(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057384
(43)【公開日】2024-04-24
(54)【発明の名称】絶縁監視装置及び絶縁監視方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/52 20200101AFI20240417BHJP
H02H 3/16 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
G01R31/52
H02H3/16 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164084
(22)【出願日】2022-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 幸司
【テーマコード(参考)】
2G014
5G004
【Fターム(参考)】
2G014AA16
2G014AB33
2G014AC03
2G014AC04
5G004AA01
5G004AB02
5G004BA01
5G004CA02
5G004DA01
5G004DB03
(57)【要約】
【課題】絶縁監視装置において、ソフトウェアにてフーリエ展開処理を行うことなく基本波漏れ電流Ioを求めるようにした。
【解決手段】電力ラインに第1の零相変流器ZCT
1と第2の零相変流器ZCT
2の2つを設け、第2の零相変流器ZCT
2にはテスト用電流を流すためのテスト配線108を通し、測定時にIorテスト電流出力部105から任意の有効分漏れ電流Iorのテスト電流を流す。この状態にて、演算部110は、テスト電流を流していないZCT
1と、流しているZCT
2との双方で検出された出力を比較して、ソフトウェアにてベクトル演算処理を行うことで基本波漏れ電流Ioを算出する。基本波漏れ電流Ioの測定は、常時おこなわれ、測定結果は演算部110のメモリ内111内に格納される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力ラインに設けた零相変流器から取り込んだ漏れ電流と、電力ラインから取り込んだ電圧信号に基づいて基本波有効分漏れ電流を求める絶縁監視装置であって、
前記零相変流器として前記電力ラインに第1の零相変流器と第2の零相変流器を設け、
第2の零相変流器の貫通部に、前記電力ラインと共に貫通させるように配置されるテスト用電線と、
前記テスト用電線にテスト用電流を流すためのテスト電流出力部と、
前記第1の零相変流器からの出力を増幅する第1の増幅部と、
前記第2の零相変流器からの出力を増幅する第2の増幅部と、を有し、
演算部は、前記第1の増幅部の出力と前記第2の増幅部の出力の大きさを比較するベクトル演算を行うことによって前記基本波有効分漏れ電流を算出することを特徴とする絶縁監視装置。
【請求項2】
前記第1の増幅部と前記演算部の間に前記第1の零相変流器から出力された信号のうち50Hz又は60Hzの基本波信号帯域を通す第1のフィルタ回路を設け、
前記第2の増幅部と前記演算部の間に前記第2の零相変流器から出力された信号のうち50Hz又は60Hzの基本波信号帯域を通す第2のフィルタ回路を設けたことを特徴とする請求項1に記載の絶縁監視装置。
【請求項3】
前記演算部は、
前記第1の零相変流器から出力された前記基本波有効分漏れ電流と、
前記第2の零相変流器から出力された前記テスト用電流と前記基本波有効分漏れ電流の合成値から、三角関数の演算を用いて前記基本波有効分漏れ電流を算出することを特徴とする請求項2に記載の絶縁監視装置。
【請求項4】
前記演算部によって算出された前記基本波有効分漏れ電流の計測値を記憶する記憶装置を設け、
前記演算部は算出された前記基本波有効分漏れ電流の値を連続的して、又は、離散的に前記記憶装置に格納し、
前記演算部は、通信手段を用いて格納された前記記憶装置のデータを外部制御装置に出力することを特徴とする請求項3に記載の絶縁監視装置。
【請求項5】
前記演算部は、算出された前記基本波有効分漏れ電流が所定の閾値を超えたか否かを判定し、前記閾値を一定時間以上超えた場合は警報器を用いて警報を発することを特徴とする請求項4に記載の絶縁監視装置。
【請求項6】
電力ラインに設けた零相変流器から取り込んだ漏れ電流と、電力ラインから取り込んだ電圧信号に基づいて演算部によって基本波有効分漏れ電流を求める絶縁監視装置であって、
前記零相変流器の貫通部に、前記電力ラインと共に貫通させるように配置されるテスト用電線と、
前記テスト用電線にテスト用電流を流すためのテスト電流出力部と、
前記零相変流器からの出力を増幅する増幅部と、を有し、
演算部は、
前記テスト電流出力部によって、前記テスト用電線にテスト用電流を流したときの前記零相変流器からの第1の出力を取得して一時的に記憶し、
