(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057458
(43)【公開日】2024-04-24
(54)【発明の名称】畳用フローリング材
(51)【国際特許分類】
E04F 15/16 20060101AFI20240417BHJP
E04F 15/18 20060101ALI20240417BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
E04F15/16 A
E04F15/18 C
E04F15/18 602F
B32B27/00 E
E04F15/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164220
(22)【出願日】2022-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 寛史
(72)【発明者】
【氏名】氏居 真弓
【テーマコード(参考)】
2E220
4F100
【Fターム(参考)】
2E220AA13
2E220AA51
2E220BA01
2E220BB03
2E220EA04
2E220GA02X
2E220GA03X
2E220GA07X
2E220GA22X
2E220GA24X
2E220GB32X
2E220GB33X
2E220GB37X
2E220GB39X
2E220GB45X
2E220GB48X
4F100AK03A
4F100AK04C
4F100AK51C
4F100AP02B
4F100AR00A
4F100AR00B
4F100AR00C
4F100AR00D
4F100AT00B
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10D
4F100DJ01C
4F100GB08
4F100HB00A
4F100JC00D
4F100JD04D
4F100JK11C
4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】カビやダニの発生を抑制し、且つ施工性の高い畳用フローリング材を提供する。
【解決手段】板状部材からなる基材1と、基材1の一方の面に設けられた化粧材2と、基材1の他方の面に設けられたクッション材3と、クッション材3の基材1とは逆側の面に設けられた裏面シート層4と、が一体に積層され、裏面シート層4は、防湿機能と防カビ機能と防ダニ機能とのうちの少なくともいずれか一つを有する。基材1と裏面シート層4とが一体に形成されているため、防湿、防カビ、防ダニ等の機能を有するシートを別途フローリング材の下に敷設する場合に比較して、容易に敷設することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状部材からなる基材と、
当該基材の一方の面に設けられた化粧材と、
前記基材の他方の面に設けられたクッション材と、
当該クッション材の前記基材とは逆側の面に設けられた裏面シート層と、が一体に積層され、
前記裏面シート層は、防湿機能と防カビ機能と防ダニ機能とのうちの少なくともいずれか一つを有することを特徴とする畳用フローリング材。
【請求項2】
前記基材の厚みは、4mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の畳用フローリング材。
【請求項3】
前記クッション材はポリエチレン又はポリウレタン系の発泡樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載の畳用フローリング材。
【請求項4】
前記クッション材の厚みは、5mm以上10mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の畳用フローリング材。
【請求項5】
前記化粧材はオレフィンシートからなることを特徴とする請求項1に記載の畳用フローリング材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畳用フローリング材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、床材として、基材の、化粧材を設けた側の面とは逆側の面に樹脂チップ成形体を含む衝撃吸収材を備えることで、耐久性及び衝撃吸収性を向上させるようにしたもの(例えば、特許文献1参照。)、板材の上下に緩衝材を設けることで、軽量性、衝撃緩和性、座り心地、及び踏み心地を向上させるようにした衝撃緩和床材(例えば、特許文献2参照。)が提案されている。
【0003】
また、表面側に硬質層、床面側に軟質層を有する構成とすることで床材の総厚を薄く保ちながら、耐荷重性と遮音性とを持たせるようにした床材(例えば、特許文献3参照。)、さらに、複数のパネル材を嵌合させて用いる際に、嵌合部分の隙間を目立たなくし、また嵌合が外れ難い構造を有する床用パネル材等も提案されている(例えば、特許文献4参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-204180号公報
