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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057444
(43)【公開日】2024-04-24
(54)【発明の名称】複数作業車の連携制御システム
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20240417BHJP
   G05D 1/43 20240101ALI20240417BHJP
   G05D 1/683 20240101ALI20240417BHJP
【FI】
A01B69/00 303Z
G05D1/02 N
G05D1/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164191
(22)【出願日】2022-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 正道
(72)【発明者】
【氏名】池内 伸明
(72)【発明者】
【氏名】今井 征典
(72)【発明者】
【氏名】小山 浩二
(72)【発明者】
【氏名】織田 湧平
【テーマコード(参考)】
2B043
5H301
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB20
2B043BA02
2B043BA09
2B043BB01
2B043BB03
2B043BB14
2B043DA17
2B043DC03
2B043EA32
2B043EA40
2B043EB16
2B043EB17
2B043EC02
2B043EC12
2B043EC15
2B043ED16
5H301BB01
5H301CC10
5H301QQ08
(57)【要約】
【課題】本発明は、圃場に植生する穀物の穀粒収穫をコンバインで行い、その収穫跡地をトラクタの耕耘装置で耕耘して圃場を更新する作業を効率よく短時間で行える作業システムとすることを課題とする。
【解決手段】コンバイン1の機体後部にターゲット2を設け、収穫作業を行うコンバイン1のターゲット2に向かって一定間以内に近づかないようにトラクタ3を走行させながら耕耘装置5を駆動して走行させる作業車両の自動制御システムとする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンバイン(1)の機体後部にターゲット(2)を設け、収穫作業を行うコンバイン(1)のターゲット(2)に向かって一定間隔以内に近づかないようにトラクタ(3)を走行させながらその耕耘装置(5)を駆動して走行させる作業車両の自動制御システム。
【請求項2】
コンバイン(1)の刈幅(W1)がトラクタ(3)の装着耕耘装置(5)の耕耘幅(W2)よりも狭い場合は、コンバイン(1)が一回目の周回刈取を終わらせるまでトラクタ(3)の走行を待機させ、2回目の周回刈取がトラクタ(3)の前を通過してからトラクタ(3)をコンバイン(1)に追従させることを特徴とする請求項1に記載の作業車両の自動制御システム。
【請求項3】
コンバイン(1)が周回刈取でコーナー旋回を開始する際にトラクタ(3)へ旋回信号を出力することで、その旋回信号を受けたトラクタ(3)が走行を一時的に停止させることを特徴とする請求項1に記載の作業車両の自動制御システム。
【請求項4】
トラクタ(3)が地図データで既耕耘地を記憶し、コンバイン(1)が既耕耘地を走行した場合に、その走行跡をトラクタ(3)に記憶し、トラクタ(3)が記憶した走行跡に沿って再度耕耘走行を行うことを特徴とする請求項1に記載の作業車両の自動制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同一圃場内で複数の作業車が互いの作業走行を邪魔することなく連携して短時間で作業を終了させるよう自動的に制御する連携制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
同一圃場内を複数の作業車で作業を行うことで作業効率を向上させることが考えられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、二台のトラクタで圃場を耕耘することが考えられているが、第一トラクタが圃場を耕耘している間に、第二トラクタが圃場に近づき、第一トラクタの作業が終わるのを圃場の入口で待機して引き続いて作業を行う第一の作業システムが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、同一圃場の作業域を分担して二台のコンバインで収穫作業を行う第二の作業システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021―182887号公報
