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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057377
(43)【公開日】2024-04-24
(54)【発明の名称】スクロール型圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04C 18/02 20060101AFI20240417BHJP
   F04C 28/28 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
F04C18/02 311X
F04C18/02 311Q
F04C28/28 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164074
(22)【出願日】2022-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】弁理士法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】小林 裕之
(72)【発明者】
【氏名】本田 和也
(72)【発明者】
【氏名】橋本 友次
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 洋介
(72)【発明者】
【氏名】管原 彬人
(72)【発明者】
【氏名】武藤 圭史朗
【テーマコード(参考)】
3H039
3H129
【Fターム(参考)】
3H039AA05
3H039AA13
3H039BB02
3H039BB07
3H039BB08
3H039BB28
3H039CC04
3H039CC26
3H129AA02
3H129AA15
3H129AA21
3H129AB01
3H129BB21
3H129BB32
3H129BB42
3H129CC04
3H129CC08
3H129CC23
(57)【要約】
【課題】小型化を図りつつ流体の圧縮容量を増大させることが可能であるとともに耐久性、圧縮効率及び静粛性に優れ、かつ、製造コストの低廉化が可能なスクロール型圧縮機を提供する。
【解決手段】本発明のスクロール型圧縮機は、第1スクロール30が第1端板31及び第1渦巻体33を有しており、第2スクロール40が第2端板41及び第2渦巻体43を有している。第1端板31は端板側段差部31Cを有しており、第2渦巻体43は渦巻体側段差部43Cを有している。また、第2端板41にはバイパス孔48が形成されている。バイパス孔48は、第1圧縮室50Aと吐出領域55とを連通する。バイパス孔48と第2圧縮室50Bとは、第1圧縮室50Aとバイパス孔48とが連通し、かつ、端板側段差部31Cと渦巻体側段差部43Cとを介して第1圧縮室50Aと第2圧縮室50Bとが連通することにより、第1圧縮室50Aを介して連通する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出領域が形成されたハウジングと、
前記ハウジング内に設けられた第1スクロールと、
前記ハウジング内に設けられて前記第1スクロールと対向し、前記第1スクロールとの間に流体を圧縮する第1圧縮室及び第2圧縮室を形成する第2スクロールとを備え、
前記第1スクロールは、第1端板と、前記第1端板と一体をなし、前記第2スクロールに向かって渦巻状に突出する第1渦巻体とを有し、
前記第2スクロールは、第2端板と、前記第2端板と一体をなし、前記第1スクロールに向かって渦巻状に突出する第2渦巻体とを有し、
前記第1端板及び前記第2端板の少なくとも一方は、対向する前記第1端板又は前記第2端板に向けて膨出する膨出部と、前記膨出部の外周側に位置する非膨出部と、前記膨出部及び前記非膨出部に接続する端板側段差部とを有し、
前記膨出部、前記非膨出部及び前記端板側段差部と対向する前記第1端板の前記第1渦巻体、又は、前記膨出部、前記非膨出部及び前記端板側段差部と対向する前記第2端板の前記第2渦巻体は、渦巻本体部と、前記膨出部との干渉を回避可能に前記渦巻本体部よりも短く突出する渦巻短部と、前記渦巻本体部及び前記渦巻短部に接続する渦巻体側段差部とを有するスクロール型圧縮機であって、
前記第1圧縮室と前記第2圧縮室とは、前記第1スクロールと前記第2スクロールとの位相によって前記端板側段差部と前記渦巻体側段差部とを介して連通可能であり、
前記第1端板又は前記第2端板には、前記吐出領域に連通する吐出口と、前記吐出口とは異なる位置に配置されて前記吐出領域に連通する1つのバイパス孔とが形成され、
前記バイパス孔は、前記第1圧縮室と前記吐出領域とを連通し、
前記バイパス孔と前記第2圧縮室とは、前記第1圧縮室と前記バイパス孔とが連通し、かつ、前記端板側段差部と前記渦巻体側段差部とを介して前記第1圧縮室と前記第2圧縮室とが連通することにより、前記第1圧縮室を介して連通し、
前記第2圧縮室は、前記バイパス孔と連通する一方で前記吐出口と非連通となる状態と、前記バイパス孔と連通するとともに前記吐出口と連通する状態とを有することを特徴とするスクロール型圧縮機。
【請求項2】
前記第1圧縮室と前記第2圧縮室とは、前記第2圧縮室が前記バイパス孔と連通した後に互いに合流することにより、前記吐出口と連通する1つの合流圧縮室を形成する請求項1記載のスクロール型圧縮機。
【請求項3】
前記膨出部は、前記第1端板が有する第1膨出部と、前記第2端板が有する第2膨出部とからなり、
前記非膨出部は、前記第1端板が有する第1非膨出部と、前記第2端板が有する第2非膨出部とからなり、
前記端板側段差部は、前記第1端板が有して前記第1膨出部及び前記第1非膨出部に接続する第1端板側段差部と、前記第2端板が有して前記第2膨出部及び前記第2非膨出部に接続する第2端板側段差部とからなり、
前記渦巻本体部は、前記第1渦巻体が有する第1渦巻本体部と、前記第2渦巻体が有する第2渦巻本体部とからなり、
前記渦巻短部は、前記第1渦巻体が有し、前記第2膨出部との干渉を回避可能に前記第1渦巻本体部よりも短く突出する第1渦巻短部と、前記第2渦巻体が有し、前記第1膨出部との干渉を回避可能に前記第2渦巻本体部よりも短く突出する第2渦巻短部とからなり、
前記渦巻体側段差部は、前記第1渦巻体が有して前記第1渦巻本体部及び前記第1渦巻短部に接続する第1渦巻体側段差部と、前記第2渦巻体が有して前記第2渦巻本体部及び前記第2渦巻短部に接続する第2渦巻体側段差部とからなり、
前記第1端板側段差部と前記第2渦巻体側段差部とは、前記位相によって離隔又は当接し、
前記第2端板側段差部と前記第1渦巻体側段差部とは、前記位相によって離隔又は当接する請求項1又は2記載のスクロール型圧縮機。
【請求項4】
前記第1端板側段差部と前記第2渦巻体側段差部とが離隔する前記位相と、前記第2端板側段差部と前記第1渦巻体側段差部とが離隔する前記位相とは等しく、
前記第1端板側段差部と前記第2渦巻体側段差部とが当接する前記位相と、前記第2端板側段差部と前記第1渦巻体側段差部とが当接する前記位相とは等しい請求項3記載のスクロール型圧縮機。
【請求項5】
前記第1端板側段差部と前記第2渦巻体側段差部とが離隔する前記位相と、前記第2端板側段差部と前記第1渦巻体側段差部とが離隔する前記位相とは異なり、
前記第1端板側段差部と前記第2渦巻体側段差部とが当接する前記位相と、前記第2端板側段差部と前記第1渦巻体側段差部とが当接する前記位相とは異なる請求項3記載のスクロール型圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスクロール型圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来のスクロール型圧縮機が開示されている。このスクロール型圧縮機は、ハウジングと、第1スクロールと、第2スクロールとを備えている。ハウジングには、吸入室と吐出室とが形成されている。第1スクロールはハウジング内に固定されている。第2スクロールはハウジング内に設けられており、第1スクロールと対向している。第2スクロールは、駆動軸心周りで第1スクロールに対して公転することにより、第1スクロールとの間に流体を圧縮する第1圧縮室及び第2圧縮室を形成している。
【0003】
第1スクロールは、第1端板と第1渦巻体とを有している。第1端板は、駆動軸心と交差して延びており、円板状をなしている。第1渦巻体は第1端板と一体をなしており、駆動軸心方向で第2スクロールに向かって渦巻状に突出している。第2スクロールは、第2端板と第2渦巻体とを有している。第2端板は、駆動軸心と交差して延びており、円板状をなしている。第2渦巻体は第2端板と一体をなしており、駆動軸心方向で第1スクロールに向かって渦巻状に突出している。
【0004】
第1端板は、第1膨出部と第1非膨出部と第1端板側段差部とを有している。第1膨出部は第1渦巻体に沿いつつ第2端板に向かって膨出している。第1非膨出部は第1膨出部の外周側に位置している。第1非膨出部は、第1膨出部と異なり膨出しておらず第1膨出部よりも板厚が薄くなっている。第1端板側段差部は、第1膨出部及び第1非膨出部に接続している。一方、第2端板は、第2膨出部と第2非膨出部と第2端板側段差部とを有している。第2膨出部は第2渦巻体に沿いつつ第1端板に向かって膨出している。第2非膨出部は第2膨出部の外周側に位置している。第2非膨出部は、第2膨出部と異なり膨出しておらず第2膨出部よりも板厚が薄くなっている。第2端板側段差部は、第2膨出部及び第2非膨出部に接続している。
