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特開2024-57409シールドトンネルの測量システムおよび測量方法
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  • 特開-シールドトンネルの測量システムおよび測量方法 図1
  • 特開-シールドトンネルの測量システムおよび測量方法 図2
  • 特開-シールドトンネルの測量システムおよび測量方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057409
(43)【公開日】2024-04-24
(54)【発明の名称】シールドトンネルの測量システムおよび測量方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/00 20060101AFI20240417BHJP
【FI】
G01C15/00 103E
G01C15/00 104A
G01C15/00 103A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164121
(22)【出願日】2022-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮本 優一
(57)【要約】
【課題】プリズムが設置された直線状棒材の水平を保持して、プリズムを正確な位置に配置できるシールドトンネルの測量システムおよび測量方法を提供する。
【解決手段】既設シールドトンネル内の既知点6を基準点として設置される自動追尾式のトータルステーション10と、測量位置に設置される視準器20と、トータルステーション10を作動させる遠隔操作手段30とを備え、視準器20は、直線状棒材21と、直線状棒材21に設置されたプリズム22とを備えてなり、遠隔操作手段30は、特定の音声を識別する音声認識部31と、トータルステーション10に測量を開始する信号を送信する通信部32とを備えることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド掘進機または前記シールド掘進機で組み立てられたセグメントの位置および姿勢を逐次測量するシールドトンネルの測量システムであって、
既設シールドトンネル内の既知点を基準点として設置される自動追尾式のトータルステーションと、測量位置に設置される視準器と、前記トータルステーションを作動させる遠隔操作手段とを備え、
前記視準器は、直線状棒材と、前記直線状棒材に設置されたプリズムとを備えてなり、
前記遠隔操作手段は、特定の音声を識別する音声認識部と、前記トータルステーションに測量を開始する信号を送信する通信部とを備える
ことを特徴とするシールドトンネルの測量システム。
【請求項2】
前記遠隔操作手段は、測量者が発する音声を集音するマイクを備えており、
前記マイクは、前記直線状棒材の中央部近傍に設置されている
ことを特徴とする請求項1に記載のシールドトンネルの測量システム。
【請求項3】
前記遠隔操作手段は、測量者が携帯する通信端末に備わっている
ことを特徴とする請求項1に記載のシールドトンネルの測量システム。
【請求項4】
前記通信部は、前記トータルステーションと無線通信にて接続されている
ことを特徴とする請求項1に記載のシールドトンネルの測量システム。
【請求項5】
前記視準器は、水平器を備えている
ことを特徴とする請求項1に記載のシールドトンネルの測量システム。
【請求項6】
前記トータルステーションにより取得された測量データを受信し、座標を演算する演算装置をさらに備えている
ことを特徴とする請求項1に記載のシールドトンネルの測量システム。
【請求項7】
前記トータルステーションによる測量の成否を通報する通報手段をさらに備えている
ことを特徴とする請求項1に記載のシールドトンネルの測量システム。
【請求項8】
シールド掘進機または前記シールド掘進機で組み立てられたセグメントの位置および姿勢を逐次測量するシールドトンネルの測量システムであって、
既設シールドトンネル内の既知点を基準点として設置される自動追尾式のトータルステーションと、測量位置に設置される視準器と、前記トータルステーションを作動させる遠隔操作手段とを備え、
前記視準器は、直線状棒材と、前記直線状棒材に設置されたプリズムとを備えてなり、
前記遠隔操作手段は、測量者が前記直線状棒材を把持する把持部近傍に設置されたスイッチボタンと、前記スイッチボタンを前記測量者が操作すると前記トータルステーションに測量を開始する信号を送信する通信部とを備え、前記測量者が両手で前記視準器を保持した状態で前記測量位置から前記トータルステーションを遠隔で操作させる
ことを特徴とするシールドトンネルの測量システム。
【請求項9】
シールド掘進機または前記シールド掘進機で組み立てられたセグメントの位置および姿勢を逐次測量するシールドトンネルの測量方法であって、
既設シールドトンネル内の既知点を基準点として自動追尾式のトータルステーションを設置するトータルステーション設置工程と、
測量位置に視準器を設置する視準器設置工程と、