前記テスト用電線にテスト用電流を流さないときの前記零相変流器からの第2の出力を取得し、
前記記憶された前記第1の出力と、前記取得された第2の出力の大きさを比較するベクトル演算を行うことによって前記基本波有効分漏れ電流を算出することを特徴とする絶縁監視装置。
【請求項7】
前記増幅部と前記演算部の間に前記零相変流器から出力された信号のうち50Hz又は60Hzの基本波信号帯域を通すフィルタ回路を設けたことを特徴とする請求項6に記載の絶縁監視装置。
【請求項8】
前記演算部は、
前記一時記憶された直前の前記基本波有効分漏れ電流と、前記零相変流器から出力された前記テスト用電流と前記基本波有効分漏れ電流の合成値から、三角関数の演算を用いて前記基本波有効分漏れ電流を算出することを特徴とする請求項6に記載の絶縁監視装置。
【請求項9】
電力ラインに設けた零相変流器と、前記零相変流器からの出力を増幅する増幅器と、前記増幅器から出力された信号の基本波信号帯域を通すフィルタ回路と、前記フィルタ回路を通過した信号から信号に基づいて基本波有効分漏れ電流を求める演算部を有する絶縁監視装置における絶縁監視方法であって、
前記零相変流器と増幅器と前記フィルタ回路の組み合わせを2組設け、2組の出力をそれぞれ1つの演算部に入力させ、
前記第2の組の零相変流器の貫通部に、前記電力ラインと共に貫通させるように配置されるテスト用電線を配置し、
前記テスト用電線にテスト用電流を流すためのテスト電流出力部を設け、
前記演算部は、前記テスト用電流を印加しない状態の前記零相変流器からの出力と、前記テスト用電流を印加した状態の前記零相変流器からの出力を比較する演算を行うことによって前記基本波有効分漏れ電流を算出することを特徴とする絶縁監視方法。
【請求項10】
前記演算部は前記比較する演算を繰り返すと共に、それらの結果を読み出し可能な記憶装置に蓄積し、
外部からのコマンドによって前記蓄積された結果を読み出し可能としたことを特徴とする請求項9に記載の絶縁監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力ラインの漏洩電流を計測、監視する絶縁監視装置及び絶縁監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の絶縁監視装置は、50Hz、60Hz等の三相の電路に対して零相変流器(ZCT)を設置して漏洩電流を計測する。この絶縁監視装置として、基本波有効分方式(Ior方式)を用いるものが知られている。基本波有効分方式(Ior方式)とは、零相変流器により検出した商用周波数の電流(Io)と電路電圧を検出し、その電圧をもとに絶縁抵抗により流れる電流(Ior)を検出する方式である。Ior方式の計算方法は、零相変流器(以下ZCTと記載)を使用して漏れ電流を計測し、基本波漏れ電流Ioの演算と、有効分漏れ電流Iorの演算を行っている。基本波漏れ電流Ioを求めるためには、絶縁監視装置に含まれるプロセッサ(マイコン等)を用いて、ソフトウェアにてフーリエ展開処理を行う。また、有効分電流Iorを求めるために、基本波漏れ電流Ioをソフトウェアにてベクトル演算処理を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の絶縁監視装置の計算方法は、ソフトウェアにてフーリエ展開処理とベクトル演算処理を行っているが、計算する内容が多い為、処理終了まで時間がかかってしまう。特に、絶縁監視装置におけるソフトウェア処理を組み込まれたマイコンにて実現する場合には、マイコン自身の処理能力の限界から、リアルタイムによる絶縁監視ができないという問題が生ずることがあった。また、ソフトウェア処理に時間がかかることにより、連続する観測対象波形のすべてに対する有効分漏れ電流Iorの演算ができないという問題も生じていた。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、その目的は、有効分漏れ電流Iorを連続的に計測することができる絶縁監視装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、絶縁監視装置から任意の有効分漏れ電流Iorのテスト電流を流して、テスト電流を流していないときの有効分漏れ電流Iorの計測値と、流しているときの計測値とのベクトル値の差を比較して有効分漏れ電流Iorを素早く計算することを特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの特徴によれば、電力ラインに設けた零相変流器ZCLと、零相変流器からの出力を増幅する増幅器と、増幅器から出力された信号の基本波信号帯域を通すフィルタ回路を有し、フィルタ回路にてフィルタリングした信号を演算部に入力させて、前記演算部は基本波有効分漏れ電流を求める絶縁監視装置に適用される。絶縁監視装置には、零相変流器と増幅器とフィルタ回路の組み合わせを2組設け、2組の出力をそれぞれ1つの演算部に入力させる。