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特開2024-57416冷却装置、下水処理システム及び冷却装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057416
(43)【公開日】2024-04-24
(54)【発明の名称】冷却装置、下水処理システム及び冷却装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   F23G 5/46 20060101AFI20240417BHJP
   F23J 15/06 20060101ALI20240417BHJP
   F25B 9/00 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
F23G5/46 A
F23J15/06 ZAB
F25B9/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164130
(22)【出願日】2022-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 萌
【テーマコード(参考)】
3K065
3K070
【Fターム(参考)】
3K065AA24
3K065AB01
3K065AC02
3K065BA06
3K065JA05
3K065JA14
3K065JA16
3K070DA09
3K070DA42
(57)【要約】
【課題】排熱を有効利用できる冷却装置及び冷却装置の制御方法を提供する。
【解決手段】実施形態にかかる冷却装置は、ループ流路と、第1スタックと、第2スタックと、冷却部と、吸収側温調部と、を備える。ループ流路は、作動流体を収容し、環状である。第1スタックは、ループ流路に設けられ一次側と二次側の温度勾配により音波を発生する。第2スタックは、ループ流路に設けられ音波により一次側と二次側の温度勾配を生じる。熱回収部は、第1スタックの一次側に設けられ汚泥の焼却により生じる熱を熱源として作動流体を加熱する。回収側温調部は、第1スタックの二次側におけるループ流路の温度を調整する。冷却部は、第2スタックの二次側において、浄化処理後の処理水が作動流体と熱交換可能に配設され、ループ流路の外周に巻き付けられる処理水冷却流路を備える。吸収側温調部は、第2スタックの一次側におけるループ流路の温度を調整する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体を収容する環状のループ流路と、
前記ループ流路に設けられ一次側と二次側の温度勾配により音波を発生する第1スタックと、
前記ループ流路に設けられ音波により一次側と二次側の温度勾配を生じる第2スタックと、
前記第1スタックの一次側に設けられ汚泥の焼却により生じる熱を熱源として前記作動流体を加熱する熱回収部と、
前記第1スタックの二次側における前記ループ流路の温度を調整する回収側温調部と、
前記第2スタックの二次側において、浄化処理後の処理水が前記作動流体と熱交換可能に配設され、前記ループ流路の外周に巻き付けられる処理水冷却流路を備える冷却部と、
前記第2スタックの一次側における前記ループ流路の温度を調整する吸収側温調部と、
を備える冷却装置。
【請求項2】
前記処理水冷却流路は複数の開閉弁を備え、
前記開閉弁の開閉状態又は開度を制御することで、前記処理水冷却流路を流れる長さ、あるいは前記処理水冷却流路に流れる処理水の量を調整し、前記処理水の熱交換量を調整する、制御部を備える、
請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
下水を浄化処理する浄化部と、
前記浄化部で生じる汚泥を焼却する汚泥焼却部と、
作動流体を収容する環状のループ流路と、前記ループ流路に設けられ一次側と二次側の温度勾配により音波を発生する第1スタックと、前記ループ流路に設けられ音エネルギーにより一次側と二次側の温度勾配を生じる第2スタックと、前記第1スタックの一次側に設けられ前記汚泥焼却部における汚泥の焼却により生じる熱を熱源として前記作動流体を加熱する熱回収部と、前記第1スタックの二次側の温度を調整する回収側温調部と、前記第2スタックの二次側において、前記浄化部における浄化処理後の処理水が前記作動流体と熱交換可能に配設され、前記ループ流路の外周に巻き付けられる処理水冷却流路を備える冷却部と、前記第2スタックの一次側の温度を調整する吸収側温調部と、を備える冷却装置と、
