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特開2024-57387運転支援装置、運転支援方法および記録媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057387
(43)【公開日】2024-04-24
(54)【発明の名称】運転支援装置、運転支援方法および記録媒体
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20240417BHJP
【FI】
G08G1/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164087
(22)【出願日】2022-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】香園 和也
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC14
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL07
5H181LL09
5H181LL15
(57)【要約】
【課題】従来の運転支援装置では他車両の位置を予測して衝突可能性の判定を行うが、他車両が自車両と衝突するかどうかの判定は難しい。判定を誤った場合には衝突の危険性がないのに不要なブレーキ等の衝突回避動作が行われ、ユーザが煩わしく感じる。
【解決手段】自車両と他車両との衝突予測により衝突回避動作を行わせる運転支援装置において、判定時点よりも過去の時点における前記他車両の位置により前記判定時点における位置を予測して予測位置とし、前記判定時点における前記他車両の検出位置と前記予測位置により予測の乖離量を算出し、前記乖離量が設定値よりも大きい場合に前記衝突回避動作を抑制する。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両と他車両との衝突回避動作を行わせる運転支援装置において、
判定時点よりも過去の時点における前記他車両の位置により、前記判定時点における前記他車両の位置を予測して判定予測位置とし、
前記判定時点における前記他車両の判定検出位置と前記判定予測位置により予測の乖離量を算出し、
前記乖離量が設定値よりも大きい場合に前記衝突回避動作を抑制することを特徴とする車両の運転支援装置。
【請求項2】
前記乖離量が所定回数にわたって前記設定値よりも大きい場合に、前記衝突回避動作を抑制することを特徴とする請求項1に記載された車両の運転支援装置。
【請求項3】
前記乖離量は、前記判定検出位置と前記判定予測位置との間の距離であることを特徴とする請求項1または2に記載された車両の運転支援装置。
【請求項4】
前記乖離量は、前記判定検出位置の方向である検出方向と、前記判定予測位置の方向である予測方向との間の乖離角度であることを特徴とする請求項1または2に記載された車両の運転支援装置。
【請求項5】
前記抑制は、前記衝突回避動作を行わないようにすることであることを特徴とする請求項1または2に記載された車両の運転支援装置。
【請求項6】
前記抑制は、前記衝突回避動作を遅延させることであることを特徴とする請求項1または2に記載された車両の運転支援装置。
【請求項7】
コンピュータに、
自車両と他車両との衝突回避動作を実行させる運転支援方法において、
前記他車両の位置を記憶する第1ステップと、
記憶した位置から判定時点における前記他車両の位置を予測して判定予測位置とする第2ステップと、
前記判定時点における前記他車両の判定検出位置と前記判定予測位置により予測の乖離量を算出する第3ステップと、
前記乖離量が設定値よりも大きい場合には、衝突回避動作を抑制する第4ステップを実行させることを特徴とする車両の運転支援方法。
【請求項8】
自車両と他車両との衝突回避動作を実行させる運転支援方法において、
前記他車両の位置を記憶する第1ステップと、
記憶した位置から判定時点における前記他車両の位置を予測して判定予測位置とする第2ステップと、
前記判定時点における前記他車両の判定検出位置と前記判定予測位置により予測の乖離量を算出する第3ステップと、
