(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057482
(43)【公開日】2024-04-24
(54)【発明の名称】コンセント装置
(51)【国際特許分類】
G01R 31/69 20200101AFI20240417BHJP
H01R 27/00 20060101ALI20240417BHJP
H01R 13/66 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
G01R31/69
H01R27/00 A
H01R13/66
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164254
(22)【出願日】2022-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(74)【代理人】
【識別番号】100124420
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 清隆
(72)【発明者】
【氏名】林 文移
(72)【発明者】
【氏名】吉川 亜緒依
【テーマコード(参考)】
2G014
5E021
【Fターム(参考)】
2G014AA13
2G014AB62
5E021FA03
5E021FA16
5E021FB21
5E021FC27
5E021KA20
5E021MA04
(57)【要約】
【課題】プラグの接触不良を検知する検出精度を安定させたコンセント装置を提供する。
【解決手段】コンセント装置1は、ハウジング10内に、挿入口7から挿入されるプラグ2の栓刃2a,2aを挟持する第1刃受けバネ3a及び第2刃受けバネ3bを有する刃受け金具6が設けられている。第1刃受けバネ3aと第2刃受けバネ3bとは、左右に並んで設けられている。また、第1刃受けバネ3aの左右近傍に、栓刃2aに流れる電流を計測する電流センサ11と、刃受け金具6に電流が流れることによって発生する磁界の大きさを計測する磁気センサ12とが設けられている。加えて、磁気センサ12が磁束密度を計測する際に、第2刃受けバネ3bからの磁界の影響が出ないように、第1刃受けバネ3aと第2刃受けバネ3bとの間を遮断する磁場遮断板4が配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースの前面に設けられたコンセント口から挿入されたプラグの栓刃と電気的に接続される刃受けバネを有する刃受け金具が設置されてなるコンセント装置であって、
前記刃受け金具に流れる電流の大きさを計測する電流センサと、前記刃受け金具の近傍に、電流が流れることによって発生する磁界の大きさを計測する磁気センサとが配置されているとともに、
前記コンセント装置の正常時における前記電流センサによって計測される事前電流計測結果と、前記コンセント装置の正常時における前記磁気センサによって計測される事前磁気計測結果とが対応付けられた状態で予め記憶されている記憶部と、
前記プラグと前記刃受けバネとの接触不良を判定する制御部と、
前記制御部において接触不良と判定された際にその旨を報知する報知部とが設けられており、
前記制御部は、前記磁気センサによる計測結果と、前記電流センサによる計測結果に応じた事前電流計測結果に対応付けて前記記憶部に記憶されている前記磁気計測結果とを比較することによって、前記刃受けバネとの接触不良を判定することを特徴とするコンセント装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は差し込まれたプラグを介して電気機器に電源を供給するコンセント装置に関し、特にプラグの接触不良を検知する機能を備えたコンセント装置に関する。
【背景技術】
【0002】
