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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057431
(43)【公開日】2024-04-24
(54)【発明の名称】バルブ装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 1/32 20060101AFI20240417BHJP
【FI】
F16K1/32 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164168
(22)【出願日】2022-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浦塚 崇史
【テーマコード(参考)】
3H052
【Fターム(参考)】
3H052AA01
3H052BA34
3H052BA35
3H052CC01
3H052EA16
(57)【要約】
【課題】バルブ装置内の水分を効率よく排出する技術を提供する。
【解決手段】
バルブ装置は、ハウジングと、ハウジング内に設けられており、外部から流体が導入される一次側通路と、一次側通路の下流側端部に設けられている第一導出部と、ハウジング内に設けられており、第一導出部と連通しているとともに、外部に流体を導出する二次側通路と、二次側通路の下流側端部に設けられている第二導出部と、第一導出部と二次側通路の間に設けられている連通室と、第一導出部に形成されている弁座と、弁座に接触可能であり、第一導出部を開閉する弁体を備えている。このバルブ装置は、二次側通路の第二導出部より上流側に、大気と連通する大気孔が設けられている。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体流路の開閉を行うバルブ装置であって、
ハウジングと、
前記ハウジング内に設けられており、外部から流体が導入される一次側通路と、
前記一次側通路の下流側端部に設けられている第一導出部と、
前記ハウジング内に設けられており、前記第一導出部と連通しているとともに、外部に流体を導出する二次側通路と、
前記二次側通路の下流側端部に設けられている第二導出部と、
前記第一導出部と前記二次側通路の間に設けられている連通室と、
前記第一導出部に形成されている弁座と、
前記弁座に接触可能であり、前記第一導出部を開閉する弁体と、
を備えており、
前記二次側通路の前記第二導出部より上流側に、大気と連通する大気孔が設けられている、バルブ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のバルブ装置であって、
前記二次側通路は、前記大気孔より下流側の少なくとも一部が網目構造である、バルブ装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のバルブ装置であって、
前記二次側通路の前記大気孔より下流側に、前記第二導出部まで伸びる切欠きが形成されている、バルブ装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載のバルブ装置であって、
前記二次側通路の前記大気孔より下流側の内壁面に、流体の流れ方向に沿って伸びる溝が形成されている、バルブ装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載のバルブ装置であって、
前記二次側通路の前記大気孔より下流側に、流路面積が増大する流路増大部が設けられている、バルブ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、バルブ装置に関する技術を開示する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、流体流路の開閉を行うバルブ装置が開示されている。特許文献1のバルブ装置は、燃料電池システムを搭載した車両で用いられ、水蒸気を含む燃料ガス、生成水等の流体の流量を調整するために用いられる。特許文献1では、二次側通路(弁体のより下流側の通路)を、弁座部から垂直下方、あるいは、弁座部から下方に傾斜するように形成している。特許文献1は、二次側通路を垂直下方または下方に傾斜させることにより、車両の姿勢(例えば車両が傾斜地に停車されている等)に係わらず、流体をバルブ装置外に排出しやすくしている