前記乖離量が設定値よりも大きい場合には、衝突回避動作を抑制する第4ステップをコンピュータに実行させるためのプログラムを記憶したコンピュータで読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、他車両との衝突回避動作をおこなう車両の運転支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、多くの車両に運転支援装置が搭載されている。運転支援装置は、種々の機能を有し得るが、他車両との衝突を回避する衝突回避動作を行う運転支援の機能は、安全性の向上に有効である。
【0003】
特許文献1には、車両の衝突を回避するための支援制御を行う運転支援装置が記載されている。特許文献1の運転支援装置では、他車両の位置を予測して衝突可能性の判定を行い、自車両の速度を減少あるいは上昇させるなどの走行状態の変更により衝突回避動作を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-84115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の運転支援装置では、他車両の位置を予測して衝突可能性の判定を行うが、他車両が自車両と衝突するかどうかの判定は困難である。判定を誤った場合には衝突の危険性がないのに不要なブレーキ等の衝突回避動作が行われ、ユーザが煩わしく感じる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施例における運転支援装置は、自車両と他車両との衝突回避動作を行わせる運転支援装置であって、判定時点よりも過去の時点における前記他車両の位置により、前記判定時点における前記他車両の位置を予測して予測位置とし、前記判定時点における前記他車両の検出位置と前記予測位置により予測の乖離量を算出し、前記乖離量が設定値よりも大きい場合に前記衝突回避動作を抑制することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
他車両が旋回や急制動をした状況では、衝突の可能性が減ることから、そのような状況を素早く検知し、制御介入を遅らせたりキャンセルしたりする等の衝突回避動作の抑制を行う。これにより、不要な衝突回避動作を抑制することができ、ユーザの煩わしさを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】運転支援装置を備えた自車両を示す図。
図2】交差点での自車両と他車両の走行を示す図。
図3】実施例1における、他車両が曲がって走行した場合の検出位置の軌跡と予測位置の軌跡。
図4】実施例1におけるフロー図。
図5】実施例1における予測位置を算出するフロー図。
図6】実施例1における、他車両が曲がらずに制動した場合の検出位置の軌跡と予測位置の軌跡。
図7】実施例1の変形例における検出位置の軌跡と予測位置の軌跡。
図8】実施例2における、他車両が曲がって走行した場合の検出位置の軌跡と予測位置の軌跡。
図9】実施例2におけるフロー図。
図10】実施例2の変形例における、他車両が曲がって走行した場合の検出位置の軌跡と予測位置の軌跡。
図11】実施例3における、他車両が曲がって走行した場合の検出位置の軌跡と予測位置の軌跡。
図12】実施例3における予測位置を算出するフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に、本発明の一実施形態における運転支援装置1を備えた車両の構成を示す。本願では、自車両VMが他車両との衝突回避動作をおこなうものであり、衝突回避動作としては、自車両VMの速度を減少あるいは上昇させたり、ハンドルを回転させて進行方向を変更させたりするなどの走行状態の変更が挙げられる。図1に示すように、自車両VMには、運転支援装置1が設けられる。運転支援装置1は、ECU11、他車両VCを検出するカメラ12、レーダセンサ13、ECU11とカメラ12やレーダセンサ13を接続する信号線14を有している。カメラ12は、フロントガラス上部の内側に、左右に並んで2台備えられ、レーダセンサ13は、車両の前方の左右に1台ずつ設置されている。信号線14から送られたカメラ12の映像とレーダセンサ13により検出されたデータを用いて、ECU11は他車両VCの位置を検出する。走行状態変更装置2は、自動ブレーキ装置、エンジン、自動ハンドル装置、警報鳴動装置等である。走行状態変更装置2は、制御線3を介してECU11から受信する制御信号により、速度を減少あるいは上昇させたり、ハンドルを回転させて進行方向を変更させたりするなどの走行状態の変更を行う。
【0010】
図2により、運転支援装置1を備えた自車両VMが交差点Crにさしかかった状況を示す。図2では、自車両VMは交差点Crを直進し、他車両VCは、自車両VMの右方で交差点Crを左折している。矢印は走行軌跡を示す。自車両VMの走行軌跡は自車両走行軌跡Tmで表し、他車両VCの走行軌跡を他車両走行軌跡Tcで表す。
