(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057499
(43)【公開日】2024-04-24
(54)【発明の名称】異物捕集用フィルタ、マスク、異物捕集用フィルタの製造方法、マスクの製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 5/02 20060101AFI20240417BHJP
A41D 13/11 20060101ALI20240417BHJP
D04H 1/728 20120101ALI20240417BHJP
B01D 39/16 20060101ALI20240417BHJP
A61L 9/16 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
B32B5/02 A
A41D13/11 Z
D04H1/728
B01D39/16 E
B01D39/16 A
A61L9/16 F
A61L9/16 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164288
(22)【出願日】2022-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】322010006
【氏名又は名称】株式会社ピー・エル・エム
(71)【出願人】
【識別番号】596089296
【氏名又は名称】株式会社白鳩
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】梅原 健人
(72)【発明者】
【氏名】横井 隆直
【テーマコード(参考)】
4C180
4D019
4F100
4L047
【Fターム(参考)】
4C180AA07
4C180AA17
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4C180DD09
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4L047AA25
4L047AB02
4L047AB08
4L047CB08
4L047CC03
4L047CC12
(57)【要約】
【課題】異物の捕集効率を高めつつ、通気性の低下を極力抑制することができる異物捕集用フィルタ、そのフィルタを用いたマスク、フィルタの製造方法及びマスクの製造方法を提供する。
【解決手段】マスクは、通気性を有する一対の外層シートと、一対の外層シートに挟まれたナノファイバーからなる中間繊維層と、を備えている。中間繊維層において、帯電性を有する粒状物が分散した状態でナノファイバーに固着している。外層シートは、例えば、ポリエチレンからなる連続気泡発泡体シートである。ナノファイバーは、例えばポリウレタンを主原料として構成されている。帯電性を有する粒状物は、例えばポリプロピレンからなる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気性を有する一対の基材シートと、
一対の前記基材シートに挟まれたナノファイバーからなる中間繊維層と、
を備え、
前記中間繊維層において、帯電性を有する粒状物が分散した状態で前記ナノファイバーに固着している、異物捕集用フィルタ。
【請求項2】
前記各基材シートは、連続気泡発泡体からなり、
前記粒状物の幅は、前記各基材シートの平均気泡径よりも小さい、請求項1に記載の異物捕集用フィルタ。
【請求項3】
前記粒状物の幅は、前記各基材シートの平均気泡径の1/5以下の幅である、請求項2に記載の異物捕集用フィルタ。
【請求項4】
前記粒状物として、前記ナノファイバーの平均繊維径よりも大きい粒状物が含まれている、請求項2に記載の異物捕集用フィルタ。
【請求項5】
前記粒状物として、前記ナノファイバーの平均繊維径よりも小さい粒状物が含まれている、請求項2に記載の異物捕集用フィルタ。
【請求項6】
前記各基材シートは、ポリウレタンを主原料とした連続気泡発泡体からなり、
前記中間繊維層は、ポリウレタンを主原料として構成されたナノファイバーからなり、
前記粒状物は、ポリプロピレンを主原料として構成されている、請求項2~5のいずれか1項に記載の異物捕集用フィルタ。
【請求項7】
着用者の口及び鼻を覆うとともに、請求項6に記載の異物捕集用フィルタを用いて構成されたマスク本体と、
前記マスク本体の左右方向の両端側に設けられ、着用者の耳に掛けられる一対の耳掛け部と、
を備えるマスク。
【請求項8】
前記マスク本体における前記各基材シートの内面に前記中間繊維層が形成されており、
前記各基材シートの前記中間繊維層同士が重ね合わされている、請求項7に記載のマスク。
【請求項9】
請求項8に記載のマスクの製造方法において、
前記基材シートの片面に前記中間繊維層を積層する工程と、
前記中間繊維層が積層された一対の前記基材シートのうち少なくとも一方の前記中間繊維層に接着剤を吹き付け、前記中間繊維層同士を重ね合わせた状態になるように一対の前記基材シートを貼り合わせる工程と、
