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特開2024-57423ポリマー、樹脂組成物、ワニスおよび樹脂膜
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057423
(43)【公開日】2024-04-24
(54)【発明の名称】ポリマー、樹脂組成物、ワニスおよび樹脂膜
(51)【国際特許分類】
   C08F 212/14 20060101AFI20240417BHJP
   C08F 212/32 20060101ALI20240417BHJP
   C08F 222/40 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
C08F212/14
C08F212/32
C08F222/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164148
(22)【出願日】2022-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】池田 陽雄
【テーマコード(参考)】
4J100
【Fターム(参考)】
4J100AM43P
4J100AM45P
4J100AM47P
4J100AM48P
4J100AR05Q
4J100AR09Q
4J100AR11Q
4J100BA15Q
4J100BB07Q
4J100BB17Q
4J100BB18Q
4J100BC43P
4J100BC43Q
4J100CA04
4J100CA05
4J100DA04
4J100DA22
4J100DA61
4J100DA62
4J100DA63
4J100FA03
4J100FA19
4J100GC35
4J100JA01
4J100JA28
(57)【要約】      (修正有)
【課題】耐熱性、撥水性、溶解性および泡立ち抑制のバランスが改善されたポリマーを提供すること。
【解決手段】式(1)で示される構造単位Aおよびマレイミド骨格を有する構造単位Bを含み、架橋性基を含む構造単位の含有量が10mol%以下である、ポリマー。式(1)中、nは0、1または2、R~Rは独立してHまたは炭素数1以上30以下の有機基、R~Rの少なくとも1つは、炭素数1以上30以下の含フッ素有機基である。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の一般式(1)で示される構造単位Aおよび以下の一般式(2)で示される構造単位Bを含み、
架橋性基を含む構造単位の含有量が10mol%以下である、ポリマー。
【化1】
前記一般式(1)中、
nは0、1または2であり、
、R、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子または炭素数1以上30以下の有機基であり、
、R、RおよびRの少なくとも1つは、炭素数1以上30以下の含フッ素有機基である。
【化2】
前記一般式(2)中、
は、水素原子または炭素数1以上30以下の有機基である。
【請求項2】
請求項1に記載のポリマーにおいて、
前記一般式(1)中、
前記R、R、RおよびRの少なくとも1つが、炭素数1以上30以下のフルオロアルキル基である、ポリマー。
【請求項3】
請求項1または2に記載のポリマーにおいて、
カルボキシ基を含む構造単位の含有量が10mol%以下である、ポリマー。
【請求項4】
請求項1または2に記載のポリマーにおいて、
フッ素原子の含有量が10質量%以上90質量%以下である、ポリマー。
【請求項5】
請求項1または2に記載のポリマーにおいて、
前記構造単位Aの含有量が10mol%以上90mol%以下である、ポリマー。
【請求項6】
請求項1または2に記載のポリマーにおいて、
前記構造単位Bの含有量が10mol%以上90mol%以下である、ポリマー。
【請求項7】
請求項1または2に記載のポリマーにおいて、
重量平均分子量が1,500以上30,000以下である、ポリマー。
【請求項8】
請求項1または2に記載のポリマーにおいて、
下記の[方法1]に記載された方法で測定される5%重量減少温度Tdが325℃以上である、ポリマー。
[方法1]
前記ポリマーをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解または分散させ、ワニスを得る。
前記ワニスを基板上に塗布し、100℃のホットプレート上で120秒間加熱し、さらに200℃のオーブンで30分間加熱し、次いで基板から剥離し、膜厚1μmの樹脂膜を得る。
前記樹脂膜を約5mg秤量し、熱重量/示差熱測定装置を用い、開始温度30℃、昇温速度10℃/min、N流量250mL/minの条件で昇温し、樹脂膜の重量が5%減少した際の温度をTdとする。
【請求項9】
請求項1または2に記載のポリマーにおいて、
下記の[方法2]に記載された方法で評価される波長400nmにおける光透過率T400が95%以上である、ポリマー。
[方法2]
前記ポリマーをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解または分散させ、ワニスを得る。
前記ワニスを基板上に塗布し、100℃のホットプレート上で120秒間加熱し、さらに200℃のオーブンで30分間加熱し、次いで基板から剥離し、膜厚1μmの樹脂膜を得る。
前記樹脂膜の波長400nmにおける光透過率T400を紫外-可視光分光光度計を用いて測定する。
【請求項10】
請求項1または2に記載のポリマーを含有する樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1または2に記載のポリマーおよび溶媒を含有するワニス。
【請求項12】
請求項11に記載のワニスにおいて、
