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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057383
(43)【公開日】2024-04-24
(54)【発明の名称】院内用上衣
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/12 20060101AFI20240417BHJP
【FI】
A41D13/12 145
A41D13/12 190
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164082
(22)【出願日】2022-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】507185956
【氏名又は名称】株式会社タップ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100148253
【弁理士】
【氏名又は名称】今枝 弘充
(72)【発明者】
【氏名】貞森 結花
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 邦章
【テーマコード(参考)】
3B011
3B211
【Fターム(参考)】
3B011AA01
3B011AB08
3B011AC22
3B211AA01
3B211AB08
3B211AC22
(57)【要約】
【課題】着用者が上半身の前側半部を必要に応じ露出することができると共に、着用者の肌が意図せずに露出することを抑制する院内用上衣を提供する。
【解決手段】院内用上衣10は、着用者Pの前肩部20、胸部22及び腹部24を覆う前身頃12と、着用者Pの背中部25を覆う後身頃14と、を備える。前身頃12は、左右方向Hの一方側に配置される第1半部48と、他方側に配置される第2半部50と、を有する。第1半部48は、一方側の前肩部20Rと、両側の胸部22及び腹部24と、を覆う第1面部52と、第1面部52の左右方向Hの他方の端部を第2半部50に分離可能に連結する第1連結部54と、を有する。第2半部50は、他方側の、前肩部20Lと、胸部22Lと、腹部24Lと、を覆う第2面部60を有する。48前身頃は、左右方向の中央であって、上下方向の上端と胸部22の間において第1面部52と第2面部60を互いに連結する第2連結部68を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交する上下方向、前後方向、及び左右方向を有し、着用者の前肩部、胸部及び腹部を覆う前身頃と、前記前身頃に連続して設けられ前記着用者の背中部を覆う後身頃と、を備え、
前記前身頃は、
前記左右方向の一方側に配置される第1半部と、
前記左右方向の他方側に配置される第2半部と、を有し、
前記第1半部は、
前記左右方向の一方側の前記前肩部と、前記左右方向の両側の前記胸部及び前記腹部と、を覆う第1面部と、
前記第1面部の前記左右方向の他方の端部を前記第2半部に分離可能に連結する第1連結部と、を有し、
前記第2半部は、前記左右方向の他方側の、前記前肩部と、前記胸部と、前記腹部と、を覆う第2面部を有し、
前記前身頃は、前記左右方向の中央であって、前記上下方向の上端と前記胸部の間において前記第1面部と前記第2面部を互いに連結する第2連結部を有する、院内用上衣。
【請求項2】
前記第2連結部は、前記第1面部と前記第2面部とを分離可能に連結する、請求項1に記載の院内用上衣。
【請求項3】
前記第1半部は、前記第2半部より前記着用者の肌に近い側に配置される、請求項1に記載の院内用上衣。
【請求項4】
前記第2半部は、前記着用者の前記左右方向の中央で終端している、請求項1に記載の院内用上衣。
【請求項5】
前記前身頃は、前記第2連結部と前記上下方向の下端との間に、前記第1面部と前記第2面部を分離可能に連結する、第3連結部を有する、請求項3に記載の院内用上衣。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、院内用上衣に関する。
【背景技術】
【0002】