【特許文献2】特開2016-216928号公報
【特許文献3】特開2014-211064号公報
【特許文献4】特開2014-074269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、畳の部屋を簡単にフローリングに変更する方法として、木目調等の絵柄が印刷されたウッドカーペットを、畳の上に敷設する方法が知られている。
ウッドカーペット等を畳の上に敷いた場合、カビやダニが発生する可能性があるため、防カビ、防ダニシート等を畳とウッドカーペットとの間に配置することが提案されている。
【0006】
しかしながら、防カビシート等がずれたり縒れたりしないように、防カビシート等の上にウッドカーペットを敷設することは手間がかかる。また、ウッドカーペットの上に、重い物や一点に荷重がかかる物を置くと、ウッドカーペットが変形しその下の畳が変形したり、畳の縁によって不陸が生じたりする可能性がある。これらを防ぐためには、ウッドカーペットに厚みを持たせることが考えられるが、ウッドカーペットに厚みを持たせると、部屋の間取りに合わせてフローリング材を切断する際に例えばのこぎり等を用いる必要があり、容易に切断することができない。そのため、カビやダニの発生を防止すると共に、容易に切断することができ、施工性の高い畳用のフローリング材が望まれていた。
【0007】
本発明は、上記未解決の課題に着目してなされたものであり、カビやダニの発生を抑制し、且つ施工性の高い畳用フローリング材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、板状部材からなる基材と、基材の一方の面に設けられた化粧材と、基材の他方の面に設けられたクッション材と、クッション材の基材とは逆側の面に設けられた裏面シート層と、が一体に積層され、裏面シート層は、防湿機能と防カビ機能と防ダニ機能とのうちの少なくともいずれか一つを有する、畳用フローリング材が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、防湿機能、防カビ機能、及び防ダニ機能のうちの少なくともいずれか一つを発揮することの可能な畳用フローリング材が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る畳用フローリング材の構成の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。
また、以下に示す実施の形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0012】
<畳用フローリング材の構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る畳用フローリング材10の構成の一例を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、畳用フローリング材10は、基材1と、基材1の一方の面に設けられた化粧材2と、基材1の他方の面に設けられたクッション材3と、クッション材3の、基材1とは逆側の面に設けられた裏面シート層4と、を備える。
【0013】
基材1は、例えば合板で形成され、その厚みは4mm以下である。なお、基材1の厚みは、例えば3mm、又は2mm、又は1mmであってもよく、4mm以下であればよい。
化粧材2は、基材1の意匠効果を高めるものであって、例えばオレフィンシート等のプラスチック樹脂をシート状にしたシート状部材からなる。化粧材2は、例えば貼着することにより基材1の一方の面に固定される。なお、化粧材2は、オレフィンシートに限るものではなく、例えば天然木を薄く切削した突板や、紙に木目模様等を印刷した化粧紙、合成樹脂シートに木目模様等を印刷したり木目導管模様状等のエンボスを施したりした化粧シート等であってよい。
【0014】
クッション材3は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンビニルアセテート、エチレン- 酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ポリウレタン、クロロプレン等のゴムなどが一般的であり、用途に合わせて適宜選択すればよい。さらにクッション材3は、例えば発泡樹脂等、気泡を構成材料の中に持つことが好ましく、特に独立気泡を設けた構成が好ましいが無気泡のゴム状弾性体でも圧縮硬さによっては使用できる。クッション材3の圧縮硬さ(JIS-K6767による)は0.02Mpa以上1Mpa以下程度が好適である。クッション材3の厚みとしては、5mm以上10mm以下程度が好適である。
【0015】
