(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057516
(43)【公開日】2024-04-24
(54)【発明の名称】液位検出装置
(51)【国際特許分類】
G01F 23/263 20220101AFI20240417BHJP
【FI】
G01F23/263
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164318
(22)【出願日】2022-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000110778
【氏名又は名称】ニシム電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】多田 宜泰
(72)【発明者】
【氏名】柳田 朋香
【テーマコード(参考)】
2F014
【Fターム(参考)】
2F014AA05
2F014EA00
2F014GA01
(57)【要約】
【課題】液質の電気的特性の相違に関係なく、液位を正確に算出することができる液位検出装置を提供する。
【解決手段】測定対象となる液位の高さ方向に所定の間隔で配設される複数の電極11を有するセンサ部10で検出される電気特性値を取得する情報取得部22と、空気と異なる電気的特性を有する液体を基準液とし、情報取得部22が、センサ部10で検出可能な最低液位から最高液位までの間で所定間隔を空けて設定された液位ごとに基準液で検出された電気特性値を電極11ごとに取得した基準情報を記憶する基準情報記憶部23と、測定対象となる液体を対象液とし、情報取得部22が、対象液の液位に対して検出された電気特性値を電極11ごとに取得した対象情報を記憶する対象情報記憶部24と、基準情報と対象情報との誤差情報に基づいて、基準液と対象液との電気的特性の違いを補正して液位を算出する水位算出部25とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象となる液位の高さ方向に所定の間隔で配設される複数の電極を有するセンサ部で検出される電気特性値を取得する取得手段と、
空気と異なる電気的特性を有する液体を基準液とし、前記取得手段が、前記センサ部で検出可能な最低液位から最高液位までの間で所定間隔を空けて設定された液位ごとに前記基準液で検出された電気特性値を前記電極ごとに取得した基準情報を記憶する基準情報記憶手段と、
測定対象となる液体を対象液とし、前記取得手段が、前記対象液の液位に対して検出された電気特性値を前記電極ごとに取得した対象情報を記憶する対象情報記憶手段と、
前記基準情報と前記対象情報との誤差情報に基づいて、前記基準液と前記対象液との電気的特性の違いを補正して前記液位を算出する液位算出手段とを備えることを特徴とする液位検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液位検出装置において、
前記液位算出手段が、前記基準液の液位を任意に変化させた場合に前記電極ごとに記憶された前記基準情報の合計値と、前記電極ごとに記憶された前記対象情報の合計値と、の誤差が最小となる液位を前記測定対象となる液体の液位として算出することを特徴とする液位検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の液位検出装置において、
前記基準液が異なる電気的特性を有する第1液体及び第2液体からなり、
前記基準情報記憶手段が、前記第1液体及び第2液体のそれぞれについて、最低液位から最高液位までの間で所定間隔を空けて設定された液位ごとに検出された電気特性値を前記電極ごとに第1基準情報及び第2基準情報として記憶し、
前記液位算出手段が、下記の式において変数Pを任意に変化させた場合に、液位に応じた予測値から求められる前記電極ごとの基準情報の合計値と、前記電極ごとに記憶された前記対象情報の合計値と、の誤差が最小となる変数Pにおける液位を前記測定対象となる液体の液位として算出することを特徴とする液位検出装置。
【数1】
ただし、0≦P≦1とし、M1は所定液位における第1基準情報、M2は所定液位における第2基準情報とする
【請求項4】
請求項3に記載の液位検出装置において、
前記対象液が水である場合に、前記第1液体又は第2液体が純水であることを特徴とする液位検出装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の液位検出装置において、