院内用上衣は、健康診断など病気の有無を知るための検診を受ける受診者や、治療や検査のためある期間病院に留まる入院患者が着用する上衣として、種々のものが開示されている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2008-025038号公報)は、前身頃を、襟部開口側の上方前身頃と、胴部開口側の下方前身頃とで形成するとともに、下方前身頃を右前身頃と左前身頃とで形成し、この右前身頃と左前身頃の一部を前後に重ね合わせて打ち合わせ部を形成し、この打ち合わせ部の上端を、右前身頃と左前身頃とが分離不能となるよう上方前身頃に固定するとともに、この打ち合わせ部において、右前身頃と左前身頃とが前後に分離するよう自由端を形成し、着用時において、右前身頃と左前身頃とを引き上げることにより、着用者の上半身前部を容易に露出可能とするとともに、右前身頃及び左前身頃の引き上げを解除することにより、着用者の上半身前部を迅速に被覆可能とする検診衣を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-025038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の場合、打ち合わせ部において右前身頃と左前身頃は大きく重なっているため、上半身の半部を露出させる場合、袖から腕を引き抜く必要があり、着用者が意図しない部分の肌を露出する必要があるという問題がある。仮に腕を袖に通したまま半部を露出させようとした場合、打ち合わせ部において右前身頃と左前身頃は大きく重なった状態で固定されているため、露出する側の前身頃の半部を引き上げることによって、反対側の前身頃の半部及び後身頃に大きい力が作用する。したがって、当該力によって反対側の前身頃の半部及び後身頃が引き上げられ、露出する側と反対側の上半身に加え背中が意図せず露出してしまう、という懸念がある。
【0006】
本発明は、着用者が上半身の前側半部を必要に応じ露出することができると共に、着用者の肌が意図せずに露出することを抑制する院内用上衣を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の院内用上衣は以下の通りである。
互いに直交する上下方向、前後方向、及び左右方向を有し、着用者の前肩部、胸部及び腹部を覆う前身頃と、前記前身頃に連続して設けられ前記着用者の背中部を覆う後身頃と、を備え、
前記前身頃は、
前記左右方向の一方側に配置される第1半部と、
前記左右方向の他方側に配置される第2半部と、を有し、
前記第1半部は、
前記左右方向の一方側の前記前肩部と、前記左右方向の両側の前記胸部及び前記腹部と、を覆う第1面部と、
前記第1面部の前記左右方向の他方の端部を前記第2半部に分離可能に連結する第1連結部と、を有し、
前記第2半部は、前記左右方向の他方側の、前記前肩部と、前記胸部と、前記腹部と、を覆う第2面部を有し、
前記前身頃は、前記左右方向の中央であって、前記上下方向の上端と前記胸部の間において前記第1面部と前記第2面部を互いに連結する第2連結部を有する、院内用上衣。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、着用者が上半身の前側半部を必要に応じ露出することができると共に、着用者の肌が意図せずに露出することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る院内用上衣を示す正面図である。
図2】本実施形態に係る院内用上衣の左前身頃を開いた状態を示す正面図である。
図3】本実施形態に係る院内用上衣の上半身の右前側半部を露出した状態を示す正面図である。
図4】本実施形態に係る院内用上衣の上半身の左前側半部を露出した状態を示す正面図である。
図5】本実施形態に係る院内用上衣の右前身頃と左前身頃とを開いた状態を示す正面図である。
図6】本実施形態の変形例に係る院内用上衣を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態は、以下の態様に関する。
【0011】
[態様1]
互いに直交する上下方向、前後方向、及び左右方向を有し、着用者の前肩部、胸部及び腹部を覆う前身頃と、前記前身頃に連続して設けられ前記着用者の背中部を覆う後身頃と、を備え、
前記前身頃は、
前記左右方向の一方側に配置される第1半部と、
前記左右方向の他方側に配置される第2半部と、を有し、
