(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057434
(43)【公開日】2024-04-24
(54)【発明の名称】冷却装置
(51)【国際特許分類】
F25B 1/00 20060101AFI20240417BHJP
F25B 45/00 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
F25B1/00 396R
F25B45/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164172
(22)【出願日】2022-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】521153168
【氏名又は名称】日本熱源システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154405
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 大吾
(74)【代理人】
【識別番号】100079005
【弁理士】
【氏名又は名称】宇高 克己
(72)【発明者】
【氏名】原田 克彦
(57)【要約】
【課題】確実に漏洩アンモニアを除害するとともに、各種機器への負担の少ない除害機能を有する冷却装置を提供する。
【解決手段】冷却装置は、アンモニアを冷媒とし、筐体2内に設けられた圧縮機と蒸発器とを含む。冷却装置は、漏洩アンモニア除害機能を有する。筐体2上部に設けられたアンモニア吸引手段11と、アンモニア吸引手段から供給されたアンモニアを含む気体に散水する散水手段12と、散水手段に水を供給する水供給手段13と、散水手段による散水に吸収されたアンモニアを回収する回収手段14と、散水手段によりアンモニアを除去した気体を筐体2内に戻す戻し手段15とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニアを冷媒とし、筐体内に設けられた圧縮機と蒸発器とを含む冷却装置において、
前記筐体上部に設けられたアンモニア吸引手段と、
前記アンモニア吸引手段から供給されたアンモニアを含む気体に散水する散水手段と、
前記散水手段に水を供給する水供給手段と、
前記散水手段による散水に吸収されたアンモニアを回収する回収手段と、
前記散水手段によりアンモニアを除去した気体を前記筐体内に戻す戻し手段と
を備えることを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
前記散水手段は、
下部からアンモニアを含む気体を吸気し、
上部からアンモニアを除去した気体を排気する
ことを特徴とする請求項1記載の冷却装置。
【請求項3】
前記散水手段は、フィルタを有する
ことを特徴とする請求項2記載の冷却装置。
【請求項4】
前記戻し手段は、前記筐体下部にアンモニアを除去した気体を戻す
ことを特徴とする請求項1記載の冷却装置。
【請求項5】
通常時に前記筐体内外の換気をおこなう換気手段を備え、
前記、換気手段はアンモニア漏洩時には停止する
ことを特徴とする請求項1記載の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニアを冷媒とする冷却装置に関し、特にアンモニア漏洩時の除害機能を有する冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷却サイクルの基本原理は、気体状の冷媒を圧縮し、その結果、昇圧昇温する第1工程と、放熱して凝縮させ液化させる第2工程と、減圧し膨張させ降温させる第3工程と、蒸発気化により熱を奪う第4工程とから形成される。
【0003】
第4工程においてシステム外との熱交換が行われる。例えば室内の熱を奪うことにより、室内は冷却される。熱を吸収した冷媒は第1工程により圧縮される。このサイクルが繰り返される。
【0004】
第1工程では圧縮機が用いられ、第4工程では蒸発器が用いられる。
【0005】
従来、冷媒としてフロン系ガスが用いられている。一方で、フロン系ガスは環境負荷が高く、自然冷媒が見直されている。自然冷媒にはアンモニア、CO2、プロパン、ブタンなどがある。本願ではアンモニア冷媒に着目する。
【0006】
アンモニアは高濃度であると人体に有毒な物質である。大気汚染防止法では「人の健康又は生活環境に係る被害が生ずるおそれがある物質」と定義される特定物質に指定されている。アンモニアの大気への排出は法律により厳格に規制されている。
【0007】
しかしながら、配管の経時変化や、地震等の災害により接続部の緩みや損傷が生じ、アンモニアガスが漏洩することがある。
【0008】
