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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057453
(43)【公開日】2024-04-24
(54)【発明の名称】内燃機関のシリンダヘッド
(51)【国際特許分類】
   F02F 1/24 20060101AFI20240417BHJP
   F01M 9/08 20060101ALI20240417BHJP
   F01M 1/06 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
F02F1/24 G
F01M9/08
F01M1/06 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164207
(22)【出願日】2022-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金井 拓也
(72)【発明者】
【氏名】岡村 翔
【テーマコード(参考)】
3G024
3G313
【Fターム(参考)】
3G024AA13
3G024BA23
3G024FA07
3G313AA05
3G313AA07
3G313AB02
3G313BB26
3G313BD13
3G313FA06
(57)【要約】
【課題】集合排気ポートを有する内燃機関のシリンダヘッドにおいて、動弁室に導入されたオイルをオイル戻し孔に流入し易くして、オイルの循環性を向上できる内燃機関のシリンダヘッドを提供すること。
【解決手段】シリンダヘッド4において、排気上側ウォータジャケット19の上壁19aは、気筒列方向L1と交差する前後方向L2で燃焼室天井壁8A、8B、8C側からオイル戻し孔4cに向かうにつれてシリンダヘッド4の下面4fとの距離が拡大するように傾斜している。シリンダヘッド4は、排気上側ウォータジャケット19の上壁19aを下方に窪ませた凹部23を有し、凹部23は、シリンダヘッド4の下面4fと略平行で、かつ、オイル戻し孔4cが開口する底面23aを有する。底面23aは、オイル戻し孔4cから燃焼室天井壁8A、8B、8C側に延びている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気筒列方向に沿って配置され、複数の燃焼室のそれぞれ一部を構成する複数の燃焼室天井壁と、
前記燃焼室天井壁の上方に配置され、吸気弁と排気弁とを駆動する動弁機構が収容される動弁室と、
前記複数の燃焼室にそれぞれ連通する複数の排気ポートおよび前記複数の排気ポートを集合させる排気集合部を有する集合排気ポートと、
前記集合排気ポートの上方を覆う排気上側ウォータジャケットと、
前記複数の排気ポートと前記排気集合部とに囲まれる領域に配置され、隣接する排気ポートを仕切る仕切壁と、
前記仕切壁に配置され、その上端が前記動弁室に開口するオイル戻し孔とを有する内燃機関のシリンダヘッドであって、
前記排気上側ウォータジャケットの上壁は、前記気筒列方向と交差する方向で前記燃焼室天井壁側から前記オイル戻し孔に向かうにつれて前記シリンダヘッドの下面との距離が拡大するように傾斜しており、
前記排気上側ウォータジャケットの上壁を下方に窪ませた凹部を有し、
前記凹部は、前記シリンダヘッドの下面と略平行で、かつ、前記オイル戻し孔が開口する底面を有し、
前記底面は、前記気筒列方向と交差する方向で前記オイル戻し孔から前記燃焼室天井壁側に延びていることを特徴とする内燃機関のシリンダヘッド。
【請求項2】
前記仕切壁に、前記シリンダヘッドをシリンダブロックに締結するヘッドボルトが挿通されるヘッドボルト挿通孔が形成されており、
前記ヘッドボルト挿通孔は、前記気筒列方向と交差する方向で前記オイル戻し孔よりも前記燃焼室天井壁側に配置されており、
前記凹部の前記底面は、前記ヘッドボルト挿通孔の周辺から前記オイル戻し孔の周辺に延びていることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関のシリンダヘッド。
【請求項3】
前記排気弁は、前記排気ポートを開閉するように前記燃焼室毎に一対配置されており、