【特許文献2】特開2020―178714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記第一の作業システムでは、圃場の入口で待っている第二トラクタは第一トラクタの作業が終了するまで作業を開始することが出来ず、同一圃場で二台のトラクタでそれぞれ分担する作業を終わらせるには長時間が必要になる。
【0007】
また、前記第二の作業システムでは、作業能力の違うコンバインで同時に作業を終了する圃場の分担作業領域の設定が難しく、同時に作業を開始しても終了時間が一致するとは限らない。
【0008】
本発明は、圃場に植生する穀物の穀粒収穫をコンバインで行い、その収穫跡地をトラクタの耕耘装置で耕耘して圃場を更新する作業を効率よく短時間で行える作業システムとすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
【0010】
請求項1の発明は、コンバイン1の機体後部にターゲット2を設け、収穫作業を行うコンバイン1のターゲット2に向かって一定間以内に近づかないようにトラクタ3を走行させながら耕耘装置5を駆動して走行させる作業車両の自動制御システムとする。
【0011】
請求項2の発明は、コンバイン1の刈幅W1がトラクタ3に装着した耕耘装置5の耕耘幅W2よりも狭い場合は、コンバイン1が一回目の周回刈取を終わらせるまでトラクタ3を待機させ、2回目の周回刈取がトラクタ3の前を通過してからコンバイン1に追従させることを特徴とする請求項1に記載の作業車両の自動制御システムとする。
【0012】
請求項3の発明は、コンバイン1が周回刈取でコーナー旋回を開始する際にトラクタ3へ旋回信号を出力することで、その旋回信号を受けたトラクタ3が走行を一時的に停止させることを特徴とする請求項1に記載の作業車両の自動制御システムとする。
【0013】
請求項4の発明は、トラクタ3が地図データで既耕耘地を記憶し、コンバイン1が既耕耘地を走行した場合に、その走行跡をトラクタ3に記憶し、トラクタ3が記憶した走行跡に沿って再度耕耘走行を行うことを特徴とする請求項1に記載の作業車両の自動制御システムとする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明で、まず、コンバイン1で圃場に植生する米や麦等の穀物を刈り取って穀粒を収穫しながら、その収穫跡地をトラクタ3が追従走行して耕耘装置5で耕耘するので、圃場の穀物収穫と耕耘作業が略同時に行われ、圃場の更新を迅速に行える。
【0015】
請求項2の発明で、コンバイン1は圃場を四角形の内回り軌跡で走行しながら収穫作業を行うが、コンバイン1の刈幅W1がトラクタ3の耕耘幅W2よりも狭いと刈取跡地をトラクタ3の耕耘装置5が耕耘できないので、コンバイン1が2回目の周回刈取に移ってからトラクタ3を追従させることで、トラクタ3の耕耘装置5で圃場の畦際を残さずに耕耘できる。
【0016】
請求項3の発明で、コンバイン1が周回刈取でコーナー旋回を行う際には、コンバイン1が前後進を行いながら直角に方向変換して未刈地に進むので時間を要すが、旋回信号を受けてトラクタ3は停止して待機するので、コンバイン1にトラクタ3が衝突することが無い。
【0017】
請求項4の発明で、トラクタ3は既耕耘地を地図データに記憶しているので、コンバイン1が収穫穀粒を穀粒タンクに移し替えたり収穫終了で圃場から脱出したりする際に既耕耘地を走行することになるが、トラクタ3がその走行跡を記憶し、再度耕耘することで圃場全体が耕耘される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態にかかる、圃場内で作業を行っているコンバインとトラクタの平面図である。
図2】同上コンバインの刈幅と耕耘装置の耕耘幅が違う場合の平面図である。
図3】同上の、旋回中のコンバインとトラクタの平面図である。
図4】同上のコンバインがコーナーで旋回を開始する前の平面図である。
図5】同上のトラクタの制御装置が保持する圃場の地図データである。
図6】本発明の実施形態にかかる圃場の地図データに描く走行路の実施例図である。
図7】本発明の実施形態にかかる未刈地から圃場外へ脱出する場合の平面図である。
図8】本発明の実施形態にかかる最後の未刈地をコンバインが旋回して刈り取る場合の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に示す実施例を参照しながら説明する。
【0020】
図1は、圃場内で作業を行っているコンバイン1とトラクタ3を示し、コンバイン1は機体の後部に後方へ向けてリフレクターからなるターゲット2を設け、トラクタ3は機体後部に耕耘装置5を装着し、制御装置4で走行装置を制御してターゲット2に向かって一定の車体間隔以下に近づかないように耕耘装置5を駆動しながら走行する。ターゲット2は光や音を発信しりトラクタ3側から発光して光を反射するもので良く、ターゲット2がトラクタ3の機体中心に来るように走行させる。また、ターゲット2は左右移動調整可能にすることで、トラクタ3の追従位置を変更できる。