前記液位算出手段が、前記対象情報記憶手段に記憶される前記対象情報について、前記電極ごとの前記対象情報の値が所定の範囲外である場合に、当該対象情報を補正して前記液位を算出することを特徴とする液位検出装置。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれかに記載の液位検出装置において、
前記液位算出手段が、前記対象情報記憶手段に記憶される前記対象情報について、当該対象情報の値が第1の所定値以上又は第2の所定値以下(第1の所定値<第2の所定値)である電極についての情報のみ、液位を算出する演算に利用することを特徴とする液位検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的特性に基づいて液位を検出する液位検出装置に関し、電気的特性が異なる場合であっても補正して液位を算出する液位検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電極間の静電容量を測定することで水位を計測する技術として、例えば特許文献1、2に示す技術が開示されている。特許文献1に示す技術は、複数の電極が水位方向に所定の間隔で相互に離間かつ計測範囲の一部が重なるように配置された水位計測装置において、各電極による水位の計測結果を正確な連続値として出力できるようにするものであり、暫定水位計測部は、電極E(n),E(n-1)の重複する計測範囲に水位があるときに、電極E(n),E(n-1)ごとに計測された電荷量に基づいて暫定水位L0を計測し、重み決定部は、暫定水位L0と各電極E(n),E(n-1)との相対的な位置関係に基づいて各計測値に対する重み付けを決定し、重み付き平均値計算部は、電極E(n),E(n-1)ごとに得られる計測結果に前記重み値に基づく重み付き平均値を計算して総合水位Ltotalとするものである。
【0003】
特許文献2に示す技術は、複数の電極を備えた水位計測装置において、電極ごとに水位とその計測結果との対応関係を簡単かつ正確に較正できようにするものであり、電極選択部は、電極下端部に対応する水位の計測値が未登録の電極E(n)を選択し、ゲイン切換部は増幅器のゲインを調整し、下端部検知部は、水位が電極E(n)の下端部にあるか否かを最大ゲインで検知し、下端部電圧登録部は、水位が電極E(n)の下端部にあるときの電極E(n)の電荷量を通常ゲインで計測し、下端部水位代表値Vedge(n)として登録し、隣接水位代表値登録部は、水位が電極E(n)の下端部にあるときの隣接電極E(n-1)の電荷量を通常ゲインで計測し、隣接水位代表値Vref(n-1)として登録し、補正係数等決定部は、隣接電極E(n-1)の各代表値Vedge(n-1),代表値Vref(n-1)に基づいて、隣接電極E(n-1)の計測値を較正するための補正係数や関数を求めるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6132960号公報
【特許文献2】特許第6132961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
計測された静電容量値に基づいて水位を測定する場合は、静電容量値を水位に変換する必要がある。そのため、一般的には、静電容量値を水位に変換する基準となる基準データが用いられる。しかしながら、例えば水田などの水位を測定する場合は、測定対象となっている水田の地域、場所、環境等により水質が全く異なるものとなるため、基準データとの相違が生じてしまい、正確な水位を算出することができないという課題を有する。
【0006】
また、基準データを実際に測定する水で取得するということが考えられるが、製品出荷時や初期起動時などにそのような作業を行うのは効率の面から現実的ではない。さらに、特に水田などの自然環境下にあっては、時間の経過に伴って水質が変化することがあるため、その都度基準データを更新することは現実的ではない。
【0007】
特許文献1、2に示す技術は、計測値を正確に取得したり補正することが可能であるものの、上記に示した問題を解決できる技術ではない。
【0008】
本発明は、液質の電気的特性の相違に関係なく、液位を正確に算出することができる液位検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る液位検出装置は、測定対象となる液位の高さ方向に所定の間隔で配設される複数の電極を有するセンサ部で検出される電気特性値を取得する取得手段と、空気と異なる電気的特性を有する液体を基準液とし、前記取得手段が、前記センサ部で検出可能な最低液位から最高液位までの間で所定間隔を空けて設定された液位ごとに前記基準液で検出された電気特性値を前記電極ごとに取得した基準情報を記憶する基準情報記憶手段と、測定対象となる液体を対象液とし、前記取得手段が、前記対象液の液位に対して検出された電気特性値を前記電極ごとに取得した対象情報を記憶する対象情報記憶手段と、前記基準情報と前記対象情報との誤差情報に基づいて、前記基準液と前記対象液との電気的特性の違いを補正して前記液位を算出する液位算出手段とを備えるものである。
