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特開2024-57469加工スケジュール調整システム及びその端末装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057469
(43)【公開日】2024-04-24
(54)【発明の名称】加工スケジュール調整システム及びその端末装置
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20240417BHJP
   G06Q 50/04 20120101ALI20240417BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G06Q50/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164235
(22)【出願日】2022-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】荒 和正
【テーマコード(参考)】
3C100
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
3C100AA02
3C100AA16
3C100AA18
3C100BB03
3C100BB13
3C100BB17
5L049CC04
5L050CC04
(57)【要約】
【課題】1人のオペレータが複数の工作機械を担当しても段取り作業の重複をなくして工作機械の運転効率を向上させることのできる加工スケジュール調整システムを提供する。
【解決手段】加工スケジュール調整システム1は、複数の工作機械3A、3Bの加工スケジュールを携帯端末7で調整するシステムであって、加工スケジュールは、オペレータが作業を行う段取り作業と、工作機械が自動運転で加工を行う加工プログラムとを含み、携帯端末7は、複数の工作機械からそれぞれ加工スケジュールを取得し、取得したそれぞれの加工スケジュールを、段取り作業の実施時間が重複しないように調整し、調整された加工スケジュールをそれぞれの工作機械に送信して、複数の工作機械を稼働させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の工作機械の加工スケジュールを端末装置で調整する加工スケジュール調整システムであって、
前記加工スケジュールは、オペレータが作業を行う段取り作業と、前記工作機械が自動運転で加工を行う加工プログラムとを含み、
前記端末装置は、
前記複数の工作機械からそれぞれ前記加工スケジュールを取得し、
取得したそれぞれの前記加工スケジュールを、前記段取り作業の実施時間が重複しないように調整し、
前記調整された加工スケジュールをそれぞれの前記工作機械に送信して、前記複数の工作機械を稼働させる加工スケジュール調整システム。
【請求項2】
前記端末装置は、
前記段取り作業の実施時間が重複しないように、前記段取り作業の実施時間をずらした加工スケジュールの組み合わせを複数作成し、
前記複数の組み合わせの中で、前記段取り作業の実施時間をずらしたことによって発生した前記工作機械の停止時間が最も短い組み合わせを選択し、
選択された前記組み合わせに含まれる前記加工スケジュールを、それぞれの前記工作機械に送信して、前記複数の工作機械を稼働させる請求項1に記載の加工スケジュール調整システム。
【請求項3】
前記端末装置は、前記加工スケジュールを、前記段取り作業と前記加工プログラムを作業順序にしたがって並べたタイムチャートの形式で表示する請求項1または2に記載の加工スケジュール調整システム。
【請求項4】
前記加工プログラムのうちの特定の加工プログラムのための特定の段取り作業が、前記工作機械の自動運転を停止させずに実施できる場合には、
前記端末装置は、前記特定の加工プログラムが開始するまでの間に、前記特定の段取り作業が終了するように前記加工スケジュールを調整する請求項1または2に記載の加工スケジュール調整システム。
【請求項5】
前記端末装置は、前記複数の工作機械の加工スケジュールが終了するまでの残り時間を表示する請求項1または2に記載の加工スケジュール調整システム。
【請求項6】
複数の工作機械の加工スケジュールを調整する加工スケジュール調整システムの端末装置であって、
前記加工スケジュールは、オペレータが作業を行う段取り作業と、前記工作機械が自動運転で加工を行う加工プログラムとを含み、
