(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057390
(43)【公開日】2024-04-24
(54)【発明の名称】環境形成装置及び環境形成方法
(51)【国際特許分類】
G01N 17/00 20060101AFI20240417BHJP
【FI】
G01N17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164093
(22)【出願日】2022-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000108797
【氏名又は名称】エスペック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】植村 匠
(72)【発明者】
【氏名】田辺 将利
【テーマコード(参考)】
2G050
【Fターム(参考)】
2G050BA06
2G050EA02
(57)【要約】
【課題】応答遅れを抑制しつつ、環境形成槽内に導入する水蒸気流量を調整する。
【解決手段】環境形成装置10は、所定の湿度環境を形成するための環境形成室18を有する環境形成槽12と、貯水槽31及びヒータ32を有し、貯水槽31に溜められた水をヒータ32で加熱することによって水蒸気を発生させる蒸気発生器14と、環境形成槽12と蒸気発生器14とをつなぐ配管16と、配管16に設けられた電動弁38と、環境形成室18の湿度を取得するための湿度検知器28と、ヒータ32及び電動弁38を制御するように構成されたコントローラ45と、を備える。コントローラ45は、環境形成室18内の湿度を制御する湿度運転において、湿度検知器28によって取得された湿度に基づいて電動弁38の開度を変える制御を実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の湿度環境を形成するための環境形成室を有する環境形成槽と、
貯水槽及びヒータを有し、前記貯水槽に溜められた水を前記ヒータで加熱することによって水蒸気を発生させるように構成された蒸気発生器と、
前記環境形成槽と前記蒸気発生器とをつなぐ配管と、
前記配管に設けられた電動弁と、
前記環境形成室の湿度を取得するための湿度検知器と、
前記ヒータ及び前記電動弁を制御するように構成されたコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、前記環境形成室内の湿度を制御する湿度運転において、前記湿度検知器によって取得された湿度に基づいて前記電動弁の開度を変える制御を実行する、環境形成装置。
【請求項2】
前記コントローラは、前記環境形成室内の湿度を制御する湿度運転を開始する前に、前記貯水槽内で水蒸気が発生するように前記ヒータを制御するとともに前記発生した水蒸気が前記環境形成槽内に流入しないように又はほとんど流入しないように前記電動弁を制御し、かつ、前記湿度運転の開始時に、前記発生した水蒸気が前記環境形成槽内に流入するように前記電動弁を制御するように構成されている、請求項1に記載の環境形成装置。
【請求項3】
前記コントローラは、前記湿度運転の開始時に、前記電動弁の開度を徐々に大きくするように前記電動弁を制御し、その後、前記湿度検知器によって取得された湿度に基づく前記電動弁の開度制御に移行するように構成されている、請求項2に記載の環境形成装置。
【請求項4】
前記コントローラは、前記湿度運転の開始時に、前記湿度検知器によって取得された湿度に基づく前記電動弁の開度制御に移行するように構成されている、請求項2に記載の環境形成装置。
【請求項5】
前記コントローラは、前記湿度運転において、前記貯水槽内の水温が一定になるように前記ヒータを制御する、請求項1から4のいずれか1項に記載の環境形成装置。
【請求項6】
前記配管における前記電動弁よりも前記貯水槽側の部位に、リリーフ弁が設けられる、請求項1から4のいずれか1項に記載の環境形成装置。
【請求項7】
環境形成槽内の環境形成室において所定の湿度環境を形成する環境形成方法であって、
前記環境形成槽の外に配置された蒸気発生器において、貯水槽に溜められた水をヒータで加熱することによって水蒸気を発生させ、
湿度検知器によって前記環境形成室の湿度を取得し、
