(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057402
(43)【公開日】2024-04-24
(54)【発明の名称】鍛造材の移動距離測定システム、移動距離測定方法、及び鍛造製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B21J 5/00 20060101AFI20240417BHJP
【FI】
B21J5/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164110
(22)【出願日】2022-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】三宅 星連
(72)【発明者】
【氏名】堀江 正之
(72)【発明者】
【氏名】青江 信一郎
【テーマコード(参考)】
4E087
【Fターム(参考)】
4E087AA08
4E087CA02
4E087EA11
4E087FA03
4E087FA07
4E087FA13
4E087GA14
4E087GA20
(57)【要約】
【課題】鍛造材の移動距離を鍛造材から直接得ることで、鍛造材の移動距離の測定精度を向上させる鍛造材の移動距離測定システム、移動距離測定方法、及び鍛造製品の製造方法を提供する。
【解決手段】移動距離測定システム10は、長手方向に延びる鍛造材100の長手方向一端100aを把持して長手方向に移動させるマニプレータ2を備えた鍛造装置1に用いられ、距離計12から鍛造材100が移動する前の鍛造材100の長手方向他端100b側の端面100dまでの距離L1、及び距離計12から鍛造材100が移動した後の鍛造材100の長手方向他端100b側の端面100dまでの距離L2測定する距離計12と、距離計12によって測定された、鍛造材100が移動する前の距離L1、及び鍛造材100が移動した後の距離L2に基づいて、鍛造材100の長手方向における実移動距離Lを算出する移動距離算出装置13とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍛造材の長手方向一端を把持して前記長手方向に移動させるマニプレータと、前記鍛造材を圧下する鍛造プレス機とを備えた鍛造装置に用いられる鍛造材の移動距離測定システムであって、
距離計から前記鍛造材が移動する前の前記鍛造材の長手方向の前記マニプレータが把持する長手方向一端側とは反対側の長手方向他端側の端面までの距離、及び距離計から前記鍛造材が移動した後の前記鍛造材の長手方向の前記マニプレータが把持する長手方向一端側とは反対側の長手方向他端側の端面までの距離を測定する前記距離計と、
該距離計によって測定された、前記距離計から前記鍛造材が移動する前の前記鍛造材の長手方向他端側の端面までの距離、及び前記距離計から前記鍛造材が移動した後の前記鍛造材の長手方向他端側の端面までの距離に基づいて、前記鍛造材の長手方向における実移動距離を算出する移動距離算出装置とを備えていることを特徴とする鍛造材の移動距離測定システム。
【請求項2】
入力された目標移動距離とともに、前記移動距離算出装置によって算出された前記鍛造材の長手方向における実移動距離をリアルタイムで表示する表示装置を備えていることを特徴とする請求項1に記載の鍛造材の移動距離測定システム。
【請求項3】
鍛造材の長手方向一端を把持して前記長手方向に移動させるマニプレータと、前記鍛造材を圧下する鍛造プレス機とを備えた鍛造装置により鍛造製品を製造する際の鍛造材の移動距離測定方法であって、
距離計から前記鍛造材が移動する前の前記鍛造材の長手方向の前記マニプレータが把持する長手方向一端側とは反対側の長手方向他端側の端面までの距離、及び距離計から前記鍛造材が移動した後の前記鍛造材の長手方向の前記マニプレータが把持する長手方向一端側とは反対側の長手方向他端側の端面までの距離を前記距離計により測定する距離測定ステップと、
該距離測定ステップによって測定された、前記距離計から前記鍛造材が移動する前の前記鍛造材の長手方向他端側の端面までの距離、及び前記距離計から前記鍛造材が移動した後の前記鍛造材の長手方向他端側の端面までの距離に基づいて、前記鍛造材の長手方向における実移動距離を算出する移動距離算出ステップとを含むことを特徴とする鍛造材の移動距離測定方法。
【請求項4】
入力された目標移動距離とともに、前記移動距離算出ステップによって算出された前記鍛造材の長手方向における実移動距離を表示装置にリアルタイムで表示する表示ステップとを含むことを特徴とする請求項3に記載の鍛造材の移動距離測定方法。
【請求項5】
請求項4に記載の鍛造材の移動距離測定方法を用いて鍛造製品を製造することを特徴とする鍛造製品の製造方法。
【請求項6】
前記表示装置を参照して、前記鍛造材の長手方向における実移動距離が前記目標移動距離となったときの前記鍛造材の前記鍛造プレス機における長手方向の位置を圧下位置に決定し、前記鍛造プレス機により前記鍛造材を圧下することを特徴とする請求項5に記載の鍛造製品の製造方法。
【請求項7】
前記鍛造製品が、長手方向に延びる胴部分、該胴部分に対して長手方向他端側に隣接して設けられた第1軸部分、該第1軸部分に対して長手方向他端側に隣接して設けられた第2軸部分、該第2軸部分に対して長手方向他端側に隣接して設けられた吊り手部分、前記胴部分に対して長手方向一端側に隣接して設けられた第3軸部分、及び該第3軸部分に対して長手方向一端側に隣接して設けられた第4軸部分を有する段付き円柱材であり、
前記第1軸部分を形成した後、前記吊り手部分を形成し、その後、前記第1軸部分と前記吊り手部分との間を圧下して前記第2軸部分を形成することを特徴とする請求項5又は6に記載の鍛造製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍛工品などの鍛造材を製造する自由鍛造プロセスにおける鍛造材の移動距離測定システム、移動距離測定方法、及び鍛造製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、鍛工品などの鍛造製品を製造する自由鍛造プロセスにおいては、例えば、非特許文献1に示すように、長手方向に延びる鍛造材(素材)を把持して移動させるマニプレータと、鍛造材を圧下する鍛造プレス機とを備えた鍛造装置が用いられている。
ここで、鍛造材の鍛造プレス機における長手方向の圧下位置は、製品の使用用途や製品最終形状によって決定され、鍛造製品に多大な影響を及ぼすため、鍛造材のマニプレータによる移動量(移動距離)は非常に重要である。
特許文献1には、鍛造マニプレータの制御法が提案されている。この制御法において、鍛造プレスと連動する2台のマニプレータ台車上には夫々鍛造材料の両端を把握する材料把握装置をマニプレータ台車に対して移動可能に設けている。また、マニプレータ台車上には材料把握装置とマニプレータ台車の相対位置を検出する第1の位置検出器とマニプレータ台車の走行位置を検出する第2の位置検出器とを設けている。そして、第1の位置検出装置により、鍛造材料の伸びによる2台のマニプレータの材料把握装置の変位量の和を求め、これを従制御装置で比較して修正信号を作る。一方、第2の位置検出器の信号を主制御装置に入力してマニプレータ台車の位置制御信号及び基準信号を作り、鍛造材料を2台のマニプレータ台車で鍛造プレスへ順次送り込むに際して、主マニプレータ台車及び従マニプレータ台車の移動量を制御する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】柿本等、「鍛伸加工における工程設計技術」、Reserchand Development KOBE STEEL ENGINEERING REPORTS、vol.60 No.2、pp2-8
