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特開2024-57524デバッグ装置及びデバッグ用プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057524
(43)【公開日】2024-04-24
(54)【発明の名称】デバッグ装置及びデバッグ用プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 11/36 20060101AFI20240417BHJP
【FI】
G06F11/36 164
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164339
(22)【出願日】2022-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】391016358
【氏名又は名称】東芝情報システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 真
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100074147
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 崇
(72)【発明者】
【氏名】岩田 匡紀
【テーマコード(参考)】
5B042
【Fターム(参考)】
5B042HH49
5B042JJ29
5B042KK15
(57)【要約】
【課題】適切に簡易に迅速にNAND疲弊診断を行うことができる。
【解決手段】NANDフラッシュメモリに対して制御を行うFIL(フラッシュ・インタフェース・レイヤ)のデバッグを行うデバッグ装置において、調整ダンプファイルを作成する調整ダンプ作成手段51と、前記調整ダンプファイルに基づきエラー箇所を特定するエラー箇所特定手段52と、前記エラー箇所に基づきNAND疲弊データを作成する疲弊データ作成手段53と、エラーパラメータ特定手段56と、現状電圧変換手段54と、前記疲弊データと前記現状閾値電圧を1画像にまとめた疲弊診断用表示データを作成し、表示器に表示する疲弊診断用表示実行手段55とを具備する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
NANDフラッシュメモリに対して制御を行うFIL(フラッシュ・インタフェース・レイヤ)のデバッグを行うデバッグ装置において、
前記FILのデバッグ作業対象ファイルの通常のダンプを調整した調整ダンプファイルを作成する調整ダンプ作成手段と、
前記調整ダンプファイルに基づきエラー箇所を特定するエラー箇所特定手段と、
前記エラー箇所に基づきNAND疲弊データを作成する疲弊データ作成手段と、
エラーパラメータ特定手段と、
エラーパラメータを現状閾値電圧に変換する現状電圧変換手段と、
前記疲弊データと前記現状閾値電圧を1画像にまとめた疲弊診断用表示データを作成し、表示器に表示する疲弊診断用表示実行手段と
を具備することを特徴とするデバッグ装置。
【請求項2】
前記エラー箇所特定手段は、前記調整ダンプファイルに基づきリードエラー箇所を特定することを特徴とする請求項1に記載のデバッグ装置。
【請求項3】
前記エラー箇所特定手段は、前記FILのデバッグ作業対象ファイルの中からNANDコマンドを抽出し、そのステータスに基づき最古のエラーのNANDコマンドから当該コマンドの物理位置を抽出して、エラー箇所とすることを特徴とする請求項2に記載のデバッグ装置。
【請求項4】
前記エラー箇所特定手段は、エラー箇所とした物理位置のNANDコマンドについて処理状況を検出することを特徴とする請求項3に記載のデバッグ装置。
【請求項5】
前記疲弊診断用表示実行手段は、前記現状閾値電圧と共に正常時閾値電圧を1画像にまとめた疲弊診断用表示データを作成し、表示器に表示することを特徴とする請求項4に記載のデバッグ装置。
【請求項6】
前記調整ダンプ作成手段は、デバック処理に用いない変数とレジスタを特定して記憶した不要処理情報テーブルを備え、この不要処理情報テーブルに記憶された変数とレジスタとを除いて調整ダンプファイルとする変換処理を実行することを特徴とする請求項5に記載のデバッグ装置。
【請求項7】
前記調整ダンプ作成手段は、変換処理の場合に、通常の通常ダンプから構造体の1レコード分を取り出し、必要な変数とレジスタの出力形式を変換して配列レジスタに並べる処理を前記通常ダンプにおける最初の構造体の1レコードから最終の構造体の1レコードまで続け、配列レジスタに蓄積された変換結果情報を出力することを特徴とする請求項6に記載のデバッグ装置。