前記環境形成室内の湿度を制御する湿度運転において、前記湿度検知器によって取得された湿度に基づいて、前記環境形成槽と前記蒸気発生器とをつなぐ配管に設けられた電動弁の開度を調整することによって、前記環境形成室内の湿度を調整する、環境形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境形成装置及び環境形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所定の湿度環境を形成するための環境形成装置が知られているが、環境形成装置において、所定の湿度環境を形成する構成として、水蒸気発生機構が環境形成槽内に設けられる加湿皿タイプと、水蒸気発生機構が環境形成槽の外に設けられる加湿ボイラタイプとがある。加湿皿タイプは、発生させる水蒸気量が少ないため、主に小型の環境形成装置に用いられる。一方、加湿ボイラタイプは、多量の水蒸気を必要とする大型の環境形成装置に用いられる。
【0003】
加湿ボイラタイプの水蒸気発生機構が用いられた環境形成装置の一例が、下記特許文献1に開示されている。この文献に開示された環境形成装置は、環境形成室を有する環境形成槽と、貯水槽及びヒータを有し、環境形成装置の外側に配置される蒸気発生器と、蒸気発生器と環境形成槽とを互いに接続する配管と、を備えている。そして、貯水槽に溜められた水をヒータで加熱することによって水蒸気を発生させ、この水蒸気を配管を通して環境形成槽に流入させる。これにより、環境形成槽内を加湿することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、環境形成室内の湿度を制御することまでは開示されていないが、この環境形成装置において、環境形成室の湿度を制御する場合には、要求される加湿量に応じて蒸気発生器のヒータを制御する方法を採用できる。この場合には、環境形成槽に設けられた湿度検知器の検知結果を用いてヒータ出力の制御を行う方式を採用することができる。しかしながら、ヒータ出力の制御によって湿度制御を行う場合には、応答遅れを生じる虞がある。すなわち、貯水槽は一般的に、多量の水蒸気量を必要とする大型の環境形成槽に用いられるため、水量及びヒータ容量ともに大きい。また、多くの水量を溜められる貯水槽は環境形成槽から離れて配置されるため、配管も長くなってしまう。また、ヒータの熱量と蒸気発生量が必ずしもリニアの関係ではないため、湿度検知器によって環境形成槽の湿度を検知したとしても、その検知結果に基づくヒータ出力制御の場合、蒸気発生量を精度良くコントロールすることは難しい。これらの要因によって、応答遅れが生ずる虞がある。
【0006】
そこで、本発明は、前記従来技術を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、応答遅れを抑制しつつ、環境形成槽内に導入する水蒸気流量を調整することができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するため、本発明に係る環境形成装置は、所定の湿度環境を形成するための環境形成室を有する環境形成槽と、貯水槽及びヒータを有し、前記貯水槽に溜められた水を前記ヒータで加熱することによって水蒸気を発生させるように構成された蒸気発生器と、前記環境形成槽と前記蒸気発生器とをつなぐ配管と、前記配管に設けられた電動弁と、前記環境形成室の湿度を取得するための湿度検知器と、前記ヒータ及び前記電動弁を制御するように構成されたコントローラと、を備える。前記コントローラは、前記環境形成室内の湿度を制御する湿度運転において、前記湿度検知器によって取得された湿度に基づいて前記電動弁の開度を変える制御を実行する。
【0008】
本発明では、電動弁の開度を変えることにより、配管を通して環境形成槽内に導入される水蒸気の流量を変えることができる。電動弁は、環境形成槽と蒸気発生器とをつなぐ配管に設けられているため、貯水槽に比べれば環境形成槽に近い位置にある。このため、電動弁の開度を調整する構成では、貯水槽内で蒸気発生量を調整する構成に比べて、環境形成槽内に導入される水蒸気流量を素早く変えることができる。しかも、貯水槽のヒータ出力を調整することによって水蒸気発生量を調整する構成では、貯水槽に溜められた水容量の影響で応答遅れが生ずる可能性があるが、電動弁の開度を調整することによって環境形成槽内に導入する水蒸気流量の調整を行う構成では、そのような応答遅れが生ずることもない。