前記下水が浄化された処理水を放流先へ送る放流水路と、
を備える、下水処理システム。
【請求項4】
作動流体を収容する環状のループ流路と、前記ループ流路に設けられ一次側と二次側の温度勾配により音波を発生する第1スタックと、前記ループ流路に設けられ音エネルギーにより一次側と二次側の温度勾配を生じる第2スタックと、前記第1スタックの一次側において、汚泥の焼却により生じる熱を熱源として前記作動流体を加熱する熱回収部と、前記第1スタックの二次側の温度を調整する回収側温調部と、前記第2スタックの二次側において、浄化処理後の処理水が前記作動流体と熱交換可能に配設される処理水冷却流路を有する冷却部と、前記第2スタックの一次側の温度を調整する吸収側温調部と、を備える冷却装置において、
冷却対象となる処理水及び放流先の温度に基づいて、前記処理水冷却流路に設けられた開閉弁の開閉状態又は開度を制御することで、前記処理水冷却流路を流れる長さ、あるいは前記処理水冷却流路に流れる処理水の量を調整し、前記処理水の冷却条件を調整する、冷却装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、冷却装置、下水処理システム及び冷却装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環境に対する取り組みとして、下水処理で生じる汚泥焼却の排熱の有効利用が検討されている。例えば、汚泥焼却炉から排出される高温の排ガスを熱源とし、ボイラ、蒸気タービン、スチームコンプレッサなどを用い、排ガスの熱を発電に用いる汚泥焼却システムが研究されている。
【0003】
下水処理場等の水処理施設において、処理を経て浄化された処理水は河川等へ放流される。下水処理場の放流水の温度は夏が約28度、冬が約18度程度であり、河川水温は例えば夏が約25度、冬が約10度程度である。したがって、放流水の温度が河川水温より高くなり、冬は特に温度差が大きくなる。河川の水温が上がると河川の生物生息環境に影響が出るため、放流水の温度をできるだけ河川の水温に近い温度にする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-251679号公報
【発明の概要】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、熱エネルギーを有効利用して処理水を効率的に冷却できる冷却装置及び冷却装置の制御方法を提供することである。
【0006】
実施形態にかかる冷却装置は、ループ流路と、第1スタックと、第2スタックと、熱回収部と、回収側温調部と、冷却部と、吸収側温調部と、を備える。ループ流路は、作動流体を収容し、環状である。第1スタックは、ループ流路に設けられ一次側と二次側の温度勾配により音波を発生する。第2スタックは、ループ流路に設けられ音波により一次側と二次側の温度勾配を生じる。熱回収部は、第1スタックの一次側に設けられ汚泥の焼却により生じる熱を熱源として作動流体を加熱する。回収側温調部は、第1スタックの二次側におけるループ流路の温度を調整する。冷却部は、第2スタックの二次側において、浄化処理後の処理水が作動流体と熱交換可能に配設され、ループ流路の外周に巻き付けられる処理水冷却流路を備える。吸収側温調部は、第2スタックの一次側におけるループ流路の温度を調整する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態にかかる下水処理システムの構成を示す説明図。
図2】同下水処理システムの熱音響冷却装置の構成を示す説明図。
図3】同熱音響冷却装置の第1スタック及び第2スタックの構成を示す説明図。
図4】同熱音響冷却装置の第1スタック及び第2スタックの構成を一部拡大して示す説明図。
図5】同熱音響冷却装置の冷却部の構成を示す説明図。
図6】同熱音響冷却装置の冷却部の開閉弁の開閉状態と温度との関係の一例を示す表。
