(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057427
(43)【公開日】2024-04-24
(54)【発明の名称】農作業機
(51)【国際特許分類】
A01B 63/06 20060101AFI20240417BHJP
A01D 42/02 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
A01B63/06
A01D42/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164159
(22)【出願日】2022-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000198330
【氏名又は名称】株式会社IHIアグリテック
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】金井 龍也
(72)【発明者】
【氏名】廣川 雄亮
(72)【発明者】
【氏名】井ノ山 和宏
【テーマコード(参考)】
2B083
2B304
【Fターム(参考)】
2B083HA05
2B083HA32
2B083HA60
2B304KA08
2B304KA12
2B304LA02
2B304LA10
2B304LB05
2B304LB15
2B304QA22
2B304QA26
(57)【要約】
【課題】作業効率の向上。
【解決手段】昇降リンクを備えた走行車両に取り付けられる農作業機であって、農作業機は、農作業部と復帰機構とリンク接続部を支える取付フレームを備えるものであり、農作業部は、取付フレームの後方にあり、取付フレームに対して左右に回動できるものであり、復帰機構は、誘導部材と被誘導部材を備え、誘導部材は、取付フレームに直接または間接的に取り付けられ、農作業部に向けて誘導部を有するものであり、被誘導部材は、その一端が誘導部に向いており、誘導部と当接する被誘導部を備えており、その他端が農作業部に固定されており、誘導部は、農作業機をリフトアップしたときに、農作業部と取付フレームの位置関係が定められた位置関係になるように、被誘導部を誘導するものである
ことを特徴とする農作業機。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降リンクを備えた走行車両に取り付けられる農作業機であって、
前記農作業機は、農作業部と復帰機構とリンク接続部を支える取付フレームを備えるものであり、
前記農作業部は、前記取付フレームの後方にあり、前記取付フレームに対して左右に回動できるものであり、
前記復帰機構は、誘導部材と被誘導部材を備え、
前記誘導部材は、
前記取付フレームに直接または間接的に取り付けられ、
前記農作業部に向けて誘導部を有するものであり、
前記被誘導部材は、
その一端が前記誘導部に向いており、
前記誘導部と当接する被誘導部を備えており、
その他端が前記農作業部に固定されており、
前記誘導部は、前記農作業機をリフトアップしたときに、前記農作業部と前記取付フレームの位置関係が定められた位置関係になるように、前記被誘導部を誘導するものである
ことを特徴とする農作業機。
【請求項2】
前記被誘導部材は、被誘導ロッドであることを特徴とする請求項1記載の農作業機。
【請求項3】
前記被誘導ロッドは、その一端側に被誘導拡径部を備えており、前記被誘導拡径部に前記被誘導部が設けられていることを特徴とする請求項2記載の農作業機。
【請求項4】
前記誘導部材は、V字状溝部を有し、前記V字状溝部の左右側壁を前記誘導部とする部材であり、
前記被誘導拡径部は前記誘導部材に向いた頂点を中心に左右に拡がる前記被誘導部を備えた部材であることを特徴とする請求項3記載の農作業機。
【請求項5】
前記誘導部または前記被誘導部は、ローラを有するものである請求項4記載の農作業機。
【請求項6】
前記被誘導ロッドは、その一端が伸縮部となっており、前記誘導部材に左右回動に固定されている請求項2記載の農作業機。
【請求項7】
前記農作業部と前記走行車両の位置関係が定められた位置関係になるとは、走行車両側センター軸と農作業機側センター軸が、平面視で一直線に繋がる位置関係になることである請求項1記載の農作業機。
【請求項8】
さらに、傾斜規制部材を備え、
前記傾斜規制部材は、
前記誘導部材より上方位置であって、前記取付フレームに直接または間接的に取り付けられており、
前記農作業部をリフトアップしたときに、前記取付フレームの上部側を所定の傾斜角度の範囲で前記走行車両側に傾くことを許す部材であることを特徴とする請求項1記載の農作業機。
