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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057406
(43)【公開日】2024-04-24
(54)【発明の名称】昇圧ポンプおよび水素供給システム
(51)【国際特許分類】
   F04B 15/08 20060101AFI20240417BHJP
【FI】
F04B15/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164116
(22)【出願日】2022-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 基至
(72)【発明者】
【氏名】中道 憲治
(72)【発明者】
【氏名】木原 勇一
【テーマコード(参考)】
3H075
【Fターム(参考)】
3H075AA15
3H075BB03
3H075CC34
3H075DA09
3H075DA10
3H075DB03
(57)【要約】
【課題】昇圧ポンプおよび水素供給システムにおいて、安全弁を小型化することで装置の大型化を抑制する。
【解決手段】圧縮室を有するシリンダと、低温流体を圧縮室に吸入する吸入弁と、シリンダに移動自在に支持されて圧縮室の低温流体を圧縮するピストンと、圧縮室の低温流体の圧力が予め設定された第1圧力を超えると開放して低温流体を吐出する吐出弁と、圧縮室の低温流体の圧力が第1圧力より高い第2圧力を超えると開放して低温流体を排出する安全弁と、を備え、第1圧力は、吐出弁より下流側の第1低温流体圧力と吐出弁の第1付勢部材の閉止圧力との合計圧力以上の圧力であり、第2圧力は、外部から作用する第2低温流体圧力と安全弁の第2付勢部材の閉止圧力との合計圧力以上の圧力である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮室を有するシリンダと、
低温流体を前記圧縮室に吸入する吸入弁と、
前記シリンダに移動自在に支持されて前記圧縮室の低温流体を圧縮するピストンと、
前記圧縮室の低温流体の圧力が予め設定された第1圧力を超えると開放して低温流体を吐出する吐出弁と、
前記圧縮室の低温流体の圧力が前記第1圧力より高い第2圧力を超えると開放して低温流体を排出する安全弁と、
を備え、
前記第1圧力は、前記吐出弁より下流側の第1低温流体圧力と前記吐出弁の第1付勢部材の閉止圧力との合計圧力以上の圧力であり、
前記第2圧力は、外部から作用する第2低温流体圧力と前記安全弁の第2付勢部材の閉止圧力との合計圧力以上の圧力である、
昇圧ポンプ。
【請求項2】
前記第2低温流体圧力は、前記第1低温流体圧力であり、前記第2付勢部材の閉止圧力が前記第1付勢部材の閉止圧力より高い、
請求項1に記載の昇圧ポンプ。
【請求項3】
前記圧縮室に対して吐出経路と排出経路とが並列をなして接続され、前記吐出経路の下流側と前記排出経路の下流側が連通経路により接続され、前記吐出経路に前記吐出弁が設けられ、前記排出経路に前記安全弁が設けられる、
請求項2に記載の昇圧ポンプ。
【請求項4】
前記連通経路は、前記排出経路から前記吐出経路への低温流体の流れを抑制する抑制弁が設けられる、
請求項3に記載の昇圧ポンプ。
【請求項5】
前記抑制弁は、逆止弁または渦流防止弁である、
請求項4に記載の昇圧ポンプ。
【請求項6】
前記連通経路は、前記抑制弁より前記吐出経路側にオリフィスが設けられる、
請求項5に記載の昇圧ポンプ。
【請求項7】
前記圧縮室に対して吐出経路と排出経路とが並列をなして接続され、前記吐出経路に前記吐出弁が設けられ、前記排出経路に前記安全弁が設けられると共に、前記排出経路に前記第2低温流体圧力の圧力源が接続される、
請求項1に記載の昇圧ポンプ。
【請求項8】
前記排出経路の下流側にばね式安全弁が設けられる、
請求項4から請求項7のいずれか一項に記載の昇圧ポンプ。
【請求項9】
前記排出経路の下流側に圧力計とリリーフ弁とが設けられると共に、前記圧力計の計測結果に基づいて前記リリーフ弁を開閉する制御部が設けられる、
請求項4から請求項7のいずれか一項に記載の昇圧ポンプ。
【請求項10】
請求項1に記載の昇圧ポンプを有して低温流体としての液体水素を圧縮する圧縮装置と、
前記圧縮装置により圧縮された液体水素を気化する蒸発装置と、
前記蒸発装置により気化された水素ガスを供給するディスペンサと、