裏面シート層4は、防湿シート、防カビシート、防ダニシートのうちのいずれか一つであってもよく、また、防湿機能、防カビ機能、及び防ダニ機能のうちの複数の機能を有するシート状部材であってよい。裏面シート層4は、例えば貼着することによりクッション材3の基材1とは逆側の面に固定される。
【0016】
<効果>
(1)本発明の一実施形態に係る畳用フローリング材10では、クッション材3の基材1とは逆側の面に裏面シート層4を設けている。そのため、裏面シート層4として、防湿効果、防カビ効果及び防ダニ効果の少なくともいずれか一つの機能を持たせることによって、防湿、防カビ、防ダニ効果等を得ることができる。そのため、畳用フローリング材10を畳の上に敷設した場合に、畳にカビやダニが生じることを防止することができる。
ここで、仮に、防ダニシート等とフローリング材とが別体となっている場合、これら防ダニのシート等とフローリング材とを敷設する際に、両者がずれる可能性があり、防ダニシート等とフローリング材とをずれや縒れ等が生じることなく畳の上に重ねて敷設することは手間がかかる。
【0017】
これに対し、本実施形態にかかる畳用フローリング材10は、裏面シート層4は、畳用フローリング材10と一体となっているため、裏面シート層4のずれ等を考慮する必要はなく、容易に敷設することができる。
また、カビやダニを防止する方法として、前記特許文献1のように、フローリング材の畳側に設けた衝撃吸収材に防カビや防ダニ剤、また、防湿剤等を混入させる方法も考えられるが、衝撃吸収材に防カビや防ダニ剤等を混入させた場合、防カビ防ダニ剤は衝撃吸収材等フローリング材内部に浸透し易いためフローリング材内部での防カビ防ダニ効果を得ることができるものの、衝撃吸収材内に混入された防カビ防ダニ剤等は、畳には浸透しにくく、畳の表面や内部での防カビ防ダニ効果を期待することができない。
【0018】
これに対し、本実施形態にかかる畳用フローリング材10では、畳と接する面に裏面シート層4を設け、畳側に対しても畳用フローリング材10に対しても防カビや防ダニ剤が浸透するようにしている。そのため、畳の表面等において防湿や防カビ、防ダニ効果を得ることができると共に、畳用フローリング材10自体における、防湿や防カビ、防ダニ効果も得ることができる。
【0019】
(2)畳用フローリング材10ではクッション材3を設けている。そのため、畳表面にかかる荷重を分散させることができる。その結果、畳用フローリング材10上において、仮に一点に荷重が集中するような場合でも、畳上の一点に荷重が集中することを抑制することができる。そのため、畳上の一点に荷重が集中すること等によって、畳が変形することを抑制することができる。
また、畳の縁部分等、畳に凹凸がある箇所に畳用フローリング材10を敷設した場合、裏面シート層4及びクッション材3を介して基材1が設けられることになる。そのため、裏面シート層4及びクッション材3が変形することによって、畳の凹凸が吸収される。そのため、畳上に凹凸等があったとしても、その凹凸により畳用フローリング材10の表面が変形することが抑制され畳を保護することができ、不陸隠蔽性を高め、畳の凹凸が畳用フローリング材10の表面に現れることを防止することができる。
【0020】
また、本実施形態では、合板等からなる基材1の裏面(畳側の面)にクッション材3を設けている。ここで、クッション材3の特性や厚みによっては、畳用フローリング材10上に立った場合、フローリングとしては弾力性があり過ぎて違和感を与える可能性がある。しかしながら、本実施形態では、合板等からなる基材1の裏面(畳側の面)に、ポリエチレンやポリウレタン系等の発泡樹脂からなり、その厚みが5mm以上10mm以下程度のクッション材を用いているため、違和感を与えることを抑制すると共に、畳の保護を行うことができる。
【0021】
(3)畳用フローリング材10を構成する合板等で形成される基材1は4mm以下である。また、化粧材2はオレフィンシート等から形成され、クッション材3は、5mm以上10mm以下程度の発泡樹脂等で形成され、裏面シート層4は防湿シート等から構成される。クッション材3は、多少厚みがあるものの発泡樹脂等で形成されるためカッター等によって比較的切断し易く、同様に化粧材2及び裏面シート層4もカッター等によって切断し易い。そして、基材1は、合板で形成されるが4mm以下であるため、カッター等によって切断することができる。したがって、畳用フローリング材10も、カッター等により切断することができる。つまり、畳用フローリング材10はカッター等によって切断することができ、従来のようにのこぎり等を使わなくとも容易に切断することができる。そのため、例えば畳用フローリング材10を敷設する際に、畳用フローリング材10の大きさを調整することも容易に行うことができ、使い勝手がよい。
【0022】