前記複数の工作機械からそれぞれ前記加工スケジュールを取得し、
取得したそれぞれの前記加工スケジュールを、前記段取り作業の実施時間が重複しないように調整し、
前記調整された加工スケジュールをそれぞれの前記工作機械に送信して、前記複数の工作機械を稼働させる加工スケジュール調整システムの端末装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工スケジュール調整システム及びその端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、納期と工数が既知である複数のジョブの作業順序を決定するためのスケジューリング装置が、特許文献1に開示されている。特許文献1に開示されたスケジューリング装置では、納期と工数を用いた評価式に基づいてジョブの作業順序を決定していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-337711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来のスケジューリング装置では、納期と工数だけでジョブの作業順序を決定していた。しかしながら、ジョブの準備をするためにオペレータが作業を行う段取り作業がある場合には、複数の段取り作業が重複すると、1人のオペレータでは同時に異なる段取り作業を行うことができない。したがって、ジョブが工作機械の加工である場合には、工作機械を停止しなければならないので、従来では、1人のオペレータが複数の工作機械を担当すると、段取り作業が重複して工作機械の運転効率が低下してしまうという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る加工スケジュール調整システムは、複数の工作機械の加工スケジュールを端末装置で調整する加工スケジュール調整システムであって、前記加工スケジュールは、オペレータが作業を行う段取り作業と、前記工作機械が自動運転で加工を行う加工プログラムとを含み、前記端末装置は、前記複数の工作機械からそれぞれ前記加工スケジュールを取得し、取得したそれぞれの前記加工スケジュールを、前記段取り作業の実施時間が重複しないように調整し、前記調整された加工スケジュールをそれぞれの前記工作機械に送信して、前記複数の工作機械を稼働させる。
【0006】
本発明の一態様に係る加工スケジュール調整システムの端末装置は、複数の工作機械の加工スケジュールを調整する加工スケジュール調整システムの端末装置であって、前記加工スケジュールは、オペレータが作業を行う段取り作業と、前記工作機械が自動運転で加工を行う加工プログラムとを含み、前記複数の工作機械からそれぞれ前記加工スケジュールを取得し、取得したそれぞれの前記加工スケジュールを、前記段取り作業の実施時間が重複しないように調整し、前記調整された加工スケジュールをそれぞれの前記工作機械に送信して、前記複数の工作機械を稼働させる。
【0007】
上述した構成の加工スケジュール調整システム及びその端末装置では、段取り作業の実施時間が重複しないように加工スケジュールを調整するので、段取り作業が重複することがなくなり、1人のオペレータが複数の工作機械を担当することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様に係る加工スケジュール調整システム及びその端末装置によれば、1人のオペレータが複数の工作機械を担当しても、段取り作業が重複することがないので、工作機械の運転効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1実施形態に係る加工スケジュール調整システムの構成を示す図である。
図2図2は、工作機械の加工スケジュールの一例を示す図である。
図3図3は、第1実施形態に係る加工スケジュール調整システムを構成する工作機械と携帯端末の構成を示す図である。
図4図4は、第1実施形態に係る加工スケジュール調整システムによる加工スケジュール調整処理の処理手順を示すフローチャートである。
図5図5は、複数の工作機械の加工スケジュールの一例を示す図である。
図6図6は、複数の工作機械の加工スケジュールを調整して作成された組み合わせの一例を示す図である。
図7図7は、複数の工作機械の加工スケジュールを調整して作成された組み合わせの一例を示す図である。
図8図8は、第1実施形態に係る加工スケジュール調整システムにおける携帯端末の表示画面の一例を示す図である。