【0005】
また、第1渦巻体は、第1渦巻本体部と第1渦巻短部と第1渦巻体側段差部とを有している。第1渦巻短部は、第2膨出部との干渉を回避可能に第1渦巻本体部よりも短く突出している。第1渦巻体側段差部は、第1渦巻本体部及び第1渦巻短部に接続している。一方、第2渦巻体は、第2渦巻本体部と第2渦巻短部と第2渦巻体側段差部とを有している。第2渦巻短部は、第1膨出部との干渉を回避可能に第2渦巻本体部よりも短く突出している。第2渦巻体側段差部は、第2渦巻本体部及び第2渦巻短部に接続している。
【0006】
このスクロール型圧縮機では、第1スクロールと第2スクロールとを組み付けることにより、第1膨出部と第2膨出部とが駆動軸心方向で対向し、第1非膨出部と第2非膨出部とが駆動軸心方向で対向する。また、第1端板側段差部と第2渦巻体側段差部とが第1渦巻体及び第2渦巻体の渦巻方向で対向し、第2端板側段差部と第1渦巻体側段差部とが第1渦巻体及び第2渦巻体の渦巻方向で対向する。
【0007】
さらに、このスクロール型圧縮機では、第1スクロールの第1端板に吐出口、第1バイパス孔及び第2バイパス孔が形成されている。吐出口は吐出室に連通している。第1バイパス孔及び第2バイパス孔はそれぞれ吸入室に連通している。また、第1バイパス孔は第1圧縮室と連通可能であり、第2バイパス孔は第2圧縮室と連通可能である。
【0008】
このスクロール型圧縮機では、第1端板の第1膨出部及び第2端板の第2膨出部等により、第1、2スクロールの大型化を抑制しつつ、流体の圧縮容量を増大させることが可能となっている。また、第1、2スクロールの大型化を抑制することにより、このスクロール型圧縮機では、第1、2渦巻体の剛性の低下も防止されている。
【0009】
そして、このスクロール型圧縮機では、作動時に第1圧縮室と第1バイパス孔とが連通することにより、第1バイパス孔を通じて第1圧縮室と吸入室とが連通する。同様に、第2圧縮室と第2バイパス孔とが連通することにより、第2バイパス孔を通じて第2圧縮室と吸入室とが連通する。このため、第1、2バイパス孔を通じて第1、2圧縮室内の流体の一部がそれぞれ吸入室に流通する。こうして、このスクロール型圧縮機では、第1、2圧縮室内で圧縮される流体の流量を調整することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005-61295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この種のスクロール型圧縮機では、作動時における液体スラッギングによる第1、2圧縮室の異常昇圧を防止することが求められるとともに、低圧縮比運転時における第1、2圧縮室内での流体の過圧縮の防止が求められる。そこで、第1バイパス孔を通じて第1圧縮室と吐出領域とを連通させて第1圧縮室内の冷媒の一部を吐出領域に流通させるとともに、第2バイパス孔を通じて第2圧縮室と吐出領域とを連通させて第2圧縮室内の冷媒の一部を吐出領域に流通させることが行われ得る。
【0012】
しかし、第1スクロールの第1端板又は第2スクロールの第2端板に第1バイパス孔及び第2バイパス孔を形成することにより、第1スクロールや第2スクロール、ひいてはスクロール型圧縮機の製造が複雑となる。このため、製造コストの高騰化が不可避となる。また、例えば第1端板に第1、2バイパス孔を形成した場合、第1端板の設計の自由度が低下してしまう他、第1、2バイパス孔の形成によって第1端板の剛性の確保が難しくなる。このため、作動時に第1端板と第2渦巻体との間から流体の漏れが生じ易くなる。さらに、第1、2バイパス孔を流体が流通することに起因する脈動も生じ易くなる。
【0013】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、小型化を図りつつ流体の圧縮容量を増大させることが可能であるとともに耐久性、圧縮効率及び静粛性に優れ、かつ、製造コストの低廉化が可能なスクロール型圧縮機を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のスクロール型圧縮機は、吐出領域が形成されたハウジングと、
前記ハウジング内に設けられた第1スクロールと、
前記ハウジング内に設けられて前記第1スクロールと対向し、前記第1スクロールとの間に流体を圧縮する第1圧縮室及び第2圧縮室を形成する第2スクロールとを備え、
前記第1スクロールは、第1端板と、前記第1端板と一体をなし、前記第2スクロールに向かって渦巻状に突出する第1渦巻体とを有し、
前記第2スクロールは、第2端板と、前記第2端板と一体をなし、前記第1スクロールに向かって渦巻状に突出する第2渦巻体とを有し、
前記第1端板及び前記第2端板の少なくとも一方は、対向する前記第1端板又は前記第2端板に向けて膨出する膨出部と、前記膨出部の外周側に位置する非膨出部と、前記膨出部及び前記非膨出部に接続する端板側段差部とを有し、
前記膨出部、前記非膨出部及び前記端板側段差部と対向する前記第1端板の前記第1渦巻体、又は、前記膨出部、前記非膨出部及び前記端板側段差部と対向する前記第2端板の前記第2渦巻体は、渦巻本体部と、前記膨出部との干渉を回避可能に前記渦巻本体部よりも短く突出する渦巻短部と、前記渦巻本体部及び前記渦巻短部に接続する渦巻体側段差部とを有するスクロール型圧縮機であって、
前記第1圧縮室と前記第2圧縮室とは、前記第1スクロールと前記第2スクロールとの位相によって前記端板側段差部と前記渦巻体側段差部とを介して連通可能であり、
前記第1端板又は前記第2端板には、前記吐出領域に連通する吐出口と、前記吐出口とは異なる位置に配置されて前記吐出領域に連通する1つのバイパス孔とが形成され、
前記バイパス孔は、前記第1圧縮室と前記吐出領域とを連通し、
前記バイパス孔と前記第2圧縮室とは、前記第1圧縮室と前記バイパス孔とが連通し、かつ、前記端板側段差部と前記渦巻体側段差部とを介して前記第1圧縮室と前記第2圧縮室とが連通することにより、前記第1圧縮室を介して連通し、
前記第2圧縮室は、前記バイパス孔と連通する一方で前記吐出口と非連通となる状態と、前記バイパス孔と連通するとともに前記吐出口と連通する状態とを有することを特徴とする。
【0015】
本発明のスクロール圧縮機では、例えば第1スクロールの第1端板が膨出部、非膨出部及び端板側段差部を有する場合、第2スクロールの第2渦巻体は渦巻本体部、渦巻短部及び渦巻体側段差部を有する。これにより、このスクロール圧縮機では、第1、2スクロールの大型化を抑制しつつ流体の圧縮容量を増大化させることができる。そして、第1、2スクロールの大型化を抑制することにより、このスクロール圧縮機では小型化を実現できる。また、第1、2スクロールの大型化を抑制することにより、第1渦巻体及び第2渦巻体の剛性も高くできる。なお、第2端板が膨出部、非膨出部及び端板側段差部を有し、第1渦巻体が渦巻本体部、渦巻短部及び渦巻体側段差部を有する場合も同様である。
【0016】
そして、このスクロール圧縮機では、第1端板又は第2端板のいずれかに対してバイパス孔が1つ形成される。このバイパス孔は、作動時に第1圧縮室と連通することにより、第1圧縮室と吐出領域とを連通させる。これにより、このスクロール圧縮機では、第1圧縮室内の流体の一部を吐出領域に流通させることにより、第1圧縮室における異常昇圧を防止できる他、低圧縮比運転時における第1圧縮室内での流体の過圧縮を防止できる。
【0017】
ここで、このスクロール圧縮機では、第1圧縮室と第2圧縮室とが第1スクロールと第2スクロールとの位相によって端板側段差部と渦巻体側段差部とを介して連通可能である。そして、このスクロール圧縮機では、第1圧縮室とバイパス孔とが連通し、かつ、端板側段差部と渦巻体側段差部とを介して第1圧縮室と第2圧縮室とが連通することにより、第2圧縮室とバイパス孔とが第1圧縮室を介して連通する。このため、第2圧縮室内の流体の一部についても、端板側段差部と渦巻体側段差部との隙間から第1圧縮室を経ることにより、バイパス孔から吐出領域に流通させることができる。この結果、このスクロール圧縮機では、第2圧縮室における異常昇圧及び流体の過圧縮についても防止できる。
【0018】
このように、このスクロール圧縮機では、作動時の異常昇圧や流体の過圧縮を防止するに当たって、第1端板又は第2端板に対してバイパス孔を1つ形成すれば足りるため、製造を容易化できるとともに、第1端板及び第2端板の設計の自由度を高くできる。また、複数のバイパス孔が形成される場合に比べて、第1端板及び第2端板の剛性も確保し易く、作動時に第1端板及び第2端板の変形も生じ難い。これにより、このスクロール圧縮機では、第1端板と第2渦巻体との間及び第2端板と第1渦巻体との間からの流体の漏れを好適に抑制できる。さらに、複数のバイパス孔が形成されている場合に比べて、このスクロール圧縮機では、バイパス孔を流体が流通することに起因する脈動も抑制できる。
