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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057521
(43)【公開日】2024-04-24
(54)【発明の名称】フィルム貼付装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 63/02 20060101AFI20240417BHJP
   B65C 5/00 20060101ALI20240417BHJP
   B65H 37/04 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
B29C63/02
B65C5/00
B65H37/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164335
(22)【出願日】2022-10-12
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】504025918
【氏名又は名称】株式会社ユウコス
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】弁理士法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】道井 博夫
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 浩
【テーマコード(参考)】
3E095
3F108
4F211
【Fターム(参考)】
3E095AA01
3E095AA12
3E095BA02
3E095CA10
3E095DA03
3E095DA42
3E095DA48
3E095DA59
3E095EA05
3E095EA24
3E095FA12
3E095FA30
3F108GA09
3F108GB01
3F108HA03
3F108HA11
4F211AA11
4F211AA15
4F211AA24
4F211AC03
4F211AD03
4F211AD06
4F211AG01
4F211AG03
4F211AH53
4F211AP05
4F211AR02
4F211AR06
4F211AR07
4F211AR09
4F211SA08
4F211SC06
4F211SD01
4F211SD11
4F211SJ11
4F211SP04
4F211SP36
4F211SW23
(57)【要約】
【課題】熱ローラとプラテンローラの間にシート状の対象物とフィルムを通過させることにより、該フィルムを対象物に貼り付けるフィルム貼付装置において、熱ローラの温度低下を防止する。
【解決手段】本発明は、熱ローラと、該熱ローラに圧接されて該熱ローラと共に回転するプラテンローラとを備え、前記熱ローラと前記プラテンローラの間を、シート状の対象物とシート状のフィルム材とを通過させることにより、該フィルム材を前記対象物に貼付するフィルム貼付装置であって、前記プラテンローラの外周部の熱伝導率が、前記熱ローラの外周部の熱伝導率の2分の1以下であることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱ローラと、該熱ローラに圧接されて該熱ローラと共に回転するプラテンローラとを備え、前記熱ローラと前記プラテンローラの間に、シート状の対象物と、基材フィルムとその上に形成された熱貼付層とを有するフィルム材とを重ねて通過させることにより、前記熱貼付層を前記対象物に貼付するフィルム貼付装置であって、
前記プラテンローラの外周部の熱伝導率が、前記熱ローラの外周部の熱伝導率の2分の1以下であることを特徴とする、フィルム貼付装置。
【請求項2】
前記プラテンローラの外周部が、ガラスエポキシ樹脂から形成され、
前記熱ローラの外周部が、金属粉を含有する合成ゴムから形成されている、請求項1に記載のフィルム貼付装置。
【請求項3】
前記熱ローラと接触するように該熱ローラと並んで配置された補助熱ローラと、
前記補助熱ローラの温度が前記熱ローラの温度よりも20℃~60℃高くなるように、前記熱ローラ及び前記補助熱ローラを加熱する加熱制御部と
を備える、請求項1に記載のフィルム貼付装置。
【請求項4】
前記熱ローラ及び前記補助熱ローラのうちの一方の温度設定値を入力するための温度設定値入力部を備え、
前記加熱制御部は、前記温度設定値入力部に入力された温度設定値に基づき、前記熱ローラ及び前記補助熱ローラのうちの他方の温度設定値を設定し、前記熱ローラ及び前記補助熱ローラのうちの一方及び他方の温度設定値となるように、前記熱ローラ及び前記補助熱ローラを加熱する、請求項3に記載のフィルム貼付装置。
