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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057472
(43)【公開日】2024-04-24
(54)【発明の名称】ハンドレスト装置及び乗員支持装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/02 20060101AFI20240417BHJP
   B60N 2/75 20180101ALI20240417BHJP
   A47C 7/62 20060101ALI20240417BHJP
   A47C 7/68 20060101ALI20240417BHJP
   A47C 7/54 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
B60N2/02
B60N2/75
A47C7/62 Z
A47C7/68 Z
A47C7/54 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164238
(22)【出願日】2022-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本田 親典
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 浩介
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
【Fターム(参考)】
3B084JA01
3B084JC00
3B087BD03
3B087BD19
3B087DC02
(57)【要約】
【課題】ハンドレストの使用位置の高さを適切にする。
【解決手段】車両用シート装置14では、シート16に乗員26が着座して、ハンドレスト36が使用位置に配置される際に、ハンドレスト36が乗員26の手を支持する。ここで、ハンドレスト36の使用位置の高さが第1使用位置と第2使用位置とに調整される。このため、ハンドレスト36の使用位置の高さを適切にできる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のシートの前側に設置され、使用位置に配置されて前記シートに着座する乗員の手を支持するハンドレストと、
前記ハンドレストの使用位置の高さを調整する調整機構と、
を備えるハンドレスト装置。
【請求項2】
前記調整機構が前記ハンドレストの使用位置を乗員の胸骨下端から肩峰上端までの高さ範囲内の高さに調整する請求項1に記載のハンドレスト装置。
【請求項3】
前記調整機構が前記ハンドレストの使用位置を乗員のヒップポイントから320mm以上500mm以下の高さ範囲内の高さに調整する請求項1又は請求項2に記載のハンドレスト装置。
【請求項4】
乗員がJM50相当の体格にされる請求項1又は請求項2に記載のハンドレスト装置。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載のハンドレスト装置と、
前記シートの左側又は右側に配置され、前記シートの左右方向内側に突出されて乗員の腕を支持する突出部が設けられるアームレストと、
を備える乗員支持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドレストが乗員の手を支持するハンドレスト装置及び当該ハンドレスト装置を備える乗員支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載のディスプレイ作業場は、座席の前側(前座席の後側)に設置されており、ディスプレイ作業場には、ハンドレストが設けられている。
【0003】
ここで、このディスプレイ作業場は、使用位置から、前座席の収容凹部にハンドレストと共に収納可能にされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4-212648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事実を考慮し、ハンドレストの使用位置の高さを適切にできるハンドレスト及び乗員支持装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様のハンドレスト装置は、車両のシートの前側に設置され、使用位置に配置されて前記シートに着座する乗員の手を支持するハンドレストと、前記ハンドレストの使用位置の高さを調整する調整機構と、を備える。