【0010】
このように、本発明に係る液位検出装置においては、測定対象となる液位の高さ方向に所定の間隔で配設される複数の電極を有するセンサ部で検出される電気特性値を取得し、空気と異なる電気的特性を有する液体を基準液とし、前記センサ部で検出可能な最低液位から最高液位までの間で所定間隔を空けて設定された液位ごとに前記基準液で検出された電気特性値を前記電極ごとに取得した基準情報を記憶し、測定対象となる液体を対象液とし、前記対象液の液位に対して検出された電気特性値を前記電極ごとに取得した対象情報を記憶し、前記基準情報と前記対象情報との誤差情報に基づいて、前記基準液と前記対象液との電気的特性の違いを補正して前記液位を算出するため、基準液と対象液との電気的特性が異なる場合であっても、相互の電気的特性の誤差情報からそれらの違いを補正することで正確な液位を測定することが可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施形態に係る液位検出装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図2】第1の実施形態に係る液位検出装置における基準情報の一例を示す図である。
【
図3】第1の実施形態に係る液位検出装置において基準情報と対象情報との誤差を演算する処理を示す図である。
【
図4】第1の実施形態に係る液位検出装置における誤差演算部の演算結果の一例を示す図である。
【
図5】第1の実施形態に係る液位検出装置の動作を示すフローチャートである。
【
図6】第2の実施形態に係る液位検出装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図7】第2の実施形態に係る液位検出装置において予測値と実測値との誤差を演算する処理を示す図である。
【
図8】第2の実施形態に係る液位検出装置における誤差演算部の演算結果の一例を示す図である。
【
図9】第2の実施形態に係る液位検出装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(本発明の第1の実施形態)
本実施形態に係る液位検出装置について、
図1ないし
図5を用いて説明する。本実施形態に係る液位検出装置は、測定対象となる液位の高さ方向に所定の間隔で配設される複数の電極を有するセンサ部から取得した電気的特性に基づいて、測定対象となる液位を算出するものであり、例えば水田に液位検出装置を立設し、センサ部で電極間の静電容量を計測し、取得した静電容量値から水田の水位を算出するものである。
【0013】
図1は、本実施形態に係る液位検出装置の構成を示す機能ブロック図である。液位検出装置1は、水田などに立設されて当該水田の水位を計測するセンサ部10と、センサ部10で計測された静電容量値を取得して水田の水位を算出する検出部20とを備える。
【0014】
センサ部10は、測定する水位の高さ方向に所定間隔で複数の電極11が配設されており、各電極の静電容量を計測する。すなわち、水の比誘電率と空気の比誘電率の違いを利用し、水に浸かっている電極領域と浸かっていない電極領域とを求めることで水位を検出することが可能となっている。センサ部10による静電容量の計測の詳細については、特許文献1、2に開示されているため詳細な説明は省略する。
【0015】
検出部20は、センサ部10の各電極11で計測された静電容量の情報を取得すると共に、外部から入力される入力情報21を取得する情報取得部22と、入力情報21として取得され、後述する基準液を水位ごとに計測した場合の静電容量の情報(以下、基準情報という)を予め記憶しておく基準情報記憶部23と、センサ部10で計測された静電容量の情報(以下、対象情報という)を記憶する対象情報記憶部24と、基準情報と対象情報とに基づいて水位を算出する水位算出部25と、算出された水位を利用者に水位情報27として出力する出力部26とを備える。また水位算出部25は、基準情報と対象情報とを比較して誤差を演算する誤差演算部25aと、演算された誤差情報から水位を特定する水位特定部25bとを備える。
【0016】