【請求項5】
前記プラテンローラを、前記熱ローラに接触した状態と、該熱ローラから離間した状態との間で、変位させるプラテンローラ移動部と、
前記プラテンローラが前記熱ローラに接触した状態にあるときに該プラテンローラを前記熱ローラに付勢する付勢部材と、
前記プラテンローラの前記熱ローラに対する付勢力を設定するための付勢力設定部と
を備える、請求項1に記載のフィルム貼付装置。
【請求項6】
前記プラテンローラの外周面が、厚さが0.5mm以下のテフロン製の被覆材で被覆されている、請求項1に記載のフィルム貼付装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、箔フィルム、ラミネートフィルム、加飾フィルム等を、対象シートに貼付する箔転写装置、ラミネータ等のフィルム貼付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像が印刷された印刷用紙の該画像を保護するために、前記印刷用紙にラミネートフィルムを貼り付ける装置としてラミネータが知られている。ラミネータは、加熱ヒータが内蔵された熱ローラと該熱ローラに圧接された状態で熱ローラと共に回転するプラテンローラを有しており、ラミネートフィルムと印刷用紙を重ね合わせた状態で熱ローラとプラテンローラの間に通過させることにより、ラミネートフィルムを印刷用紙に熱圧着する(特許文献1)。
【0003】
ラミネートフィルムは、例えば基材フィルムとその上に形成された保護層及び熱溶融性樹脂から成る接着層から成り、接着層が熱溶融することによりラミネートフィルムが印刷用紙に接着する。印刷用紙に接着されたラミネートフィルムから基材フィルムを剥離することで、保護層で覆われた印刷用紙が得られる。ラミネートフィルムを印刷用紙に接着させるため、熱ローラの外周面の温度が、前記接着層が熱溶融する所定の温度に達するまで該熱ローラを加熱した上で、熱ローラとプラテンローラの間にラミネートフィルムと印刷用紙を通過させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7-157185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ラミネータにおいては、印刷用紙に対してラミネートフィルムを強く接着させるため、熱ローラに対してプラテンローラが強く圧接されるように構成されている。ところが、熱ローラに対してプラテンローラを強く圧接すると、熱ローラの外周面とプラテンローラの外周面とが接触する箇所において熱ローラからプラテンローラに奪われる熱量が増えて熱ローラの外周面の温度が低下し、場合によっては前記所定の温度を下回る可能性がある。
【0006】
熱ローラの外周面の温度の低下を防止するために、熱ローラを加熱する際にプラテンローラを熱ローラに圧接させておき、両ローラの外周面の温度を前記所定の温度まで上昇させておくことも考えられるが、熱ローラとプラテンローラの両方が所定の温度になるまで加熱するには時間がかかり、また、消費電力も多くなるため、経済的ではない。
【0007】
なお、ここではラミネータフィルムを印刷用紙に熱圧着により貼り付ける装置について説明したが、加飾フィルムや箔フィルム等のフィルムを熱圧着によりシート状の対象物に貼り付ける装置においても同様の問題があった。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、熱ローラとプラテンローラの間にシート状の対象物とフィルムを通過させることにより、該フィルムを対象物に貼り付けるフィルム貼付装置において、熱ローラの温度低下を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために成された本発明は、
熱ローラと、該熱ローラに圧接されて該熱ローラと共に回転するプラテンローラとを備え、前記熱ローラと前記プラテンローラの間に、シート状の対象物と基材フィルムとその上に形成された熱貼付層とを有するフィルム材とを通過させることにより、前記熱貼付層を前記対象物に貼付するフィルム貼付装置であって、
前記プラテンローラの外周部の熱伝導率が、前記熱ローラの外周部の熱伝導率の2分の1以下であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、熱ローラに対してプラテンローラを圧接させたときの、熱ローラからプラテンローラへの熱伝導を抑えることができるため、熱ローラにプラテンローラを圧接させて両ローラの間にシート状の対象物とフィルムを通過させるときの熱ローラの温度低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】フィルム貼付装置の内部構造を示す図。