【0007】
本発明の第1態様のハンドレスト装置では、車両のシートの前側にハンドレストが設置されており、ハンドレストが、使用位置に配置されて、シートに着座する乗員の手を支持する。
【0008】
ここで、調整機構がハンドレストの使用位置の高さを調整する。このため、ハンドレストの使用位置の高さを適切にできる。
【0009】
本発明の第2態様のハンドレスト装置は、本発明の第1態様のハンドレスト装置において、前記調整機構が前記ハンドレストの使用位置を乗員の胸骨下端から肩峰上端までの高さ範囲内の高さに調整する。
【0010】
本発明の第2態様のハンドレスト装置では、調整機構がハンドレストの使用位置を乗員の胸骨下端から肩峰上端までの高さ範囲内の高さに調整する。このため、ハンドレストが乗員の手を高い位置に支持できる。
【0011】
本発明の第3態様のハンドレスト装置は、本発明の第1態様又は第2態様のハンドレスト装置において、前記調整機構が前記ハンドレストの使用位置を乗員のヒップポイントから320mm以上500mm以下の高さ範囲内の高さに調整する。
【0012】
本発明の第3態様のハンドレスト装置では、調整機構がハンドレストの使用位置を乗員のヒップポイントから320mm以上500mm以下の高さ範囲内の高さに調整する。このため、ハンドレストが乗員の手を高い位置に支持できる。
【0013】
本発明の第4態様のハンドレスト装置は、本発明の第1態様~第3態様の何れか1つのハンドレスト装置において、乗員がJM50相当の体格にされる。
【0014】
本発明の第4態様のハンドレスト装置では、乗員がJM50相当の体格にされる。このため、ハンドレストの使用位置を成人に対応させることができる。
【0015】
本発明の第5態様の乗員支持装置は、本発明の第1態様~第4態様の何れか1つのハンドレスト装置と、前記シートの左側又は右側に配置され、前記シートの左右方向内側に突出されて乗員の腕を支持する突出部が設けられるアームレストと、を備える。
【0016】
本発明の第5態様の乗員支持装置では、シートの左側又は右側にアームレストが配置されており、アームレストの突出部がシートの左右方向内側に突出されて乗員の腕を支持する。このため、乗員が手を乗員の左右方向中央側に移動させた際に乗員の腕を支持できる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明のハンドレスト装置及び乗員支持装置では、ハンドレストの使用位置の高さを適切にできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態における車両用シート装置を示す左方から見た側面図である。
図2図1の車両用シート装置を示す前方かつ左方から見た斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係るハンドレスト装置を示す左方から見た側面図である。
図4】(A)は、図3のハンドレスト装置の調整機構におけるハンドレストが格納位置に配置される際を示す左方から見た側面図であり、(B)は、当該調整機構の主要部を示す左方から見た側面図である。
図5】(A)は、図3のハンドレスト装置の調整機構におけるハンドレストが第1使用位置に配置される際を示す左方から見た側面図であり、(B)は、当該調整機構の主要部を示す左方から見た側面図である。
図6】(A)は、図3のハンドレスト装置の調整機構におけるハンドレストが第2使用位置に配置される際を示す左方から見た側面図であり、(B)は、図3のハンドレスト装置の調整機構におけるハンドレストの回転規制が解除された際を示す後方かつ左方から見た斜視図である。
図7】(A)は、第1比較例の車両用シート装置を示す前方かつ左方から見た斜視図であり、(B)は、第2比較例の車両用シート装置を示す前方かつ左方から見た斜視図である。
図8】第1比較例の車両用シート装置、第2比較例の車両用シート装置及び図2の車両用シート装置についての車酔い累積官能評点を示すグラフである。
図9】第1比較例の車両用シート装置、第2比較例の車両用シート装置及び図2の車両用シート装置についてのスマートフォン画面の見易さを示すグラフである。
図10】第1比較例の車両用シート装置、第2比較例の車両用シート装置及び図2の車両用シート装置についての首の疲労感を示すグラフである。
図11】第1比較例の車両用シート装置、第2比較例の車両用シート装置及び図2の車両用シート装置についての肩の疲労感を示すグラフである。
図12】第1比較例の車両用シート装置、第2比較例の車両用シート装置及び図2の車両用シート装置についての腕の疲労感を示すグラフである。