情報取得部22は、例えば液位検出装置1の工場出荷前などのタイミングで基準液を水位ごとに計測した場合の静電容量の情報を入力情報21として取得し、基準情報記憶部23に記憶しておく。一方で、測定対象となる水田においてセンサ部10で計測された静電容量の情報を取得し、対象情報記憶部24に一時的に記憶する。この基準情報及び対象情報について具体的に説明する。
【0017】
基準情報は、基準となる液体について所定間隔で水位を測定した場合の静電容量の情報であり、例えば、基準液を純水とし、当該純水の水位をセンサ部10が測定可能な範囲の最低水位Hminから最高水位HmaxまでΔHの間隔で変化させた場合の電極11ごとの静電容量の値である。この基準情報は、基準液について実際に水位を変化させて測定することで、その水位における静電容量の値が入力情報21として情報取得部22に入力され、基準情報記憶部23に予め記憶される。
【0018】
なお、センサ部10は共通の材料や形状で製造した場合や共通の製造ラインで製造した場合であっても製品ごとに微妙に特性が異なる場合があるため、この基準情報の取得は個別の製品ごとに取得されることが望ましい。
【0019】
また、基準となる液体は純水に限らず、比誘電率が空気と異なるものであって水田の水と同様又は類似する電気的特性を示すものであれば良い。例えば、水田の水の場合は水位が上がるに連れて静電容量の値も上がるため、これと同様の電気的特性(傾向)を示す水道水などであってもよい。
【0020】
対象情報は、測定対象となる水田に立設される液位検出装置1のセンサ部10で実際に計測された静電容量の情報である。すなわち、水田の水に浸かっている電極11の領域については、水の比誘電率で静電容量が計測され、水田の水に浸かっていない電極11の領域については、空気の比誘電率で静電容量が計測される。これらの静電容量の値が情報取得部22に入力されて対象情報記憶部24に一時的に記憶される。
【0021】
水位算出部25は、基準情報と対象情報とに基づいて誤差演算部25aがそれぞれの情報の誤差(差分)を演算し、その誤差が最小となる水位を水位特定部25bが特定する。水位算出部25による具体的な算出方法について、
図2ないし
図4を用いて説明する。
【0022】
上述したように、基準情報には基準液の水位に対応する静電容量値が含まれている。
図2は、本実施形態に係る液位検出装置における基準情報の一例を示す図である。
図2において、CH
0からCH
10はそれぞれセンサ部10の電極11に対応しており、各電極11の静電容量値(
図2においては静電容量値に対応するパルスカウント数で示す)が水位H
nごとに測定されて基準情報記憶部23に予め格納されている。一方で対象情報は、実際に測定対象となる水位を測定した場合の各電極11ごとの静電容量値(静電容量値に対応するパルスカウント数)の情報であり、これが対象情報記憶部24に格納されている。
【0023】
図3は、本実施形態に係る液位検出装置において基準情報と対象情報との誤差を演算する処理を示す図である。
図3において、実測値は対象情報の静電容量値であり、予測値は基準情報の静電容量値である。誤差演算部25aは、任意の水位H
nにおいてセンサ部10の電極11ごとに実測値と予測値との差分を二乗した値を各電極11ごとに求め、それらの合計を水位H
nにおける誤差D
nとして算出する。誤差演算部25aは、水位H
nの値を変更し(H
n+1=H
n+ΔH)、同様の演算を行う。基準情報に含まれる全ての水位H
nについて誤差D
nを算出する。
【0024】
なお、
図3においては、水位H
n=-20,122,124,320の場合については演算結果のみを、H
n=120の場合については一例として詳細な演算過程を含めて記載し、その他の水位の場合については省略しているが、実際には水位H
nごとにH
n=120の場合のような詳細な演算が行われている。
【0025】
図4は、本実施形態に係る液位検出装置における誤差演算部の演算結果の一例を示す図である。
図4において、横軸が水位H
nで縦軸が誤差D
nの評価値を示している。誤差D
nの評価値とは、誤差D
nの値を正規化した値であり、誤差D
nの相対値を示すものである。基準液と対象液との関係が水位の変化に対して同じような傾向で静電容量値が変化する関係である場合は、
図4に示すようなグラフ特性で水位H
nの値に応じて誤差D
nの評価値が変化する。水位特定部25bは、
図4に示すグラフにおいて誤差D
nの評価値が最小となるH
nを特定し、当該H
nを対象液の水位とする。
図3及び
図4の場合は、水位H