前記溶媒が、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、2-ブタノン、シクロヘキサノンおよび1,3-ビストリフルオロメチルベンゼンからなる群から選択される一種以上を含む、ワニス。
【請求項13】
請求項10に記載の樹脂組成物または請求項11に記載のワニスから成る樹脂膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー、樹脂組成物、ワニスおよび樹脂膜に関する。
【0002】
ノルボルネン由来の構造単位を含有するポリマーは、従来、半導体材料や光学材料等の多種多様な分野で利用されてきた。近年、ノルボルネンの水素原子の一部または全部がフッ素原子やフッ素アルキル基などで置換された構造を構成単位として含有するポリマーも検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、下記一般式11で表される構造単位または下記一般式12で表される構造単位を含む含フッ素重合体が開示されている。
【化1】
ただし、X11、X12はそれぞれ独立に水素原子またはフッ素原子であり、R11、R12はそれぞれ独立に一価有機基であり、a11、a12はそれぞれ独立に0、1または2であり、m11は繰り返し単位の繰り返し数を表す自然数である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2019/059320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、含フッ素ノルボルネン由来の構造単位を含有するポリマーは、他成分や溶媒に対する溶解性が低く、樹脂組成物やワニスとして用いづらいという事情があった。
【0006】
そこで、本発明者らは、含フッ素ノルボルネン由来の構造単位を含有するポリマーの溶解性に着目して検討を行った。その結果、極性官能基を有するモノマーを共重合する事により、含フッ素ノルボルネン系ポリマーの溶媒への溶解性を改善する事が可能である事を見出した。
【0007】
一方、検討の過程において、含フッ素ノルボルネン由来の構造単位を含有するポリマーは、仮に溶媒に溶解したとしても、ポリマー溶液が泡立ちやすく、そのため取扱いに難があるという新たな課題が見出された。
【0008】
本発明は、このような事情を鑑みなされたものであり、耐熱性、撥水性、溶解性および泡立ち抑制のバランスが改善されたポリマーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、以下に提供される発明を完成させ、上記課題を解決した。
【0010】
本発明によれば、以下に示す水性塗料組成物、塗膜および機械が提供される。
[1]
以下の一般式(1)で示される構造単位Aおよび以下の一般式(2)で示される構造単位Bを含み、
架橋性基を含む構造単位の含有量が10mol%以下である、ポリマー。
【化2】
一般式(1)中、
nは0、1または2であり、
、R、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子または炭素数1以上30以下の有機基であり、
、R、RおよびRの少なくとも1つは、炭素数1以上30以下の含フッ素有機基である。
【化3】
一般式(2)中、
は、水素原子または炭素数1以上30以下の有機基である。
[2]
上記[1]に記載のポリマーにおいて、
上記一般式(1)中、
上記R、R、RおよびRの少なくとも1つが、炭素数1以上30以下のフルオロアルキル基である、ポリマー。
[3]
上記[1]または[2]に記載のポリマーにおいて、
カルボキシ基を含む構造単位の含有量が10mol%以下である、ポリマー。
[4]
上記[1]~[3]のいずれかに記載のポリマーにおいて、
フッ素原子の含有量が10質量%以上90質量%以下である、ポリマー。
[5]
上記[1]~[4]のいずれかに記載のポリマーにおいて、
上記構造単位Aの含有量が10mol%以上90mol%以下である、ポリマー。
[6]
上記[1]~[5]のいずれかに記載のポリマーにおいて、
上記構造単位Bの含有量が10mol%以上90mol%以下である、ポリマー。
[7]
上記[1]~[6]のいずれかに記載のポリマーにおいて、
重量平均分子量が1,500以上30,000以下である、ポリマー。
[8]
上記[1]~[7]のいずれかに記載のポリマーにおいて、
下記の[方法1]に記載された方法で測定される5%重量減少温度Tdが325℃以上である、ポリマー。
[方法1]
上記ポリマーをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解または分散させ、ワニスを得る。
上記ワニスを基板上に塗布し、100℃のホットプレート上で120秒間加熱し、さらに200℃のオーブンで30分間加熱し、次いで基板から剥離し、膜厚1μmの樹脂膜を得る。
上記樹脂膜を約5mg秤量し、熱重量/示差熱測定装置を用い、開始温度30℃、昇温速度10℃/min、N流量250mL/minの条件で昇温し、樹脂膜の重量が5%減少した際の温度をTdとする。
[9]
上記[1]~[8]のいずれかに記載のポリマーにおいて、
下記の[方法2]に記載された方法で評価される波長400nmにおける光透過率T400が95%以上である、ポリマー。
[方法2]
上記ポリマーをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解または分散させ、ワニスを得る。
上記ワニスを基板上に塗布し、100℃のホットプレート上で120秒間加熱し、さらに200℃のオーブンで30分間加熱し、次いで基板から剥離し、膜厚1μmの樹脂膜を得る。
上記樹脂膜の波長400nmにおける光透過率T400を紫外-可視光分光光度計を用いて測定する。
[10]
上記[1]~[9]のいずれかに記載のポリマーを含有する樹脂組成物。
[11]
上記[1]~[9]のいずれかに記載のポリマーおよび溶媒を含有するワニス。
[12]