【請求項8】
NANDフラッシュメモリに対して制御を行うFIL(フラッシュ・インタフェース・レイヤ)のデバッグを行うデバッグ装置に用いられるコンピュータを、
前記FILのデバッグ作業対象ファイルの通常のダンプを調整した調整ダンプファイルを作成する調整ダンプ作成手段、
前記調整ダンプファイルに基づきエラー箇所を特定するエラー箇所特定手段、
前記エラー箇所に基づきNAND疲弊データを作成する疲弊データ作成手段、
エラーパラメータ特定手段、
エラーパラメータを現状閾値電圧に変換する現状電圧変換手段、
前記疲弊データと前記現状閾値電圧を1画像にまとめた疲弊診断用表示データを作成し、表示器に表示する疲弊診断用表示実行手段
として機能させることを特徴とするデバッグ用プログラム。
【請求項9】
前記エラー箇所特定手段は、前記調整ダンプファイルに基づきリードエラー箇所を特定することを特徴とする請求項8に記載のデバッグ用プログラム。
【請求項10】
前記エラー箇所特定手段は、前記FILのデバッグ作業対象ファイルの中からNANDコマンドを抽出し、そのステータスに基づき最古のエラーのNANDコマンドから当該コマンドの物理位置を抽出して、エラー箇所とすることを特徴とする請求項9に記載のデバッグ用プログラム。
【請求項11】
前記エラー箇所特定手段は、エラー箇所とした物理位置のNANDコマンドについて処理状況を検出することを特徴とする請求項10に記載のデバッグ用プログラム。
【請求項12】
前記疲弊診断用表示実行手段は、前記現状閾値電圧と共に正常時閾値電圧を1画像にまとめた疲弊診断用表示データを作成し、表示器に表示することを特徴とする請求項11に記載のデバッグ用プログラム。
【請求項13】
前記調整ダンプ作成手段は、デバック処理に用いない変数とレジスタを特定して記憶した不要処理情報テーブルを備え、この不要処理情報テーブルに記憶された変数とレジスタとを除いて調整ダンプファイルとする変換処理を実行することを特徴とする請求項12に記載のデバッグ用プログラム。
【請求項14】
前記調整ダンプ作成手段は、変換処理の場合に、通常の通常ダンプから構造体の1レコード分を取り出し、必要な変数とレジスタの出力形式を変換して配列レジスタに並べる処理を前記通常ダンプにおける最初の構造体の1レコードから最終の構造体の1レコードまで続け、配列レジスタに蓄積された変換結果情報を出力することを特徴とする請求項13に記載のデバッグ用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、デバッグ装置及びデバッグ用プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、NANDフラッシュメモリ開発が多数国共同で進められている。このプロジェクトは、アメリカとイギリスの海外会社がFWやHardwareを抽象化したHardware Abstraction Layer(HAL)の設計・実装を担っている。一方、日本ではNANDの疲弊を抑える機能やNANDが疲弊しても正常なデータの読み書きを行うための機能の確認に特化したNAND信頼性テストの実施やFW不具合のデバッグ作業等を行い、海外開発チームの不具合改修をサポートしている。アメリカ、イギリス、日本の三者の作業範囲をまとめると図1のようになる。つまり、設計、実装、論理テストをアメリカとイギリスが担当し、テストを日本が担当し、実機テスト、デバッグをアメリカとイギリスと日本が担当している。
【0003】
前述のように、NAND信頼性テストの実施やデバッグ作業を行っているものの、開発したFWに、多くの不具合が検出され、修正が長期化し、エンドユーザへのFWリリースが遅延する事態も予想される。FWの不具合修正において不具合分析とデバッグ作業に時間を要することも気がかりである。このため、デバッグツールのスペックを向上させること、更に、特定条件や環境下で検出した不具合の再現を短時間で行うことが求められている。
【0004】
特に、NANDフラッシュメモリの場合には、リードエラーの発生が問題であり、応答性の悪化やNAND疲弊に関する状況を把握することが肝要である。
【0005】
上記のような課題に対し、応答性能の悪化を抑制したメモリシステムを提供することを目的として特許文献1に記載のものが知られている。