図13】(A)は、図8における車酔い官能の評点を示す表であり、(B)は、図9におけるスマートフォン画面の見易さの評点を示す表であり、(C)は、図10図11及び図12における疲労感の評点を示す表である。
図14図1の車両用シート装置のハンドレストについての手周辺視野で前方が見える高さの人数と腕のしびれを感じない高さの人数とを示す表である。
図15図1の車両用シート装置のハンドレストについての手周辺視野で前方が見える高さの人数(実線)と腕のしびれを感じない高さの人数(破線)とを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1には、本発明の実施形態に係る乗員支持装置12(ハンドレスト装置10を含む)が適用された車両用シート装置14が左方から見た側面図にて示されており、図2には、車両用シート装置14が前方かつ左方から見た斜視図にて示されている。なお、図面では、車両用シート装置14の前方を矢印FRにて示し、車両用シート装置14の左方を矢印LHにて示し、車両用シート装置14の上方を矢印UPにて示している。
【0020】
本実施形態における車両用シート装置14は、車両(自動車)の車室に設けられており、車両用シート装置14の前方、左方及び上方は、それぞれ車両の前方、左方及び上方に向けられている。
【0021】
図1及び図2に示されるように、車両用シート装置14には、シート16が設けられており、シート16の下部には、シートクッション18が設けられると共に、シートクッション18の後端部の上側には、シートバック20が設けられている。シートバック20のシートクッション18に対する前後方向への傾動位置は、調整可能にされており、シートバック20は、例えば、シートクッション18に対し後側に23°傾斜されている。シートバック20の上側には、ヘッドレスト22が設けられており、ヘッドレスト22の下端には、棒状のステイ22Aが一対固定されている。ステイ22Aは、下側に延出されて、ヘッドレスト22の上端部に固定されており、これにより、ヘッドレスト22がシートバック20に支持されている。
【0022】
シートバック20下部の左側及び右側には、乗員支持装置12を構成する略長尺直方体状のアームレスト24が設けられており、アームレスト24は、前方に延出されている。アームレスト24の前部には、突出部としての矩形板状の突出板24Aが設けられており、突出板24Aは、シート16の左右方向内側に突出されてシートクッション18の上側に配置されると共に、アームレスト24より前側に突出されている。なお、突出板24Aは、アームレスト24に対する位置を調整可能にされてもよく、また、アームレスト24に対し着脱可能にされてもよい。
【0023】
シート16に乗員26が着座した際には、シートクッション18が乗員26の臀部及び太腿部を支持し、シートバック20が乗員26の背部を支持し、ヘッドレスト22が乗員26の頭部を支持し、アームレスト24(突出板24Aを含む)が乗員26の腕(肘を含む)を支持する。
【0024】
シート16の前側には、取付対象としての前シート28が設けられており、前シート28には、シート16と同様のシートクッション18、シートバック20及びヘッドレスト22(ステイ22Aを含む)が設けられている。
【0025】
前シート28には、乗員支持装置12を構成するハンドレスト装置10(図3参照)が設けられている。
【0026】
ハンドレスト装置10には、略長尺直方体状の取付体30が一対設けられており、取付体30の前部が前シート28におけるヘッドレスト22のステイ22Aに取り付けられることで、ハンドレスト装置10が、前シート28に取り付けられて、シート16の前側に配置されている。取付体30は、後方に延出されており、取付体30の後部には、円柱状の中心軸32が回転不能に固定されている。中心軸32には、略円柱状の回転シャフト34の基端部が支持されており、回転シャフト34は、中心軸32を中心として一方向A及び他方向Bに回転可能にされている。
【0027】
一対の回転シャフト34の先端部には、略矩形板状のハンドレスト36(手置台、テーブル)が回転可能に支持されており、ハンドレスト36は、回転シャフト34に対する回転位置を調整可能にされている。また、ハンドレスト36の後側面は、矩形平面状の支持面36Aにされている。
【0028】
左側の取付体30の後部と左側の回転シャフト34の基端部との間には、調整機構38(図5の(A)及び(B)参照)が設けられている。
【0029】