図9図9は、段取り作業が自動運転を停止させずに行うことができる場合の加工スケジュールの一例を示す図である。
図10図10は、段取り作業が自動運転を停止させずに行うことができる場合における複数の工作機械の加工スケジュールの一例を示す図である。
図11図11は、段取り作業が自動運転を停止させずに行うことができる場合における複数の工作機械の加工スケジュールの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1実施形態]
以下、本発明を適用した第1実施形態について図面を参照して説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0011】
[加工スケジュール調整システムの構成]
図1は、本実施形態に係る加工スケジュール調整システムの構成を示す図である。図1に示すように、加工スケジュール調整システム1は、複数の工作機械3A、3Bと、複数の材料供給装置5A、5Bと、携帯端末7と、通信装置9から構成されている。加工スケジュール調整システム1は、複数の工作機械3A、3Bの加工スケジュールを携帯端末7で調整するシステムである。
【0012】
工作機械3A、3Bは、工具を使って材料を加工する装置であり、例えばレーザ加工機やパンチング機である。装着される工具は、交換装置で自動的に交換される場合もあるし、オペレータが交換する場合もある。また、工作機械3A、3Bは、自動運転で材料を加工できる装置であり、予め設定された加工スケジュールにしたがって作業が行われている。加工スケジュールは、オペレータが作業を行う段取り作業と、工作機械3A、3Bが自動運転で加工を行う加工プログラムとを含んでいる。段取り作業と加工プログラムの作業時間は予め設定されているので、工作機械3A、3Bは、設定されている作業時間に基づいて、段取り作業と加工プログラムの開始時刻を予測して、加工スケジュールを設定する。
【0013】
例えば、図2に示すように、工作機械3Aの加工スケジュールは、まず段取り作業WA1を行った後に加工プログラムPA1、PA2が実行され、その後に段取り作業WA2を行ってから加工プログラムPA3を実行する。段取り作業WA1は、加工プログラムPA1、PA2を実行するために必要な作業なので、加工プログラムPA1、PA2を実行する前に行う必要がある。同様に、段取り作業WA2は、加工プログラムPA3を実行するために必要な作業なので、加工プログラムPA3を実行する前に行う必要がある。このように加工開始前や加工プログラムが切り替わるときに必要な段取り作業があれば、そのような段取り作業を加工スケジュールに組み込んでいる。工作機械3A、3Bは、図2に示すような加工スケジュールを設定することによって、複数の加工プログラムを連続して実行することができる。
【0014】
段取り作業は、オペレータによって行われる作業であり、例えば、加工プログラムで使用する材料や工具の設置、加工済み製品の搬出、工作機械や工具の保守等の作業である。段取り作業では、加工データや装着される工具の情報に基づいて、加工を行うために必要となる準備作業が予め設定されており、作業実績に基づいて作業時間が設定されている。このような段取り作業の内容は、携帯端末7に表示される。
【0015】
段取り作業は、オペレータが行うので、1人のオペレータが複数の工作機械3A、3Bを担当する場合、異なる工作機械の段取り作業を同時に行うことはできない。そのため、複数の工作機械3A、3Bで段取り作業の実施時間が重複すると、段取り作業の実施時間をずらして調整する必要がある。そこで、本実施形態に係る加工スケジュール調整システム1は、段取り作業の実施時間が重複しないように加工スケジュールを調整している。
【0016】
また、工作機械3A、3Bは、カメラ11A、11Bを備えている。カメラ11A、11Bは、工作機械3A、3Bの加工領域13A、13Bを撮像する撮像部であり、工具が稼働する稼働範囲の全体を撮像することができる。また、カメラ11A、11Bは、工作機械3A、3Bの全体や材料供給装置5A、5B、オペレータが工作機械3A、3Bの周辺で作業する領域を撮像しても良い。尚、図1では、工作機械が2台の場合を例示しているが、工作機械が3台以上であってもよい。
【0017】
材料供給装置5A、5Bは、それぞれ工作機械3A、3Bに接続され、工作機械3A、3Bに材料を自動的に供給する装置である。また、材料供給装置5A、5Bは、加工済みの製品を工作機械3A、3Bから搬出することも可能であり、工作機械3A、3Bによる制御にしたがって材料の供給や加工済み製品の搬出を行っている。