前記視準器を保持した測量者が前記測量位置から前記トータルステーションを遠隔で操作する操作工程とを備え、
前記操作工程では、前記測量者が測量を開始する音声を遠隔操作手段に向けて発すると、前記遠隔操作手段の音声認識部から通信部を介して前記トータルステーションに測量を開始する信号を送信する
ことを特徴とするシールドトンネルの測量方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールドトンネルの測量システムおよび測量方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シールドトンネルの工事では、計画線形に沿ってシールドマシンを掘進させるために、シールドトンネルの位置を測量し、実測位置と計画線形との誤差をシールドマシンの掘削方向に反映させるようになっている。シールドトンネルの位置を測量するには、まず、トンネル内に光波測距儀等の測量機を設置し、測量機でトンネル後方の基準点を視準して測量機の機械座標値を求める。そして、その測量機でトンネルの先端部のセグメントの位置を測量し、シールドトンネルの先端部のセグメントの座標値を算出する(例えば、特許文献1参照)。
トンネルの先端部のセグメントの位置を測量するに際しては、長手方向中間部にターゲットとなるプリズムが設けられたスタッフ(直線状棒材)を作業員が持って、セグメントの左右の側面に掛け渡して水平に設置する。すると、スタッフの中間部のプリズムがセグメントの幅方向中間部に位置するので、プリズムをトンネルの中心位置として測量機で測量できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-94549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動追尾式トータルステーションを用いると、スタッフを持つ作業員一人での測量作業が可能となる。この場合、作業員は片手にスタッフを持ち、他方の片手で自動追尾式トータルステーションへの作動信号を送信するタブレット端末等の操作を行う必要がある。スタッフは片手で持つには長く重い上に、シールド機のスキンプレートやセグメントの上は不安定であるため、タブレット端末を操作する際に、スタッフの安定性が低下し、スタッフの水平を保つことが出来ず、プリズムの位置がずれてしまう問題があった。
このような観点から、本発明は、プリズムが設置された直線状棒材の水平を保持して、プリズムを正確な位置に配置できるシールドトンネルの測量システムおよび測量方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を解決するための第一の本発明は、シールド掘進機または前記シールド掘進機で組み立てられたセグメントの位置および姿勢を逐次測量するシールドトンネルの測量システムである。かかるシールドトンネルの測量システムは、既設シールドトンネル内の既知点を基準点として設置される自動追尾式のトータルステーションと、測量位置に設置される視準器と、前記トータルステーションを作動させる遠隔操作手段とを備え、
前記視準器は、直線状棒材と、前記直線状棒材に設置されたプリズムとを備えている。前記遠隔操作手段は、特定の音声を識別する音声認識部と、前記トータルステーションに測量を開始する信号を送信する通信部とを備えることを特徴とする。
本発明のシールドトンネルの測量システムによれば、測量者が発した特定の音声を音声認識部に認識させることで測量開始の信号を送信できるので、視準器を両手で保持し安定した状態を保つことができる。これによって、直線状棒材の水平を保持できるのでプリズムを正確な位置に配置でき、ひいては正確な測量を行うことができる。
【0006】
本発明のシールドトンネルの測量システムにおいては、前記遠隔操作手段は、音声を集音するマイクを備えており、前記マイクは、前記直線状棒材の中央部近傍に設置されているものが好ましい。このような構成によれば、測量者が両手で直線状棒材を把持した際に、顔の近くにマイクが位置するので、集音し易く正確に音声を認識することができる。
本発明のシールドトンネルの測量システムにおいては、前記遠隔操作手段は、前記測量者が携帯する通信端末に備わっているものが好ましい。このような構成によれば、遠隔操作手段がコンパクトになりポケットやバッグに入れることができるので、測量者が遠隔操作手段を携帯し易くなるとともに、両手で直線状棒材を把持することができる。
本発明のシールドトンネルの測量システムにおいては、前記通信部は、前記トータルステーションと無線通信にて接続されているものが好ましい。このような構成によれば、通信部とトータルステーションを接続する配線が不要となり、構成が簡素化されるとともに、各種部材の取り回しが容易になる。
本発明のシールドトンネルの測量システムにおいては、前記視準器は、水平器を備えているものが好ましい。このような構成によれば、直線状棒材を水平に保持することができるので、プリズムの位置がより一層正確になる。