【請求項9】
前記農作業部が、レーキを含む請求項1~8のいずれか1項記載の農作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行車両のリンクに接続する農作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
走行車両(トラクタ)のリンクに接続する農作業機は、たとえば集草機やスクエアベーラなどの様々なものがある。中には、枕地で旋回するなどのとき、旋回方向に追随するよう農作業部が曲がるように設計されているものがある(特許文献1)。
農作業を終えるなどしたとき、作業者は、走行車両の前後方向となるセンター軸に農作業機の前後方向軸を合わせてリフトアップする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
農作業部が曲がるように設計されている農作業機では、作業者はリフトアップ前にセンター軸に農作業部が揃うようにした後、リフトアップするなどしている。
しかし、農作業機が曲がるように設計されているため、遊びがあり、リフトアップした農作業機の前後方向軸が、センター軸からずれることがあった。
また、作業者はセンター軸に合わせて農作業機がリフトアップされているかを走行車両から降り確認し、ずれているときは、再度リフトアップを繰り返すなどの作業を行わねばならず、作業性が悪かった。
【0005】
本発明は、リフトアップ時の作業性の向上を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、昇降リンクを備えた走行車両に取り付けられる農作業機であって、前記農作業機は、農作業部と復帰機構とリンク接続部を支える取付フレームを備えるものであり、前記農作業部は、前記取付フレームの後方にあり、前記取付フレームに対して左右に回動できるものであり、前記復帰機構は、誘導部材と被誘導部材を備え、前記誘導部材は、前記取付フレームに直接または間接的に取り付けられ、前記農作業部に向けて誘導部を有するものであり、前記被誘導部材は、その一端が前記誘導部に向いており、前記誘導部と当接する被誘導部を備えており、その他端が前記農作業部に固定されており、前記誘導部は、前記農作業機をリフトアップしたときに、前記農作業部と前記取付フレームの位置関係が定められた位置関係になるように、前記被誘導部を誘導するものであることを特徴とする農作業機とすることで課題を解決した。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、作業効率の著しい向上をもたらした。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は農作業機の全体構成の説明図である。
図1(A)は、旋回時の平面図であり、
図1(B)は作業時の側面図、
図1(C)は移動時の側面図である。
【
図2】
図2は農作業機を正面側からみた斜視図である。
【
図4】
図4は復帰機構の説明図である。
図4(A)は復帰機構の下部リンク付近の説明である。
図4(B)は誘導部材の説明図である。
図4(C)は被誘導拡径部の説明図である。
【
図5】
図5は農作業部が接地状態直進作業中の復帰機構の説明図である。
図5(A)は、
図5(B)に付した矢印Aの方向からみた復帰機構の平面図であり、
図5(B)は農作業部と取付フレームの位置関係を示す側面図である。
【
図6】
図6は農作業部をリフトアップして直進中の復帰機構の説明図である。
図6(A)は、
図6(B)に付した矢印Bの方向からみた復帰機構の平面図であり、
図6(B)はリフトアップ中の農作業部と取付フレームと走行車両の位置関係を示す側面図である。
【
図7】
図7は変形例の被誘導ロッド(被誘導部材)と誘導部材の説明図である。
【
図8】
図8は旋回中(農作業部が回転した状態)にリフトアップした直後の復帰機構の説明図である。
図8(A)は、
図8(B)に付した矢印Cの方向からみた復帰機構の平面図であり、
図8(B)は農作業部と取付フレームの位置関係を示す側面図と平面図である。
図8(C)は、復帰途中の誘導部材と被誘導拡径部の位置関係を示す平面図である。
【
図9】
図9は傾斜規制部材の説明図である。
図9(A)は、傾斜規制部材の平面図である。
図9(B)は傾斜規制部材が設けられている位置を示す説明図である。
【
図10】
図10は傾斜規制部材の長孔と上側回動軸の位置関係の説明図である。
図10(A)は、農作業中の、傾斜規制部材の状態を示す説明図である(θT=0°、θR=0°)。
