(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057381
(43)【公開日】2024-04-24
(54)【発明の名称】排水拡散部材
(51)【国際特許分類】
E01D 19/08 20060101AFI20240417BHJP
【FI】
E01D19/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164080
(22)【出願日】2022-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】513324365
【氏名又は名称】株式会社コーセイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000615
【氏名又は名称】弁理士法人Vesta国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊木 宏行
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059GG43
(57)【要約】
【課題】強度及び耐久性の向上を可能とし、また、排水する雨水の衝撃力の低減効果を高めることができること。
【解決手段】排水拡散部材1は、排水管100の先端部に取付けられる排水拡散部材1であって、排水管100に接続させる接続部10と、接続部10から連続し下方に向かって拡径した逆テーパー状を成す円錐台形状の筒状の拡散部20とを具備し、拡散部20は、その径大側の先端部が周方向に交互に凹凸状に形成されているものである。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水管の先端部に取付けられる排水拡散部材であって、
前記排水管に接続させる接続部と、
前記接続部から連続し下方に向かって拡径した逆テーパー状を成す円錐台形状の筒状の拡散部と
を具備し、
前記拡散部は、その径大側の先端部が周方向に交互の凹凸状に形成されていることを特徴とする排水拡散部材。
【請求項2】
前記拡散部は、前記交互の凹凸状を形成する各凸部がその先端に向かって細幅に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の排水拡散部材。
【請求項3】
前記拡散部は、前記交互の凹凸状が鋸歯状を成していることを特徴とする請求項1に記載の排水拡散部材。
【請求項4】
前記接続部及び前記拡散部は、硬質塩化ビニル樹脂で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の排水拡散部材。
【請求項5】
前記拡散部は、その外面が繊維強化プラスチックで補強されていることを特徴とする請求項4に記載の排水拡散部材。
【請求項6】
前記拡散部は、テーパー比が1.0~4.0の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の排水拡散部材。
【請求項7】
前記拡散部は、前記先端に向かって細幅に形成された各凸部が、前記凸部の基端の最大幅をx、前記凸部の突出長さをy、前記凸部間に形成された凹部の谷底点と前記凸部の頂点とを結ぶ直線長さをr、前記直線長さrと前記最大幅xとの間の角度をδとしたとき、tanδ=y/x=1.0~4.0の範囲内であることを特徴とする請求項2に記載の排水拡散部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川に架け渡された橋梁の橋面上に降った雨水を集積して橋梁の下まで導いて落下させる排水装置に取付けられ、落下させる雨水を拡散、分散させて排水する排水拡散部材に関するもので、特に、強度及び耐久性の向上を可能とし、排水する雨水の衝撃力を低減できる排水拡散部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
河川に架け渡された橋梁においては、橋面上の側脇に排水桝を設け、路面の勾配等を利用して排水桝で橋面上に降った雨水を集積し、排水桝の底部側に接続する排水管によって排水桝で集積した雨水を橋梁の下部まで導き、そこから自然落下させて排水を行っている。
しかしながら、橋梁の下部で排水管の筒口から直に河川側に向かって雨水を自然落下させると、滝状に特定の一箇所に集中して落下させることになる。即ち、重力による加速度(重力加速度)が生じ、雨水の流速、落下速度が増し、その落下点には大きな動水圧がかかることになる。このため、落下する雨水が橋梁の下を通過する船舶等に大きな衝撃を与える恐れがあり、船舶等の通行の障害、部材の破損、安全性が懸念されている。
【0003】
そこで、特許文献1では、橋梁等に設けた排水溝の底面から垂下する落水パイプの開口下端に傘状の散水部材を隙間をあけて取付けることの提案がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に記載の散水部材の構造は、円周方向に浅溝と深溝を交互に配置したものであることから、軟質ポリ塩化ビニル等の波板を環状に接ぎ形成することにより作製されるものと思慮される。このため、製作に手間がかかるうえ、風力にも耐え得る強度及び耐久性を確保するのが困難であり、実用的でない。また、かかる散水部材の構造によれば、落水パイプから落下した雨水を浅溝と深溝の流路に整流させて落下させるものであるから、雨水が細くまとまり連なって落下しやすいものである。このため、その落下点に加わる動水圧の低減にも限度がある。
【0006】
そこで、本発明は、強度及び耐久性の向上を可能とし、また、排水する雨水の衝撃力の低減効果を高めることができる排水拡散部材の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明の排水拡散部材は、排水管の先端部に取付けられる接続部から連続して形成され下方に向かって拡径した逆テーパー状である略円錐台形状の筒状を成す拡散部が、その径大側の先端部(下端部)で周方向に交互な凹凸状を形成したものである。
【0008】
上記排水管は、橋梁等の橋面上に降った雨水を集積して橋梁の下まで導く排水装置を構成する部材で、排水桝で集水した雨水を橋梁の下まで導く管路であり、一般的には、円形、楕円形、角形等の硬質ポリ塩化ビニル管(塩ビ管、塩ビパイプとも呼ばれる)や、鋼管等が使用される。
【0009】