【0019】
したがって、本発明のスクロール圧縮機は、小型化を図りつつ流体の圧縮容量を増大させることが可能であるとともに耐久性、圧縮効率及び静粛性に優れ、かつ、製造コストの低廉化が可能である。
【0020】
第1圧縮室と第2圧縮室とは、第2圧縮室がバイパス孔と連通した後に互いに合流することにより、吐出口と連通する1つの合流圧縮室を形成することが好ましい。
【0021】
この場合には、第1、2圧縮室でそれぞれ圧縮された冷媒を吐出口から吐出領域に好適に吐出させることができる。なお、端板側段差部と渦巻体側段差部とは、合流圧縮室が形成されるよりも前に互いに当接しても良く、合流圧縮室が形成された後に互いに当接しても良い。
【0022】
膨出部は、第1端板が有する第1膨出部と、第2端板が有する第2膨出部とからなり得る。非膨出部は、第1端板が有する第1非膨出部と、第2端板が有する第2非膨出部とからなり得る。端板側段差部は、第1端板が有して第1膨出部及び第1非膨出部に接続する第1端板側段差部と、第2端板が有して第2膨出部及び第2非膨出部に接続する第2端板側段差部とからなり得る。渦巻本体部は、第1渦巻体が有する第1渦巻本体部と、第2渦巻体が有する第2渦巻本体部とからなり得る。渦巻短部は、第1渦巻体が有し、第2膨出部との干渉を回避可能に第1渦巻本体部よりも短く突出する第1渦巻短部と、第2渦巻体が有し、第1膨出部との干渉を回避可能に第2渦巻本体部よりも短く突出する第2渦巻短部とからなり得る。渦巻体側段差部は、第1渦巻体が有して第1渦巻本体部及び第1渦巻短部に接続する第1渦巻体側段差部と、第2渦巻体が有して第2渦巻本体部及び第2渦巻短部に接続する第2渦巻体側段差部とからなり得る。また、第1端板側段差部と第2渦巻体側段差部とは、位相によって離隔又は当接し得る。そして、第2端板側段差部と第1渦巻体側段差部とは、位相によって離隔又は当接することが好ましい。
【0023】
この場合には、第1、2スクロールの大型化を抑制しつつ、第1、2圧縮室における冷媒の圧縮容量をより増大させることができる。また、第1、2渦巻体の剛性を高くすることができる。
【0024】
また、第1端板側段差部と第2渦巻体側段差部とが離隔する位相と、第2端板側段差部と第1渦巻体側段差部とが離隔する位相とは等しく、第1端板側段差部と第2渦巻体側段差部とが当接する位相と、第2端板側段差部と第1渦巻体側段差部とが当接する位相とは等しいことが好ましい。この場合には、第1スクロール及び第2スクロールの設計を容易化することができる。
【0025】
また、第1端板側段差部と第2渦巻体側段差部とが離隔する位相と、第2端板側段差部と第1渦巻体側段差部とが離隔する位相とは異なり、第1端板側段差部と第2渦巻体側段差部とが当接する位相と、第2端板側段差部と第1渦巻体側段差部とが当接する位相とは異なることも好ましい。この場合には、作動時に第1圧縮室と第2圧縮室とが連通する期間を長くすることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明のスクロール圧縮機は、小型化を図りつつ流体の圧縮容量を増大させることが可能であるとともに耐久性、圧縮効率及び静粛性に優れ、かつ、製造コストの低廉化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、実施例1のスクロール型圧縮機の断面図である。
図2図2は、実施例1のスクロール型圧縮機に係り、第1スクロールを前方側から見た正面図である。
図3図3は、実施例1のスクロール型圧縮機に係り、第2スクロールを後方側から見た背面図である。
図4図4は、実施例1のスクロール型圧縮機に係り、作動時における第1スクロール、第2スクロール、第1圧縮室及び第2圧縮室等を前方側から見た模式図である。
図5図5は、実施例1のスクロール型圧縮機に係り、作動時における第1スクロール、第2スクロール、第1圧縮室及び第2圧縮室等を前方側から見た模式図である。
図6図6は、実施例1のスクロール型圧縮機に係り、作動時における第1スクロール、第2スクロール、第1圧縮室及び第2圧縮室等を前方側から見た模式図である。
図7図7は、実施例1のスクロール型圧縮機に係り、作動時における第1スクロール、第2スクロール、第1圧縮室及び第2圧縮室等を前方側から見た模式図である。
図8図8は、実施例1のスクロール型圧縮機に係り、作動時における第1スクロール、第2スクロール及び合流圧縮室等を前方側から見た模式図である。
図9図9は、実施例2のスクロール型圧縮機に係り、第1スクロールを前方側から見た正面図である。
図10図10は、実施例2のスクロール型圧縮機に係り、第2スクロールを後方側から見た背面図である。
図11図11は、実施例2のスクロール型圧縮機に係り、作動時における第1スクロール、第2スクロール、第1圧縮室及び第2圧縮室等を前方側から見た模式図である。
図12図12は、実施例2のスクロール型圧縮機に係り、作動時における第1スクロール、第2スクロール、第1圧縮室及び第2圧縮室等を前方側から見た模式図である。
図13図13は、実施例2のスクロール型圧縮機に係り、作動時における第1スクロール、第2スクロール、第1圧縮室及び第2圧縮室等を前方側から見た模式図である。
図14図14は、実施例2のスクロール型圧縮機に係り、作動時における第1スクロール、第2スクロール、第1圧縮室及び第2圧縮室等を前方側から見た模式図である。
図15図15は、実施例2のスクロール型圧縮機に係り、作動時における第1スクロール、第2スクロール、第1圧縮室及び第2圧縮室等を前方側から見た模式図である。
図16図16は、実施例2のスクロール型圧縮機に係り、作動時における第1スクロール、第2スクロール及び合流圧縮室等を前方側から見た模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を具体化した実施例1、2を図面を参照しつつ説明する。実施例1、2のスクロール型圧縮機(以下、単に圧縮機という。)は、具体的には両回転式スクロール型圧縮機である。実施例1、2の圧縮機は、図示しない車両に搭載されており、車両の空調装置を構成している。
【0029】
(実施例1)
図1に示すように、実施例1の圧縮機は、ハウジング60、電動モータ10、第1スクロール30、第2スクロール40及び従動機構20を備えている。
【0030】
本実施例では、図1に示す実線矢印によって、圧縮機の前後方向を規定している。なお、前後方向は説明の便宜のための一例であり、圧縮機は搭載される車両に応じて、自己の姿勢を適宜変更可能である。
【0031】
ハウジング60は、ハウジング本体61とカバー65とによって構成されている。ハウジング本体61は、外周壁62及び底壁63を有する有底筒状部材である。外周壁62は、第1駆動軸心R1を中心とする円筒状をなしている。第1駆動軸心R1は前後方向と平行である。また、外周壁62は内周面62Bを有している。底壁63は、ハウジング本体61の後端に位置している。底壁63は、第1駆動軸心R1と直交して略円形平板状に延びている。
【0032】
底壁63の外周縁は、外周壁62の後端に接続している。底壁63の内面中央には、第1駆動軸心R1を中心とする円筒状の軸支部64が凸設されている。軸支部64には、ベアリング12の外輪が嵌入している。
【0033】
カバー65は、ハウジング本体61の前方に配置されている。カバー65は、第1駆動軸心R1と直交して略円形平板状に延びている。カバー65は、その外周縁がハウジング本体61の外周壁62の前端に当接する状態で、図示しないボルトによって外周壁62に締結されている。これにより、カバー65は、ハウジング本体61を前方から塞いでいる。こうして、ハウジング本体61内に吸入室61Aが形成されている。
【0034】
カバー65の内面中央には、第2駆動軸心R2を中心とする円筒状の軸支部66が凸設されている。第2駆動軸心R2は、本発明における「駆動軸心」の一例である。第2駆動軸心R2は、第1駆動軸心R1に対して偏心しつつ第1駆動軸心R1と平行に延びている。つまり、第2駆動軸心R2も前後方向に平行である。軸支部66には、ニードルベアリング14の外輪が嵌入している。
【0035】
カバー65には、吸入連絡口67及び吐出連絡口68が形成されている。吸入連絡口67は、カバー65における外周縁と軸支部66との間に位置し、第1、2駆動軸心R1、R2と平行な方向においてカバー65を貫通している。吸入連絡口67は、吸入室61Aと圧縮機の外部とを連通している。吸入連絡口67には、配管が接続されている。これにより、吸入室61Aには、配管を通じて蒸発器を経た低温低圧の冷媒ガスが吸入される。冷媒ガスは、本発明における「流体」の一例である。
【0036】
吐出連絡口68は、カバー65の中央に位置しており、第1、2駆動軸心R1、R2と平行な方向においてカバー65を貫通している。吐出連絡口68は、後述する吐出室55と連通している。吐出連絡口68には、配管が接続されており、吐出室55に吐出された冷媒ガスを凝縮器に向けて流通させる。なお、配管、蒸発器及び凝縮器の図示は省略する。
【0037】
電動モータ10は吸入室61A内に収容されている。これにより、吸入室61Aは、電動モータ10を収容するモータ室を兼ねている。電動モータ10は、ステータ17及びロータ11によって構成されている。