図7】他の実施形態にかかる熱音響冷却装置の冷却部の構成を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、一実施形態にかかる熱音響冷却装置30について、図1乃至図6を参照して説明する。図1は一実施形態にかかる下水処理システムの構成を示す説明図。図2は下熱音響冷却装置の構成を示す説明図である。図3は第1スタック及び第2スタックの構成を示す説明図であり、図4図3の一部を拡大した説明図である。図5は冷却部の構成を示す説明図であり、図6は冷却部における開閉弁の開閉状態と温度との関係の一例を示す表である。
【0009】
図1に示すように、下水処理システム1は、下水を浄化した処理水を河川等の放流先に放流する。下水処理システム1は、下水を浄化する浄化装置10と、浄化処理で生じる汚泥を焼却する汚泥焼却部としての汚泥焼却装置20と、浄化された処理水を冷却する熱音響冷却装置30と、制御部50と、を備える。例えば下水処理システム1は、下水処理場等の水処理施設に設けられる。
【0010】
浄化装置10は、下水を浄化する浄化部11と、浄化部11を通り、河川等の放流先60に至る所定の経路に沿って水を流す放流水路12と、を備える。例えば浄化部11は、単数または複数の沈殿槽や反応槽を備える。また、放流先となる河川には水温を検出する検出部としての温度センサS1が設けられ、浄化装置10の放流水路12には例えば放流前の処理水の温度を検出する検出部としての温度センサS2、S3が設けられる。
【0011】
汚泥焼却装置20は、浄化部11で発生する残渣である汚泥を焼却処理する。例えば汚泥焼却装置20は、浄化部11に設けられた沈殿槽に沈殿する汚泥を回収する汚泥回収装置、回収した汚泥を加熱して微生物の作用で嫌気性菌等を微生物の作用で消化する消化装置、汚泥を乾燥させる乾燥装置、及び乾燥した汚泥を焼却する焼却装置を備える。
【0012】
熱音響冷却装置30は、熱音響効果によって冷却対象である処理水を冷却する熱音響冷凍装置である。熱音響冷却装置30は、ループ流路としてのループ管31と、第1スタック32と、第1スタック32の一次側に設けられた熱回収部33と、第1スタック32の二次側に配置された回収側温調部34と、第2スタック35と、第2スタック35の一次側に配置された吸収側温調部36と、第2スタック35の二次側に設けられた冷却部37と、を備える。熱音響冷却装置30は、熱と音とのエネルギー変換現象を示す熱音響現象を利用して冷却を行う。
【0013】
ループ管31は、環状に構成された配管部材であり、内部に作動流体41aを封入可能に構成される。ループ管31内に収容される作動流体41aは例えば空気、窒素、ヘリウム、アルゴン、あるいはこれらのうち2以上の混合気体である。ループ管31は例えば互いに対向する二組の直管部31a、31b、31c,31dを有する矩形状に構成される。一例として、長手方向に延びる一対のうちの一方の直管部31aに第1スタック32と熱回収部33と回収側温調部34が設けられ、長手方向に延びる一対のうち他方の直管部31bに第2スタック35と、冷却部と吸収側温調部36とが設けられる。
【0014】
第1スタック32は、複数の細管を有する柱状の部材である。第1スタック32は例えば、円筒型のセラミクス性の蓄熱機42であり、多角筒形または円筒状の細管42aが多数設けられるハニカム構造を有する。各細管は作動流体41aが通る微細流路を構成する。例えば第1スタック32は、ループ管31の一方の長尺の直管部31aにおいて、所定箇所に組込まれる。第1スタック32は、ループ管31における熱流の方向における一次側と二次側の温度勾配により、音波を発生する。例えば直管部31aにおいて、下方から上方への熱流が発生する。したがって、直管部31aにおいて下方が熱流の方向における一次側、上方が二次側となる。
【0015】
熱回収部33は、焼却炉の排熱を熱源として作動流体41aとを熱交換可能に配置する第1熱交換器43を備え、焼却炉の廃熱から熱回収する。熱回収部33は例えば第1スタック32の一次側の端部に隣接して設けられる。第1熱交換器43は、作動流体41aと熱交換可能に設けられる第1熱流体44aの熱流路44を備える。例えば第1熱交換器43は、例えば、複数の波形の金属プレートを有するプレート型熱交換器であり、プレート間に、第1熱流体が流れる流路と作動流体41aが流れる流路とが交互に設けられる。熱源となる第1熱流体44aは汚泥焼却装置20の焼却炉から排出される例えば800℃~1000℃程度の気体である。すなわち熱回収部33は、焼却炉からの排気熱を熱源として作動流体41aを加熱する。
【0016】