上記接続部は、前記排水管の先端部側でその筒内に挿入して、例えば、ボルト及びナット等の取付具によって前記排水管の先端部側に取付けることにより前記排水管に固定接続されるものであり、例えば、円形、楕円形、角形等の筒状または柱状のものが採用されるが、強度、耐久性と軽量性との両立からすれば、好ましくは、円筒状に形成され、硬質ポリ塩化ビニル管(塩ビ管、塩ビパイプとも呼ばれる)等が使用される。上記接続部の前記排水管への固定接続は、前記排水管の管内に前記接続部が挿入されて前記排水管に前記接続部が固定接続された状態で、前記排水管の下端と拡散部が接触することなく離して、その間隔が、鉛直距離で、例えば、4.0~8.0cm、好ましくは、5.0~7.0cm、より好ましくは、5.5~6.5cmとなるように前記排水管と前記接続部との取付位置が設定される。
【0010】
上記拡散部は、前記接続部の下部から一体に連続し下方に向かって拡径した逆テーパー状を成す略円錐台形状(切頭錐体)の筒状に形成され、その下部の径大側の先端部周囲が凹凸状を交互に繰り返して形成されることにより、下部の先端部の周囲が、例えば、鋸歯状や波形状等を成すものである。この拡散部は、例えば、硬質ポリ塩化ビニルや、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂や鋼、鉄等の金属で形成されるが、好ましくは、軽量性、コスト、耐候性等の観点から、硬質ポリ塩化ビニル樹脂で形成される。
上記交互の凹凸状は、略円錐台の径大側の周縁に沿って繰り返しの複数の凹部を切削することにより(切り欠くことにより)、下向きの凸部が形成されたものであり、その凸部の形状は、例えば、略三角形状、略矩形状、略半円形状等とすることができる。
【0011】
請求項2の発明の排水拡散部材の前記拡散部は、前記交互の凹凸状を形成する各凸部がその先端(下端)に向かって細幅に形成されているものであり、下向きの凸部を先端(下端)に向かって細幅としたものである。
上記凸部は、先端に向かって細幅の形状であれば、その先端は鋭利でなくてもよく、R状であってもよいし、直線状であってもよい。
【0012】
請求項3の発明の排水拡散部材の前記拡散部は、前記交互の凹凸状が鋸歯状を成しているもの、即ち、下端周縁部が先端に向かって細幅の鋸歯状を成しているものである。
上記鋸歯状は、それを形成する各下向きの凸部の先端が厳格に鋭利であることまでは要求されず、R加工されていてもよい。
【0013】
請求項4の発明の排水拡散部材の前記接続部及び前記拡散部は、硬質塩化ビニル樹脂で形成されているものである。
上記接続部及び拡散部は、一体に連続されていれば、同一素材からなるものであってもよいし異種の素材の組み合わせであってもよく、同一素材であれば接合の溶接加工も容易である。
【0014】
請求項5の発明の排水拡散部材の前記拡散部は、その外面側を繊維強化プラスチックで補強されているものである。
上記繊維強化プラスチック(FRP)の強化用繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、炭化ケイ素繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維等の各種のセラミックス繊維、ウィスカ等が使用でき、母材となる樹脂としては、例えば、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂が使用でき、好ましくは、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)等が使用できる。低コスト化の観点等からすれば、好ましくは、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)が使用される。
上記繊維強化プラスチックは、前記拡散部の外面全体を被覆していることまでを要求すするものではなく、少なくとも、排水管から落下した雨水の落下点付近を補強できればよく、加工のしやすさからすれば、鋸歯状または波状の先端部よりも上位で補強され、前記接続部の外面の一部または全面を含めてもよい。
【0015】
請求項6の発明の排水拡散部材の前記拡散部は、前記下方に向かって拡径した逆テーパー状のテーパー比が、好ましくは、1.0~4.0、より好ましくは、1.2~3.5、更に好ましくは、1.5~3.0の範囲内であるものである。
上記テーパー比とは、前記拡散部の略円錐台形状の上面相当の直径、即ち、筒状の拡散部の上端の最小径(直径)をm、前記拡散部の略円錐台形状の底面相当の直径、即ち、筒状の拡散部の下端の最大径(直径)Mを、前記拡散部の略円錐台形状の高さ、即ち、筒状の拡散部の上下方向の垂直長さをLで表したときの(M-m)/Lで定義される値である。
【0016】
請求項7の発明の排水拡散部材の前記拡散部は、前記先端に向かって細幅に形成された各下向きの凸部が、前記凸部の基端の最大幅をx、前記凸部の突出長さをy、前記凸部間に形成された凹部の谷底点と前記凸部の頂点とを結ぶ直線長さをr、前記直線長さrと前記最大幅xとの間の角度をδとしたとき、好ましくは、tanδ=y/xが1.0~4.0、より好ましくは、1.5~3.5、更に好ましくは、1.6~3.1の範囲内である。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明に係る排水拡散部材によれば、排水管の先端部に取付けられる接続部から連続して形成され下方に向かって拡径した逆テーパー状とした略円錐台形状の筒状である拡散部は、径大側の先端部が周方向に交互に凹凸状に形成されているものである。
よって、排水管の先端部でその開口内に挿入されて排水管に取付けられる接続部の下部にはそこから連続して下方に向かって拡径した逆テーパー状とした略円錐台形状の筒状を成す拡散部が形成されていることにより、排水管から落下した雨水を拡散部で分散させて下方に排水、落下させることができる。
【0018】
特に、このように、下方に向かって拡径した逆テーパー状とした略円錐台形状の筒状である拡散部は、その径大側の先端部が周方向に沿って交互に凹凸状であることから、例えば、硬質ポリ塩化ビニル(PVC)等の材料強度の高いものを略円錐台形状の筒状の管(パイプ)状に加工し、その筒状の先端側を鋸歯状または波形状等の凹凸状に切削加工することにより形成することができ、製造が容易で、かつ、強度を高くすることができる。よって、強度及び耐久性の向上を可能とする。また、拡散部は、その先端周縁部において鋸歯状または波形状等の交互に凹凸状を成すもので、外面全体が凹凸溝のない平面状であり、排水管から落下した雨水が特定箇所に整流されることなく外面を伝って、鋸歯状または波形状等の交互に凹凸状に形成された先端部の凸部で収束して落下させるものである。よって、整流することなく雨水を拡散部の平面状の外面で分散させて上から下へ流すことで、雨水が細くまとまって連なるのを抑えることができる。また、先端部では鋸歯状または波形状の交互の凹凸状を形成していることで雨水を凸部で分散させて落下させることができ、雨水が特定箇所からまとまって落下するのを防止できる。よって、雨水の流れが細くまとまり連なって落下するのを防止でき、雨水の落下点に加わる動水圧の低減を可能とし、排水する雨水の落下衝撃力の低減効果を高めることができる。