本発明のシールドトンネルの測量システムにおいては、前記トータルステーションにより取得された測量データを受信し、座標を演算する演算装置をさらに備えているものが好ましい。このような構成によれば、演算装置によって、シールドトンネルの位置座標を迅速かつ正確に算出することができる。
本発明のシールドトンネルの測量システムにおいては、前記トータルステーションによる測量の成否を通報する通報手段をさらに備えているものが好ましい。このような構成によれば、トータルステーションから離れた位置にいる測量者が測量の成否を把握することができる。
【0007】
前記課題を解決するための第二の本発明は、シールド掘進機または前記シールド掘進機で組み立てられたセグメントの位置および姿勢を逐次測量するシールドトンネルの測量システムである。かかるシールドトンネルの測量システムは、既設シールドトンネル内の既知点を基準点として設置される自動追尾式のトータルステーションと、測量位置に設置される視準器と、前記トータルステーションを作動させる遠隔操作手段とを備えている。前記視準器は、直線状棒材と、前記直線状棒材に設置されたプリズムとを備えてなり、前記遠隔操作手段は、前記測量者が前記直線状棒材を把持する把持部近傍に設置されたスイッチボタンと、前記スイッチボタンを前記測量者が操作すると前記トータルステーションに測量を開始する信号を送信する通信部とを備え、前記測量者が両手で前記視準器を保持した状態で前記測量位置から前記トータルステーションを遠隔で操作させることを特徴とする。
本発明のシールドトンネルの測量システムによれば、測量者が視準器を両手で保持した状態でスイッチボタンを操作できるので、安定した状態を保持したまま測量開始の信号を送信できる。これによって、直線状棒材の水平を保持できるのでプリズムを正確な位置に配置することができ、ひいては正確な測量を行うことができる。
【0008】
前記課題を解決するための第三の本発明は、シールド掘進機または前記シールド掘進機で組み立てられたセグメントの位置および姿勢を逐次測量するシールドトンネルの測量方法である。かかるシールドトンネルの測量方法は、既設シールドトンネル内の既知点を基準点として自動追尾式のトータルステーションを設置するトータルステーション設置工程と、測量位置に視準器を設置する視準器設置工程と、前記視準器を保持した測量者が前記測量位置から前記トータルステーションを遠隔で操作する操作工程とを備えている。前記操作工程では、前記測量者が測量を開始する音声を遠隔操作手段に向けて発すると、前記遠隔操作手段の音声認識部から通信部を介して前記トータルステーションに測量を開始する信号を送信することを特徴とする。
本発明のシールドトンネルの測量方法によれば、測量者が測量を開始する音声を認識させることで通信部から測量開始の信号を送信するので、視準器を両手で保持し安定した状態を保つことができる。これによって、直線状棒材の水平を保持できるのでプリズムを正確な位置に配置でき、ひいては正確な測量を行うことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のシールドトンネルの測量システムおよび測量方法によれば、スタッフの水平を保持して、プリズムを正確な位置に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係るシールドトンネルの測量システムを示した全体構成図である。
図2】本発明の実施形態に係るシールドトンネルの測量システムを設置した状態を示したシールドトンネルの断面図である。
図3】(a)は本実施形態の視準器を示した正面図、(b)は変形例に係る視準器を示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態に係るシールドトンネルの測量システムおよび測量方法について、添付した図面を参照しながら説明する。本実施形態のシールドトンネルは、セグメントを円柱形状に組み付けて形成されている。図1はシールドトンネルの測量システムを示した全体構成図、図2はシールドトンネルの測量システムを設置した状態を示したシールドトンネルの断面図、図3の(a)は視準器を示した正面図、(b)は変形例に係る遠隔操作手段を取り付けた視準器を示した正面図である。
【0012】
図1および図2に示すように、シールドトンネル1の測量システム2は、シールド掘進機3またはシールド掘進機3で組み立てられたセグメント5の位置および姿勢を逐次測量するものである。
測量システム2は、トータルステーション10と、視準器20と、遠隔操作手段30と、演算装置50と、通報手段(図示せず)とを備えている。
トータルステーション10は、自動追尾式のものであって、シールドトンネル1内の既知点6を基準点(器械点)として設置される。既知点6は、座標値が既知のポイントであり、シールドトンネル1の後方に所定間隔をあけて複数設定されている。トータルステーション10を基準点に設置したら、まず、設置位置から後方の既知点6を視準し、測量の基準線(方向)を定める。その後、シールド掘進機3側となるシールドトンネル1の先端部に位置するセグメント5までの距離と角度とを計測する。トータルステーション10は、通信アンテナ(図示せず)を備えており、遠隔操作手段30から送信される測量開始の信号を受信して視準器20の測量を開始する。