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-232352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
弁体が閉じられると、二次側通路への流体の導入は停止される。しかしながら、弁体が閉じられた後も、流体は二次側通路の出口(バルブ装置外)へ向けて移動する。流体が二次側通路の出口へ移動する際、流体が二次側通路の流路断面全体に存在すると、流体の上流側が負圧となり、二次側通路内に液膜(流路を塞ぐ膜)が形成されることがある。この液膜が凍結すると、二次側通路が閉塞され、バルブ装置が機能できなくなる。本明細書は、二次側通路に液膜が形成されることが抑制されたバルブ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で開示する第1技術は、流体流路の開閉を行うバルブ装置である。このバルブ装置は、ハウジングと、ハウジング内に設けられており、外部から流体が導入される一次側通路と、一次側流路の下流側端部に設けられている第一導出部と、ハウジング内に設けられており、第一導出部と連通しているとともに、外部に流体を導出する二次側通路と、二次側流路の下流側端部に設けられている第二導出部と、第一導出部と二次側通路の間に設けられている連通室と、第一導出部に形成されている弁座と、弁座に接触可能であり、第一導出部を開閉する弁体を備えていてよい。また、このバルブ装置は、二次側通路の第二導出部より上流側に、大気と連通する大気孔が設けられていてよい。
【0006】
本明細書で開示する第2技術は、上記第1技術のバルブ装置であって、二次側通路は、大気孔より下流側の少なくとも一部が網目構造であってよい。
【0007】
本明細書で開示する第3技術は、上記第1または第2技術のバルブ装置であって、二次側通路の大気孔より下流側に、第二導出部まで伸びる切欠きが形成されていてよい。
【0008】
本明細書で開示する第4技術は、上記第1または第2技術のバルブ装置であって、二次側通路の大気孔より下流側の内壁面に、流体の流れ方向に沿って伸びる溝が形成されていてよい。
【0009】
本明細書で開示する第5技術は、上記第1または第2技術のバルブ装置であって、二次側通路の大気孔より下流側に、流路面積が増大する流路増大部が設けられていてよい。
【発明の効果】
【0010】
第1技術によると、弁体が閉じた後に流体が二次側通路を流れる際、流体上流側の二次通路内を大気圧に維持することができる。弁体と流体の間の空間(二次側通路内の空間)が負圧になることが抑制され、二次側通路内に液膜が発生することを抑制することができる。また、二次側通路内に液膜が生じたとしても、大気孔から二次側通路内に導入される大気が、液膜を下方に押し出すことができる。二次側通路内に液膜が残存することが抑制され、低温下においても、二次側通路内が閉塞させることを抑制することができる。すなわち、第1技術によると、凍結した液膜によって二次側通路が閉塞されるといった不具合が発生することを抑制することができる。
【0011】
また、第1技術によると、バルブ装置のサイズ(二次側通路の流路断面のサイズ)を小さくすることもできる。典型的に、流路断面のサイズが小さくなる程、二次側通路内に液膜が生じやすい。換言すると、流路断面のサイズを大きくすれば、二次側通路内に液膜が発生すること、及び、液膜が凍結して二次側通路が閉塞されることを抑制することができる。第1技術では、二次側通路に大気孔を設け、二次側通路内(流体より上流側の空間)が負圧になることを抑制することにより、液膜の発生、または、液膜の滞留を抑制する。そのため、第1技術では、二次側通路の流路断面のサイズを大きくする必要がなく、バルブ装置の小型化を実現することができる。なお、大気孔は、二次側通路の外壁部の開口が上流側、二次側通路の内壁部の開口が下流側に位置するように、二次側通路の厚み方向に対して傾斜していてよい。
【0012】
第2技術によると、二次側通路内に残存した流体を、二次側通路を構成する壁内(網目構造の網目内)に確保することができる。二次側通路内に液膜が発生しにくくなり、二次側通路が閉塞されることをさらに抑制することができる。