調整機構38には、略直方体形箱状のケース40が設けられており、ケース40は、回転シャフト34の基端部に固定されている。ケース40には、中心軸32が貫通されており、ケース40は、中心軸32を中心として、回転シャフト34と一体に回転可能にされている。また、ケース40内には、被規制部としての略三角柱状の規制突起40Aが一体に設けられている。
【0030】
ケース40内には、ロック部材としての略円板状の歯車42が設けられており、歯車42は、中心軸32が貫通されると共に、中心軸32に固定されて回転不能にされている。歯車42の外周部には、規制部としての規制溝42Aが形成されており、規制溝42Aは、中心軸32の周方向に延在されている。規制溝42Aには、ケース40の規制突起40Aが挿入されており、規制溝42Aの一端面にケース40の規制突起40Aが当接されて、ケース40及び回転シャフト34の一方向Aへの回転が規制される(図6(A)参照)と共に、規制溝42Aの他端面に規制突起40Aが当接されて、ケース40及び回転シャフト34の他方向Bへの回転が規制される(図4の(A)及び(B)参照)。歯車42の外周部には、ロック部としての断面三角形状の第1溝42B及び第2溝42Cが形成されており、第1溝42Bの一方向A側に第2溝42Cが配置されている。
【0031】
ケース40内には、被ロック部材としてのL字形板状のロック板44が設けられており、ロック板44の中央部は、ケース40内に支持されている。ロック板44は、中央部を中心として、ロック方向C及びアンロック方向Dに回転可能にされており、ロック板44は、ロック方向Cに付勢されている。ロック板44の一端部には、被ロック部としての三角形板状の爪部44Aが形成されており、ロック板44は、付勢力により、爪部44Aを歯車42の第1溝42Bに噛合されている。このため、爪部44Aの他方向Bへの回転が第1溝42Bによってロックされることで、ケース40及び回転シャフト34の他方向Bへの回転が規制されて、ハンドレスト36が第1使用位置に配置されている。
【0032】
また、ケース40及び回転シャフト34が一方向Aに回転されることで、ロック板44が付勢力に抗してアンロック方向Dに回転されつつ、爪部44Aが第1溝42Bから離脱される。そして、ロック板44が付勢力によりロック方向Cに回転されつつ、爪部44Aが歯車42の第2溝42Cに噛合される。このため、爪部44Aの他方向Bへの回転が第2溝42Cによってロックされることで、ケース40及び回転シャフト34の他方向Bへの回転が規制されて、ハンドレスト36が第2使用位置に配置される(図6(A)参照)。また、ハンドレスト36が第2使用位置に配置される際には、上述のように、歯車42の規制溝42Aの一端面にケース40の規制突起40Aが当接されて、ケース40及び回転シャフト34の一方向Aへの回転が規制されることで、ハンドレスト36の第2使用位置から一方向Aへの回転が規制される。
【0033】
ハンドレスト36が第1使用位置及び第2使用位置に配置される際には、ハンドレスト36の支持面36Aが乗員26の手を支持する。
【0034】
ケース40内には、解除部材としての略L字形板状の解除板46が設けられており、解除板46の中央部は、ケース40内に支持されている。解除板46は、中央部を中心として、回転可能にされており、解除板46は、回転方向一側に付勢されている。解除板46の一側部分と他側部分との間には、ロック板44の他端部が配置されており、解除板46は、付勢力により、一側部分がロック板44の他端部に当接されている。解除板46の一側部分には、操作片46Aが一体に設けられており、操作片46Aは、解除板46から突出されている。
【0035】
取付体30の後部には、操作部材としての略円柱状のボタン48が設けられており、ボタン48の軸方向は、左右方向にされている。ボタン48は、左右方向に所定範囲で移動可能にされており、ボタン48は、左方に付勢されている。ボタン48の左端部は、同軸上に拡径されており、ボタン48の左端部は、取付体30の左側に露出されて、付勢力に抗して右方に押圧操作可能にされている。ボタン48は、ケース40内に挿入されており、ボタン48は、解除板46の操作片46Aの右側に配置されている。
【0036】
ボタン48が左端部において付勢力に抗して右方に押圧操作された際には、ボタン48によって解除板46の操作片46Aが右側に押圧されて、解除板46が付勢力に抗して回転されることで、解除板46の他側部分によってロック板44の他端部が押圧されて、ロック板44が付勢力に抗してアンロック方向Dに回転される(図6(B)参照)。このため、ロック板44の爪部44Aが歯車42の第1溝42B及び第2溝42Cに噛合不能にされる。これにより、ボタン48が右方に押圧操作された状態で、ケース40及び回転シャフト34が他方向Bに回転されることで、ハンドレスト36が格納位置に配置される(図4の(A)及び(B)参照)。また、ハンドレスト36が格納位置に配置される際には、上述のように、歯車42の規制溝42Aの他端面にケース40の規制突起40Aが当接されて、ケース40及び回転シャフト34の他方向Bへの回転が規制されることで、ハンドレスト36の格納位置から他方向Bへの回転が規制される。