回収側温調部34は第1スタック32の二次側の端部に隣接して設けられる第2熱交換器45を備える。回収側温調部34は、ループ管31の温度を、第1スタック32の一次側よりも低い一定範囲の温度に保つことで、熱回収側スタックの一方側と他方側との間に温度勾配を生じさせる。一例として、第2熱交換器45は、作動流体41aと熱交換可能に設けられる第2熱流体の流路を備え、第2熱流体と作動流体41aとの熱交換により、熱回収部33よりも低い所定の温度に、作動流体41aの温度を調整する。例えば回収側温調部34の条件は、例えば熱回収部33との温度差が、第1スタック32で音波を生じるのに必要な温度勾配を生じる条件に設定される。例えば第2熱流体は、第1熱流体44aよりも低い所定温度の流体を用いる。例えば第2熱流体として、第1熱流体44aと同様に、汚泥焼却装置20で排出される気体を用いてもよい。
【0017】
第2スタック35は、複数の細管を有する柱状の部材である。第2スタック35は例えば、円筒型のセラミクス性の蓄熱機42であり、多角筒形または円筒状の細管が多数設けられるハニカム構造を有する。各細管は作動流体41aが通る微細流路を構成する。例えば第2スタック35は、ループ管31の他方の長尺の直管部31cの所定箇所に組込まれる。第2スタック35は、振動エネルギーを熱エネルギーに変換するとともに、熱流の方向における一次側と二次側の温度勾配を生じさせる。すなわち第2スタック35に所定の温度の音波が入力されると、第2スタック35の一次側と二次側とで温度勾配が生じ、二次側の温度が一次側の温度よりも低い温度となる。例えば直管部31cにおいて、上方から下方への熱流が発生する。したがって、直管部31cにおいて上方が熱流の方向における一次側、下方が二次側となる。なお、第2スタック35は第1スタック32と同じ構成としてもよく、異なる構成としてもよい。
【0018】
吸収側温調部36は、第2スタック35の一次側の端部に隣接して設けられる。吸収側温調部36は、第2スタックの一次側の温度を所定温度に保つことで、第2スタックの二次側の温度を調整する。吸収側温調部36の条件は、第2スタック35の二次側の目標冷却温度に基づいて、当該目標の冷却温度よりも、発生する温度勾配の分だけ高い、所定温度となる温度となるように設定される。例えば吸収側温調部36は第3熱流体と46aを、作動流体41aと熱交換可能に配設する、第3熱交換部46を備える。第3熱流体46aは例えば常温水である。吸収側温調部36は第3熱流体46aである常温水と作動流体41aとの間で熱交換を行い、第2スタック35の一次側を所定の温度となるように調節する。
【0019】
図5に示すように、冷却部37は、ループ管31の第2スタック35の二次側の端部に隣接して設けられる、放流水路12に送られる第4熱流体としての処理水12aと、作動流体41aとの間で熱交換を行うことにより処理水12aを冷却する熱交換部である。冷却部37は、浄化装置10で排出される浄化処理後の処理水12aを、ループ管31の回りに熱交換可能に流す冷却流路48と、冷却流路48の流路に設けられる複数の開閉弁49a,49b、49cと、を備える。冷却流路48は放流の対象である処理水12aの一部または全部を、放流前に、冷却するために、冷却部に案内する流路である。例えば冷却流路48は、処理水12aを放流先60に放流する放流水路12の中途部から分岐し、冷却部37に案内し、再び放流水路12に合流する分岐流路であってもよく、放流水路12の上流側に接続される流路であってもよく、あるいは放流水路12の一部として、放流口よりも上流側に、構成されていてもよい。冷却流路48は、ループ管31の外周に複数回コイル状に巻き付けられる冷却エリアを有し、処理水12aとループ管31内の作動流体41aとが熱交換可能に構成される。
【0020】
一例として、冷却流路48は、ループ管31を3周周回し、1周毎に、放流水路12に戻る戻り流路に繋がる分岐部48a,48b,48cを有する。各分岐部48a,48b,48cには、処理水12aを冷却流路48の二次側に案内する流路状態と、処理水12aを放流水路12に案内する流路状態とで、流路を切替える開閉弁49a,49b,49bが、それぞれ設けられる。
【0021】
複数の開閉弁49a、49b、49cは、制御部50の制御に応じて開閉することで、流路の接続状態を切替える電磁弁である。
【0022】
制御部50は、各種データを記憶する記憶部51と、所定のプログラムに基づいて各部の動作を制御する制御回路を有するプロセッサ52と、を備える。