【0038】
ステータ17は、第1駆動軸心R1を中心とする円筒状であり、巻き線18を有している。ステータ17は、ハウジング本体61の外周壁62の内周面62Bに嵌入することにより、ハウジング本体61、ひいてはハウジング60に固定されている。
【0039】
ロータ11は、第1駆動軸心R1周りで円筒状をなしており、ステータ17内に配置されている。詳細な図示を省略するものの、ロータ11は、ステータ17に対応する複数個の永久磁石と、各永久磁石を固定する積層鋼板とで構成されている。
【0040】
第1スクロール30はアルミニウム合金製である。図1及び図2に示すように、第1スクロール30は、第1端板31、第1渦巻体33及び駆動周壁35を有している。
【0041】
第1端板31は、第1駆動軸心R1及び第2駆動軸心R2と直交して略円板状に延びている。図1に示すように、第1端板31は、前面311と、前面311の反対側に位置する後面312とを有している。後面312の中央には、底壁63に向かって突出する第1ボス34が形成されている。第1ボス34は、第1駆動軸心R1を中心とする円筒状をなしている。また、第1端板31には、前面311から後面312まで貫通する吸入口37が形成されている。
【0042】
第1渦巻体33は第1端板31と一体をなしており、第1端板31の前面311から前方、すなわち第2スクロール40に向かって第1、2駆動軸心R1、R2と平行に延びている。図2に示すように、第1渦巻体33は、第1端板31の中心側を渦巻中心としつつ、渦巻中心から外周に向かって渦巻状に延びている。
【0043】
図1に示すように、駆動周壁35は、第1端板31と一体をなしており、第1端板31の外周縁から前方に向かって第1、2駆動軸心R1、R2と平行に延びている。図2に示すように、駆動周壁35は、第1駆動軸心R1を中心とする円筒状をなしており、第1渦巻体33の外側に位置している。駆動周壁35は、第1渦巻体33における最も渦巻の外周端と接続している。また、駆動周壁35の前端には、4つの固定孔35Aが形成されている。
【0044】
図1及び図3に示す第2スクロール40についても、第1スクロール30と同様にアルミニウム合金製である。第2スクロール40は、第2端板41及び第2渦巻体43を有している。
【0045】
第2端板41は、第1、2駆動軸心R1、R2と直交して略円板状に延びている。第2端板41は、第1端板31よりも大径に形成されている。図1に示すように、第2端板41は、前面411と、前面411の反対側に位置する後面412とを有している。前面411の中央には、カバー65に向かって突出する第2ボス44が形成されている。第2ボス44は、第2駆動軸心R2を中心とする円筒状をなしている。
【0046】
第2端板41には、吐出口47と、バイパス孔48と、4つの取付凹部49とが形成されている。吐出口47は、第2端板41において、第2ボス44内となる個所に配置されており、前面411から後面412まで貫通している。
【0047】
バイパス孔48についても、第2端板41において、第2ボス44内となる個所に配置されており、前面411から後面412まで貫通している。ここで、バイパス孔48は、吐出口47とは異なる位置に配置されており、バイパス孔48と吐出口47とは接続していない。また、バイパス孔48は吐出口47よりも小径に形成されている。
【0048】
図2に示すように、各取付凹部49は、第2端板41において第2渦巻体43よりも外周側となる個所に配置されている。各取付凹部49は、後面412に凹設されている。
【0049】
図1に示すように、第2渦巻体43は第2端板41と一体をなしており、第2端板41の後面412から後方、すなわち第1スクロール30に向かって第1、2駆動軸心R1、R2と平行に延びている。図3に示すように、第2渦巻体43は、第2端板41の中心側を渦巻中心としつつ、渦巻中心から外周に向かって渦巻状に延びている。
【0050】
また、この圧縮機では、図2に示すように、第1端板31が第1膨出部31A、第1非膨出部31B及び第1端板側段差部31Cを有しており、第1渦巻体33が第1渦巻本体部33A、第1渦巻短部33B及び第1渦巻体側段差部33Cを有している。そして、図3に示すように、第2端板41が第2膨出部41A、第2非膨出部41B及び第2端板側段差部41Cを有しており、第2渦巻体43が第2渦巻本体部43A、第2渦巻短部43B及び第2渦巻体側段差部43Cを有している。
【0051】
図1及び図2に示すように、第1膨出部31Aは、第1端板31の前面311における中央側、すなわち、第1渦巻体33における渦巻中心の近傍に位置しており、前面311から第1駆動軸心R1方向及び第2駆動軸心R2方向で第2端板41に向かって前方に膨出している。また、第1膨出部31Aは、第1渦巻体33における渦巻中心の近傍から第1渦巻体33に沿いつつ前面311の外周側に向かって渦巻状に延びている。このように、第2端板41に向かって膨出していることから、第1端板31において第1膨出部31Aは板厚が厚く、肉厚となっている。
【0052】
第1非膨出部31Bは、第1膨出部31Aの外周側に位置している。第1膨出部31Aと異なり、第1非膨出部31Bは、第2端板41に向かって膨出してはいない。このため、第1端板31において、第1非膨出部31Bは、第1膨出部31Aよりも板厚が薄くなっている。換言すれば、第1非膨出部31Bは、第1端板31において、第1膨出部31Aを除いた部分である。
【0053】
図2に示すように、第1端板側段差部31Cは、第1膨出部31Aと第1非膨出部31Bとの境界に位置しており、第1膨出部31A及び第1非膨出部31Bに接続している。これにより、第1端板側段差部31Cは、第1非膨出部31Bから第1膨出部31Aに向かって立ち上がる壁状をなしている。また、平面視において、第1端板側段差部31Cは第1非膨出部31B側から第1膨出部31A側に向かって凸となる円弧状に湾曲している。
【0054】
第1渦巻本体部33Aは、第1渦巻体33において第1渦巻短部33Bを除いた部分である。つまり、第1渦巻本体部33Aは、第1渦巻体33における外周端を含んでいる。このため、第1渦巻体33は、第1渦巻本体部33Aにおいて駆動周壁35と接続している。
【0055】
第1渦巻短部33Bは、第1渦巻体33における渦巻中心から渦巻の外周側に向かって延びている。第1渦巻短部33Bにおける第2端板41に向かって突出する長さ、つまり第1、2駆動軸心R1、R2方向に突出する長さは、第1渦巻本体部33Aが第1、2駆動軸心R1、R2方向に突出する長さに比べて短くなっている。
【0056】
換言すれば、第1渦巻本体部33Aは、第1渦巻体33において、第2端板41に向かって最も長く突出する部分である。このため、第1渦巻短部33Bは、第1渦巻体33において第2端板41に向かって最も長く延びる部分よりも第1、2駆動軸心R1、R2方向に凹んでいる。
【0057】
第1渦巻体側段差部33Cは、第1渦巻本体部33Aと第1渦巻短部33Bとの境界に位置しており、第1渦巻本体部33A及び第1渦巻短部33Bに接続している。これにより、第1渦巻体側段差部33Cは、第1渦巻短部33Bから第1渦巻本体部33Aに向かって立ち上がる壁状をなしている。また、平面視において、第1渦巻体側段差部33Cは第1渦巻本体部33A側から第1渦巻短部33B側に向かって凸となる円弧状に湾曲している。
【0058】
図1及び図3に示すように、第2膨出部41Aは、第2端板41の後面412における中央側、すなわち、第2渦巻体43における渦巻中心の近傍に位置しており、後面412から第1、2駆動軸心R1、R2方向で第1端板31に向かって後方に膨出している。また、第2膨出部41Aは、第2渦巻体43における渦巻中心の近傍から第2渦巻体43に沿いつつ後面412の外周側に向かって渦巻状に延びている。このように、第1端板31に向かって膨出していることから、第2端板41において第2膨出部41Aは板厚が厚く、肉厚となっている。そして、上述の吐出口47及びバイパス孔48は、それぞれ第2膨出部41Aに形成されている。
【0059】
第2非膨出部41Bは、第2膨出部41Aの外周側に位置している。第2膨出部41Aと異なり、第2非膨出部41Bは、第1端板31に向かって膨出してはいない。このため、第2端板41において、第2非膨出部41Bは、第2膨出部41Aよりも板厚が薄くなっている。換言すれば、第2非膨出部41Bは、第2端板41において、第2膨出部41Aを除いた部分である。そして、上述の各取付凹部49は、それぞれ第2非膨出部41Bに形成されている。
【0060】
第2端板側段差部41Cは、第2膨出部41Aと第2非膨出部41Bとの境界に位置しており、第2膨出部41A及び第2非膨出部41Bに接続している。これにより、第2端板側段差部41Cは、第2非膨出部41Bから第2膨出部41Aに向かって立ち上がる壁状をなしている。また、第2端板側段差部41Cは、第2非膨出部41B側から第2膨出部41A側に向かって凸となる円弧状に湾曲している。
【0061】