【0037】
また、ハンドレスト36が格納位置に配置される状態から、ボタン48が右方に押圧操作されないで、ケース40及び回転シャフト34が一方向Aに回転されることで、ロック板44が付勢力によりロック方向Cに回転されつつ、ロック板44の爪部44Aが歯車42の第1溝42Bに噛合されて、ハンドレスト36が第1使用位置に配置される(図5の(A)及び(B)参照)。なお、ハンドレスト36の格納位置と第1使用位置との間においては、ロック板44の爪部44Aが歯車42に噛合不能にされて、ケース40及び回転シャフト34の回転が規制されない。
【0038】
ハンドレスト36が第1使用位置及び第2使用位置に配置される際には、ハンドレスト36の回転シャフト34に対する回転位置が支持位置にされると共に、ハンドレスト36が格納位置に配置される際には、ハンドレスト36の回転シャフト34に対する回転位置が収納位置にされる(図3参照)。ハンドレスト36は、支持位置が収納位置に対し支持面36Aを回転シャフト34とは反対側かつ下側に向けられる。
【0039】
ハンドレスト36が第1使用位置に配置される際には、乗員26がJM50(JIS D4607:1994、自動車室内寸法測定用三次元座位人体模型)相当の体格である場合に、ハンドレスト36の支持面36A中央が乗員26のヒップポイントHPから320mmの高さ(乗員26の胸骨下端(剣状突起下端)の高さ、適切高さ下限)に配置される。ハンドレスト36が第2使用位置に配置される際には、乗員26がJM50相当の体格である場合に、ハンドレスト36の支持面36A中央が乗員26のヒップポイントHPから500mmの高さ(乗員26の肩峰上端の高さ、適切高さ上限)に配置される。
【0040】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0041】
以上の構成の車両用シート装置14では、シート16に乗員26が着座して、ハンドレスト36が第1使用位置及び第2使用位置に配置される際に、ハンドレスト36の支持面36Aが乗員26の手を支持する。
【0042】
ここで、調整機構38によってハンドレスト36の使用位置の高さが第1使用位置と第2使用位置とに調整される。このため、ハンドレスト36の使用位置の高さを適切にできる。
【0043】
また、ハンドレスト36が第1使用位置に配置される際には、乗員26がJM50相当の体格である場合に、ハンドレスト36の支持面36A中央が乗員26のヒップポイントHPから320mmの高さ(乗員26の胸骨下端(剣状突起下端)の高さ)に配置される。このため、乗員26が小柄な成人である場合に、乗員26のスマートフォン(図示省略)を持った手をハンドレスト36の支持面36Aが支持することで、支持面36A中央の80mm上に想定されるスマートフォンの画面中心の高さを乗員26の胸骨下端(剣状突起下端)の高さにすることができる。
【0044】
さらに、ハンドレスト36が第2使用位置に配置される際には、乗員26がJM50相当の体格である場合に、ハンドレスト36の支持面36A中央が乗員26のヒップポイントHPから500mmの高さ(乗員26の肩峰上端の高さ)に配置される。このため、乗員26が大柄な成人である場合に、乗員26のスマートフォンを持った手をハンドレスト36の支持面36Aが支持することで、支持面36A中央の80mm上に想定されるスマートフォンの画面中心の高さを乗員26の肩峰上端の高さにすることができる。
【0045】
このように、スマートフォンの画面中心の高さを乗員26の肩峰上端の高さにすることで、乗員26のスマートフォン画面に対する視線を略前方にできる。このため、乗員26が、車両外の風景を視界に入れることができて、地面に対する車両の動きの情報を得られることで、乗員26の車酔いを抑制できる。しかも、乗員26がスマートフォン画面を見るために首を曲げる必要性を低くできて、乗員26のスマートフォン画面の見易さを良好にできると共に、乗員26の首の疲労感を小さくできる。さらに、乗員26がスマートフォンを持った手を過度に上げないことで、乗員26の肩及び腕の疲労感を小さくできる。
【0046】