図10(B)はθT=10°・θR=0°で直進中に農作業機を持ち上げた際の傾斜規制部材の状態を示す説明図である。
【
図11】
図11は農作業機が農作業中に旋回したときの、傾斜規制部材の状態(θT=0°、θR=30°)を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0010】
[実施例]
図1は農作業機2の全体構成の説明図である。
図1(A)は、旋回時の平面図であり、
図1(B)は作業時の側面図である。
農作業機2は、大きく分けて、取付フレーム3、農作業部21及び復帰機構5で構成されている。
【0011】
(取付フレーム)
実施例の農作業機2は農作業部21として左右にレーキを備えた集草機である。農作業機2は、トラクタなどの走行車両1に取り付けられている。走行車両1は、後部に昇降リンク11(三点リンク)を備えている。農作業機2は、走行車両1の昇降リンク11に対して、取付フレーム3に設けられたトップリンク接続部33、左ロアリンク接続部32L及び右ロアリンク接続部32R(図示せず)を介して連結されることで取り付けられる。
取付フレーム3は、昇降リンク11で走行車両1と接続されているため、上下方向に動くことはあるが、
図1(A)に示したように左右方向に回動しない。
他方、取付フレーム3の後方にある農作業部21は、走行車両1の旋回に伴い、左右方向に回動する。そのため、走行車両1及び取付フレーム3と農作業部21の位置関係は、左右回動により変化する。
また、農作業機2は、入力部4を備えており走行車両1のPTO軸と駆動軸(図示せず)を介して動力連結されている。説明のため駆動軸等の動力系は
図1を含め、図面で図示していない。
【0012】
図1(B)には、本発明の復帰機構5の一部を構成する被誘導ロッド(被誘導部材)7が図示されている。復帰機構5の詳細は後述する。
【0013】
(旋回時の農作部の位置)
図1(A)で示すように、走行車両1が旋回する場合、農作業部21が所定の回転角度θRで曲がるように設計されている。農作業部21は、左回動アクチュエータ23Lと右回動アクチュエータ23Rを備えており、両アクチュエータ(23L・23R)の伸縮量の差により、所定の回転角度θRになるように制御されている。
【0014】
(レーキの折畳み)
図1(C)は移動時の側面図である。
図1(A)に示すように、農作業機2は、農作業部21として左レーキ21Lと右レーキ21Rを備えている。路上を走行する際や、圃場から別の圃場へ移動する際に支障がないように、実施例の農作業機2は、左レーキ21Lと右レーキ21Rを折り畳めるようになっている。
また、農作業部21は、リフトアップされたとき取付フレーム3に対して、上側が走行車両1側に傾斜角度θTで傾く。
【0015】
(センター軸)
本明細書において、走行車両1の幅方向のセンターを通る前後軸方向に延びる軸は、走行車両側センター軸CLと呼ばれる。また、農作業機2の幅方向のセンターを通る前後軸方向に延びる軸は、農作業機側センター軸CNと呼ばれる。
図1(A)は、旋回中の状態を図示しているため、一点鎖線で示した走行車両側センター軸CLと農作業機側センター軸CNは一直線につながっていない。
背景技術の項で説明したように、作業者は、農作業機2の移動時に、農作業機2をリフトアップする。そして、作業者は農作業機側センター軸CNと走行車両側センター軸CLに合わせて農作業機2をリフトアップしなければならない。
実施例の復帰機構5は、リフトアップするだけで自動的に走行車両側センター軸CLと農作業機側センター軸CNが、平面視で一直線に繋がることになる。
【0016】
(取付フレーム)
図2は農作業機2を正面側からみた斜視図である。農作業機2の正面側(走行車両1側)には、取付フレーム3がある。取付フレーム3は、逆U字フレーム31と下部フレーム32で構成されている。取付フレーム3には、トップリンク接続部33と左ロアリンク接続部32Lと右ロアリンク接続部32Rが取り付けられている。それぞれのリンク接続部(33・32L・32R)は走行車両1の昇降リンク11(三点リンク)と接続される。
【0017】
(農作業部)
図1(A)に示すように、農作業機2の農作業部21と取付フレーム3は別の動きをするように接続されている。走行車両1が旋回する時の動きに追随して農作業部21も回転角度θRで回転するが、取付フレーム3は昇降リンク11に接続されているため走行車両1の昇降リンク11の動きに追随してリフトアップ・リフトダウンする。
【0018】
(復帰機構)