【0019】
請求項2の発明に係る排水拡散部材によれば、前記交互の凹凸状を形成する各凸部がその先端に向かって細幅に形成されているから、雨水のスムースな落下を可能とし、降雨量が多いときでも、雨水の流れが多くまとまって落下するのを防止できる。よって、請求項1に記載の効果に加えて、排水する雨水の衝撃力の低減効果を向上できる。
【0020】
請求項3の発明に係る排水拡散部材によれば、前記交互の凹凸状が鋸歯状を成しているから、切削加工が容易であることで製造が容易で低コストにできる。特に、鋸歯状を形成する各凸部の折曲位置の先端で雨水を集約して落下させるから、雨水がまとまって落下するのを効果的に防止し、雨水の流れを細く、断続的な落下を可能とする。また、雨水のスムースな落下を可能とし、降雨量が多いときでも、雨水の流れがまとまって落下するのを防止できる。よって、請求項1に記載の効果に加えて、排水する雨水の衝撃力の低減効果をより高くできる。
【0021】
請求項4の発明に係る排水拡散部材によれば、前記接続部及び前記拡散部は、硬質塩化ビニル樹脂で形成されているから、耐候性、耐久性、耐食性、可撓性、軽量性に優れ、また、加工がしやすいものである。よって、請求項1に記載の効果に加えて、耐久性と低コストを両立できる。
【0022】
請求項5の発明に係る排水拡散部材によれば、前記拡散部は、その外面側を繊維強化プラスチックで補強されているものであるから、請求項4に記載の効果に加えて、強度及び耐久性の向上が可能である。
【0023】
請求項6の発明の排水拡散部材によれば、前記拡散部の前記下方に向かって拡径した逆テーパー状のテーパー比が、1.0~4.0、より好ましくは、1.2~3.5、更に好ましくは、1.5~3.0の範囲内であるから、雨水がまとまって落下するのを防止できる。よって、請求項1に記載の効果に加えて、排水する雨水の衝撃力の低減効果を向上できる。
【0024】
請求項7の発明の排水拡散部材によれば、前記拡散部の先端に向かって細幅に形成された各下向きの凸部が、前記凸部の基端の最大幅をx、前記凸部の突出長さをy、前記凸部間に形成された凹部の谷底点と前記凸部の頂点とを結ぶ直線長さをr、前記直線長さrと前記最大幅xとの間の角度をδとしたとき、tanδ=y/xが1.0~4.0、より好ましくは、1.5~3.5、更に好ましくは、1.6~3.1の範囲内であるから、凸部の先端が破損し難く、かつ、雨水がまとまって落下し難いものである。よって、請求項2に記載の効果に加えて、凸部の強度と排水する雨水の衝撃力の低減を両立できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は本発明の実施の形態に係る排水拡散部材が取り付けられた排水装置の橋梁への設置状態を説明する概略図である。
【
図2】
図2(a)は本発明の実施の形態に係る排水拡散部材の正面図である。
図2(b)は本発明の実施の形態に係る排水拡散部材の右側面図である。
【
図3】
図3(a)は本発明の実施の形態に係る排水拡散部材の平面図である。
図3(b)は本発明の実施の形態に係る排水拡散部材の底面図である。
【
図4】
図4(a)は本発明の実施の形態に係る排水拡散部材の
図2(a)のAーA断面図である。
図4(b)は本発明の実施の形態に係る排水拡散部材の斜視図である。
【
図5】
図5(a)は本発明の実施の形態に係る排水拡散部材を排水装置に取付けた状態を示す正面図である。
図5(b)は本発明の実施の形態に係る排水拡散部材を排水装置に取付けた状態を示す底面図である。
【
図6】
図6(a)は本発明の実施の形態に係る排水拡散部材の他の一例の正面図である。
図6(b)は本発明の実施の形態に係る排水拡散部材の別の一例の正面図である。
図6(c)は本発明の実施の形態の変形例に係る排水拡散部材の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、実施の形態において、図示の同一の記号及び同一の符号は、同一または相当する機能部分であるから、ここではその重複する詳細な説明を省略する。
【0027】
[実施の形態]
本発明の実施の形態に係る排水拡散部材1は、
図1に示すように、河川や海に架け渡された橋梁B等の橋面上に降った雨水を集積して橋梁Bの下まで導いて排水する排水装置において集積した雨水の流路となる排水管100の開口下端部、即ち、先端部に取付けられるものである。排水装置は、橋梁B等の側脇、側溝に排水桝(図示せず)を設け、その排水桝の底部に排水管100を接続したものであり、その下端部に排水拡散部材1が接続される。
【0028】
排水管100は、一般的には、熱可塑性樹脂である硬質ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)やポリエチレン樹脂(PE)等から形成されており、その外径は、好ましくは、110~320mm、より好ましくは、140~270mmの範囲内、その厚みは、好ましくは、3~16mm、より好ましくは、4~10mmの範囲内、その内径は、好ましくは、100~300mm、より好ましくは、125~250mmの範囲内のものである。
【0029】
図2乃至
図5に示すように、本実施の形態の排水拡散部材1は、排水管100の先端部でその管内に挿入され、ボルト41及びナット42の取付具によって排水管100に取付けられる円筒状の接続部10と、接続部10から連続して一体に形成され、下方に向かって排水管100の外径よりも径大に拡径して逆テーパー状を成す略円錐台形状の筒状の拡散部20とから構成され、拡散部20の径大側の先端周縁部が鋸歯状を成しているものである。なお、排水拡散部材1の背面図は、
図2(a)の正面図と同一に表れ、排水拡散部材1の左側面図は、
図2(a)の右側面図と同一に表れる。
【0030】
本実施の形態の接続部10は、円筒状の筒部11と筒部11の上方開口を閉じる蓋部12とから構成されており、筒部11を形成する周囲壁には、排水管100に取付けるための取付具としての寸切りボルト(長ねじ、全ねじ)等のボルト41及びナット42のうちのボルト41が挿通される孔43が形成されている。