また、貯水槽のヒータ出力を調整することによって水蒸気発生量を調整する構成では、ヒータの熱量と水蒸気発生量とが必ずしもリニアの関係になっていないことから、所定量の水蒸気を発生させるタイミングを制御しにくいが、電動弁の開度を調整することによって環境形成槽内に導入する水蒸気流量の調整を行う構成では、電動弁の開度に応じて水蒸気流量をコントロールできる。このため、水蒸気を環境形成槽内に導入するタイミングをコントロールしやすい。したがって、本発明では、応答遅れを抑制しつつ、環境形成槽内に導入する水蒸気流量を調整することができる。
【0009】
前記コントローラは、前記環境形成室内の湿度を制御する湿度運転を開始する前に、前記貯水槽内で水蒸気が発生するように前記ヒータを制御するとともに前記発生した水蒸気が前記環境形成槽内に流入しないように又はほとんど流入しないように前記電動弁を制御し、かつ、前記湿度運転の開始時に、前記発生した水蒸気が前記環境形成槽内に流入するように前記電動弁を制御するように構成されていてもよい。
【0010】
この態様では、環境形成室内の湿度を制御する運転である湿度運転を開始する前に、貯水槽内で水蒸気を発生させるが、この蒸気発生器で発生した水蒸気は、配管内に流入するものの電動弁を通過しない又はほとんど通過しないため、発生した水蒸気は環境形成槽内に流入しない又はほとんど流入しない。そして、湿度運転の開始時に、水蒸気を環境形成槽内に流入させる。このときには既に、水蒸気が電動弁のところまでは存在しているため、電動弁の制御により、水蒸気をタイミング良く環境形成槽内に流入させることができる。したがって、湿度運転を開始する際においても、湿度制御の応答遅れを抑制できる。なお、「湿度運転の開始時に」には、湿度運転の開始直後、開始する時及び開始直前の少なくとも一つにおいて、水蒸気を流入させるものが含まれる。
【0011】
前記コントローラは、前記湿度運転の開始時に、前記電動弁の開度を徐々に大きくするように前記電動弁を制御し、その後、前記湿度検知器によって取得された湿度に基づく前記電動弁の開度制御に移行するように構成されてもよい。
【0012】
この態様では、電動弁の開度を大きくすることに伴って貯水槽内の圧力が急激に変化して、水蒸気発生量が急激に変化することを防止することができる。例えば、水蒸気が環境形成槽内に流入するように電動弁の開度を急激に大きくする場合には、貯水槽に溜められた水が突沸する虞があるが、電動弁の開度を徐々に大きくすることにより、突沸を未然に防止することができる。したがって、水蒸気の発生量が急激に増えることを防止できる。
【0013】
前記コントローラは、前記湿度運転の開始時に、前記湿度検知器によって取得された湿度に基づく前記電動弁の開度制御に移行するように構成されてもよい。
【0014】
この態様では、例えば、蒸気発生器が密閉構造ではなく、電動弁の開度を急激に大きくした場合でも貯水槽内の圧力が急激に変化しないような場合において、貯水槽に溜められた水が突沸することを抑制できる。したがって、湿度検知器の検出結果に基づく電動弁の開度制御を早期に開始できる。
【0015】
前記コントローラは、前記湿度運転において、前記貯水槽内の水温が一定になるように前記ヒータを制御してもよい。
【0016】
この態様では、湿度運転において貯水槽内の水温が一定に調整されるため、湿度運転時において水蒸気発生量を安定させることができる。このため、電動弁の開度と環境形成槽内への水蒸気の流入量との関係を安定させることができる。したがって、湿度運転時の湿度制御をより正確に行うことができる。
【0017】
前記配管における前記電動弁よりも前記貯水槽側の部位に、リリーフ弁が設けられていてもよい。この態様では、配管内の圧力が過上昇することを防止できる。したがって、電動弁の上流側における配管内の圧力を安定させることができる。
【0018】