を備える水素供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体水素などの低温流体を昇圧する昇圧ポンプ、昇圧ポンプを有する水素供給システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の昇圧ポンプとしては、例えば、下記特許文献1に記載されたものがある。特許文献1に記載された昇圧ポンプは、シリンダブロックに設けられる圧縮室と、低温流体を圧縮室に吸入する吸入弁と、圧縮室の低温流体を圧縮するピストンと、圧縮された低温流体を吐出する吐出弁とを備える。ピストンが上昇する吸入工程にて、吸入弁が開放されて圧縮室に低温流体が吸入され、ピストンが下降する圧縮工程にて、圧縮室の低温流体が圧縮されて高圧となり、吐出弁が開放されて高圧の低温流体が外部に吐出される。このような昇圧ポンプは、安全弁が設けられる。圧縮室の低温流体が圧縮されて高圧となったものの、吐出弁が開放されないとき、安全弁が開放されて圧縮室にある高圧の低温流体を外部に排出する。安全弁を設けた昇圧ポンプとしては、例えば、下記特許文献2に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4031807号公報
【特許文献2】実公昭63-14065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の昇圧ポンプにて、吐出弁の開放圧力は、吐出弁より下流側の圧力と、吐出弁自体のばね荷重により設定される。一方、安全弁の開放圧力は、吐出弁の開放圧力より高い圧力に設定される。そのため、安全弁は、安全弁自体のばね荷重を過大なものに設定する必要があり、大型化してしまうという課題がある。
【0005】
本開示は、上述した課題を解決するものであり、安全弁を小型化することで装置の大型化を抑制する昇圧ポンプおよび水素供給システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本開示の昇圧ポンプは、圧縮室を有するシリンダと、低温流体を前記圧縮室に吸入する吸入弁と、前記シリンダに移動自在に支持されて前記圧縮室の低温流体を圧縮するピストンと、前記圧縮室の低温流体の圧力が予め設定された第1圧力を超えると開放して低温流体を吐出する吐出弁と、前記圧縮室の低温流体の圧力が前記第1圧力より高い第2圧力を超えると開放して低温流体を排出する安全弁と、を備え、前記第1圧力は、前記吐出弁より下流側の第1低温流体圧力と前記吐出弁の第1付勢部材の閉止圧力との合計圧力以上の圧力であり、前記第2圧力は、外部から作用する第2低温流体圧力と前記安全弁の第2付勢部材の閉止圧力との合計圧力以上の圧力である。
【0007】
また、本開示の水素供給システムは、前記昇圧ポンプを有して低温流体としての液体水素を圧縮する圧縮装置と、前記圧縮装置により圧縮された液体水素を気化する蒸発装置と、前記蒸発装置により気化された水素ガスを供給するディスペンサと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の昇圧ポンプおよび水素供給システムによれば、シール性能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1実施形態の水素供給システムの全体構成を表す模式図である。
図2図2は、圧縮装置を表す概略構成図である。
図3図3は、第1実施形態の昇圧ポンプを表す概略図である。
図4図4は、昇圧ポンプの吸入工程を表す概略図である。
図5図5は、昇圧ポンプの圧縮工程を表す概略図である。
図6図6は、昇圧ポンプの異常の作動を表す概略図である。
図7図7は、第2実施形態の昇圧ポンプを表す概略図である。
図8図8は、第3実施形態の昇圧ポンプを表す概略図である。
図9図9は、第4実施形態の昇圧ポンプを表す概略図である。
図10図10は、第5実施形態の昇圧ポンプを表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を参照して、本開示の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。また、実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
【0011】
[第1実施形態]
<水素供給システム>
図1は、第1実施形態の水素供給システムの全体構成を表す模式図である。
【0012】
図1に示すように、水素供給システム10は、コンテナ11に貯留される液体水素を所定圧力の水素ガスとして車両12の動力源に供給(補給)する。ここで、動力源は、例えば、燃料電池またはや水素エンジンなどであり、車両12に搭載される。水素供給システム10は、例えば、燃料である水素ガスを車両12の動力源に供給(補給)する、いわゆる、水素スタンド施設である。但し、水素供給システム10は、水素ガスを車両12の動力源に供給するものに限らず、低温流体(例えば、液体水素、液体窒素、液体酸素、液化炭酸ガス、液化天然ガス、液化プロパンガス等)を圧縮して供給するものである。
【0013】