【0011】
自車両VMの運転支援装置1では、カメラ12により得た映像とレーダセンサ13により検出されたデータを、信号線14を介してECU11に送信する。ECU11は、映像から他車両VCを検出し、自車両VMからみた相対的な他車両VCの位置を算出する。また、ECU11は、メモリ112に記憶したソフトウェアとコンピュータであるCPU111の働きによって、自車両VMの車両センサ(図示せず)等から得た情報により、自車両VMの絶対的な位置と方向と速度を算出している。ECU11は、自車両VMの位置と方向と速度を用いて、他車両VCとの相対的な位置から、他車両VCの絶対的な位置を算出する。CPU111とメモリ112はコンピュータを形成する。
【0012】
ECU11ではメモリ112に記憶したソフトウェアをCPU111で機能させ、他車両VCと自車両VMの絶対的な位置と方向と速度により他車両VCが自車両VMに衝突すると予測した場合に、自動ブレーキ装置等を作動させて衝突回避動作を行わせる。しかし、予測した位置や速度等には誤差があること等から、他車両VCが自車両VMと衝突するか否かの予測判定は難しい。予測判定が誤った場合には、衝突の危険性がないのに不要なブレーキが作動してしまう等により、ユーザが煩わしく感じることとなる。
【0013】
そこで、判定時点よりも過去のデータを用いて判定時点の他車両VCの位置を予測して判定予測位置とする。そして、判定時点で検出した他車両VCの位置である判定検出位置と判定予測位置を比較して、予測の乖離量が設定値よりも大きい場合には、衝突回避動作の抑制を行う。本実施形態では、乖離量が設定値よりも大きい場合には、ECU11により衝突が予測されても衝突回避動作を行わない等の衝突回避動作の抑制を行う。
【実施例0014】
<他車両VCが曲がって走行する場合>
図3に、他車両VCが曲がって走行した際の、検出位置Dの軌跡と予測位置Pの軌跡を示す。検出位置Dの軌跡は実線で、予測位置Pの軌跡は点線で記載している。以下に示す軌跡を含んだ図面についても同様に、軌跡を実線と点線で記載する。検出位置Dと予測位置Pは絶対的な位置であり、移動する方向も絶対的な方向を示す。検出位置Dの軌跡は、他車両走行軌跡Tcである。検出位置Dと予測位置Pは、自車両VMの位置と方向と速度を用いて、カメラ12の映像とレーダセンサ13により検出されたデータによる他車両VCとの相対的な位置から算出される。
【0015】
実施例1では、所定周期ごとの時点t(n)における他車両VCの位置を算出する。そして、過去の3つの時点t(-4)、t(-3)、t(-2)における他車両VCの位置から曲率と速度を算出して予測に用いる。また、予測位置P(n)は衝突の予測判定に用いる。そして、図3において、時点t(0)における判定検出位置D(0)と予測により算出した判定予測位置P(0)の乖離量である乖離距離Sが設定値Sth以上であると、衝突回避動作の抑制を行う。
【0016】
判定予測位置P(0)は次のようにして得られる。4周期前の時点t(-4)から2周期前の時点t(-2)までの他車両VCの3つの位置を算出する。なお、検出位置D(n)と予測位置P(n)は時点t(n)における検出位置と予測位置を示す。そして、算出した検出位置D(-4)~検出位置D(-2)の座標により、検出位置D(-4)と検出位置D(-3)を結ぶ線分D(-4)-D(-3)と、検出位置D(-3)と検出位置D(-2)を結ぶ線分D(-3)-D(-2)がなす角度θを算出する。また、線分D(-4)-D(-3)の長さd3と線分D(-3)-D(-2)の長さd2から、次のように比率γを算出する。
γ=d2/d3・・・(1)
【0017】
式(1)により求めたγにより、線分D(-2)-P(-1)の長さp1は次のように算出される。
p1=γ・d2
さらに、線分P(-1)-P(0)の長さp0は次のように算出される。
p0=γ・p1
【0018】
また、検出位置D(-4)、検出位置D(-3)、検出位置D(-2)の座標から、線分D(-4)-D(-3)と線分D(-3)-D(-2)のなす角度θを算出する。そして、線分D(-3)-D(-2)と線分D(-2)-P(-1)のなす角度と、線分D(-2)-P(-1)と線分P(-1)-P(0)のなす角度は、共に角度θとする。
【0019】
このようにして、時点t(-2)における検出位置D(-2)の座標から、長さp1、p0と角度θによって、時点t(0)における判定予測位置P(0)を算出する。そして、判定検出位置D(0)と判定予測位置P(0)との間の距離である乖離距離Sを算出することができる。