前記第1半部は、
前記左右方向の一方側の前記前肩部と、前記左右方向の両側の前記胸部及び前記腹部と、を覆う第1面部と、
前記第1面部の前記左右方向の他方の端部を前記第2半部に分離可能に連結する第1連結部と、を有し、
前記第2半部は、前記左右方向の他方側の、前記前肩部と、前記胸部と、前記腹部と、を覆う第2面部を有し、
前記前身頃は、前記左右方向の中央であって、前記上下方向の上端と前記胸部の間において前記第1面部と前記第2面部を互いに連結する第2連結部を有する、院内用上衣。
【0012】
(効果)
院内用上衣は、着用者の前肩部、胸部及び腹部を覆う前身頃と、前身頃に連続して設けられ着用者の背中部を覆う後身頃とを備える。前身頃の第1半部は、第1面部の他方の端部が第2半部に連結されることによって、一方側の前肩部と、両側の胸部及び腹部を覆う。前身頃の第2半部は、第1面部と第2面部が第2連結部で連結されることによって、他方側の、前肩部と、胸部と、腹部とを覆っている。これにより院内用上衣は、第2半部の第2連結部より上下方向の下側が開いた場合でも、第1半部が両側の胸部及び腹部を覆っているので、着用者の肌が意図せず露出することを抑制する。
【0013】
院内用上衣は、第1連結部を分離し、第1面部の他方の端部を第2半部から分離し、第1半部の裾を引き上げることによって、上半身の一方の前側半部を露出させることができる。この場合、第1半部は、第1面部の他方の端部が第2半部から分離し、自由端となるので、当該第1半部を引き上げる力に起因して第2半部及び後身頃を左右方向の一方及び上方へ引っ張る力がほとんど生じない。これにより、院内用上衣は、第1半部の裾を引き上げた場合に、第1半部と共に第2半部及び後身頃が引っ張り上げられることが抑制される。
【0014】
また、第2半部は、中央において第2連結部によって第1半部と連結されているので、第1半部の他方の端部を第2半部から分離した場合でも、一方の端部が左右方向の中央の位置に維持される。したがって、院内用上衣は、上半身の他方の前側半部を覆った状態を維持する。
【0015】
したがって、院内用上衣は、着用者の上半身の一方の前側半部を露出させた場合に、第2半部が上半身の他方の前側半部を覆った状態を維持し、後身頃が背中部を覆った状態を維持することができるので、意図せず上半身の他方の前側半部、及び背中部が露出することを抑制することができる。
【0016】
また、院内用上衣は、第1連結部を分離し、第1面部の他方の端部を第2半部から分離し、第2半部の裾を引き上げることによって、着用者の上半身の他方の前側半部を露出させることができる。第2半部は、第2連結部より下側が第1面部と連結されていない自由端であるので、第2半部を引き上げても、第1半部及び後身頃を左右方向の他方及び上方へ引っ張る力がほとんど生じない。第1半部は、第1連結部が分離されていることによって、上半身の他方の前側半部を露出した状態で垂れ下がる。これにより、院内用上衣は、第2半部の裾を引き上げた場合に、上半身の他方側の前側半部を容易に露出でき、第2半部と共に第1半部及び後身頃が引っ張り上げられることが抑制される。
さらに、第1半部は、第2連結部を起点として自重により垂れ下がり、上半身の一方の前側半部を覆った状態を維持する。
【0017】
したがって院内用上衣は、着用者の上半身の他方の前側半部を露出させた場合に、第1半部が上半身の一方の前側半部を覆った状態を維持し、後身頃が背中部を覆った状態を維持することができるので、意図せず上半身の一方の前側半部、及び背中部が露出することを抑制することができる。
以上より、院内用上衣は、上半身の半部を必要に応じ露出することができると共に、着用者の肌が意図せずに露出することを抑制することができる。
【0018】
[態様2]
前記第2連結部は、前記第1面部と前記第2面部とを分離可能に連結する、態様1に記載の院内用上衣。
(効果)
第1半部と第2半部とは、第2連結部を分離することによって、第1面部と第2面部を左右に分離することができる。そうすると、着用者がベッドに寝たままの状態でも、院内用上衣を着用者に対し容易に着せ替えることができる。したがって、院内用上衣は、入院患者向けの患者衣として用いることができる。
【0019】
[態様3]
前記第1半部は、前記第2半部より前記着用者の肌に近い側に配置される、態様1に記載の院内用上衣。
(効果)