水素供給システム10は、圧縮装置21と、蒸発装置22と、ディスペンサ23とを有する。圧縮装置21は、コンテナ11から供給される液体水素(低温流体)を予め設定された所定の高圧(高圧状態)まで圧縮する。蒸発装置22は、圧縮装置21により圧縮された高圧の液体水素を気化することで水素ガスを発生させる。ディスペンサ23は、蒸発装置22により発生した水素ガスを車両12の動力源に充填する。
【0014】
なお、圧縮装置21は、コンテナ11に貯留された液体水素を所定の高圧まで圧縮したが、この構成に限定されない。例えば、コンテナ11が水素ガスを貯留していた場合、圧縮装置21は、コンテナ11に貯留された水素ガスを所定の高圧まで圧縮してもよい。
【0015】
圧縮装置21は、駆動モータ31と、昇圧ポンプ32とを有する。駆動モータ31は、外部から供給される電力によって駆動可能な電動機である。駆動モータ31は、回転数がインバータ(図示略)により制御される。駆動モータ31は、回転力を昇圧ポンプ32に伝達する。昇圧ポンプ32は、駆動モータ31の回転力により作動する。
【0016】
<圧縮装置>
図2は、圧縮装置を表す概略構成図である。
【0017】
図2に示すように、駆動モータ31は、減速機33を介して昇圧ポンプ32が連結される。減速機33は、駆動モータ31の回転力を減速して昇圧ポンプ32に伝達する。昇圧ポンプ32は、往復動式のポンプである。昇圧ポンプ32は、減速機33により減速された駆動モータ31の回転力を往復動力に変換して作動する。昇圧ポンプ32は、往復動力により液体水素の吸入と圧縮(昇圧)とを交互に行うことで、吸入した液体水素を所定の高圧状態に圧縮して外部に吐出する。
【0018】
昇圧ポンプ32は、クランク機構34と、クロスヘッド35と、ピストンロッド36と、ピストン37と、シリンダブロック38とを有する。
【0019】
クランク機構34は、減速機33から伝達された回転力を直線の往復動力に変換し、クロスヘッド35に伝達する。クロスヘッド35は、クランク機構34から伝達された鉛直方向VDの往復動力により鉛直方向VDに往復動する。ピストンロッド36は、上端部がクロスヘッド35に連結され、他端部にピストン37が連結される。シリンダブロック38は、中空形状をなし、内部にピストン37が鉛直方向VDに沿って移動自在に支持される。
【0020】
昇圧ポンプ32は、下部、つまり、シリンダブロック38が容器39の内部に配置される。容器39は、断熱真空容器であり、昇圧ポンプ32と共に内部が真空状態に維持される。容器39は、内部に液体水素が供給され、大気圧状態に満たされる。
【0021】
昇圧ポンプ32が作動すると、まず、ピストン37が上昇する吸入工程にて、容器39の液体水素がシリンダブロック38の内部に吸入される。次に、ピストン37が下降する圧縮工程にて、シリンダブロック38の内部の液体水素が圧縮され、高圧の液体水素が容器39の外部に吐出される。
【0022】
<昇圧ポンプ>
図3は、第1実施形態の昇圧ポンプを表す概略図である。
【0023】
図3に示すように、昇圧ポンプ32は、ピストン37と、シリンダブロック(シリンダ)38と、吸入弁41と、吐出弁42と、安全弁43とを備える。
【0024】
シリンダブロック38は、シリンダとして機能し、内部に嵌合孔51が形成される。ピストン37は、シリンダブロック38の嵌合孔51に軸方向に移動自在に支持される。ピストン37と嵌合孔51は、軸心Oを中心とした円形断面をなす。シリンダブロック38は、嵌合孔51にピストン37が配置されることで、圧縮室52が区画される。ピストン37が軸方向(軸心O)に沿って移動(下降)すると、圧縮室52の容積が減少し、圧縮室52の液体水素が圧縮される。
【0025】
圧縮室52は、吸入経路53と、吐出経路54と、排出経路55とが並列をなして接続される。圧縮室52は、下部に吸入経路53の下流側端部が接続され、一側部に吐出経路54の上流側端部が接続され、他側部に排出経路55の上流側端部が接続される。但し、圧縮室52に対する吸入経路53と吐出経路54と排出経路55の接続位置は、上述した構成に限定されない。吸入経路53は、吸入弁41が設けられる。吐出経路54は、吐出弁42が設けられる。排出経路55は、安全弁43が設けられる。そして、吐出経路54における吐出弁42より下流側と、排出経路55における安全弁43より下流側とは、連通経路57により接続される。
【0026】
吸入弁41は、ばね41aを有し、ばね41aの荷重(付勢力)により閉止する。吸入弁41は、ピストン37が一方向に移動(上昇)する吸入工程にて、圧縮室52の容積が拡大することで発生する負圧により開放される。吸入弁41が開放されると、吸入経路53の液体水素が圧縮室52に吸入される。吐出弁42は、第1ばね(第1付勢部材)42aを有し、第1ばね42aの荷重(付勢力)により閉止する。吐出弁42は、ピストン37が他方向の移動(下降)する圧縮工程にて、圧縮室52の容積が縮小することで高圧となって開放される。吐出弁42が開放されると、圧縮室52で圧縮された高圧の液体水素が吐出経路54の下流側に吐出される。安全弁43は、第2ばね(第2付勢部材)43aを有し、第2ばね43aの荷重(付勢力)により閉止する。安全弁43は、ピストン37が他方向の移動(下降)する圧縮工程にて、吐出弁42が開放されないときに、圧縮室52で発生する高圧により開放される。安全弁43が開放されると、圧縮室52で圧縮された高圧の液体水素が排出経路55の下流側に排出される。