復帰機構5は、農作業機2のリフトアップしたときに、農作業部21と取付フレーム3の位置関係が予め定められた位置関係になるように自動的に復帰する機構である。実施例の「定められた位置関係」は、走行車両側センター軸CLと農作業機側センター軸CNが平面視で一直線に繋がる位置関係となることをいう。取付フレーム3は、昇降リンク11を介して走行車両1に強固に連結されているため、復帰機構5は、農作業部21と走行車両1との位置関係が定められた位置にする機構ということもできる。
実施例は定められた位置関係の1例に過ぎない。
【0019】
(復帰機構の構造)
復帰機構5は、誘導部材6と被誘導ロッド(被誘導部材)7の2つの部材で構成されている。被誘導ロッド(被誘導部材)7は、
図2ではその一部が見えているだけである。
図3は農作業機2の側面図である。被誘導ロッド(被誘導部材)7の配置が分かるように、農作業部21は折り畳まれた状態となっている。
復帰機構5を構成する一つの部材である被誘導ロッド(被誘導部材)7は、農作業機2の前後方向に延びる軸である。実施例の被誘導ロッド(被誘導部材)7は、農作業機2の上方からみる(平面視)と、農作業機側センター軸CNと重なる位置に配設されている。被誘導ロッド(被誘導部材)7は、農作業機2の側方からみると、一端72は復帰機構5を構成するもう一つの部材である誘導部材6に取り付けられている。被誘導ロッド(被誘導部材)7の他端71は、農作業部21の適宜箇所に取り付けられる。被誘導ロッド(被誘導部材)7にかかる荷重を支えられるのであれば、他端71は、農作業機側センター軸CN方向にある農作業部21のどこに取り付けてもよい。
被誘導ロッド(被誘導部材)7は、誘導部材6側に被誘導拡径部77を有している。
農作業部21は、トップリンク接続部33から延びる上側回動軸81と誘導部材6に設けられた下側回動軸76を中心に左右方向に回転角度θRで回動し、取付フレーム3との位置関係が変化する。
【0020】
(誘導部材)
図4は復帰機構5の説明図である。
図4(A)は復帰機構5の下部フレーム32(取付フレーム3)付近の説明である。
図4(B)は誘導部材6の説明図である。
誘導部材6は、復帰機構5を構成する部材の一つである。誘導部材6は、被誘導ロッド(被誘導部材)7に向けてV字状溝部63を備えており、V字状溝部63の左右側壁は、それぞれ、左誘導部61Lと右誘導部61Rになっている。
【0021】
(被誘導ロッド(被誘導部材))
被誘導ロッド(被誘導部材)7は、復帰機構5を構成するもう一つの部材である。被誘導ロッド(被誘導部材)7の一端72側は、伸縮部75となっている。
図4(A)に示すように、被誘導ロッド(被誘導部材)7の一端72は、下部フレーム32(取付フレーム3)に設けられた誘導部材6に取り付けられている。誘導部材6には、被誘導ロッド(被誘導部材)7の一端72を回動自在に連結する下側回動軸76が取り付けられている。被誘導ロッド(被誘導部材)7に下側回動軸76があるため、被誘導ロッド(被誘導部材)7は、農作業部21が取付フレーム3に対して回転しても外れることが無い。
被誘導ロッド(被誘導部材)7は、誘導部材6を介して間接的に下部フレーム32(取付フレーム3)に取り付けられていることになる。
【0022】
(伸縮部)
被誘導ロッド(被誘導部材)7の一端72は、内側ロッド751となっており、被誘導ロッド(被誘導部材)7の先端側に呑み込まれている。内側ロッド751が被誘導ロッド(被誘導部材)7の筒部752に呑み込まれていることで、矢印のように伸縮する伸縮部75になっている。
伸縮部75の筒部752は、内側ロッド751を呑み込みながら前進し、やがて誘導部材6の内部に侵入する。筒部752の前進は、被誘導拡径部77の頂点771がV字状溝部63の溝底631と当接するまで続く。
【0023】
(被誘導拡径部)
図4(C)は被誘導拡径部77の説明図である。
図4(C)に示すように、被誘導ロッド(被誘導部材)7は、伸縮部75に近接して被誘導部(77L・77R)が設けられた被誘導拡径部77が取り付けられている。被誘導拡径部77の先端は、頂点771となっており、頂点771を中心に左右に拡がる左被誘導部77Lと右被誘導部77Rを有する矢じり状の形状になっている。
V字状溝部63と被誘導拡径部77の形状をみても分かるように、伸縮部75が縮むと、矢じり状の被誘導部(77L・77R)とV字状溝部63にある誘導部(61L・61R)が当接し、嵌り合い動かなくなる。この両者の嵌合状態をもって、誘導部(61L・61R)と被誘導部(77L・77R)は、農作業部21と取付フレーム3の位置関係が定められた位置になったときに動かなくなる状態になったことになる。