図2】熱ローラ、プラテンローラ及び補助熱ローラの概略図。
図3】熱ローラとプラテンローラの周辺部分の斜視図。
図4】熱ローラとプラテンローラが接触している状態(a)、離間している状態(b)を示す図。
図5】デカール部材を熱ローラ及びプラテンローラ側から見た斜視図。
図6】デカールバーが基準位置(a)、第1上昇位置(b)、第2上昇位置(c)にあるときを示す説明図。
図7】切断装置の構成を示す斜視図。
図8】切断装置の動作説明図。
図9】フィルム貼付装置の制御系の概略的なブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係るフィルム貼付装置は、典型的には、枚葉状の用紙に金属箔を貼り付けるために使用される箔転写装置等の箔加工装置、シート状の印刷物に加飾フィルムを貼り付けるために使用されるラミネート装置(ラミネータ)であるが、これらの装置に限らず加熱圧着によりフィルムをシート状の対象物に貼り付ける装置であれば適用可能である。
【0013】
以下、本発明に係るフィルム貼付装置の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、フィルム貼付装置の概略的構成を示している。このフィルム貼付装置1は、筐体100と、該筐体100の搬入口101側から搬出口102に向かって該筐体100内に配置された、熱ローラ10、プラテンローラ20、および補助熱ローラ30と、3対の搬送ローラ40、42、44と、筐体100の搬入口101側の外部に配置された用紙供給部200及びフィルム材供給部300と、搬出口102側の外部に配置された、用紙収集部400とを備えている。
【0014】
用紙供給部200は、枚葉状の用紙2を、所定の間隔をおいて連続的に搬入口101に向けて搬送する。フィルム材供給部300は、長尺なフィルム材3が巻回されたロールから該フィルム材3を繰り出しつつ搬入口に搬送する。このとき、枚葉状の用紙2とフィルム材3は、重ね合わせられた状態で搬入口101から筐体100内に搬入され、熱ローラ10とプラテンローラ20の間、および3対の搬送ローラ40、42、44の間を順に通過した後、搬出口102から筐体100の外部に排出される。用紙収集部400には、搬出口102から排出されるフィルム材3が貼り付けられた用紙2が積載される。
【0015】
なお、フィルム材3は、基材フィルムと、その上に設けられた熱貼付層から成る。基材フィルムは、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)、ポリ塩化ビニル等から形成されたフィルムとすることができる。熱貼付層は、例えば基材フィルムの上に保護層と熱溶融性樹脂から成る接着層を順に積層したり、例えば基材フィルムの上にアルミ蒸着したりして形成することができる。また、熱貼付層は、アルミ箔、金箔等の金属箔でもよい。
【0016】
フィルム材3及び用紙2は、フィルム材3の熱貼付層が用紙2側を向くようにして両者が重ね合わせられた後、フィルム材3が熱ローラ10と、用紙2がプラテンローラ20と接触する状態で熱ローラ10とプラテンローラ20の間を通過する。
【0017】
図2は、熱ローラ10、プラテンローラ20、および補助熱ローラ30の周辺部分を拡大して示す概略図である。また、図3は、熱ローラ10、プラテンローラ20の周辺部分を拡大して示す斜視図である。これらの図に示すように、プラテンローラ20は熱ローラ10の下部に、補助熱ローラ30は熱ローラ10の上部にそれぞれ配置されている。熱ローラ10及び補助熱ローラ30は放熱防止カバー50で覆われており、これらローラ10,30の温度低下が抑えられている。
【0018】
熱ローラ10は、鉄製のパイプ11と、該パイプ11に内蔵された加熱要素111及び温度センサ112(いずれも図9参照)と、前記パイプ11の外周面に巻装された厚さ0.5~5.0mm程度(好ましくは0.5~2.5mm程度)の合成ゴム製のカバー12とから成る。前記合成ゴムは、鉄粉を含有する合成ゴムから成る。熱ローラ10は、その両端部においてベアリング13によって回転自在に支持されており、ベアリング13に連結されたモータ131(図9参照)の駆動力によって回転するようになっている。
【0019】