本発明に係る環境形成方法は、環境形成槽内の環境形成室において所定の湿度環境を形成する環境形成方法であって、前記環境形成槽の外に配置された蒸気発生器において、貯水槽に溜められた水をヒータで加熱することによって水蒸気を発生させ、湿度検知器によって前記環境形成室の湿度を取得し、前記環境形成室内の湿度を制御する湿度運転において、前記湿度検知器によって取得された湿度に基づいて、前記環境形成槽と前記蒸気発生器とをつなぐ配管に設けられた電動弁の開度を調整することによって、前記環境形成室内の湿度を調整する。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明によれば、応答遅れを抑制しつつ、環境形成槽内に導入する水蒸気流量を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本実施形態に係る環境形成装置の全体構成を概略的に示す図である。
【
図2】前記環境形成装置による環境形成方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
図1に示すように、本実施形態に係る環境形成装置10は、環境形成室内を所定の温度及び湿度に維持し、環境形成室内に配置された供試体をこの温度及び湿度環境に晒す環境試験を行う環境試験装置として構成されている。環境形成装置10は、恒温恒湿槽として構成された環境形成槽12と、蒸気発生器14と、両者を繋ぐ配管16と、を備えている。
【0023】
環境形成槽12は、所定の温度湿度環境を形成するための環境形成室18と、環境形成室18に隣接する空調室19と、を有している。環境形成室18及び空調室19は、断熱壁によって一体的に形成されており、環境形成室18と空調室19とは仕切り壁20を介して互いに隣り合っている。
【0024】
空調室19には、環境形成室18内を所定温度及び湿度にするために空調空気を生成する空調機が配置されている。この空調機には、空気を加熱する加熱器22と、空気を冷却する冷却器23と、蒸気発生器14から導入される水蒸気を流出させる流出口24と、空調室19内の空調空気を環境形成室18に吹き出す送風機25と、が含まれる。
【0025】
環境形成室18は、供試体を配置可能な大きさを有しており、供試体の出入口18aが設けられている。
【0026】
環境形成槽12には、環境形成室18内の温度を取得する温度検知器27と、環境形成室18内の湿度を取得する湿度検知器28と、が設けられている。温度検知器27は、温度センサによって構成されている。温度検知器27は、環境形成室18内の空気の温度を取得できるのであれば、環境形成室18内に配置されて環境形成室18内の温度を直接的に検知する構成であっても、空調室19内に配置されて、空調室19内の温度から環境形成室18内の温度を推定するものであってもよい。また、湿度検知器28は、湿度センサによって構成されている。湿度検知器28は、環境形成室18内の空気の湿度を取得できるのであれば、環境形成室18内に配置されて環境形成室18内の湿度を直接的に検知する構成であっても、空調室19内に配置されて、空調室19内の湿度から環境形成室18内の湿度を推定するものであってもよい。
【0027】
蒸気発生器14は、水を溜められる貯水槽31と、貯水槽31に溜められた水を加熱するためのヒータ32と、水位を検知する水位計33と、水の温度を検知する水温計34と、を備えている。ヒータ32が作動することにより、貯水槽31内の水が蒸発し、水蒸気が発生する。なお、貯水槽31は、密閉された構造でもよく、溜められた水が所定量を超えるとオーバーフローするように構成された反密閉型の構造でもよい。水位計33は、省略可能である。
【0028】
配管16は、貯水槽31内で発生した水蒸気を空調室19内に導入可能に、蒸気発生器14と環境形成槽12とを互いに接続している。配管16の先端は、上述した流出口24として空調室19内に開口している。
【0029】
配管16には、電動弁38が設けられている。電動弁38は、なるべく流出口24に近い位置に配置されるのが好ましく、環境形成槽12との距離が貯水槽31との距離よりも短くなる位置に配置されるのが望ましい。
【0030】
電動弁38は、開度を任意の開度に変えられるタイプの弁である。電動弁38の開度が変更されることにより、配管16の開口面積が変わり、電動弁38を通過する水蒸気の流量が変わる。したがって、電動弁38の開度に応じて、貯水槽31から環境形成槽12へ流入する水蒸気の流量が調整される。電動弁38が閉じられると、貯水槽31内と環境形成槽12内との間が遮断されるため、貯水槽31内の水蒸気は環境形成槽12内に流入できない。
【0031】