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この従来の特許文献1に示す鍛造マニプレータの制御法にあっては、以下の課題があった。
即ち、特許文献1に示す鍛造マニプレータの制御法の場合、鍛造材料の移動距離を鍛造材料から直接得るものではなく、マニプレータ台車上に設けられた第1の位置検出器により材料把握装置とマニプレータ台車の相対位置を検出する。また、マニプレータ台車上に設けられた第2の位置検出器によりマニプレータ台車の走行位置を検出し、これらの情報から鍛造材料の移動距離を検出するようになっている。このため、検出された鍛造材料の移動距離の精度が低く、製造された鍛造製品の寸法精度が低いという課題がある。
【0006】
つまり、鍛造プレスによる鍛造材料の圧下時に、マニプレータにおける材料把握機構が圧下の衝撃などにより若干移動し、検出された鍛造材料の移動距離の精度が低くなってしまう。また、鍛造プレスによる鍛造材料の圧下時に、マニプレータ台車の車輪部分が圧下の衝撃などにより若干移動し、検出された鍛造材料の移動距離の精度が低くなってしまうのである。それに従い、所定の位置での圧下が行われず、製品の寸法精度も低下してしまう。
従って、本発明はこの従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、鍛造材の移動距離を鍛造材から直接得ることで、鍛造材の移動距離の測定精度を向上させ、ひいては鍛造製品の寸法精度を向上させることができる鍛造材の移動距離測定システム、移動距離測定方法、及び鍛造製品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る鍛造材の移動距離測定システムは、鍛造材の長手方向一端を把持して前記長手方向に移動させるマニプレータと、前記鍛造材を圧下する鍛造プレス機とを備えた鍛造装置に用いられる鍛造材の移動距離測定システムであって、距離計から前記鍛造材が移動する前の前記鍛造材の長手方向の前記マニプレータが把持する長手方向一端側とは反対側の長手方向他端側の端面までの距離、及び距離計から前記鍛造材が移動した後の前記鍛造材の長手方向の前記マニプレータが把持する長手方向一端側とは反対側の長手方向他端側の端面までの距離を測定する前記距離計と、該距離計によって測定された、前記距離計から前記鍛造材が移動する前の前記鍛造材の長手方向他端側の端面までの距離、及び前記距離計から前記鍛造材が移動した後の前記鍛造材の長手方向他端側の端面までの距離に基づいて、前記鍛造材の長手方向における実移動距離を算出する移動距離算出装置とを備えていることを要旨とする。
【0008】
また、本発明の別の態様に係る鍛造材の移動距離測定方法は、鍛造材の長手方向一端を把持して前記長手方向に移動させるマニプレータと、前記鍛造材を圧下する鍛造プレス機とを備えた鍛造装置により鍛造製品を製造する際の鍛造材の移動距離測定方法であって、距離計から前記鍛造材が移動する前の前記鍛造材の長手方向の前記マニプレータが把持する長手方向一端側とは反対側の長手方向他端側の端面までの距離、及び距離計から前記鍛造材が移動した後の前記鍛造材の長手方向の前記マニプレータが把持する長手方向一端側とは反対側の長手方向他端側の端面までの距離を前記距離計により測定する距離測定ステップと、該距離測定ステップによって測定された、前記距離計から前記鍛造材が移動する前の前記鍛造材の長手方向他端側の端面までの距離、及び前記距離計から前記鍛造材が移動した後の前記鍛造材の長手方向他端側の端面までの距離に基づいて、前記鍛造材の長手方向における実移動距離を算出する移動距離算出ステップとを含むことを要旨とする。
【0009】
また、本発明の別の態様に係る鍛造製品の製造方法は、前述の鍛造材の移動距離測定方法を用いて鍛造製品を製造することを要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る鍛造材の移動距離測定システム、移動距離測定方法、及び鍛造製品の製造方法によれば、鍛造材の移動距離を鍛造材から直接得ることで、鍛造材の移動距離の測定精度を向上させ、ひいては鍛造製品の寸法精度を向上させることができる鍛造材の移動距離測定システム、移動距離測定方法、及び鍛造製品の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る鍛造材の移動距離測定システム及び鍛造装置の概略構成図である。
【
図2】
図1に示す移動距離測定システムを構成する表示装置の表示画面の一例を示す図である。
【
図3】
図1に示す移動距離測定システムの処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【
図4】鍛造製品として段付き円柱材を製造する場合において、母材から2回目の鍛造を行うまでの工程を説明するための図である。
【
図5】鍛造製品として段付き円柱材を製造する場合において、
図4に示す2回目の鍛造工程に続き、本発明の一実施形態に係る移動距離測定方法を用いて行う3回目の鍛造工程を説明するための図である。
【
図6】鍛造製品として段付き円柱材を製造する場合において、
図5に示す3回目の鍛造工程に続き、本発明の一実施形態に係る移動距離測定方法を用いて行う4回目の鍛造工程を説明するための図である。
【
図7】
図6に示す4回目の鍛造工程の後に吊り手部分側の端部及び第4軸部分側の端部を切断して鍛造製品とする工程を説明するための図である。
【
図8】鍛造製品として段付き円柱材を製造する場合において、
図4に示す2回目の鍛造工程に続き、一般的な移動距離測定方法を用いて行う3回目の鍛造工程を説明するための図である。
【
図9】鍛造製品として段付き円柱材を製造する場合において、
図8に示す3回目の鍛造工程に続き、一般的な方法で行う4回目の鍛造工程を説明するための図である。
【
図10】本発明例の移動距離測定方法を用いて段付き円柱材を鍛造した場合と比較例の移動距離測定方法を用いて段付き円柱材を鍛造した場合とを比較して説明するための、2回目の鍛造工程、3回目の鍛造工程、及び4回目の鍛造工程の後の鍛造材の状態を表す図である。
【
図11】本発明例の移動距離測定方法を用いて段付き円柱材を鍛造した場合と比較例の移動距離測定方法を用いて段付き円柱材を鍛造した場合の各部分の実績長と目標長の差を比較して示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。
また、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
図1には、本発明の一実施形態に係る鍛造材の移動距離測定システム及び鍛造装置の概略構成が示されている。
【0013】
図1に示す鍛造装置1は、鋳造された鋼塊、スラブなどの鍛造材100を自由鍛造するものであり、ここでは、長手方向(
図1におけるx-xで示す方向)に細長く延びる段付き円柱材を鍛造材100として鍛造する場合について説明する。
鍛造装置1は、長手方向に延びる鍛造材100の長手方向一端100a(
図1においては右端)側を把持して長手方向(
図1におけるx-xで示す方向)に移動させるマニプレータ2と、鍛造材100を圧下する鍛造プレス機3とを備えている。
マニプレータ2は、長手方向、即ち鍛造プレス機3に向かう前進方向及び鍛造プレス機3から離間する後退方向に走行するマニプレータ台車21と、マニプレータ台車21に対し回転可能に取り付けられた鍛造材把持装置22とを備えている。鍛造材材料把持装置22は、鍛造材100の長手方向一端100a(