この特許文献1の実施形態によれば、メモリシステムは、不揮発性のメモリと、コントローラと、を備える。メモリは、複数の記憶領域を備える。複数の記憶領域のそれぞれは、データに応じてしきい値電圧が設定される複数のメモリセルを備える。コントローラは、複数の記憶領域のうちの第1の記憶領域が備える複数のメモリセルのしきい値電圧の分布である第1の分布を取得する。コントローラは、複数の記憶領域のうちの第2の記憶領域が備える複数のメモリセルのしきい値電圧の分布である第2の分布を取得する。コントローラは、第1の分布と第2の分布との乖離量である第1の乖離量に基づいて第1の記憶領域または第2の記憶領域の異常を検出する。
【0006】
また、ガベージコレクションという観点から問題を捕えたものが特許文献2に記載されている。即ち、この特許文献2のものは、ガベージコレクション時の消費電力を削減するものである。
この特許文献2の実施形態によるメモリシステムは、不揮発性メモリにおける各物理ブロックの疲弊度情報を管理する疲弊度管理部と、前記疲弊度管理部で管理されている各物理ブロックの前記疲弊度情報に基づいて、ガベージコレクションの対象とされた物理ブロックの有効クラスタから読み出されたデータに対する符号化・復号処理部による復号及び符号化の実行の有無を判定するガベージコレクション管理部と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2021-149991号公報
【特許文献2】特開2019-53415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、適切に簡易に迅速にNAND疲弊診断を行うことができるデバッグ装置及びデバッグ用プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るデバッグ装置は、NANDフラッシュメモリに対して制御を行うFIL(フラッシュ・インタフェース・レイヤ)のデバッグを行うデバッグ装置において、前記FILのデバッグ作業対象ファイルの通常のダンプを調整した調整ダンプファイルを作成する調整ダンプ作成手段と、前記調整ダンプファイルに基づきエラー箇所を特定するエラー箇所特定手段と、前記エラー箇所に基づきNAND疲弊データを作成する疲弊データ作成手段と、エラーパラメータ特定手段と、エラーパラメータを現状閾値電圧に変換する現状電圧変換手段と、前記疲弊データと前記現状閾値電圧を1画像にまとめた疲弊診断用表示データを作成し、表示器に表示する疲弊診断用表示実行手段とを具備することを特徴とする。
【0010】
本発明に係るデバッグ装置では、前記エラー箇所特定手段は、前記調整ダンプファイルに基づきリードエラー箇所を特定することを特徴とする。
【0011】
本発明に係るデバッグ装置では、前記エラー箇所特定手段は、前記FILのデバッグ作業対象ファイルの中からNANDコマンドを抽出し、そのステータスに基づき最古のエラーのNANDコマンドから当該コマンドの物理位置を抽出して、エラー箇所とすることを特徴とする。
【0012】
本発明に係るデバッグ装置では、前記エラー箇所特定手段は、エラー箇所とした物理位置のNANDコマンドについて処理状況を検出することを特徴とする。
【0013】
本発明に係るデバッグ装置では、前記疲弊診断用表示実行手段は、前記現状閾値電圧と共に正常時閾値電圧を1画像にまとめた疲弊診断用表示データを作成し、表示器に表示することを特徴とする。
【0014】
本発明に係るデバッグ装置では、前記調整ダンプ作成手段は、デバック処理に用いない変数とレジスタを特定して記憶した不要処理情報テーブルを備え、この不要処理情報テーブルに記憶された変数とレジスタとを除いて調整ダンプファイルとする変換処理を実行することを特徴とする。
【0015】
本発明に係るデバッグ装置では、前記調整ダンプ作成手段は、変換処理の場合に、通常の通常ダンプから構造体の1レコード分を取り出し、必要な変数とレジスタの出力形式を変換して配列レジスタに並べる処理を前記通常ダンプにおける最初の構造体の1レコードから最終の構造体の1レコードまで続け、配列レジスタに蓄積された変換結果情報を出力することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】現在進められている、NANDフラッシュメモリ開発における各国の役割を示す図。
図2】本発明の実施形態に係るデバッグ装置が適用されるSSDと称される対象の構成図。
図3】本発明の実施形態に係るデバッグ装置が適用されるSSDと称される対象の各FILとNAND間の構成を示す図。
図4】本発明の実施形態に係るデバッグ装置をコンピュータにより構成した場合のブロック図。
図5】本発明の実施形態に係るデバッグ装置の要部構成図。
図6】本発明の実施形態に係るデバッグ装置によるダンプ結果を示す。
