2ラックギア31に挟まれて、第2ラックギア31の各々に噛み合う第2ピニオンギア32を備える。第2ピニオンギア32の回転軸33には、第2ピニオンギア32に回転力を付与する第2操作部27が取付けられる。
【0034】
第2操作部27は、回転機構29が一対のケース23、24に収容された状態において、回転軸33が延びる方向と直交する方向Yに回転操作される。第2操作部26が図8において右上方に回転すると、第2ピニオンギア31が図9において時計回りに回転し、この第2ピニオンギア32の回転に伴って、第2フレネルプリズム25は矢印Y2方向に回転し、第2フレネルプリズム26は矢印Y1方向に回転する。第2操作部26が図8において左下方に回転すると、第2ピニオンギア32が図9において反時計回りに回転し、この第2ピニオンギア32の回転に伴って、第2フレネルプリズム25は矢印Y1方向に回転し、第2フレネルプリズム26は矢印Y2方向に回転する。
【0035】
図10Aは、図8のX-X線断面図である。
第2フレネルプリズム25は、基底25Aの各々が同じ方向を向いているプリズムである。第2フレネルプリズム26についても同様である。一対の第2フレネルプリズム25、26は、図10Aに示すように、第2フレネルプリズム25の基底25Aと、第2フレネルプリズム26の基底26Aとが互いに反対を向く初期状態で、覗き窓部21に対して設置される。初期状態では、図10Aで示すように、視線F5が一方の第2フレネルプリズム25で屈折し、第2フレネルプリズム26によって第2フレネルプリズム25での視線F3の屈折が打ち消される。
【0036】
図10Bは、一対の第2フレネルプリズム25、26が90°分ずつ回転した場合の図8のX-X線断面図である。
一対の第2フレネルプリズム25、26が互いに相対回転を開始し、90°分ずつ回転すると、図10Bに示すように、各基底25A、26Aの向きが一致する。図10Bでは、第2操作部27が図8の図中左下方に回転した場合を例示しているため、各基底25A、26Aが図10Bにおいて下方を向く。なお、第2操作部27が図8の図中右上方に回転した場合、各基底25A、26Aは図10Bとは反対の方向に向くことになる。この各基底25A、26Aの向きが一致する一致状態では、図10Bで示すように、視線F6が第2フレネルプリズム25で屈折し、さらに第2フレネルプリズム26において屈折する。
【0037】
図8に示すように、第1実施形態と同様に、第2フレネルプリズム25には矢印34が付され、覗き窓部21には、眼位ずれの程度を示す目盛りSAが付されている。目盛りSAは、覗き窓部21において環状に付されている。目盛りSAは、目盛りSと同様に、細かく分割して付されている。なお、斜視検査器具1に対して斜視検査器具18が取り付けられた状態においては、目盛りSAは、ケース5の外側に位置する。一対の第2フレネルプリズム25、26が回転すると、矢印34が一体に回転し、一対の第2フレネルプリズム25、26の回転角度に対応して、矢印34は目盛りSAを指し示す。図10Aに示す初期状態では、矢印34が目盛りSA1を指し示し、図10Bに示されるような一致状態では、矢印34が目盛りSA2又は目盛りSA3を指し示す。
【0038】
斜視検査器具18は、初期状態における平行溝9と初期状態における平行溝28とが直交するように、斜視検査器具1に取り付けられる。取り付け状態においては、握り部3の延びる方向と握り部22の延びる方向とが一致し、且つ、第1操作部8が握り部22に設けられた収容部35に収容される。斜視検査器具1は、水平方向に視線を屈折させることができる。斜視検査器具18は、平行溝28が平行溝9に対して直交するように取り付けられるため、上下方向に視線を屈折させることができる。そのため、斜視検査器具17は、水平斜視における眼位ずれの程度と、上下斜視における眼位ずれの程度とを同時定量できる。
【0039】
斜視の検査にあたっては、検査者が握り部20を握り、覗き窓部19を被検査者の左右何れか一方の目に宛てる。そして、検査者は、被検査者に覗き窓部19を通じて目視対象を目視させ、眼位ずれの程度を定量する。検査者は、第1操作部8及び第2操作部27を回転させることで、一対の第1フレネルプリズム7、8及び一対の第2フレネルプリズム25、26を初期状態から一致状態に向かってゆっくりと相対回転させ、複視が生じない時点、もしくは各眼の遮蔽時の整復運動が生じなくなった時点で両者の相対回転を停止させる。この時点で、矢印15が指し示す目盛りSと矢印34が指し示す目盛りSAとを確認するだけで、検査者は、水平斜視のみならず上下斜視についても被検査者の眼位ずれの程度を簡単に検査できる。
【0040】
以上、説明したように、斜視検査器具17は、覗き窓部19を備える。覗き窓部19は、一対の第1フレネルプリズム6、7と、多数の平行溝87を一面に有する一対の第2フレネルプリズム25、26を備える。一対の第2フレネルプリズム25、26は、一面を対向させた状態で、一対の第2フレネルプリズム25、26の各基底25A、26Aが互いに反対を向く初期状態から、各基底25A、26Aの向きが一致する一致状態に向けて、相対回転可能に支持される。一対の第1フレネルプリズム6、7と一対の第2フレネルプリズムと25、26は、初期状態における第1フレネルプリズム6、7の平行溝9と、初期状態における第2フレネルプリズム25、26の平行溝28とが直交するように設置される。
【0041】