ボルト41が挿通される孔43は、筒部11の中心軸を挟んで互いに対向する位置の1対で形成されており、互いに対向する1対の孔43に対して1本のボルト41が挿通されるようになっている。即ち、接続部10の筒の長さ方向に対して直角な方向(径方向)で筒部11を貫通するようにボルト41が挿通されるようになっている。
【0031】
また、排水拡散部材1が取付けられる円筒状の排水管100の周囲壁にも、中心軸を挟んで互いに対向する位置で、ボルト41が挿通される1対の孔(図示せず)が設けられている。
これより、円筒状の接続部10の筒部11に設けた対向する1対の孔43及び接続部10が挿入される円筒状の排水管100に設けた1対の対向する孔(図示せず)にボルト41を挿通し、即ち、接続部10の筒の長さ方向に対して直角な方向(径方向)で筒部11及び排水管100を貫通するようにボルト41を挿通し、排水管100の外周面側からボルト41に対しナット42締めを行うことで、排水管100内に接続部10を接続固定することができる。
【0032】
本実施の形態においては、
図5に示すように、接続部10及び排水管100に対し2本のボルト41が挿通され、排水管100に対し接続部10が2本のボルトで固定されることにより排水拡散部材1が取付けられる。排水管100に取付けるために接続部10に挿通される2本のボルト41は、接続部10の筒の長さ方向の上下で、互いに干渉しない位置で直交するよう接続部10及び排水管100に挿通され、排水管100の外周側からナット42締めによって排水管100に取付けられる。
即ち、本実施の形態では、接続部10の筒部11の周囲壁において、上側のボルト41が挿通される互いに対向する1対の上側の孔43、及び、下側のボルト41が挿通される互いに対向する1対の下側の孔43が設けられており、ボルト41が挿通される孔43の数が計4つであり、それらは互いに90°間隔で設けられている。排水管100についても同様である。
【0033】
このように、2本のボルト41を互いに直交するようにして接続部10の筒部11に設けた孔43及び排水管100に設けた孔(図示せず)に挿通し、排水拡散部材1を排水管100に取付ける場合には、負荷がバランスされ、長期の使用によっても排水管100や接続部10が破損し難く、また、ナット42が緩んで排水拡散部材1ががたついたり傾いたりし難く、強固な取付けが維持される。
しかし、本発明を実施する場合には、1本のボルト41のみの固定であってもよいし、3本以上のボルト41を使用して固定してもよい。また、2本以上のボルト41を使用する場合でも、互いに干渉しない位置で交差する配置としてもよいし、同一の高さで互いに平行する配置で挿通して排水管100に取付けるようにしてもよい。ボルト41及びナット42は、その材質は特に限定されず、例えば、強度が高く錆難いステンレス鋼等の金属製のものが使用される。
【0034】
なお、筒部11におけるボルト41が挿入される孔43は、例えば、硬質塩化ビニル樹脂管に丸孔、長孔、角孔等の貫通孔加工を行うことにより形成され、孔43の形状は、特くに問われず、丸孔、長孔、角孔等の何れであってもよい。孔43の寸法は、例えば、丸孔であれば、φ12~20mm程度、好ましくは、φ13~15mm程度に設定され、長孔であれば、φ12~20mm×20~40mm程度、好ましくは、φ13~15mm×25~35mm程度、角孔であれば、12~20mm×12~40mm程度、好ましくは、13~15mm×13~35mm程度に設定される。孔43を筒部11の長さ方向に長い長孔、長角孔とした場合には、排水管100に対する取付位置の微調整を可能とする。排水管100のボルト41が挿入される孔(図示せず)についても、上記と同等の寸法形状が採用される。
【0035】
また、本実施の形態の接続部10は、ボルト41が挿通される孔43を周壁に設けた筒部11の上端に、その開口を閉じる蓋部12を設けている。本実施の形態では、蓋部12は、断面略コ字状(有底円筒状)に形成され、筒部11の上端に外嵌されて、接着剤等で一体に接着されている。
こうして、筒部11の上端開口を蓋部12で閉じていることにより、排水管100を落下、下降する雨水が、筒部11内を通過することのないようにしている。
【0036】
本実施の形態では、円筒状の筒部11及び断面略コ字状の蓋部12を硬質塩化ビニル樹脂で形成しており、それらは別々に成形して蓋部12を筒部11の上端に外嵌し接着剤等により一体に固着している。しかし、本発明を実施する場合には、接続部10の上端が閉じられる形態であれば、別体に形成した筒部11及び蓋部12を樹脂溶接するものであってもよい。また、蓋部12の形状も上記に限定されず、略円板状あってもよいし、略T字状に形成し筒部11の上端開口に挿入して嵌合するものであってもよい。更には、筒部11及び蓋部12を一体に成形したものであってもよい。なお、軽量性、コスト、強度の観点から接続部10は円筒状が好ましいが、本発明を実施する場合には、円柱状、角筒状、角柱状等に形成してもよい。
【0037】
なお、筒状の排水管100の管内に挿入されてボルト41及びナット42の取付具によって取付けられる円筒状の接続部10の筒部11は、その外径が、好ましくは、25~220mm、より好ましくは、45~170mm、更に好ましくは、45~150mmの範囲内であり、その厚みは、より好ましくは、1.5~15mm、より好ましくは、3~12mm、更に好ましくは、4mm~10mmの範囲内であり、その内径は、好ましくは、20~205mm、より好ましくは、40~155mm、更に好ましくは、40~135mmの範囲内である。こうした排水拡散部材1の寸法形状は、取付対象の排水管100の内径に応じて設定される。筒部11の外径は、好ましくは、取付対象の排水管100の内径の0.2~0.8倍、より好ましくは、0.3~0.7倍、更に好ましくは、0.4~0.6倍である。このような範囲内であれば、排水する雨水の滞留を生じさせることなく、取付け安定性や強度も確保できる。
【0038】
そして、接続部10の蓋部12とは反対側の筒部11の下部には、そこから連続して略円錐台形状の筒状の拡散部20が形成されている。
本実施の形態では、略円錐台形の筒状の拡散部20と円筒状の接続部10とは共に硬質塩化ビニル樹脂で形成されており、両者は互いに樹脂溶接されて一体に形成されているものである。略円錐台形の筒状の拡散部20と円筒状の接続部10とは互いに同芯であり、また、排水管100に対しても略同芯に取付けられる。
【0039】
本実施の形態の拡散部20は、上面及び底面のない中空の略円錐台状を成し、下方に向かって拡径した逆テーパー状の錐面を有し、その下端の周縁は、一定間隔毎に角度が付され直線が左右交互に繰り返し折れ曲がったジグザグ(ギザギザ)形態の鋸歯状を成している。即ち、拡散部20の下端部は、先端に向かって細幅とした凸部としての突状の鋸歯部21が周方向に所定間隔で形成されていることにより鋸歯状を成している。