院内用上衣は、第1半部が着用者の肌により密着して胸部及び腹部を覆うので、着用者の肌が露出し難い。
【0020】
[態様4]
前記第2半部は、前記着用者の前記左右方向の中央で終端している、態様1に記載の院内用上衣。
(効果)
第2半部は、着用者の中央で終端していることによって、第2面部の左右方向の一方の端部が自重により上下方向に沿って延びる。したがって、第2半部は、余計な皺の発生を抑制し、デザイン性に優れる。院内用上衣は、第1半部が着用者の左右方向の両側の胸部及び腹部を覆っているので、着用者の中央で終端している第2半部の裾が開いた場合でも、着用者の肌が意図せず露出することを抑制する。
【0021】
[態様5]
前記前身頃は、前記第2連結部と前記上下方向の下端との間に、前記第1面部と前記第2面部を分離可能に連結する、第3連結部を有する、態様3に記載の院内用上衣。
(効果)
前身頃は、第3連結部によって第1面部と第2面部とを連結することによって、第1半部に対する第2半部の位置ずれを抑制する。したがって、院内用上衣は、例えば、着用者がベッドに寝た際において、院内用上衣の乱れを抑制できる。また、院内用上衣は、第3連結部を分離することによって、上半身の前側半部を露出可能であると共に、第1半部と第2半部とを分離できるので、着用者がベッドに寝たままの状態でも、院内用上衣を着用者に対し容易に着せ替えることができる。
【0022】
(実施形態)
本発明の院内用上衣は、健康診断など病気の有無を知るための検診を受ける受診者が着用する検診衣に適用できる。さらに、本発明の院内用上衣は、治療や検査のためある期間病院に留まる入院患者が着用する患者衣などに適用してもよい。
【0023】
以下、本実施形態に係る院内用上衣について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る院内用上衣を示す正面図、図2は院内用上衣の左前身頃を開いた状態を示す正面図、図3は院内用上衣の上半身の右前側半部を露出した状態を示す正面図、図4は院内用上衣の上半身の左前側半部を露出した状態を示す正面図、図5は院内用上衣の右前身頃と左前身頃とを開いた状態を示す正面図である。
【0024】
図1に示す院内用上衣10は、互いに直交する上下方向V、前後方向L、及び左右方向Hを有する。上下方向Vは、院内用上衣10を着用者Pが着用したときの着用者Pの丈方向を意味し、鉛直方向と同義である。前後方向Lは、上下方向Vと直交する方向であって、院内用上衣10を着用者Pが着用したときの、着用者Pの前後方向を意味する。左右方向Hは、上下方向V及び前後方向Lと直交する方向である。院内用上衣10は、着用者Pの頭部に向かう向き及び側をそれぞれ上下方向Vの上向き及び上側とし、着用者Pの脚部に向かう向き及び側をそれぞれ上下方向Vの下向き及び下側とする。着用者Pから見て前へ向かう向き及び側を前後方向Lの前向き及び前側とし、着用者Pから見て後ろへ向かう向き及び側をそれぞれ前後方向Lの後向き及び後側とする。着用者Pから見て左へ向かう向き及び側をそれぞれ左右方向Hの左向き及び左側とし、着用者Pから見て右へ向かう向き及び側をそれぞれ右向き及び右側とする。さらに、院内用上衣10は、着用者Pの身体に近い側を内側とし、着用者Pの身体から遠い側を外側とする。腹と腹側、及び背と背側は、着用者Pを基準とする。ある部材又はある辺の左右方向Hの中央とは、左右方向の中心から、ある部材又はある辺の左右方向Hの最大長さの25%以下、好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下の長さの範囲をいう。
【0025】
本明細書において接合とは、縫合である場合に限らず、接着剤を用いる場合、及び熱融着による場合を含み、生地の材料に合わせて適宜選択される。また、ある基準に「沿う」とは、ある基準に対して±45°未満の範囲の方向に沿うことを含むものとする。ある部材等のある方向の端部とは、その部材のその方向の端縁から、その部材等のその方向での全体の長さの1/5(好ましくは1/10)以下の長さの範囲をいう。
【0026】