補助熱ローラ30は、熱ローラ10の上部において該熱ローラ10と対向するように配置されている。補助熱ローラ30は、鉄製のパイプ31と、該パイプ31に内蔵された加熱要素311及び温度センサ312(いずれも図9参照)と、該パイプ31の外周面に卷装された厚さ0.5~5.0mm程度(好ましくは0.5~2.5mm程度)の合成ゴム製のカバー32とから成る。前記合成ゴムは、熱ローラ10のカバー12の材料と同じ合成ゴムから成る。補助熱ローラ30は、その両端部においてベアリング33によって回転自在に支持されており、熱ローラ10の回転に従動して回転するようになっている。ベアリング33は、支持部331(図9参照)によって上下動可能に支持されており、該ベアリング33が上下動することにより補助熱ローラ30が熱ローラ10と接触した状態と離間した状態との間で変位するようになっている。
【0020】
プラテンローラ20は、熱ローラ10の下部において該熱ローラ10と対向する位置に配置されている。プラテンローラ20は、鉄製の芯材201と、該芯材201の外周面に卷装された、熱伝導率が0.45W/mkのガラスエポキシ樹脂製の外周部材202と、該外周部材202の外周面を覆う熱伝導率が0.25W/mkのテフロン製のカバー部材203とを備えている。カバー部材203は厚さが0.5mm以下の非常に薄いものが使用されている。
【0021】
本実施形態では、芯材201の外周面にガラスエポキシ樹脂を巻付け加工(含浸加工)することにより外周部材202を形成し、さらにその上にテフロンチューブをヒートシュリンクさせることによりカバー部材203を形成している。したがって、芯材201と外周部材202とが強固に一体化し、その外周面にカバー部材203を密着させることができる。また、プラテンローラ20の最外周部が表面剥離性に優れたテフロン製のカバー部材203から成るため、熱ローラ10との間で挟持する用紙2とフィルム材3を滑らかに搬送することができる。
【0022】
プラテンローラ20は、芯材201の両端部にベアリング21の内輪が固定されており、該ベアリング21によって回転可能に支持されている。両端部のベアリング21には、それぞれ、上下端が保持部材221,222で保持された圧縮コイルばね22が、その上側の保持部材221において連結されている。圧縮コイルばね22の下側の保持部材222は上下動機構223(図9参照)に支持されており、該上下動機構223によって保持部材222が上下動されることによりベアリング21が上下動し、プラテンローラ20が熱ローラ10と接触した状態(図4(a)に示す状態)と、該熱ローラ10から離間した状態(図4(b)に示す状態)に変化する。
【0023】
なお、詳しい説明は省略するが、補助熱ローラ30のベアリング33の下降及び上昇の動作と、プラテンローラ20のベアリング21の上昇及び下降の動作が連動するように、ベアリング33の支持部331とベアリング21の上下動機構223は構成されている。これにより、プラテンローラ20が熱ローラ10と接触した状態にあるときは補助熱ローラ30も熱ローラ10に接触し、プラテンローラ30が熱ローラ10から離間した状態にあるときは補助熱ローラ30も熱ローラ10から離間する。
【0024】
また、プラテンローラ20が熱ローラ10と接触した状態にあるときに、保持部材222に対して上向きに押し上げる力を付与するための押圧機構24が、熱ローラ10の下部に設けられている。押圧機構24は、熱ローラ10と平行な駆動軸241と、駆動軸241をその両端部において回転自在に支持する支持部242と、駆動軸241の両端部に連結された偏心カム243と、前記駆動軸241を回転駆動するステッピングモータ244とを備えている。ステッピングモータ244の回転軸は駆動軸241と直交しており、ステッピングモータ244の回転力は歯車機構(図示せず)を介して駆動軸241に伝達されるようになっている。
【0025】
偏心カム243は、その回転角度位置によって該偏心カム243の回転中心(駆動軸241の軸中心)から外周面のうち保持部材222に当接する箇所までの距離が変化する。偏心カム243の回転中心から当接箇所までの距離が長くなると、その分、偏心カム243の外周面によって保持部材222が押し上げられ、圧縮コイルばね22の付勢力によってプラテンローラ20が熱ローラ10に圧接される。プラテンローラ20を熱ローラ10に圧接する力は、偏心カム243の所定の原点位置からの回転角度によって決まる。本実施形態では、後述する操作パネルを操作してプラテンローラ20の熱ローラ10に対する圧接力を指定すると、その圧接力に応じた回転角度位置まで偏心カム243が回転するようステッピングモータ244が駆動されるようになっている。
【0026】
図2に示すように、熱ローラ10とプラテンローラ20の下流側(図2において左側)には、カール修正機構60が設けられている。熱ローラ10とプラテンローラ20によってフィルム材3が貼り付けられた用紙2は、フィルム材3との伸縮率との違いによって、熱ローラ10とプラテンローラ20を通過した後の温度低下に伴いフィルム材3側にカールする。カール修正機構60は、このようなカールを取り除くためのものである。