前記動弁室の底壁に、前記排気弁の弁軸をそれぞれ支持する排気弁ガイド用ボス部が前記気筒列方向に隙間を空けて複数対配置されており、
前記凹部の前記底面は、連絡部を有し、
前記連絡部は、前記隙間のうち、前記凹部と隣接する位置にある一つの隙間と前記凹部の前記底面とを連絡していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の内燃機関のシリンダヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のシリンダヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
動弁室に導入されるオイルを動弁室から排出するオイル戻し孔を有する内燃機関のシリンダヘッドが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
このシリンダヘッドは、シリンダ列に沿って配置された複数の燃焼室から延びる排気ポートを、シリンダヘッドの内部に形成した排気集合部で一体に集合させてなる集合排気ポートを備えており、隣接する燃焼室から延びる一対の排気ポートおよび排気集合部によって囲まれた領域にオイル落し通路が形成されている。
【0004】
これにより、シリンダヘッドの排気側に集合排気ポートと干渉することなくオイル通路を形成することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-161129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のような集合排気ポートにおいては、排気ガスを円滑に流すために、排気ガスの流れ方向に沿って下流側に向かうにつれて排気通路の断面積を上方に拡大したものが知られている。
【0007】
このような構成を有する集合排気ポートにおいて、集合排気ポートの上壁や、集合排気ポートの上方に配置されるウォータジャケットの上壁が燃焼室側からオイル戻し孔の上端に向かって上昇する上り傾斜面となる。このため、オイルが燃焼室側からオイル戻し孔に流入し難くなるおそれがあり、オイルの循環性が悪化するおそれがある。
【0008】
本発明は、上記のような事情に着目してなされたものであり、集合排気ポートを有する内燃機関のシリンダヘッドにおいて、動弁室に導入されたオイルをオイル戻し孔に流入し易くして、オイルの循環性を向上できる内燃機関のシリンダヘッドを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、気筒列方向に沿って配置され、複数の燃焼室のそれぞれ一部を構成する複数の燃焼室天井壁と、前記燃焼室天井壁の上方に配置され、吸気弁と排気弁とを駆動する動弁機構が収容される動弁室と、前記複数の燃焼室にそれぞれ連通する複数の排気ポートおよび前記複数の排気ポートを集合させる排気集合部を有する集合排気ポートと、 前記集合排気ポートの上方を覆う排気上側ウォータジャケットと、前記複数の排気ポートと前記排気集合部とに囲まれる領域に配置され、隣接する排気ポートを仕切る仕切壁と、前記仕切壁に配置され、その上端が前記動弁室に開口するオイル戻し孔とを有する内燃機関のシリンダヘッドであって、前記排気上側ウォータジャケットの上壁は、前記気筒列方向と交差する方向で前記燃焼室天井壁側から前記オイル戻し孔に向かうにつれて前記シリンダヘッドの下面との距離が拡大するように傾斜しており、前記排気上側ウォータジャケットの上壁を下方に窪ませた凹部を有し、前記凹部は、前記シリンダヘッドの下面と略平行で、かつ、前記オイル戻し孔が開口する底面を有し、前記底面は、前記気筒列方向と交差する方向で前記オイル戻し孔から前記燃焼室天井壁側に延びていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
このように上記の本発明によれば、集合排気ポートを有する内燃機関のシリンダヘッドにおいて、動弁室に導入されたオイルをオイル戻し孔に流入し易くして、オイルの循環性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の一実施例に係るシリンダヘッドを備えた内燃機関の縦断面図(図2のI-I方向矢視断面に相当)である。