貼り合わせた前記基材シートの一部を前記マスクとして分離する工程と、
を備える、マスクの製造方法。
【請求項10】
請求項8に記載のマスクの製造方法において、
前記基材シートの片面に前記中間繊維層を積層する工程と、
前記中間繊維層が積層された一対の前記基材シートを、前記中間繊維層同士を重ね合わせた状態になるように重ね合わせる工程と、
重ね合わされた状態の一対の前記基材シートの一部を前記マスクの形状を有するシート積層体として分離する工程と、
分離された前記シート積層体の周縁部を接着することにより、前記シート積層体を一体化して前記マスクを製造する工程と、
を備える、マスクの製造方法。
【請求項11】
請求項8に記載のマスクの製造方法において、
前記基材シートの片面に前記中間繊維層を積層する工程と、
前記中間繊維層が積層された一対の前記基材シートのうち少なくとも一方の前記中間繊維層に接着剤を吹き付け、前記中間繊維層同士を重ね合わせた状態になるように一対の前記基材シートを貼り合わせる工程と、
貼り合わせた前記基材シートの一部を、前記マスクの左右方向の中央において前記マスクを二分した形状を有するマスクシートとして分離する工程と、
一対の前記マスクシートにおいて前記マスクの左右方向の中央側になる側縁部を接合することにより、前記マスクを製造する工程と、
を備える、マスクの製造方法。
【請求項12】
請求項8に記載のマスクの製造方法において、
前記基材シートの片面に前記中間繊維層を積層する工程と、
前記中間繊維層が積層された一対の前記基材シートを、前記中間繊維層同士を重ね合わせた状態になるように重ね合わせる工程と、
重ね合わされた状態の一対の前記基材シートの一部を、前記マスクの左右方向の中央において前記マスクを二分した形状を有するマスク半体として分離する工程と、
前記中間繊維層同士が重ね合わされた状態となるように重ね合わせた一対の前記マスク半体の周縁部のうち、少なくとも所定の周縁部を接着することにより、一対の前記マスク半体を一体化してマスクシートを製造する工程と、
一対の前記マスクシートにおいて前記マスクの左右方向の中央側になる側縁部を接合することにより、前記マスクを製造する工程と、
を備え、
前記所定の周縁部は、前記マスクの左右方向の中央側になる側縁部以外の周縁部である、マスクの製造方法。
【請求項13】
請求項6に記載の異物捕集用フィルタの製造方法において、
前記粒状物の原料となる帯電性パウダーをナノファイバー原料溶液に混合する混合工程と、
前記帯電性パウダーが混合された前記ナノファイバー原料溶液を供給する供給部に、接地電極部の電圧よりも高い電圧を高電圧発生装置により印加した状態で、前記接地電極部に向かって前記供給部から放たれた前記ナノファイバー原料溶液をナノファイバーにして前記基材シートの片面に積層する工程を備え、
前記混合工程において前記ナノファイバー原料溶液に混合される前記帯電性パウダーは、帯電性のパウダーである、異物捕集用フィルタの製造方法。
【請求項14】
前記混合工程において前記ナノファイバー原料溶液に混合される前記帯電性パウダーの平均粒子径は、前記基材シートの平均気泡径よりも小さい、請求項13に記載の異物捕集用フィルタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異物捕集用フィルタ、異物捕集用フィルタを用いて製造されたマスク、異物捕集用フィルタの製造方法、及びマスクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されているように、口及び鼻を覆うマスクに用いられるウィルス捕集用フィルタが知られている。このフィルタは、連続気泡発泡体からなるシート状の基材と、基材に形成されたナノファイバー含浸層とを備えている。ナノファイバー含浸層が存在することにより、ウィルスの捕集効率を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ウィルス等の微細な異物の捕集効率を更に高めようとすると、例えば、基材の気泡径を小さくしたり、ナノファイバーの径を大きくしたりする必要がある。しかしながら、この場合、フィルタの通気性が低下するといった問題が生じ得る。このように、異物の捕集効率を高めつつ、フィルタ通気性の低下を抑制する技術については、未だ改善の余地がある。
【0005】
本発明は、異物の捕集効率を高めつつ、通気性の低下を極力抑制することができる異物捕集用フィルタ、異物捕集用フィルタを用いて製造されたマスク、異物捕集用フィルタの製造方法、及びマスクの製造方法を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、通気性を有する一対の基材シートと、
一対の前記基材シートに挟まれたナノファイバーからなる中間繊維層と、
を備え、
前記中間繊維層において、帯電性を有する粒状物が分散した状態で前記ナノファイバーに固着している。