【0018】
携帯端末7は、ネットワークを介して通信装置9にアクセスすることができる端末装置であり、例えば、オペレータが操作するスマートフォンやタブレット端末等である。携帯端末7には、加工スケジュール調整システム1の処理を実行するめに必要なアプリケーションがインストールされている。したがって、携帯端末7は、工作機械3A、3Bに対して必要な情報を送信することができ、工作機械3A、3Bから送信された情報を受信して表示することができる。
【0019】
通信装置9は、ネットワークを介して携帯端末7と情報を送受信する機能を備えており、工作機械3A、3Bに有線または無線で接続されている。そのため、通信装置9は、携帯端末7と工作機械3A、3Bとの間で情報を送受信することができる。例えば、通信装置9は、インターネットと接続できる4G/5Gなどのモバイル通信機能を備えたルータや、携帯端末7と直接無線通信できるアクセスポイントなどのデバイスであればよい。
【0020】
次に、図3を参照して、加工スケジュール調整システム1を構成する工作機械3A、3Bと携帯端末7の構成を説明する。図3は、本実施形態に係る工作機械3A、3Bと携帯端末7の構成を示すブロック図である。図3に示すように、工作機械3A、3Bは、コントローラ15A、15Bと、記憶部17A、17Bと、通信部19A、19Bを備えている。
【0021】
コントローラ15A、15Bは、通信部19A、19Bを介して携帯端末7と情報を送受信して、工作機械3A、3Bの制御を実行する。具体的に、コントローラ15A、15Bは、工作機械3A、3Bの加工スケジュールを設定する処理を実行し、設定された加工スケジュールにしたがって工作機械3A、3Bを自動運転で稼働させる。また、コントローラ15A、15Bは、材料供給装置5A、5Bを制御して、材料の供給や加工済み製品の搬出を実行する。
【0022】
なお、コントローラ15A、15Bは、CPU(中央処理装置)、及びメモリを備える汎用のマイクロコンピュータである。コントローラ15A、15Bには、工作機械3A、3Bを自動運転で稼働するめに必要なコンピュータプログラムがインストールされている。このコンピュータプログラムを実行することにより、コントローラ15A、15Bは、工作機械3A、3Bを自動運転で稼働させる制御を実行する。
【0023】
記憶部17A、17Bは、工作機械3A、3Bの自動運転を制御するために必要な情報を記憶するためのメモリやデータベースである。記憶部17A、17Bは、例えば、工作機械3A、3Bの加工スケジュールや接続情報、照合情報、識別情報を記憶している。接続情報は、カメラ11A、11Bとコントローラ15A、15Bをネットワークに接続するためのIPアドレスやポート番号である。照合情報は、携帯端末7が工作機械3A、3Bを特定するための機械名称やシリアル番号であり、例えば「MAC3015AJ」などが使用される。識別情報は、オペレータが工作機械3A、3Bを識別するための任意の画像や名称であり、例えば「MACHINE#1」などが使用される。同様に、記憶部17A、17Bは、携帯端末7の接続情報、照合情報、識別情報も記憶している。
【0024】
通信部19A、19Bは、通信装置9を介して携帯端末7と情報を送受信する機能を備えている。通信部19A、19Bは、工作機械3A、3Bで設定された加工スケジュールを携帯端末7に送信し、携帯端末7から送信された調整済みの加工スケジュール等の情報を受信して、記憶部17A、17Bに記録する。
【0025】
携帯端末7は、コントローラ21と、通信部23と、表示部25を備えている。コントローラ21は、通信部23を介して工作機械3A、3Bと情報を送受信して、工作機械3A、3Bの加工スケジュールを調整する処理を実行する。具体的に、コントローラ21は、複数の工作機械3A、3Bからそれぞれ加工スケジュールを取得し、取得したそれぞれの加工スケジュールを、段取り作業の実施時間が重複しないように調整する。そして、コントローラ21は、調整された加工スケジュールをそれぞれの工作機械3A、3Bに送信して、複数の工作機械3A、3Bを稼働させている。
【0026】
なお、コントローラ21は、CPU(中央処理装置)、及びメモリを備える汎用のマイクロコンピュータである。コントローラ21には、工作機械3A、3Bの加工スケジュールを調整する処理を実行するめに必要なコンピュータプログラムがインストールされている。このコンピュータプログラムを実行することにより、コントローラ21は、工作機械3A、3Bの加工スケジュールを調整する処理を実行する。