【0013】
第3技術によると、二次側通路内において、液膜の発生現象自体を抑制することができる。典型的に、液膜は、液膜の外周全体と通路の内周全体が接触して形成される。二次側通路に切欠きを設けることにより、液膜の外周の一部(切欠きに対応する部分)が、二次側通路の内壁と接触できなくなり、結果として液膜の生成を阻害することができる。
【0014】
第4技術においても、第3技術と同様に、二次側通路内において、液膜の発生現象自体を抑制することができる。また、第4技術では、第3技術と比較して二次側通路の外形をシンプルにすることができ(切欠き等の凹凸をなくすことができ)、バルブ装置を他の部品に組み付ける際、作業の安全性を向上させることができる。
【0015】
第5技術においても、二次側通路内において、液膜の発生現象自体を抑制することができる。上述したように、流路断面のサイズを大きくすれば、二次側通路内に液膜が発生することを抑制することができる。なお、流路増大部の上流側と流路増大部の境界に段差が設けられていてもよいし、流路増大部の上流側から流路増大部の間に流路面積が徐々に増大する傾斜面が設けられていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】バルブ装置を備えた燃料電池システムの概略図を示す。
図2】第1実施例のバルブ装置の断面図を示す(閉弁状態)。
図3】第1実施例のバルブ装置の断面図を示す(開弁状態)。
図4図2のIV-IV線に沿った断面図を示す。
図5】第1実施例のバルブ装置の変形例(二次側通路断面)を示す。
図6】第1実施例のバルブ装置の変形例(二次側通路断面)を示す。
図7】第1実施例のバルブ装置の変形例(二次側通路断面)を示す。
図8】第2実施例のバルブ装置の断面図を示す(閉弁状態)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(燃料電池システム)
図1を参照し、燃料電池システム100について説明する。燃料電池システムは、車両(燃料電池車)に好適に搭載される。燃料電池システム100は、燃料電池スタック90と、燃料電池スタック90に水素ガスを供給する水素系60と、燃料電池スタック90にエアガス(外気)を供給するエア系70と、コントローラ75を備えている。燃料電池システム100では、水素系60から供給された水素ガスと、エア系70から供給された酸素ガス(エアガス)を用いて発電を行う。
【0018】
水素系60は、水素ガスタンク62と、水素供給通路64と、水素排出通路68を備えている。減圧バルブ63が、水素供給通路64上に設けられている。水素ガスタンク62から水素供給通路64に供給された水素ガスは、減圧バルブ63によって調圧される。減圧バルブ63の下流にインジェクタ(図示省略)が設けられており、水素ガスタンク62から供給された水素ガスはインジェクタによって燃料電池スタック90に供給される。水素排出通路68上に、気液分離器66、水素排出バルブ69が設けられている。水素排出バルブ69は、バルブ装置の一例である。水素排出バルブ69は、気液分離器66より下流に設けられている。燃料電池スタック90への水素ガスの供給は、コントローラ75によって制御される。すなわち、コントローラ75は、水素供給通路64のオン・オフ、水素供給通路64を通過する水素ガスの流量を制御する。
【0019】
燃料電池スタック90から排出される水素ガス(水素オフガス)は、気液分離器66に供給される。気液分離器66では、水素オフガスに含まれる水素ガスが抽出される。気液分離器66で抽出された水素ガスは、水素循環ポンプ(図示省略)によって水素供給通路64に戻され、燃料電池スタック90に供給される。一方、気液分離器66で水素ガスが抽出された残分は、水素排出通路68に排出され、排出管84を通じて燃料電池システム100の外部に排出される。なお、排出管84は、後述するエア排出通路80にも接続されている。水素排出通路68の流量は水素排出バルブ69によって調整される。水素排出通路68のオン・オフ、及び、水素排出通路68を通過する水素オフガスの流量もコントローラ75によって制御される。なお、気液分離器66によって水素ガスが抽出された残分には、燃料電池システム100で生じた生成水が含まれている。
【0020】