アンモニアは水へ溶解しやすい性質を有する。アンモニアが含まれる気体を水と接触させることにより、気体中のアンモニア濃度を低減できる。
【0009】
例えば、冷却装置のケーシング内部に直接水を散布し、気体中のアンモニア濃度を低下させたのち、当該気体を外部に排出する除害機能を有する冷却装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
冷却装置は、圧縮機や蒸発器を有する。当該機器は配管により連結されている。これらの機器等に直接散水されると、機器劣化の原因となる。なお、特許文献1の装置は山形状隔壁を備え、各種機器への直接散水の悪影響を低減しているが、本質的解決にはならない。
【0012】
また、低濃度であってもアンモニアの外部排出は好ましくない。
【0013】
冷却装置とは別途にスクラバ設備を設けることもある。スクラバ設備は、直接散水しないため、機器劣化リスクにならない。しかし、比較的高価である。また、低濃度であってもアンモニアを外部排出し、好ましくない。
【0014】
本願発明は、上記課題を解決するものであり、確実に漏洩アンモニアを除害するとともに、各種機器への負担の少ない除害機能を有する冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決する本願発明は、アンモニアを冷媒とし、筐体内に設けられた圧縮機と蒸発器とを含む冷却装置である。冷却装置は、漏洩アンモニア除害機能を有する。前記筐体上部に設けられたアンモニア吸引手段と、前記アンモニア吸引手段から供給されたアンモニアを含む気体に散水する散水手段と、前記散水手段に水を供給する水供給手段と、前記散水手段による散水に吸収されたアンモニアを回収する回収手段と、前記散水手段によりアンモニアを除去した気体を前記筐体内に戻す戻し手段とを備える。
【0016】
気体が循環するうちにアンモニアは確実に除去される。散水において常にアンモニアを含まない水が供給される。この点でも、アンモニアは確実に除去される。
【0017】
気体は循環し、筐体外に漏洩することはない。
【0018】
各種機器等に直接散水されることはなく、機器劣化のリスクもない。
【0019】
上記発明において好ましくは、前記散水手段は、下部からアンモニアを含む気体を吸気し、上部からアンモニアを除去した気体を排気する。
【0020】
これにより上昇流が形成される。上昇流に散水すると、アンモニアを含む水は落下し、アンモニアが除去された気体は上昇する。
【0021】
上記発明において好ましくは、前記散水手段は、フィルタを有する。
【0022】
フィルタにより水と気体の接触機会が増える。また気体に含まれるミストを除去できる。
【0023】
上記発明において好ましくは、前記戻し手段は、前記筐体下部にアンモニアを除去した気体を戻す。
【0024】
これにより、気体循環時のショートサーキットを防止する。
【0025】
上記発明において好ましくは、通常時に前記筐体内外の換気をおこなう換気手段を備え、前記、換気手段はアンモニア漏洩時には停止する。
【0026】
これにより、筐体内は密閉され、アンモニアの外部漏洩を防止できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の冷却装置は、漏洩アンモニアを除害できる。
【0028】
本発明の除害機能は、各種機器への負担が少ない。
【0029】
本発明の除害機能は、アンモニアを外部に漏らさない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【発明を実施するための形態】
【0031】
~構成~
図1は除害機能を有する冷却装置の全体構成図である。冷却装置本体1は筐体2内に設置されている。
【0032】
筐体2側面には吸気ファン3と排気ファン4とが設けられている。吸気ファン3と排気ファン4とは、通常時稼働して筐体2内の換気をおこない、アンモニア漏洩時は遮蔽される。
【0033】
図2は、冷却装置本体1の基本サイクルの概念図である。冷媒としてアンモニアが回路を循環する。
【0034】
冷却装置本体は、圧縮機と凝縮器と受液器と膨張弁と蒸発器とを有し、これらが配管により連結され、回路を形成する。
【0035】
冷却を終えた冷媒は圧縮機の上流側に供給される。圧縮機により高温高圧となる。
【0036】
凝縮器では圧力維持のまま冷却される。このとき、水冷と空冷がある。なお、本願においては、水冷でも空冷でもよいが、水冷の場合、本願特徴は顕著になる(詳細後述)。
【0037】
冷却により冷媒の一部は液体となり、受液器に溜められる。
【0038】
膨張弁により冷媒は膨張し、低温低圧となる。
【0039】
蒸発器において、冷媒は一部が蒸発する。このときブライン回路等と熱交換をおこない、ブライン回路の熱を奪う(潜熱)。その結果、ブライン回路は冷却される。なお、冷却対象はブライン回路に限定されない。