【0027】
通信部23は、ネットワークを介して通信装置9に接続され、工作機械3A、3Bと情報を送受信する機能を備えている。通信部23は、工作機械3A、3Bから送信された加工スケジュール等の情報を受信して図示しないメモリ等に記録し、加工スケジュールの調整が完了すると、調整済みの加工スケジュールを送信する。
【0028】
表示部25は、加工スケジュールを調整する処理に必要な情報を表示し、例えば、加工スケジュールをタイムチャートの形式で表示したり、加工スケジュールが終了するまでの残り時間を表示したりする。
【0029】
[加工スケジュール調整処理]
次に、本実施形態に係る加工スケジュール調整システム1によって実行される加工スケジュール調整処理を説明する。図4は、本実施形態に係る加工スケジュール調整システム1による加工スケジュール調整処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0030】
図4に示すように、ステップS101において、工作機械3A、3Bは、加工スケジュールを設定する。具体的に、工作機械3A、3Bの各コントローラ15A、15Bは、図5に示すように、それぞれの加工スケジュールを設定する。
【0031】
図5に示すように、工作機械3Aの加工スケジュールは、段取り作業WA1を行った後に加工プログラムPA1と加工プログラムPA2を実行し、その後に段取り作業WA2を行ってから加工プログラムPA3を実行するように設定されている。
【0032】
一方、工作機械3Bの加工スケジュールは、段取り作業WB1を行った後に加工プログラムPB1だけを実行し、その後に段取り作業WB2を行ってから加工プログラムPB2と加工プログラムPB3を実行するように設定されている。
【0033】
ステップS103において、コントローラ15A、15Bは、ステップS101で設定された加工スケジュールを、通信部19A、19Bを介してそれぞれ携帯端末7へ送信する。
【0034】
ステップS105において、携帯端末7のコントローラ21は、工作機械3A、3Bの加工スケジュールを、通信部23を介して取得する。
【0035】
ステップS107において、コントローラ21は、工作機械3A、3Bの加工スケジュールを比較し、段取り作業の実施時間が重複するか否かを判定する。段取り作業はオペレータが行う作業なので、1人のオペレータが異なる工作機械の段取り作業を同時に行うことはできない。そのため、複数の工作機械3A、3Bの段取り作業の実施時間が重複するか否かを判定する。
【0036】
例えば、図5に示す加工スケジュールでは、段取り作業WA1の実施時間と段取り作業WB1の実施時間が重複している。したがって、図5に示す加工スケジュールの場合には、段取り作業の実施時間が重複していると判定して、ステップS109へ進む。一方、段取り作業の実施時間が重複していないと判定された場合には、ステップS115へ進む。
【0037】
ステップS109において、コントローラ21は、段取り作業の実施時間が重複しないように、段取り作業の実施時間をずらした加工スケジュールの組み合わせを複数作成する。例えば、図5の加工スケジュールの場合に、コントローラ21は、まず段取り作業WA1、WB1の実施時間が重複しないように、段取り作業WB1の実施時間を後ろへずらした加工スケジュールの組み合わせとして、図6を作成する。図6の加工スケジュールの組み合わせでは、段取り作業WB1を後ろへずらした結果、段取り作業WA2、WB2の実施時間が重複するので、開始時刻が遅いほうの段取り作業WA2をさらに後ろへずらしている。このように段取り作業の実施時間をずらしたことによって、停止時間SA1、SB1が発生している。
【0038】
同様に、コントローラ21は、段取り作業WA1、WB1の実施時間が重複しないように、段取り作業WA1の実施時間を後ろへずらした加工スケジュールの組み合わせとして、図7を作成する。図7の組み合わせでは、段取り作業WA1の実施時間をずらしたことによって、停止時間SA1が発生している。
【0039】
ステップS111において、コントローラ21は、ステップS109で作成された加工スケジュールの組み合わせ毎に停止時間を算出する。このとき、コントローラ21は、加工スケジュールの開始時刻または現在時刻から2回目の段取り作業までの間に発生する停止時間の合計を算出する。例えば、図6の加工スケジュールの組み合わせでは、加工スケジュールの開始時刻から2回目の段取り作業WA2、WB2までの間に発生する停止時間は、停止時間SA1と停止時間SB1になるので、これらを加算して合計の停止時間を算出する。一方、図7の加工スケジュールの組み合わせでは、加工スケジュールの開始時刻から2回目の段取り作業WA2、WB2までの間に発生する停止時間は、停止時間SA1のみなので、停止時間SA1が停止時間として算出される。