エア系70は、コンプレッサ72と、エア供給通路74と、エア排出通路80と、バイパス通路78と、エア供給バルブ76と、エア排出バルブ50とバイパスバルブ79を備えている。コンプレッサ72は、エアガスとして外気をエア供給通路74に圧送する。なお、コンプレッサ72の上流にはエアクリーナ(図示省略)が配置されている。そのため、エア供給通路74には、清浄なエアガスが供給される。エア供給通路74は、燃料電池スタック90とコンプレッサ72を接続している。エア供給通路74上には、エア供給バルブ76が配置されている。具体的には、エア供給通路74は、コンプレッサ72とエア供給バルブ76を接続している上流側エア供給通路74aと、エア供給バルブ76と燃料電池スタック90を接続している下流側エア供給通路74bを備えている。コンプレッサ72を駆動し、エア供給バルブ76が上流側エア供給通路74aと下流側エア供給通路74bを導通させると、エアガスとして外気が燃料電池スタック90に供給される。なお、コンプレッサ72とエア供給バルブ76の間に、インタークーラー(図示省略)が配置されている。燃料電池スタック90には、インタークーラーで温度が調整された(冷却された)エアガスが供給される。
【0021】
エア排出通路80は、燃料電池スタック90に接続されており、燃料電池スタック90からエアオフガスを排出する。排出されたエアオフガスは、排出管84を通じて燃料電池システム100の外部に排出される。エア排出通路80上にはエア排出バルブ50が設けられている。エア排出バルブ50は、バタフライ弁であり、コントローラ75によって制御される。エア排出バルブ50の開度を調整することにより、エアオフガス量が調整される。エアオフガスには、燃料電池システム100で生じた生成水が含まれている。
【0022】
バイパス通路78は、エア供給通路74とエア排出通路80を接続している。具体的には、バイパス通路78の一端は上流側エア供給通路74aに接続されており、他端はエア排出バルブ50の下流でエア排出通路80に接続されている。バイパス通路78上にバイパスバルブ79が配置されており、バイパスバルブ79が開弁すると、エア供給通路74内のエアガスがエア排出通路80に供給される。
【0023】
(水素排出バルブの構造:第1実施例)
図2から図4を参照し、水素排出バルブ69について説明する。図2は水素排出バルブ69の閉弁時の状態を示し、図3は水素排出バルブ69の開弁時の状態を示している。水素排出バルブ69は、気液分離器66によって水素ガスが抽出された残分(生成水)の流量を調整する。水素排出バルブ69は、生成水が流通するハウジング30と、ハウジング30内の流路を開閉するバルブ部40を備えている。ハウジング30は、一次側通路38が形成されている流体導入部30aと、二次側通路32が形成されている流体導出部30bを備えている。流体導入部30aは、気液分離器66に固定されている。流体導出部30bには、水素排出通路68を構成する連結ホース(図示省略)が取り付けられる。また、一次側通路38と二次側通路32の間には、連通室20が設けられている。水素排出バルブ69の外部(気液分離器66)から水素排出バルブ69内(ハウジング30内)に導入された生成水は、一次側通路38、連通室20、二次側通路32を通過して水素排出バルブ69の外部(水素排出通路68)に導出される。
【0024】
一次側通路38の下流側端部には、第一導出部36が形成されている。第一導出部36は、一次側通路38の側壁に形成されており、連通室20に開口している。第一導出部36は、連通室20内に突出した形状を有しており、端面は後述する弁体18が着座する弁座34を構成している。第一導出部36は、流路面積が一次側通路38より小さく、オリフィス状である。第一導出部36が伸びる方向と一次側通路38が伸びる方向は異なる。第一導出部36は、一次側通路38が伸びる方向に対し、略直交する方向に伸びている。具体的には、第一導出部36は略鉛直方向に伸びており、一次側通路38は略水平方向に伸びている。そのため、一次側通路38に導入された生成水は、一次側通路38を水平方向に移動し、第一導出部36を上方に移動した後、連通室20に導出される。
【0025】