【0007】
本発明では、ナノファイバーに固着した帯電性を有する粒状物により、ウィルスや花粉等の微細な異物の捕集効率を高めることができる。また、中間繊維層に分散されている帯電性の物が粒状である。このため、異物の捕集効率を高めるための粒状物が、中間繊維層の通気性に影響を及ぼしにくい。したがって、本発明によれば、異物の捕集効率を高めつつ、通気性の低下を極力抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】(A)は電子顕微鏡によるフィルタ表面の撮像画像であり、(B)はその画像を模式的に表した図。
【
図6】ナノファイバー原料溶液の塗布装置を示す図。
【
図8】片面に中間繊維層が積層された一対の基材シートの貼り合わせ態様を示す図。
【
図10】その他の実施形態に係るマスクの製造工程を示すフローチャート。
【
図11】その他の実施形態に係るマスクの製造工程を示すフローチャート。
【
図12】その他の実施形態に係るマスクの製造工程を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を具体化した一実施形態のマスクについて図面を参照しながら説明する。
【0010】
図1に示すように、マスク10は、着用者の口及び鼻を覆うマスク本体11と、マスク本体11の左右方向の両端側に形成された一対の耳掛け部12とを備え、左右対称となる形状を有している。各耳掛け部12は、着用者の耳を挿入する開口部13を有している。開口部13は、横長の長円形状とされている。
図2に示すように、耳掛け部12の開口部13に着用者の耳が掛けられることにより、マスク10が着用者の顔に装着される。
【0011】
図3に示すように、マスク10は、一対の外層シート21と、一対の外層シート21に挟まれた中間繊維層22とを備えている。外層シート21は、除膜処理が施された高分子ポリマー製の連続気泡発泡体シートであり、本実施形態ではポリウレタンの連続気泡発泡体シートである。このため、外層シート21は、通気性及び伸縮性を有している。各外層シート21の厚み寸法は、例えば0.5mm~5.0mmの範囲内に設定されている。
【0012】
中間繊維層22は、ナノファイバーからなり、外層シート21の内面に積層された通気性を有する繊維層である。ナノファイバーは、例えば網状をなしており、外層シート21の内面に絡みついている。本実施形態のナノファイバーは、ポリウレタンを主原料として構成され、詳しくは、ポリウレタン及びポリビニルアルコールからなる。このため、中間繊維層22は外層シート21の伸縮に対する追従性が高い。中間繊維層22の厚み寸法は、外層シート21の厚み寸法よりも小さい。中間繊維層22の厚み寸法は、例えば、外層シート21の厚み寸法の1/3以下、1/5以下又は1/10以下の値に設定されている。
【0013】
各外層シート21の中間繊維層22同士が重ね合わされた状態で、各外層シート21及び各中間繊維層22が積層されている。各中間繊維層22の全域は、接着剤により貼り合わされている。これにより、各外層シート21及び各中間繊維層22が一体化されている。各中間繊維層22の全域に接着剤が付着しているものの、各中間繊維層22の貼り合わせ面における通気性は確保されている。
【0014】
中間繊維層22には、ウィルスや花粉等の微細な異物の捕集効率を高めるための工夫がなされている。詳しくは、
図4に示すように、中間繊維層22において、帯電性を有する粒状物が分散した状態でナノファイバーに固着している。
図4(A)は、外層シート21を中間繊維層22側から電子顕微鏡(SEM)で撮像した画像である。
図4(B)は、この画像を模式的に表した図である。
図4(B)には、連続気泡発泡体からなる外層シート21の4つの気泡、粒状物及びナノファイバーが模式的に示されている。ナノファイバーは、外層シート21内面の全面に絡みあって外層シート21と一体化しているが、
図4(B)では、便宜上、外層シート21の4つの気泡領域のうち1つの気泡領域のみにナノファイバーを模式的に示している。このため、ナノファイバーは、実際には、気泡領域のみに存在するわけではない。また、粒状物についても、便宜上、4つの気泡のうち1つの気泡領域のみに太線の実線にて示している。
【0015】
ナノファイバーに固着した粒状物は、帯電性に優れるポリプロピレンからなる粒状物である。中間繊維層22に帯電性を有する粒状物が分散されていることにより、微細な異物の捕集効率を高めることができる。また、中間繊維層22に分散されている帯電性の物が粒子状であるため、外層シート21の気泡を塞ぎにくい。このため、中間繊維層22の通気性に及ぼす影響を抑制しつつ、異物の捕集効率を高めることができる。
【0016】
連続気泡発泡体からなる外層シート21には、通気性を確保するための気泡が多数形成されている(