図2図2は、本発明の一実施例に係るシリンダヘッドの平面図である。
図3図3は、本発明の一実施例に係るシリンダヘッドの排気側の側面図(前側面図)である。
図4図4は、図3のIV-IV方向矢視断面図である。
図5図5は、図2のV-V方向矢視断面図である。
図6図6は、図5のVI-VI方向矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施の形態に係る内燃機関のシリンダヘッドは、気筒列方向に沿って配置され、複数の燃焼室のそれぞれ一部を構成する複数の燃焼室天井壁と、燃焼室天井壁の上方に配置され、吸気弁と排気弁とを駆動する動弁機構が収容される動弁室と、複数の燃焼室にそれぞれ連通する複数の排気ポートおよび複数の排気ポートを集合させる排気集合部を有する集合排気ポートと、 集合排気ポートの上方を覆う排気上側ウォータジャケットと、複数の排気ポートと排気集合部とに囲まれる領域に配置され、隣接する排気ポートを仕切る仕切壁と、仕切壁に配置され、その上端が動弁室に開口するオイル戻し孔とを有する内燃機関のシリンダヘッドであって、排気上側ウォータジャケットの上壁は、気筒列方向と交差する方向で燃焼室天井壁側からオイル戻し孔に向かうにつれてシリンダヘッドの下面との距離が拡大するように傾斜しており、排気上側ウォータジャケットの上壁を下方に窪ませた凹部を有し、凹部は、シリンダヘッドの下面と略平行で、かつ、オイル戻し孔が開口する底面を有し、底面は、気筒列方向と交差する方向でオイル戻し孔から燃焼室天井壁側に延びている。
【0013】
これにより、本発明の一実施の形態に係る内燃機関のシリンダヘッドは、集合排気ポートを有する内燃機関のシリンダヘッドにおいて、動弁室に導入されたオイルをオイル戻し孔に流入し易くして、オイルの循環性を向上できる。
【実施例0014】
以下、本発明の一実施例に係る内燃機関のシリンダヘッドについて、図面を用いて説明する。
図1から図6は、本発明の一実施例に係る内燃機関のシリンダヘッドを示す図である。図1から図6において、上下前後左右方向は、車両に設置された状態の内燃機関を基準とし、車両の前後方向を前後方向、車両の左右方向を左右方向、車両の上下方向(車両の高さ方向)を上下方向とする。
【0015】
まず、構成を説明する。
図1において、車両1のエンジンルーム1Aには内燃機関としてのエンジン2が設置されている。
【0016】
エンジン2は、シリンダブロック3と、シリンダブロック3の上部に設けられたシリンダヘッド4と、シリンダヘッド4の上部に設けられたシリンダヘッドカバー5と、シリンダブロック3の下部に設けられた図示しないオイルパンとを備えている。
【0017】
図2に示すように、シリンダブロック3には気筒3A、3B、3Cが設けられており、気筒3A、3B、3Cは、車両1の左右方向に並んで配置されている。気筒3A、3B、3Cの配列方向(左右方向)を気筒列方向L1という。
【0018】
本実施例のエンジン2は、気筒3A、3B、3Cが左右方向に3つ並んで配置された横置き3気筒エンジンであり(図4参照)、気筒軸Sが鉛直方向に対して前側に傾斜して設置されている。
【0019】
気筒3A、3B、3Cにはそれぞれピストン3Dが収容されており(図1に気筒3Bのピストンのみを示す)、ピストン3Dは、図示しないコネクティングロッドを介して図示しないクランク軸に連結されている。ピストン3Dは、気筒内で往復運動することにより、コネクティングロッドを介してクランク軸を回転させる。
【0020】
図2に示すように、シリンダヘッド4は、右側壁4Aと、左右方向で右側壁4Aに対向する左側壁4Bと、右側壁4Aと左側壁4Bとを連結する前壁4Cと、右側壁4Aと左側壁4Bとを連結し、気筒列方向L1と直交する前後方向L2で前壁4Cに対向する後壁4Dとを有する。
【0021】
図4に示すように、シリンダヘッド4には吸気ポート6a、6b、6cが設けられている。吸気ポート6a、6b、6cは、それぞれ気筒3A、3B、3Cに連通しており、吸入空気を気筒3A、3B、3Cに導入する。
【0022】
シリンダヘッド4には集合排気ポート7が設けられている。集合排気ポート7は、3対の排気ポート7a、7b、7cと排気集合部7Aとを有する。
【0023】