図1においては右端)を把持する。
【0014】
鍛造プレス機3は、上下方向(
図1におけるy-yで示す方向)に延びる複数の脚部32上に設けられたプレス機本体31を備えている。プレス機本体31には、上下方向に昇降するラム33が設けられ、ラム33には上金敷34が固定されている。一方、ラム33に対して対向する下方には台座36が設けられ、台座36上に下金敷35が固定されている。そして、上金敷34の下面には、円注鍛造用の上タップ37が設けられ、下金敷35の上面には、円注鍛造用の下タップ38が設けられている。上タップ37には、昇降案内用のピストン棒39が設けられて、ピストン棒39の周囲には下タップ38と上タップ37との間に設けられて上タップ37を常時上方に付勢するスプリング40が配設されている。円柱形状の鍛造材100は、上タップ37と下タップ38とにより圧下されるようになっている。
【0015】
また、移動距離測定システム10は、鍛造材100の長手方向における実移動距離を測定するものであり、距離計12と、移動距離算出装置13と、表示装置14とを備えている。
距離計12は、例えば、2Dスキャナーで構成され、鍛造プレス機3を挟んでマニプレータ2と反対側(
図1にあっては鍛造プレス機3の左側)に設けられた距離計設置台11に取り付けられている。距離計12は、距離計12から鍛造材100が移動する前の鍛造材100の長手方向のマニプレータ2が把持する長手方向一端100a側とは反対側の長手方向他端100b側(
図1においては左端側)の端面100dまでの距離L1を測定する。また、距離計12は、距離計12から鍛造材100が移動した後の鍛造材100の長手方向のマニプレータ2が把持する長手方向一端100a側とは反対側の長手方向他端100b側の端面100dまでの距離L2を測定する。
【0016】
鍛造材100と距離計12の設置高さが異なる場合には、測定された前述の距離L1、L2を幾何的に適宜補正する必要がある。
また、移動距離算出装置13及び表示装置14は、演算処理機能を有するコンピュータシステムであり、ハードウェアに予め記憶された各種専用のコンピュータプログラムの命令により、移動距離算出装置13及び表示装置14の各機能をソフトウェア上で実行する。
移動距離算出装置13は、距離計12によって測定された、前述の距離L1及び距離L2に基づいて、鍛造材100の長手方向における実移動距離LをL=L1-L2の式により算出する。
【0017】
表示装置14は、例えば、モニター等で構成され、入力された目標移動距離とともに、移動距離算出装置13によって算出された鍛造材100の長手方向における実移動距離Lをリアルタイムで表示する。
図2には、表示装置14の表示画面15の一例が示されており、表示装置14の表示画面15には、リセット指示部16a、実移動距離表示部16b、測定終了指示部16c、目標移動距離変更入力部16d、及び目標移動距離入力部16eが表示される。
リセット指示部16aには、「リセット」の文字が表示され、作業者がリセット指示部16aを押圧することにより、リセット機能が働く。これにより、実移動距離表示部16b、目標移動距離変更入力部16d、目標移動距離入力部16e、及び後述する移動距離表示グラフ17における目標移動距離及び実移動距離がリセットされる。
【0018】
実移動距離表示部16bには、作業者がリセット指示部16aを押圧したときのリセット位置からの移動距離算出装置13によって算出された鍛造材100の長手方向における実移動距離Lが表示される。
また、測定終了指示部16cには、「測定終了」の文字が表示され、作業者が一連の鍛造作業を終了したときにこの測定終了指示部16cを押圧することにより、「測定終了」を支持する信号が演算処理装置に伝送される。
また、目標移動距離入力部16eには、作業者がリセット指示部16aを押圧したときのリセット位置からの目標移動距離が入力され、表示される。
【0019】
また、目標移動距離変更入力部16dには、目標移動距離入力部16eに入力した目標移動距離を変更する場合に、その変更後の目標移動距離が入力され、表示される。
また、表示装置14の表示画面15には、移動距離表示グラフ17も表示される。移動距離表示グラフ17は、目標移動距離入力部16eあるいは目標移動距離変更入力部16dで入力されたリセット位置からの目標移動距離を表示する。また、移動距離表示グラフ17は、実移動距離表示部16bに表示されているリセット位置からの移動距離算出装置13によって算出された鍛造材100の長手方向における実移動距離Lもリアルタイムで表示する。
【0020】
次に、本発明の一実施形態に係る移動距離測定方法を表す移動距離測定システム10の処理の流れを、
図3を参照して説明する。
先ず、ステップS1において、距離計12は、距離計12から鍛造材100が移動する前の鍛造材100の長手方向のマニプレータ2が把持する長手方向一端100a側とは反対側の長手方向他端100b側の端面100dまでの距離L1を測定する。また、距離計12は、距離計12から鍛造材100が移動した後の鍛造材100の長手方向のマニプレータ2が把持する長手方向一端100a側とは反対側の長手方向他端100b側の端面100dまでの距離L2を測定する(距離測定ステップ)。
【0021】
つまり、作業者がマニプレータ2を操作して鍛造材100の長手方向のマニプレータ2が把持する長手方向一端100a側とは反対側の長手方向他端100b側の端面100dが鍛造プレス機3に対して所定位置にきたときに、表示装置14の表示画面15にあるリセット指示部16aを押す。すると、距離計12は、距離計12から鍛造材100がこのリセット位置にあるときの鍛造材100の長手方向のマニプレータ2が把持する長手方向一端100a側とは反対側の長手方向他端100b側の端面100dまでの距離L1を測定する。
そして、距離計12は、作業者がマニプレータ2を操作して鍛造材100を長手方向に移動した際に、鍛造材100がリセット位置にあるときから移動後にいたるまでの、距離計12から鍛造材100の長手方向のマニプレータ2が把持する長手方向一端100a側とは反対側の長手方向他端100b側の端面100dまで距離L2を常時測定する。
【0022】
次いで、ステップS2において、移動距離算出装置13は、ステップS1(距離測定ステップ)で測定された、前述の距離L1及び距離L2に基づいて、鍛造材100の長手方向における実移動距離LをL=L1-L2の式により算出する(移動距離算出ステップ)。
次いで、ステップS3において、表示装置14は、入力された目標移動距離とともに、ステップS2(移動距離算出ステップ)で算出された鍛造材100の長手方向における実移動距離Lを表示装置にリアルタイムで表示する(表示ステップ)。
具体的に述べると、作業者」が表示装置14の表示画面15において、目標移動距離入力部16eに、作業者がリセット指示部16aを押圧したときのリセット位置からの目標移動距離を入力する。そして、表示装置14は、表示画面15における移動距離表示グラフ17において
図2における破断線で示すリセット位置からの目標移動距離を表示する。
【0023】
また、表示装置14は、表示画面15における移動距離表示グラフ17において
図2における実線で示す移動距離算出装置13によって算出されたリセット位置からの鍛造材100の長手方向における実移動距離Lを表示する。また、表示装置14は、表示画面15の実移動距離表示部16bにおいても、移動距離算出装置13によって算出されたリセット位置からの実移動距離Lを表示する。
これにより、移動距離測定システム10における処理が終了する。
そして、作業者は、鍛造製品120(
図7参照)の製造に際し、この移動距離測定方法を用いて鍛造製品120を製造する。