配管16には、電動弁38よりも上流側、すなわち、電動弁38よりも蒸気発生器14側の部位に圧力検知器41とリリーフ弁42とが設けられている。圧力検知器41は、電動弁38の上流側での水蒸気の圧力を検知するように構成されている。リリーフ弁42は、電動弁38の上流側における配管16内の圧力が設定された値を超えると、配管16内の水蒸気を放出するように構成されている。なお、圧力検知器41は配管16ではなく、蒸気発生器14に設けられてもよく、またリリーフ弁42も配管16ではなく、蒸気発生器14に設けられてもよい。
【0032】
温度検知器27、湿度検知器28、空調機、電動弁38、圧力検知器41、水温計34、ヒータ32は、コントローラ45に電気的に接続されている。コントローラ45は、恒温恒湿槽の各種動作を制御可能に構成されたコンピュータによって構成されており、このコンピュータの中央演算処理装置(CPU;Central Processing Unit)により実行されるコントローラ45の機能には、温湿度設定部45aと、温度制御部45bと、ヒータ制御部45cと、弁制御部45dと、が含まれている。
【0033】
温湿度設定部45aは、環境形成室18の温度及び湿度を設定するための機能部であり、温度のみを設定することも、温度及び湿度を設定することも可能となっている。本実施形態では、例えば、温度のみを制御する温度運転が第1運転として行われ、その次の第2運転において、温度及び湿度を制御する湿度運転が行われるものとする。そのため、ある温度が設定温度として設定された第1運転が登録されるとともに、ある温度及びある湿度が設定温度及び設定湿度として設定された第2運転も登録されるものとする。
【0034】
温度制御部45bは、温度検知器27によって検知された温度が、温湿度設定部45aによって設定された設定温度になるように、加熱器22及び冷却器23を制御する。温度制御部45bは、第1運転を継続する時間として設定された時間だけ、第1運転用の設定温度に合わせる加熱器22及び冷却器23の制御を行い、その後、第2運転を継続する時間として設定された時間だけ、第2運転用の設定温度に合わせる加熱器22及び冷却器23の制御を行う。
【0035】
ヒータ制御部45cは、第2運転(湿度運転)において、水温計34の測定結果に基づいて、ヒータ32を制御するように構成されている。すなわち、ヒータ制御部45cは、貯水槽31に溜められた水の温度が所定温度になるように、ヒータ32の出力を調整する。このため、貯水槽31内の水温は一定の温度に維持され、所定量の水蒸気を発生させることができる。このときの所定温度は、水の沸点であってもよく、沸点に対して僅かに低い温度であってもよい。沸点未満の温度であったとしても、貯水槽31内の水から水蒸気が発生するからである。
【0036】
ヒータ制御部45cは、湿度運転が行われる場合において、湿度運転に先だってヒータ32を作動させる。すなわち、温湿度設定部45aによって、温度及び湿度が設定された第2運転が登録されるため、ヒータ制御部45cは、第2運転を開始する前にヒータ32を作動させる。これにより、湿度運転が開始される前に水蒸気を配管16内に流入させておくことができる。本実施形態では、第1運転も登録されるため、第1運転開始時或いは第1運転中にヒータ32が作動される。第1運転中におけるヒータ32の制御においても、第2運転中におけるヒータ32の制御と同様、貯水槽31に溜められた水の温度が一定になるようにヒータ出力の制御が行われる。なお、ヒータ32の制御は、第1運転中の全体の期間に亘って行われてもよいが、必ずしもその必要はなく、第1運転中の少なくとも一部の期間で行われればよい。要は、湿度運転を開始する時点において、所定量の水蒸気が準備できているようにヒータ32の制御を行えばよい。
【0037】
また、ヒータ制御部45cは、水温が一定になるようにヒータ32を制御しているときに、圧力検知器41によって検知された水蒸気の圧力が予め定められた圧力よりも高くなると、ヒータ32の能力を下げる制御を行う。これにより、配管16内の圧力が過剰に高くなることが防止される。
【0038】
弁制御部45dは、湿度運転(第2運転)において、湿度検知器28によって取得された湿度に基づいて、電動弁38を制御するように構成されている。すなわち、弁制御部45dは、湿度検知器28によって取得された湿度が、温湿度設定部45aによって設定された湿度になるように、電動弁38の開度を制御する。
【0039】