【0027】
吐出弁42は、圧縮室52の液体水素の圧力が予め設定された第1圧力(第1クラッキング圧力)を超えると開放されて液体水素を吐出する。安全弁43は、圧縮室52の液体水素の圧力が第1圧力より高い第2圧力(第2クラッキング圧力)を超えると開放されて液体水素を排出する。吐出弁42は、第1閉止圧力として、吐出弁42より下流側の第1流体圧力P1と、第1ばね42aの荷重(圧力)F1との合計圧力Paが設定される。一方、安全弁43は、第2閉止圧力として、安全弁43より下流側の第2流体圧力P2と、第2ばね43aの荷重(圧力)F2との合計圧力Pbが設定される。ここで、吐出経路54の下流側と排出経路55の下流側とは、連通経路57により接続されていることから、第1流体圧力P1と第2流体圧力P2は同じ圧力である。
【0028】
そして、安全弁43は、吐出弁42が何らかの原因により開放されないときに開放され、圧縮室52の液体水素を排出することで、昇圧ポンプ32の破損を防止する。そのため、安全弁43の第2閉止圧力(合計圧力Pb)は、吐出弁42の第1閉止圧力(合計圧力Pa)より高く設定される。すなわち、第1流体圧力P1と第2流体圧力P2とが同じ圧力であることから、第2ばね43aの荷重F2が第1ばね42aの荷重F1より高く設定される。
【0029】
ここで、安全弁43を開放する第2圧力(第2クラッキング圧力)は、吐出弁42を開放する第1圧力(第1クラッキング圧力)の5倍から30倍の範囲に設定されることが好ましい。つまり、吐出弁42の第1閉止圧力は、第1流体圧力P1(例えば、90MPa)と、第1ばね42aの荷重F1(例えば、1MPa)との合計圧力Pa(例えば、91MPa)である。そして、昇圧ポンプ32を安全に作動させるため、吐出弁42の第1圧力である第1クラッキング圧力は、合計圧力Pa(例えば、91MPa)に対して余裕度を加味して、例えば、設計圧力100MPaに設定される。すると、安全弁43の第2圧力である第2クラッキング圧力は、吐出弁42の設計圧力100MPaに対して、5倍から30倍の範囲であることから、105MPaから130MPaとなる。
【0030】
そのため、吐出弁42の第1ばね42aの荷重F1を1MPaとすると、安全弁43の第2ばね43aの荷重F2は、5MPaから30MPaに設定される。第1ばね42aと第2ばね43aは、このような関係が成り立つように、それぞれのばね定数が設定される。
【0031】
<昇圧ポンプの作動>
図4は、昇圧ポンプの吸入工程を表す概略図、図5は、昇圧ポンプの圧縮工程を表す概略図、図6は、昇圧ポンプの異常の作動を表す概略図である。
【0032】
図4に示すように、ピストン37が軸心Oに沿って上昇(O1)すると、昇圧ポンプ32が吸入工程となる。吸入工程にて、圧縮室52の容積が拡大することで負圧が発生し、圧縮室52の負圧が吸入弁41に作用することで、吸入弁41が開放される。吸入弁41が開放されると、吸入経路53を通して液体水素が圧縮室52に吸入される。
【0033】
ピストン37が上死点まで移動して吸入工程が終了すると、図5に示すように、ピストン37が軸心Oに沿って下降(O2)し、昇圧ポンプ32が圧縮工程となる。圧縮工程にて、圧縮室52の容積が縮小することで高圧となり、圧縮室52の液体水素の圧力が第1圧力を超えると、吐出弁42が開放される。吐出弁42が開放されると、圧縮室52で圧縮された高圧の液体水素が吐出経路54の下流側に吐出される。高圧の液体水素は、吐出経路54により所定の位置に供給される。
【0034】
吐出弁42は、正常状態にあるとき、圧縮室52の液体水素の圧力が第1圧力を超えると開放される。しかし、吐出弁42は、故障などにより異常状態にあるとき、圧縮室52の液体水素の圧力が第1圧力を超えても開放されない。図6に示すように、吐出弁42が開放されず、ピストン37がさらに下降(O2)すると、圧縮室52の容積がさらに縮小することで、圧縮室52の液体水素の圧力が第1圧力を超えて高くなる。そして、圧縮室52の液体水素の圧力が第2圧力を超えると、安全弁43が開放される。安全弁43が開放されると、圧縮室52で圧縮された高圧の液体水素が排出経路55に排出され、連通経路57を通して吐出経路54の下流側に排出される。そのため、圧縮室52を含めたシリンダブロック38の破損が防止される。
【0035】