二次側通路32の上流側端部は、連通室20に連通している。そのため、二次側通路32は、連通室20、第一導出部36を介して、一次側通路38に連通している。連通室20から二次側通路32に導入された生成水は、二次側通路32を下方に移動し、二次側通路32の下流側端部に設けられた第二導出部33から、水素排出バルブ69の外部(水素排出通路68)に導出される。二次側通路32(流体導出部30b)には、大気孔24が設けられている。大気孔24は、二次側通路32の側壁を貫通し、外部(大気)と連通している。大気孔24は、二次側通路32の上流側に設けられており、二次側通路32が伸びる方向に対して傾斜している。具体的には、大気孔24の外側(大気側)開口が二次側通路32の上流側に位置し、大気孔24の内側(二次側通路32内側)開口が二次側通路32の下流側に位置している。
【0026】
バルブ部40は、ハウジング30の上方に固定されている。バルブ部40は、筒状の固定ベース4と、固定ベース4の外周に設けられている電磁コイル10と、固定ベース4の内側に設けられている吸引子8と、固定ベース4の内側で吸引子8と同軸に設けられているプランジャ14と、固定ベース4に固定されている取付板16と、プランジャ14及び取付板16に固定されている弁体18と、カバー6と、を備えている。
【0027】
電磁コイル10は、固定ベース4の外周面に設けられた凹部に配置されている。吸引子8の上側端部のサイズは、固定ベース4の筒内の断面サイズ(内径)より大きい。吸引子8の上側端部は、固定ベース4の上端面に接触し、固定ベース4の筒内と外部を隔離している。吸引子8の上側端部と固定ベース4の上端面の間には、Oリング2が設けられており、固定ベース4の筒内をシールしている。吸引子8は磁性体であり、その一部が、電磁コイル10の一部に対向している。
【0028】
吸引子8とプランジャ14の間に、コイルばね12が設けられている。コイルばね12は、吸引子8とプランジャ14の双方に固定されており、両者が接触することを防止している。プランジャ14は、取付板16の中央に設けられている貫通孔を通過している。プランジャ14の先端(吸引子8と反対側の端部)に、弁体18が固定されている。具体的には、弁体18の中央部18aが、プランジャ14の先端に嵌め込まれ、両者が固定されている。また、弁体18の端部18cは取付板16に固定されており、弁体18の中間部18bはプランジャ14の動作に合わせて変形可能である。プランジャ14の動作については後述する。なお、弁体18は、ゴム製であり、ダイヤフラム状である。カバー6は、取付板16の上面に固定されており、固定ベース4及び電磁コイル10を覆い、固定ベース4及び電磁コイル10を外部から隔離している。
【0029】
取付板16は、ハウジング30の上面に固定されている。取付板16をハウジング30に固定すると、弁体18が弁座34に対向する。より具体的には、図2に示すように、コイルばね12の付勢力(伸張力)によって弁体18の中央部18aが弁座34に押し付けられ(着座し)、第一導出部36が塞がれる。弁体18(中央部18a)が弁座34に着座している間、一次側通路38と二次側通路32は連通しておらず、生成水が水素排出バルブ69から導出されることはない。
【0030】
電磁コイル10に通電すると、吸引子8が励磁され、プランジャ14が吸引子8に引き付けられる。すなわち、プランジャ14が、吸引子8の励磁力によって吸引子8に引き付けられ、コイルばね12を圧縮しながら上方に移動する。図3に示すように、プランジャ14が上方に移動すると、プランジャ14とともに弁体18の中央部18aが上方に移動し、弁体18が弁座34から離れる。弁体18が弁座34から離れると、一次側通路38と二次側通路32が連通し、生成水が水素排出バルブ69から導出される。
【0031】
ここで、図4を参照し、二次側通路32の他の特徴を説明する。図4に示すように、二次側通路32(流体導出部30b)の下流側は、円筒状の中実構造である。図示は省略するが、二次側通路32の上流側(図2のIV-IV線より上方)も、中実構造である。なお、ここでいう「中実構造」とは、二次側通路32を構成している円筒状の流体導出部30bの内壁と外壁の間に材料が充填されていることを意味し、流体導出部30bの内側に材料が充填されて二次側通路32を塞いでいることを意味するものではない。
【0032】