【0021】
なお、コンバイン1が停止するとトラクタ3も停止するが、停止時間が長いとエンジンも停止し、コンバイン1が移動を開始するとトラクタ3も追従を開始する。
【0022】
図2は、圃場内で作業を行っているコンバイン1とトラクタ3の別実施例で、コンバイン1の刈幅W1と耕耘装置5の耕耘幅W2を作業開始前に比較し、刈幅W1が耕耘幅W2よりも狭いとその差分W3をトラクタ3の制御装置4が認識して、トラクタ3をコンバイン1の中心より既刈地側へ差分W3だけずらして走行させることで、耕耘装置5が未刈穀稈を巻き込まないようにする。なお、ターゲット2を差分W3だけ横にずらして作業を開始しても良い。その際に、コンバイン1の一回目周回の刈取が終了するまで待ち、2回目周回刈取が始まると耕耘装置5の端を畦内周に沿わせてトラクタ3を走行させると耕耘残しが生じない。
【0023】
図3は、旋回中のコンバイン1とトラクタ3を示し、トラクタ3は走行を停止して待機する。その後、コンバイン1が旋回を開始するとターゲット2はトラクタ3の方向から外れ、コンバイン1が前後に走行しながら略直角に向きを変える。このコンバイン1の旋回中にはトラクタ3が停止することで、コンバイン1の機体とトラクタ3の機体が接触することが防がれる。なお、トラクタ3がコンバイン1から離れている場合は、トラクタ3がターゲット2を見失うと停止するようにしても良いが、トラクタ3がコンバイン1に接近している場合を考えると、旋回信号を発信する方が確実である。
【0024】
トラクタ3がコンバイン1の旋回地を耕耘する場合は、排藁が多くなるために往復して2回耕耘すると良い。また、コンバイン1が停止した位置では排藁が多くなるためにトラクタ3は走行速度を落とすか耕耘装置5の耕耘回転を速めて丁寧に耕耘する。
【0025】
図4は、コンバイン1が周回するためにコーナーで旋回を開始する前に、コンバイン1からトラクタ3の制御装置4に旋回開始信号を送り、トラクタ3の走行を停止させる。コンバイン1がターゲット2を見失っても慌てることなく停止するので、コンバイン1が前後進しても衝突しない。また、旋回開始前にターゲット2を隠してトラクタ3を停止させても良い。
【0026】
コンバイン1の側面に別の側面ターゲット2を設け、この側面ターゲット2がトラクタ3の正面に来るとコンバイン1の旋回が終了したとしてトラクタ3が前進してコンバイン1に向かって旋回を開始すると良い。
【0027】
なお、コンバイン1にターゲット2を設けることなく、コンバイン1とトラクタ3がそれぞれ測位装置を持ち、その保持する地図データで作業軌跡を共有して、トラクタ3がコンバイン1の作業軌跡を一定間隔離して追跡するようにすることも出来る。この際にコンバイン1がコーナーを旋回する軌跡は追尾しないで、コンバイン1の軌跡とトラクタ3の直線走行線が交わる位置までトラクタ3を走行させて旋回する。
【0028】
図5は、トラクタ3の制御装置4が保持する圃場Hの地図データで、圃場中心H0から圃場入口H1までコンバイン1の走行路K1を描き、この走行路K1をトラクタ3が耕耘しないで残し、圃場中心H0で収穫作業が終了したコンバイン1が圃場Hから脱出する際に走行路K1を通ることで耕された耕耘地を走行しなくても良いようし、走行路K1はその後にトラクタ3を走行させて耕耘する。
【0029】
図6は、走行路K1の別実施例で、圃場中心H0から畦に向かって直角に走行路K1を描き、そこから畦と並行に圃場入口H1に向かって走行路K1を描いている。
【0030】
図7は、圃場Hの収穫が終わらず、未刈地M1から圃場H外へ脱出する場合を示し、コンバイン1とトラクタ3は走行路K1を通って圃場入口H1へ移動する。
【0031】
なお、走行路K1はトラクタ3の地図データに残るが、これをコンバイン1の制御装置に送信してコンバイン1を走行させると良い。
【0032】
図8は、圃場Hの最後の残り未刈地M1をコンバイン1が旋回して刈り取る場面で、旋回を開始する前にコンバイン1からトラクタ3の制御装置4に信号を送ると、トラクタ3は刈取跡地から既刈地側へ少し移動してコンバイン1の走行幅を確保し、その後元の位置に戻ってコンバイン1が刈り取った跡地を走行して耕耘する。
【0033】
トラクタ3の耕耘地を地図データに記憶し、コンバイン1が圃場から退出した後で、地図データの未耕耘地を耕耘するようにすると、圃場が完全に耕耘される。
【符号の説明】
【0034】
1 コンバイン
2 ターゲット
3 トラクタ
5 装耕耘置
W1 刈幅
W2 耕耘幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8