第1実施形態の昇圧ポンプ32は、吐出弁42が故障したときに、圧縮室52の高圧の液体水素を外部に排出可能な安全弁43を設けており、シリンダブロック38の破損を防止することができる。そして、吐出弁42を有する吐出経路54と安全弁43を有する排出経路55とを圧縮室52に対して並列に接続し、吐出経路54の下流側と排出経路55の下流側を連通経路57により連通している。そのため、吐出弁42および安全弁43は、閉止圧力として、吐出された液体水素の吐出圧力が作用することなり、安全弁43は、吐出弁42の第1ばね42aの荷重より高い荷重の第2ばね43aを設ければよく、構造を簡素化することができる。
【0036】
[第2実施形態]
図7は、第2実施形態の昇圧ポンプを表す概略図である。なお、上述した第1実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0037】
図7に示すように、昇圧ポンプ32Aは、第1実施形態と同様に、ピストン37と、シリンダブロック38と、吸入弁41と、吐出弁42と、安全弁43とを備える。また、昇圧ポンプ32Aは、逆止弁(抑制弁)61と、ばね式安全弁62とをさらに備える。
【0038】
圧縮室52は、吸入経路53と、吐出経路54と、排出経路55とが並列をなして接続される。吐出経路54は、吐出弁42が設けられ、排出経路55は、安全弁43が設けられる。吐出経路54における吐出弁42より下流側と、排出経路55における安全弁43より下流側とは、連通経路57により接続される。
【0039】
連通経路57は、逆止弁61が設けられる。逆止弁61は、排出経路55から吐出経路54への液体水素の流れを抑制する抑制弁として機能する。逆止弁61は、ばね61aを有し、ばね61aの荷重(付勢力)により閉止する。逆止弁61の閉止圧力は、吐出弁42の第1閉止圧力より小さい。すなわち、逆止弁61のばね61aの荷重は、吐出弁42の第1ばね42aの荷重より小さい。そのため、第1実施形態と同様に、安全弁43は、第2閉止圧力として、吐出経路54に吐出された液体水素の吐出圧力が逆止弁61を通して作用する。しかし、安全弁43が開放されたとき、排出経路55に排出された液体水素は、逆止弁61に止められ、吐出経路54に流れない。
【0040】
また、排出経路55は、連通経路57との接続部より下流側にばね式安全弁62が設けられる。そのため、安全弁43が開放され、圧縮室52の高圧の液体水素が排出経路55に排出されたとき、ばね式安全弁62は、高圧の液体水素により開放され、高圧の液体水素を外部に排出することができる。
【0041】
また、ばね式安全弁62の閉止圧力は、吐出弁42の第1閉止圧力より大きい。そのため、吐出弁42が開放され、圧縮室52の高圧の液体水素が吐出経路54に吐出され、連通経路57および逆止弁61を通して排出経路55に流れたとき、ばね式安全弁62は、閉止され、吐出経路54に吐出された高圧の液体水素が外部に排出されることはない。
【0042】
吐出弁42は、異常状態にあるとき、圧縮室52の液体水素の圧力が第1圧力を超えても開放されない。このとき、圧縮室52の液体水素の圧力が第2圧力を超えると、安全弁43が開放される。安全弁43が開放されると、圧縮室52で圧縮された高圧の液体水素が排出経路55の下流側に排出される。このとき、排出経路55の高圧の液体水素は、逆止弁61により吐出経路54には流れず、ばね式安全弁62を開放して外部排出される。そのため、圧縮室52を含めたシリンダブロック38の破損が防止される。また、必要以上に高圧の液体水素が吐出経路54により供給先の機器に供給されることがなく、供給先の機器の破損も防止される。
【0043】
第2実施形態の昇圧ポンプ32Aは、吐出弁42を有する吐出経路54の下流側と安全弁43を有する排出経路55の下流側を連通経路57により連通し、連通経路57に逆止弁61を設けている。そのため、安全弁43が開放されることで、排出経路55に排出された高圧の液体水素が吐出経路54に流れることはなく、供給先の機器の破損が防止される。また、排出経路55の下流側にばね式安全弁62を設けている。昇圧ポンプ32Aは、停止時に、吐出経路54、排出経路55、連通経路57などに極低温の流体水素が残留しているとき、液体水素の気化によって圧力が上昇すると、ばね式安全弁62が開放され、高圧の流体水素が外部に排出される。そのため、吐出経路54と排出経路55と連通経路57の圧力を規定値以下に維持することができ、機器の損傷が防止される。
【0044】
なお、抑制弁として、逆止弁61の代わりに渦流防止弁を設けてもよい。渦流防止弁は、連通経路57に所定流量未満の流体が流れると開放され、液体水素を流通させる一方、所定流量以上の液体水素が流れると閉止され、液体水素の流通を遮断する。さらに、抑制弁として、逆止弁61や渦流防止弁に加えてオリフィスを設けてもよい。この場合、連通経路57に設けられた逆止弁61に対して、吐出経路54側にオリフィスを設ける。
【0045】
連通経路57に渦流防止弁や逆止弁61およびオリフィスを設けることで、吐出経路54や排出経路55における液体水素の圧力脈動が抑制される。