【0040】
ステップS113において、コントローラ21は、ステップS109で作成された組み合わせの中で、段取り作業の実施時間をずらしたことによって発生した工作機械3A、3Bの停止時間が最も短い組み合わせを選択する。例えば、図6図7の加工スケジュールの組み合わせでは、図7の停止時間のほうが図6の停止時間よりも短いので、図7の加工スケジュールの組み合わせが選択される。
【0041】
ステップS115において、コントローラ21は、ステップS113で選択された加工スケジュールの組み合わせに含まれている加工スケジュールを表示部25に表示する。このとき、コントローラ21は、図7に示すように、段取り作業と加工プログラムを作業順序にしたがって並べたタイムチャートの形式で、加工スケジュールを表示する。また、表示する際には、加工がどこまで進んでいるかが分かるように表示する。さらに、オペレータが携帯端末7を操作することによって、加工プログラムの追加、削除、変更を行うことができる。
【0042】
また、コントローラ21は、図8に示すように、複数の工作機械3A、3Bの加工スケジュールが終了するまでの残り時間を表示する。図8では、オペレータが工作機械3A、3Bを識別するための識別情報である「MACHINE#1」、「MACHINE#2」と、運転状態を示す「運転中」、「停止中」と、残り時間を示す「0:40’30”」、「0:15’23”」が表示されている。
【0043】
ステップS117において、コントローラ21は、ステップS113で選択された加工スケジュールの組み合わせに含まれる加工スケジュールを、通信部23を介して、それぞれの工作機械3A、3Bに送信する。例えば、図7の加工スケジュールの組み合わせが選択されているので、コントローラ21は、図7に含まれる工作機械3Aの加工スケジュールを工作機械3Aに送信し、図7に含まれる工作機械3Bの加工スケジュールを工作機械3Bに送信する。
【0044】
ステップS119において、工作機械3A、3Bのコントローラ15A、15Bは、それぞれ受信した加工スケジュールにしたがって、工作機械3A、3Bを稼働させる。こうして工作機械3A、3Bが稼働すると、本実施形態に係る加工スケジュール調整処理は終了する。
【0045】
[第1実施形態の効果]
以上、詳細に説明したように、本実施形態に係る加工スケジュール調整システム1では、携帯端末7が複数の工作機械3A、3Bからそれぞれ加工スケジュールを取得し、取得したそれぞれの加工スケジュールを段取り作業の実施時間が重複しないように調整する。そして、調整された加工スケジュールをそれぞれの工作機械3A、3Bに送信して、複数の工作機械3A、3Bを稼働させる。これにより、1人のオペレータが複数の工作機械を担当しても、段取り作業が重複することがないので、工作機械の運転効率を向上させることができる。
【0046】
また、本実施形態に係る加工スケジュール調整システム1では、携帯端末7が、段取り作業の実施時間が重複しないように、段取り作業の実施時間をずらした加工スケジュールの組み合わせを複数作成する。そして、複数の組み合わせの中で、段取り作業の実施時間をずらしたことによって発生した工作機械の停止時間が最も短い組み合わせを選択し、選択された組み合わせに含まれる加工スケジュールを、それぞれの工作機械に送信して複数の工作機械を稼働させる。これにより、工作機械の停止時間が短くなるように加工スケジュールを調整することができるので、工作機械の運転効率をさらに向上させることができる。
【0047】
さらに、本実施形態に係る加工スケジュール調整システム1では、携帯端末7が、加工スケジュールを、段取り作業と加工プログラムを作業順序にしたがって並べたタイムチャートの形式で表示する。これにより、オペレータは容易に作業順序を認識することができるので、いつ段取り作業を行えばよいか分かり、オペレータの作業効率を向上させることができる。
【0048】
また、本実施形態に係る加工スケジュール調整システム1では、携帯端末7が、複数の工作機械3A、3Bの加工スケジュールが終了するまでの残り時間を表示する。これにより、オペレータは、現在の加工スケジュールがいつ終了するかを容易に把握でき、次の加工スケジュールのための準備を開始することができるので、オペレータの作業効率を向上させることができる。