(4)特に、賃貸住宅等の場合、畳部屋をフローリングにすることは難しいため、畳の上にウッドカーペット等を置くことで簡易的にフローリングを実現することが望まれる。この場合、賃貸住宅であるため、畳を傷つけることは極力防止すべきである。上述のように、本実施形態にかかる畳用フローリング材10では、耐荷重性や不陸隠蔽性を高めることができ、また、別途防湿シートや、カビやダニ防止シート等を別途設けなくとも、防湿やカビ防止、ダニ防止効果を得ることができる。さらに、畳用フローリング材10はカッターで切断することができるため、間取り等に応じて畳用フローリング材10の形状を容易に調整することができる。そのため、賃貸住宅等、畳を傷つけることを防止すべき状況下において、簡易的に畳をフローリングに変更する場合に、効果的である。
【実施例0023】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
試験用の畳用フローリング材10として、実施例1及び2を作成し、比較用として比較例1及び2のフローリング材を作成した。
【0024】
(実施例1)
基材1として厚さ4mmの合板を用い、化粧材2としてオレフィンシートを用いた。また、クッション材3として、ポリエチレン系発泡樹脂を用い、厚みは5mmとした。裏面シート層4として防湿シート(凸版印刷株式会社製VSシート)を用いた。
そして、基材1の一方の面にオレフィンシート(化粧材2)を貼着し、基材1の他方の面にクッション材3を貼着し、さらに、クッション材3の基材1とは逆側の面に裏面シート層4を貼着した。これにより、試験体としての畳用フローリング材10を作成した。
【0025】
(実施例2)
裏面シート層4として、VSシートに替えて、防カビ及び防ダニシートを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、試験体としての畳用フローリング材10を作成した。
(実施例3)
基材1として厚さ2.5mmの合板を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、試験体としての畳用フローリング材10を作成した。
(実施例4)
クッション材3の厚みを10mmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、試験体としての畳用フローリング材10を作成した。
【0026】
(比較例1)
クッション材3を設けなかったこと以外は、実施例1と同様にして試験体としてのフローリング材を作成した。
(比較例2)
化粧材2として、厚さ4mmの合板に替えて、厚さ15mmの合版を用いたこと以外は、実施例1と同様にして試験体としてのフローリング材を作成した。
(比較例3)
クッション材3の厚みを1mmとしたこと以外は、実施例1と同様にして試験体としてのフローリング材を作成した。
【0027】
<評価>
作成した実施例1~4の畳用フローリング材10及び比較例1~3のフローリング材について、耐荷重性、不陸隠蔽性、及び切断性を評価した。
耐荷重性は、試験体に2.5kg/100cm2の荷重を加え、荷重除去後1日、5日、7日後の試験体及び畳の復元率を確認した。
畳及び試験体にへこみが無い場合を「○」、へこみが在る場合を「×」とした。
不陸隠蔽性は、同一の試験体2枚を用い、1mm以上5mm以下の1mm毎の段差毎に、2枚の試験体間の浮きを確認した。
全ての段差において、2枚の試験体間に浮きが無い場合を「○」、いずれかの段差で浮きがある場合を「×」とした。
切断性は、カッターで試験体を切断し切断検証を行った。
カッターでの切断が可能である場合を「○」、切断ができない場合を「×」とした。
評価結果を表1に示す。
【0028】
【0029】
表1から、クッション材3を設けることで、耐荷重性を発現することができること、クッション材3の厚みが5mm以上であればさらに不陸隠蔽性を発現することができること、及び基材1が厚みが4mm以下の合板であれば、切断性を得ることができること、を確認できた。
【0030】
なお、本発明は、例えば、以下のような構成をとることができる。
(1)
板状部材からなる基材と、
当該基材の一方の面に設けられた化粧材と、
前記基材の他方の面に設けられたクッション材と、
当該クッション材の前記基材とは逆側の面に設けられた裏面シート層と、が一体に積層され、
前記裏面シート層は、防湿機能と防カビ機能と防ダニ機能とのうちの少なくともいずれか一つを有することを特徴とする畳用フローリング材。
(2)
前記基材の厚みは、4mm以下であることを特徴とする上記(1)に記載の畳用フローリング材。
(3)
前記クッション材はポリエチレン又はポリウレタン系の発泡樹脂からなることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の畳用フローリング材。
(4)
前記クッション材の厚みは、5mm以上10mm以下であることを特徴とする上記(1)から(3)のいずれか一項に記載の畳用フローリング材。
(5)
前記化粧材はオレフィンシートからなることを特徴とする上記(1)から(4)のいずれか一項に記載の畳用フローリング材。