【0046】
[第3実施形態]
図8は、第3実施形態の昇圧ポンプを表す概略図である。なお、上述した第2実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0047】
図8に示すように、昇圧ポンプ32Bは、第1実施形態と同様に、ピストン37と、シリンダブロック38と、吸入弁41と、吐出弁42と、安全弁43とを備える。また、昇圧ポンプ32Bは、圧力計71と、リリーフ弁72と、制御部73とをさらに備える。
【0048】
吐出経路54は、吐出弁42より下流側が連通経路57により排出経路55における安全弁43より下流側に接続される。連通経路57は、逆止弁61が設けられる。
【0049】
排出経路55は、連通経路57との接続部より下流側に圧力計71とリリーフ弁72が設けられる。リリーフ弁72は、排出経路55を開閉可能である。圧力計71は、排出経路55におけるリリーフ弁72より上流側に位置し、排出経路55の液体水素の圧力を計測する。制御部73は、圧力計71とリリーフ弁72が接続される。制御部73は、圧力計71の計測結果(排出経路55の液体水素の圧力)が入力され、計測結果に基づいてリリーフ弁72を開閉制御する。リリーフ弁72は、第2実施形態で説明したばね式安全弁62とほぼ同様の機能を有する。
【0050】
第3実施形態の昇圧ポンプ32Bは、排出経路55の下流側に圧力計71とリリーフ弁72を設けると共に、圧力計71の計測結果に基づいてリリーフ弁72を開閉する制御部73を設けている。昇圧ポンプ32Bは、停止時に、吐出経路54、排出経路55、連通経路57などに極低温の流体水素が残留しており、液体水素の気化によって圧力が上昇する。制御部73は、圧力計71が計測した液体水素の圧力が予め設定された規定圧力を超えると、リリーフ弁72を開放する。ここで、規定圧力は、吐出弁42、安全弁43、逆止弁61などの開放圧に応じて適宜設定される。すると、排出経路55の高圧の流体水素がリリーフ弁72を通って外部に排出され、排出経路55の圧力が低下する。そのため、吐出経路54と排出経路55と連通経路57の圧力を規定値以下に維持することができ、機器の損傷が防止される。
【0051】
[第4実施形態]
図9は、第4実施形態の昇圧ポンプを表す概略図である。なお、上述した第2実施形態および第3実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0052】
図9に示すように、昇圧ポンプ32Cは、第1実施形態と同様に、ピストン37と、シリンダブロック38と、吸入弁41と、吐出弁42と、安全弁43とを備える。また、昇圧ポンプ32Cは、逆止弁61と、ばね式安全弁62と、圧力計71と、リリーフ弁72と、制御部73とをさらに備える。すなわち、昇圧ポンプ32Cは、昇圧ポンプ32Aと昇圧ポンプ32Cとを組み合わせた構成である。
【0053】
連通経路57は、逆止弁61が設けられる。排出経路55は、連通経路57との接続部より下流側にばね式安全弁62が設けられる。また、排出経路55は、下流側に圧力計71とリリーフ弁72が設けられると共に、圧力計71の計測結果に基づいてリリーフ弁72を開閉する制御部73が設けられる。すなわち、排出経路55は、連通経路57との接続部より下流側で、2つの分岐経路55a,55bが設けられる。分岐経路55aは、ばね式安全弁62が設けられ、分岐経路55bは、圧力計71とリリーフ弁72が設けられる。
【0054】
制御部73は、圧力計71が計測した液体水素の圧力が規定圧力を超えると、リリーフ弁72を開放する。リリーフ弁72を開放する規定圧力は、吐出弁42、安全弁43、逆止弁61などの開放圧に応じて適宜設定されるものであり、必要に応じて可変である。一方、ばね式安全弁62は、開放圧が固定である。リリーフ弁72の開放圧は、ばね式安全弁62の開放圧より低く設定することが好ましい。
【0055】
第4実施形態の昇圧ポンプ32Cは、逆止弁61と、ばね式安全弁62と、圧力計71と、リリーフ弁72と、制御部73とを備える。そのため、昇圧ポンプ32Cの安全性をさらに高めることができる。
【0056】
[第5実施形態]
図10は、第5実施形態の昇圧ポンプを表す概略図である。なお、上述した第1実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0057】
図10に示すように、昇圧ポンプ32Dは、第1実施形態と同様に、ピストン37と、シリンダブロック38と、吸入弁41と、吐出弁42と、安全弁43とを備える。また、昇圧ポンプ32Dは、ばね式安全弁62と、ボンベ(加圧源)81と、圧縮機(加圧源)82とをさらに備える。
【0058】