上記[11]に記載のワニスにおいて、
上記溶媒が、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、2-ブタノン、シクロヘキサノンおよび1,3-ビストリフルオロメチルベンゼンからなる群から選択される一種以上を含む、ワニス。
[13]
上記[10]に記載の樹脂組成物または上記[11]に記載のワニスから成る樹脂膜。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、耐熱性、撥水性、溶解性および泡立ち抑制性のバランスが改善されたポリマーが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施形態に基づいて説明する。
【0013】
本実施形態における基(原子団)の表記において、置換か無置換かを記していない表記は、置換基を有しないものと置換基を有するものの両方を包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有しないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
【0014】
[ポリマー]
本実施形態のポリマー(以下、「ポリマーP」と称する)は、
以下の一般式(1)で示される構造単位Aおよび以下の一般式(2)で示される構造単位Bを含み、
架橋性基を含む構造単位の含有量が10mol%以下である。
【化4】
一般式(1)中、
nは0、1または2であり、
、R、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子または炭素数1以上30以下の有機基であり、
、R、RおよびRの少なくとも1つは、炭素数1以上30以下の含フッ素有機基である。
【化5】
一般式(2)中、
は、水素原子または炭素数1以上30以下の有機基である。
【0015】
含フッ素ノルボルネン由来の構造単位を含有するポリマーは多種多様な分野で利用されているが、利用に際しては、他成分と混合して樹脂組成物として利用したり、溶媒に溶解または分散させてワニスとして利用したりする場合がある。そうすると、他成分や溶媒との溶解性が課題となる。そこで、本発明者らは、含フッ素ノルボルネン由来の構造単位を含有するポリマーの溶解性に着目して検討を行った。
一方、検討の過程において、含フッ素ノルボルネン由来の構造単位を含有するポリマーは、仮に溶媒に溶解したとしても、ポリマー溶液が泡立ちやすく、そのため取扱いに難があるという新たな課題が見出された。
また、溶解性や泡立ち抑制を改善しながらも、耐熱性や撥水性が損なわれることは避けたい。すなわち、耐熱性、撥水性、溶解性および泡立ち抑制のバランスが改善されたポリマーが求められる。
【0016】
ポリマーPによれば、耐熱性、撥水性、溶解性および泡立ち抑制のバランスが改善されたポリマーを提供することができる。
【0017】
ポリマーPにより上記の各特性のバランスが改善されるメカニズムは明らかではないが、下記一般式(2)で表されるマレイミド由来の構造単位が溶解や泡立ちといった他成分との相互作用に関する性能の改善に寄与しているものと推測される。
【化6】
一般式(2)中、
は、水素原子または炭素数1以上30以下の有機基である。
【0018】
<構造単位A>
ポリマーPは、以下の一般式(1)で示される構造単位Aを含む。
【化7】
一般式(1)中、
nは0、1または2であり、
、R、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子または炭素数1以上30以下の有機基であり、
、R、RおよびRの少なくとも1つは、炭素数1以上30以下の含フッ素有機基である。
【0019】
ポリマーPは、一般式(1)で表される構造単位Aを一種または二種以上含むことができる。
【0020】
一般式(1)において、nは0、1または2であり、0または1であることが好ましく、0であることがより好ましい。
【0021】
一般式(1)におけるR、R、RおよびRのいずれかを構成し得る炭素数1以上30以下の有機基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキリデン基、アリール基、アラルキル基、アルカリル基、シクロアルキル基、およびヘテロ環基が挙げられる。
アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、およびデシル基が挙げられる。
アルケニル基としては、例えばアリル基、ペンテニル基、およびビニル基が挙げられる。
アルキニル基としては、エチニル基が挙げられる。
アルキリデン基としては、例えばメチリデン基、およびエチリデン基が挙げられる。
アリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基、およびアントラセニル基が挙げられる。
アラルキル基としては、例えばベンジル基、およびフェネチル基が挙げられる。
アルカリル基としては、例えばトリル基、キシリル基が挙げられる。
シクロアルキル基としては、例えばアダマンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、およびシクロオクチル基が挙げられる。
ヘテロ環基としては、例えばエポキシ基、およびオキセタニル基が挙げられる。
【0022】
一般式(1)におけるR、R、RおよびRのいずれかを構成し得る炭素数1以上30以下の有機基は、その構造中に、O、N、S、PおよびSiから選択される少なくとも1つの原子を含んでいてもよい。
【0023】
一般式(1)においては、R、R、RおよびRのうち少なくとも1つが、炭素数1以上30以下の含フッ素有機基である。
一般式(1)においては、R、R、RおよびRのうち少なくとも1つが、炭素数1以上30以下のフルオロアルキル基であることが好ましく、炭素数1以上15以下のフルオロアルキル基であることがより好ましく、炭素数1以上10以下のフルオロアルキル基であることがさらに好ましい。