また、弁制御部45dは、第2運転の開始時には、電動弁38の開度を徐々に大きくするように電動弁38の制御を行う。すなわち、弁制御部45dは、圧力検知器41によって圧力(配管16又は貯水槽31内の圧力)を検知しつつ電動弁38の開度を調整しており、所定開度だけ開度を大きくしたときに検知圧力が所定圧力以上下がらなければ、再度、所定開度大きくするようにして徐々に開度を大きくするように電動弁38を制御する。このとき、所定時間当たりの開度変化量に制限値を設けておいて、この制限値の範囲内で開度を変化させてもよい。
【0040】
ここで、環境形成装置10を用いて、環境形成室18において所定の湿度環境を形成する環境形成方法について、
図2を参照しつつ説明する。なお、本実施形態では、温度のみを制御する温度運転(第1運転)を行った後、温度及び湿度を制御する湿度運転(第2運転)を行うため、ここでは、その場合の環境形成方法について説明する。
【0041】
まず、温度及び湿度の設定を行う(ステップST11)。このステップでは、第1運転での試験温度を設定するとともに第2運転での試験温湿度を設定する。したがって、第1運転における設定温度を図外の入力装置を通して入力し、また、第2運転における設定温度及び設定湿度を図外の入力装置を通して入力する。これにより、第1運転での設定温度がコントローラ45に記憶されるととともに、第2運転での設定温度及び設定湿度がコントローラ45に記憶される。なお、このとき、第1運転の試験時間及び第2運転の試験時間も設定する。
【0042】
供試体を環境形成室18内に配置した後、コントローラ45が試験開始指令を受けると、第1運転を開始する(ステップST12)。第1運転では、温度検知器27によって検知された温度が、第1運転に対する設定温度になるように、加熱器22及び冷却器23が制御され、送風機25が作動することにより、空調空気が環境形成室18及び空調室19内を循環する。これにより、環境形成室18内が設定温度に調整される。第1運転は、設定された試験時間だけ継続される。
【0043】
この第1試験において、蒸気発生器14において水蒸気を発生させる(ステップST13)。すなわち、蒸気発生器14のヒータ32を作動させて、貯水槽31内の水を加熱する。これにより貯水槽31内において水蒸気が発生し、この水蒸気は配管16内にも流入する。ただし、第1試験時には電動弁38が閉じられているため、水蒸気は電動弁38より先には流れない。これにより、湿度運転を開始する前に、電動弁38のところまでは水蒸気が存在する状態にしておくことができる。
【0044】
第1試験時において水蒸気を発生させる際には、水温計34によって測定される水温が一定になるようにヒータ32が制御されるが、必ずしも水温一定制御を行う必要はない。なおこのとき、電動弁38を完全に閉じておいてもよいが、水蒸気が電動弁38をほとんど通過しないのであれば、電動弁38が僅かに開けられていてもよい。
【0045】
第1運転の試験時間が経過すると第2運転に移行する(ステップST14)。第2運転では、湿度運転を行うため、環境形成室18内の温度及び湿度が、設定された温度及び湿度になるように、加熱器22、冷却器23、電動弁38及びヒータ32が制御される。
【0046】
第2運転では、まず、電動弁38の開度を徐々に大きくする移行運転が行われ、その後、湿度検知器28によって取得された湿度に基づいて電動弁38の開度を調整する制御運転が行われる。すなわち、湿度運転の開始時には、環境形成室18内の湿度を急激に変更する可能性があり、その場合において、電動弁38を開けることによって貯水槽31内の圧力が急激に変動しないように、電動弁38の開度を徐々に大きくする。このとき、圧力検知器41によって圧力(配管16又は貯水槽31内の圧力)を検知しており、電動弁38の開度を所定開度だけ大きくしたときに検知圧力が所定圧力以上下がらなければ、再度、所定開度だけ大きくするようにして、これを繰り返しながら徐々に開度を大きくする。そして、電動弁38の開度が、湿度検知器28によって取得された湿度(取得湿度)と設定湿度との差分に基づく開度になると、制御運転に移行する。これ以降は、取得湿度と設定湿度との差分に基づくフィードバック制御(例えばPID制御)によって電動弁38の開度が制御される。すなわち、湿度を上げていく場合においては、取得湿度と設定湿度との差分が大きくなると、開度が大きくなる方向に電動弁38を制御する。このため、開度の変化量に応じて、環境形成槽12内に導入される水蒸気の流量が増加する。一方、取得湿度と設定湿度との差分が小さくなると、開度が小さくなる方向に電動弁38を制御する。このため、開度の変化量に応じて、環境形成槽12内に導入される水蒸気の流量が減少する。これにより、湿度検知器28による取得湿度が設定温度に近づくように、環境形成室18内の湿度が調整される。