図4(B)参照)。外層シート21において気泡を覆うように網状のナノファイバーが形成されている。ナノファイバーが網状であるため、気泡を覆うように形成されたナノファイバーには無数の隙間が形成されている。換言すれば、気泡を覆うように形成されたナノファイバーには無数の貫通孔が形成されている。本実施形態において、ナノファイバーに固着した帯電性を有する粒状物の幅は、各外層シート21の平均気泡径よりも小さい。これにより、粒状物が外層シート21の気泡を塞ぎにくくなる。また、
図4に示すように、網状に形成されたナノファイバーにおいて気泡上の部分に粒状物が固着されている。このため、気泡を通過する気体に含まれる異物を帯電性の粒状物により捕集しつつ、気泡を通過する気体を網状のナノファイバーの隙間から逃がすことができる。これにより、捕集効率を高めつつ、通気性の低下(換言すれば圧力損失の増加)を好適に抑制でき、マスク10の着用者の息苦しさを解消できる。
【0017】
外層シート21の平均気泡径は、例えば200~500μmの範囲内に設定されている。なお、ナノファイバーに固着した粒状物の幅は、例えば、外層シート21の平均気泡径の1/5以下、1/7以下、1/10以下、1/15以下又は1/20以下の幅に設定されている。
【0018】
ナノファイバーに固着した粒状物の幅は、例えば以下に説明する方法で測定することができる。外層シート21の複数個所(例えば10箇所)を中間繊維層22側から、所定の倍率(例えば1000~3000倍の間の倍率)で電子顕微鏡(SEM)により撮像する。そして、各箇所の撮像画像に写った各粒状物の幅を測定する。ここで、粒状物の幅とは、粒状物が球状である場合は粒状物の最大径のことであり、粒状物が球状でない場合は粒状物の最大幅のことである。本実施形態では、各箇所の撮像画像に写った粒状物の幅のうち最大値が、各外層シート21の平均気泡径よりも小さい。なお、ナノファイバーに固着した複数の粒状物のうち、一部の粒状物が相互に固着して一体化することがある。
図4(B)に示す例では、2つの粒状物が相互に固着している。外層シート21(基材シート70)の片面に中間繊維層22を積層する後述のフィルタ製造工程上、一部の粒状物が相互に固着することを無くすことはできない。このため、相互に固着した粒状物については、幅の測定対象から除外する。
【0019】
上述したように、フィルタ製造工程上、一部の粒状物が相互に固着することを無くすことはできない。このため、中間繊維層22においてナノファイバーに固着している粒状物の一部が相互に固着して一体化している構成も、中間繊維層22において粒状物が分散した状態でナノファイバーに固着している構成の技術的範囲に含まれる。
【0020】
外層シート21の平均気泡径は、例えば以下に説明する方法で測定することができる。外層シート21の厚み方向の中央を、この厚み方向と直交する方向で切断する。そして、シートの切断断面の複数個所(例えば10箇所)を所定の倍率(例えば50~100倍の間の倍率)で電子顕微鏡(SEM)により撮像する。そして、複数個所の撮像画像それぞれにおいて、大きい方から特定の複数個の気泡を選び、選んだ各気泡の最大径を測定する。また、複数個所の撮像画像それぞれにおいて、小さい方から特定の複数個の気泡を選び、選んだ各気泡の最大径を測定する。そして、大きい方から選んだ各気泡の最大径、及び小さい方から選んだ各気泡の最大径の算術平均値を平均気泡径とする。例えば、大きい方から5個選び、小さい方から5個選んだ場合、10個の気泡の最大径の算術平均値を平均気泡径とする。
【0021】
ナノファイバーに固着した粒状物として、ナノファイバーの平均繊維径よりも大きい幅を有する粒状物が含まれている。大きい幅を有する粒状物が中間繊維層22を構成するナノファイバーの間に入り込み、ナノファイバーの間に空隙を効果的に作り出すことができる。その結果、捕集効率を高めつつ、通気性の低下をより好適に抑制できる。後述のフィルタ製造工程上、ナノファイバーに固着した全ての粒状物を、ナノファイバーの平均繊維径よりも大きい幅を有する粒状物にできないこともあり得る。ただし、この場合、ナノファイバーに固着した全ての粒状物に対する、ナノファイバーの平均繊維径よりも小さい幅を有する粒状物の数の割合は少数である。したがって、ナノファイバーに固着した粒状物の中に、ナノファイバーの平均繊維径よりも小さい幅を有する粒状物が含まれていることは、通気性に対して実質的に影響を及ぼさない。
【0022】
中間繊維層22のナノファイバーの平均繊維径は、例えば以下に説明する方法で測定することができる。外層シート21に積層されたナノファイバーを所定の倍率(例えば1000~3000倍の間の倍率)で電子顕微鏡(SEM)により撮像する。そして、撮像画像に写った特定の複数本(例えば100本)のナノファイバーを選び、選んだナノファイバーの直径を測定する。そして、測定した特定の複数本の直径の算術平均値を平均繊維径とする。なお、直径とは、ナノファイバーの長手方向に直交する断面の直径である。ナノファイバーの断面が円形ではない場合、断面の最大幅を直径とみなして測定すればよい。また、相互に絡みあったナノファイバーは、測定対象から除外する。