【0023】
記憶部51は、例えば、制御に必要な情報として、各種プログラムや、各種基準値や閾値を記憶する。なお、各種閾値や設定値は、例えば操作入力によってユーザーが任意に設定変更可能に構成されている。
【0024】
制御部50は、各温度センサによって検出される検出値に基づき、各種の演算処理を行い、冷却流路48に設けられる複数の弁49a~49cの開閉を制御することで冷却流路の接続状態を切替える。
【0025】
本実施形態において、例えば制御部50は、弁45a、45b、45cの開閉状態または開度を制御することで、処理水12aが冷却流路を流れる流路長を調整することにより処理水12aの冷却量、すなわち熱交換量を制御する。
【0026】
実施例1として、制御部50は、放流先である河川の温度を検出する温度センサS1と放流前の処理水12aが流れる冷却流路48に設けられた温度センサS2の検出結果を検出し、河川と処理水12aの温度差T1に基づき、温度差T1が第1基準温度T11未満のとき、弁49aは開き、弁49b、49cは閉じる。つまり、浄化部11から流れてきた浄化後の処理水12aはループ管31の周りを一周し、弁49aを通って放流水路12に送られる。また、温度差T1が第1基準温度T11以上第2基準温度T12未満のとき、弁49a、49bは閉じ、弁49bは開く。このため、放流口の手前において冷却流路48を通って流れてきた処理水12aは熱回収部を二周して、弁49bを通って放流水路12に送られる。温度差T1が第2基準温度T12以上のとき、弁49a、49bは閉じ、弁49cは開く。このため、放流口手前から冷却流路48を通って流れてきた放流水は冷却部37を三周し、弁49cを通って放流口に戻る。したがって、冷却部37において、検出した温度条件に応じた流路長さで熱交換を行うことにより、温度差を一定以内となるように制御する。
【0027】
熱音響冷却装置30において、熱は高温から低温の方向に流れるとともに、熱音響効果により、スタック32,35内では熱流と逆の向きに仕事流が流れる。熱音響冷却装置30において、熱回収側の第1スタック32で生じた仕事流は、熱流とは反対方向にループ管31を回り、熱吸収側スタックに到達する。したがって、冷却側の第2スタック35で上方向に仕事流が流れるので、熱音響効果により熱流が仕事流の反対の向き、つまり下向きに流れる。これにより、熱吸収側のスタック35内で上部の方が下部より高温となるため、温度勾配が生じる。すなわち、熱吸収側のスタック35の一次側に常温水を入力すると、二次側は常温よりも温度が下がり、外部から熱を吸収可能となる。
【0028】
すなわち、本実施形態において、熱回収側では、第1熱交換器43及び第2熱交換器45により、第1スタック32の一方側を他方側よりも高温とすることで、第1スタック32は温度勾配により音エネルギーを生じる。ここで、第1スタック32の温度勾配の熱源として汚泥焼却の排出熱を利用することができる。
【0029】
そして、ループ管31内の作動流体41aの振動が第2スタック35に伝わると、第2スタック35は音エネルギーを熱エネルギーに変換する。これにより第2スタック35では一次側が二次側よりも高温となる温度勾配が生じる。ここで、熱吸収側の第2スタック35の一次側の温度を調整することで、二次側は当該調整温度よりも温度が下がるため、外部の熱を吸収する事が可能となる。したがって、この冷却部において処理水が熱交換可能に配設されることにより処理水が冷却される。浄化処理後の処理水12aは、冷却部においてループ管31を周回した後、再び放流水路12に戻り、放流先に放流される。
【0030】
以上のように構成された熱音響冷却装置によれば、熱エネルギーを有効利用して処理水を冷却することができる。すなわち、熱音響冷却装置を用いて放流前の処理水12aの温度を放流先の温度に近い温度とすることで、生態系への影響を抑えられる。さらに、一連の下水処理において、汚泥焼却で生じる高温の気体を熱源として、浄化後の処理水12aの冷却に用いることで、より効果的に、エネルギーを有効利用できる。また、熱音響効果を利用して冷却することで、可動部がなく、半永久的に使える構成とすることができる。さらに、フロンガスのような環境に有害な冷媒を必要としないため、環境面で優れている。
【0031】
また、上記実施形態においては、冷却流路の流路制御により放流水水温と河川の水温の温度差を一定にすることができ、例えば、季節や天候によって温度条件が変る場合にも放流水を適切な温度とすることができ、生態系への影響を抑えられる。