【0027】
カール修正機構60は、熱ローラ10とプラテンローラ20の間を通過してきた、フィルム材3が貼付された用紙2の下面に当接するデカール部材61と、該デカール部材61を上下動させる上下動機構62と、前記デカール部材61と熱ローラ10及びプラテンローラ20との間において用紙2及びフィルム材3の上面に当接するガイドローラ63とを備える。図5はデカール部材61を熱ローラ10及びプラテンローラ20側から見た斜視図である。同図に示すように、デカール部材61は、たがいに垂直な2個の板部を有するL字状部材611と、該L字状部材611の一方の板部の端部から突出する、先端部がアール(R)形状のデカールバー612とから成る。デカール部材61は、デカールバー612が上を向くように、且つ、L字状部材611及びデカールバー612が用紙2の搬送方向と垂直な方向となるように配置されている。これにより、デカールバー612は、その先端部が用紙2の下面において直線状に接触する。上下動機構62は一対の上下動ピン621を備えており、該上下動ピン621にL字状部材611の垂直板が固定されている。ガイドローラ63は、その下部の高さが熱ローラ10の下部の高さとほぼ同じ位置になるように配置されている。
【0028】
図6(a)~(c)は、デカールバー612が、フィルム材3が貼付された用紙2(ワークという)と干渉しない基準位置にあるとき、デカールバー612が基準位置から第1上昇位置まで上昇してワークをやや持ち上げた状態にあるとき、デカールバー612が第1上昇位置よりも高い位置である第2上昇位置まで上昇してワークを大きく持ち上げた状態にあるときを示している。通常は、デカールバー612は基準位置に位置している。ワークがカールした状態にあるときは、上下動機構62によりデカールバー612を基準位置から第1上昇位置、或いは第2上昇位置に変位させることによって、ワークのカールを取り除くことができる。
【0029】
図7は切断装置70の周辺部分の拡大図である。切断装置70は、筐体100の搬出口102付近に設けられた一対の搬送ローラ44の近傍の上流側に配置されている。切断装置70は、用紙2及びフィルム材3(ワーク)の幅方向両側に配置されたナイフ71と、該ナイフ71を、その先端部分がワークの両端部に上斜め方向から当接する切断状態と、ワークの外側に位置する待機状態との間で移動させる移動機構72とを備えている。図8は、ナイフ71の位置が変化する様子を示しており、ワークの搬送に同期した所定のタイミングで、移動機構72はナイフ71を移動させて図8の(1)から(6)に示す位置に変化させる。図8の(1)に示す状態が、本発明の切断状態に相当する。移動機構72は、ワークのうち用紙2と用紙2の間の部分、つまりフィルム材3のみの部分がナイフ71の間を通過するときに図8の(1)に示す状態となるように、ナイフ71を移動させ、フィルム材3の幅方向両端部に切り込みを入れる。
【0030】
フィルム材3の幅方向両端部において切り込みが入れられたワークは、切り込みが入れられた箇所よりも下流側において一対の搬送ローラ44に挟持され、搬送されることによって下流側に引っ張られる。この引張力によってフィルム材3は切断され、1枚の用紙2にフィルム材3が貼付された状態となって搬出口102から排出される。このように搬送ローラ44は、用紙2及びフィルム材3を搬送する機能に加えてフィルム材3を切断する機能を有するため、他の搬送ローラ40、42よりも搬送速度が速くなるように回転されるようになっている。
【0031】
図9に示すように、フィルム貼付装置1の各部の動作は、制御部80によって制御される。制御部80は、本発明の加熱制御部に相当する。制御部80の実体はCPU、ROMやRAM等のメモリを備えるコンピュータであり、CPUが所定のメモリに記憶されたプログラムを実行することによってフィルム貼付装置1によるフィルム貼付動作を実行する。制御部80には、用紙供給部200、加熱要素111,311、モータ131,331、ステッピングモータ244、上下動機構223,62、移動機構72、入力操作部801、表示部802、及び温度センサ112,312が接続されている。また、図示しないが、制御部80には、搬送ローラ40,42,44の駆動モータも接続されている。前記入力操作部801は、本発明の温度設定値入力部、付勢力設定部として機能する。
【0032】