【0040】
拡散部20は、筒部11の径から徐々に拡径して、その下端の最大径Mは排水管100の直径よりも径大となっている。拡散部20の下端の外径の最大径Mは、好ましくは、排水管100の外径の1.4~4.0倍、より好ましくは、1.5~3.5倍、更に好ましくは、1.6~2.5倍の範囲内であり、筒部11の外径に等しい拡散部20の上端外径の最小径mの3.0~6.0倍、好ましくは、3.5~5.5倍、より好ましくは、4.0~5.0倍の範囲内である。拡散部20の拡径が大きすぎると、排水管100から落下した水の流速を低減できるが雨水の水滴(雨粒)がまとまりやすくなり(凝集しやすなり)、雨水がまとまって落下しやすくなる。一方で、拡散部20の拡径が小さすぎても、雨水の流速が低下し難く勢いの強い雨水がまとまって落下することになる。上記範囲内であれば、排水管100から落下した雨水の勢いを抑えて雨水がまとまって連なって落下するのを抑え、排水する雨水の衝撃力をより効果的に低減することが可能となる。
【0041】
ここで、下端に向かって拡径した逆テーパー状の拡散部20のテーパーについては、例えば、相対的にテーパー角が大きいものを
図6(a)、テーパー角が小さいものを
図6(b)に、それらの中間的なものを
図2乃至
図5に示している。そして、本発明者らは、拡散部20のテーパーの傾きに関し、拡散部20の上端の最小径をm、拡散部20の下端の最大径をM、拡散部20の長さ(高さ)をLで表したときに(
図2(a)参照)、拡散部20の最大径M及び最小径mは一定にして、拡散部20の長さLのみを変えた排水拡散部材10を種々作製して鋭意実験研究を行ったところ、拡散部20のテーパー比λ=(M-m)/Lが大きすぎる場合には、排水管100から落下した雨水の流速を低減できるが雨水の水滴(雨粒)がまとまりやすくなり(凝集しやすくなり)、雨水がまとまって落下しやすくなる。一方で、テーパー比が小さすぎる場合にも、拡散部20の傾きが急であることで水の流速(落下速度)が低下し難く勢いの強い雨水がまとまって落下することになる。拡散部20のテーパー比λ=(M-m)/Lが、好ましくは、1.0~4.0、より好ましくは、1.2~3.5、更に好ましくは、1.5~3.0の範囲内であれば、排水管100から落下した雨水の勢いを抑えて雨水がまとまって連なって落下するのを防止でき、拡散部20から落下する雨水の衝撃力を弱める効果を高くできる。
【0042】
接続部10と拡散部20との角度からすれば、
図2(a)に示す正面視で筒部11の外縁と拡散部20の外縁とのなす角度θが、好ましくは、100°~170°、より好ましくは、110°~160°、更に好ましくは、120°~150°、特に好ましくは、130°~140°の範囲内であれば、排水管100から落下した水の勢いを抑えて雨水がまとまって落下するのを防止でき、拡散部20から落下する雨水の衝撃力を弱める効果を高くできる。
拡散部20のテーパー角度からすれば、好ましくは、10°~80°、より好ましくは、20°~70°、更に好ましくは、30°~60°、特に好ましくは、40°~50°の範囲内であれば、排水管100から落下した水の勢いを抑えて雨水がまとまって落下するのを抑え、拡散部20から落下する雨水の衝撃力を弱める効果を高くできる。
【0043】
そして、略円錐台形の筒状をなす拡散部20の下端部において、環状の周縁部に複数の凹部を切削加工することにより鋸歯状を形成した複数の凸部としての鋸歯部21は、先端部に向かって徐々に細幅な形状であることにより、排水管100から拡散部20に落下した雨水は拡散部20の外面を上方から下方に伝って、鋸歯部21で収束(集約)され、その先端から雨水が落下していくことになる。鋸歯部21の細幅な先端は鋭利状であってもよいし、丸み(R)を帯びていてもよい。
【0044】
本発明者らの実験研究によれば、好ましくは、先端部に向かって徐々に細幅とした鋸歯部21の先端の角度αは、30°~85°、より好ましくは、35°~80°、更に好ましくは、40°~60°の範囲内である(
図2(a)参照)。当該角度が大きすぎるものでは、鋸歯部21の個数が少なくなることから、排水管100から落下した水が拡散部20の環状周囲への分散効果が少なくなることにより、また、鋸歯部21に水が膜を張りやすくなることにより、雨水がまとまって連なって落下しやすくなる。一方で、当該角度が小さすぎるものでは、先端部が鋭いことで破損しやすくなる。上記角度の範囲内であれば、拡散部20の環状周囲に適度な個数の鋸歯部21を形成できて排水管100から落下した雨水の拡散部20の環状周囲への分散性、分散効果が高く、また、鋸歯部21から雨水がまとまって落下するのを防止でき、拡散部20から落下する雨水の衝撃力を弱める効果を高くできる。更に、鋸歯部21の先端部が細幅となりすぎないことによる製造の容易性や、破損し難い強度、耐久性を確保できる。
【0045】
拡散部20の下端部の鋸歯状を形成する、隣接する鋸歯部21間の凹部の谷間の角度βからすれば、角度δは、好ましくは、30°~85°、より好ましくは、35°~80°、更に好ましくは、40°~60°の範囲内°の範囲内である(
図2(a)参照)。当該範囲内であれば、拡散部の環状周囲に適度な個数の鋸歯部21を形成できて排水管100から落下した雨水の拡散部20の環状周囲への分散性、分散効果が高く、また、鋸歯部21から雨水がまとまって落下するのを防止でき、拡散部20から落下する雨水の衝撃力を弱める効果を高くできることになる。更に、凹部の切削の容易性を確保できることになる。
【0046】
なお、鋸歯部21の先端の角度αとは、下方に突出する凸部(山部)としての鋸歯部21の先端が角状の場合には、隣接する2辺が交差することによりなす角度を示すが、凸部としての鋸歯部21の先端が丸みを帯びているR形状の場合には、その凸部の頂点中央及び隣接する凸部(鋸歯部21)との間の凹部(谷部)の谷間の底点中央とを直線状に結ぶ仮想線同士が交差することによりなす角度とする。
隣接す凸部(鋸歯部21)間の凹部の谷間の角度βについても同様に、そこが角状の場合には、隣接する2辺が交差することによりなす角度を示すが、その凹部(谷部)の谷底が丸みを帯びているR形状の場合には、その凹部の底点中央及び隣接する凸部(鋸歯部21)の先端の頂点中央とを直線状に結ぶ仮想線同士が交差することによりなす角度とする。
なお、通常、切削加工性、取扱い性、強度の確保から、凸部(鋸歯部21)の頂点や凹部の谷底はR状に加工されることが多い。
【0047】
鋸歯部21の先端に向かって細幅を形成する略三角形状で表現すれば(