また、シート16の左側又は右側におけるアームレスト24が、乗員26のスマートフォンを手に持った腕(特に肘)を支持する。このため、乗員26の肩及び腕の疲労感を一層小さくできる。
【0047】
さらに、アームレスト24の突出板24Aが、シート16の左右方向内側に突出されて、乗員26の腕を支持する。このため、乗員26がスマートフォンを持った手を乗員26の左右方向中央側に移動させて、スマートフォン画面をより見易くした際でも、突出板24Aが乗員26の腕(特に肘)を支持できる。
【0048】
(第1比較例)
【0049】
図7(A)には、第1比較例の車両用シート装置60が前方かつ左方から見た斜視図にて示されている。
【0050】
図7(A)に示されるように、第1比較例の車両用シート装置60には、本実施形態のハンドレスト装置10及びアームレスト24が設けられていない。
【0051】
(第2比較例)
【0052】
図7(B)には、第2比較例の車両用シート装置70が前方かつ左方から見た斜視図にて示されている。
【0053】
図7(B)に示されるように、第2比較例の車両用シート装置70には、本実施形態のハンドレスト装置10が設けられていない。また、アームレスト24には、突出板24Aが設けられていない。
【0054】
(第1実験例)
【0055】
図8は、第1比較例の車両用シート装置60、第2比較例の車両用シート装置70及び本実施形態の車両用シート装置14についての車酔い累積官能評点を示すグラフである。
【0056】
第1実験例では、走行する車両の乗員26の車酔い官能について、1分毎の評点(図13(A)参照)を30分間分累計して、車酔い累積官能評点を調べた。図8では、複数の乗員26の平均が示されており、図8のエラーバーは、標準偏差である。
【0057】
図8に示されるように、車酔い累積官能評点は、第1比較例では高く、第2比較例では高く(第1比較例より少し低く)、本実施形態では低い。このため、本実施形態では、乗員26の車酔いを抑制できる。
【0058】
(第2実験例)
【0059】
図9は、第1比較例の車両用シート装置60、第2比較例の車両用シート装置70及び本実施形態の車両用シート装置14についてのスマートフォン画面の見易さを示すグラフである。
【0060】
第2実験例では、乗員26のスマートフォン画面の見易さについての評点(図13(B)参照)を調べた。図9では、複数の乗員26の平均が示されており、図9のエラーバーは、標準偏差である。
【0061】
図9に示されるように、当該評点は、第1比較例ではマイナスであり、第2比較例ではマイナス(第1比較例より少し小さいマイナス)であり、本実施形態ではプラスである。このため、本実施形態では、乗員26のスマートフォン画面の見易さを良好にできる。
【0062】
(第3実験例)
【0063】
図10は、第1比較例の車両用シート装置60、第2比較例の車両用シート装置70及び本実施形態の車両用シート装置14についての首の疲労感を示すグラフである。
【0064】
第3実験例では、乗員26の首の疲労感についての評点(図13(C)参照)を調べた。図10では、複数の乗員26の平均が示されており、図10のエラーバーは、標準偏差である。
【0065】
図10に示されるように、当該評点は、第1比較例では高く、第2比較例では高く(第1比較例より少し低く)、本実施形態では低い。このため、本実施形態では、乗員26の首の疲労感を小さくできる。
【0066】
(第4実験例)
【0067】
図11は、第1比較例の車両用シート装置60、第2比較例の車両用シート装置70及び本実施形態の車両用シート装置14についての肩の疲労感を示すグラフである。
【0068】
第4実験例では、乗員26の肩の疲労感についての評点(図13(C)参照)を調べた。図11では、複数の乗員26の平均が示されており、図11のエラーバーは、標準偏差である。
【0069】
図11に示されるように、当該評点は、第1比較例では高く、第2比較例では高く(第1比較例と同等であり)、本実施形態では低い。このため、本実施形態では、乗員26の肩の疲労感を小さくできる。
【0070】
(第5実験例)
【0071】
図12は、第1比較例の車両用シート装置60、第2比較例の車両用シート装置70及び本実施形態の車両用シート装置14についての腕の疲労感を示すグラフである。
【0072】
第5実験例では、乗員26の腕の疲労感についての評点(図13(C)参照)を調べた。図12では、複数の乗員26の平均が示されており、図12のエラーバーは、標準偏差である。
【0073】
図12に示されるように、当該評点は、第1比較例では高く、第2比較例では高く(第1比較例より少し低く)、本実施形態では低い。このため、本実施形態では、乗員26の腕の疲労感を小さくできる。