第2渦巻本体部43Aは、第2渦巻体43において第2渦巻短部43Bを除いた部分である。第2渦巻短部43Bは、第2渦巻体43における渦巻中心から渦巻の外周側に向かって延びている。第2渦巻短部43Bにおける第1端板31に向かって突出する長さ、つまり第1、2駆動軸心R1、R2方向に突出する長さは、第2渦巻本体部43Aが第1、2駆動軸心R1、R2方向に突出する長さに比べて短くなっている。
【0062】
換言すれば、第2渦巻本体部43Aは、第2渦巻体43において、第1端板31に向かって最も長く突出する部分である。このため、第2渦巻短部43Bは、第2渦巻体43において第1端板31に向かって最も長く延びる部分よりも第1、2駆動軸心R1、R2方向に凹んでいる。
【0063】
第2渦巻体側段差部43Cは、第2渦巻本体部43Aと第2渦巻短部43Bとの境界に位置しており、第2渦巻本体部43A及び第2渦巻短部43Bに接続している。これにより、第2渦巻体側段差部43Cは、第2渦巻短部43Bから第2渦巻本体部43Aに向かって立ち上がる壁状をなしている。また、第2端板側段差部43Cは、平面視において、第2渦巻本体部43A側から第2渦巻短部43B側に向かって凸となる円弧状に湾曲している。
【0064】
図1に示すように、第2端板41の前面411において第2ボス44内となる個所には、吐出リード弁57及びリテーナ58が固定ピン59によって固定されている。詳細な図示を省略するものの、吐出リード弁57は、弾性変形によって吐出口47を開閉可能な第1弁部と、弾性変形によってバイパス孔48を開閉可能な第2弁部とを有している。リテーナ58は、吐出リード弁57の開度を調整可能となっている。
【0065】
従動機構20は、4つの自転阻止ピン21と4つのリング22とで構成されている。ここで、図1では、各自転阻止ピン21及び各リング22について、それぞれ2つを図示している。なお、自転阻止ピン21及びリング22は、それぞれ3つ以上であればその個数は適宜設計可能である。また、各固定孔35A及び各取付凹部49の個数は、自転阻止ピン21及びリング22の個数に対応して形成される。
【0066】
各自転阻止ピン21は、各固定孔35Aにそれぞれ挿通されつつ固定されている。これにより、各自転阻止ピン21は、駆動周壁35よりも前方に突出した状態で駆動周壁35に固定されている。一方、各リング22は、それぞれ各取付凹部49に嵌着されている。
【0067】
この圧縮機では、第1スクロール30及び第2スクロール40が共に吸入室61A内に配置されている。そして、第1スクロール30は、駆動周壁35がロータ11の内周面に固定されることにより、ロータ11に一体化されている。また、第1スクロール30では、第1ボス34にベアリング12の内輪が外嵌している。これにより、第1スクロール30は、第1駆動軸心R1周りで回転可能にハウジング本体61に支持されている。
【0068】
一方、第2スクロール40は、第2渦巻体43を第1スクロール30側に向けた状態で、第1スクロール30の前方に配置されている。これにより、第1端板31の前面311と、第2端板41の後面412とが第1、2駆動軸心R1、R2方向で対向している。そして、第1スクロール30と第2スクロール40とは、駆動周壁35の内側で第1渦巻体33と第2渦巻体43とを噛合させるとともに、各自転阻止ピン21を各リング22内に進入させる。こうして、第1スクロール30と第2スクロール40とが前後方向で組み付けられている。
【0069】
ここで、第1渦巻体33おいて、第1渦巻短部33Bは第1渦巻本体部33Aよりも第1、2駆動軸心R1、R2方向に突出する長さが短い。同様に、第2渦巻体43おいて、第2渦巻短部43Bは第2渦巻本体部43Aよりも第1、2駆動軸心R1、R2方向に突出する長さが短い。このため、第1スクロール30と第2スクロール40とを組付けた際、第1渦巻短部33Bは、第1、2駆動軸心R1、R2方向において第2膨出部41Aと対向しつつも第2膨出部41Aとの干渉を回避している。同様に、第2渦巻短部43Bは、第1膨出部31Aとの干渉を回避している。
【0070】
そして、第2スクロール40では、第2ボス44にニードルベアリング14の内輪が外嵌している。これにより、第2スクロール40は、第2駆動軸心R2周りで回転可能にカバー65に支持されている。このように、第2スクロール40がカバー65に支持されることにより、ハウジング60内には、第2ボス44の内周面に囲まれ、かつカバー65と第2端板41とに挟まれた空間によって、吐出室55が形成されている。吐出室55は本発明における「吐出領域」の一例である。つまり、吐出口47及びバイパス孔48は吐出室55に開口している。
【0071】
また、第1スクロール30と第2スクロール40とが組み付けられることにより、第1、2駆動軸心R1、R2方向において、第1膨出部31Aと第2膨出部41Aとが対向し、第1非膨出部31Bと第2非膨出部41Bとが対向する。さらに、図4に示すように、第1渦巻体33及び第2渦巻体43の渦巻方向において、第1端板側段差部31Cと第2渦巻体側段差部43Cとが対向し、第2端板側段差部41Cと第1渦巻体側段差部33Cとが対向する。そして、第1スクロール30と第2スクロール40とは、双方の間に第1圧縮室50A及び第2圧縮室50Bを形成している。
【0072】
ここで、図4では、説明を容易にするため、吸入口37及び従動機構20の図示を省略しているとともに、第2端板41の一部の図示を省略している。また、図4では、第1圧縮室50A及び第2圧縮室50Bについて、それぞれドットハッチングを付して図示している。さらに、図4では、吐出口47及びバイパス孔48について、形状を誇張して図示しているとともに、第1渦巻体33と重なる個所を破線で図示している。後述する図5図8についても同様である。
【0073】
以上のように構成されたこの圧縮機では、電動モータ10が作動し、ロータ11が回転すれば、吸入室61A内において、第1スクロール30が第1駆動軸心R1周りで回転駆動する。つまり、第1スクロール30とロータ11とは一体で回転駆動する。この際、従動機構20において、各自転阻止ピン21は各リング22の内周面に摺接しつつ各リング22を各自転阻止ピン21の中心周りで相対的に回転させる。こうして、従動機構20は、第2スクロール40に第1スクロール30のトルクを伝達する。
【0074】
その結果、第2スクロール40は、第2駆動軸心R2周りで第1スクロール30及び従動機構20によって回転従動される。この際、従動機構20は、第2スクロール40が自転することを規制する。これにより、第1スクロール30及び第2スクロール40は、その回転駆動及びその回転従動によって第2スクロール40が第1スクロール30に対して第2駆動軸心R2周りで相対的に公転する。
【0075】
このため、第1駆動軸心R1周りで回転駆動する第1スクロール30と、第2駆動軸心R2周りで回転従動する第2スクロール40との位相により、第1端板側段差部31Cと第2渦巻体側段差部43Cとが当接又は離隔し、第2端板側段差部41Cと第1渦巻体側段差部33Cとが当接又は離隔する。
【0076】
ここで、この圧縮機では、作動時に第1端板側段差部31Cと第2渦巻体側段差部43Cとが当接する第1、2スクロール30、40の位相と、第2端板側段差部41Cと第1渦巻体側段差部33Cとが当接する第1、2スクロール30、40の位相とが等しくなるように設計されている。また、作動時に第1端板側段差部31Cと第2渦巻体側段差部43Cとが離隔する第1、2スクロール30、40の位相と、第2端板側段差部41Cと第1渦巻体側段差部33Cとが離隔する第1、2スクロール30、40の位相とが等しくなるように設計されている。こうして、この圧縮機では、第1端板側段差部31Cと第2渦巻体側段差部43Cとが当接している間は、第2端板側段差部41Cと第1渦巻体側段差部33Cとについても当接する。また、第1端板側段差部31Cと第2渦巻体側段差部43Cとが離隔している間は、第2端板側段差部41Cと第1渦巻体側段差部33Cとについても離隔する。
【0077】
そして、この圧縮機では、第2スクロール40が第1スクロール30に対して公転することにより、第1スクロール30及び第2スクロール40は、第1圧縮室50A及び第2圧縮室50Bの容積を変化させる。このため、吸入室61A内の冷媒ガスは、吸入口37によって第1圧縮室50A及び第2圧縮室50Bに吸入され、第1、2圧縮室50A、50Bにおいてそれぞれ圧縮される。そして、第1、2圧縮室50A、50Bで吐出圧力まで圧縮された冷媒ガスは、吐出口47から吐出室55に吐出され、さらに、吐出連絡口68から凝縮器に吐出される。こうして、車両用空調装置による空調が行われる。なお、図8に示すように、この圧縮機では、第1圧縮室50Aと第2圧縮室50Bとは合流することにより、1つの合流圧縮室50Cを形成する。この合流圧縮室50Cに関する詳細は後述する。
【0078】
ここで、この圧縮機では、第1端板31において、第1非膨出部31Bは第2端板41に向かって膨出しておらず、また、第2端板41において、第2非膨出部41Bは第1端板31に向かって膨出していない。このため、第1スクロール30と第2スクロール40とを組み付けた際、第1非膨出部31Bと第2非膨出部41Bとは、第1膨出部31A及び第2膨出部41Aに比べて第1、2駆動軸心R1、R2方向に離隔する。
【0079】