復帰機構5は、被誘導拡径部77と誘導部材6が、嵌り合い、定められた位置、すなわち、走行車両側センター軸CLと農作業機側センター軸CNは平面視で一直線上に並び動かなくなるように機能する。
次の項で、実際の農作業における復帰機構5の作動状態を詳細に説明する。
【0024】
(直進作業中の復帰機構)
図5は農作業部21が接地状態直進作業中の復帰機構5の説明図である。
図5(A)は、
図5(B)に付した矢印Aの方向からみた復帰機構5の平面図であり、
図5(B)は農作業部21と下部フレーム32(取付フレーム3)の位置関係を示す側面図である。
図5(B)のように、農作業部21が接地直進作業中のときには、リフトアップ時にのみ機能する復帰機構5は作動しない状態となっている。
直進状態の走行車両側センター軸CLと農作業機側センター軸CNは、前述したように平面視でつながる位置関係となる。つまり、走行車両側センター軸CLと農作業機側センター軸CNは、回転角度θR=0°の関係にある。
また、実施例の取付フレーム3は垂直の状態であり取付フレーム3の傾斜角度θT=0°となっている。
作動していない状態の復帰機構5は、
図5(A)のように伸縮部75が伸びた状態にある。このとき、誘導部材6の左右の誘導部(61L・61R)と被誘導拡径部77の左右の被誘導部(77L・77R)は、互いに離間した状態になっている。
【0025】
(リフトアップ時の復帰機構)
作業者が農作業機2を接地した状態で、走行車両側センター軸CLと農作業機側センター軸CNが一直線になるように運転し、次いでリフトアップすれば、必然的に両軸(CL・CN)が一直線となったまま農作業機2を持ち上げられるはずである。
しかし、農作業機2と走行車両1の間には機械的な遊びがあり、実際には思ったように持ち上げることができない。
【0026】
さらに、農作業を終えた左レーキ21Lと右レーキ21Rは、不均等に草が絡みついている。作業者が農作業部21を接地状態で走行車両1と直線に並べたとしても、左レーキ21Lと右レーキ21Rの重さが草の重みで異なるため、リフトアップ中に右や左に農作業部21が回転してしまうことが起きる。
実際のリフトアップ作業では、作業者は、走行車両側センター軸CLと農作業機側センター軸CNが直線になるようにリフトアップするのに、何回も調整を繰り返さなくてはならなかった。
【0027】
図6は農作業部21をリフトアップして直進中の復帰機構5の説明図である。
図6(A)は、
図6(B)に付した矢印Bの方向からみた復帰機構5の平面図であり、
図6(B)はリフトアップ中の農作業部21と取付フレーム3と走行車両1の位置関係を示す側面図である。
直進中は、走行車両側センター軸CLと農作業機側センター軸CNが一直線の状態(回転角度θR=0°)でありリフトアップ直前までの復帰機構5は、
図5(A)で図示した状態にある。
【0028】
作業者は、直進したまま、または、その状態で走行車両1を停車させて、農作業機2をリフトアップする操作を行う。
農作業部21が、
図6(B)のように持ち上がると、農作業部21の荷重は、すべて取付フレーム3にかかる。特に、下部フレーム32は、被誘導ロッド(被誘導部材)7の一端72が取り付けられているため、矢印に示すように農作業部21の荷重により生じる回転モーメントを受ける。
図5(B)のように、伸びていた伸縮部75はこの力により、次第に縮み出し、リフトアップが完了すると
図6(B)のように誘導部材6のV字状溝部63の溝底631と被誘導拡径部77の頂点771は当接し、誘導部材6と被誘導拡径部77が嵌り合う。
【0029】
(不均等な草の絡まり)
ここで、仮に、不均等な草の絡まりにより右側に農作業部21がわずかに回転していたとする。わずかに右に回転しているため、リフトアップ直後は右誘導部61Rと右被誘導部77Rが当接し、左誘導部61Lと左被誘導部77Lは当接しない状態となる。前述したように、被誘導ロッド(被誘導部材)7の一端72には、農作業部21の荷重がかかっており、溝底631と頂点771が嵌り合う位置が構造的に最も安定する。右被誘導部77Rがある被誘導ロッド(被誘導部材)7の一端72は、下側回動軸76で回動自在に固定されており、大きな荷重がかかると構造的に最も安定する位置に向かって回動を始める。このとき、被誘導ロッド(被誘導部材)7の回動に伴い右被誘導部77Rが右誘導部61R上を滑り出し、最終的に溝底631と頂点771が嵌り合う位置に落ち着き、動かなくなる。
【0030】
(機械的な遊び)
わずかな機械的な遊びがあり、農作業機2をリフトアップしている最中に、農作業部21が回転角度θR=0°を中心に左右にブレる場合がある。このような場合でも、同様に左右の誘導部(61L・61R)と被誘導部(77L・77R)は当接し、ブレを止めながら次第に溝底631と頂点771が嵌り合うように誘導する。