【0047】
第2運転においても、水温計34によって測定される水温が一定になるようにヒータ32が制御される。このため、貯水槽31内の水蒸気発生量が安定し、電動弁38の開度と環境形成槽12内への水蒸気の流入量との関係も安定する。なお、第2運転(制御運転)においても、必ずしも水温一定制御を行う必要はない。
【0048】
以上説明したように、本実施形態では、電動弁38の開度を変えることにより、配管16を通して環境形成槽12内に導入される水蒸気の流量を変えることができる。電動弁38は、環境形成槽12と蒸気発生器14とをつなぐ配管16に設けられているため、貯水槽31に比べれば環境形成槽12に近い位置にある。このため、電動弁38の開度を調整する構成では、貯水槽31内で蒸気発生量を調整する構成に比べて、環境形成槽12内に導入される水蒸気流量を素早く変えることができる。しかも、貯水槽31のヒータ32の出力を調整することによって水蒸気発生量を調整する構成では、貯水槽31に溜められた水容量の影響で応答遅れが生ずる可能性があるが、電動弁38の開度を調整することによって環境形成槽12内に導入する水蒸気流量の調整を行う構成では、そのような応答遅れが生ずることもなく、応答性が良い。また、貯水槽31のヒータ32の出力を調整することによって水蒸気発生量を調整する構成では、ヒータ32の熱量と水蒸気発生量とが必ずしもリニアの関係になっていないことから、所定量の水蒸気を発生させるタイミングを制御し難いが、電動弁38の開度を調整することによって環境形成槽12内に導入する水蒸気流量の調整を行う構成では、電動弁38の開度に応じて水蒸気流量をコントロールできる。このため、水蒸気を環境形成槽12内に導入するタイミングをコントロールしやすい。したがって、応答遅れを抑制しつつ、環境形成槽12内に導入する水蒸気流量を調整することができる。
【0049】
また、本実施形態では、湿度運転を開始する前に、貯水槽31内で水蒸気を発生させるが、この蒸気発生器14で発生した水蒸気は、配管16内に流入するものの電動弁38を通過しないため、発生した水蒸気は環境形成槽12内に流入しない。そして、湿度運転の開始時に、水蒸気を環境形成槽12内に流入させる。このときには既に、水蒸気が電動弁38のところまでは存在しているため、電動弁38の制御により、水蒸気をタイミング良く環境形成槽12内に流入させることができる。したがって、湿度運転を開始する際においても、湿度制御の応答遅れを抑制できる。
【0050】
しかも本実施形態では、湿度運転開始時に電動弁38の開度を徐々に大きくする。このため、電動弁38の開度を大きくすることに伴って貯水槽31内の圧力が急激に変化して水蒸気発生量が急激に変化することを防止することができる。例えば、水蒸気が環境形成槽12内に流入するように電動弁38の開度を急激に大きくする場合には、貯水槽31に溜められた水が突沸する虞があるが、電動弁38の開度を徐々に大きくすることにより、突沸を未然に防止することができる。したがって、水蒸気の発生量が急激に増えることを防止できる。
【0051】
また本実施形態では、湿度運転において貯水槽31内の水温が一定になるようにヒータ32が制御されるため、湿度運転時において水蒸気発生量を安定させることができる。このため、電動弁38の開度と環境形成槽12内への水蒸気の流入量との関係を安定させることができる。したがって、湿度運転時の湿度制御をより正確に行うことができる。
【0052】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。例えば、湿度運転において、ヒータ制御部45cは、水温計34によって測定された水温が所定温度になるようにヒータ32の出力を調整するように構成されているが、これに限られない。例えば、ヒータ制御部45cは、圧力検知器41による検知結果に基づいて、検知圧力が設定圧力になるようにヒータ32の出力を調整するように構成されていてもよい。この場合、検知された圧力が設定圧力になるようにヒータ出力をPID制御する。このとき、圧力が電動弁38の開度によって過敏に変化するため、一定時間の移動平均を検知圧力として採用してもよい。