n=120の場合に基準情報と対象情報との誤差の合計が最小となっているため、そのときの水位H
n=120が測定対象となる水田の水位として特定されることとなる。
【0026】
なお、
図4に示すように、水位H
nに対する誤差D
nの値はV字状に変化するグラフとなる。すなわち、極値が求められれば他の水位H
nに対する誤差D
nは求める必要がない。このことから、演算の負荷を低減するために、予め基準情報の水位H
nごとの合計値を算出しておき、実測値の合計値に近い合計値となっている基準情報の水位H
nを中心としてその前後の水位H
n(例えば、H
n-2,H
n-1,H
n,H
n+1,H
n+2の5つの水位)のみを選択的に演算するようにしてもよい。つまり、実測値(対象情報)の合計値と基準情報の合計値とに基づいて、おおよその水位の範囲を特定し、その範囲内の水位について
図3に示す演算を行うようにしてもよい。そうすることで、演算の負荷を格段に抑えることができる。
【0027】
出力部26は、水位特定部25bで特定された水位Hnの情報を水位情報27として出力する。水位情報27の出力は、例えば無線通信により利用者が所有する携帯端末等に直接送信されるようにしてもよいし、インターネットを経由してクラウドサーバなどに保存されるようにしてもよい。利用者は、水位情報27を参考に水田の水位調整等を行って農作物の育成を管理することが可能となる。
【0028】
次に、本実施形態に係る液位検出装置の動作について説明する。
図5は、本実施形態に係る液位検出装置の動作を示すフローチャートである。液位検出装置1を製品として出荷する前に、情報取得部22が入力情報21として純水の計測結果を取得し、基準情報記憶部23に記憶する(S1)。液位検出装置1を測定対象となる水田に設置し、センサ部10が実際の水位を計測した結果を情報取得部22が取得し、対象情報記憶部24に記憶する(S2)。誤差演算部25aが、水位H
nをセンサ部10が計測可能な最低水位H
minに設定する(S3)。誤差演算部25aは、水位H
nがセンサ部10が計測可能な最高水位H
maxより大きいかどうかを判定し(S4)、水位H
nがH
max以下であれば上述したような誤差D
nの演算を行う(S5)。演算した誤差D
nが最小誤差値dより小さいかどうかを判定し(S6)、誤差D
nが最小誤差値dより小さい場合は、最小誤差値dに誤差D
nを格納すると共に、そのときの水位H
nを特定水位hに格納する(S7)。S6で誤差D
nが最小誤差値d以上である場合、又はS7の処理後は、水位H
nをΔHだけインクリメントし(S8)、S4の判定処理に戻る。S4で水位H
nが最高水位H
maxより大きい場合は、水位特定部25bが特定水位hを現在の水田の水位として特定する(S9)。出力部26がS9で特定された水位の情報を出力して(S10)、処理を終了する。
【0029】
このように、本実施形態に係る液位検出装置1においては測定対象となる液位の高さ方向に所定の間隔で配設される複数の電極11を有するセンサ部10で検出される電気特性値を取得し、空気と異なる電気的特性を有する液体を基準液とし、前記センサ部10で検出可能な最低液位から最高液位までの間で所定間隔を空けて設定された液位ごとに前記基準液で検出された電気特性値を前記電極11ごとに取得した基準情報を記憶し、測定対象となる液体を対象液とし、前記対象液の液位に対して検出された電気特性値を前記電極11ごとに取得した対象情報を記憶し、前記基準情報と前記対象情報との誤差情報に基づいて、前記基準液と前記対象液との電気的特性の違いを補正して前記液位を算出するため、基準液と対象液との電気的特性が異なる場合であっても、相互の電気的特性の誤差情報からそれらの違いを補正することで正確な液位を測定することが可能になる。
【0030】
また、前記基準液の液位を任意に変化させた場合に前記電極11ごとに記憶された前記基準情報の合計値と、前記電極11ごとに記憶された前記対象情報の合計値と、の誤差が最小となる液位を前記測定対象となる液体の液位として算出するため、基準液と対象液との電気的特性が異なる場合であっても、基準液と同様の電気的変化の傾向から正確な液位を算出することが可能になる。
【0031】
(本発明の第2の実施形態)
本実施形態に係る液位検出装置について、
図6ないし
図9を用いて説明する。本実施形態に係る液位検出装置は、電気的特性が異なる2つの基準液を用いることで、より正確に対象液の電気的特性を補正して液位を検出するものである。なお、本実施形態において前記第1の実施形態と重複する説明は省略する。
【0032】
図6は、本実施形態に係る液位検出装置の構成を示す機能ブロック図である。第1の実施形態における