制御部80は、入力操作部801から入力される操作信号に基づき、用紙供給部200、モータ131,331、ステッピングモータ244、上下動機構223,62、移動機構72を駆動したり駆動停止したりする。また、制御部80は、入力操作部801から入力される操作信号と温度センサ112,312から入力される検出信号に基づき、熱ローラ10の表面付近の温度が所定の設定温度になるように加熱要素111をオン・オフ制御するとともに、補助熱ローラ30の表面付近の温度が前記設定温度よりも所定温度(20℃~60℃)高くなるように加熱要素311をオン・オフ制御する。
【0033】
次に、上記構成のフィルム貼付装置1において、用紙2にフィルム材3を貼付するときの動作について説明する。
【0034】
まず、用紙供給部200に用紙2をセットするとともに、フィルム材供給部300にフィルム材3のローラをセットする。そして、ローラから所定長さのフィルム材3を引き出して、プラテンローラ20と熱ローラ10の間、搬送ローラ40,42,43それぞれの間を通過させておく。この状態で、作業者は、入力操作部801を操作して、熱ローラ10の温度を設定するとともに、プラテンローラ20の熱ローラ10に対する圧接力(本発明の付勢力に相当)を設定する。熱ローラ10の温度設定値、プラテンローラ20の圧接力の設定値は表示部802に表示され、作業者は表示部802の表示を見ながら温度設定値や圧接力の設定値を確認し、変更することができる。作業者は、入力操作部801を操作して圧接力の数値を入力しても良いが、ワークの種類を入力すると、そのワークの種類に応じた圧接力の値が自動的に設定されるようにしてもよい。
【0035】
続いて、入力操作部801を操作して、貼付動作の開始を指示する。すると、制御部80は、加熱要素111、311を駆動して熱ローラ10の表面温度を所定の設定温度まで上昇させるとともに、補助熱ローラ30の表面温度を前記設定温度よりも所定温度、例えば20℃高い温度まで上昇させる。熱ローラ10及び補助熱ローラ30の表面温度が所定の設定温度に達した後は、制御部80は、熱ローラ10及び補助熱ローラ30の表面温度が所定の設定温度を含む温度範囲内の温度に維持されるよう、加熱要素111,311をオン・オフ制御する。
【0036】
次に制御部80は、上下動機構223を動作させてプラテンローラ20が熱ローラ10に接触する位置まで保持部材222を上昇させた後、圧接機構24のステッピングモータ244を駆動して、圧接力の設定値に応じた回転角度位置まで偏心カム243を回転させる。これにより、熱ローラ10に対してプラテンローラ20が圧接される。また、上下動機構223の動作に連動して補助熱ローラ30が下降し、熱ローラ10に接触する。この状態で、制御部80は、用紙供給部200、モータ131,331、上下動機構62、移動機構72を動作させ、その結果、用紙供給部200から所定の間隔をおいて連続的に供給されてくる用紙2及びフィルム材供給部300から供給されてくる長尺なフィルム材3が重ね合わされた状態で熱ローラ10とプラテンローラ20の間を通過する。これにより、フィルム材3の熱貼付層が用紙2に接着し、この状態の用紙2及びフィルム材3がカール修正機構60に向けて搬送され、カール修正機構60、切断装置70を経て、搬出口102から外部に排出され、用紙2毎に切断された状態で用紙収集部400に積載される。カール修正機構50、切断装置70の動作は上述した通りである。
【0037】
熱ローラ10とプラテンローラ20の間を用紙2及びフィルム材3が通過する際、熱ローラ10にプラテンローラ20が圧接された状態にあるため、通常であれば、熱ローラ10の熱が用紙2及びフィルム材3を介してプラテンローラ20に奪われ、熱ローラ10の温度が低下する。しかしながら、本実施例では、プラテンローラ20の外周部材202が熱伝導率の低いガラスエポキシ樹脂から成るため、熱ローラ10からプラテンローラ20に熱が奪われることが防止される。
【0038】
さらに、本実施例では、熱ローラ10に補助熱ローラ30が接触した状態にあり、且つ、熱ローラ10よりも補助熱ローラ30の温度が20℃高いため、補助熱ローラ30の熱が熱ローラ10に対して供給される。したがって、プラテンローラ20に奪われたり、放熱したりして失われた熱ローラ10の熱量を補助熱ローラ30から補うことができるため、熱ローラ10の温度が設定温度を下回ることが防止される。
【0039】
なお、本実施例では、プラテンローラ20の最外周部をテフロン製のカバー部材203としたが、テフロンの熱伝導率は0.25W/mkであり、このカバー部材203は非常に薄いため、熱ローラ10から熱を奪うことはない。
また、本実施例では、熱ローラ10の外周部を、鉄粉を含有する合成ゴム製のカバー12とし、プラテンローラ20の外周部材203をガラスエポキシ樹脂から構成したが、プラテンローラ20の外周部の熱伝導率が熱ローラ10の外周部の熱伝導率の2分の1以下であれば、これらの材料に限らず、例えば、前記カバー12に対して、外周部材203をセラミック製やガラス製としてもよい。