【0040】
冷却を終えた冷媒は再び圧縮機の上流側に供給される。
【0041】
図1に戻り、漏洩アンモニア除害機能について説明する。本願冷却装置は特徴的構成として漏洩アンモニア除害機能を有する。
【0042】
漏洩アンモニア除害機能は、吸引ファン11と、散水チャンバ12と、給水層13と、回収層14と、排気口15とを備える。
【0043】
吸引ファン11は筐体2上部に設けられている。吸引ファン11は通常時停止し、アンモニア漏洩時に稼働する。
【0044】
散水チャンバ12はダクトを介して吸引ファン11と連結している。
【0045】
図3は散水チャンバの詳細図である。散水チャンバは塔形状をしている。
【0046】
散水チャンバ12は、塔状下部に入口21と塔状上部に出口22とを有する。
【0047】
入口21はダクトを介して吸引ファン11に連結している。出口22はダクトを介して排気口15に連結している。
【0048】
散水チャンバ12底部には排水口23が設けられ、排水口23は配管を介して回収層14に連結している。
【0049】
散水チャンバ12の塔状中部には散水ノズル24が設けられている。散水ノズル24は複数段(図示例では2段)であることが好ましい。散水ノズル24は配管を介して給水層13に連結している。
【0050】
散水ノズル24の下方には充填材25が散水ノズル24に対応して設けられている。充填材25は、耐薬品性が高い繊維を不織布とし、積層して、立体形状としたフィルタである。したがって空間率と表面積が高い。
【0051】
散水ノズル24上方であって出口22手前にはセパレータ26が設けられている。セパレータ26は実質的に充填材25と同様のフィルタである。
【0052】
図1に戻り、給水層13と、回収層14と、排気口15とについて説明する。
【0053】
給水層13は配管を介して散水チャンバ12の散水ノズル24に水を供給する。給水層13は散水チャンバ12に必要な量の水を維持している。給水層13はセンサを有し、不足であれば常に補給し、非常時に備える。
【0054】
回収層14は散水チャンバ12の下方に設けられ、アンモニアを含む水を回収する。回収層14はセンサを有し、オーバーフローしないよう管理する。
【0055】
アンモニア回路のアンモニア量に応じて、法規により散水量が設定されており、給水層13や回収層14の容量も設定される。
【0056】
排気口15は筐体2下部に設けられ、散水チャンバ12を経てアンモニアを除去した気体を筐体2内に排気する。
【0057】
さらに、筐体2上部にはアンモニア漏洩センサ16が設置されている。冷却装置本体1には感震センサ17が設置されている。アンモニア漏洩センサ16からの情報や、感震センサ18からの情報は、制御装置18に送信される。
【0058】
停電時の除害設備稼働用に別途、非常用電源19を設けておく。停電時以外は通常電源を用いてもよい。
【0059】
なお、
図1例示では、散水チャンバ12を筐体外に設けているが、散水チャンバ12を筐体内に設けてもよい。散水チャンバ12を筐体外に設ける場合、既存の冷却装置に外付けできる。新設する場合も、筐体を小型化でき、配管を簡略化できる。
【0060】
冷却装置は安全弁放出管5を備えている。アンモニア回路内の圧力が上がり過ぎた場合、自動的にアンモニアを回収層14に放出する。
【0061】
~動作~
通常時、漏洩アンモニア除害機能は停止している。吸気ファン3と排気ファン4は稼働し、筐体2内を換気する。
【0062】
非常時の動作について説明する。アンモニア漏洩センサ16からの情報または感震センサ17からの情報が制御装置18に送信されると、制御装置18は非常時と判断する。
【0063】
この時、通常電源が利用できない場合、非常用電源19に切り替える。
【0064】
吸気ファン3と排気ファン4を停止させ、筐体2内を密閉状態とする。吸気ファン3と排気ファン4はシャッターを有していてもよい。
【0065】
一方で、吸引ファン11を稼働させる。空気1molの質量は約29gであるのに対し、アンモニア1molの質量は約17gであり、アンモニアは上方に集まる。吸引ファン11を介して、アンモニアを含む気体は、散水チャンバ12の入口21に導かれる。
【0066】
散水チャンバ12は塔形状であり、下方に気体入口21が設けられ、上方に気体出口22が設けられている。したがって、散水チャンバ12内には上昇流が形成される。
【0067】
給水層13から散水チャンバ12の散水ノズル24に水が供給される。
【0068】
【0069】
アンモニアを含む気体は、充填材25内の空隙を上昇する。この時、充填材25により、流速が低下する結果、散水との接触機会が増える。また、散水の一部は充填材25内に一時的に付着する。これにより、更に散水との接触機会が増える。充填材25内の水分はアンモニアを含みながら落下し、回収層14に回収される。