挿入されたプラグの接触不良を、プラグの栓刃と刃受けバネとの間の電圧差から検知する機能を備えたコンセント装置がある。例えば、特許文献1に記載のコンセント装置では、挿入されたプラグの栓刃の先端に接触する刃受けバネの内部に、接触子が固定されている。そして、プラグの栓刃に接触した接触子と刃受けバネとの電圧差が所定の閾値(電路電圧100Vに対して例えば5V)を超えたら、判定部が接触不良と判定する。そして、接触不良と判定したら、遮断回路により電路を遮断し、警報回路を報知動作するように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記刃受けバネの奥部に接触子を設けたコンセント装置では、プラグの栓刃と接触子とが接触する必要があるため、接触抵抗によってプラグの栓刃と刃受けバネとの間の電圧差の検出精度にばらつきが発生する。したがって、接触不良かどうかを判定する際に、精度が低くなる問題があった。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題に鑑み、プラグの接触不良を検知する検出精度を安定させたコンセント装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、ケースの前面に設けられたコンセント口から挿入されたプラグの栓刃と電気的に接続される刃受けバネを有する刃受け金具が設置されてなるコンセント装置であって、刃受け金具に流れる電流の大きさを計測する電流センサと、刃受け金具の近傍に、電流が流れることによって発生する磁界の大きさを計測する磁気センサとが配置されているとともに、コンセント装置の正常時における電流センサによって計測される事前電流計測結果と、コンセント装置の正常時における磁気センサによって計測される事前磁気計測結果とが対応付けられた状態で予め記憶されている記憶部と、プラグと刃受けバネとの接触不良を判定する制御部と、制御部において接触不良と判定された際にその旨を報知する報知部とが設けられており、制御部は、磁気センサによる計測結果と、電流センサによる計測結果に応じた事前電流計測結果に対応付けて記憶部に記憶されている磁気計測結果とを比較することによって、刃受けバネとの接触不良を判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、刃受け金具に流れる電流の大きさを計測する電流センサと、刃受け金具の近傍に、電流が流れることによって発生する磁界の大きさを計測する磁気センサとが配置されているとともに、コンセント装置の正常時における電流センサによって計測される事前電流計測結果と、コンセント装置の正常時における磁気センサによって計測される事前磁気計測結果とが対応付けられた状態で予め記憶されている記憶部と、プラグと刃受けバネとの接触不良を判定する制御部と、制御部において接触不良と判定された際にその旨を報知する報知部とが設けられており、制御部は、磁気センサによる計測結果と、電流センサによる計測結果に応じた事前電流計測結果に対応付けて記憶部に記憶されている磁気計測結果とを比較することによって、刃受けバネとの接触不良を判定する構成を採用したものである。よって、磁界の大きさを接触式の検出方式によって検出する構成と違い、接触抵抗の影響を受けることなく正確に、プラグの接触不良を検知して報知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係るコンセント装置の実施形態を示す概略構成図である。
【
図2】栓刃と刃受けバネとの接続部及び電流線を示す拡大参考図であって、(A)は接触不良が発生していない状態、(B)は接触不良が発生している状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明に係るコンセント装置の実施形態を示す概略構成図である。また、
図2は、栓刃2aと刃受けバネ3との接続部及び電流線31を示す拡大参考図であって、(A)は接触不良が発生していない状態、(B)は接触不良が発生している状態を示している。
【0010】
コンセント装置1は、ハウジング10内に、挿入口7から挿入されるプラグ2の栓刃2a,2aを挟持する2つの刃受けバネ(第1刃受けバネ3a及び第2刃受けバネ3b)を有する刃受け金具6が設けられている。第1刃受けバネ3aと第2刃受けバネ3bとは、左右に並んで設けられている。また、第1刃受けバネ3aの左右近傍に、栓刃2aに流れる電流を計測する電流センサ11と、刃受け金具6に電流が流れることによって発生する磁界の大きさを計測する磁気センサ12とが設けられている。加えて、磁気センサ12が磁束密度を計測する際に、第2刃受けバネ3bからの磁界の影響が出ないように、第1刃受けバネ3aと第2刃受けバネ3bとの間を遮断する磁場遮断板4が配置されている。
【0011】