【0023】
連続気泡発泡体のポリウレタンからなる外層シート21は、伸縮性に優れている。また、ポリウレタンを主原料として構成されたナノファイバーからなる中間繊維層22も伸縮性に優れている。このため、中間繊維層22は外層シート21に追従しやすい。一方、ポリプロピレンは、捕集効率向上に寄与する帯電性がポリウレタン及びポリビニルアルコールよりも優れているものの、伸縮性がポリウレタンを主原料とするナノファイバーよりも劣っている。このため、ポリプロピレンを主原料とするナノファイバーからなる層を外層シート21に積層させた場合、外層シート21の伸縮に起因して、ポリプロピレンを主原料とするナノファイバーからなる中間繊維層が破れてしまうおそれがある。
【0024】
この点、本実施形態では、粒状のポリプロピレンが中間繊維層22に分散されているため、中間繊維層22が破れてしまう事態の発生を抑制できる。このように、帯電性に優れたポリプロピレンからなる粒状物により異物の捕集効率を高めつつ、通気性及び伸縮性を高めたマスク10を提供することができる。これにより、マスク10の着用者の息苦しさを解消しつつ、異物捕集効率及び顔面への密着性に優れたマスク10を提供することができる。
【0025】
続いて、
図5を用いて、マスク10の材料となる異物捕集用フィルタの製造装置50について説明する。本実施形態では、特許第6586019号公報の
図1に記載の製造装置を例にして説明する。
【0026】
製造装置50は、ナノファイバー原料溶液を放出するプラス電極側の供給部と、接地電極部との間に高電圧を印加することにより、供給部と接地電極部との間に配置された基材シート70の片面にナノファイバーからなる繊維層を形成するための装置である。基材シート70は、マスク10を構成する外層シート21の素材となるものであり、ポリウレタンの連続気泡発泡体シートである。
【0027】
製造装置50は、供給部として、ワイヤ状の導電体51が巻かれた高電位側繰り出し器52と、高電位側繰り出し器52から繰り出された導電体51を巻き取る高電位側巻き取り器53とを備えている。導電体51は、例えば、金、銀、銅、ステンレス又はカーボンからなる。
【0028】
製造装置50は、導電体51にナノファイバー原料溶液を塗布する塗布装置60を備えている。塗布装置60は、
図6に示すように、導電体51にナノファイバー原料溶液を付着させる溶液付着部61と、溶液付着部61にナノファイバー原料溶液を供給するタンク62とを備えている。溶液付着部61は、内部に細かな孔が多数形成された多孔質の柔らかい物質からなり、例えばスポンジ又はフェルトからなる。溶液付着部61は、タンク62に入れられたナノファイバー原料溶液に浸されている。これにより、溶液付着部61にナノファイバー原料溶液を染み込ませる。導電体51は、溶液付着部61を貫通している。
【0029】
高電位側繰り出し器52が回転することにより繰り出された導電体51は、回転する高電位側巻き取り器53に巻き取られる。これにより、溶液付着部61に進入した後、溶液付着部61から出た導電体51には、ナノファイバー原料溶液の液滴が所定間隔で付着する。
【0030】
塗布装置60は、ナノファイバー原料溶液を貯留する貯留タンク63と、貯留タンク63に貯留されたナノファイバー原料溶液をタンク62に供給する供給管64とを備えている。また、塗布装置60は、タンク62内におけるナノファイバー原料溶液の液位調節部として、供給管64に設けられた電磁バルブを含む流量調節部65と、タンク62内におけるナノファイバー原料溶液の液位を検出する液位計66とを備えている。液位計66の検出信号は、流量調節部65の制御部に入力される。ナノファイバー原料溶液の液位が低下した場合、制御部による電磁バルブの開閉操作により、タンク62内におけるナノファイバー原料溶液の液位が目標液位に保たれる。
【0031】
貯留タンク63に貯留されたナノファイバー原料溶液は、ナノファイバーの原料となる高分子ポリマー(具体的には、ポリウレタン及びポリビニルアルコール)が可溶な溶媒に、主原料となるポリウレタンと、添加剤となるポリビニルアルコールとが溶かされたものである。ナノファイバー原料溶液には、ポリプロピレンからなる帯電性パウダーが混合されている。帯電性パウダーは、ナノファイバーに固着した帯電性を有する粒状物の原料となる。なお、溶媒は、例えば、ジメチルホルムアミド又はメチルエチルケトンである。帯電性パウダーが水溶性ポリウレタンの場合、溶媒として例えば水を用いることができる。
【0032】
図5の説明に戻り、製造装置50は、接地電極部として、シート状又は網状の接地導電体54が巻かれた接地側繰り出し器55と、接地側繰り出し器55から繰り出された接地導電体54を巻き取る接地側巻き取り器56とを備えている。接地側繰り出し器55と接地側巻き取り器56との間に張られた接地導電体54は、高電位側繰り出し器52と高電位側巻き取り器53との間に張られた導電体51と対向した状態になっている。接地側繰り出し器55が回転することにより繰り出された接地導電体54は、回転する接地側巻き取り器56に巻き取られる。