【0053】
湿度運転での設定湿度が高い高湿運転と、設定湿度が低い低湿運転とでは、水蒸気の要求量が異なるため、高湿運転での電動弁38の開度はより大きくなり易くなる。そのために、高湿運転では、圧力検知器41による検知圧力が低くなる可能性がある。そこで、設定湿度によらず貯水槽31内の圧力が一定になるようにヒータ32を制御することにより、検知圧力が低くなり易い高湿運転時には、ヒータ出力がより高く制御されるようにし、高湿運転の際には、より多くの水蒸気を発生させて、要求水蒸気量に合わせた制御を行うようにすることができる。
【0054】
なお、設定湿度に応じて、貯水槽31内の設定圧力を異ならせるようにしてもよい。例えば、高湿運転のときの設定圧力を低湿運転のときの設定圧力よりも高い値に設定してもよい。すなわち、低湿運転では要求される水蒸気量が少なくなるため、設定圧力を低く抑えることによって、水蒸気発生量を低く抑えるようにしてもよい。この場合、設定圧力を、設定湿度に応じて加減算するようにしてもよい。
【0055】
また、ヒータ制御部45cが、圧力検知器41による検知結果に基づいてヒータ32の出力を制御する場合においても、湿度運転の開始時には、電動弁38の変化速度に制限を設けるようにしてもよい。
【0056】
前記実施形態では、湿度運転において設定湿度を一定値に維持する制御を行う構成としたが、これに代え、湿度運転において、設定湿度を次第に変化させる運転を行ってもよい。例えば、設定湿度をリニアに変化させてもよい。設定湿度をリニアに変化させる場合、電動弁38の開度は、設定湿度の変化に伴い変更されることになる。すなわち、電動弁38の開度は取得湿度と設定湿度との差分に基づいて調整されるが、例えば、設定湿度が徐々に大きくなる場合には、電動弁38の開度は徐々に大きくなり得る。この場合、実際の湿度もリニアに変化するため、結果として、環境試験室18内の湿度が設定湿度の変化に応じて調整されることになる。しかも、電動弁38の開度を調整する方式では、応答性が良いため、湿度の制御性が良い。
【0057】
前記実施形態では、温度運転を行った後に湿度運転を行うようにしているが、温度運転を省略してもよい。この場合、湿度運転を開始する前に、水蒸気を発生させるための準備運転を行うようにしてもよい。この準備運転では、ヒータ制御部45cが蒸気発生器14のヒータ32を作動させて、水蒸気を発生させる。このとき、電動弁38は閉じられている。そして、水温計34の温度が設定温度に達した後、あるいは、圧力検知器41の圧力が設定圧力に達した後、湿度運転を開始する。なお、この準備運転も行わず、単に湿度運転のみを行うものであってもよい。
【0058】
前記実施形態では、湿度運転において、水温を一定にするようにヒータ32を制御するため、圧力検知器41を省略することが可能である。この場合、湿度運転の開始時に電動弁38の開度を徐々に大きくする場合には、所定時間毎に所定開度だけ開度を大きくするというように所定制限内の開度速度で、開度を大きくしてもよい。
【0059】
また、リリーフ弁42も省略可能である。例えば、貯水槽31が密閉構造でなく、溜められた水が所定量を超えるとオーバーフローするような構成の場合には、リリーフ弁42を省略することが可能である。また、所定圧力に達したときに、リリーフ弁42を開放するのではなく、ヒータ32を停止するようにしてもよい。
【0060】
前記実施形態の環境形成装置10は、環境形成槽12が環境試験を行うための恒温恒湿槽として構成されているが、これに限られない。例えば、環境形成装置10は、食材または食品を所定の湿度環境にさらすための食品装置(例えば、熟成庫、スチームコンベクションオーブン等)として構成されてもよい。この場合、食品が収容される環境形成室18を有する環境形成槽12とは別に、蒸気発生器14が設けられ、この蒸気発生器14で発生した水蒸気が環境形成槽12内に導入される構成としてもよい。
【符号の説明】
【0061】
10 :環境形成装置
12 :環境形成槽
14 :蒸気発生器
16 :配管
18 :環境形成室
28 :湿度検知器
31 :貯水槽
32 :ヒータ
38 :電動弁
42 :リリーフ弁
45 :コントローラ