図2(a)参照)、凸部(鋸歯部21)の底辺をx、底辺xと凸部(鋸歯部21)との頂点を結ぶ高さをy、凸部(鋸歯部21)の頂点と隣接する凸部(鋸歯部21)との間の凹部(谷部)の谷底点を結ぶ斜辺をr、斜辺rと底辺xとの間の角度をδとしたとき、tanδ=y/xが1.0~4.0、より好ましくは、1.5~3.5、更に好ましくは、1.6~3.1の範囲内である。当該数値が小さすぎるものでは、鋸歯部21の個数が少なくなることから、排水管100から落下した水が拡散部20の環状周囲への分散効果が少なくなることにより、また、鋸歯部21に水が膜を張りやすくなることにより、雨水がまとまって連なって落下しやすくなる。一方で、当該数値が大きすぎるものでは、先端部が鋭いことで破損しやすくなる。上記範囲内であれば、拡散部20の環状周囲に適度な個数の鋸歯部21を形成できて排水管100から落下した雨水の拡散部20の環状周囲への分散性、分散効果が高く、また、鋸歯部21から雨水がまとまって落下するのを防止でき、拡散部20から落下する雨水の衝撃力を弱める効果を高くできることになる。更に、鋸歯部21の先端部が細幅となりすぎないことによる製造の容易性や、破損し難い強度、耐久性を確保できることになる。
【0048】
凸部としての鋸歯部21の突出長さ(高さ)yは、好ましくは、20~80mm、より好ましくは、25~70mm、更に好ましくは、30~60mm、特に好ましくは、35~45mmの範囲内である。鋸歯部21の突出長さyが短すぎるものでは、鋸歯部21に水が膜を張りやすくなることにより、鋸歯部21から雨水がまとまって連なって落下しやすくなる。一方で、鋸歯部21の突出長さyが長すぎるものでも、鋸歯部21の水が細くまとまって連なって落下しやすくなる。上記範囲内であれば、鋸歯部21から雨水がまとまって落下するのを防止でき、拡散部20から落下する雨水の衝撃力を弱める効果を高くできる。
なお、鋸歯部21の突出長さ(高さ)yは、換言すれば、拡散部20の下端部の周縁部を凹凸状の鋸歯状に形成するために切削加工して製造されるから、切り込み深さ、谷部の深さともいえる。
【0049】
拡散部20の下端部において円周方向に鋸歯状を形成した複数の鋸歯部21の個数は、好ましくは、10~40個の範囲内、より好ましくは、15~35個の範囲内、更に好ましくは、20~30個の範囲内である。鋸歯部21の個数が少なすぎる場合には、排水管100から落下した水が拡散部20の環状周囲への分散性、分散効果が少なく、水がまとまって連なって落下しやすくなる。一方で、鋸歯部21の個数が多すぎると、切削加工に手間を要し、また、鋸歯部21の先端部を鋭くさせることになるから、先端部が破損しやすくなる。上記個数の範囲内であれば、適度な個数により、排水管100から落下した水が拡散部20の環状周囲への分散性、分散効果が高く、また、適度な鋭角により雨水がまとまって落下するのを防止でき弱い動水圧となるから、拡散部20から落下する雨水の衝撃力を弱める効果を高くできる。また、先端部が細幅となりすぎないことによる製造の容易性、破損し難い強度、耐久性を確保できる。
【0050】
ところで、本実施の形態の拡散部20においては、
図1乃至
図5、
図6(a)、及び図(b)に示したように、その先端周縁部に鋸歯状を形成する複数の凸部としての鋸歯部21は、同一寸法形状で統一して等間隔に形成することにより、切削加工、即ち、製造を容易としている。しかし、本発明を実施する場合には、例えば、
図6(c)に示すように、異なる寸法形状の鋸歯部21を交互に形成することにより鋸歯状としてもよい。
【0051】
本実施の形態において、こうした円筒状の接続部10及び略円錐台形状の筒状の拡散部20からなる排水拡散部材1は、硬質ポリ塩化ビニル樹脂によって構成される。更に、本実施の形態では、硬質ポリ塩化ビニル樹脂の外周面をエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の樹脂にガラス繊維等の繊維を複合させた繊維強化プラスチック(FRP)で補強する。これにより、より強度を高め、耐久性を向上させることができる。低コスト化の観点からすれば、好ましくは、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)が使用される。
なお、
図2(a)において、説明の便宜上、繊維強化プラスチック(FRP)加工した部分を灰色領域で示している。本実施の形態では、接続部10の筒部の11の下部及びそれに連続する拡散部20の上部から鋸歯部21より上位の範囲において、それらの外周面側でFRP補強を行っている。よって、強度を高めることができることに加え、外周面でのFRP補強層の塗装により、硬質ポリ塩化ビニル樹脂面よりも粗面を形成することも可能であり、FRP補強層の粗面によって排水管100から落下してきた雨水の流速の低減効果も期待できる。
本発明を実施する場合には、接続部10及び拡散部20の内周面にも繊維強化プラスチック(FRP)加工することが可能である。
【0052】
こうして、本実施の形態において、排水管100から落下した雨水を受ける拡散部20は、上方から下方に向かって拡径した略円錐台形状の筒状であり、その径大側の先端部の周縁部が鋸歯状を成している。即ち、拡散部20の下端周縁部が鋸歯状を成しているも、外面の錐面は凹凸溝のない平面状である。これより、排水管100から落下した雨水は、拡散部20で拡散して下端周縁部の鋸歯状を形成する凸部としての鋸歯部21の先端から下方に落下する。
【0053】
本実施の形態では、拡散部20の外面が凹凸溝のない平面状であることで、排水管100から落下した雨水は、拡散部20で拡散して整流されることなく上方から下方に拡散部20の外面を伝って流れる。そして、拡散部20の下端周縁部が鋸歯状に形成されていることにより、上方から下方に拡散部20の外面を伝って流れた雨水は、下端周縁部の鋸歯状を形成する凸部としての鋸歯部21で収束されて下方に落下していく。したがって、拡散部20においてその外面が溝のない平面状であることにより雨水の流れが細くなりすぎず、かつ、拡散部20の下端周縁部が鋸歯状に形成されていることにより、雨水が特定箇所からまとまって落下することのないものである。
【0054】
即ち、本実施の形態の排水拡散部材1によれば、排水管100から落下した雨水が拡散部20でまとまって連なって流れるのを防止しつつ、下部周縁部に複数の鋸歯部21を形成したことで、雨水が特定箇所からまとまって落下することのないよう分散させ、鋸歯部21で雨水を集束してその細幅の先端から雨滴のように断続的に落下させることを可能とする。これより、拡散部20から落下した雨水のその落下点にかかる動水圧の低減を可能し、落下した雨水の衝撃力を弱めることが可能となる。そして、拡散部20の下端部では鋸歯部21で雨水を収束して落下させるものであるから、降雨量が多いときでも、スムースに雨水を落下させることができる。