排気ポート7a、7b、7cは、それぞれ気筒3A、3B、3Cに連通しており、排気集合部7Aは、排気ポート7a、7b、7cの下流端を集合して纏めている。
【0024】
気筒3A、3B、3Cからそれぞれの排気ポート7a、7b、7cに排出される排気ガスは、排気集合部7Aに集合される。
【0025】
排気集合部7Aの下流端には排気ガス出口7dが設けられており、排気集合部7Aに集合された排気ガスは排気ガス出口7dから図示しない触媒コンバータに排出される。
【0026】
具体的には、図3に示すように、シリンダヘッド4の前壁4Cには排気フランジ4Fが設けられており、排気フランジ4Fには触媒コンバータの上流開口端が接続されている。排気フランジ4Fの内方には排気ガス出口7dが開口しており、排気集合部7Aは、排気ガス出口7dを通して触媒コンバータの上流開口端に連通している。
【0027】
なお、下流とは排気ガスの流れる方向に対して下流を意味し、上流とは排気ガスの流れる方向に対して上流を意味する。排気ポート7a、7b、7cに対して排気集合部7Aは下流側に位置し、排気集合部7Aに対して排気ポート7a、7b、7cは上流側に位置する。
【0028】
図1に示すように、エンジン2には3つの燃焼室8(図示1つ)が設けられており、燃焼室8は、気筒列方向L1に沿って配置されている。
【0029】
燃焼室8は、シリンダヘッド4の底部に形成された燃焼室天井壁8A、8B、8C(図2図4参照)と気筒3A、3B、3Cとピストン3Dの上面とによって囲まれた空間であり、混合気が燃焼される部位である。これにより、シリンダヘッド4の燃焼室天井壁8A、8B、8Cは、燃焼室8の一部を構成する。
【0030】
図1図2に示すように、シリンダヘッド4には3つの点火プラグ挿通壁4Gが設けられており、点火プラグ挿通壁4Gは燃焼室天井壁8A、8B、8Cから上方に延びている。点火プラグ挿通壁4Gには点火プラグ挿通孔4gが形成されており、点火プラグ挿通孔4gには図示しない点火プラグが挿通されている。
【0031】
点火プラグは、燃焼室8に臨む図示しない電極を備えており、電極によって燃焼室8に導入された混合気に点火する。
【0032】
図1に示すように、燃焼室8の上方には動弁室9が設けられている。動弁室9は、シリンダヘッド4とシリンダヘッドカバー5とによって囲まれる空間から構成されており、動弁室9には、吸気弁10と、排気弁11と、吸気弁10と排気弁11とを駆動する動弁機構12とが収容されている。
【0033】
吸気弁10と排気弁11は、それぞれ燃焼室8毎に1対設けられており、シリンダヘッド4には6個の吸気弁10と6個の排気弁11とが配置されている。つまり、シリンダヘッド4にはそれぞれ3対の吸気弁10と排気弁11とが配置されている。
【0034】
吸気弁10と排気弁11は、それぞれバルブステム10A、11Aと、バルブステム10A、11Aの下端部に設けられたバルブヘッド10B、11Bとを有する。
【0035】
バルブステム10A、11Aは、動弁室9に収容されている。バルブステム10Aは、気筒軸Sに対して後側に傾斜しており、バルブステム11Aは、気筒軸Sに対して前側に傾斜している。本実施例のバルブステム11Aは、弁軸を構成する。
【0036】
図2に示すように、燃焼室天井壁8A、8B、8Cの上方において動弁室9の底壁9Aにはそれぞれ一対の吸気弁ガイド用ボス部13と排気弁ガイド用ボス部14が複数対設けられている(図2参照)。
【0037】
吸気弁ガイド用ボス部13と排気弁ガイド用ボス部14は、それぞれ燃焼室8毎に一対設けられている。図6に示すように、一対の排気弁ガイド用ボス部14は、それぞれ気筒列方向L1に隙間31a、31b、31cを空けて配置されている。
【0038】
本実施例の排気弁ガイド用ボス部14は、合計6個設けられており、燃焼室8毎(燃焼室天井壁8A、8B、8C毎)に1対設けられている。
【0039】
なお、一対の吸気弁ガイド用ボス部13も気筒列方向L1に隙間を空けて配置されているが、図6では図示を省略する。
【0040】
バルブステム10A、11Aは、それぞれ吸気弁ガイド用ボス部13と排気弁ガイド用ボス部14に摺動自在に支持されている。
【0041】
つまり、バルブステム10Aは、バルブヘッド10Bが吸気ポート6a、6b、6cを開閉自在となるように吸気弁ガイド用ボス部13に設けられており、バルブステム11Aは、バルブヘッド11Bが排気ポート7a、7b、7cを開閉自在となるように排気弁ガイド用ボス部14に設けられている。