【0033】
製造装置50は、接地導電体54と導電体51との間のナノファイバー形成空間において基材シート70を移動させるための構成として、シート繰り出し器71及びシート巻き取り器72を備えている。シート繰り出し器71には、基材シート70が巻かれている。シート繰り出し器71が回転することにより繰り出された基材シート70は、回転するシート巻き取り器72に巻き取られる。
【0034】
製造装置50は、高電圧発生装置57を備えている。高電圧発生装置57は、接地導電体54が電気的に接続されたグランドの電位よりも高い高電圧(例えば15KV~35KV)を導電体51に印加する。これにより、ワイヤ状の導電体51に塗付されたナノファイバー原料溶液の液滴は、接地導電体54に向かって放たれ、ナノファイバーとなる。ナノファイバーは、シート繰り出し器71から繰り出された基材シート70の片面に積層される。すなわち、基材シート70の片面にナノファイバーからなる中間繊維層が形成される。中間繊維層においては、帯電性を有する粒状物が分散した状態でナノファイバーに固着している。片面に中間繊維層が積層された基材シート70は、回転するシート巻き取り器72に巻き取られる。なお、製造装置50は、導電体51からのナノファイバーの放出方向を安定させるための吸い込みダクト58を備えていてもよい。
【0035】
本実施形態において、帯電性パウダーは、ポリプロピレンからなる負帯電性のパウダーである。導電体51に付着したナノファイバー原料溶液の液滴は、正極性に帯電している。
【0036】
貯留タンク63に貯留するナノファイバー原料溶液に帯電性パウダーを混合する混合工程において、ナノファイバー原料溶液に混合される帯電性パウダーの平均粒子径は、基材シート70の平均気泡径よりも小さい。これにより、ナノファイバーに固着した粒状物の幅が、各基材シート70の平均気泡径よりも小さくなる。
【0037】
異物捕集用フィルタの異物の捕集効率及び通気性を所望の性能とするためには、中間繊維層に分散させる粒状物の幅を狙いとする幅に近づけることが望ましい。ここで、貯留タンク63のナノファイバー原料溶液に混合される帯電性パウダーは、ポリプロピレンからなる。ポリプロピレンは、水分率(公定水分率)が0%の非吸湿性材料である。このため、ポリプロピレンの帯電性パウダーを溶媒に混合した場合であっても、混合される前の帯電性パウダーの粒子径からの変化を極力抑制した状態で、基材シート70の中間繊維層に粒状物を分散させることができる。
【0038】
ナノファイバー原料溶液に混合する帯電性パウダー(つまり、ナノファイバー原料溶液に投入する前の帯電性パウダー)の平均粒子径は、例えば、レーザ回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒子径とすればよい。例えば、帯電性パウダーの粒度分布は、株式会社セイシン企業製の「レーザーマイクロンサイザー LMS-3000」(レーザー回折・散乱式粒度分布測定器)を用いて測定することができる。この測定方法の一例について説明すると、液中に分散させた帯電性パウダーを、測定セルを通過するように循環させ、測定セルの箇所でレーザー光を照射する。レーザー光は、測定セルを通過する粒子に当たることにより散乱する。粒子の大きさにより、散乱の仕方が変わる。散乱したレーザー光を検出器により受信することにより、散乱したレーザー光の強度を計算し、粒度分布を算出する。
【0039】
ちなみに、基材シート70にナノファイバーからなる中間繊維層を形成する方法は、上述した方法に限らず、例えば周知のエレクトロスピニング法であってもよい。
【0040】
続いて、
図7を用いて、マスク10の製造工程について説明する。マスク10は、
図5及び
図6に示した製造装置を用いて製造された異物捕集用フィルタから製造される。このフィルタは、上述したように、片面にナノファイバーからなる中間繊維層が積層されたものである。以下では、このフィルタの符号を80にて示し、フィルタ80を構成する基材シートの符号を81にて示し、基材シート81の片面に積層された中間繊維層の符号を82にて示す(
図8参照)。
【0041】
ステップS10では、フィルタ80を一対用意する。各フィルタ80のうちいずれかの中間繊維層82、又は各フィルタ80の中間繊維層82に向かって、吹き付け装置により霧状の接着剤を吹き付ける。接着剤としては、人体に無害の合成樹脂からなるものを用いることができる。フィルタ80における接着剤の噴霧範囲は、後述するステップS12の打ち抜き工程においてマスクシート100として分離される範囲を少なくとも含むように設定されている。
【0042】
続くステップS11では、
図8に示すように、中間繊維層82同士を重ね合わせた状態になるように一対のフィルタ80を貼り合わせる。霧状に吹き付けられた接着剤により一対のフィルタ80が貼り合わされているため、貼り合わされた一対のフィルタ80である積層フィルタの通気性を確保できる。