【0055】
このように構成された本実施の形態の排水拡散部材1は、
図5に示すように、その上部の筒状の接続部10側を筒状の排水管100の先端の開口から管内に挿入して、筒状の接続部10の筒部11に設けた各1対の孔及び筒状の排水管100に設けた各1対の孔(図示せず)にボルト41を挿通し、その挿通されたボルトに対し排水管100の外周面側からナット42締めを行うことにより、排水管100内に接続部10が接続固定されることで、排水管100に取付けられる。
【0056】
なお、本実施の形態では、2本のボルト41を使用しそれらが互いに干渉しない位置で直交するようにして上下で接続部10の各1対の孔43及び排水管100の各1対の孔(図示せず)に挿通して、それぞれナット42締めを行うことより、上下の2個所の位置でボルト41及びナット42により強固で安定した固定を行っている。しかし、本発明を実施する場合には、上述したように、1箇所のみであってもよいし、3箇所以上でボルト及びナットによる取付け接続固定を行ってもよい。
【0057】
排水拡散部材1の排水管100への取付けは、排水管100の管内に接続部10が挿入されて排水管100に接続部10が接続固定された状態で、排水管100の先端である下端と排水拡散部材1の拡散部20とが接触することなく、その間隔が、鉛直距離で、例えば、4.0~8.0cm程度、好ましくは、5.0~7.0cm、より好ましくは、5.5~6.5cmとなる位置で、排水管100と接続部10との取付位置が設定される。
このときの間隔が狭すぎると、降雨量が多いときにスムースに雨水を落下させることが困難となり、排水機能を損なうことになる。一方で、間隔が広すぎると、排水管100から落下した水の衝撃が強くなることで、長期の使用で排水拡散部材1を破損させる恐れがある。上記範囲内であれば、降雨量が多いときでも滞留を生じさせ難くてスムースな排水を可能とし、また、排水拡散部材1の破損を生じさせ難いものとなる。
【0058】
なお、排水拡散部材1の接続部10においては、その筒部11の上端に蓋部12を嵌合して筒部11の上端開口を閉塞してことにより、排水部100の落下してくる雨水が筒部11の筒内に侵入しないようにしている。
【0059】
こうして、河川や海に架け渡された橋梁B等に設置された排水装置においては、橋梁上に降った雨水が排水桝(図示せず)に集められて排水管100を落下するが、その排水管100の下端開口に排水拡散部材1が接続されることにより、排水管100内を落下した雨水は排水拡散部材1で拡散、分散されて排水されることになる。
即ち、排水管100からの雨水が、排水拡散部材1の接続部10や拡散部20に衝突することでその落下速度、流速が低減され、また、拡散部20で径方向に拡散、分散されて落下することになる。拡散部20によって、排水管100からの雨水を分散させて落下させることにより、排水管100からの雨水が特定箇所に集中的に落下してその落下地点で大きな動水圧、衝撃力がかかる事態を防止でき、排水管100から排出された雨水が与える衝撃力を軽減することができる。
【0060】
詳しくは、排水管100の先端部側でその開口から排水拡散部材1の接続部10を挿入しボルト41及びナット42で排水管100内に接続部10を接続固定して排水管100に排水拡散部材1を取付けることにより、排水管100から落下した雨水は、排水拡散部材1の接続部10から連続して形成され下方に向かって拡径した逆テーパー状を成す略円錐台形状の筒状の拡散部20に落下してそこで拡散、分散され、拡散部20で径大側の先端部の鋸歯状を形成している凸部としての鋸歯部21の細幅の先端から落下する。したがって、排水管100から落下した雨水を分散させて落下させることにより、排水する雨水の衝撃力を低減することができる。
【0061】
特に、本実施の形態の拡散部20は、略円錐台形状の筒状を成す外面全体が凹凸溝のない平面状であり、その下端周縁部が鋸歯状を成すことにより、排水管100から拡散部20に落下した雨水はその落下点に近い位置で特定箇所に整流されることなく分散されて外面を伝い、鋸歯状を形成する鋸歯部21で収束して落下していく。こうして整流されることなく雨水を拡散部20の平面状の外面で分散させて上から下へ流すことができることで、雨水が細くまとまることや雨水の流速を抑えることができる。また、その下端部は鋸歯状であることで拡散部20の外面を伝ってきた雨水を鋸歯部21によって分散させて落下させることができることでも、雨水のまとまった落下や流速を抑えることができる。
よって、本実施の形態の排水拡散部材1は、拡散部20から落下する雨水の落下点に加わる動水圧の低減化を可能とし、排水する雨水の衝撃力の低減効果を高めることができる。故に、排水装置から排水された雨水が橋梁の下を通過する船舶等に与える衝撃、影響を少なくできる。
【0062】
なお、本実施の形態の排水拡散部材1によれば、排水する雨水が細くまとまって連なって落下するのを防止し、雨水の流速を抑えて落下させることができることで、排水する雨水の落下による衝撃力の低減効果が高いことから、従来の排水装置の排水管100の径を大きくして排水量を増大させることも可能となり、排水管の施工本数、施工コストの低減化も可能となる。このように排水管100のからの排水量を増大させても、排水装置から排水された雨水が橋梁の下を通過する船舶等に与える衝撃、影響を少なくできる。
【0063】
そして、本実施の形態の排水拡散部材1は、このように下方に向かって拡径した逆テーパー状を成す略円錐台形状の筒状である拡散部20は、その下端側の周縁部が凹凸状、鋸歯状を成すものであることから、例えば、硬質ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)等の材料強度の高いものを略円錐台形状の筒状の管(パイプ)に加工し、その筒状の先端側に切り込みを入れて凹凸状、鋸歯状に切削加工することにより製造することができる。
よって、製造が容易であり、かつ、強度及び耐久性の高いものとなる。
【0064】
ところで、上記実施の形態において、排水拡散部材1は、その接続部10を排水管100の下端開口に挿入し、ボルト41を接続部10及び排水管100に貫通させて排水管100の外周面側からボルト41に対してナット42締めを行うことより接続部10を排水管100に接続固定して取付ける説明としたが、本発明を実施する場合には、排水拡散部材1を排水管100に取付け固定する方法は、上記に限定されず、例えば、嵌合構造によって取付けることも可能である。