【0013】
図3の(a)にも示すように、視準器20は、測量者が保持して測量位置7(図2参照)に設置されるものである。測量位置7は、シールドトンネル1の先端部に位置するセグメント5の位置である。視準器20は、直線状棒材21と、プリズム22と、水平器23とを備えている。
直線状棒材21は、アルミニウム合金等の軽量の金属にて構成された断面矩形の長尺材であって、例えば測量用スタッフが使用される。直線状棒材21は、シールドトンネル1の下側の円弧部分に、水平な状態で掛け渡される。
プリズム22は、トータルステーション10が測量するターゲットであり、直線状棒材21の長手方向中間部に、ブラケットまたは取付治具を介して取り付けられている。測量位置7において、測量者はプリズム22がトータルステーション10側に対向するように視準器20を把持する。
水平器23は、直線状棒材21の側面(視準器20を横向きにして把持したときの直線状棒材21の上面)に取り付けられている。水平器23は、直線状棒材21の長手方向中間部の近傍で、測量者が視認し易い位置に設けられている。
直線状棒材21をシールドトンネル1の下側の円弧部分に水平な状態で設置することで、その長手方向中間部に取り付けられたプリズム22は、シールドトンネル1の左右方向中間部に位置することとなる。
【0014】
遠隔操作手段30は、測量位置7から遠隔操作によってトータルステーション10を作動させるものである。遠隔操作手段30は、音声認識部31と、通信部32と、マイク33とを備えている。遠隔操作手段30のうち、音声認識部31および通信部32は、測量者が携帯する通信端末であるタブレット端末34に備わっている。タブレット端末34は、予めインストールされたプログラムを実行することにより、遠隔操作手段30として機能する。
音声認識部31は、視準器21を保持した測量者が発する特定の音声を識別するものである。音声認識部31は、マイク33で集音された音声を取得し、測量者が視準器2を測定位置7に水平にセットした状態で発声する測量開始の合図(例えば「測量開始」等の発声)を認識すると、測量開始の信号を通信部32に向けて発する。マイク33は、直線状棒材21の中央部近傍に設置され、タブレット端末34に接続されている。なお、タブレット端末34に内蔵されたマイクから音声を取得してもよい。
通信部32は、音声認識部31が発した測量開始の信号をトータルステーション10に向けて発するものである。通信部32は、トータルステーション10と無線通信にて接続されている。無線通信は、例えばWi-Fiが使用されている。遠隔操作手段30の通信部32とトータルステーション10との無線通信は、トンネル内に設置された専用のWi-Fiルーター40が用いられている。このように専用のWi-Fiを用いることで、測量開始の信号を時間ロスなく送信することができる。なお、無線通信は、Wi-Fiに限定されるものではなく、例えばZIGBEE(登録商標)やBLUETOOTH(登録商標)等の他の無線通信であってもよい。通信部32とトータルステーション10との間では、通信部32からトータルステーション10に測量開始の信号が送信され、トータルステーション10から通信部32に測量データが送信される。
【0015】
演算装置50は、タブレット端末34を介してトータルステーション10で取得された測量データを受信し、シールドトンネル1の先端部のセグメント5の座標を演算するものである。演算装置50は、パーソナルコンピュータ51にダウンロードされたプログラムにて構成されている。演算装置50で算出された座標値は、掘進管理システムに送信され、シールド掘進機2やセグメント5の位置を算出し、シールドトンネル1と計画線形との誤差を算出する。そして、その誤差に応じて、シールド掘進機2のシールドジャッキを適宜伸縮させて、シールド掘進機2の掘削方向を修正する。
【0016】
通報手段(図示せず)は、トータルステーション10による測量の成否を測量者に通報するものであって、例えば、トータルステーション10、視準器20、タブレット端末34に設けられている。通報手段は、例えば音声発生装置、照明装置、アラーム装置にて構成されている。音声発生装置は、測量が成功した場合に例えば「測量成功しました」と発声し、失敗した場合に「測量失敗しました」と発声する。照明装置は、測量が成功した場合に例えば青色で点灯し、失敗した場合に赤色で点灯する。アラーム装置は、測量が成功した場合に例えば高音アラームが鳴り、失敗した場合に低音アラームが鳴る。通報手段で、測量成功を確認した測量者は、視準器20の保持姿勢を解除することができる。一方、測量失敗を確認した測量者は、視準器20の保持を継続し、再度測量開始の発声を行う。
【0017】
次に、本実施形態のシールドトンネル1の測量システム2を用いて行う測量方法について説明する。かかる測量方法は、シールド掘進機3またはセグメント5の位置および姿勢を逐次測量する方法であって、トータルステーション設置工程と、視準器設置工程と、操作工程とを備えている。
【0018】
トータルステーション設置工程は、自動追尾式のトータルステーション10を、シールドトンネル1内に設置する工程である。トータルステーション設置工程では、シールドトンネル1内の既知点6を基準点(器械点)として、他の既知点6および測量位置7を視認可能な位置に設置する。