水素排出バルブ69では、電磁コイル10への通電・非通電を切換えることにより、水素排出バルブ69からの生成水の導出・非導出を切換える。電磁コイル10への通電を非通電に切換えた直後は、弁体18は弁座34に着座している状態であるが、生成水は二次側通路32を通過している。そのため、従来の水素排出バルブの場合、連通室20と生成水の間(生成水の上流側空間)が負圧となり、生成水の下方への移動が阻害され、二次側通路32内に液膜が発生することが起こり得る。しかしながら、水素排出バルブ69では、二次側通路32の上流側に大気孔24が設けられている。そのため、弁体18が弁座34に着座した状態であっても、生成水の上流側が負圧になることを抑制することができる。二次側通路32に液膜が発生することを抑制できるので、例えば低温環境下であっても、二次側通路32内に氷結した液膜が発生することを抑制することができる。
【0033】
(水素排出バルブの利点)
以下、水素排出バルブ69の利点を列記する。
(利点1)大気孔24を設けることにより、二次側通路32を移動する生成水の上流側が負圧になることが抑制され、二次側通路32に液膜が発生することを抑制することができる。
(利点2)大気孔24は、外側開口が二次側通路32の上流側に位置し、内側開口が二次側通路32の下流側に位置している。その結果、外部から二次側通路32に導入された空気は、二次側通路32の上流側から下流側に向かって(生成水の移動方向に向かって)移動する。空気によって生成水に力が加わり、液膜が発生することをさらに抑制することができる。また、空気から生成水に力が加わることにより、生成水が二次側通路32から導出されやすくなるという利点も得られる。
(利点3)第一導出部36が連通室20内に突出している。すなわち、第一導出部36の上面(弁座34)は、連通室20の底面より上方に位置している。そのため、第一導出部36から連通室20内に導出された生成水は、弁座34の表面に残存せず、連通室20の底面に移動する。水素排出バルブ69がオフした際(弁体18が弁座34に着座した際)、弁体18と弁座34の間に生成水が残存することを抑制することができる。その結果、例えば低温環境下であっても、弁体18と弁座34が固着する(弁体18と弁座34の間の生成水が氷結して両者が固着する)ことを抑制することができる。
【0034】
(水素排出バルブの変形例)
以下、図5から図7を参照し、水素排出バルブ69の変形例について説明する。以下に説明する水素排出バルブ169~369は、二次側通路32を構成している流体導出部の形状が、水素排出バルブ69の流体導出部30bの形状と異なる。具体的には、二次側通路32の下流側(図2のIV-IV線より下方)の形状が、流体導出部30bと異なる(図4を比較参照)。図5から図7には、二次側通路32の下流側(水素排出バルブ69の図4に相当する部分)の形状のみを示している。
【0035】
(変形例1)
図5に示すように、水素排出バルブ169では、流体導出部130bの内壁に、二次側通路32が伸びる方向(生成水の移動方向)に沿った4個の溝41が形成されている。各溝41は、流体導出部130bの内壁に、互いに90度の間隔をあけて設けられている。各溝41は、二次側通路32の下端まで伸びている。なお、水素排出バルブ169において、流体導出部130b以外のハウジング130の構造は、ハウジング30と同一である(図2を参照)。溝41を設けることにより、二次側通路32の断面サイズが部分的に大きくなる。生成水が液膜化する際、液膜の外周の一部が流体導出部130bの溝41部分の内壁に接触できなくなり、液膜自体の生成を抑制することができる。水素排出バルブ169は、上記(利点1)~(利点3)に加え、液膜自体の生成自体を抑制することができるという利点が得られる(利点4)。なお、溝41の個数及び/又は間隔は、図5に示す個数(4個)及び間隔(90度間隔)に限定されず、適宜変更可能である。
【0036】
(変形例2)
図6に示すように、水素排出バルブ269では、流体導出部230bが網目構造である。二次側通路32内に網目構造が存在すると、生成水は網目内(流体導出部230b)の内部に確保される。その結果、二次側通路32内において、液膜自体の生成を抑制することができる。なお、水素排出バルブ269においても、流体導出部230b以外のハウジング230の構造は、ハウジング30と同一である(図2を参照)。水素排出バルブ269も、上記(利点1)~(利点4)の利点が得られる。なお、網目構造は、二次側通路32内において、大気孔24の下方に設けられていればよい。例えば、網目構造は、大気孔24下方の二次側通路32の全体に設けられていてもよく、大気孔24下方の二次側通路32の一部(流体導出部230b、あるいは、大気孔24と流体導出部230bの中間部分)に設けられていてもよい。網目構造は、大気孔24下方の二次側通路32であれば、任意の位置に設けることができる。