【0043】
続くステップS12では、ステップS11で得られた積層フィルタの一部を、マスク10としてプレス装置により打ち抜く。つまり、積層フィルタの一部がマスク10として分離される。この際、複数の積層フィルタを重ね合わせた状態で、プレス装置により打ち抜いてもよい。積層フィルタの基材シート81が、打ち抜かれたマスク10の外層シート21となり、積層フィルタの中間繊維層82が、打ち抜かれたマスク10の中間繊維層22になる。マスク10は、2層分の外層シート21及び2層分の中間繊維層22からなる4層構造になっている(
図3参照)。
【0044】
なお、積層フィルタからマスク10を分離する方法としては、プレス装置を用いた方法に限らず、例えば、刃物を有する裁断装置又はレーザ裁断装置を用いた方法であってもよい。
【0045】
マスク10を構成するマスク本体11及び耳掛け部12の全域にわたって、接着剤により一対の外層シート21が貼り合わせられている。このため、マスク10の使用や洗濯時等において、外層シート21から中間繊維層22のナノファイバーを剥がれにくくできる。
【0046】
以上説明した本実施形態によれば、異物の捕集効率を高めつつ、通気性の低下を極力抑制したマスク10を提供することができる。
【0047】
<その他の実施形態>
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0048】
・マスク10は、
図10に示す製造工程によっても製造することができる。
【0049】
ステップS20では、中間繊維層82同士を重ね合わせた状態になるように一対のフィルタ80を重ね合わせる。ステップS21では、重ね合わせたフィルタ80の一部を、正面視の形状がマスク10の形状を有する一対のシート積層体としてプレス装置により打ち抜く。打ち抜き後の一対のシート積層体は、中間繊維層22同士が重ね合わされた状態になっている。
【0050】
続くステップS22では、中間繊維層22同士を重ね合わせた状態における一対のシート積層体の周縁部を熱溶着により接合する。シート積層体の周縁部は、上側周縁部102と、下側周縁部103と、耳掛け部12の外側周縁部104及び内側周縁部105とである(
図9参照)。上側周縁部102は、マスク本体11の上側部分の周縁部である。下側周縁部103は、マスク本体11の下側部分の周縁部である。外側周縁部104は、耳掛け部12の外縁に沿った周縁部であり、上側周縁部102の一端及び下側周縁部103の一端から続く周縁部である。内側周縁部105は、耳掛け部12の開口部13に沿った周縁部である。一対のシート積層体が接合により一体化され、1つのマスク10となる。なお、耳掛け部12については、全域にわたって熱溶着を実施してもよい。
【0051】
内側周縁部105を含むマスク10の周縁部全域にわたって接合されている。このため、中間繊維層22のナノファイバーが剥がれた場合であっても、剥がれたナノファイバーがマスク10から落ちることを抑制できる。
【0052】
・中間繊維層のナノファイバーに固着した粒状物の大部分が、ナノファイバーの平均繊維径よりも大きい幅を有する粒状物であってもよい。この場合であっても、帯電性を有する粒状物が基材シート70の気泡を塞ぎにくくしつつ、捕集効率を高めることができる。
【0053】
・負帯電性を有するパウダーとしては、ポリプロピレンに限らず、例えば、テフロン(登録商標)、塩化ビニール、セロファン、セルロイド、ポリエチレン、アクリル、ポリエステル、ポリスチレン又はゴムからなるものであってもよい。
【0054】
また、帯電性パウダーとしては、一種に限らず、テフロン(登録商標)、塩化ビニール、セロファン、セルロイド、ポリエチレン、アクリル、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリスチレン及びゴムの中から選択した複数種の混合物であってもよい。
【0055】
・基材シートとしては、通気性及び伸縮性を有するものであれば、ポリウレタンに限らない。また、基材シートとしては、一種の高分子ポリマーの連続気泡発泡体に限らず、複数種の高分子ポリマーからなる連続気泡発泡体であってもよい。
【0056】
・中間繊維層を構成するナノファイバーの主原料としては、ポリウレタンに限らず、例えば、ポリアミド又はポリフッ化ビニリデンであってもよく、添加剤としてはポリビニルアルコールに限らない。なお、この場合において、ナノファイバー原料溶液の溶媒は、例えば、ジメチルホルムアミド又はメチルエチルケトンであってもよい。主原料が水溶性の場合、溶媒として例えば水を用いることができる。
【0057】