また、第2の組の零相変流器ZCL2の貫通部には、電力ラインと共にテスト用電線を配置し、測定の際にIoテスト電流出力部からテスト用電線にテスト用電流を流しながら零相変流器ZCL2による測定ができるように構成した。演算部は、テスト用電流を印加しない状態の零相変流器ZCL1からの出力と、テスト用電流を印加した状態の零相変流器ZCL2からの出力を取得し、これらを比較するベクトル演算を行うことによって有効分漏れ電流Iorを算出する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、絶縁監視装置が実行する有効分漏れ電流Iorのソフトウェアの処理が軽減されるので、有効分漏れ電流Iorの値確定が早くなる。また、1波形ごとに計測及び演算処理が完了するため、計測対象波形の取りこぼしがなくなるという効果がある。さらに、計測の際にテスト電流Itを零相変流器ZCLの貫通部に供給するようにしたが、電力ライン(フィールド)には一切の影響を与えないという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施例に係る絶縁監視装置100の構成図である。
【
図2】絶縁監視装置100にて計測される漏れ電流Ioのベクトル図である。
【
図3】テスト電流Itを流した時に絶縁監視装置100にて計測される漏れ電流Ioのベクトル図である。
【
図4】
図1の絶縁監視装置100による有効分漏れ電流Ior演算の処理手順を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の第2の実施例に係る絶縁監視装置100Aの構成図である。
【
図6】
図5の絶縁監視装置100Aによる有効分漏れ電流Ior演算の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【実施例0009】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。なお、以下の図において、同一の部分には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。
【0010】
図1は本発明の実施例に係る絶縁監視装置100の構成図である。絶縁監視装置100は、モータ等の誘導性負荷の絶縁を監視する装置であり、変圧器10等の電力供給側から負荷20に対する電力ライン11の途中に設けられる。電力ライン11は、交流三相3線式であって、3本の電線(R相、S相、T相)により構成される。電動機等の誘導性負荷20は接地されており、絶縁状態が悪くなると漏洩電流が接地線21に流れる。絶縁監視装置100は、計測した電圧および漏洩電流(漏れ電流とも呼ぶ)の大きさから負荷20の絶縁状態の変動を監視する。
図1では図示していないが、3本の電線(R相、S相、T相)の電圧も、図示しない電圧入力部によって絶縁監視装置100の演算部110に入力され、演算部110のマイコンによって監視される。
【0011】
3本の電線(R相、S相、T相)の経路中には2つの零相変流器(ZCT1、ZCT2)が設けられる。零相変流器ZCTは、広く用いられている公知の計測機器の一つであり、3相分の電線(R相、S相、T相)を一括して貫通部に通すことによって、1相分の電流を変流器2次側へ取り出すことができる。地絡現象が生じていない正常の状態では零相変流器ZCTの2次側には電流は流れないが、地絡現象が生ずると零相変流器を流れる電流のバランスがくずれるために、零相変流器ZCTの2次側に電流が流れることになる。
【0012】
第1の零相変流器(ZCT1)は、従来の絶縁監視装置においても設けられていたものであり、2次側出力線106から得られる出力を増幅部101にて増幅することで、演算部110が通常の漏れ電流Ioを計測できる。演算部110は、CPU(Central Processing Unit)を含んで構成され、ここでは汎用のマイコンを用いて構成できる。演算部110には、揮発性と不揮発性のメモリー111を含んで構成される。増幅部101と演算部110の間には、バンドパスフィルタ回路103が設けられる。バンドパスフィルタ回路103は、ハードウェアで構成した一般的なフィルタ回路である。この回路では、50Hzもしくは60Hzの周波数を含む帯域の信号を通すことで正弦波信号を抽出する。これ以外の周波数帯域の信号は、この回路によって減衰される。バンドパスフィルタ回路103を通すことで、通過した信号は、基本波漏れ電流Ioとなるため、演算部110へ入力される。演算部110は、入力された信号(基本波漏れ電流Io)から、有効分漏れ電流Iorを算出する。この際、演算部110にて従来おこなっていたフーリエ展開のためのソフトウェア処理を削減することができ、以下に説明する簡易な算出方法にて置き換えることができる。
【0013】