ここで、フルオロアルキル基とはアルキル基中の1以上の水素原子がフッ素原子により置換されたものである。
【0024】
一般式(1)においては、R、R、RおよびRのいずれか1つが炭素数1以上30以下の含フッ素有機基であり、残りが水素原子であることが好ましい。
【0025】
一般式(1)においては、
、R、RおよびRのいずれか1つが、炭素数1以上30以下のフルオロアルキル基であり、残りが水素原子であることがより好ましく、
、R、RおよびRのいずれか1つが、炭素数1以上15以下のフルオロアルキル基であり、残りが水素原子であることがより好ましく、
、R、RおよびRのいずれか1つが、炭素数1以上10以下のフルオロアルキル基であり、残りが水素原子であることがより好ましい。
【0026】
一般式(1)においては、
、R、RおよびRのいずれか1つが、下記一般式(a)で示される構造であり、残りが水素原子であることが好ましい。これにより撥水性がより一層改善される。
【化8】
一般式(a)において、
は、
炭素数1以上10以下のフルオロアルキル基であることが好ましく、
炭素数4以上10以下のフルオロアルキル基であることがより好ましく、
炭素数6以上10以下のフルオロアルキル基であることがより好ましい。
【0027】
ポリマーPにおける一般式(1)で表される構造単位Aの割合は、撥水性をより一層向上させる観点等から、好ましくは10mol%以上、より好ましくは15mol%以上、さらに好ましくは20mol%以上、さらに好ましくは25mol%以上、さらに好ましくは30mol%以上であり、そして、耐熱性をより一層向上させる観点等から、好ましくは90mol%以下、より好ましくは80mol%以下、さらに好ましくは70mol%以下、さらに好ましくは60mol%以下である。
【0028】
<構造単位B>
ポリマーPは、以下の一般式(2)で示される構造単位Bを含む。
【化9】
一般式(2)中、
は、水素原子または炭素数1以上30以下の有機基である。
なお、炭素数1以上30以下の有機基の具体例としては、R、R、RおよびRのいずれかを構成し得る炭素数1以上30以下の有機基として列挙したものを挙げることができる。
【0029】
ポリマーPは、一般式(2)で表される構造単位Bを一種または二種以上含むことができる。
【0030】
は、炭素数1以上30以下の有機基であることが好ましい。これにより泡立ちがより一層抑制される。
【0031】
は環状の有機基であることがより好ましく、環状の有機基であり且つヘテロ原子を含有しないものであることがより好ましい。これにより泡立ちがより一層抑制される。
環状の有機基であり且つヘテロ原子を含まないものの具体例としては、
フェニル基、ナフチル基、およびアントラセニル基等のアリール基;
ベンジル基、およびフェネチル基等のアラルキル基;
トリル基、キシリル基等のアルカリル基;
アダマンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、およびシクロオクチル基等のシクロアルキル基;
を挙げることができ、
環状の有機基であり且つヘテロ原子を含まないものとしては、フェニル基またはシクロへキシル基が好ましく、シクロへキシル基がより好ましい。
【0032】
ポリマーPにおける一般式(2)で表される構造単位Bの割合は、耐熱性をより一層向上させる観点等から、好ましくは10mol%以上、より好ましくは20mol%以上、さらに好ましくは30mol%以上、さらに好ましくは40mol%以上、さらに好ましくは45mol%以上であり、そして、撥水性をより一層向上させる観点等から、好ましくは90mol%以下、より好ましくは80mol%以下、さらに好ましくは75mol%以下、さらに好ましくは70mol%以下である。
【0033】
<ポリマーPの性質>
ポリマーP中のフッ素原子の含有量は、撥水性をより一層向上させる観点等から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは12質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上であり、そして、耐熱性をより一層向上させる観点等から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。
【0034】
ポリマーPのフッ素原子の含有率は、例えば下記の方法により算出できる。
ポリマーP約10mgを酸素と置換した密封系のフラスコ内で完全燃焼させ、発生したガスをあらかじめ添加されているフラスコ内の過酸化水素アルカリ吸収液に捕集し、50mLに定容したものを検液とする。イオンクロマト分析装置(ダイオネクス社製ICS-3000)に検液及び標準液を導入し、検量線法によりフッ化物イオン濃度を求め、試料中に含まれるフッ素原子の含有量を算出する。
【0035】
ポリマーP中の架橋性基を含む構造単位の含有量は10mol%以下である。
ポリマーP中の架橋性基を含む構造単位の含有量は好ましくは5mol%以下、より好ましくは1mol%以下、さらに好ましくは0.5mol%以下、さらに好ましくは0.1mol%以下、さらに好ましくは0.01%mol以下である。
さらに好ましくは、ポリマーP中には架橋性基を含む構造単位が実質的に含まれない。
本実施形態における架橋性基とは、架橋性基同士で又は架橋剤を介して反応することによって架橋構造を形成し得る基である。架橋性基として具体的には、水酸基、チオール基、アミノ基、イソシアネート基、チオシアネート基、カルボキシ基、スルホニル基等の縮合反応し得る基;(メタ)アクリロイル基、アリル基、ビニル基等のラジカル重合し得る基;エポキシ基、オキセタニル基、ビニルオキシ基等の酸の作用によって反応し得る基;等が例示できる。
【0036】