院内用上衣10は、生地で形成されている。生地を構成する繊維は、特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどのポリエステル繊維、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド繊維のような合成繊維、アセテート繊維のような半合成繊維、綿、麻及び羊毛のような天然繊維を単独で、又は2種以上を混合して使用できる。本実施形態における生地の形態としては特に限定されず、織物、編物、不織布等、目的に応じていずれの形態でも使用できる。
【0027】
院内用上衣10は、前身頃12と、前身頃12に連続して設けられた後身頃14とを備える。院内用上衣10は、図1に示すように、着用者Pの腕を覆う右袖部16及び左袖部18を有してもよい。
【0028】
前身頃12は、着用者Pの前肩部20、胸部22及び腹部24を覆う。前身頃12は、上端の上端辺26と、下端の下端辺28と、右端の右端辺30と、左端の左端辺32とを有する。上端辺26は、左右方向Hの中央に襟ぐり34と、襟ぐり34の両側にそれぞれ肩合わせ部36とを有する。襟ぐり34は、下方に窪んだU字状である。襟ぐり34は、首テープ38が接合されている。右端辺30は、上から下へ順に、右袖連結部40と、右脇部42とを有する。左端辺32は、上から下へ順に左袖連結部44と、左脇部46とを有する。
【0029】
前身頃12は、左右方向Hの右側に配置される第1半部としての右前身頃48と、左右方向Hの左側に配置される第2半部としての左前身頃50とを有する。右前身頃48は、図2に示すように、第1面部52と、第1連結部54とを有する。
【0030】
第1面部52は、生地で形成されたシート状の部材であって、着用者Pの、右側の前肩部20Rと、両側の胸部22及び腹部24とを覆う。第1面部52は、上端の右上端辺26Rと、下端の右下端辺28Rと、右端の右端辺30と、左端の左脇端辺56とを有する。右上端辺26Rは、左右方向Hの中央に右襟ぐり部34Rと、右襟ぐり部34Rの右側に右肩合わせ部36Rと、右襟ぐり部34Rの左側に左側延長部58とを有する。右襟ぐり部34Rは、右上端辺26Rの左方の端部と左側延長部58の右方の端部との間を下方に凹となるように切り欠いた形状を有する。左側延長部58は、襟ぐり34の下端である右襟ぐり部34Rの左端からさらに左側へ向かって下方に傾斜し、左脇端辺56に接続されている。左脇端辺56は、上下方向Vに沿う直線状である。
【0031】
第1連結部54は、左方の端部としての、左側延長部58と左脇端辺56とが交差する部分に設けられている。図2に示す第1連結部54は、紐であり、一端が第1面部52の左側延長部58と左脇端辺56とが交差する部分に接合され、他端が自由端である。第1連結部54は、首テープ38と同じ部材であってもよい。図2の場合、首テープ38は、襟ぐり34から左側延長部58に沿って延び、左側延長部58と左脇端辺56とが交差する部分からさらに第1面部52の外側へ延びている。第1連結部54は、首テープ38が、左側延長部58と左脇端辺56とが交差する部分から第1面部52の外側へ延びた部分である。
【0032】
左前身頃50は、第2面部60を有する(図1)。第2面部60は、生地で形成されたシート状の部材であって、左側の、前肩部20Lと、胸部22Lと、腹部24Lと、を覆う。第2面部60は、上端の左上端辺26Lと、下端の左下端辺28Lと、左端の左端辺32と、右端の中央端辺62とを有する。左上端辺26Lは、左右方向Hの左端に左襟ぐり部34Lと、左襟ぐり部34Lの左側に左肩合わせ部36Lとを有する。左襟ぐり部34Lは、左上端辺26Lの右方の端部と中央端辺62の上方の端部との間を下方に凹となるように切り欠いた形状を有する。襟ぐり34の下端である左襟ぐり部34Lの右端は、中央端辺62に接続されている。中央端辺62は、上下方向Vに沿う直線状である。第2面部60は、上下方向Vに沿う方向に延びる左前切替線64を介して、2枚の生地で形成してもよい。左前切替線64は、上端が左端辺32の左袖連結部44に接続し、下端が左下端辺28Lに接続している。
【0033】
左前身頃50は、内側に、第1連結部54を分離可能に連結する第1被連結部66が設けられている(図2)。第1被連結部66は、左前身頃50に接合されたループである。第1被連結部66は、左前身頃50の左脇に設けられるのが好ましい。第1被連結部66は、左前切替線64に挟み込まれて接合されていてもよい。
【0034】