【0032】
すなわち本実施形態にかかる熱音響冷却装置及び熱音響冷却装置の制御方法によれば、熱エネルギーを有効利用して処理水12aを冷却することができる。
【0033】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、各部の構成を適宜変更して実施可能である。
【0034】
上記実施形態においては冷却条件を調整する例として、処理水冷却流路の長さであるループ管31の回周数を調整した例を示したが、これに限られるものではない。例えば他の実施形態として、図7に示す熱音響冷却装置30の冷却部37のように、放流口の手前から、冷却部37に流れる水の量を調節することによって冷却量を制御してもよい。他の実施形態にかかる熱音響冷却装置30の冷却流路480は、下水処理場の放流水路12から分岐し、冷却部37を通って放流水路12に戻る流路を構成する。また、冷却流路480には、流路の開度を調整する開度調整弁49dが設けられる。本実施形態においては、冷却流路480において放流される処理水12aと河川の温度差によって、調整弁49dを制御することで、冷却部37側に流れる処理水の量を調整する。例えば、温度差が大きければ流れる水の量を多く、温度差が小さければ少なくすることで、冷却量を調整することができる。
【0035】
また、他の実施形態として、冷却流路48を流れる長さの調整に加えて、調整弁49dをさらにもうけることで、流量の制御を併せて行い、冷却条件を制御する構成としてもよい。
【0036】
また、他の実施形態として、冷却流路48、480における流れの調整に加え、あるいは冷却流路48、480における流れの調整に変えて、第2スタック35の一次側である吸収側温調部36の温度条件を調整することで、冷却条件を制御してもよい。例えば、第2スタック35の二次側の目標冷却温度に基づいて、第3熱流体46aの温度を、目標冷却温度よりも、発生する温度勾配の分だけ高い、所定温度となる温度となる条件に設定することで、冷却条件を調整する構成としてもよい。
【0037】
また、上記実施形態においては、冷却部37を通る前の冷却流路48に設けられた温度センサS2の検出結果を用い、冷却前の処理水12aの温度と河川の水温の差に基づいて制御するフィードフォワード制御を示したが、これに限られるものではない。例えば他の実施形態として、冷却流路48の冷却部37の二次側であって放流口の直前に設けられた温度センサS3の検出温度を用い、冷却部37を通った後の処理水12aの温度を検出して放流直前部分の温度と河川の温度の差に基づいて河川水温と放流水水温が同じになるまで冷却させるフィードバック制御を行ってもよい。
【0038】
また、制御条件として用いる河川の温度は、測定値に限らず、予め設定され、記憶された値であってもよい。例えば、季節や天気等を考慮して目標温度を決定し、当該目標温度になるまで冷却させることとしてもよい。
【0039】
また、上記実施形態においては熱交換器として、プレート型熱交換器を用いて排熱を直接使用した例を示したが、これに限られるものではなく、他の熱交換器を用いてもよい。また、例えばボイラなど用いて得られる蒸気を利用して熱回収を行ってもよい。
【0040】
以上述べた少なくともひとつの実施形態にかかる熱音響冷却装置及び熱音響冷却装置の制御方法によれば、熱エネルギーを有効利用して処理水を冷却することができる。
【0041】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0042】
1…下水処理システム、10…浄化装置、11…浄化部、12…放流水路、12a…処理水、20…汚泥焼却装置、30…熱音響冷却装置、31…ループ管、31a、31b、31c、31d…直管部、32…スタック、33…熱回収部、34…回収側温調部、35…スタック、36…吸収側温調部、37…冷却部、41a…作動流体、42…蓄熱機、42a…細管、43…第1熱交換器、44a…第1熱流体、44…熱流路、45…第2熱交換器、46…熱交換部、46a…第3熱流体、48…冷却流路、49a、49b、49c…開閉弁、50…制御部、51…記憶部、52…プロセッサ、S1~S3…温度センサ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7