【0049】
[第2実施形態]
以下、本発明を適用した第2実施形態について図面を参照して説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0050】
第1実施形態では、段取り作業を行うときに、工作機械3A、3Bの自動運転を停止する必要がある場合について説明していたが、本実施形態では、段取り作業を行うときに、工作機械3A、3Bの自動運転を停止する必要がない場合について説明する。段取り作業には、工作機械3A、3Bの自動運転を停止する必要のある作業と、停止する必要のない作業がある。この違いは、各作業の特性によって決定されるが、材料供給装置5A、5Bが接続されている場合には、工作機械3A、3Bの自動運転を停止せずに、加工済み製品の搬出や材料の積載を行うことが可能となる。
【0051】
このように段取り作業を行うときに自動運転を停止する必要がない場合には、図9に示すように、段取り作業WA1は加工プログラムPA2を実行するのと同時に行うことができる。また、段取り作業WA1が、特定の加工プログラムPA3のための段取り作業である場合に、段取り余裕時間Tの間に段取り作業を開始することによって、加工プログラムPA3が開始するまでの間に段取り作業WA1を終了させることができる。
【0052】
段取り余裕時間Tは、加工プログラムPA3の開始時刻t3から段取り作業WA1の所要時間Tdだけ前の時刻t2より以前に設定されていればよい。また、図9では、段取り作業WA1が加工プログラムPA1の終了後に行うことができる場合を例示しているので、段取り余裕時間Tは、加工プログラムPA1の終了時刻t1と時刻t2との間に設定されている。したがって、コントローラ21は、段取り余裕時間Tの間に段取り作業WA1を開始することによって、加工プログラムPA3が開始するまでの間に、段取り作業WA1が終了するように加工スケジュールを調整することができる。これにより、工作機械3Aを停止させずに、加工プログラムPA3を開始することができる。
【0053】
また、加工スケジュールの組み合わせを作成する場合に、コントローラ21は、段取り作業の開始時刻を段取り余裕時間の間で移動させることによって、段取り作業の実施時間が重複しないように調整することができる。例えば、図10に示すように、段取り作業WA1の終了時刻t2を、段取り作業WB2の開始時刻t3よりも前になるように設定すれば、段取り作業WA1の実施時間と段取り作業WB2の実施時間が重複しないように調整することができる。
【0054】
また、複数の段取り余裕時間が重複する場合には、図11に示すように、早く開始するほうの段取り余裕時間TAの開始時刻t1に段取り作業WA1を開始し、段取り作業WA1の終了時刻t2に段取り作業WB1を開始するように調整する。ただし、時刻t2は、段取り余裕時間TBの範囲内に設定する必要がある。これにより、加工プログラムPB3が開始する前に段取り作業WB1を終了することができるので、工作機械3Bの自動運転を停止させることなく、加工プログラムPB3を実行することができる。このように、段取り作業WA1、WB1を調整することによって、段取り余裕時間TA、TBが重複する場合であっても、自動運転を停止させることなく複数の段取り作業を行うことができる。
【0055】
[第2実施形態の効果]
上述したように、本実施形態では、特定の加工プログラムのための特定の段取り作業が、工作機械の自動運転を停止させずに実施できる場合には、特定の加工プログラムが開始するまでの間に特定の段取り作業が終了するように加工スケジュールを調整する。これにより、工作機械3A、3Bの自動運転を停止させることなく、特定の加工プログラムを実行することができるので、工作機械の運転効率を向上させることができる。
【0056】
なお、上述の実施形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計などに応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0057】
1 加工スケジュール調整システム
3A、3B 工作機械
5A、5B 材料供給装置
7 携帯端末
9 通信装置
11A、11B カメラ
13A、13B 加工領域
15A、15B、21 コントローラ
17A、17B 記憶部
19A、19B、23 通信部
25 表示部
図1
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