【0024】
この際に、作業者は、表示装置14の表示画面15を参照して、鍛造材100の長手方向における実移動距離Lが目標移動距離となったときの鍛造材100の鍛造プレス機3における長手方向の位置を圧下位置に決定し、鍛造プレス機3により鍛造材を圧下する。
以下、鍛造製品120として段付き円柱材を製造する場合を例として、鍛造製品の製造方法につき、
図4乃至
図7を参照して具体的に説明する。
図7に示すように、製造される鍛造製品120は、胴部分110、第1軸部分104、第2軸部分109、吊り手部分b107、第3軸部分112、及び第4軸部分113を有する段付き円柱材である。胴部分110は、長手方向に延び、第1軸部分104は、胴部分110に対して長手方向他端100b側(
図7においては右端側)に隣接して設けられている。第2軸部分109は、第1軸部分104に対して長手方向他端100b側に隣接して設けられている。吊り手部分107は、第2軸部分109に対して長手方向他端100b側に隣接して設けられている。第3軸部分112は、胴部分110に対して長手方向一端100a側(
図7における左端側)に隣接して設けられている。また、第4軸部分113は、第3軸部分112に対して長手方向一端100a側に隣接して設けられている。第1軸部分104、吊り手部分107及び第3軸部分112の直径は、同一で、胴部分110の直径よりも小さい。また、第2軸部分109の直径は、第1軸部分104及び吊り手部分107の直径よりも小さい。また、第4軸部分113の直径は、第3軸部分112の直径よりも小さい。
【0025】
図4には、鍛造製品120として段付き円柱材を製造する場合において、母材から2回目の鍛造を行うまでの工程が示されている。
先ず、
図4(a)に示すように、作業者は、鋳造された鍛造材(母材)100の長手方向一端100a側をマニプレータ2の鍛造材把持装置22によって把持する。そして、作業者は、マニプレータ台車21を走行させて鍛造材100の長手方向他端100b側が鍛造プレス機3の上金敷34及び下金敷35の近傍に位置するまで移動させる。鋳造された鍛造材(母材)100は、円柱形状で、その直径はd1となっている。
次いで、作業者は、
図4(b)に示すように、鍛造材100に対し1回目の鍛造を行い、長手方向他端100b側に胴部分形成予定部分101を形成し、長手方向一端100a側に軸部分形成予定部分102を形成する。胴部分形成予定部分101の直径d2は母材の直径d1よりも小さくする。1回目の鍛造に際しては、マニプレータ2の鍛造材把持装置22によって鍛造材100の長手方向一端100a側を把持して鍛造プレス機3に対して長手方向に移動させつつ鍛造材100を回転させ、上タップ37と下タップ38とにより鍛造材100を圧下する。
【0026】
次いで、作業者は、鍛造材100を再度加熱してから
図4(c)に示すように、鍛造材100に対し2回目の鍛造を行い、胴部分形成予定部分101の直径をd2よりも小さい胴部分110の直径d3に仕上げる。2回目の鍛造に際しても、マニプレータ2の鍛造材把持装置22によって鍛造材100の長手方向一端100a側を把持して鍛造プレス機3に対して長手方向に移動させつつ鍛造材100を回転させ、上タップ37と下タップ38とにより鍛造材100を圧下する。
次いで、作業者は、鍛造材100を再度加熱してから
図5(a)~
図5(e)に示すように、鍛造材100に対し3回目の鍛造を行う。
【0027】
3回目の鍛造において、先ず、作業者は、
図5(a)に示すように、胴部分形成予定部分101の長手方向一端100a側の端面101aから長手方向他端100b側に向けて予め決められた目標距離離れた位置にマーキングAを施す。
そして、作業者は、移動距離測定システム10(移動距離測定方法)を用いて胴部分形成予定部分101の長手方向一端100a側の端面101aからマーキングAまでの長手方向の距離を測定する。
つまり、作業者は、マニプレータ2の鍛造材把持装置22によって鍛造材100の長手方向一端100a側を把持して胴部分形成予定部分101の長手方向一端100a側の端面101aが上タップ37の一端面37a及び下タップ38の一端面38aに一致する位置となるように鍛造材100を移動する。そして、作業者は、表示装置14の表示画面15においてリセット指示部16aを押す。これにより、表示装置14でのリセット機能が働き、リセット位置が変更される。
【0028】
次いで、作業者は、表示装置14の表示画面15において目標移動距離入力部16eに目標移動距離を入力する。ここでの目標移動距離は、前述したマーキングAを施す際の目標距離と同一の距離である。目標移動距離入力部16eに入力された目標移動距離は、表示装置14の表示画面15における移動距離表示グラフ17に表示される(
図2参照)。このリセット位置が特定された際に、距離計12は、距離計12から鍛造材100の長手方向のマニプレータ2が把持する長手方向一端100a側と反対側の長手方向他端100b側の端面100dまでの距離を測定する。この距離は、距離計12から鍛造材100が移動する前の鍛造材100の長手方向のマニプレータ2が把持する長手方向一端100a側と反対側の長手方向他端100b側の端面100dまでの距離L1である。
【0029】
そして、作業者は、マニプレータ2を
図5(a)における矢印で示す方向に後退させて鍛造材100を後退させる。この際に、距離計12は、距離計12から鍛造材100の長手方向のマニプレータ2が把持する長手方向一端100a側とは反対側の長手方向他端100b側の端面100dまでの距離を測定する。この距離は、距離計12から鍛造材100がリセット位置から移動した後の鍛造材100の長手方向のマニプレータ2が把持する長手方向一端100a側とは反対側の長手方向他端100b側の端面100dまでの距離L2である。
ここで、移動距離算出装置13は、距離計12によって測定された、距離計12から鍛造材100が移動する前(リセット位置にあるとき)の前述の距離L1、及び距離計12から鍛造材100が移動した後(リセット位置から移動した後)の前述の距離L2に基づいて、鍛造材100の長手方向における実移動距離LをL=L1-L2の式により算出する。
【0030】
そして、表示装置14は、入力された目標移動距離とともに、移動距離算出装置13によって算出された鍛造材100の長手方向におけるリセット位置からの実移動距離Lをリアルタイムで表示する。
つまり、表示装置14の表示画面15における移動距離表示グラフ17において、目標移動距離入力部16eに入力された目標移動距離及び移動距離算出装置13によって算出された鍛造材100の長手方向におけるリセット位置からの実移動距離Lが表示される。
そして、作業者は、表示装置14の表示画面15を参照して、鍛造材100の長手方向におけるリセット位置からの実移動距離Lが目標移動距離となったときに、胴部分形成予定部分101の長手方向一端100a側の端面101aからマーキングAまでの長手方向の距離の測定を終了する。
【0031】
そして、作業者は、この鍛造材100の長手方向におけるリセット位置からの実移動距離Lが目標移動距離となったときの鍛造材100の鍛造プレス機3における長手方向の位置を圧下位置に決定する。そして、作業者は、この圧下位置で上タップ37と下タップ38とにより胴部分形成予定部分101のマーキングAから長手方向他端側部分((
図5(a)においてマーキングAから左側の部分)を圧下する。また、作業者は、マニプレータ2を操作して鍛造材100を後退させつつ上タップ37と下タップ38とにより胴部分形成予定部分101の残りの部分を圧下する。
これにより、