【0037】
(変形例3)
図7に示すように、水素排出バルブ369では、流体導出部330bの内壁に、二次側通路32が伸びる方向(生成水の移動方向)に沿った4個の切欠き42が形成されている。各切欠き42は、流体導出部330bの内壁に、互いに90度の間隔をあけて設けられている。各切欠き42は、二次側通路32の下端まで伸びている。水素排出バルブ369も、生成水が液膜化する際、液膜の外周の一部が流体導出部330bの内壁に接触できなくなり、液膜自体の生成を抑制することができる。なお、水素排出バルブ369においても、流体導出部330b以外のハウジング330の構造は、ハウジング30と同一である(図2を参照)。水素排出バルブ369も、上記(利点1)~(利点4)の利点が得られる。なお、切欠き42の個数及び/又は間隔は、図7に示す個数(4個)及び間隔(90度間隔)に限定されず、適宜変更可能である。
【0038】
(第2実施例)
図8を参照し、水素排出バルブ469について説明する。水素排出バルブ469は、水素排出バルブ69の変形例である。水素排出バルブ469について、水素排出バルブ69と共通する構造については、水素排出バルブ69と同一又は下二桁の数字が同一の参照番号を付すことにより、説明を省略する。
【0039】
水素排出バルブ469は、ハウジング430の構造が、ハウジング30と異なる(図2を比較参照)。ハウジング430は、一次側通路38が形成されている流体導入部430aと、二次側通路32が形成されている流体導出部430bを備えている。流体導出部430bの下方(大気孔24より下流側)には、二次側通路32の流路面積が他の部分より増大している流路増大部45が設けられている。すなわち、水素排出バルブ469では、二次側通路32の流路面積が、上流側と比較して下流側で大きくなっている。流路増大部45と他の二次側通路32の間には、段部44が設けられている。なお、水素排出バルブ469において、流体導出部430bの外形(外壁の形状)は、流体導出部30bの外形と同一である(図2を参照)。なお、二次側通路32(流路増大部45が設けられていない部分)と流路増大部45の間の流路面積は、段部44を設けて非連続的に変化させてもよいし(図8に示す形態)、傾斜等を形成して徐々に(連続的に)変化させてもよい。
【0040】
水素排出バルブ469は、二次側通路32の下流側の流路面積が大きくなっているので、二次側通路32の下流側で液膜自体の生成を抑制することができる。また、二次側通路32の下流側は、生成水の流速が低下しやすい。二次側通路32の流路面積を大きくすると、流速が遅くても、生成水が二次側通路32の流路全体を塞ぐことを抑制することができ、その結果、液膜発生を抑制することができる。水素排出バルブ469も、上記(利点1)~(利点4)の利点が得られる。
【0041】
(他の実施形態)
上記実施例では、二次側通路の下流側を構成している流体導出部に大気孔が設けられている排出バルブ(水素排出バルブ69~469)について説明した。しかしながら、各実施例の排出バルブは、エア排出バルブ50として利用することもできる(図1を参照)。
【0042】
第1実施例では、二次側通路の下流側を構成している流体導出部が中実の形態に加え、二次側通路の下流側を構成している流体導出部に溝が形成されている形態(変形例1)、二次側通路の下流側を構成している流体導出部が網目構造の形態(変形例2)、二次側通路の下流側を構成している流体導出部に切欠きが形成されている形態(変形例3)について説明した。変形例1~3の特徴は、第2実施例の水素排出バルブに適用することもできる。
【0043】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0044】
20:連通室
24:大気孔
30:ハウジング
32:二次側通路
33:第二導出部
34:弁座
36:第一導出部
38:一次側通路
69:バルブ装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8