図1の構成と異なるのは、第1液体についてセンサ部10が測定可能な範囲の最低水位Hminから最高水位HmaxまでΔHの間隔で変化させた場合の電極11ごとの静電容量の値を第1基準情報とし、第1液体とは電気的特性が異なる第2液体について最低水位Hminから最高水位HmaxまでΔHの間隔で変化させた場合の電極11ごとの静電容量の値を第2基準情報とし、第1基準情報及び第2基準情報を基準情報記憶部23が記憶していることである。また、後述する演算方法により第1基準情報及び第2基準情報から予測値を演算する予測値演算部25cを新たに備え、誤差演算部25aが対象情報と予測値との誤差を演算することである。
【0033】
なお、第1液体と第2液体については、電気的特性のうち特に比誘電率が異なる液体であることが望ましく、例えば、一方の液体を純水とし他方の液体を水道水とする。
【0034】
予測値Eは、第1基準情報及び第2基準情報に基づいて演算される値であり、以下の式により算出される。
【0035】
【0036】
上記式において、Pは補正係数で0≦P≦1とする。また、M1は第1基準情報、M2は第2基準情報であり、M1及びM2は最低水位Hminから最高水位HmaxまでΔHの間隔で変化させた場合(n=(Hmax-Hmin)/ΔH)の電極11ごとの静電容量の値である。
【0037】
誤差演算部25aは、前記第1の実施形態においては、基準情報と対象情報との誤差を水位ごとに演算する処理を行ったが、本実施形態においては、上記式により算出される予測値Eと対象情報との誤差を算出する処理を行う。具体的には、補正係数Pを変化させた場合に、各補正係数Pの値に応じた水位ごとの予測値Eと対象情報との誤差を算出する。
【0038】
図7は、本実施形態に係る液位検出装置において予測値と実測値(=対象情報)との誤差を演算する処理を示す図である。
図7において、補正係数Pの値を0~1までΔP(例えば、ΔP=0.1とする)ずつ増やしながら、各補正係数Pの値ごとに最低水位Hminから最高水位HmaxまでΔHの間隔で変化させた場合の予測値Eと実測値との誤差D
nを算出する。
【0039】
図8は、本実施形態に係る液位検出装置における誤差演算部の演算結果の一例を示す図である。
図8において、横軸が水位H
nで縦軸が誤差D
nの評価値を示しており、補正係数Pの値ごとに水位H
nに対する誤差D
nの評価値がプロットされている。なお、
図8においては、P=0,0.3,0.6,1の場合のみ演算結果を示している。水位特定部25bは、
図8に示すグラフにおいて誤差D
nが最小となる補正係数P(
図8の場合は補正係数P=0.3)のグラフを採用し、当該グラフの誤差D
nの評価値が最小であるときの水位H
nを測定対象の水位として特定する。
【0040】
次に、本実施形態に係る液位検出装置の動作について説明する。
図9は、本実施形態に係る液位検出装置の動作を示すフローチャートである。液位検出装置1を製品として出荷する前に、情報取得部22が入力情報21として第1液体である純水の計測結果及び第2液体である水道水の計測結果を取得し、基準情報記憶部23に記憶する(S1)。液位検出装置1を測定対象となる水田に設置し、センサ部10が実際の水位を計測した結果を情報取得部22が取得し、対象情報記憶部24に記憶する(S2)。誤差演算部25aが、補正係数P=0に設定する(S3)。誤差演算部25aは、補正係数Pが1より大きいかどうかを判定し(S4)、補正係数Pが1以下であれば、水位H
nを最低水位H
minに設定する(S5)。誤差演算部25aは、水位H
nが最高水位H
maxより大きいかどうかを判定し(S6)、水位H
nがH
max以下であれば予測値E
nを算出し(S7)、第1の実施形態の場合と同様の演算方法により予測値E
nと対象情報との誤差D
nの演算を行う(S8)。演算した誤差D
nが最小誤差値dより小さいかどうかを判定し(S9)、誤差D
nが最小誤差値dより小さい場合は、最小誤差値dに誤差D
nを格納すると共に、そのときの水位H
nを特定水位hに格納する(S10)。S9で誤差D
nが最小誤差値d以上である場合、又はS10の処理後は、水位H
nをΔHだけインクリメントし(S11)、S6の判定処理に戻る。S6で水位H
nが最高水位H
maxより大きい場合は、補正係数PをΔPだけインクリメントし(S12)、S4の判定処理に戻る。S4で補正係数Pが1より大きい場合は、水位特定部25bが特定水位hを現在の水田の水位として特定する(S13)。出力部26がS13で特定された水位を出力して(S14)、処理を終了する。