【0042】
図1に示すように、動弁機構12は、吸気カム軸15、吸気カム15A、吸気側ロッカアーム16、排気カム軸17、排気カム17Aおよび排気側ロッカアーム18を有する。
【0043】
吸気カム軸15および排気カム軸17は、図示しないカムハウジングとシリンダヘッド4とに回転自在に支持されており、左右方向に平行に延びている。
【0044】
吸気カム15Aは、吸気カム軸15と一体で回転するように吸気カム軸15に固定されており、吸気弁10毎に設けられている。排気カム17Aは、排気カム軸17と一体で回転するように排気カム軸17に固定されており、排気弁11毎に設けられている。
【0045】
吸気側ロッカアーム16は、延びる方向の中央部に吸気カム15Aが接触している。吸気側ロッカアーム16の延びる方向の一端部は、吸気カム軸15の上端部に当接しており、吸気側ロッカアーム16の延びる方向の他端部は、図示しないハイドロリックラッシュアジャスタ(HLA)に当接している。
【0046】
吸気カム15Aの回転に伴って吸気カム15AがHLAを支点にして吸気側ロッカアーム16を揺動させると、吸気弁10は、吸気ポート6a、6b、6cを開閉するように吸気弁ガイド用ボス部13に支持されて上下方向に摺動する。
【0047】
排気側ロッカアーム18は、延びる方向の中央部に排気カム17Aが接触している。排気側ロッカアーム18の延びる方向の一端部は、排気カム軸17の上端部に当接しており、排気側ロッカアーム18の延びる方向の他端部は、図示しないHLAに当接している。
【0048】
排気カム17Aの回転に伴って排気カム17AがHLAを支点にして排気側ロッカアーム18を揺動させると、排気弁11は、排気ポート7a、7b、7cを開閉するように排気弁ガイド用ボス部14に支持されて上下方向に摺動する。
【0049】
図1図5に示すように、シリンダヘッド4には排気上側ウォータジャケット19、排気下側ウォータジャケット20および燃焼室側ウォータジャケット21が設けられている。
【0050】
排気上側ウォータジャケット19は、集合排気ポート7の上方を覆っており、6個の排気弁ガイド用ボス部14と前後方向L2に並ぶように車幅方向に延びている(図6参照)。
【0051】
排気下側ウォータジャケット20は、集合排気ポート7の下方を覆っており、集合排気ポート7を挟んで排気上側ウォータジャケット19に対向している。燃焼室側ウォータジャケット21は、3つの燃焼室8の上方に位置するように燃焼室天井壁8A、8B、8Cの上方を覆っている。
【0052】
これらウォータジャケット19、20、21にはシリンダブロック3に設けられた図示しない冷却水通路から冷却水が導入される。
【0053】
シリンダブロック3の冷却水通路には図示しないウォータポンプから冷却水が導入されるようになっており、シリンダブロック3の気筒3A、3B、3Cを冷却した冷却水は、シリンダブロック3の冷却水通路からウォータジャケット19、20、21に導入される。
【0054】
ウォータジャケット19、20、21は、シリンダヘッド4の高温部位である集合排気ポート7や燃焼室天井壁8A、8B、8Cを冷却する。
【0055】
図1に示すように、集合排気ポート7の上壁7eと排気上側ウォータジャケット19の上壁19aは、気筒列方向L1と交差(直交)する方向である前後方向L2で燃焼室天井壁8B(燃焼室天井壁8A、8Bも含む)側から前壁4Cに向かうにつれてシリンダヘッド4の下面4fとの距離が拡大するように傾斜している。
【0056】
図1に示すように、本実施例の集合排気ポート7は、排気ガスの流れ方向に沿って燃焼室8から下流側に向かうにつれて通路断面積が上方に徐々に拡大している。これにより、排気ガスを排気ポート7a、7b、7cから排気集合部7Aを通して排気ガス出口7dに円滑に流すことができる。
【0057】
排気上側ウォータジャケット19の上壁19aは、動弁室9の底壁9Aの一部を構成しており、図2の上面視において右側壁4A、左側壁4B、前壁4Cおよび後壁4Dに囲まれる壁部は、動弁室9の底壁9Aである。つまり、動弁室9の底壁9Aは、排気上側ウォータジャケット19の上壁19aを含んでいる。