ポリマーP中のカルボキシ基を含む構造単位の含有量は、好ましくは10mol%以下、より好ましくは5mol%以下、さらに好ましくは1mol%以下、さらに好ましくは0.5mol%以下、さらに好ましくは0.1mol%以下、さらに好ましくは0.01mol%以下である。
さらに好ましくは、ポリマーP中にはカルボキシ基を含む構造単位が実質的に含まれない。
これによりポリマーの溶解性がより一層改善される。特に極性溶媒への溶解性がより一層改善される。
【0037】
ポリマーPの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,500以上、より好ましくは2,500以上、さらに好ましくは3,500以上、さらに好ましくは4,000以上であり、そして、好ましくは30,000以下、より好ましくは20,000以下、さらに好ましくは15,000以下、さらに好ましくは10,000以下である。
【0038】
ポリマーPの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は、好ましくは1以上、より好ましくは1.2以上、さらに好ましくは1.5以上であり、そして、好ましくは5以下、より好ましくは4以下、さらに好ましくは3.5以下である。
【0039】
ポリマーPの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
【0040】
ポリマーPの、下記の[方法1]に記載された方法で測定される5%重量減少温度Tdは、好ましくは325℃以上、より好ましくは328℃以上、さらに好ましくは330℃以上であり、そして、例えば600℃以下である。
[方法1]
上記ポリマーをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解または分散させ、ワニスを得る。
上記ワニスを基板上に塗布し、100℃のホットプレート上で120秒間加熱し、さらに200℃のオーブンで30分間加熱し、次いで基板から剥離し、膜厚1μmの樹脂膜を得る。
上記樹脂膜を約5mg秤量し、熱重量/示差熱測定装置を用い、開始温度30℃、昇温速度10℃/min、N流量250mL/minの条件で昇温し、樹脂膜の重量が5%減少した際の温度をTdとする。
【0041】
ポリマーPの、下記の[方法2]に記載された方法で評価される波長400nmにおける光透過率T400は、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、さらに好ましくは99%以上である。
[方法2]
上記ポリマーをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解または分散させ、ワニスを得る。
上記ワニスを基板上に塗布し、100℃のホットプレート上で120秒間加熱し、さらに200℃のオーブンで30分間加熱し、次いで基板から剥離し、膜厚1μmの樹脂膜を得る。
上記樹脂膜の波長400nmにおける光透過率T400を紫外-可視光分光光度計を用いて測定する。
【0042】
ポリマーPの、下記の[方法3]に記載された方法で評価される屈折率は、好ましくは1.35以上、より好ましくは1.40以上、さらに好ましくは1.45以上であり、そして、好ましくは1.65以下、より好ましくは1.60以下、さらに好ましくは1.55以下である。
[方法3]
上記ポリマーをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解または分散させ、ワニスを得る。
上記ワニスを基板上に塗布し、100℃のホットプレート上で120秒間加熱し、さらに200℃のオーブンで30分間加熱し、次いで基板から剥離し、膜厚1μmの樹脂膜を得る。
上記樹脂膜の波長404nmにおける屈折率を、屈折率測定装置を用いて測定する。
【0043】
上述の通り、ポリマーPは溶解性が改善されている。特に、従来、含フッ素ノルボルネンポリマーを溶解させることが困難であった極性溶媒へも、ポリマーPであれば溶解させることができる。
なお、極性溶媒としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、2-ブタノン、シクロヘキサノンおよび1,3-ビストリフルオロメチルベンゼン等を挙げることができる。
【0044】
<ポリマーPの合成>
ポリマーPは、一般式(1A)で表されるフッ素含有ノルボルネンモノマーおよび一般式(2B)で表されるマレイミドモノマーを含む原料モノマーを重合することにより得ることができる。
【化10】
一般式(1A)中、
nは0、1または2であり、
、R、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子または炭素数1以上30以下の有機基である。
、R、RおよびRの少なくとも1つは、炭素数1以上30以下の含フッ素有機基である。
【化11】
一般式(2B)中、
は水素原子または炭素数1以上30以下の有機基である。
【0045】
一般式(1A)で示されるフッ素含有ノルボルネンモノマーとしては、例えば、以下のフッ素含有ノルボルネンモノマーの具体例からなる群から選択される一種または二種以上を用いることができる。
【0046】
【化12】
【0047】
【化13】
【0048】
【化14】
【0049】
【化15】
【0050】
【化16】
【0051】
原料モノマーの合計量に対する一般式(1A)で示されるフッ素含有ノルボルネンモノマーの使用量は、撥水性をより一層向上させる観点等から、好ましくは10mol%以上、より好ましくは15mol%以上、さらに好ましくは20mol%以上、さらに好ましくは25mol%以上、さらに好ましくは30mol%以上であり、そして、耐熱性をより一層向上させる観点等から、好ましくは90mol%以下、より好ましくは80mol%以下、さらに好ましくは70mol%以下、さらに好ましくは60mol%以下である。
【0052】