排出経路55は、安全弁43より下流側にばね式安全弁62が設けられる。また、排出経路55は、安全弁43とばね式安全弁62との間の第1加圧経路83の一端部が接続される。第1加圧経路83は、他端部にボンベ81が接続され、中途部に遮断弁84と減圧弁85が設けられる。この場合、遮断弁84に対して減圧弁85がボンベ81側に位置する。第1加圧経路83は、遮断弁84と減圧弁85との間に第2加圧経路86の一端部が接続される。第2加圧経路86は、他端部に圧縮機82が接続される。
【0059】
ボンベ81は、水素ガスが充填され、第1加圧経路83に水素ガスを供給する。減圧弁85は、ボンベ81から第1加圧経路83に供給された水素ガスを減圧可能である。遮断弁84は、第1加圧経路83を開閉可能である。遮断弁84は、第1加圧経路83を開放することで、水素ガスを排出経路55に供給可能である。圧縮機82は、水素ガスを圧縮し、第2加圧経路86および第1加圧経路83を介して排出経路55に供給可能である。なお、遮断弁84は、制御部(図示略)により開閉制御される。例えば、制御部は、安全弁43が閉止されていたり、排出経路55の圧力が第2流体圧力P2以下であったりするときに遮断弁84を開放し、安全弁43が開放されていたり、排出経路55の圧力が第2流体圧力P2より高くなったりしたときに遮断弁84を閉止する。
【0060】
吐出弁42は、圧縮室52の液体水素の圧力が第1圧力(第1クラッキング圧力)を超えると開放されて液体水素を吐出する。安全弁43は、圧縮室52の液体水素の圧力が第1圧力より高い第2圧力(第2クラッキング圧力)を超えると開放されて液体水素を排出する。吐出弁42は、第1閉止圧力として、吐出弁42より下流側の吐出経路54の第1流体圧力P1と、第1ばね42aの荷重(圧力)F1との合計圧力Paが設定される。一方、安全弁43は、第2閉止圧力として、安全弁43より下流側の排出経路55の第2流体圧力P2と、第2ばね43aの荷重(圧力)F2との合計圧力Pbが設定される。
【0061】
安全弁43は、吐出弁42が何らかの原因により開放されないときに開放され、圧縮室52の液体水素を排出することで、昇圧ポンプ32の破損を防止する。そのため、安全弁43の第2閉止圧力(合計圧力Pb)は、吐出弁42の第1閉止圧力(合計圧力Pa)より高く設定される。すなわち、安全弁43の第2閉止圧力は、ボンベ81や圧縮機82から供給される水素ガスにより加圧される排出経路55における第2流体圧力P2と、第2ばね43aの荷重F2との合計圧力Pbが設定される。この場合、第1流体圧力P1と第2流体圧力P2とをほぼ同じ圧力に調整し、第2ばね43aの荷重F2を第1ばね42aの荷重F1より高く設定することが好ましい。また、安全弁43の第2閉止圧力を第2流体圧力P2とし、第2ばね43aの荷重F2を0または極小としてもよい。
【0062】
なお、排出経路55の加圧源として、ボンベ81と圧縮機82を設けたが、この構成に限定されない。ボンベ81に対して圧縮機82を補助用として用いてもよくまた、ボンベ81と圧縮機82のいずれか一方だけを設けてもよい。
【0063】
第5実施形態の昇圧ポンプ32Dは、排出経路55に安全弁43の閉止圧力を確保する圧力源としてボンベ81や圧縮機82を設けている。そのため、安全弁43の開閉を、吐出経路54の高圧の液体水素の吐出圧に依存する必要がなく、安全弁の開放圧を自由に設定することができる。
【0064】
[本実施形態の作用効果]
第1の態様に係る昇圧ポンプは、圧縮室52を有するシリンダブロック(シリンダ)38と、液体水素(低温流体)を圧縮室52に吸入する吸入弁41と、シリンダブロック38に移動自在に支持されて圧縮室52の液体水素を圧縮するピストン37と、圧縮室52の液体水素の圧力が予め設定された第1圧力を超えると開放して液体水素を吐出する吐出弁42と、圧縮室52の液体水素の圧力が第1圧力より高い第2圧力を超えると開放して液体水素を排出する安全弁43とを備え、第1圧力は、吐出弁42より下流側の第1流体圧力と吐出弁42の第1ばね(第1付勢部材)42aの閉止圧力との合計圧力以上の圧力であり、第2圧力は、外部から作用する第2流体圧力と安全弁43の第2ばね(第2付勢部材)43aの閉止圧力との合計圧力以上の圧力である。
【0065】
第1の態様に係る昇圧ポンプによれば、吐出弁42を開放する第1圧力を第1流体圧力と吐出弁42の第1ばね42aの閉止圧力との合計圧力以上の圧力とし、安全弁43を開放する第2圧力を外部から作用する第2流体圧力と安全弁43の第2ばね43aの閉止圧力との合計圧力以上の圧力としている。そのため、安全弁43における第2ばね43aの閉止圧力を低く設定することができ、安全弁43を小型化することで装置の大型化を抑制することができる。
【0066】
第2の態様に係る昇圧ポンプは、第1の態様に係る昇圧ポンプであって、さらに、第2低温流体圧力は、第1低温流体圧力であり、第2ばね43aの閉止圧力が第1ばね42aの閉止圧力より高い。これにより、第2低温流体圧力を第1低温流体圧力と同じ圧力とすることで、第2ばね43aの閉止圧力を第1ばね42aの閉止圧力より高くすればよく、安全弁43の簡素化を図ることができる。