【0070】
散水ノズル24を複数段とすることで、更に散水との接触機会が増える。また、充填材25,25(25,26)により散水空間を形成できる。
【0071】
複数段の散水ノズル24および充填材25、更に、セパレータ26を経て、散水によりアンモニアが除去された気体は、散水チャンバ12の出口22に導かれる。
【0072】
【0073】
散水を経た気体はミスト状の水分を含んでいる。ミストはセパレータ26内に一時的に付着し、量が多くなると自然落下する。
【0074】
これにより、水分が除外された気体が排出される。
【0075】
ところで、筐体2内は密閉状態であり、吸引ファン11により筐体2内の気体は吸引されているため、筐体2内は陰圧になりやすい。
【0076】
アンモニアおよびミストが除外された気体は排気口15より排気され、筐体2内下部に戻される。
【0077】
完全にアンモニアを除去できなかった場合、気体に含まれるアンモニアは筐体2内を上昇し、再び吸引ファン11に吸引される。これによりショートサーキットを防止できる。
【0078】
すなわち、アンモニアを含む気体は筐体2内と散水チャンバ12を循環する。
【0079】
一方、給水層13から散水チャンバ12にアンモニアを含まない水が常に供給される(アンモニアを含む水は循環せず、回収層14に回収される)。
【0080】
言い換えると、給水層13と回収層14とは別個独立し、給水層13から回収層14への水の流れは一方向である。
【0081】
これにより、ほぼ完全にアンモニアを除去できる。
【0082】
アンモニア漏洩センサ16からの情報に基づき、制御装置18がアンモニア除去と判断すると、漏洩アンモニア除害機能を停止し、通常稼働に戻す。
【0083】
回収層14におけるアンモニアを含む水は中和処理され、アンモニアは除害化される。
【0084】
~効果~
本願漏洩アンモニア除害機能は、気体を循環させるとともに、アンモニアの含まれていない水を常に供給する。これにより、ほぼ完全にアンモニアを除去できる。
【0085】
本願漏洩アンモニア除害機能は、気体を循環させ、アンモニアを筐体外に漏洩させない。
【0086】
ところで、当該効果は水冷式凝縮器を用いた場合に顕著になる。すなわち、空冷式凝縮器を用いた場合には、当該箇所でのアンモニア漏洩に対し、筐体外への漏洩を完全に防ぐことはできないが、水冷式凝縮器を用いた場合には、筐体密閉できるため、筐体外への漏洩を完全に防ぐことができる。
【0087】
本願漏洩アンモニア除害機能は、気体を循環させる一方で、筐体2内に戻る気体はミストが除去されている。したがって、各種機器等に直接散水されることはなく、機器劣化のリスクもない。
【符号の説明】
【0088】
1 冷却装置本体
2 筐体
3 吸気ファン
4 排気ファン
11 吸引ファン
12 散水チャンバ
13 給水層
14 回収層
15 排気口
16 アンモニア漏洩センサ
17 感震センサ
18 制御装置
19 非常用電源
21 塔入口
22 塔出口
23 排水口
24 散水ノズル
25 充填材
26 セパレータ
【手続補正書】
【提出日】2023-12-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニアを冷媒とし、筐体内に設けられた圧縮機と蒸発器と凝縮器とを含む冷却装置において、
前記筐体上部に設けられたファンからなるアンモニア吸引手段と、
前記アンモニア吸引手段から供給されたアンモニアを含む気体に散水する散水手段と、
前記散水手段に水を供給する水供給手段と、
前記散水手段による散水に吸収されたアンモニアを回収する回収手段と、
前記散水手段によりアンモニアを除去した気体を前記筐体内に戻す戻し手段と
を備え、
前記凝縮器は水冷式であり、
前記水供給手段と前記回収手段は、別個独立しており、前記水供給手段から前記回収手段への水の流れは一方向であり
前記戻し手段は、ショートサーキットにならないように前記筐体下部であって前記アンモニア吸引手段から遠位にアンモニアを除去した気体を戻し、前記筐体内を循環させる
ことを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
前記散水手段は、
下部からアンモニアを含む気体を吸気し、
上部からアンモニアを除去した気体を排気する
ことを特徴とする請求項1記載の冷却装置。
【請求項3】
前記散水手段は、フィルタを有する
ことを特徴とする請求項2記載の冷却装置。
【請求項4】
通常時に前記筐体内外の換気をおこなう換気手段を備え、
前記、換気手段はアンモニア漏洩時には停止する
ことを特徴とする請求項1記載の冷却装置。