一般式(2B)で示されるマレイミドモノマーとしては、例えば、マレイミド、N-メチルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-(4-アミノフェニル)マレイミド、N-ベンジルマレイミド、N-tert-ブチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N―(2―ヒドロキシエチル)マレイミド、N-メトキシカルボニルマレイミド、3-マレイミドプロピオン酸、4-マレイミド酪酸、6-マレイミドヘキサン酸からなる群から選択される一種または二種以上を用いることができる。
これらのなかでも、泡立ち抑制の観点等から、マレイミド、N-シクロヘキシルマレイミドまたはN-フェニルマレイミドを用いるのが好ましく、N-シクロヘキシルマレイミドまたはN-フェニルマレイミドを用いるのがより好ましく、N-シクロヘキシルマレイミドを用いるのがより好ましい。
【0053】
原料モノマーの合計量に対する一般式(2B)で示されるマレイミドモノマーの使用量は、耐熱性をより一層向上させる観点等から、好ましくは10mol%以上、より好ましくは20mol%以上、さらに好ましくは30mol%以上、さらに好ましくは40mol%以上、さらに好ましくは45mol%以上であり、そして、撥水性をより一層向上させる観点等から、好ましくは90mol%以下、より好ましくは80mol%以下、さらに好ましくは75mol%以下、さらに好ましくは70mol%以下である。
【0054】
ポリマーPの合成には、一般式(1A)で示されるフッ素含有ノルボルネンモノマーおよび一般式(2B)で示されるマレイミドモノマー以外のモノマーを用いてもよい。
例えば、耐熱性向上の観点等から、以下のノルボルネンモノマーの具体例からなる群から選択される一種または二種以上を用いることができる。
【0055】
【化17】
【0056】
【化18】
【0057】
【化19】
【0058】
【化20】
【0059】
ポリマーPの合成においては、連鎖移動剤を使用してもよい。
ここで、連鎖移動剤とは、ラジカル重合系中で成長ポリマー鎖からラジカルを受け取って、新たなラジカルを発生させる性質を持つ剤のことを指す。この働きによってポリマーの伸長は止まるが、別の成長反応が開始する。その結果分子量の揃ったポリマーを得られる傾向がある。
連鎖移動剤としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、β-メルカプトプロピオン酸、2-エチルヘキシル-3-メルカプトプロピオネート、メトキシブチル-β-メルカプトプロピオネート、ステアリル-3-メルカプトプロピオネート、1‐ブタンチオール、シクロヘキサンチオール、3‐メルカプトプロピオン酸シクロへキシル、1‐デカンチオール、2,4-ジフェニル‐4‐メチル‐1‐ペンテン、1-ドデカンチオール、3-メルカプトプロピオン酸ドデシル、メルカプト酢酸2-エチルヘキシル、3-メルカプトプロピオン酸2-エチルヘキシル、メルカプト酢酸エチル、1-ヘキサデカンチオール、メルカプト酢酸、2-Mercaptoethanesulfonate Sodium、3-メルカプトプロピオン酸、メルカプト酢酸メチル、メルカプトこはく酸、3-メルカプトプロピオン酸メチル、3-メルカプトプロピオン酸オクタデシル、3-メルカプトプロピオン酸オクチル、1-オクタンチオール、1-オクタデカンチオール、3-メルカプトプロピオン酸トリデシルおよびチオフェノールからなる群から選択される一種または二種以上を用いることができる。
連鎖移動剤の使用量は、原料モノマーの合計量に対して、例えば0.1mol%以上、好ましくは0.2mol%以上、より好ましくは0.5mol%以上であり、そして、例えば10mol%以下、好ましくは7mol%以下、より好ましくは5mol%以下である。
【0060】
ポリマーPの合成においては、ラジカル重合開始剤を使用してもよい。
ラジカル重合開始剤としては、ラジカル重合系中にラジカルを発生させることができるものであれば特に限定されず、例えば、アゾ化合物または過酸化物を用いることができる。これらの中でもアゾ化合物を用いることが好ましい。
アゾ化合物としては、例えば、4,4'-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2'-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチル]などのカルボキシ基を有するラジカル重合開始剤;2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]などのアミノ基を有するラジカル重合開始剤;2,2'-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]などのヒドロキシ基を有するラジカル重合開始剤;2,2‘-アゾビスイソ酪酸ジメチルなどのエステル系のラジカル重合開始剤からなる群から選択される一種または二種以上を用いることができる。
ラジカル重合開始剤の使用量は、原料モノマーの合計量に対して、例えば0.1mol%以上、好ましくは0.5mol%以上、より好ましくは1.0mol%以上であり、そして、例えば30mol%以下、好ましくは20mol%以下、より好ましくは10mol%以下である。
【0061】
ポリマーPを得る際の重合の様式は特に限定されないが、例えば、上記のラジカル重合開始剤を用いたラジカル重合が可能である。
【0062】
ラジカル重合の際の加熱温度は特に限定されないが、例えば40℃以上、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上であり、そして、例えば100℃以下、好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下である。なお、ラジカル重合の際の温度は重合の途中で変化させてもよい。