図5(b)に示すように、胴部分形成予定部分101の長手方向他端側に隣接した第1軸部分形成予定部分103が形成される。第1軸部分形成予定部分103の直径は、胴部分形成予定部分101の直径d3よりも小さい。
【0032】
次いで、作業者は、
図5(b)に示すように、第1軸部分形成予定部分103において胴部分形成予定部分101の長手方向他端100b側の端面101bから長手方向他端100bに向けて予め決められた目標距離離れた位置にマーキングBを施す。
また、作業者は、第1軸部分形成予定部分103において第1軸部分形成予定部分103の長手方向他端100b側の端面100dから長手方向一端100a側に向けて予め決められた目標距離離れた位置にマーキングCを施す。
次いで、作業者は、
図5(c)に示すように、鍛造材把持装置22によって鍛造材100の長手方向一端100a側を把持して胴部分形成予定部分101の長手方向他端100b側の端面101bが上タップ37の一端面37a及び下タップ38の一端面38aに一致する位置となるように鍛造材100を移動する。それから、前述と同様の手法で、移動距離測定システム10(移動距離測定方法)を用いて第1軸部分形成予定部分103における胴部分形成予定部分101の長手方向他端100b側の端面101bからマーキングBまでの長手方向の距離を測定する。
【0033】
そして、作業者は、表示装置14の表示画面15を参照して、鍛造材100の長手方向におけるリセット位置からの実移動距離Lが目標移動距離(マーキングBの目標距離と同一)となったときの鍛造材100の鍛造プレス機3における長手方向の位置を圧下位置に決定する。ここで、リセット位置は、胴部分形成予定部分101の長手方向他端100b側の端面101bが上タップ37の一端面37a及び下タップ38の一端面38aに一致する位置である。そして、作業者は、この圧下位置で上タップ37と下タップ38とにより第1軸部分形成予定部分103のマーキングBからプレス幅分((
図5(c)においてマーキングBから左側の部分)を圧下する。これにより、胴部分形成予定部分101に隣接した第1軸部分104、第1軸部分104に隣接したプレス幅分の第1圧下軸部分105、及び第1圧下軸部分105に隣接した残余部分106が形成される。第1軸部分104の直径は第1軸部分形成予定部分103と同一で胴部分形成予定部分101の直径よりも小さく、第1圧下軸部分105の直径は、第1軸部分104及び残余部分106の直径よりも小さい。
【0034】
次いで、作業者は、
図5(d)に示すように、鍛造材把持装置22によって鍛造材100の長手方向一端100a側を把持して残余部分106の長手方向他端100b側の端面100dが上タップ37の他端面37b及び下タップ38の他端面38bに一致する位置となるように鍛造材100を移動する。それから、前述と同様の手法で、移動距離測定システム10(移動距離測定方法)を用いて残余部分106における残余部分106の長手方向他端100b側の端面100dからマーキングCまでの長手方向の距離を測定する。
そして、作業者は、表示装置14の表示画面15を参照して、鍛造材100の長手方向におけるリセット位置からの実移動距離Lが目標移動距離(マーキングCの目標距離と同一)となったときの鍛造材100の鍛造プレス機3における長手方向の位置を圧下位置に決定する。ここで、リセット位置は、残余部分106の長手方向他端100b側の端面100dが上タップ37の他端面37b及び下タップ38の他端面38bに一致する位置である。そして、作業者は、この圧下位置で上タップ37と下タップ38とにより残余部分106におけるマーキングCからプレス幅分((
図5(d)においてマーキングCから右側の部分)を圧下する。これにより、吊り手部分107及び吊り手部分107に隣接したプレス幅分の第2圧下軸部分108が形成される。吊り手部分107の直径は残余部分106及び第1軸部分104の直径と同一であり、第2圧下軸部分108の直径は吊り手部分107の直径よりも小さい。
【0035】
次いで、作業者は、
図5(e)に示すように、上タップ37と下タップ38とにより、鍛造材100を矢印で示す前進方向及び後退方向に移動させて吊り手部分107の長手方向一端100a側の端面107aと第1軸部分104の長手方向他端100b側の端面104aとの間を圧下する。これにより、第1軸部分104と吊り手部分107との間に第2軸部分109が形成される。第2軸部分109の直径は、第1軸部分104及び吊り手部分107の直径よりも小さい。
次いで、作業者は、鍛造材100を再度加熱してから
図6(a)~
図6(c)に示すように、鍛造材100に対し4回目の鍛造を行う。
【0036】
4回目の鍛造において、先ず、作業者は、
図6(a)に示すように、胴部分形成予定部分101において胴部分形成予定部分101の長手方向他端100b側の端面101bから長手方向一端100a側に向けて予め決められた目標距離離れた位置にマーキングDを施す。
そして、作業者は、
図6(a)に示すように、鍛造材把持装置22によって鍛造材100の長手方向他端100b側の吊り手部分107を把持して胴部分形成予定部分101の長手方向他端100b側の端面101bが上タップ37の一端面37a及び下タップ38の一端面38aに一致する位置となるように鍛造材100を移動する。それから、前述と同様の手法で、移動距離測定システム10(移動距離測定方法)を用いて胴部分形成予定部分101における胴部分形成予定部分101の長手方向他端100b側の端面101bからマーキングDまでの長手方向の距離を測定する。
【0037】
この距離の測定の際に、距離計12は、距離計12から鍛造材100が移動する前の鍛造材100の長手方向一端100a側の端面100cまでの距離L1を測定する。ここで、鍛造材100が移動する前とは、リセット位置にあるとき、即ち胴部分形成予定部分101の長手方向他端100b側の端面101bが上タップ37の一端面37a及び下タップ38の一端面38aに一致する位置のときである。また、距離計12は、距離計12から鍛造材100が移動した後(リセット位置から移動した後)の鍛造材100の長手方向一端100a側の端面100cまでの距離L2も測定する。
また、移動距離算出装置13は、距離計12によって測定された前述の距離L1及び距離L2に基づいて、鍛造材100の長手方向における実移動距離LをL=L1-L2の式により算出する。
【0038】
また、表示装置14は、入力された目標移動距離(マーキングDの目標距離)とともに、移動距離算出装置13によって算出された鍛造材100の長手方向におけるリセット位置からの実移動距離Lをリアルタイムで表示する。
そして、作業者は、表示装置14の表示画面15を参照して、鍛造材100の長手方向におけるリセット位置からの実移動距離Lが目標移動距離(マーキングDの目標距離と同一)となったときの鍛造材100の鍛造プレス機3における長手方向の位置を圧下位置に決定する。ここで、リセット位置は、胴部分形成予定部分101の長手方向他端100b側の端面101bが上タップ37の一端面37a及び下タップ38の一端面38aに一致する位置である。そして、作業者は、この圧下位置で上タップ37と下タップ38とにより胴部分形成予定部分101のマーキングDから長手方向一端100a側((
図6(a)においてマーキングDから左側の部分)を圧下する。また、マニプレータ2を操作して鍛造材100を矢印方向に後退させつつ上タップ37と下タップ38とにより軸部分形成予定部分102を圧下する。これにより、
図6(b)に示すように、胴部分110と、胴部分110の長手方向一端側に隣接した第3軸部分形成予定部分111とが形成される。第3軸部分形成予定部分111の直径は、第1軸部分104の直径と同一であり、胴部分110の直径よりも小さい。
【0039】
次いで、作業者は、