【0065】
また、上記実施の形態は、排水拡散部材1は、硬質塩化ビニル樹脂からなる説明としたが、本発明を実施する場合には、ポリエチレン樹脂等のその他の熱可塑性樹脂で形成してもよいし、ステンレス、鉄、鋼材等で形成することも可能である。
【0066】
更に、上記実施の形態において、排水拡散部材1の拡散部20は、その先端側の周縁部をジグザグ(ギザギザ)に切削加工することにより複数の鋸歯部21で形成される鋸歯状とした説明とし、
図2乃至
図6においては、鋸歯部21が先端(下方)に向かって細幅に形成され山部を形成するその直線の折曲箇所が1箇所(頂点)のみであり、隣接する鋸歯部21間の凹部(谷部)においても谷底側(上方)に向かって細幅に形成されてその凹部を形成する直線の折曲箇所が1箇所(谷底)のみであるが、本発明を実施する場合には、周方向に凹凸状であれば、鋸歯状に限定されず、即ち、先端周縁部がジグザグ(ギザギザ)の直線状に限定されず、曲線状にジグザグを形成することにより波形状のものであってもよいし、先端側の折曲がりが2個所となるようにしてもよい。しかし、直線状のジグザグ(ギザギザ)切削加工する鋸歯状であれば、その切削が容易で、製造を容易にできる。また、鋸歯状のように凸部(鋸歯部21)が先端(下方)に向かって細幅に形成、更には、凹部(谷部)が谷底側に向かって細幅に形成されていれば、雨水がまとまって落下するのを防止でき、先端側で集束して雨滴のように断続的に落下させることを可能とする。
【0067】
以上説明してきたように、上記実施の形態の排水拡散部材1は、排水管100の先端部に取付けられる排水拡散部材1であって、排水管100に接続固定させる接続部10と、接続部10から連続し下方に向かって拡径した逆テーパー状を成す円錐台形状の筒状の拡散部20とを具備し、拡散部20は、その径大側の先端部が周方向に交互に凹凸状に形成されているものである。
よって、排水管100の先端部でその開口内に挿入されて排水管100に取付けられる接続部10の下部にはそこから連続して下方に向かって拡径した逆テーパー状とした略円錐台形状の筒状を成す拡散部20が形成されていることにより、排水管100から落下した雨水を拡散部20で分散させて下方に排水、落下させることができる。
【0068】
特に、このように、下方に向かって拡径した逆テーパー状とした略円錐台形状の筒状である拡散部20は、その径大側の先端部が周方向に沿って交互に凹凸状であることから、例えば、硬質ポリ塩化ビニル(PVC)等の材料強度の高いものを略円錐台形状の筒状の管(パイプ)状に加工し、その筒状の先端側を鋸歯状または波形状等の凹凸状に切削加工することにより形成することができ、製造が容易で、かつ、強度を高くすることができる。よって、強度及び耐久性の向上を可能とする。また、拡散部20は、その先端周縁部において鋸歯状等の交互に凹凸状を成すもので、外面全体が凹凸溝のない平面状であり、排水管100から落下した雨水がその落下点に近い位置で特定箇所に整流されることなく外面を伝って、鋸歯状等の交互に凹凸状に形成された先端部の凸部としての鋸歯部21で収束して落下させるものである。よって、整流することなく雨水を拡散部20の平面状の外面で分散させて上から下へ流すことで、雨水が細くまとまって連なるのを抑えることができる。また、先端部では鋸歯状または波形状の交互に凹凸状を形成していることで雨水を凸部としての鋸歯部21で分散させて落下させることができ、雨水が特定箇所からまとまって落下するのを防止できる。よって、雨水の流れが細くまとまり連なって落下するのを防止でき、雨水の落下点に加わる動水圧の低減を可能とし、排水する雨水の衝撃力の低減効果を高めることができる。
【0069】
そして、上記実施の形態の排水拡散部材1によれば、排水管100の先端部に取付けられる接続部10から連続して形成され下方に向かって拡径した逆テーパー状である略円錐台形状の筒状を成し、径大側の先端部が周方向に亘って鋸歯状を成している拡散部20を具備し、交互の凹凸状が鋸歯状を成し、交互の凹凸状を形成する各凸部としての鋸歯部21がその先端に向かって細幅に形成されているから、切削加工が容易であることで製造が容易で低コストにできる。特に、鋸歯状を形成する各凸部の折曲位置の先端で雨水を集約して排水できるから、雨水の流れが細く、断続的な落下を可能とする。また、雨水のスムースな落下を可能とし、集中豪雨等で降雨量が多いときでも、雨水の流れがまとまって落下するのを防止できる。よって、排水する雨水の衝撃力の低減効果が高いものである。
【0070】
更に、上記実施の形態の排水拡散部材1において、拡散部20の下方に向かって拡径した逆テーパー状のテーパー比が、1.0~4.0、より好ましくは、1.2~3.5、更に好ましくは、1.5~3.0の範囲内であれば、雨水がまとまって落下するのをより防止できるから排水する雨水の衝撃力の低減効果を更に向上できる。
【0071】
加えて、上記実施の形態の排水拡散部材1において、拡散部20の先端に向かって細幅に形成された各下向きの凸部としての鋸歯部21が、凸部としての鋸歯部21の基端の最大幅をx、凸部としての鋸歯部21の突出長さをy、凸部としての鋸歯部21間に形成された凹部の谷底点と凸部としての鋸歯部21の頂点とを結ぶ直線長さをr、直線長さrと最大幅xとの間の角度をδとしたとき、tanδ=y/xが1.0~4.0、より好ましくは、1.5~3.5、更に好ましくは、1.6~3.1の範囲内であれば、凸部としての鋸歯部21の先端が破損し難く、かつ、雨水がまとまって落下し難いものとなる。これより、凸部の強度と排水する雨水の衝撃力の低減を両立できる。
【0072】
また、上記実施の形態の排水拡散部材1によれば、接続部10及び拡散部20は、硬質塩化ビニル樹脂で形成されているから、耐候性、耐久性、耐食性、可撓性、軽量性に優れ、加工もしやすいものである。よって、低コスト化できる。
更に、上記実施の形態の排水拡散部材1によれば、拡散部20は、その外面側を繊維強化プラスチック(FRP)で補強されているものであるから、強度及び耐久性の向上が可能である。また、繊維強化プラスチックによる粗面によって雨水の流速を低下させることが可能である。
【0073】
なお、本発明を実施する場合には、排水拡散部材1のその他の部分の構成、材料等について、上記実施の形態の説明に限定されるものではない。また、上記実施の形態で上げている数値は、実施に好適な適正値を示すものであるから、上記数値を若干変更しても実施を否定するものではない。
【符号の説明】
【0074】
1 排水拡散部材
10 接続部
20 拡散部
21 鋸歯部(凸部)
100 排水管