【0063】
ラジカル重合の際の加熱時間は特に限定されないが、例えば2時間以上、好ましくは3時間以上であり、そして、例えば20時間以下である。
【0064】
[樹脂組成物]
本実施形態の樹脂組成物は上記のポリマーPを含有する。
【0065】
本実施形態の樹脂組成物は、さらに、酸化防止剤、界面活性剤、密着助剤、溶解促進剤、フィラー、増感剤、ポリフェノール類、溶媒等の添加剤を含有してもよい。
【0066】
[ワニス]
本実施形態のワニスは上記のポリマーPおよび溶媒を含有する。
【0067】
本実施形態のワニスが含有する溶媒は、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、2-ブタノン、シクロヘキサノンおよび1,3-ビストリフルオロメチルベンゼンからなる群から選択される一種または二種以上を含む。
【0068】
上記ワニス中の上記溶媒の含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上であり、そして、好ましくは99質量%以下、より好ましくは95質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下である。
【0069】
本実施形態のワニスは、さらに、酸化防止剤、界面活性剤、密着助剤、溶解促進剤、フィラー、増感剤、ポリフェノール類等の添加剤を含有してもよい。
【0070】
[樹脂膜]
本実施形態の樹脂膜は上記の樹脂組成物または上記のワニスから成る。
【0071】
本実施形態の樹脂膜は、例えば、上記の樹脂組成物または上記のワニスをスピンコート、ロールコート、フローコート、ディップコート、スプレーコート、ドクターコート等の方法で基板に塗布することにより作製することができる。
【0072】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例0073】
以下に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0074】
[ポリマーの合成]
原料モノマーとしては以下のものを用いた。各原料モノマーの仕込み比を表1に示す。
【0075】
<CSFANB>
・化合物名:3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8‐トリデカフルオロオクチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ‐5‐エン‐2‐カルボキシレート
【化21】
【0076】
SFANBは、下記の方法により合成した。
リービッヒ冷却器と温度計を備えた反応容器に、ジシクロペンタジエン(丸善石油化学製、製品名:HDCP)210.0g、流動パラフィン70.0gを加え、撹拌した。次いで、内容物を170℃まで加熱した。熱分解により発生したシクロペンタジエンの蒸気を冷却器(5℃)で冷却し、フラスコに採取した。収量は142.8gであった。
冷却管・温度計・滴下ロートを備えた別の反応容器に、アクリル酸2-(パーフルオロヘキシル)エチル(ダイキン工業株式会社製、製品名:CSFAモノマー)500.0gを加え、内容物を氷浴にて約5℃まで撹拌・冷却した。シクロペンタジエン98.8gを滴下ロートに加え、1時間かけて冷却しつつ滴下した。滴下終了後、氷浴を外し室温まで撹拌し、反応を継続した。次いで、オイルバスにて内温を50℃まで昇温した後、16時間撹拌した。得られた反応混合物から目的化合物を減圧蒸留により分取し、CSFANBを得た。収得量は540.3gであった。
【0077】
<C13NB>
・化合物名:5‐パーフルオロへキシルビシクロ[2.2.1]ヘプト‐2‐エン、Promerus
・LLC社製
・製品名:NBC13
【化22】
【0078】
<CNB>
・化合物名:5‐n‐パーフルオロブチルビシクロ[2.2.1]ヘプト‐2‐エン
・Promerus LLC社製
・製品名:NBC
【化23】
【0079】
<PFBNB>
・化合物名:パーフルオロベンジルノルボルネン
・Promerus LLC社製
・製品名:NBPFB
【化24】
【0080】
<CMI>
・化合物名:シクロヘキシルマレイミド
・日本触媒社製
・製品名:イミレックス-C
【0081】
<PMI>
・化合物名:フェニルマレイミド
・日本触媒社製
・製品名:イミレックス-P
【0082】
<MI>
・化合物名:マレイミド
・ファインケム社製
・製品名:マレイミド
【0083】
<MAN>
・化合物名:無水マレイン酸
・日本触媒社製
・製品名:無水マレイン酸
【0084】
連鎖移動剤としては以下のものを用いた。連鎖移動剤の仕込み比を表1に示す。なお、表1に示した連鎖移動剤の仕込み比は上記の各原料モノマーの合計量を100mol%とした場合の仕込み比である。
【0085】
<PEMP>
・化合物名:ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)
・SC有機化学社製
・製品名:PEMP
【0086】
[ポリマーの合成]
<実施例1>
反応容器内に、CSFANB(21.9g、45.2mmol)、CMI(8.1g、45.2mmol)、2,2‘-アゾビスイソ酪酸ジメチル(和光純薬工業製,商品名:V-601、2.1g、8.4mmol)及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)27.9gを加え、撹拌・溶解させた。次いで、窒素バブリングにより系内の溶存酸素を除去したのち、加温し、内温90℃で3時間反応させた。次いで、内温を110℃まで昇温し、3時間反応させた。次いで、反応混合物を室温まで冷却し、大量のメタノールに注いでポリマーを析出させた。次いで、ポリマーを濾取し、さらにメタノールで洗浄した後、120℃、16時間真空乾燥させ、ポリマーを得た。
【0087】