【0058】
図4に示すように、シリンダヘッド4には仕切壁4H、4Iが設けられている。仕切壁4Hは、排気ポート7a、7bと排気集合部7Aとに囲まれる領域に配置されており、隣接する排気ポート7aと排気ポート7bとを仕切っている。
【0059】
仕切壁4Iは、排気ポート7b、7cと排気集合部7Aとに囲まれる領域に配置されており、隣接する排気ポート7bと排気ポート7cとを仕切っている。
【0060】
図4において、排気集合部7Aは、仕切壁4Hの前端部4hと仕切壁4Iの前端部4iと排気ガス出口7dによって囲まれる領域から構成されており、排気ポート7aは、気筒3Aに連通し、かつ排気弁11によって開閉される一対の排気ポートから排気集合部7Aまで延びている。
【0061】
排気ポート7bは、気筒3Bに連通し、かつ排気弁11によって開閉される一対の排気ポートから排気集合部7Aまで延びており、排気ポート7cは、気筒3Cに連通し、かつ排気弁11によって開閉される一対の排気ポートから排気集合部7Aまで延びている。
【0062】
シリンダヘッド4にはオイル戻し孔4a、4b、4cが設けられている。オイル戻し孔4a、4bは、動弁室9の底壁9Aを貫通するように底壁9Aに設けられており、上端が動弁室9に開口している。
【0063】
オイル戻し孔4cは、仕切壁4Iを上下方向に貫通するように仕切壁4Iに設けられており、オイル戻し孔4cの上端4uは動弁室9に開口している(図5参照)。
【0064】
オイル戻し孔4a、4b、4cの下端はシリンダブロック3に設けられた図示しないオイル通路に連通しており、シリンダブロック3のオイル通路は、オイルパンに連通している。つまり、動弁室9とオイルパンとは、オイル戻し孔4a、4b、4cとオイル通路とを介して連通している。
【0065】
吸気カム15Aと吸気側ロッカアーム16の接触面や、排気カム17Aと排気側ロッカアーム18の接触面等の潤滑部位には吸気カム軸15や排気カム軸17を通してオイルが供給される。
【0066】
これら潤滑部位を潤滑したオイルは、動弁室9の底壁9Aに落下した後、オイル戻し孔4a、4b、4cからシリンダブロック3のオイル通路を通してオイルパンに戻される。
【0067】
つまり、オイルパンに貯留されるオイルは、オイルポンプによって潤滑部位を潤滑した後、オイルパンに戻されるようになっており、オイルは、エンジン2の内部を循環している。
【0068】
図4に示すように、動弁室9の底壁9Aにはヘッドボルト挿通孔4d、4eが設けられている。ヘッドボルト挿通孔4dは、左右方向で吸気ポート6a、6b、6cを挟むように底壁9Aに設けられており、底壁9Aを貫通している。
【0069】
ヘッドボルト挿通孔4eは、左右方向で排気ポート7a、7b、7cを挟むように底壁9Aと仕切壁4H、4Iとに設けられており、底壁9Aと仕切壁4H、4Iとを貫通している。
【0070】
ヘッドボルト挿通孔4d、4eにはヘッドボルト22が挿通されており(図4図5参照)、ヘッドボルト22は、シリンダヘッド4をシリンダブロック3に締結している。
【0071】
具体的には、図5に示すように、ヘッドボルト22は、上方からヘッドボルト挿通孔4d、4eに挿通されており、ねじ部22Aの下部がシリンダブロック3に締結されている。ヘッドボルト22のヘッド部22Bは、動弁室9に位置している。
【0072】
図4に示すように、ヘッドボルト挿通孔4eは、前後方向L2でオイル戻し孔4cよりも燃焼室天井壁8A、8B、8C側に配置されている。換言すれば、オイル戻し孔4cは、前後方向L2でヘッドボルト挿通孔4eに対して燃焼室天井壁8A、8B、8Cと反対側に配置されている。
【0073】
本実施例のシリンダヘッド4において、排気上側ウォータジャケット19の上壁19aは、前後方向L2で燃焼室天井壁8A、8B、8C側からオイル戻し孔4cに向かうにつれてシリンダヘッド4の下面4fとの距離が拡大するように傾斜している。
【0074】
このため、動弁室9の底壁9Aに落下したオイルは、燃焼室天井壁8A、8B、8C側からオイル戻し孔4c側に流入し難い。
【0075】
このことを解消するために、本実施例のシリンダヘッド4は、燃焼室天井壁8A、8B、8C側からオイル戻し孔4c側にオイルが流入し易いように凹部23が設けられている。
【0076】