【0040】
[態様]
上述した例示的な実施形態が以下の態様の具体例であることは、当業者には明らかである。
【0041】
(第1項)本発明の一態様に係るフィルム貼付装置は、
熱ローラと、該熱ローラに圧接されて該熱ローラと共に回転するプラテンローラとを備え、前記熱ローラと前記プラテンローラの間に、シート状の対象物と、基材フィルムとその上に形成された熱貼付層とを有するフィルム材とを重ねて通過させることにより、前記熱貼付層を前記対象物に貼付するフィルム貼付装置であって、
前記プラテンローラの外周部の熱伝導率が、前記熱ローラの外周部の熱伝導率の2分の1以下であることを特徴とする。
【0042】
第1項に係るフィルム貼付装置によれば、熱ローラに対してプラテンローラを圧接させたときの、熱ローラからプラテンローラへの熱伝導を抑えることができるため、熱ローラにプラテンローラを圧接させて両ローラの間にシート状の対象物とフィルムを通過させるときの熱ローラの温度低下を防止することができる。
【0043】
(第2項)第2項に係るフィルム貼付装置は、第1項に係るフィルム貼付装置において、前記プラテンローラの外周部が、ガラスエポキシ樹脂から形成され、前記熱ローラの外周部が、金属粉を含有する合成ゴムから形成されているものである。
【0044】
ガラスエポキシ樹脂は、熱伝導率が0.45W/mkと非常に低い材料であるため、第2項に係るフィルム貼付装置によれば、熱ローラにプラテンローラを圧接させて両ローラの間にシート状の対象物とフィルムを通過させるときの熱ローラの温度低下を確実に防止することができる。
【0045】
(第3項)第3項に係るフィルム貼付装置は、第1項又は第2項に係るフィルム貼付装置において、
前記熱ローラと接触するように該熱ローラと並んで配置された補助熱ローラと、
前記補助熱ローラの温度が前記熱ローラの温度よりも20℃~60℃高くなるように、前記熱ローラ及び前記補助熱ローラを加熱する加熱制御部と
を備えるものである。
【0046】
(第4項)第4項に係るフィルム貼付装置は、第3項に係るフィルム貼付装置において、
前記熱ローラ及び前記補助熱ローラのうちの一方の温度設定値を入力するための温度設定値入力部を備え、
前記加熱制御部は、前記温度設定値入力部に入力された温度設定値に基づき、前記熱ローラ及び前記補助熱ローラのうちの他方の温度設定値を設定し、前記熱ローラ及び前記補助熱ローラのうちの一方及び他方の温度設定値となるように、前記熱ローラ及び前記補助熱ローラを加熱するものである。
【0047】
第4項のフィルム貼付装置によれば、熱ローラ及び補助熱ローラのうちの一方の温度設定値を作業者が温度設定値入力部に入力すれば、熱ローラ及び補助熱ローラのうちの他方の温度設定値が自動的に設定され、これらの温度設定値となるように、前記熱ローラ及び前記補助熱ローラが加熱されるため、温度設定値の入力の手間を抑えることができる。
【0048】
(第5項)第5項に係るフィルム貼付装置は、第1項ないし第4項のいずれかに係るフィルム貼付装置において
前記プラテンローラを、前記熱ローラに接触した状態と、該熱ローラから離間した状態との間で、変位させるプラテンローラ移動部と、
前記プラテンローラが前記熱ローラに接触した状態にあるときに該プラテンローラを前記熱ローラに付勢する付勢部材と、
前記プラテンローラの前記熱ローラに対する付勢力を設定するための付勢力設定部と を備えるものである。
【0049】
第5項のフィルム貼付装置によれば、適宜の付勢力でプラテンローラを付勢して熱ローラに圧接させることができる。
【0050】
(第6項)第6項に係るフィルム貼付装置は、第1項ないし第5項のいずれかに係るフィルム貼付装置において
前記プラテンローラの外周面が、厚さが0.5mm以下のテフロン製の被覆材で被覆されている。
【符号の説明】
【0051】
1…フィルム貼付装置
10…熱ローラ
100…筐体
101…搬入口
102…搬出口
11…パイプ
111…加熱要素
112…温度センサ
12…カバー
13…ベアリング
2…用紙
20…プラテンローラ
201…芯材
202…外周部材
203…カバー部材
23…支持部
24…上下動機構
244…ステッピングモータ
3…フィルム材
30…補助熱ローラ
31…パイプ
311…加熱要素
312…温度センサ
32…カバー
60…カール修正機構
70…切断装置
80…制御部
801…入力操作部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9