これによれば、上述した第1実施形態の斜視検査器具1と同様の効果を奏する。また、斜視検査器具17によれば、初期状態における平行溝9と初期状態における平行溝28とが直交するように、斜視検査器具1に取り付けられる。斜視検査器具1は、水平方向に視線を屈折させることができる。斜視検査器具17は、平行溝28が平行溝9に対して直交するように取り付けられるため、視線を水平方向と上下方向とに屈折させることができる。よって、斜視検査器具17は、水平斜視における眼位ずれの程度と上下斜視における眼位ずれの程度とを同時定量できる。
【0042】
一対の第2フレネルプリズム25、26は、覗き窓部19から取り外し可能である。
【0043】
これによれば、水平斜視、及び上下斜視の同時定量を要しない場合に、斜視検査器具17の重量を減らすことができるため、斜視検査器具17の取り扱いがより簡単となる。よって、検査者の利便性を向上できる。
【0044】
斜視検査器具17は、一対の第2フレネルプリズム25、26を相対回転させる一対の第2ラックギア31と、一対の第2ラックギア31に噛み合う第2ピニオンギア32と、第2ピニオンギア32に回転力を付与する第2操作部27と、を備える。
【0045】
これによれば、第2操作部27を操作することで一対の第2フレネルプリズム25、26を相対回転させることができるため、水平斜視における眼位ずれの程度と上下斜視における眼位ずれの程度とを、より簡単に定量できる。
【0046】
[第3実施形態]
第3実施形態の斜視検査器具36は、第2実施形態の斜視検査器具17と比較し、第2操作部27が握り部3に設置されている。
【0047】
図11は、第3実施形態に係わる斜視検査器具36の分解斜視図である。
斜視検査器具34は、斜視検査器具1Aと斜視検査器具18Aとを備える。斜視検査器具1Aは、第1実施形態の斜視検査器具1と比較し、握り部3に第2操作部27を備えることが異なり、その他の構成については第1実施形態の斜視検査器具1と同じである。斜視検査器具18Aは、第2実施形態の斜視検査器具18と比較し、第2操作部27を備えていないこと、握り部22を備えていないこと、及び斜視検査器具1Aに対して取り外し不可であることが異なり、その他の構成については第2実施形態の斜視検査器具18と同じである。
【0048】
本実施形態の第2操作部27は、握り部3の内側に収容される。第2操作部27は、図示は省略したが、例えば、ベベルギアやウォームギアなどを含む動力伝達機構を介して、第2ピニオンギア32に回転力を付加する。第2操作部27は、握り部3の軸3Aの軸方向に回転操作される。第2操作部27が覗き窓部19の方向に回転すると、第2フレネルプリズム25は矢印Y2方向に回転し、第2フレネルプリズム26は矢印Y1方向に回転する。第2操作部27が覗き窓部19から離れる方向に回転すると、第2フレネルプリズム25は矢印Y1方向に回転し、第2フレネルプリズム26は矢印Y2方向に回転する。
【0049】
以上、説明したように、本実施形態の第2操作部27は、握り部3に設置される。
【0050】
これによれば、斜視検査器具1を持つ手によって、一対の第1フレネルプリズム6、7と一対の第2フレネルプリズム25、26を相対回転させることができるため、水平斜視と上下斜視との同時定量を可能とすると共に、斜視をより簡単に定量できる。
【0051】
第2操作部27は、握り部3の軸3A方向に回転操作される。
【0052】
これによれば、被検査者の視線を移動させたい方向に沿って、握り部3を握った手の指を動かすことができるため、水平斜視及び上下斜視における眼位ずれの程度をより簡単に定量できる。
【0053】
上述した各実施形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形および応用が可能である。
【0054】
上述した各実施形態では、第1操作部8が握り部3に設けられる構成であるが、第1操作部8は、握り部3に設けられていなくてもよい。第1操作部8、第2操作部27と同様に、覗き窓部2と握り部3とが連結する付近に設けられていても良い。
【0055】
上述した実施形態は、第1フレネルプリズム6、7を手動で相対回転させる構成である。他の実施形態では、第1フレネルプリズム6、7を電動で回転させてもよい。この場合、斜視検査器具1、1Aは、バッテリと、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサを有する制御装置と、第1ピニオンギア13を回転させるモータと、モータの回転方向を指定するボタンとを有する。そして、この他の実施形態の斜視検査器具1は、検査者によって操作されたボタンに応じて制御装置がモータを回転させ、電動で第1フレネルプリズム6、7を相対回転させる。
また、上述した実施形態は、第2フレネルプリズム25、26を手動で相対回転させる構成である。他の実施形態では、第1フレネルプリズム6、7と同様、第2フレネルプリズム25、26も電動で回転させてもよい。
【0056】
なお、上述の実施形態は、本発明における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【符号の説明】
【0057】
1、1A、17、18、18A、36 斜視検査器具
2、19、21 覗き窓部
3 握り部
3A 軸
6、7 第1フレネルプリズム
6A 基底
7A 基底
8 第1操作部
9 平行溝
12 第1ラックギア(第1ギア)
13 第1ピニオンギア
25、26 第2フレネルプリズム
25A 基底
26A 基底
27 第2操作部
28 平行溝
31 第2ラックギア(第2ギア)
32 第2ピニオンギア
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11