このため、この圧縮機では、第1非膨出部31B及び第2非膨出部41Bの部分、すなわち、第1渦巻体33及び第2渦巻体43における渦巻の外周側において、第1圧縮室50A及び第2圧縮室50Bの容積を大きく確保することができる。これにより、この圧縮機では、第1スクロール30及び第2スクロール40の大径化を抑制しつつも、冷媒の圧縮容量を増大させている。また、この圧縮機において、第1膨出部31A及び第2膨出部41Aは、第1非膨出部31B及び第2非膨出部41Bよりも第1、2駆動軸心R1、R2方向に接近する。これにより、第1膨出部31A及び第2膨出部41Aの部分、すなわち、第1渦巻体33及び第2渦巻体43における渦巻中心側において、第1、2圧縮室50A、50Bの容積を好適に小さくできる。このため、この圧縮機では、第1、2圧縮室50A、50Bにおいて冷媒を好適に圧縮することができる。
【0080】
また、この圧縮機では、第1スクロール30及び第2スクロール40の大径化を抑制できるため、第1渦巻体33及び第2渦巻体43が第1、2駆動軸心R1、R2方向に大型化することを抑制できる。このため、この圧縮機では、第1、2渦巻体33、43の剛性を好適に確保でき、作動時における第1、2渦巻体33、43の歯折れを好適に防止できる。
【0081】
さらに、この圧縮機では、作動時における液体スラッギングによる第1、2圧縮室50A、50Bの異常昇圧を防止できる他、低圧縮比運転時における第1、2圧縮室50A、50B内での冷媒の過圧縮を防止できる。以下、この作用について具体的に説明する。
【0082】
図4に示すように、圧縮機が作動し、第1、2圧縮室50A、50Bは冷媒の圧縮を開始する。ここで、図4に示す第1、2スクロール30、40の位相では、第1端板側段差部31Cと第2渦巻体側段差部43Cとが当接しており、第2端板側段差部41Cと第1渦巻体側段差部33Cとが当接している。このため、第1圧縮室50Aと第2圧縮室50Bとは非連通となっている。また、第1、2駆動軸心R1、R2方向で第1渦巻体33がバイパス孔48の全体に重なっているため、バイパス孔48と第1圧縮室50Aとは非連通となっている。さらに、第1圧縮室50A及び第2圧縮室50Bは、いずれも吐出口47とは非連通となっている。
【0083】
そして、図4に示す状態よりも第1、2スクロール30、40の位相が変化することにより、第1スクロール30及び第2スクロール40は、図5に示す状態に移行する。これにより、第1、2圧縮室50A、50Bの容積が減少し、冷媒の圧縮が進行する。また、第1渦巻体33とバイパス孔48とがずれ始めるため、バイパス孔48の一部が第1圧縮室50Aと連通する。ここで、第1圧縮室50A内の冷媒の圧力が図5に示す状態で既に設定よりも高圧となっており、吐出リード弁57の第2弁部がバイパス孔48を吐出室55に開けば、第1圧縮室50A内の冷媒の一部がバイパス孔48を通じて吐出室55に吐出される。このため、第1圧縮室50A内の冷媒の一部は、吐出口47を経ることなく吐出室55に吐出される。こうして、この圧縮機では、作動時における第1圧縮室50Aの異常昇圧及び第1圧縮室50Aでの冷媒の過圧縮を防止できる。なお、図5に示す第1、2スクロール30、40の位相でも、第1端板側段差部31Cと第2渦巻体側段差部43Cとが当接しており、第2端板側段差部41Cと第1渦巻体側段差部33Cとが当接している。このため、第1圧縮室50Aと第2圧縮室50Bとは、引き続き非連通となっている。
【0084】
また、図5に示す第1、2スクロール30、40の位相においても、第1圧縮室50A及び第2圧縮室50Bは、いずれも吐出口47とは非連通となっている。つまり、図5に示す第1、2スクロール30、40の位相では、第1圧縮室50Aは、バイパス孔48に連通する一方で吐出口47とは非連通の状態であり、第2圧縮室50Bは、バイパス孔48及び吐出口47の両方と非連通の状態である。
【0085】
そして、図5に示す状態よりも第1、2スクロール30、40の位相が変化することにより、第1スクロール30及び第2スクロール40は、図6に示す状態に移行する。この状態でもバイパス孔48は引き続き第1圧縮室50Aと連通する。ここで、図6に示す第1、2スクロール30、40の位相では、第1端板側段差部31Cと第2渦巻体側段差部43Cとが離隔し、第2端板側段差部41Cと第1渦巻体側段差部33Cとが離隔する。このため、第1端板側段差部31Cと第2渦巻体側段差部43Cとの隙間、及び、第2端板側段差部41Cと第1渦巻体側段差部33Cとの隙間を通じて第1圧縮室50Aと第2圧縮室50Bとが連通する。この結果、第2圧縮室50Bとバイパス孔48とは、第1圧縮室50Aを介して連通する。こうして、図6に示す第1、2スクロール30、40の位相では、第2圧縮室50Bについても、第1圧縮室50Aと同様に、バイパス孔48に連通する一方で吐出口47とは非連通の状態となる。
【0086】
これにより、第2圧縮室50B内の冷媒の一部についても、第1端板側段差部31Cと第2渦巻体側段差部43Cとの隙間、第2端板側段差部41Cと第1渦巻体側段差部33Cとの隙間及び第1圧縮室50Aを経ることにより、バイパス孔48から吐出室55に吐出される。こうして、この圧縮機では、作動時における第2圧縮室50Bの異常昇圧及び第2圧縮室50Bでの冷媒の過圧縮についても防止できる。なお、図6に示す状態では、第1圧縮室50Aと第2圧縮室50Bとが連通するものの、第1、2圧縮室50A、50Bの容積は引き続き減少する。このため、第1、2圧縮室50A、50Bでの冷媒の圧縮は引き続き行われる。
【0087】
そして、図6に示す状態よりも第1、2スクロール30、40の位相が変化することにより、第1スクロール30及び第2スクロール40は、図7に示す状態に移行する。ここで、図7に示す状態では、第1渦巻体33における渦巻中心部分と、第2渦巻体43における渦巻中心部分とが離隔し始める。このため、第1圧縮室50Aは、バイパス孔48と連通するだけでなく、吐出口47とも連通し始める。このため、第1圧縮室50Aで圧縮された冷媒は、吐出口47によっても吐出室55に吐出され始める。
【0088】
また、図7に示す第1、2スクロール30、40の位相では、第1端板側段差部31Cと第2渦巻体側段差部43Cとが再び当接し、第2端板側段差部41Cと第1渦巻体側段差部33Cとが再び当接する。しかし、第2圧縮室50Bについても、第1渦巻体33における渦巻中心部分と第2渦巻体43における渦巻中心部分との隙間を通じて、吐出口47及びバイパス孔48と連通する状態にある。このため、第2圧縮室50B内の冷媒も吐出口47及びバイパス孔48を通じて吐出室55に吐出され始める。
【0089】
そして、図7に示す状態よりも第1、2スクロール30、40の位相が変化することにより、第1スクロール30及び第2スクロール40は、図8に示す状態に移行する。これにより、第1渦巻体33における渦巻中心部分と、第2渦巻体43における渦巻中心部分とがより大きく離隔する。このため、第1圧縮室50Aと第2圧縮室50Bとは、第1渦巻体33及び第2渦巻体43の渦巻中心側で互いに合流し、1つの合流圧縮室50Cを形成する。こうして、合流圧縮室50C内の冷媒、つまり、第1圧縮室50A及び第2圧縮室50Bで圧縮された冷媒は、吐出口47及びバイパス孔48から吐出室55に吐出される。
【0090】
ここで、この圧縮機では、合流圧縮室50Cが形成された時点で、第1端板側段差部31Cと第2渦巻体側段差部43Cとは当接しており、第2端板側段差部41Cと第1渦巻体側段差部33Cとについても当接している。より厳密には、この圧縮機では、合流圧縮室50Cが形成されるよりも前に、第1端板側段差部31Cと第2渦巻体側段差部43Cとが当接しており、第2端板側段差部41Cと第1渦巻体側段差部33Cとが当接している。そして、第1スクロール30及び第2スクロール40は、図8に示す状態から再び図4に示す状態に移行する。このため、この圧縮機では、第1、2圧縮室50A、50Bに新たに吸入された冷媒の圧縮を開始する。こうして、この圧縮機において、第2圧縮室50Bとバイパス孔48との連通開始は、第2圧縮室50Bと吐出口47との連通より前となっている。そして、第2圧縮室50Bとバイパス孔48との連通終了は、第2圧縮室50Bと吐出口47との連通以降となっている。
【0091】
このように、この圧縮機では、作動時の異常昇圧や冷媒の過圧縮を防止するに当たって、第2端板41に対してバイパス孔48を1つ形成すれば足りるため、第2スクロール40の製造が容易となっている。また、第2端板41に形成するバイパス孔48を1つとすることにより、この圧縮機では、第2端板41の前面411のスペース効率の向上を含め、第2スクロール40の設計の自由度を高くすることが可能となっている。また、複数のバイパス孔48が第2端板41に形成される場合に比べて、第2端板41の剛性も高くできるため、作動時に第2端板41の変形も生じ難くなっている。これにより、この圧縮機では、第2端板41と第1渦巻体33との間からの冷媒の漏れを好適に抑制することが可能となっている。さらに、複数のバイパス孔48が形成されている場合に比べて、この圧縮機では、バイパス孔48を冷媒が流通することに起因する脈動も抑制されている。
【0092】