【0031】
[変形例]
(被誘導ロッド)
出願人は、被誘導ロッド7を被誘導部材の例として説明してきた。これは、実施例の農作業部21と取付フレーム3との距離が離れているからである。農作業機2が集草機でなく、農作業部21と取付フレーム3の間が近接しているときは、被誘導部材は、被誘導ロッド7のようにロッド状である必要はない。
さらに、実施例の被誘導ロッド(被誘導部材)7は、その一端側が下側回動軸76で回動自在に固定されていた。これは、一種のジョイントであり、誘導部材6と被誘導部材は、ジョイントのように1部材となっていることを妨げない。
【0032】
また、実施例の被誘導ロッド(被誘導部材)7は、その一端72側が下側回動軸76で、誘導部材6に回動自在に固定されていなくてもよい。
図7は変形例の被誘導ロッド(被誘導部材)7と誘導部材6の説明図である。この変形例は、実施例のように、被誘導拡径部77の先端に伸縮部75が存在しない。被誘導ロッド(被誘導部材)7の一端72にある被誘導拡径部77は、下側回動軸76が無いからといって完全に自由に動けるわけではなく、上側回動軸81が許す回動範囲でしか動くことができない。農作業部21と農作業部21に他端71が固定された被誘導ロッド(被誘導部材)7の一端72は、上側回動軸81が許す決められた軌跡を動くことになる。被誘導ロッド(被誘導部材)7の一端72、すなわち、誘導部材6側に設けられた被誘導拡径部77が農作業部21の回動にともない動く軌跡に沿って、誘導部材6の左誘導部61Lと右誘導部61Rが設けられる。
【0033】
なお、農作業部21が上側回動軸81のみで回動するように説明したが、この説明は、下側回動軸76自体が存在しないことを意味するのではない。被誘導ロッド(被誘導部材)7の一端72に下側回動軸76が無いことを意味する。上側回動軸81のみで農作業部21を回動させることに、強度的な不安が生じる場合があるとき、下側回動軸76は、被誘導ロッド(被誘導部材)7の一端72とは別の位置に設けることができる。
以上のように、被誘導ロッド(被誘導部材)7と誘導部材6は、回動自在に連結されている必要はない。
また、農作業部21を大きく回動させるような農作業機2は、
図7のように誘導部(61L・61R)を大きくすることで対応が可能である。
【0034】
(誘導部と被誘導部)
実施例は、V字状溝部63を有する誘導部材6を例にしている。誘導部材6は、被誘導拡径部77の被誘導部(77L・77R)と当接する誘導部(61L・61R)を備えている。そして、誘導部材6の誘導部(61L・61R)は、農作業機2をリフトアップしたときに、農作業部21と取付フレーム3の位置関係が定められた位置関係になるように、被誘導部(77L・77R)を誘導することを説明してきた。
誘導部(61L・61R)と被誘導部(77L・77R)は、必ずしも嵌り合わなくてもよい。
たとえば、誘導部材6の誘導部(61L・61R)が曲率の大きな凹んだ円弧状であり、被誘導拡径部77の被誘導部(77L・77R)が曲率の小さな凸状の円弧である場合、嵌り合わなくてもおのずと、安定した位置で停止する。
すなわち、被誘導拡径部77の頂点771(凸状の円弧が最も突出している点)が誘導部材6の誘導部(61L・61R)の溝底631(凹状の円弧の最も凹んでいる点)で動かなくなれば足りる。
【0035】
誘導部(61L・61R)や被誘導部(77L・77R)は、面で接触する必要もない。
たとえば、前述した円弧の例では、誘導部(61L・61R)や被誘導部(77L・77R)の曲率が異なるため、線状に接触する。
以上のように、誘導部(61L・61R)や被誘導部(77L・77R)の具体的な形状は、復帰機構5が機能すればどのような形状でもよい。
【0036】
実施例の誘導部材6にあるV字状溝部63の誘導部(61L・61R)に被誘導部(77L・77R)が嵌り合う態様は、走行車両1が不整地である圃場内を走行する際に起きる振動があっても、簡単に外れにくくなるため、好ましい態様である。
【0037】
誘導部(61L・61R)や被誘導部(77L・77R)はローラであってもよい。この場合、誘導部(61L・61R)や被誘導部(77L・77R)のいずれか一方がローラや並列に設けられたローラ群となっており、他方が面となっている。面とローラによる誘導構造は、ローラが面を滑ることにより、スムーズに誘導されるようになる。
ローラは一つのローラでも可能である。被誘導拡径部77の頂点771(凸状の円弧が最も突出している点)がローラとなっていれば、十分に被誘導部(77L・77R)として機能する。