前身頃12は、第2連結部68を有する。第2連結部68は、第1面部52と第2面部60とを互いに連結する。第2連結部68は、前身頃12の左右方向Hの中央であって、上端、すなわち襟ぐり34の下端と、胸部22の間に設けられている。第2連結部68は、前身頃12の左右方向Hの中心から、左右方向Hにそれぞれ、前身頃12の左右方向Hの最大長さの25%の範囲内に配置されてもよく、20%の範囲内に配置されてもよく、15%の範囲内に配置されてもよい。第2連結部68は、第1面部52と第2面部60とを前後方向Lに重ねた状態で、第1面部52と第2面部60とを互いに連結する。第2連結部68は、左前身頃50の中央端辺62に沿った位置に設けられている。第2連結部68は、第1面部52と第2面部60とを互いに接合してもよい。また、第2連結部68は、第1面部52と第2面部60とを互いに分離可能に連結してもよい。本実施形態の場合、第2連結部68は、ボタンまたは面ファスナーである。第2連結部68は、1つである場合に限らず、2つ以上でもよい。第2連結部68は、襟ぐり34の下端と、胸部22のバストトップとの間の、上下方向Vの中間位置より上側に設けられるのが好ましい。
【0035】
後身頃14は、着用者Pの背中部25を覆う。後身頃14は、1枚の生地で形成されたシート状の部材であって、上下方向Vを長手方向とする長方形状であり、図示しないが、前身頃12に対応して、それぞれ上端辺に後肩合わせ部、右袖連結部、右脇部、左袖連結部、及び左脇部を有する。後身頃14は、後肩合わせ部が肩合わせ部36に接合されている。同様に、後身頃は、前身頃12の、右脇部42、及び左脇部46にそれぞれ接合されている。
【0036】
右袖部16及び左袖部18は、それぞれ筒状であって一端に袖口71を有し、他端にそれぞれ右袖連結部72と、左袖連結部73とを有する。右袖部16は、右袖連結部72において前身頃12の右袖連結部40と後身頃14の右袖連結部にそれぞれ接合されている。左袖部18は、左袖連結部73において、前身頃12の左袖連結部44と後身頃14の左袖連結部にそれぞれ接合されている。
【0037】
上記のようにして、院内用上衣10は、前身頃12、後身頃14、右袖部16、及び左袖部18が一体化されている。右前身頃48と左前身頃50とは、第1連結部54を第1被連結部66に連結し、第2連結部68において第1面部52と第2面部60とが連結されることによって、右襟ぐり部34Rと左襟ぐり部34Lが合わさって襟ぐり部34が形成される。右前身頃48が着用者Pの肌側、すなわち左前身頃50に対し内側に配置され、左前身頃50が右前身頃48に対し外側に配置される。
【0038】
(作用及び効果)
着用者Pは、第1連結部54、第2連結部68を分離して、右前身頃48と左前身頃50を開いた状態とし、院内用上衣10の内側から右袖部16及び左袖部18にそれぞれ右手及び左手を通し、院内用上衣10を羽織る。次いで、右前身頃48を着用者Pの腹部24に巻き付けるようにして、第1連結部54を第1被連結部66に結び付けて、第1面部52の左方の端部を第2面部60の左脇に連結する。さらに左前身頃50を右前身頃48の外側から覆うようにして右前身頃48に重ね、第2連結部68において、第2面部60を第1面部52に連結する(図1)。
【0039】
右前身頃48は、第1面部52の左方の端部が左前身頃50に連結されることによって、着用者Pの右側の前肩部20Rと、両側の胸部22及び腹部24を覆う。左前身頃50は、第1面部52と第2面部60とが第2連結部68で連結されることによって、左側の、前肩部20Lと、胸部22Lと、腹部24Lとを覆う。すなわち、着用者Pの右脇は、後身頃14と右前身頃48で覆われている。また着用者Pの左脇は、第1面部52の左方の端部と第2面部60との間が、後身頃14と左前身頃50で覆われている。さらに着用者Pの前側上半身の左側半部は、右前身頃48と左前身頃50が前後方向Lに重複している。これにより院内用上衣10は、第2連結部68より下側の左前身頃50が開いた場合でも、右前身頃48が両側の胸部22及び腹部24を覆っているので、着用者Pの肌が意図せず露出することを抑制する。したがって、院内用上衣10を着用した着用者Pは、周囲の視線を気にせず、院内を移動することができる。
【0040】
院内用上衣10は、右前身頃48が左前身頃50より着用者Pの肌に近い側に配置されることによって、右前身頃48が着用者Pの肌により密着して、両側の胸部22及び腹部24を覆うので、着用者Pに安心感を与えることができる。