図5図6に示すように、シリンダヘッド4は、排気上側ウォータジャケット19の上壁19aを下方に窪ませた凹部23を有する。
【0077】
凹部23は、排気上側ウォータジャケット19の上壁19aよりも下方に位置する底面23aを有し、気筒列方向L1と交差する前後方向L2にて燃焼室天井壁8A、8B、8C側から排気上側ウォータジャケット19の内方に膨出している(図6参照)。つまり、凹部23の前端部は前後方向L2で排気上側ウォータジャケット19に入り込んでいる。
【0078】
凹部23の底面23aは、シリンダヘッド4の下面4fと略平行に形成されており、底面23aにはオイル戻し孔4cが開口している。シリンダヘッド4の下面4fは、平面に形成されている。
【0079】
凹部23の底面23aと排気上側ウォータジャケット19の上壁19aとは傾斜面23cによって連絡されており、オイル戻し孔4cは傾斜面23c側に位置している。
【0080】
凹部23の底面23aは、前後方向L2でオイル戻し孔4cから燃焼室天井壁8A、8B、8C側に延びている。オイル戻し孔4cに対して燃焼室天井壁8A、8B、8C側にはヘッドボルト挿通孔4eが設けられており、凹部23の底面23aは、ヘッドボルト挿通孔4eの周辺からオイル戻し孔4cの周辺に延びている。
【0081】
凹部23の底面23aには連絡部23bが形成されており、連絡部23bは、底面23aから凹部23と隣接する位置にある一つの隙間31bに延びている。
【0082】
具体的には、排気弁ガイド用ボス部14は、左右方向で燃焼室天井壁8A、8B、8Cに対応して3対配置されており、連絡部23bは、左右方向の中央部に配置されて凹部23と隣接する排気弁ガイド用ボス部14の隙間31bと凹部23の底面23aとを連絡している。
【0083】
次に、本実施例のエンジン2のシリンダヘッド4の効果を説明する。
本実施例のシリンダヘッド4は、気筒列方向L1に沿って配置され、燃焼室8のそれぞれ一部を構成する燃焼室天井壁8A、8B、8Cと、燃焼室天井壁8A、8B、8Cの上方に配置され、吸気弁10および排気弁11を駆動する動弁機構12が収容される動弁室9と、複数の燃焼室8にそれぞれ連通する排気ポート7a、7b、7cおよび排気ポート7a、7b、7cを集合させる排気集合部7Aを有する集合排気ポート7とを備えている。
【0084】
また、シリンダヘッド4は、集合排気ポート7の上方を覆う排気上側ウォータジャケット19と、排気ポート7a、7b、7cと排気集合部7Aとに囲まれる領域に配置され、隣接する排気ポート7a、7b、7cを仕切る仕切壁4H、4Iと、仕切壁4Iに配置され、その上端4uが動弁室9に開口するオイル戻し孔4cと有する。
【0085】
これに加えて、排気上側ウォータジャケット19の上壁19aは、気筒列方向L1と交差する前後方向L2で燃焼室天井壁8A、8B、8C側からオイル戻し孔4cに向かうにつれてシリンダヘッド4の下面4fとの距離が拡大するように傾斜している。
【0086】
これにより、排気上側ウォータジャケット19の上壁19aは、燃焼室天井壁8A、8B、8Cに対してオイル戻し孔4cが上方に位置するので、動弁室9に導入される潤滑用のオイルが燃焼室天井壁8A、8B、8C側からオイル戻し孔4cに流れ難くなる。
【0087】
本実施例のシリンダヘッド4によれば、排気上側ウォータジャケット19の上壁19aを下方に窪ませた凹部23を有し、凹部23は、シリンダヘッド4の下面4fと略平行で、かつ、オイル戻し孔4cが開口する底面23aを有し、底面23aは、前後方向L2でオイル戻し孔4cから燃焼室天井壁8A、8B、8C側に延びている。
【0088】
これにより、図6に示すように、動弁室9に導入されたオイルを凹部23によって燃焼室天井壁8A、8B、8C側からオイル戻し孔4cに円滑に流入させることができる(オイルO1参照)。このため、動弁室9に導入されたオイルを、シリンダヘッド4からオイル戻し孔4cおよびシリンダブロック3のオイル通路を通してオイルパンに積極的に戻すことができる。
【0089】
このように、集合排気ポート7を有するシリンダヘッド4において、動弁室9に導入されたオイルをオイル戻し孔4cに流入し易くして、オイルの循環性を向上できる。
【0090】