視準器設置工程は、測量位置7に視準器20を設置する工程である。視準器設置工程では、測量者が視準器20を把持し、シールドトンネル1の下側の円弧部分に、水平な状態で掛け渡す。このとき、測量者が両手を広げた状態で視準器20を把持するので、安定した状態で作業を行うことができる。また、水平器23は、測量者の顔の近くに位置するので目視し易い。プリズム22は、シールドトンネル1の左右方向中間部に位置している。
操作工程は、測量者が測量位置7からトータルステーション10を遠隔で操作する工程である。操作工程では、測量者が測量を開始する音声を遠隔操作手段30のマイク33に向けて発する。すると、遠隔操作手段30の音声認識部31が音声を認識し、測量開始の信号を通信部32がトータルステーション10に送信する。そして、トータルステーション10は、自動で視準器20のプリズム22の位置を測量する。操作工程では、測量者が発声するだけで、測量開始の信号をトータルステーション10に送信することができるので、視準器20を両手で保持した状態を保つことができる。
その後、トータルステーション10による測量データは通信部32を介して演算装置50に送信される。演算装置50では、シールドトンネル1の先端部のセグメント5の座標値が算出される。
【0019】
本実施形態のシールドトンネル1の測量システム2および測量方法によれば、遠隔操作手段30に測量者の音声を認識させることで測量開始の信号を送信できるので、測量者は視準器20の安定した状態を保つことができる。これによって、視準器20の水平を保持できるのでプリズム22を正確な位置に配置でき、ひいては正確なシールドトンネル1の測量を行うことができる。
また、マイク33が直線状棒材31の中央部近傍に設置されているので、測量者が両手で直線状棒材31を把持した際に、顔の近くにマイク33が位置する。したがって、測量者の音声を集音し易くなり、正確に音声を認識することができる。
さらに、遠隔操作手段30は、測量者が携帯するタブレット端末34に備えられているので、コンパクトになりポケットやバッグに入れた状態で現場に携帯できる。また、操作工程中にタブレット端末34を手で操作する必要が無いので、両手で視準器20を把持することができる。
【0020】
また、遠隔操作手段30の通信部32は、トータルステーション10と、Wi-Fi、ZIGBEE(登録商標)やBLUETOOTH(登録商標)等の無線通信にて接続されているので、通信部32とトータルステーション10を接続する配線が不要となり、構成が簡素化されるとともに、各種部材の取り回しが容易になる。
さらに、視準器20は、水平器23を備えているので、直線状棒材21を水平に保持することができる。したがって、プリズム22の位置がより一層正確になる。
また、測量システム2では、演算装置50によって、シールドトンネル1の位置座標を迅速かつ正確に算出することができる。
さらに、測量システム2では、通報手段を備えているので、トータルステーション10から離れた位置にいる測量者が測量の成否を把握することができる。
【0021】
次に、変形例に係る遠隔操作手段30の構成を説明する。図3の(b)は、変形例に係る遠隔操作手段を取り付けた視準器を示した正面図である。図3の(b)に示すように、かかる遠隔操作手段30は、マイクに代えてスイッチボタン35を設けたことを特徴とする。スイッチボタン35は、測量を開始する信号を通信部32に送信するものである。スイッチボタン35は、測量者が直線状棒材21を把持する把持部(具体的には、直線状棒材21の長手方向端部)近傍に設置されている。その他の構成は、前記実施形態と同様であるので、説明を省略する。
このような構成の遠隔操作手段30を備えた測量システム2を用いて行う測量方法では、操作工程で、測量者は両手で視準器20を把持した状態のままで、スイッチボタン35を押す。
変形例に係るシールドトンネル1の測量システム2および測量方法によれば、測量者が視準器20を両手で保持し安定した状態を保ちながら、測量開始の信号をトータルステーション10に送信して遠隔操作を行うことができる。
【0022】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定する趣旨ではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。たとえば、前記実施形態では、直線状棒材21は、測量用スタッフにて構成されているが、これに限定されるものではない。直線状棒材21は、横にした状態で直線性を確保できる長尺材であれば、単純な棒材であってもよいし、伸縮自在な棒材であってもよい。
【符号の説明】
【0023】
1 シールドトンネル
2 測量システム
3 シールド掘進機
6 既知点
7 測量位置
10 トータルステーション
20 視準器
21 直線状棒材
22 プリズム
23 水平器
30 遠隔操作手段
31 音声認識部
32 通信部
33 マイク
34 タブレット端末(通信端末)
35 スイッチボタン
50 演算装置
図1
図2
図3