したがって、実施例の圧縮機は、小型化を図りつつ冷媒の圧縮容量を増大させることが可能であるとともに耐久性、圧縮効率及び静粛性に優れ、かつ、製造コストの低廉化が可能である。
【0093】
特に、この圧縮機では、第1圧縮室50Aと第2圧縮室50Bとが合流して合流圧縮室50Cを形成する。そして、合流圧縮室50Cは吐出口47及びバイパス孔48と連通する。このため、第1圧縮室50Aで圧縮された冷媒及び第2圧縮室50Bで圧縮された冷媒について、圧力損失を可及的に抑制しつつ、吐出口47から吐出室55に吐出させることが可能となっている。
【0094】
また、この圧縮機では、作動時に第1端板側段差部31Cと第2渦巻体側段差部43Cとが当接する第1、2スクロール30、40の位相と、第2端板側段差部41Cと第1渦巻体側段差部33Cとが当接する第1、2スクロール30、40の位相とが等しい。そして、作動時に第1端板側段差部31Cと第2渦巻体側段差部43Cとが離隔する第1、2スクロール30、40の位相と、第2端板側段差部41Cと第1渦巻体側段差部33Cとが離隔する第1、2スクロール30、40の位相とが等しい。
【0095】
このため、この圧縮機では、第1スクロール30において第1端板側段差部31C及び第1渦巻体側段差部33Cが形成される位置と、第2スクロール40において第2端板側段差部41C及び第2渦巻体側段差部43Cが形成される位置とについて、設計が容易となっている。この点においても、この圧縮機では製造が容易となっている。
【0096】
(実施例2)
実施例2の圧縮機は、第1スクロール30及び第2スクロール40に換えて、図9に示す第1スクロール70と、図9に示す第2スクロール80とを備えている。
【0097】
図9に示すように、第1スクロール70は、第1端板71、第1渦巻体73及び駆動周壁75を有している。これらの第1端板71、第1渦巻体73及び駆動周壁75は、実施例1の圧縮機における第1端板31、第1渦巻体33及び駆動周壁35とほぼ同様の構成である。駆動周壁35には、4つの固定孔75Aが形成されている。実施例1の圧縮機と同様、各固定孔75Aには、それぞれ自転阻止ピン21が挿通されつつ固定される。
【0098】
第1端板71は、第1膨出部71A、第1非膨出部71B及び第1端板側段差部71Cを有している。これらの第1膨出部71A、第1非膨出部71B及び第1端板側段差部71Cは、それぞれ第1膨出部31A、第1非膨出部31B及び第1端板側段差部31Cと同様の構成であるため、詳細な説明を省略する。また、第1端板71には吸入口77が形成されている。
【0099】
第1渦巻体73は、第1渦巻本体部73A、第1渦巻短部73B及び第1渦巻体側段差部73Cを有している。ここで、第1渦巻短部73Bは、第1渦巻短部33Bに比べて、第1渦巻体73の渦巻中心から外周側に向かってより長く形成されている。このため、第1渦巻体73における第1渦巻本体部73Aと第1渦巻短部73Bとの境界、すなわち、第1渦巻体73における第1渦巻体側段差部73Cの位置は、第1渦巻体33における第1渦巻体側段差部33Cの位置に比べて、第1渦巻体73の渦巻中心から外周側により離れた個所となっている。
【0100】
図10に示すように、第2スクロール80は、第2端板81及び第2渦巻体83を有している。これらの第2端板81及び第2渦巻体83は、実施例1の圧縮機における第2端板41及び第2渦巻体43とほぼ同様の構成である。
【0101】
第2端板81は、第2膨出部81A、第2非膨出部81B及び第2端板側段差部81Cを有している。第2膨出部81Aは、上述の第1渦巻短部73Bに対応する形状となっている。つまり、第2膨出部81Aは、第2膨出部41Aに比べて、第2渦巻体83の渦巻中心から外周側に向かってより長く延びるように形成されている。このため、第2端板81における第2端板側段差部81Cの位置は、第2端板41における第2端板側段差部41Cの位置に比べて、第2渦巻体83の渦巻中心から外周側により離れた個所となっている。
【0102】
また、第2膨出部81Aには、吐出口87が形成されている他、1つのバイパス孔88が形成されている。そして、第2非膨出部81Bにおいて、第2渦巻体83よりも外周側となる個所には、4つの取付凹部89が形成されている。これらの吐出口87、バイパス孔88及び各取付凹部89は、吐出口47、バイパス孔48及び各取付凹部49と同様の構成である。各取付凹部49には、実施例1の圧縮機と同様、リング22がそれぞれ嵌着される。
【0103】
第2渦巻体83は、第2渦巻本体部83A、第2渦巻短部83B及び第2渦巻体側段差部83Cを有している。これらの第2渦巻本体部83A、第2渦巻短部83B及び第2渦巻体側段差部83Cは、第2渦巻本体部43A、第2渦巻短部43B及び第2渦巻体側段差部43Cと同様の構成であるため、詳細な説明を省略する。
【0104】
図11に示すように、この圧縮機では、第1スクロール70と第2スクロール80とが組み付けられることにより、第1、2駆動軸心R1、R2方向において、第1膨出部71Aと第2膨出部81Aとが対向し、第1非膨出部71Bと第2非膨出部81Bとが対向する。また、第1渦巻体73及び第2渦巻体83の渦巻方向において、第1端板側段差部71Cと第2渦巻体側段差部83Cとが対向し、第2端板側段差部81Cと第1渦巻体側段差部73Cとが対向する。そして、第1スクロール70と第2スクロール80とは、双方の間に第1圧縮室90A及び第2圧縮室90Bを形成している。第1スクロール70及び第2スクロール80の他の構成を含め、この圧縮機における他の構成は実施例1の圧縮機と同様であり、同一の構成については同一の符号を付して構成に関する詳細な説明を省略する。
【0105】
ここで、図4と同様、図11では、説明を容易にするため、吸入口77及び従動機構20の図示を省略しているとともに、第2端板81の一部の図示を省略している。また、図11では、第1圧縮室90A及び第2圧縮室90Bについて、それぞれドットハッチングを付して図示している他、吐出口87及びバイパス孔88について、形状を誇張して図示しているとともに、第1渦巻体73と重なる個所を破線で図示している。後述する図12図16についても同様である。
【0106】
この圧縮機では、第2スクロール80が第1スクロール70に対して公転することにより、第1スクロール70及び第2スクロール80は、第1圧縮室90A及び第2圧縮室90Bの容積を変化させる。これにより、吸入口77から第1、2圧縮室90A、90B内に冷媒が吸入される。そして、第1駆動軸心R1周りで回転駆動する第1スクロール70と、第2駆動軸心R2周りで回転従動する第2スクロール80との位相により、第1端板側段差部71Cと第2渦巻体側段差部83Cとが当接又は離隔し、第2端板側段差部81Cと第1渦巻体側段差部73Cとが当接又は離隔する。
【0107】
具体的には、図11に示すように、圧縮機が作動することにより、第1、2圧縮室90A、90Bにおいて冷媒の圧縮が開始される。ここで、図11に示す第1、2スクロール70、80の位相では、第1端板側段差部71Cと第2渦巻体側段差部83Cとが当接しており、第2端板側段差部81Cと第1渦巻体側段差部73Cとが当接している。このため、第1圧縮室90Aと第2圧縮室90Bとは非連通となっている。また、第1、2駆動軸心R1、R2方向で第1渦巻体73がバイパス孔88の全体に重なっているため、バイパス孔88と第1圧縮室90Aとは非連通となっている。さらに、第1圧縮室90A及び第2圧縮室90Bは、いずれも吐出口87とは非連通となっている。
【0108】
そして、図11に示す状態よりも第1、2スクロール70、80の位相が変化することにより、第1スクロール70及び第2スクロール80は、図12に示す状態に移行する。これにより、第1、2圧縮室90A、90Bの容積が減少し、冷媒の圧縮が進行する。また、第1渦巻体73とバイパス孔88とがずれ始めるため、バイパス孔88の一部が第1圧縮室90Aと連通する。これにより、実施例1の圧縮機と同様、第1圧縮室90A内の冷媒の一部がバイパス孔48を通じて吐出室55に吐出される。こうして、この圧縮機でも、第1圧縮室90Aの異常昇圧及び第1圧縮室90Aでの冷媒の過圧縮を防止できる。なお、第1圧縮室90Aは、吐出口87とは引き続き非連通の状態である。
【0109】
ここで、図12に示す第1、2スクロール30、40の位相では、第1端板側段差部71Cと第2渦巻体側段差部83Cとは当接しているものの、第2端板側段差部81Cと第1渦巻体側段差部73Cとは離隔する。このため、第2端板側段差部81Cと第1渦巻体側段差部73Cとの隙間を通じて第1圧縮室90Aと第2圧縮室90Bとが連通する。この結果、第2圧縮室90Bとバイパス孔88とが第1圧縮室90Aを介して連通するため、第2圧縮室90B内の冷媒の一部が第1圧縮室90Aを経て、バイパス孔88から吐出室55に吐出される。つまり、図12に示す第1、2スクロール30、40の位相では、第2圧縮室90Bについても、第1圧縮室90Aと同様に、バイパス孔88に連通する一方で吐出口87とは非連通の状態となる。こうして、この圧縮機では、第2圧縮室90Bの異常昇圧及び第2圧縮室90Bでの冷媒の過圧縮を防止できる。
【0110】