【0038】
実施例は、走行車両側センター軸CLと農作業機側センター軸CNが平面視で一直線になるように位置に誘導するものであった。
必要に応じ、誘導部(61L・61R)と被誘導部(77L・77R)の向きを実施例と変えることで、農作業部21は、予め定めた位置関係になるように誘導されるようになる。
【0039】
(傾斜角度)
これまで具体的に説明してこなかったが、
図6(B)のように、実施例の農作業機2は、取付フレーム3の上方を傾斜角度θTだけ、走行車両1側に傾斜させる傾斜規制部材8を備えている。
傾斜規制部材8の構造は後述するが、傾斜規制部材8は、取付フレーム3の上方を走行車両1側に倒すことにより、より農作業部21の荷重が被誘導ロッド(被誘導部材)7の一端72に集中するように機能する。
図6(B)の実施例では、傾斜角度θT=10°取付フレーム3が傾斜した状態となっている。
【0040】
(旋回中のリフトアップ)
図8は旋回中(農作業部21が回転した状態)にリフトアップした直後の復帰機構5の説明図である。
図8(A)は、
図8(B)に付した矢印Cの方向からみた復帰機構5の平面図であり、
図8(B)は農作業部21と取付フレーム3の位置関係を示す側面図と平面図である。
リフトアップした直後の農作業機2と走行車両1の位置関係は、
図8(B)の平面図で図示されているように、進行方向右側に旋回中のため、回転角度θR=30°となっている。
この状態でリフトアップした復帰機構5が
図8(A)である。右側に旋回中のため、右誘導部61Rと右被誘導部77Rが当接している。伸縮部75は、伸びた状態にある。
【0041】
図8(B)の側面図の矢印は、農作業部21の荷重が、伸縮部75のある被誘導ロッド(被誘導部材)7の一端72に及ぼす回転モーメントである。
図8(B)からも、伸縮部75を縮める方向に強く荷重がかかっていることが分かる。
図8(C)は、復帰途中の誘導部材6と被誘導拡径部77の位置関係を示す平面図である。この荷重により、最も構造的に安定する位置、すなわち、右被誘導部77RがV字状溝部63の溝底631に向かって動き出し、最終的に被誘導拡径部77の頂点771が溝底631に嵌る(
図6(A)参照)。
以上のように、旋回中に農作業部21が回転角度θR=30°になっている状態でリフトアップしても、農作業部21と取付フレーム3の位置関係が定められた位置関係になる。すなわち、定められた位置関係は、走行車両側センター軸CLと農作業機側センター軸CNが平面視で一直線になるように位置である。
なお、
図8(B)で図示されているように、このときの取付フレーム3の傾斜角度θTは5°であった。
【0042】
(傾斜規制部材)
図9は傾斜規制部材8の説明図である。
図9(A)は、傾斜規制部材8の平面図である。
図9(B)は傾斜規制部材8が設けられている位置を示す説明図である。
傾斜規制部材8は、取付フレーム3の上部を走行車両1の側に所定の範囲に限り倒す機能を有する部材である。前述したように、傾斜規制部材8は、農作業部21の荷重を被誘導ロッド(被誘導部材)7の一端72に集中させる機能を有し、復帰機構5の機能を高める働きをする。傾斜規制部材8は、復帰機構5と必ず組み合わせて用いなければならない部材ではないが、組み合わせた方が好ましい。
傾斜規制部材8は、誘導部材6より上方位置にあるトップリンク接続部33に近接して取り付けられている。傾斜規制部材8の左右の両側が逆U字フレーム31に取り付けられる。実施例の傾斜規制部材8は、逆U字フレーム31に直接取り付けられる態様であるが、何らかの部材を介して間接的に取り付けられていてもよい。
傾斜規制部材8の後方には、前後方向に延びた長孔82が設けられており、長孔82には上側回動軸81が挿通している。上側回動軸81は、上端がトップリンク接続部33に取り付けられ、下端は図示していないが、直接または間接的に農作業部21に取り付けられている。
【0043】
次いで、取付フレーム3を昇降リンク11で上昇させると、農作業部21が持ち上がる。このとき、上側回動軸81が長孔82の範囲内で動くことが許容される。
【0044】
(昇降と傾斜規制部材の関係)
様々な農作業部21の昇降動作を傾斜規制部材8の関係を説明する。
図10は傾斜規制部材8の長孔82と上側回動軸81の位置関係の説明図である。
図10(A)は、農作業中の、傾斜規制部材8の状態を示す説明図である(θT=0°、θR=0°)。直進しているため、農作業部21は走行車両1の進行方向(直進方向)を向いており回転角度θR=0°となっている。