本実施例では、第1の零相変流器(ZCT1)に加えて、第2の零相変流器(ZCT2)が設けられる。第1の零相変流器(ZCT1)と第2の零相変流器(ZCT2)は同一構成の機器を用いることができ、いずれも1次側において3本の電線(R相、S相、T相)を一括して貫通部に通すように設置する。但し、第2の零相変流器(ZCT2)では、3本の電力ライン11(R相、S相、T相)に加えて、Iorテスト電流出力部105に接続される1本のテスト用電線108を第2の零相変流器(ZCT2)の貫通部に通すように配置される。つまり、第2の零相変流器(ZCT2)の貫通部には、電力ライン11のR相、S相、T相の3本の電線に加えて、テスト用電線108がR相、S相、T相の3本の電線と同方向に沿うようにして合計4本の電線が貫通部に位置付けられる。テスト用電線108は、第2の零相変流器(ZCT2)の付近の部分的な範囲において電力ライン11と平行に添わせ、ZCT2の貫通部に貫通させた状態で通電される。
【0014】
第2の零相変流器(ZCT2)の2次側出力線107は増幅部102にて増幅される。増幅部102は増幅部101と同じ構成とすれば良い。増幅部102の出力は、バンドパスフィルタ回路104を介してから、演算部110に出力される。バンドパスフィルタ回路104は、バンドパスフィルタ回路103と同一のものである。演算部110は、3本の電線(R相、S相、T相)に起因する有効分漏れ電流Iorと、テスト電流出力部105から加算された任意のテスト電流Itを加えた有効分漏れ電流Ior’の合成電流を検出する。絶縁監視装置100はIorテスト電流出力部105から任意のテスト電流Itを流すことができる。Iorテスト電流出力部105によるテスト電流Itの付加は、絶縁監視装置100の演算部110から制御線112を介した制御信号に従って行われるものであり、予めその値が確定しているため、演算部110は任意の値がいくつなのか認識している。以上のように、本実施例では零相変流器と増幅器とフィルタ回路の組み合わせを2組設け、これら2組の出力をそれぞれ1つの演算部111に入力させるようにした。
【0015】
図2は絶縁監視装置100にて計測され、バンドパスフィルタ回路103を通過した後の漏れ電流Io200を示すベクトル図である。横軸は、図示しない電圧入力部から入力されるR相の計測電圧V
R201であり、電圧V
S202を基準電位とした電圧V
R201の大きさを示している。この横軸の線上を基準とすると、有効分漏れ電流Ior203のベクトルは、電圧V
S202とV
R201と同じ線上となる。一方、コンデンサ成分の漏れ電流Iocは、理論としてIorと90°の位相差がある。基本波漏れ電流Io200はIorとIocが合成された値であるため、基本波漏れ電流Io200のベクトルとなる。この基本波漏れ電流Io200が演算部110へ入力され、演算部110がこのベクトルの長さを認識する。
【0016】
図3はテスト電流を流した時に絶縁監視装置にて計測される漏れ電流のベクトル図である。基本波漏れ電流Io300に、テスト電流It305を流すと
図3となる。絶縁監視装置のテスト電流It305のベクトルは、電圧V
R301と電圧V
S302と同じ方向となる。このテスト電流It305は絶縁監視装置100から出力されるため、演算部110はテスト電流It305分のベクトルの長さを認識している。このテスト電流It305を流すと基本波漏れ電流Io300(理論上は第1の零相変流器(ZCT
1)で検出される基本波漏れ電流Io200と同じ大きさ)にテスト電流It306が合成されることになるので、本来の基本波漏れ電流Io300から基本波漏れ電流Io307へとベクトルが変化する。基本波漏れ電流Io307は、増幅部102、バンドパスフィルタ部104を介して演算部110へ入力されるため、演算部110はベクトル307の長さを認識できる。
【0017】
次に、基本波漏れ電流Io300,307の違いから有効分漏れ電流Ior303を求める。まず初めに、余弦定理から角度θ3を求める。余弦定理の式は、以下となる。
Io3002=Io3072+It3062-2×Io307×It306×Cosθ3
上記式を以下式へ展開する。
Cosθ3=(Io3072+It3062-Io3002)÷2×Io307×It306
【0018】
上記から角度を求めると以下となる。
ArcCosθ3=角度θ3°
角度θ3がわかると角度θ1、θ2をそれぞれ求めることができる
θ1°=90°-θ3°
θ2°=180°-90°-(90°-θ3°)
【0019】
角度θ2がわかると三角関数から有効分電流Ior303を求めることができる。
Ior303+It305=Io307×Cosθ2
上記から有効分電流Ior303を求めると以下となる。
Ior303=Io307×Cosθ2-It305
上記計算式のテンプレートが、マイコンが実行するソフトウェア内にあれば、演算部110を用いた短い演算処理にて有効分電流Ior303の計算が可能となる。