【0041】
左前身頃50は、左右方向Hの中央で終端していることによって、自重により、第2面部60の中央端辺62が上下方向Vに沿って延びる。したがって、左前身頃50は、余計な皺の発生を抑制し、デザイン性に優れる。院内用上衣10は、右前身頃48が着用者Pの両側の胸部22及び腹部24を覆っているので、左右方向Hの中央で終端している左前身頃50の裾が開いた場合でも、第2連結部68が第1面部52と第2面部60とを連結している限り着用者Pの肌が意図せず露出することを抑制する。
【0042】
次に、着用者Pが上半身の右の前側半部を露出する場合について説明する。まず、第1連結部54と第1被連結部66の連結を解除し、第1面部52の左方の端部を左前身頃50から分離する。右前身頃48は、第1面部52の左方の端部を左前身頃50から分離することによって、左方の端部が自由端となる。右前身頃48は、第2連結部68を起点として自重により垂れ下がり、上半身の右の前側半部を覆った状態を維持する。すなわち、院内用上衣10は、第1面部52の左方の端部を左前身頃50から単に分離しただけでは、着用者Pの上半身を覆った状態を維持する。
【0043】
次いで、着用者Pの右肩に右前身頃48を掛けるように、右前身頃48の裾を引き上げることによって、上半身の右の前側半部、すなわち右側の胸部22R及び腹部24Rを露出させることができる(図3)。この場合、右前身頃48は、第1面部52の左方の端部が左前身頃50から分離し、自由端となるので、右前身頃48を引き上げる力に起因して左前身頃50及び後身頃14を右向き及び上向きへ引っ張る力をほとんど生じない。これにより、院内用上衣10は、右前身頃48の裾を引き上げた場合に、右前身頃48と共に左前身頃50及び後身頃14が引っ張り上げられることが抑制される。
【0044】
また、左前身頃50は、中央において第2連結部68によって右前身頃48と連結されているので、右前身頃48の左方の端部を左前身頃50から分離した場合でも、中央端辺62が左右方向Hの中央の位置に維持されるので、左の前側半部を覆った状態を維持する。
【0045】
したがって、院内用上衣10は、着用者Pの上半身の右の前側半部を露出させた場合に、左前身頃50が左の前側半部、すなわち左側の胸部22L及び腹部24Lを覆った状態を維持し、後身頃14が背中部25を覆った状態を維持することができるので、意図せず上半身の左の前側半部及び背中部25が露出することを抑制できる。
【0046】
次に、着用者Pが上半身の左の前側半部を露出する場合について説明する。まず、第1連結部54と第1被連結部66の連結を解除し、第1面部52の左方の端部を左前身頃50から分離する。次いで、着用者Pの左肩に左前身頃50を掛けるように、左前身頃50の裾を引き上げることによって、上半身の左の前側半部、すなわち左側の胸部22L及び腹部24Lを露出させることができる(図4)。この場合、左前身頃50は、第2連結部68より下側の第2面部60が第1面部52と連結されていない自由端であるので、左前身頃50を引き上げても、右前身頃48及び後身頃14を左向き及び上向きに引っ張る力をほとんど生じない。右前身頃48は、第1連結部54が第1被連結部66から分離されていることによって、上半身の左の前側半部を露出した状態で自重により垂れ下がる。これにより、院内用上衣10は、左前身頃50の裾を引き上げた場合に、上半身の左の前側半部を容易に露出でき、左前身頃と共に右前身頃48及び後身頃14が引っ張り上げられることが抑制される。
【0047】
さらに、右前身頃48は、第2連結部68を起点として自重により垂れ下がり、上半身の右の前側半部を覆った状態を維持する。
【0048】
したがって、院内用上衣10は、着用者Pの上半身の左の前側半部を露出させた場合に、右前身頃48が上半身の右の前側半部、すなわち右側の胸部22R及び腹部24Rを覆った状態を維持し、後身頃14が背中部25を覆った状態を維持することができるので、意図せず上半身の右の前側半部及び背中部25が露出することを抑制できる。したがって、院内用上衣10は、受診者向けの検診衣として用いることができる。
【0049】
以上より、院内用上衣10は、上半身の半部を必要に応じ露出することができると共に、着用者Pの肌が意図せず露出することを抑制することができる。このような院内用上衣10を着用した着用者Pは、健康診断等の検診を受ける際に、不要な部分の肌が露出することを抑制しながら、必要に応じ上半身の半部を露出することができる。