【0020】
次に、図4、5のフロー図により、衝突回避動作を抑制する制御を説明する。フロー図のステップは運転支援方法を示す。また、この制御はメモリ112に記憶されたプログラムによりCPU111で処理を行うことにより実行される。また、このプログラムはコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記憶することができる。
【0021】
運転支援装置1がカメラ12とレーダセンサ13により検出されたデータの映像から他車両VCを認識すると、図4に示すように、第1ステップでは、他車両VCの絶対的な検出位置D(n)を算出して記憶する(ステップS11)。この記憶は、自車両VMの運転支援装置1が衝突を予測するまで周期毎に行う(ステップS12)。これにより、衝突を予測した時点では、その前の各時点t(n)における他車両VCの絶対的な検出位置D(n)がメモリ112に記憶されている。次の第2ステップでは、記憶している検出位置D(n)から判定時点t(0)における位置を予測して判定予測位置P(0)とする(ステップS2)。そして、第3ステップでは、判定予測位置P(0)と判定検出位置D(0)との間の距離である予測の乖離量の乖離距離Sを算出する(ステップS3)。第4ステップでは、乖離距離Sが設定値Sthよりも大きいか判定し(ステップS41)、設定値Sthよりも大きい場合に、衝突回避動作の抑制を行う(ステップS42)。設定値Sthよりも大きくない場合には終了する。
【0022】
ステップS11における、各時点t(n)における他車両VCの絶対的な検出位置D(n)は、自車両VMとの衝突判定に用いられるデータである。そして、検出位置D(n)は、カメラ12により得た映像およびレーダセンサ13により検出されたデータと、自車両VMの車両センサ等により得た自車両VMの絶対的な位置と方向と速度から、他車両VCの絶対的な位置として算出される。
【0023】
ステップS2では、図5に示すステップが行われる。まず、線分D(-4)-D(-3)と線分D(-3)-D(-2)がなす角度θを算出する(ステップS21)。また、線分D(-4)-D(-3)の長さd3で線分D(-3)-D(-2)の長さd2を割って比率γを得る(ステップS22)。そして、長さd2に比率γを掛けて、長さp1を得る(ステップS23)。さらに長さp1に比率γを掛けて長さp0を得る(ステップS24)。そして、検出位置D(-2)と予測位置P(-1)での曲折を角度θとし、検出位置D(-2)の座標から、長さp1、p0と角度θによって、判定予測位置P(0)を算出する(ステップS25)。
【0024】
乖離距離Sが大きい場合には、他車両VCがさらなる急旋回を行っていることが予想され、衝突の危険性は低下していると予想される。また、衝突予測の精度も低くなっている。このような場合に、上記のステップにより衝突回避動作を抑制することができる。衝突回避動作の抑制の具体例としては、衝突を予測しても自動ブレーキや自動ハンドル操作や警報鳴動等の衝突回避動作を行わないようにすることができる。衝突回避動作を行わないようにすることにより、不要な衝突回避動作が行われず、ユーザの煩わしさを回避できる。
【0025】
また、衝突を予測しても衝突回避動作を遅延させることもできる。たとえば、1秒以内に衝突すると判定した場合に、衝突回避動作の抑制を行う運転支援では、乖離量が設定値よりも大きい場合には、1秒を0.7秒に短縮する。これにより、衝突を予想したタイミングより1秒前に衝突回避動作を行う制御から、0.7秒前に衝突回避動作を行う制御に変更され、衝突回避動作が遅延する。衝突回避動作を遅延させることにより、高精度で不要な衝突回避動作が行われず、ユーザの煩わしさを回避できる。
【0026】
<他車両VCが直進する場合>
図3は、他車両VCがカーブする場合の状況を示すが、直進する場合には図6のようになる。図6では、他車両VCはブレーキをかけて減速している状況を示している。このような場合においても、比率γが求められて時点t(0)における判定予測位置P(0)が算出され、実際の判定検出位置D(0)との間で乖離距離Sが算出されて衝突回避動作の抑制がなされる。
【0027】
実施例1の乖離距離Sによる回避動作の抑制では、予測による他車両の予測位置のずれの大きさから衝突回避動作の抑制を行うか判定することができる。そのため、他車両のブレーキや旋回による回避動作による予測位置のずれがある場合に、抑制の判定を適切に行うことができる。