・基材シートとしては、連続気泡発泡体からなるものに限らず、例えば不織布からなるものであってもよい。不織布は、例えば、オレフィン繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ウレタン繊維、アセテート繊維又はレーヨン繊維からなるものである。繊維は、溶融紡糸、乾式紡糸又は乾式紡糸等により製造され、製造方法は限定されない。不織布の製造方法は特に限定されず、例えば、スパンポンド法、メルトブロー法、サーマルボンド法、ケミカルボンド法、ニードルパンチ法、スパンレース法又はエアレイド法である。
【0058】
・マスクとしては、
図1に示すものに限らず、例えば以下に説明するものであってもよい。マスクは、左右一対のマスクシートからなっている。一対のマスクシートのうち一方はマスクの左側部分を構成し、他方はマスクの右側部分を構成している。一対のマスクシートは、互いに左右対称となる形状を有している。
【0059】
マスクシートは、互いに隣接する側縁部同士が接合されている。この場合、各マスクシートの側縁部は互いの表面を向き合わせた状態で重ね合わせられ、その重ね合わせ状態で接合されている。これにより、各マスクシートにおいて互いに接合された接合部はマスク本体の裏面側(換言すると後方)に突出した状態となっている。接合部は、マスク本体の上下方向全域にわたって形成されている。マスクは、接合部に沿って左右に折り畳み可能とされている。
【0060】
以上説明したマスクの製造工程について、2つの例を説明する。
【0061】
1つ目の製造工程について、
図11を用いて説明する。ステップS30では、フィルタ80を一対用意する。各フィルタ80のうちいずれかの中間繊維層82、又は各フィルタ80の中間繊維層82に向かって、吹き付け装置により霧状の接着剤を吹き付ける。フィルタ80における接着剤の噴霧範囲は、後述するステップS32の打ち抜き工程においてマスクシートとして分離される範囲を少なくとも含むように設定されている。
【0062】
続くステップS31では、
図8に示すように、中間繊維層82同士を重ね合わせた状態になるように一対のフィルタ80を貼り合わせる。
【0063】
続くステップS32では、ステップS31で得られた積層フィルタの一部を、マスクシートとしてプレス装置により打ち抜く。つまり、積層フィルタの一部がマスクシートとして分離される。この際、複数の積層フィルタを重ね合わせた状態で、プレス装置により打ち抜いてもよい。積層フィルタの基材シート81が、打ち抜かれたマスクシートの外層シート21となり、積層フィルタの中間繊維層82が、打ち抜かれたマスクシートの中間繊維層22になる。マスクシートは、2層分の外層シート21及び2層分の中間繊維層22からなる4層構造になっている(
図3参照)。
【0064】
続くステップS33では、一対のマスクシートのうちマスク本体側の側縁部同士を接合することにより、一対のマスクシートを一体化してマスクを製造する。本実施形態では、基材シート70が高分子ポリマーからなるため、一対のマスクシートの側縁部を熱溶着により接合する。接合は、側縁部全域にわたって実施される。
【0065】
2つ目の製造工程について、
図12を用いて説明する。ステップS40では、中間繊維層82同士を重ね合わせた状態になるように一対のフィルタ80を重ね合わせる。ステップS41では、重ね合わせたフィルタ80の一部を、正面視の形状がマスクシートの形状を有する一対のマスク半体としてプレス装置により打ち抜く。打ち抜き後の一対のマスク半体は、中間繊維層22同士が重ね合わされた状態になっている。
【0066】
続くステップS42では、中間繊維層22同士を重ね合わせた状態における一対のマスク半体の周縁部のうち、側縁部以外の部分である、上側周縁部と、下側周縁部と、耳掛け部の外側周縁部及び内側周縁部とを熱溶着により接合する。上側周縁部は、マスク本体の上側部分の周縁部であり、側縁部の上端から続く周縁部である。下側周縁部は、マスク本体の下側部分の周縁部であり、側縁部の下端から続く周縁部である。外側周縁部は、耳掛け部の外縁に沿った周縁部であり、上側周縁部の一端及び下側周縁部の一端から続く周縁部である。内側周縁部は、耳掛け部の開口部に沿った周縁部である。一対のマスク半体が接合により一体化され、1つのマスクシートとなる。なお、耳掛け部については、全域にわたって熱溶着を実施してもよい。
【0067】
続くステップS43では、ステップS33と同様に、一対のマスクシートのうちマスク本体側の側縁部同士を熱溶着によって接合することにより、マスクを製造する。なお、熱溶着に代えて、一対のマスクシートの側縁部同士を縫製によって接合してもよい。
【0068】
・マスクとしては、
図3に示す4層構造のものに限らず、例えば、一対の中間繊維層22の間にポリウレタンからなる連続気泡発泡体シートが挟まれた構造のものであってもよい。
【0069】
・異物捕集用フィルタとしては、マスクに用いられるものに限らず、例えば、空調用フィルタ(具体的には例えば、換気扇用のフィルタ)として用いられたり、衣類に用いられたりするものであってもよい。
【符号の説明】
【0070】
10…マスク、21…外層シート(基材シート)、22…中間繊維層。