この状態の傾斜規制部材8は、上側回動軸81が長孔82の後方と当接しており、取付フレーム3が垂直で、農作業部21に対して傾斜していない状態となっている。
上側回動軸81の長孔82に対する位置は、傾斜角度θTの角度と対応する。上側回動軸81が長孔82の後方と当接しているときは、傾斜角度θT=0°に対応する。長孔82は、傾斜角度θT=0°を超えてθTが負の角度にならないように、傾斜角度θTを規制する。
【0045】
図10(B)はθT=10°・θR=0°で直進中に農作業機2を持ち上げた際の傾斜規制部材8の状態を示す説明図である。
この状態の傾斜規制部材8は、上側回動軸81が長孔82の最も前にあり、取付フレーム3の上部が10°走行車両1側に傾いている。前述したように上側回動軸81の長孔82に対する位置は、傾斜角度θTの角度と対応する。上側回動軸81が長孔82の前方と当接しているときは、傾斜角度0°<θT≦10°になるときである。取付フレーム3が傾斜角度θT=0°より傾くと、農作業部21を回動自在に軸支している上側回動軸81は、長孔82の前側に向かって動き出し、長孔82の前方に当接して止まる。農作業機2を昇降リンク11でどれだけ持ち上げても、上側回動軸81は、長孔82の前方に当接して止まるため、傾斜角度θT=10°が維持される。
【0046】
このように、実施例の傾斜規制部材8は、誘導部材6より上部位置であって、取付フレーム3に直接または間接的に取り付けられている部材である。そして、実施例の傾斜規制部材8は、取付フレーム3の上部側が、所定の傾斜角度θTの範囲内(0°~10°の範囲内)で走行車両1側に傾くことを許す部材である。
【0047】
図11は農作業機2が農作業中に旋回したときの、傾斜規制部材8の状態(θT=0°、θR=30°)を示す説明図である。
この状態の傾斜規制部材8は、上側回動軸81が長孔82の最も後にあり、取付フレーム3が垂直で、農作業部21に対して傾斜していない状態となっている。
図11の傾斜規制部材8と
図10(A)の傾斜規制部材8の上側回動軸81の位置は、共に長孔82の最も後方にある。上側回動軸81の長孔82に対する位置は、走行車両1の旋回とそれに追随する農作業機2の回転とは無関係であり、農作業機2の昇降の有無で決まる。
【0048】
以上のように、傾斜規制部材8は、農作業部21の回転角度θRと無関係にリフトアップにより動き、取付フレーム3を傾斜することを許す部材であり、復帰機構5の動きを助けるものである。
また、傾斜規制部材8は、傾斜しすぎないように規制する部材でもある。
【0049】
(設計変更)
以上、本発明に係る実施例を中心に、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構造や構成は、これらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更などがあっても本発明に含まれる。
また、変形例は、その目的および構成などに特に矛盾や問題がない限り、実施例と組み合わせることが可能である。
【0050】
(持続可能な開発目標:SDGs)
本発明の実施例は、走行車両側センター軸CLと農作業機側センター軸CNが平面視で一直線に繋がるようにリフトアップすることができる機構であり、作業効率の著しい向上をもたす。簡単に路上走行等に適した位置になるようリフトアップできるため、従来品のように両軸を一致させるために昇降リンク11のアップ&ダウンを繰り返す必要が無くなった。その結果、無駄な燃料を消費すること無く、農地を健全に維持することに貢献できる。このように、本発明は、持続的な農作物の生産をとおして、「陸の豊かさも守ろう」という目標15に寄与できる。
【符号の説明】
【0051】
CL 走行車両側センター軸
CN 農作業機側センター軸
θT 傾斜角度
θR 回転角度
1 走行車両
11 昇降リンク
2 農作業機
21 農作業部
21L 左レーキ
21R 右レーキ
22L 左折畳アクチュエータ
22R 右折畳アクチュエータ
23L 左回動アクチュエータ
23R 右回動アクチュエータ
3 取付フレーム
31 逆U字フレーム(取付フレーム)
32 下部フレーム(取付フレーム)
33 トップリンク接続部
32L 左ロアリンク接続部
32R 右ロアリンク接続部
4 入力部
5 復帰機構
6 誘導部材
61L 左誘導部
61R 右誘導部
63 V字状溝部
631 溝底
7 被誘導ロッド(被誘導部)
71 他端
72 一端
75 伸縮部
751 内側ロッド
752 筒部
76 下側回動軸
77 被誘導拡径部
771 頂点
77L 左被誘導部
77R 右被誘導部
8 傾斜規制部材
81 上側回動軸
82 長孔