【0041】
このように、本実施形態に係る液位検出装置においては、2つの基準液から取得される基準情報に基づく補正係数から液位の予測値を算出し、その予測値との誤差が最小となる液位を測定対象となる液位として特定することで、基準液と対象液との電気的特性が異なる場合であっても、適正な補正係数に基づいて正確な液位を算出することが可能になる。
【0042】
また、対象液として水の水位を検出する場合に、一方の基準液として不純物等が少ない純水を用いることで、水という物質の特性を正確に補正係数に反映することができる。併せて、他方の基準液として水道水や任意の場所における水田の水などの比較的不純物が多い水を用いることで、異なる2つの電気的特性から得られる補正係数を求めることができ、対象液の水の水質に関わらず正確に水位を算出することが可能になる。
【0043】
(本発明のその他の実施形態)
その他の実施形態について説明する。本実施形態において、前記各実施形態と重複する説明は省略する。
【0044】
本実施形態に係る液位検出装置1は、対象情報記憶部24に記憶される対象情報について、電極11ごとの対象情報の値が所定の範囲外である場合に、当該対象情報を補正して液位を算出するものである。上述したように液位検出装置1を用いて水田などの自然環境の下で検出を行う場合は、どうしてもセンサ部10の電極11の劣化や汚れなどが影響して電気的特性の計測が正確にできない場合が生じ得る。すなわち、電極11や配線箇所に汚れの付着したり、亀裂が生じたりした場合には、隣接する他の電極11と明らかに異なる電気的特性(想定される電気的特性の値から逸脱した値の電気的特性)が計測される。このような電極11に電気的特性の値、すなわち対象情報を誤差演算部25aの演算に加えてしまうと正確な液位を検出できなくなってしまう。
【0045】
そのため、本実施形態においては、隣接する他の電極11と明らかに異なる電気的特性が計測された場合には、当該電極11の対象情報については補正してから誤差演算部25aの処理を行う。補正方法としては、例えば補正対象となる電極11の両隣に隣接する2つの電極11の平均値に変換したり、各電極11の変化の傾向から最小二乗法などにより最適値を求めて補正するようにしてもよい。
【0046】
また、本実施形態に係る液位検出装置1は、対象情報記憶部24に記憶される対象情報について、当該対象情報の値が第1の所定値以上又は第2の所定値以下(第1の所定値<第2の所定値)である電極11についての情報のみ、液位を算出する演算に利用するようにしてもよい。すなわち、上述したように電極11に何かしらの問題が生じると想定外の電気的特性が計測される場合があるため、そのようなイレギュラーの値については計算対象から除外する。このとき、誤差演算部25aがイレギュラーな値を示す電極11に対応する基準情報についても演算対象から除外することで、誤差を正確に演算して液位を検出することが可能となる。
【0047】
このように、本実施形態に係る液位検出装置1においては、想定される電気的特性の値から逸脱するような値を示す電極11の計測結果について、その値を補正又は排除して演算を行うことで、正確な液位を検出することが可能となる。
【0048】
なお、本発明に係る液位検出装置1において、センサ部10で計測した電気的特性の情報、すなわち対象情報に基づいて検出部20が水位を検出する構成を説明したが、センサ部10で計測された対象情報を無線通信(例えば、920MHz帯の特定小電力無線等)などによりクラウドシステムに送信し、クラウドシステムのコンピュータで水位の演算を行うようにしてもよい。このとき、基準液に関する基準情報についても、クラウドシステムに記憶されているものとする。クラウドシステムのコンピュータを用いることで、利用者の端末に、気温、湿度、水位、水温、地温、雨量、風向、風速、照度などの情報をリアルタイムに表示することが可能となる。
【0049】
また、検出された水位が所定の範囲外になった場合には、利用者の端末に対して注意喚起する情報を配信するようにしてもよい。併せて、上記その他の実施形態において説明したように、任意の電極11について所定の範囲外の電気的特性が計測された場合には、液位検出装置1のメンテナンスを促す旨の注意喚起等の情報を配信するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 液位検出装置
10 センサ部
11 電極
20 検出部
21 入力情報
22 情報取得部
23 基準情報記憶部
24 対象情報記憶部
25 水位算出部
25a 誤差演算部
25b 水位特定部
25c 予測値演算部