【0050】
第2連結部68は、第1面部52と第2面部60とを分離可能に連結することによって、第1面部52と第2面部60を左右に分離することができる(図5)。そうすると、院内用上衣10を着用した着用者Pがベッドに寝たままの状態でも、介護者などが院内用上衣10を着用者Pに対し容易に着せ替えることができる。したがって、院内用上衣10は、入院患者向けの患者衣として用いることができる。
【0051】
(変形例)
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨の範囲内で適宜変更することができる。
【0052】
上記実施形態の場合、第1連結部54は、紐である場合について説明したが、本発明はこれに限らず、ボタン及び面ファスナーを用いることができる。
【0053】
上記実施形態の場合、第1半部が右前身頃48、第2半部が左前身頃50である場合について説明したが、本発明はこれに限らず、第1半部が左前身頃、第2半部が右前身頃でもよい。
【0054】
図1と同じ構成について同様の符号を付した図6に示すように、前身頃12は、第2連結部68と下端との間に、第1面部52と第2面部60とを分離可能に連結する、第3連結部76を有してもよい。前身頃12は、第3連結部76によって第1面部52と第2面部60とを連結することによって、右前身頃48に対する左前身頃50の裾の位置ずれを抑制する。したがって、院内用上衣10は、例えば、着用者Pが、検査や就寝のため、ベッドに寝た際において、院内用上衣10の乱れを抑制できる。また、院内用上衣10は、第3連結部76を分離することによって、上半身の前側半部を露出可能であると共に、右前身頃48と左前身頃50とを分離できるので、着用者がベッドに寝たままの状態でも、介護者などが院内用上衣10を着用者に対し容易に着せ替えることができる。第3連結部76は、ボタン及び面ファスナーを用いることができる。また第3連結部76は、1つである場合に限らず、2つ以上でもよい。
【0055】
上記実施形態の場合、右前身頃48が着用者の肌に近い側、すなわち左前身頃50に対し内側に配置されている場合について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、図6に示す院内用上衣10Aは、左前身頃50の外側に第1被連結部66が設けられている。第1被連結部66は、左前切替線64に挟み込まれて接合されていてもよい。前身頃12は、第2連結部68を有する。左前身頃50を着用者Pの腹部24に巻き付け、右前身頃48を左前身頃50の外側から覆うようにして左前身頃50に重ね、第1連結部54を第1被連結部66に結び付ける。さらに第2連結部68において、第2面部60を第1面部52に連結する。このようにして、左前身頃50が着用者Pの肌に近い側、すなわち右前身頃48に対し内側に配置され、右前身頃48が左前身頃50に対し外側に配置されてもよい。院内用上衣10Aは、第1被連結部66が左前身頃50の外側に設けられているので、容易に第1連結部54を第1被連結部66に結び付けることができる。
【符号の説明】
【0056】
10,10A 院内用上衣
12 前身頃
14 後身頃
16 右袖部
18 左袖部
20 前肩部
20L 前肩部
20R 前肩部
22 胸部
22L 胸部
22R 胸部
24 腹部
24L 腹部
24R 腹部
25 背中部
26 上端辺
26L 左上端辺
26R 右上端辺
28 下端辺
28L 左下端辺
28R 右下端辺
30 右端辺
32 左端辺
34 襟ぐり部
34L 左襟ぐり部
34R 右襟ぐり部
36 肩合わせ部
36L 左肩合わせ部
36R 右肩合わせ部
38 首テープ
40 右袖連結部
42 右脇部
44 左袖連結部
46 左脇部
48 右前身頃(第1半部)
50 左前身頃(第2半部)
52 第1面部
54 第1連結部
56 左脇端辺
58 左側延長部
60 第2面部
62 中央端辺
64 左前切替線
66 第1被連結部68 第2連結部
71 袖口
72 右袖連結部
73 左袖連結部
76 第3連結部
H 左右方向
L 前後方向
P 着用者
V 上下方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6