図6(b)に示すように、第3軸部分形成予定部分111において胴部分110の長手方向一端100a側の端面110cから長手方向一端100a側に向けて予め決められた目標距離離れた位置にマーキングEを施す。
そして、作業者は、
図6(b)に示すように、鍛造材把持装置22によって鍛造材100の長手方向他端100b側の吊り手部分107を把持して胴部分110の長手方向一端100a側の端面110cが上タップ37の一端面37a及び下タップ38の一端面38aに一致する位置となるように鍛造材100を移動する。それから、前述と同様の手法で、移動距離測定システム10(移動距離測定方法)を用いて第3軸部分形成予定部分111における胴部分110の長手方向一端100a側の端面110cからマーキングEまでの長手方向の距離を測定する。
【0040】
そして、作業者は、表示装置14の表示画面15を参照して、鍛造材100の長手方向におけるリセット位置からの実移動距離Lが目標移動距離(マーキングEの目標距離と同一)となったときの鍛造材100の鍛造プレス機3における長手方向の位置を圧下位置に決定する。ここで、リセット位置は、胴部分110の長手方向一端100a側の端面110cが上タップ37の一端面37a及び下タップ38の一端面38aに一致する位置である。そして、作業者は、この圧下位置で上タップ37と下タップ38とにより第3軸部分形成予定部分111のマーキングEから長手方向一端100a側((
図6(b)においてマーキングEから左側の部分)を圧下する。また、マニプレータ2を操作して鍛造材100を矢印方向に後退させつつ第3軸部分形成予定部分111の残りを圧下する。これにより、
図6(c)に示すように、胴部分110の長手方向一端側に隣接した第3軸部分112と、第3軸部分112の長手方向一端側に隣接した第4軸部分113とが形成される。第3軸部分112の直径は第3軸部分形成予定部分111の直径と同一であり、第4軸部分113の直径は第3軸部分112の直径よりも小さい。
【0041】
これにより、鍛造材100の鍛造工程は終了する。
そして、鍛造材100の鍛造工程が終了後、作業者は、
図7に示すように、吊り手部分107側の端部107b及び第4軸部分113側の端部113aを切断して鍛造製品120が完成する。
切断は、切捨て後の鍛造製品120の全長L120及び吊り手部分107の長さL107が規定寸法となるように、切断を行う。
そして、胴部分110の長さL110及び鍛造製品120の全長L120が規定内であれば、鍛造製品120は合格となる。
【0042】
このように、本実施形態に係る鍛造材の移動距離測定システム10及び移動距離測定方法によれば、距離計12(距離測定ステップ:ステップS1)が、距離計12から鍛造材100が移動する前の鍛造材100の長手方向(x-x方向)のマニプレータ2が把持する長手方向一端100a側とは反対側の長手方向他端100b側の端面100dまでの距離L1を測定する。また、距離計12(距離測定ステップ:ステップS1)が、距離計12から鍛造材100が移動した後の鍛造材100の長手方向(x-x方向)のマニプレータ2が把持する長手方向一端100a側とは反対側の長手方向他端100b側の端面100dまでの距離L2を測定する。また、移動距離算出装置13(移動距離算出ステップ:ステップS2)が、距離計12(距離測定ステップ:ステップS1)によって測定された、前述の距離L1及び距離L2に基づいて、鍛造材100の長手方向(x-x方向)における実移動距離Lを算出する。
【0043】
これにより、鍛造材100の移動距離を鍛造材100から直接得ることで、鍛造材100の移動距離の測定精度を向上させることができる。鍛造プレス機3による鍛造材100の圧下時に、鍛造材100が移動した場合であっても、鍛造材100の移動距離を鍛造材100から直接得ている。このため、鍛造材100の移動距離を精度よく測定することができる。鍛造プレス機3による鍛造材100の圧下時に、鍛造材100が移動するのは、例えば、マニプレータ2における鍛造材把持装置22が圧下の衝撃により若干移動したり、マニプレータ台車21の車輪部分が圧下の衝撃により若干移動したりした場合である。
また、本実施形態に係る鍛造材の移動距離測定システム10及び移動距離測定方法によれば、表示装置14(表示ステップ:ステップS3)が、入力された目標移動距離とともに、移動距離算出装置13(移動距離算出ステップ:ステップS2)によって算出された鍛造材100の長手方向(x-x方向)における実移動距離Lをリアルタイムで表示する。
【0044】
これにより、作業者は、表示装置14を参照することにより、目標移動距離に対する鍛造材100の実移動距離を比較して把握することができる。
また、本実施形態に係る鍛造製品の製造方法によれば、前述の移動距離測定方法を用いて鍛造製品120を製造する。これにより、鍛造製品120を製造するに際して、鍛造材における距離測定の精度を向上させることができ、鍛造製品120の寸法精度を向上させることができる。
また、本実施形態に係る鍛造製品の製造方法によれば、表示装置14を参照して、鍛造材100の長手方向(x-x方向)における実移動距離Lが目標移動距離となったときの鍛造材100の鍛造プレス機3における長手方向の位置を圧下位置に決定し、鍛造プレス機3により鍛造材100を圧下する。
【0045】
これにより、鍛造材100の鍛造プレス機3における圧下位置を精度高く決定することができ、鍛造製品120の寸法精度をより向上させることができる。
次に、移動距離測定システム10(移動距離測定方法)を用いた鍛造製品120の製造方法に対し、一般的な移動距離測定方法を用いて鍛造製品を製造する方法につき、
図8及び
図9を参照して説明する。
図8は、鍛造製品として段付き円柱材を製造する場合において、
図4に示す2回目の鍛造工程に続き、一般的な移動距離測定方法を用いて行う3回目の鍛造工程を説明するための図である。
図9は、鍛造製品として段付き円柱材を製造する場合において、
図8に示す3回目の鍛造工程に続き、一般的な方法で行う4回目の鍛造工程を説明するための図である。
【0046】
一般的な移動距離測定方法を用いて鍛造製品120を製造するに際し、母材から2回目の鍛造を行うまでの工程は
図4に示す方法と同様である。
そして、鍛造材100に対し3回目の鍛造を行うに際し、作業者は、鍛造材100を加熱してから
図8(a)~
図8(c)に示す工程で鍛造材100に対し3回目の鍛造を行う。
3回目の鍛造において、先ず、作業者は、
図8(a)に示すように、胴部分形成予定部分101の長手方向一端100a側の端面101aから長手方向他端100b側に向けて予め決められた目標距離離れた位置にマーキングAを施す。
【0047】
そして、作業者は、胴部分形成予定部分101の長手方向一端100a側の端面101aからマーキングAまでの長手方向の距離を測定する。この際に、鍛造材把持装置22によって鍛造材100の長手方向一端100a側を把持して胴部分形成予定部分101の長手方向一端100a側の端面101aが上タップ37の一端面37a及び下タップ38の一端面38aに一致する位置となるように鍛造材100を移動する。それから、鍛造材100を矢印で示す後退方向に移動させ、胴部分形成予定部分101に施されたマーキングAが目視で上タップ37の一端面37a及び下タップ38の一端面38aに一致する位置となるように鍛造材100を移動する。
【0048】
そして、作業者は、マーキングAが上タップ37の一端面37a及び下タップ38の一端面38aに一致する位置を圧下位置とする。この圧下位置で上タップ37と下タップ38とにより胴部分形成予定部分101のマーキングAから長手方向他端側部分((