また、図6に示すように、動弁室9に導入されたオイルを、燃焼室天井壁8A、8B、8Cから前方に離れた排気上側ウォータジャケット19側から凹部23に向かって案内して凹部23に流入させ、オイル戻し孔4cに流入させることができる(オイルO2参照)。
【0091】
また、本実施例のシリンダヘッド4によれば、仕切壁4Iに、シリンダヘッド4をシリンダブロック3に締結するヘッドボルト22が挿通されるヘッドボルト挿通孔4d、4eが形成されており、ヘッドボルト挿通孔4eは、前後方向L2でオイル戻し孔4cよりも燃焼室天井壁8A、8B、8C側に配置されている。
【0092】
これに加えて、底面23aは、ヘッドボルト挿通孔4eの周辺からオイル戻し孔4cの周辺に延びている。
【0093】
これにより、動弁室9に導入された後、ヘッドボルト挿通孔4eの周辺部に流入したオイルを、ヘッドボルト22のヘッド部22Bに邪魔されずオイル戻し孔4cに流入できる。
【0094】
つまり、燃焼室天井壁8B、8C側からヘッドボルト挿通孔4eの周辺部に流入したオイルO1(図6参照)を、燃焼室天井壁8B、8C側からヘッドボルト22のヘッド部22Bの周囲を通してオイル戻し孔4cに流入させることができる。
【0095】
この結果、動弁室9に導入されたオイルをオイル戻し孔4cに流入し易くして、オイルの循環性をより効果的に向上できる。
【0096】
また、本実施例のシリンダヘッド4によれば、排気弁11は、排気ポート7a、7b、7cを開閉するように燃焼室8毎に一対配置されており、動弁室9の底壁9Aに、一対の排気弁11のバルブステム11Aをそれぞれ支持する複数対の排気弁ガイド用ボス部14が気筒列方向L1に隙間31a、31b、31cを空けて配置されている。
【0097】
凹部23の底面23aは、連絡部23bを有し、連絡部23bは、凹部23と隣接する排気弁ガイド用ボス部14の隙間31bと凹部23の底面23aとを連絡している。
【0098】
これにより、燃焼室天井壁8B側から一対の排気弁ガイド用ボス部14の間の隙間31bを通過したオイルO3(図6参照)を、オイル戻し孔4cに導入できる。
【0099】
つまり、凹部23の底面23aを、連絡部23bによって一対の排気弁ガイド用ボス部14の間の隙間31bを通して燃焼室天井壁8A、8B、8Cに連絡することができ、動弁室9に導入されたオイルを燃焼室天井壁8A、8B、8C側からオイル戻し孔4cに流入し易くして、オイルの循環性をより効果的に向上できる。
【0100】
これに加えて、凹部23および連絡部23bを潤滑油の回収に必要な範囲に限定したため、排気上側ウォータジャケット19が過度に縮小して集合排気ポート7の容積が減少することを防止できる。
【0101】
このため、排気上側ウォータジャケット19による集合排気ポート7の冷却性が低下することを防止しつつオイルの循環性をより効果的に向上できる。
【0102】
また、動弁室9に導入された残りのオイルは、オイル戻し孔4a、4cからシリンダブロック3のオイル通路を通してオイルパンに戻される。
【0103】
図6において、O1,O2およびO2,O3で示すオイルの流れを示す矢印は、オイルO1、オイルO2、オイルO3にそれぞれ連続して凹部23の底面23aを流れるオイルを示している。
【0104】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0105】
2...エンジン(内燃機関)、3...シリンダブロック、4c...オイル戻し孔、4e...ヘッドボルト挿通孔、4f...下面(シリンダヘッドの下面)、4I...仕切壁、4u...上端(オイル戻し孔の上端)、7...集合排気ポート、7A...排気集合部、7a,7b,7c...排気ポート、8...燃焼室、8A,8B,8C...燃焼室天井壁、9...動弁室、9A...底壁(動弁室の底壁)、10...吸気弁、11...排気弁、11A...バルブステム(弁軸)、12...動弁機構、14...排気弁ガイド用ボス部、19...排気上側ウォータジャケット、19a...上壁(排気上側ウォータジャケットの上壁)、22...ヘッドボルト、23...凹部、23a...底面(凹部の底面)、23b...連絡部、31a、31b、31c...隙間、L1...気筒列方向、L2...前後方向(気筒列方向と交差する方向)
図1
図2
図3
図4
図5
図6