更にハウジング10内には、電流センサ11及び磁気センサ12による計測結果が入力される入力部20が設けられている。また、ハウジング10内には、入力部20に入力された磁気センサ12による磁束密度から、コンセントに流れる電流に応じた誘導磁界以外の磁界をカットするために、商用電波周波数50/60Hzの信号のみを通過させるフィルタ回路21が設けられている。
【0012】
加えて、ハウジング10内には、コンセント装置1を制御する制御部15と、記憶部22と、報知部26とが設けられている。
制御部15は、演算部23と、判定部24と、出力部25によって構成される。記憶部22には、コンセント装置1の正常時における電流センサ11によって計測される電流の実効値である事前電流計測結果と、コンセント装置1の正常時における磁気センサ12によって計測される磁束密度である事前磁気計測結果とが対応付けられた状態で予め単位電流毎に記憶されている。単位電流は例えば0.1Aであって、記憶部22は、例えば0Aから15Aの範囲で、事前電流計測結果0.1A毎に対応した事前磁気計測結果を記憶する。
【0013】
演算部23は、フィルタ回路21によって得られたデータを基に、電流センサ11及び磁気センサ12によって計測される電流及び磁束密度の実効値を算出する。そして、演算部23は、更に、磁気センサ12によって計測される磁束密度の実効値と、電流センサ11によって計測される電流の実効値に応じた事前電流計測結果に対応付けて記憶部22に記憶されている事前磁気計測結果とを比較して、差分を算出する。判定部24は、演算部23によって算出された該差分を基に、プラグ2と第1刃受けバネ3aとの接触不良の判定を行う。出力部25は、判定部24が接触不良であると判定した際に、報知部26へ警報の報知を行うように命令する。
【0014】
以下、コンセント装置1の動作手順について説明する。
まず、コンセント装置1の正常時において、第1刃受けバネ3aに0Aから順に大きくなるように単位電流毎の電流を試験的に流すとともに、その際に電流センサ11によって計測される電流の実効値を事前電流計測結果として、磁気センサ12によって計測される磁束密度の実効値を事前磁気計測結果として両者を対応付けた状態で記憶部22に記憶される。
【0015】
一方、栓刃2aと第1刃受けバネ3aとが接触する面を拡大視すると、栓刃2aと第1刃受けバネ3aとは双方共に、完全な平面ではなく起伏が複数ある面となっている。そのため、
図2(A)に示すように、栓刃2aと第1刃受けバネ3aとは、接触部30において、真に接触している。そして、接触部30を電流線31が通ることで磁界が発生し、該磁界による磁束密度を磁気センサ12によって計測する。そして、プラグ2と第1刃受けバネ3aとの接触不良が発生すると、
図2(B)に示すように、栓刃2aと第1刃受けバネ3aとが真に接触する接触部30が少なくなり、電流線31が減少した接触部30に集中し、磁気センサ12による計測結果が変動する。よって、磁気センサ12によって計測される磁束密度の実効値と、電流センサ11によって計測される電流の実効値と同値である事前電流計測結果に対応付けて記憶部22に記憶されている事前磁気計測結果との差分が変動し、その結果を元に判定部24によってプラグ2と第1刃受けバネ3aとの接触不良が起きているか否かを判定する。
【0016】
具体的には、電流センサ11及び磁気センサ12によって計測される電流及び磁束密度は交流電流によるものであるため、演算部23は、電流及び磁束密度の実効値を算出する。また、演算部23は、記憶部22を参照して今回算出した電流の実効値と同値である事前電流計測結果に対応付けられている事前磁気計測結果を読み出す。さらに、今回算出した磁束密度の実効値と読み出した事前磁気計測結果とを比較して、差分を算出する。そして、該差分が、所定の閾値(例えば10μT)を超えた際にプラグ2と第1刃受けバネ3aとの接触不良が発生したと判断する。
【0017】
また、判定部24は、一定時間(例えば10秒間)毎の間に磁気センサ12によって計測される磁束密度の実効値と、電流センサ11によって計測される電流の実効値に応じた事前電流計測結果に対応付けて記憶部22に記憶されている事前磁気計測結果との差分が所定の閾値(例えば10μT)を超えた累計時間が、所定時間(例えば3秒)を超えたら、プラグ2と第1刃受けバネ3aとの接触不良が発生したと判断しても良い。