図8(a)においてマーキングAから左側の部分)を圧下する。更に、マニプレータ2を操作して鍛造材100を後退させつつ上タップ37と下タップ38とにより胴部分形成予定部分101の残りの部分を圧下する。
これにより、
図8(b)に示すように、胴部分形成予定部分101の長手方向他端側に隣接した第1軸部分形成予定部分103が形成される。第1軸部分形成予定部分103の直径は、胴部分形成予定部分101の直径よりも小さい。
【0049】
次いで、作業者は、
図8(b)に示すように、第1軸部分形成予定部分103において胴部分形成予定部分101の長手方向他端100b側の端面101bから長手方向他端100bに向けて予め決められた目標距離離れた位置にマーキングBを施す。
また、作業者は、第1軸部分形成予定部分103において第1軸部分形成予定部分103の長手方向他端100b側の端面100dから長手方向一端100a側に向けて予め決められた目標距離離れた位置にマーキングCを施す。
次いで、作業者は、
図8(b)に示すように、第1軸部分形成予定部分103の長手方向他端100b側の端面100dからマーキングBまでの距離を測定する。この際に、鍛造材把持装置22によって鍛造材100の長手方向一端100a側を把持して胴部分形成予定部分101の長手方向他端100b側の端面101bが上タップ37の一端面37a及び下タップ38の一端面38aに一致する位置となるように鍛造材100を移動する。
【0050】
次いで、作業者は、
図8(c)に示すように、鍛造材100を矢印で示す後退方向に移動させる。第1軸部分形成予定部分103に形成されたマーキングBが目視で上タップ37の一端面37a及び下タップ38の一端面38aに一致する位置となるように鍛造材100を移動させる。そして、この位置を圧下位置とする。
そして、作業者は、
図8(c)に示すように、この圧下位置で上タップ37と下タップ38とにより第1軸部分形成予定部分103のマーキングBから長手方向他端側部分((
図8(c)においてマーキングBから左側の部分)を圧下する。更に、マニプレータ2を操作して鍛造材100を後退させつつ上タップ37と下タップ38とにより第1軸部分形成予定部分103のマーキングBとマーキングCとの間の部分を
図8(c)における矢印で示すマーキングBからマーキングCに向かう方向に目視で圧下する。これにより、胴部分形成予定部分101の長手方向他端側に隣接した第1軸部分104、第1軸部分104の長手方向他端側に隣接した第2軸部分109及び第2軸部分109の長手方向他端側に隣接した吊り手部分107が形成される。第1軸部分104の直径は、第1軸部分形成予定部分103の直径と同一で、胴部分形成予定部分101の直径よりも小さい。また、第2軸部分109の直径は、第1軸部分104の直径よりも小さい。更に、吊り手部分107の直径は、第1軸部分104の直径と同一である。
【0051】
次いで、作業者は、鍛造材100を再度加熱してから
図9(a)~
図9(c)に示すように、鍛造材100に対し4回目の鍛造を行う。
4回目の鍛造において、先ず、作業者は、
図9(a)に示すように、胴部分形成予定部分101において胴部分形成予定部分101の長手方向他端100b側の端面101bから長手方向一端100a側に向けて予め決められた目標距離離れた位置にマーキングDを施す。
そして、作業者は、
図9(a)に示すように、胴部分形成予定部分101において胴部分形成予定部分101の長手方向他端100b側の端面101bからマーキングDまでの距離を測定する。この際に、鍛造材把持装置22によって鍛造材100の長手方向他端100b側の吊り手部分107を把持して胴部分形成予定部分101の長手方向他端100b側の端面101bが上タップ37の一端面37a及び下タップ38の一端面38aに一致する位置となるように鍛造材100を移動する。
【0052】
次いで、作業者は、
図9(a)に示すように、鍛造材100を矢印で示す後退方向に移動させる。胴部分形成予定部分101に施されたマーキングDが目視で上タップ37の一端面37a及び下タップ38の一端面38aに一致する位置となるように鍛造材100を移動させる。そして、この位置を圧下位置とする。
そして、作業者は、この圧下位置で上タップ37と下タップ38とにより胴部分形成予定部分101のマーキングDから長手方向一端100a側((
図9(a)においてマーキングDから左側の部分)を圧下する。更に、マニプレータ2を操作して鍛造材100を矢印方向に後退させつつ上タップ37と下タップ38とにより軸部分形成予定部分102を圧下する。これにより、
図9(b)に示すように、胴部分110と、胴部分110の長手方向一端側に隣接した第3軸部分形成予定部分111とが形成される。第3軸部分形成予定部分111の直径は、第1軸部分104の直径と同一であり、胴部分110の直径よりも小さい。
【0053】
次いで、作業者は、
図9(b)に示すように、第3軸部分形成予定部分111において胴部分110の長手方向一端100a側の端面110cから長手方向一端100a側に向けて予め決められた目標距離離れた位置にマーキングEを施す。
そして、作業者は、
図9(b)に示すように、第3軸部分形成予定部分111において胴部分110の長手方向一端100a側の端面110cからマーキングEまでの距離を測定する。この際に、鍛造材把持装置22によって鍛造材100の長手方向他端100b側の吊り手部分107を把持して胴部分110の長手方向一端100a側の端面110cが上タップ37の一端面37a及び下タップ38の一端面38aに一致する位置となるように鍛造材100を移動する。
【0054】
次いで、作業者は、鍛造材100を矢印で示す後退方向に移動させる。第3軸部分形成予定部分111に施されたマーキングEが目視で上タップ37の一端面37a及び下タップ38の一端面38aに一致する位置となるように鍛造材100を移動させる。そして、この位置を圧下位置とする。
そして、作業者は、この圧下位置で上タップ37と下タップ38とにより第3軸部分形成予定部分111のマーキングEから長手方向一端100a側((
図9(b)においてマーキングEから左側の部分)を圧下する。更に、マニプレータ2を操作して鍛造材100を矢印方向に後退させつつ上タップ37と下タップ38とにより第3軸部分形成予定部分111の残りの部分を圧下する。これにより、
図9(c)に示すように、胴部分110の長手方向一端側に隣接した第3軸部分112と、第3軸部分112の長手方向一端側に隣接した第4軸部分113とが形成される。第3軸部分112の直径は第3軸部分形成予定部分111の直径と同一であり、第4軸部分113の直径は第3軸部分112の直径よりも小さい。
【0055】
これにより、鍛造材100の鍛造工程は終了する。
そして、鍛造材100の鍛造工程が終了後、作業者は、
図7に示す場合と同様に、吊り手部分107側の端部107b及び第4軸部分113側の端部113aを切断して鍛造製品120が完成する。
切断後の鍛造製品120の全長L120及び吊り手部分107の長さL107が規定寸法となるように、吊り手部分107側の端部107b及び第4軸部分113側の端部113aを切断する。
そして、胴部分110の長さL110、及び鍛造製品120の全長L120が規定内であれば、鍛造製品120は合格となる。
【0056】