【0028】
<変形例>
実施例1では、判定時点t(0)における判定検出位置D(0)と判定予測位置P(0)の間の乖離距離Sが設定値Sthよりも大きいと衝突回避動作を抑制した。しかし複数の判定時点で乖離距離Sが設定値Sthよりも大きい場合に衝突回避動作を抑制してもよい。変形例における検出位置の軌跡と予測位置の軌跡を図7に示す。変形例では判定時点t(0)と、その1周期前の判定時点t(-1)の2つの判定時点を有する。判定時点t(0)では判定検出位置D(0)と判定予測位置P(0)の間の乖離距離S0を算出する。また、判定時点t(-1)では判定検出位置D(-1)と判定予測位置P(-1)の間の乖離距離S1を算出する。
【0029】
そして、乖離距離S0と乖離距離S1の両方が設定値Sthよりも大きく、2回にわたって乖離距離が設定値よりも大きいことにより、衝突回避動作の抑制がなされる。乖離距離S0が設定値Sthよりも大きくても、乖離距離S1が設定値Sthより大きくない場合には、抑制はなされない。変形例によれば、設定値Sthを実施例1よりも小さい値にしても抑制しすぎることなく、不要な衝突回避動作を抑制することができる。
【0030】
変形例では、所定回数を2回として2回にわたって乖離量が大きい場合に衝突回避動作を抑制する。しかし、所定回数を3回以上としてもよい。
【0031】
実施例1では、絶対的な位置を記憶して判定予測位置P(0)を算出したが、相対的な位置を記憶して判定予測位置P(0)を算出してもよい。また、位置だけでなく各時点t(n)における速度や方向を記憶して、判定予測位置P(0)を算出してもよい。
【実施例0032】
実施例1では、乖離距離Sを予測の乖離量としている。しかし、乖離角度φを予測の乖離量としてもよい。図8は、実施例2における乖離角度φを乖離量とした検出位置Dの軌跡と予測位置Pの軌跡を示す。実施例2では、1周期前の時点t(-1)から、判定時点t(0)への検出位置Dの軌跡と予測位置Pの軌跡における角度の違いが設定値φth以上になると、衝突回避動作を抑制する。具体的には、判定検出位置D(0)の方向である検出方向と、判定予測位置P(0)の方向である予測方向との間の乖離角度φが設定値φthより大きいと、衝突回避動作を抑制する。
【0033】
次に、図9のフロー図により、衝突回避動作を抑制する制御を説明する。フロー図のステップは運転支援方法を示す。また、この制御はメモリ112に記憶されたプログラムによりCPU111で処理を行うことにより実行される。また、このプログラムはコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記憶することができる。
【0034】
運転支援装置1がカメラ12の映像とレーダセンサ13により検出されたデータから他車両VCを認識すると、第1ステップでは、他車両VCの絶対的な検出位置D(n)を算出して記憶する(ステップS11)。この記憶は、自車両VMの運転支援装置1が衝突を予測するまで周期毎に行う(ステップS12)。これにより、衝突を予測した時点t(0)では、その前の各時点t(n)における他車両VCの絶対的な検出位置D(n)がメモリ112に記憶されている。次の第2ステップでは、記憶している検出位置D(n)から判定時点t(0)における位置を予測して判定予測位置P(0)とする(ステップS2)。以上のステップは、実施例1と同様である。
【0035】
実施例2において、第3ステップでは、図9に示すように、判定時点t(0)の一つ前の時点t(-1)における検出位置D(-1)から、判定時点t(0)における判定検出位置D(0)へ向かう線分D(-1)-D(0)の方向である検出方向と、判定予測位置P(0)へ向かう線分D(-1)-P(0)の方向である予測方向の間の乖離角度φを算出する(ステップS5)。第4ステップでは、乖離角度φが設定値φthより大きいか判定し(ステップS61)、設定値φthより大きい場合に、衝突回避動作の抑制を行う(ステップS62)。このような場合にも他車両はハンドル操作により自車両を避けようとしていることが想定される。設定値φthよりも大きくない場合には終了する。
【0036】
<変形例>
実施例2では、判定時点t(0)の一つ前の時点t(-1)における検出位置D(-1)から、判定時点t(0)における判定検出位置D(0)へ向かう線分D(-1)-D(0)と、判定予測位置P(0)へ向かう線分D(-1)-P(0)の間の角度を乖離角度φとした。しかし、複数周期前の時点における検出位置から判定時点t(0)における判定検出位置D(0)へ向かう線分と、判定予測位置P(0)へ向かう線分の間の角度を乖離角度φとしてもよい。