【0067】
第3の態様に係る昇圧ポンプは、第1の態様に係る昇圧ポンプであって、さらに、圧縮室52に対して吐出経路54と排出経路55とが並列をなして接続され、吐出経路54の下流側と排出経路55の下流側が連通経路57により接続され、吐出経路54に吐出弁42が設けられ、排出経路55に安全弁43が設けられる。これにより、吐出弁42および安全弁43は、閉止圧力として、吐出された液体水素の吐出圧力が作用することなり、安全弁43は、吐出弁42の第1ばね42aの荷重より高い荷重の第2ばね43aを設ければよく、構造を簡素化することができる。
【0068】
第4の態様に係る昇圧ポンプは、第3の態様に係る昇圧ポンプであって、さらに、連通経路57は、排出経路55から吐出経路54への液体水素体の流れを抑制する抑制弁が設けられる。これにより、安全弁43が開放されたとき、超高圧の液体水素が排出経路55から吐出経路54に流れることが抑制され、吐出経路54の下流側に接続される各種機器の破損を防止することができる。
【0069】
第5の態様に係る昇圧ポンプは、第4の態様に係る昇圧ポンプであって、さらに、抑制弁として、逆止弁61または渦流防止弁が設けられる。これにより、抑制弁を逆止弁61や渦流防止弁とすることで、構造の簡素化を図ることができる。
【0070】
第6の態様に係る昇圧ポンプは、第5の態様に係る昇圧ポンプであって、さらに、連通経路57は、抑制弁より吐出経路54側にオリフィスが設けられる。これにより、吐出経路54や排出経路55における液体水素の圧力脈動を抑制することができる。
【0071】
第7の態様に係る昇圧ポンプは、第1の態様に係る昇圧ポンプであって、さらに、圧縮室52に対して吐出経路54と排出経路55とが並列をなして接続され、吐出経路54に吐出弁42が設けられ、排出経路55に安全弁43が設けられると共に、排出経路55に第2低温流体圧力の圧力源としてのボンベ81と圧縮機82が接続される。これにより、安全弁43の閉止圧力として、別途、圧力源としてのボンベ81と圧縮機82を設けることで、吐出経路54における液体水素の吐出圧力に依存することなく、安全弁43を適切に作動させることができる。
【0072】
第8の態様に係る昇圧ポンプは、第1の態様から第7の態様のいずれか一つに係る昇圧ポンプであって、さらに、排出経路55の下流側にばね式安全弁62が設けられる。これにより、吐出経路54、排出経路55、連通経路57に残留している流体水素が気化して圧力が上昇したとき、ばね式安全弁62が開放されることで、高圧の流体水素が外部に排出されることとなり、機器の損傷を防止することができる。
【0073】
第9の態様に係る昇圧ポンプは、第1の態様から第8の態様のいずれか一つに係る昇圧ポンプであって、さらに、排出経路55の下流側に圧力計71とリリーフ弁72とが設けられると共に、圧力計71の計測結果に基づいてリリーフ弁72を開閉する制御部73が設けられる。これにより、吐出経路54、排出経路55、連通経路57に残留している流体水素が気化して圧力が上昇したとき、リリーフ弁72が開放されることで、高圧の流体水素が外部に排出されることとなり、機器の損傷を防止することができる。
【0074】
第10の態様に係る水素供給システムは、第1の態様から第9の態様のいずれか一つに係る昇圧ポンプ32を有して低温流体としての液体水素を圧縮する圧縮装置21と、圧縮装置21により圧縮された液体水素を気化する蒸発装置22と、蒸発装置22により気化された水素ガスを供給するディスペンサ23とを備える。これにより、昇圧ポンプ32を小型化することで装置の大型化を抑制することができる。
【0075】
なお、上述した実施形態では、昇圧ポンプ32を水素供給システム10の圧縮装置21に適用して説明したが、この分野に限定されるものではなく、低温流体を適用する装置であれば適用することができる。
【符号の説明】
【0076】
10 水素供給システム
11 コンテナ
12 車両
21 圧縮装置
22 蒸発装置
23 ディスペンサ
31 駆動モータ
32,32A,32B,32C,32D 昇圧ポンプ
34 クランク機構
35 クロスヘッド
36 ピストンロッド
37 ピストン
38 シリンダブロック(シリンダ)
39 容器
41 吸入弁
42 吐出弁
42a 第1ばね(第1付勢部材)
43 安全弁
43a 第2ばね(第2付勢部材)
51 嵌合孔
52 圧縮室
53 吸入経路
54 吐出経路
55 排出経路
55a,55b 分岐経路
57 連通経路
61 逆止弁
61a ばね
62 ばね式安全弁
71 圧力計
72 リリーフ弁
73 制御部
81 ボンベ(加圧源)
82 圧縮機(加圧源)
83 第1加圧経路
84 遮断弁
85 減圧弁
86 第2加圧経路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10