この一般的な移動距離測定方法を用いて鍛造製品を製造する方法では、胴部分形成予定部分101の長手方向一端100a側の端面101aからマーキングAまでの長手方向の距離の測定につき、次のように行っている。つまり、鍛造材把持装置22によって鍛造材100の長手方向一端100a側を把持して胴部分形成予定部分101の長手方向一端100a側の端面101aが上タップ37の一端面37a及び下タップ38の一端面38aに一致する位置となるように鍛造材100を移動する。それから、鍛造材100を後退させ、胴部分形成予定部分101に施されたマーキングAが目視で上タップ37の一端面37a及び下タップ38の一端面38aに一致する位置となるように鍛造材100を移動している。第1軸部分形成予定部分103の長手方向他端100b側の端面100dからマーキングBまでの距離の測定に際しても、同様に、目視で鍛造材100を移動している。胴部分形成予定部分101において胴部分形成予定部分101の長手方向他端100b側の端面101bからマーキングDまでの距離の測定に際しても、同様に、目視で鍛造材100を移動している。更に、第3軸部分形成予定部分111において胴部分110の長手方向一端100a側の端面110cからマーキングEまでの距離の測定に際しても、同様に、目視で鍛造材100を移動している。
【0057】
このようなマーキングA、マーキングB、マーキングD、及びマーキングEまでの距離測定の精度は、作業者が目視で行っていることから、本実施形態に係る移動距離測定システム10(移動距離測定方法)を用いて距離測定をする場合と比較して距離測定の精度は低い。
このように、作業者が目視で距離測定を行った場合、鍛造製品120において胴部分110の長さL110が大きくなる傾向にある。この理由は、作業者は安全側を見込んで胴部分110の長さL110を大きくなるように鍛造するからである。このため、吊り手部分107側の製品端部107長さL107や第4軸部分113側の製品端部113の長さL113が必要長に満たない場合がある。このため、鍛造製品120が不合格となるリスクが大きい。
【0058】
これに対して、本実施形態に係る移動距離測定方法を用いて鍛造製品を製造する場合には、前述したように、距離計12(距離測定ステップ:ステップS1)が、距離計12から鍛造材100が移動する前の鍛造材100の長手方向(x-x方向)のマニプレータ2が把持する長手方向一端100a側とは反対側の長手方向他端100b側の端面100dまでの距離L1を測定する。また、距離計12は、距離計12から鍛造材100が移動した後の鍛造材100の長手方向(x-x方向)のマニプレータ2が把持する長手方向一端100a側と反対側の長手方向他端100b側の端面100dまでの距離L2を測定する。また、移動距離算出装置13(移動距離算出ステップ:ステップS2)が、距離計12(距離測定ステップ:ステップS1)によって測定された前述の距離L1及び距離L2に基づいて、鍛造材100の長手方向(x-x方向)における実移動距離Lを算出する。
【0059】
これにより、鍛造材100の移動距離を鍛造材100から直接得ることで、鍛造材100の移動距離の測定精度を向上させることができる。このため、吊り手部分107側の製品端部107の長さL107及び第4軸部分113側の製品端部113の長さL113が必要長以上となることが保証され、鍛造製品120が不合格となるリスクを低減させることができる。
また、この一般的な移動距離測定方法を用いて鍛造製品を製造するに際し、
図8(c)に示すように、上タップ37と下タップ38とにより第1軸部分形成予定部分103のマーキングBから長手方向他端側部分((
図8(c)においてマーキングBから左側の部分)を圧下する。更に、マニプレータ2を操作して鍛造材100を後退させつつ上タップ37と下タップ38とにより第1軸部分形成予定部分103のマーキングBとマーキングCとの間の部分を
図8(c)における矢印で示すマーキングBからマーキングCに向かう方向に目視で圧下する。これにより、胴部分形成予定部分101の長手方向他端側に隣接した第1軸部分104、第1軸部分104の長手方向他端側に隣接した第2軸部分109及び第2軸部分109の長手方向他端側に隣接した吊り手部分107を形成する。
【0060】
ここで、第1軸部分形成予定部分103のマーキングBとマーキングCとの間の部分を
図8(c)における矢印で示すマーキングBからマーキングCに向かう方向に圧下するようにする。すると、第1軸部分形成予定部分103のマーキングBとマーキングCとの間の部分が長手方向に伸長していくため、マニプレータ2の長手方向での移動距離が鍛造材100の実移動距離と等しくならない。このやり方を本実施形態に係る鍛造製品の製造方法に適用した場合には、同様の問題が起こる。
このため、本実施形態に係る鍛造製品の製造方法では、
図5(c)~
図5(e)に示すように、第1軸部分形成予定部分103において、長さ寸法が決まっている第1軸部分104を形成する。その後、同様に長さ寸法が決まっている吊り手部分107を形成し、その後、第1軸部分104と吊り手部分107との間を圧下して第2軸部分109を形成するようにする。これにより、材料の伸長にかかわらず、本実施形態の移動距離測定方法が適用できるようにしている。
【0061】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されずに種々の変更、改良を行うことができる。
例えば、鍛造製品120及び鍛造材100は、段付き円柱材に限らず、スラブなどの矩形状や角柱状などであってもよい。また、鍛造材100は、長手方向(x-x方向)に細長く延びるものに限られず、上下方向(y-y方向)の高さが長手方向(x-x方向)の長さよりも大きいものであってもよい。
【実施例0062】
図10に示す鍛造材100としての段付き円柱材を、
図4乃至
図6に示す鍛造工程と同様の鍛造工程の本発明例によって鍛造した。また、前述の段付き円柱材を、
図8及び
図9に示す鍛造工程と同様の鍛造工程の比較例によって鍛造した。そして、本発明例と比較例とについて、
図10に示す第1軸部分104の長さa、第2軸部分109の長さb、吊り手部分107の長さc、胴部分110の長さd、及び第3軸部分112の長さeの実績長と目標長との差について評価した。
評価結果を
図11に示す。
図11示すように、本発明例によって鍛造した段付き円柱材の第1軸部分104の長さa、第2軸部分109の長さb、吊り手部分107の長さc、胴部分110の長さd、及び第3軸部分112の長さeの実績長と目標長との差の平均が約67mmであった。これに対して、比較例によって鍛造した段付き円柱材の第1軸部分104の長さa、第2軸部分109の長さb、吊り手部分107の長さc、胴部分110の長さd、及び第3軸部分112の長さeの実績長と目標長との差の平均が約83mmであった。このため、本発明例の場合、比較例に対し、当該差の平均が約16mm小さくなった。また、本発明例の場合、比較例に対し、標準偏差σが26mm小さくなった。
【0063】
この理由は、本発明例によって段付き円柱材を鍛造するに際し、第1軸部分104の長さa、吊り手部分107の長さc、胴部分110の長さd、及び第3軸部分112の長さeの測定を移動距離測定システム10(移動距離測定方法)を用いて行っている。第2軸部分109の長さbについては、胴部分形成予定部分101の長手方向他端100b側の端面101b(
図5(e)参照)と吊り手部分107の長手方向他端100b側の端面100dとの間の距離から、第1軸部分104の長さa及び手部分107の長さcを減算して求めた。
これに対して、比較例では、第1軸部分104の長さa、胴部分110の長さd、及び第3軸部分112の長さeを目視で測定している。第2軸部分109の長さbについては、第2軸部分109をある程度成形した後に目視で測定し、その長さを調整している。吊り手部分107の長さcについては測定していない。
【0064】
このように、本発明例が比較例に対し実績長と目標長との差の平均及び標準偏差σが小さくなっているのは、本発明例では比較例に対し、測定精度が向上した結果と推定される。