【0074】
(第6実験例)
【0075】
図14は、本実施形態の車両用シート装置14のハンドレスト36についての手周辺視野で前方が見える高さの人数と腕のしびれを感じない高さの人数とを示す表であり、図15は、本実施形態の車両用シート装置14のハンドレスト36についての手周辺視野で前方が見える高さの人数(実線)と腕のしびれを感じない高さの人数(破線)とを示すグラフである。
【0076】
第6実験例では、本実施形態の車両用シート装置14において、乗員26の手を支持するハンドレスト36(支持面36A中央)の高さを変更した場合に、手周辺視野で前方が見える乗員26の人数と、腕のしびれを感じない乗員26の人数と、を調べた。
【0077】
図14及び図15に示されるように、乗員26のヒップポイントHPからのハンドレスト36の高さを250mmから390mmに増加させるに従い、手周辺視野で前方が見える乗員26の人数が増加した。そして、乗員26のヒップポイントHPからのハンドレスト36の高さが320mm以上である際に、手周辺視野で前方が見える乗員26が過半数以上になった。また、当該ハンドレスト36の高さが280mm、310mm、360mmである際に当該乗員26の人数の増加率が大きくなった。
【0078】
さらに、乗員26のヒップポイントHPからのハンドレスト36の高さを570mmから420mmに減少させるに従い、腕のしびれを感じない乗員26の人数が増加した。そして、乗員26のヒップポイントHPからのハンドレスト36の高さが500mm以下である際に、腕のしびれを感じない乗員26が過半数以上になった。また、当該ハンドレスト36の高さが540mm、500mmである際に当該乗員26の人数の増加率が大きくなった。なお、乗員26が腕のしびれを感じるのは、乗員26の前腕の少なくとも一部が乗員26の心臓よりも高くなることが原因である。
【0079】
なお、本実施形態では、調整機構38がハンドレスト36の使用位置を2段階の高さに調整する。しかしながら、調整機構38がハンドレスト36の使用位置を3段階以上の高さに調整してもよい。
【0080】
また、本実施形態では、ハンドレスト36の最低使用位置(第1使用位置)がハンドレスト36の適切高さ下限(支持面36A中央がJM50相当の体格である乗員26のヒップポイントHPから320mmの高さ)にされる。しかしながら、ハンドレスト36の最低使用位置がハンドレスト36の適切高さ下限より高くされてもよい。
【0081】
さらに、本実施形態では、ハンドレスト36の最高使用位置(第2使用位置)がハンドレスト36の適切高さ上限(支持面36A中央がJM50相当の体格である乗員26のヒップポイントHPから500mmの高さ)にされる。しかしながら、ハンドレスト36の最高使用位置がハンドレスト36の適切高さ上限より低くされてもよい。
【0082】
また、本実施形態では、ハンドレスト36の適切高さ下限が、支持面36A中央がJM50相当の体格である乗員26のヒップポイントHPから320mmの高さにされる。しかしながら、ハンドレスト36の適切高さ下限が、支持面36A中央がJM50相当の体格である乗員26のヒップポイントHPから280mm、又は、310mmの高さにされてもよい。
【0083】
さらに、本実施形態は、乗員26がJM50相当の体格である場合を基準にして、説明した。しかしながら、本実施形態は、乗員26がJF05相当の体格である場合、乗員26がJM95相当の体格である場合、乗員26がAM50(JM95と等しい)相当の体格である場合等、乗員26の幅広い体格に対応できる。
【0084】
また、本実施形態では、2個の回転シャフト34がハンドレスト36を支持する。しかしながら、1個又は3個以上の回転シャフト34がハンドレスト36を支持してもよい。
【0085】
さらに、本実施形態では、ハンドレスト装置10がヘッドレスト22に取り付けられる。しかしながら、ハンドレスト装置10がシートバック20に取り付けられてもよい。
【符号の説明】
【0086】
10 ハンドレスト装置
12 乗員支持装置
16 シート
24 アームレスト
24A 突出板
26 乗員
36 ハンドレスト
38 調整機構
図1
図2
図3
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図5
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図9
図10
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図14
図15