【0018】
判定部24が、プラグ2と第1刃受けバネ3aとの接触不良が発生したと判断した場合、出力部25に信号を送り、出力部25は、報知部26を報知動作させる。
【0019】
上述したような実施形態のコンセント装置1によれば、刃受けバネ3aに流れる電流を計測する電流センサ11と、刃受けバネ3aの近傍に、電流が流れることによって発生する磁界による磁束密度を計測する磁気センサ12とが配置されているとともに、コンセント装置1の正常時における電流センサ11によって計測される事前電流計測結果と、コンセント装置1の正常時における磁気センサ12によって計測される事前磁気計測結果とが対応付けられた状態で予め記憶されている記憶部22と、プラグ2と刃受けバネ3aとの接触不良を判定する制御部15と、制御部15において接触不良と判定された際にその旨を報知する報知部26とが設けられており、制御部15は、磁気センサ12による計測結果と、電流センサ11による計測結果に応じた事前電流計測結果に対応付けて記憶部22に記憶されている磁気計測結果とを比較することによって、刃受けバネ3aとの接触不良を判定する構成を採用したものである。よって、磁界の大きさを接触式の検出方式によって検出する構成と違い、接触抵抗の影響を受けることなく正確に、プラグ2の接触不良を検知して報知することができる。
また、接触不良が発生したら合わせて報知部26を備えているため、状況を認識しやすい。
【0020】
なお、本発明に係るコンセント装置は、上記実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、コンセント装置の全体的な構成は勿論、プラグの接触不良の判定に係る構成等についても必要に応じて適宜変更することができる。
【0021】
例えば、フィルタ回路の有無、及び磁気センサの位置などの構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更するものである。また、2つの刃受けバネ(又は刃受け金具)のどちらを第1、第2にするかは任意であり、電流センサと磁気センサとの位置を入れ替えても良い。
また、電流センサと磁気センサとを第1刃受けバネの左右に配置するのではなく、第1刃受けバネの左右どちらか一方に電流センサと磁気センサとを配置しても良い。
【0022】
なお、上記第実施形態では、接触不良を検知したら報知部によって報知する機能を備えているが、報知部に加えて、電路を遮断する遮断機能を設けても良い。更に、使用者に接触不良を報知するために、コンセント装置の外部に表示部を別途に設けても良い。
【0023】
また、コンセント装置を流れる電流の影響を受けない位置に、外乱磁場を計測するための磁気センサを設けても良い。計測した外乱磁場を演算部によって磁束密度の差分を計算する際に用いることで、外乱磁場による磁束密度の差分の誤差をなくすことができる。
また、フィルタ回路において、バンドパスフィルタ、及びハイパスフィルタとローパスフィルタの組み合わせのどちらを採用しても良い。
【0024】
また、単位電流は、1A、5A等任意の値を設定して良い。
また、事前電流計測結果及び事前磁気計測結果を、単位電流毎に記憶部へ記憶させるのではなく、任意に決められる不規則な電流値毎(例えば1A、3A、5A、10A、15A毎)に記憶させる構成を採用しても良い。
また、記憶部へ記憶する事前電流計測結果の範囲は、適宜定められるものであって、コンセント装置の定格電流に合わせたもの、コンセント装置の定格電流の範囲より大きい又は小さいもの、0Aから計測するのではなく任意の値(例えば1A)から計測するもの等が考えられる。
また、電流センサによって計測される電流の実効値が、記憶部に記憶されている事前電流計測結果と同じ桁数ではない場合、電流センサによって計測される電流の実効値の端数を四捨五入して、四捨五入した値に応じた事前電流計測結果を用いる構成を採用しても良い。
【符号の説明】
【0025】
1・・コンセント装置、2・・プラグ、2a・・栓刃、3a,3b・・刃受けバネ、4・・磁場遮断板、6・・刃受け金具、7・・挿入口、10・・ハウジング、11・・電流センサ、12・・磁気センサ、15・・制御部、20・・入力部、21・・フィルタ回路、22・・記憶部、23・・演算部、24・・判定部、25・・出力部、26・・報知部、30・・接触部、31・・電流線。