【0020】
次に、
図4のフローチャートを用いて絶縁監視装置100による演算の処理手順を説明する。絶縁監視装置100は、装置が起動したら連続的に3相分の電線(R相、S相、T相)の基本波漏れ電流Ioの検出を開始する。最初に、Iorテスト電流出力部105は、テスト用電線108を介して第2の零相変流器(ZCT
2)の貫通部内に所定のテスト電流Itを流す(ステップ61)。このテスト電流Itは、以降、継続して流した状態のままとする。次に、絶縁監視装置100のZCT
1、ZCT
2は、それぞれ漏れ電流に応じた信号を2次側出力106、107に出力する。2次側出力106、107は増幅部101、102により増幅され、フィルタ回路103、104をそれぞれ通過した後に演算部110に入力される(ステップ62)。次に、絶縁監視装置100の演算部110は、増幅部101にて増幅された出力から基本波漏れ電流Io200(=基本波漏れ電流Io300)を検出し、増幅部102にて増幅された出力から基本波漏れ電流Io300とテスト電流It306の合成値Io307を検出する(ステップ63)。
【0021】
次に、演算部110は、
図3にて説明した方法によって、有効分電流Ior303を算出して、演算部110内の図示しない記憶装置内に記憶する(ステップ64)。次に、演算部110は検出した有効分電流Ior303が閾値を超えているか否かを判定し(ステップ65)、閾値を超えている場合には表示画面上での表示、アラーム音、アラームランプ等によるアラーム表示を行い、監視者にて報知する(ステップ66)。閾値は1つ又は複数設定することがあり、電力路を遮断させるような大きな有効分電流Ior303の場合は、規則に沿った遮断措置等を行う。また、閾値を1度だけ超えたら直ちにアラームを出すのではなく、一定の定められた時間だけ連続で閾値を超え続けたらアラームを出すように構成しても良い。ステップ65にて有効分電流Ior303が閾値未満の場合は、ステップ67に進む。
【0022】
ステップ67では、検出された有効分電流Ior303を外部制御装置150(
図1参照)に送出する。絶縁監視装置100による測定結果を、サーバ装置等の外部制御装置150に送出すれば、電力ライン11の遠隔監視ができる。尚、ステップ68での送出は必ずしもリアルタイムである必要はなく、所定の時間間隔ごとに送出するように構成しても良い。但し、ステップ67にてアラームを出力するような場合は、直ちに外部制御装置150(
図1参照)に送出すると良い。
【0023】
以上、実施例を用いて本発明を説明したが、本発明は上述の構成だけに限られず、他の構成であっても良い。例えば、使用する零相変流器ZCTの数は2つでなくて3つ以上向けるようにしても良い。さらに、従来の絶縁監視装置と同じように1つだけであっても良い。その場合は、
図1の絶縁監視装置100からZCT
1、増幅部101、バンドパスフィルタ部103を取り除いたものと同一の構成が第2の実施例の絶縁監視装置100Aとなる。その構成を示すのが
図5である。
次に、演算部110は次の計測間隔(偶数回目の計測)の際に、テスト用電線108にテスト電流Itを一定時間流す(ステップ74)。この一定時間は、零相変流器ZCTにて2次側出力107を検出するのに要する時間程度であり、テスト電流Itが流れている間に演算部110は漏れ電流Io300を測定する(ステップ75、76)。ここで、次の計測間隔(奇数回目の計測)の開始時点にはテスト電流Itが0に戻るようにテスト電流Itが制御される。次に、演算部110は、メモリ111に一時的に格納された漏れ電流Io200を読み出して、算出された漏れ電流Io300との差分をとることにより、有効分電流Ior303を算出し、その値をメモリ111に格納する(ステップ77)。
次に、演算部110は検出した有効分電流Ior303が、警報を出すか否かを判断するための閾値を超えているかを判定し(ステップ78)、閾値を超えている場合にアラーム表示を行い、監視者または装置付近にいる者に報知する(ステップ79)。閾値は1つ又は複数設定することがあり、電力路を遮断させるような大きな有効分電流Ior303の場合は、規則に沿った遮断措置等を行う。ステップ78にて有効分電流Ior303が閾値未満の場合は、ステップ80に進む。
以上、2つの実施例で説明したように、本発明の絶縁監視装置100、100Aは、ソフトウェアにてフーリエ展開処理を行うことなく、ベクトル演算処理を用いて有効分漏れ電流Iorを計算できるようになった。また、演算部100のCPUによる演算処理にかかる時間を大幅に短縮できたので、すべての電力波形又は大部分の電力波形に対して有効分漏れ電流Iorの検出ができるようになり、有効分漏れ電流Iorを精度の良く監視できるようになった。尚、本発明は上述した実施例の構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。