なお、上記の合成においては未反応物が殆ど残存しなかった。このことから、上記各原料の仕込み量の比をポリマー中の各構成単位の量比とみなすことができる。
【0088】
<実施例2~8>
表1に記載された仕込み比にしたがい原料モノマーと連鎖移動剤を用意したこと以外は実施例1と同様にしてポリマーを得た。
【0089】
なお、本実施例に係るポリマーは、架橋性基を含むモノマーを原料として用いていない。そのため、本実施例に係るポリマー中には、架橋性基を含む構造単位が実質的に含まれないとみなすことができる。
【0090】
<比較例1>
反応容器内に、CSFANB(20.0g、41.3mmol)、MAN(4.1g、41.3mmol)、2,2‘-アゾビスイソ酪酸ジメチル(和光純薬工業製,商品名:V-601、1.3g、7.6mmol)及びメチルエチルケトン(MEK)14.1gを加え、撹拌・溶解させた。次いで、窒素バブリングにより系内の溶存酸素を除去したのち、加温し、内温60℃で2時間反応させた。次いで、内温を80℃まで昇温し、6時間反応させた。次いで、反応混合物を室温まで冷却し、大量のメタノールに注いでポリマーを析出させた。次いで、ポリマーを濾取し、さらにメタノールで洗浄した後、120℃、16時間真空乾燥させ、ポリマーを得た。
【0091】
[フッ素原子含有率]
上記の方法により得られたポリマー約10mgを酸素と置換した密封系のフラスコ内で完全燃焼させ、発生したガスをあらかじめ添加されているフラスコ内の過酸化水素アルカリ吸収液に捕集し、50mLに定容したものを検液とした。イオンクロマト分析装置(ダイオネクス社製ICS-3000)に検液及び標準液を導入し、検量線法によりフッ化物イオン濃度を求め、試料中に含まれるフッ素原子の含有量を算出した。結果を表1に示す。
【0092】
[重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)]
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、上記の方法により得られたポリマーの重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を求めた。結果を表1に示す。
・使用機器:東ソー社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー装置HLC-8320GPC
・使用カラム:東ソー社製TSK-GEL Supermultipore HZ-M
・カラム温度:40℃
・標準物質:ポリスチレン
・検出器:液体クロマトグラム用RI検出器
・溶離液:テトラヒドロフラン
・流速:0.35ml/min
【0093】
[ワニス]
上記の方法により得られたポリマー2.0gを、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート6.0gに溶解させてワニスを得た。
【0094】
[樹脂膜の作製]
上記の方法により得られたワニスを基板上にスピンコート法で塗布し、100℃のホットプレート上で120秒間加熱し、溶媒を除去した。次いで200℃のオーブンで30分間加熱し、次いで基板から剥離し、膜厚1μmの樹脂膜を得た。
【0095】
[耐熱性]
上記の方法により得られた樹脂膜を5mg秤量し、熱重量/示差熱測定装置を用いて、開始温度30℃、昇温速度10℃/min、N流量250mL/minの条件で昇温した。樹脂膜の重量が1%減少した温度をTdとした。また、樹脂膜の重量が5%減少した温度をTdとした。結果を表1に示す。
【0096】
[接触角]
上記の方法により得られた樹脂膜の表面上における純水またはヘキサデカンの静的接触角を、接触角計(協立界面科学社製、型番:DM-501)を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0097】
[溶解性]
上記の方法により得られたワニス約5mlを容量20mlのサンプル瓶に入れ、5℃の冷蔵庫に24時間静置したものを目視で観察し、下記の基準により評価を行った。結果を表1に示す。
可:ポリマーと溶媒が相溶していた。
不可:ポリマーと溶媒が相溶せず相分離していた。
【0098】
[泡立ち抑制]
上記の方法により得られたワニス約2mlを容量200mlのビーカーに入れ、PGMEAにより100ccまで希釈し、希釈後サンプルを得た。
得られた希釈後サンプルのうち20ccをメスシリンダーに入れた。
得られた希釈後サンプルのうち80ccを滴下漏斗に充填した。
メスシリンダーに入れた希釈後サンプルの液面に、滴下漏斗に充填した希釈後サンプルを30cmの高さから滴下し、発生した泡体積を測定した。下記の基準により評価を行った。結果を表1に示す。
A:滴下終了直後の泡体積が10cc未満であった。
B:滴下終了直後の泡体積が10cc以上であり、かつ、滴下終了から1分後における泡の体積が10cc以下であった。
C:滴下終了直後の泡体積が10cc以上であり、かつ、滴下終了から1分後における泡の体積が10ccを超えた。
【0099】
[光透過率 T400
上記の方法により得られた樹脂膜の波長400nmにおける光透過率T400を、紫外-可視光分光光度計を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0100】
[屈折率]
上記の方法により得られた樹脂膜の波長404nmにおける屈折率を、屈折率測定装置(メトリコン社製、Model2010-M)を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0101】
【表1】
【0102】
表1に示す通り、実施例のポリマーは、比較例のポリマーと比べて、耐熱性、撥水性、溶解性および泡立ち抑制のバランスが改善されていた。このことから、本実施形態のポリマーによれば、耐熱性、撥水性、溶解性および泡立ち抑制のバランスが改善可能であるということがわかる。