【0037】
図10に示す変形例では、4周期前の時点である時点t(-4)における検出位置D(-4)における角度を乖離角度φとする。図9において、検出位置D(-4)から、判定検出位置D(0)へ向かう線分D(-1)-D(0)の方向である検出方向と、判定予測位置P(0)へ向かう線分D(-1)-P(0)の方向である予測方向の間の角度を乖離角度φとする。そして、この乖離角度φが設定値φthを越えると、衝突回避動作を抑制する。
【0038】
実施例2の乖離角度φによる回避動作の抑制では、予測による他車両の方向のずれの大きさから衝突回避動作の抑制を行うか判定することができる。そのため、他車両の旋回による回避動作による予測位置のずれがある場合に、抑制の判定を適切に行うことができる。
【0039】
実施例1では乖離距離Sを予測の乖離量とし、実施例2では乖離角度φを予測の乖離量とした。しかし、実施例1の乖離距離Sと実施例2の乖離角度φを両方用いて運転支援を行ってもよい。例えば、乖離角度φが大きくなると、乖離距離Sの設定値Sthを小さくするようにしてもよく、その逆にしてもよい。乖離距離Sと乖離角度φの両方を用いることにより、より精度の高い衝突回避動作の抑制の判定を行うことができる。
【実施例0040】
実施例3では、過去の4つの時点における他車両VCの位置から曲率と速度を算出して予測に用いる。実施例3では、他車両VCが一定速度でハンドルを回転させた場合のクロソイド曲線で衝突予測した場合に用いることができる。図11に示すθ(-3)とθ(-2)の角度の変化率Δθは、次のように算出される。
Δθ=θ(-2)/θ(-3)
【0041】
そして、次のようにしてθ(-1)を予測する。
θ(-1)=Δθ・θ(-2)
他車両VCの速度に相当する線分の長さは実施例1と同様にして求める。
【0042】
実施例3では、実施例1の第2ステップにおいて、図12に示す次のようにして予測位置P(0)を予測する。線分D(-4)-D(-3)と線分D(-3)-D(-2)がなす角度θ(-3)を算出する(ステップS71)。また、線分D(-3)-D(-2)と線分D(-2)-D(-1)がなす角度θ(-2)を算出する(ステップS72)。そして、角度θ(-2)を角度θ(-3)で割って変化率Δθとし、角度θ(-2)に変化率Δθを掛けて角度θ(-1)とする(ステップS73)。また、長さd1を長さd2で割って比率γとし、長さd1に比率γを掛けて長さp0とする(ステップS74)。そして、検出位置D(-1)の座標から、長さp1、p0と角度θ(-1)によって、判定予測位置P(0)を算出する(ステップS75)。
【0043】
実施例3では、1回の予測で乖離距離Sを算出している。そして、実施例1と同様に、乖離距離Sを算出し、衝突回避動作を抑制するか判定を行う。
【0044】
実施例3においても、複数の周期にわたる予測により判定予測位置P(0)を算出してもよい。また、実施例3では変化率Δθを用いたが、長さの変化について変化率Δdを求めて判定予測位置P(0)を算出することもできる。また、実施例2のように乖離角度φを乖離量として衝突回避動作を抑制するか判定してもよい。
【0045】
また、実施形態では、カメラ12とレーダセンサ13から得た情報により他車両の位置等を検出したが、カメラ12とレーダセンサ13の何れか一方から得た情報により他車両の位置等を検出してもよい。カメラ12とレーダセンサ13とその他の装置の全部または一部から得た情報により他車両の位置等を検出してもよい。
【0046】
その他、具体的な構成は実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施例は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0047】
VM 自車両
Tm 自車両走行軌跡
VC 他車両
Tc 他車両走行軌跡
Cr 交差点
P(n) 予測位置
D(n) 検出位置
t(n) 時点
P(0) 判定予測位置
D(0) 判定検出位置
t(0) 判定時点
γ 比率
Δθ 変化率
Δd 変化率
S 乖離距離
S0 乖離距離
S1 乖離距離
φ 乖離角度
Sth 設定値
φth 設定値
1 運転支援装置
11 ECU
111 CPU
112 メモリ
12 カメラ
13 レーダセンサ
14 信号線
2 走行状態変更装置
3 制御線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12