そして、図12に示す状態よりも第1、2スクロール70、80の位相が変化することにより、第1スクロール70及び第2スクロール80は、図13に示す状態に移行する。これにより、第1、2圧縮室90A、90Bの容積がさらに減少する。また、この状態でも第1圧縮室90Aとバイパス孔88とは引き続き連通する。さらに、この状態では、第1端板側段差部71Cと第2渦巻体側段差部83Cとについても離隔する。このため、第2端板側段差部81Cと第1渦巻体側段差部73Cとの隙間、及び、第1端板側段差部71Cと第2渦巻体側段差部83Cとの隙間を通じて第1圧縮室90Aと第2圧縮室90Bとが連通する。このため、第2圧縮室90Bとバイパス孔88とは、第1圧縮室90Aを介して引き続き連通する。なお、第1圧縮室90A及び第2圧縮室90Bは、吐出口87とは非連通である。
【0111】
そして、図13に示す状態よりも第1、2スクロール70、80の位相が変化することにより、第1スクロール70及び第2スクロール80は、図14に示す状態に移行する。この状態でも第1圧縮室90Aとバイパス孔88とは引き続き連通する。また、この状態では、第2端板側段差部81Cと第1渦巻体側段差部73Cとが再び当接する。しかし、第1端板側段差部71Cと第2渦巻体側段差部83Cとが引き続き離隔しているため、第1端板側段差部71Cと第2渦巻体側段差部83Cとの隙間を通じて第1圧縮室90Aと第2圧縮室90Bとは引き続き連通する。これにより、第2圧縮室90Bとバイパス孔88とは、第1圧縮室90Aを介して引き続き連通する。なお、図14に示す第1、2スクロール30、40の位相においても、第1圧縮室90A及び第2圧縮室90Bは、吐出口87とは非連通である。
【0112】
そして、図14に示す状態よりも第1、2スクロール70、80の位相が変化することにより、第1スクロール70及び第2スクロール80は、図15に示す状態に移行する。ここで、図15に示す状態では、第1渦巻体73における渦巻中心部分と、第2渦巻体83における渦巻中心部分とが離隔し始める。このため、第1圧縮室90Aは、バイパス孔88と連通するだけでなく、吐出口87とも連通し始める。このため、第1圧縮室90Aで圧縮された冷媒は、吐出口87によっても吐出室55に吐出され始める。
【0113】
また、図15に示す第1、2スクロール70、80の位相では、第2端板側段差部81Cと第1渦巻体側段差部73Cとが当接することに加えて、第1端板側段差部71Cと第2渦巻体側段差部83Cとについても再び当接する。しかし、第2圧縮室90B内の冷媒についても、第1渦巻体73における渦巻中心部分と第2渦巻体83における渦巻中心部分との隙間を通じて、吐出口87及びバイパス孔88と連通する状態にある。つまり、第2圧縮室90Bは、バイパス孔88との連通よりも後の段階で吐出口87と連通する。こうして、第2圧縮室90B内の冷媒も吐出口87を通じて吐出室55に吐出され始める。
【0114】
そして、図15に示す状態よりも第1、2スクロール70、80の位相が変化することにより、第1スクロール70及び第2スクロール80は、図16に示す状態に移行する。これにより、第1渦巻体73における渦巻中心部分と、第2渦巻体83における渦巻中心部分とがより大きく離隔する。このため、この圧縮機においても、第1圧縮室90Aと第2圧縮室90Bとが互いに合流して1つの合流圧縮室90Cを形成する。こうして、合流圧縮室90C内の冷媒は、吐出口87及びバイパス孔88から吐出室55に吐出される。
【0115】
この圧縮機では、合流圧縮室90Cが形成されるよりも前に、第1端板側段差部71Cと第2渦巻体側段差部83Cとが当接しており、第2端板側段差部81Cと第1渦巻体側段差部73Cとが当接している。なお、第1スクロール70及び第2スクロール80は、図16に示す状態から再び図11に示す状態に移行する。こうして、この圧縮機では、第1、2圧縮室90A、90Bに新たに吸入された冷媒の圧縮を開始する。このように、この圧縮機においても、第2圧縮室90Bとバイパス孔88との連通開始は、第2圧縮室90Bと吐出口87との連通より前となっている。そして、第2圧縮室90Bとバイパス孔88との連通終了は、第2圧縮室90Bと吐出口87との連通以降となっている。
【0116】
この圧縮機では、作動時に第1端板側段差部71Cと第2渦巻体側段差部83Cとが当接する第1、2スクロール70、80の位相と、第2端板側段差部81Cと第1渦巻体側段差部73Cとが当接する第1、2スクロール70、80の位相とが異なっている。そして、作動時に第1端板側段差部71Cと第2渦巻体側段差部83Cとが離隔する第1、2スクロール70、80の位相と、第2端板側段差部81Cと第1渦巻体側段差部73Cとが離隔する第1、2スクロール70、80の位相とが異なっている。
【0117】
このため、この圧縮機では、作動時において、例えば、第1端板側段差部71Cと第2渦巻体側段差部83Cとが当接していても、第2端板側段差部81Cと第1渦巻体側段差部73Cとが離隔している場合があり得る。このため、この圧縮機では、実施例1の圧縮機に比べて、作動時に第1圧縮室90Aと第2圧縮室90Bとが連通する期間を長くすることが可能となっている。この結果、この圧縮機では、第1圧縮室90Aを介して第2圧縮室90Bとバイパス孔88とが連通する期間を長くすることが可能となっている。こうして、この圧縮機では、第1、2圧縮室90A、90Bの異常昇圧をより好適に防止可能となっているとともに、第1、2圧縮室90A、90B内での冷媒の過圧縮をより好適に防止可能となっている。この圧縮機における他の作用は実施例1の圧縮機と同様である。
【0118】
以上において、本発明を実施例1、2に即して説明したが、本発明は上記実施例1、2に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0119】
例えば、実施例1の圧縮機において、第1スクロール30を回転不能にハウジング60に固定する構成としても良い。実施例2の圧縮機についても同様である。
【0120】
また、実施例1の圧縮機において、第1スクロール30の第1端板31に吐出口47及びバイパス孔48を形成しても良い。実施例2の圧縮機についても同様である。
【0121】
また、実施例1の圧縮機において、第1圧縮室50Aとバイパス孔48とは、第1、2スクロール30、40の位相に関わらず、常に連通していても良い。実施例2の圧縮機についても同様である。
【0122】
また、実施例1の圧縮機において、合流圧縮室50Cが形成された後に、第1端板側段差部31Cと第2渦巻体側段差部43Cとが当接し、第2端板側段差部41Cと第1渦巻体側段差部33Cが当接しても良い。実施例2の圧縮機についても同様である。
【0123】
また、実施例1の圧縮機において、第1膨出部31A、第1端板側段差部31C、第2渦巻短部43B及び第2渦巻体側段差部43Cを省略しても良い。実施例2の圧縮機についても同様である。
【0124】
また、実施例1の圧縮機において、第1渦巻短部33B、第1渦巻体側段差部33C、第2膨出部41A及び第2端板側段差部41Cを省略しても良い。実施例2の圧縮機についても同様である。
【0125】
また、実施例1の圧縮機では、従動機構20が自転阻止ピン21及びリング22によって構成されている。しかし、これに限らず、従動機構20は、2本のピンが1つのフリーリングの内周面に摺接するピン・リング・ピン方式、2本のピンの外周面同士が摺接するピン・ピン方式、オルダム接手を用いる方式等によって構成されていても良い。実施例2の圧縮機についても同様である。
【0126】
また、実施例1の圧縮機では、ロータ11の内周面に駆動周壁35を固定することにより、第1スクロール30とロータ11とを一体化させている。しかし、これに限らず、第1スクロール30とロータ11とを駆動軸によって動力伝達可能に接続することにより、第1スクロール30とロータ11とを第1駆動軸心R1方向に離隔して配置する構成としても良い。実施例2の圧縮機についても同様である。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明は車両の空調装置等に利用可能である。
【符号の説明】
【0128】
30、70…第1スクロール
31、71…第1端板
31A、71A…第1膨出部(膨出部)
31B、71B…第1非膨出部(非膨出部)
31C、71C…第1端板側段差部(端板側段差部)
33、73…第1渦巻体
33A、73A…第1渦巻本体部(渦巻本体部)
33B、73B…第1渦巻短部(渦巻短部)
33C、73C…第1渦巻体側段差部(渦巻体側段差部)
40、80…第2スクロール
41、81…第2端板
41A、81A…第2膨出部(膨出部)
41B、81B…第2非膨出部(非膨出部)
41C、81C…第2端板側段差部(端板側段差部)
43、83…第2渦巻体
43A、83A…第2渦巻本体部(渦巻本体部)
43B、83B…第2渦巻短部(渦巻短部)
43C、83C…第2渦巻体側段差部(渦巻体側段差部)
47、87…吐出口
48、88…バイパス孔
50A、90A…第1圧縮室
50B、90B…第2圧縮室
50C、90C…合流圧縮室
55…吐出室(吐出領域)
60…ハウジング
R2…第2駆動軸心(駆動軸心)
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