図7】本発明の実施形態に係るデバッグ装置の要部である調整ダンプ作成手段の動作を説明するためのフローチャートを示す図。
図8】本発明の実施形態に係るデバッグ装置の要部であるエラー箇所特定手段の動作を説明するためのフローチャートを示す図。
図9】本発明の実施形態に係るデバッグ装置の要部である現状電圧変換手段の動作を説明するためのフローチャートを示す図。
図10】本発明の実施形態に係るデバッグ装置の各手段による疲弊診断用の情報表示動作を説明するためのフローチャートを示す図。
図11】NAND疲弊データ収集スクリプトを用いて収集したNAND疲弊データについて閾値電圧を横軸に採り、存在するメモリセルの数(ビット変化量)を縦軸に採り画像とした場合の表示例を示す図。
図12】本発明の実施形態に係るデバッグ装置の疲弊診断用表示実行手段により表示器に表示される疲弊診断用表示データの表示例を示す図。
図13】本発明の実施形態に係るデバッグ装置及びデバッグ用プログラムによって、各手段を用いた場合の効果を従来の手法と比較して文字で示した図。
図14】本発明の実施形態に係るデバッグ装置及びデバッグ用プログラムによって、各手段を用いた場合の効果を従来の手法と比較して棒グラフで示した図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態に係るデバッグ装置及びデバッグ用プログラムを説明する。各図において同一の構成要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。本実施形態に係るデバッグ装置は、メモリにフラッシュメモリを用いたSSD(Solid State Drive, SSD)と称されるものを対象としており、半導体メモリをディスクドライブのように扱える補助記憶装置の一種を対象とする。
【0018】
このSSDのFW(ファームウエア)は、図2で示すHost Interface Layer,Back End Layer,Host Write/Read or FW Write Erase Readのレイヤで構成されている。FIL(フラッシュ・インタフェース・レイヤ)はFIL0~FIL3の4並列分存在し、複数あるBack EndレイヤからWrite、Erase、Read要求を受け、NANDを効率よく制御するレイヤである。
【0019】
各FILとNAND間の構成は図3の通りであり、各FILとNANDの間にはNANDのコマンド制御を吸収してくれるFlash Controller uCode(以降、FC uCode)が存在し、各FILはFC uCodeを経由して接続されているNANDを制御している。
【0020】
本実施形態に係るデバッグ装置は、図4に示されるコンピュータの構成を採用することができる。本発明の実施形態に係るデバッグ装置は、例えばパーソナルコンピュータやワークステーションなどのコンピュータにより実現することができる。
【0021】
図4は、コンピュータ100の構成ブロック図である。コンピュータ100は、CPU10が主メモリ11内のプログラムやデータを用いて各部を制御してデバッグ装置として機能する。CPU10はバス12を介して外部記憶インタフェース13、入力インタフェース14、表示インタフェース15、通信インタフェース16が接続されている。
【0022】
外部記憶インタフェース13には、外部記憶装置23が接続され、入力インタフェース14には、キーボードやタッチパネルなどの入力装置24とマウスなどのポインティングデバイス22が接続されている。また、表示インタフェース15には、LCDなどの表示装置25が接続されており、画像を表示することが可能である。通信インタフェース16は通信ネットワークへ繋がる回線26が接続されており、他のコンピュータ等と通信することが可能である。
【0023】
本実施形態では、外部記憶装置23には、デバッグ用プログラム50と通常ダンプ(ファイル)60とが記憶されている。デバッグ用プログラム50は、図5に示す各手段により構成されている。上記通常ダンプ(ファイル)60は、NANDフラッシュメモリに対して制御を行うFIL(フラッシュ・インタフェース・レイヤ)のプログラム(ファームウエア及びソフトウェア)の通常のダンプ結果であり、旧来ダンプとでも呼ばれるもので、入力装置24から入力して外部記憶装置23へ記憶しておくことができ、また、通信インタフェース16を介して取り込み、外部記憶装置23へ記憶しておくことができる。
【0024】
デバッグ用プログラム50は、調整ダンプ作成手段51、エラー箇所特定手段52、疲弊データ作成手段53、現状電圧変換手段54、疲弊診断用表示実行手段55、エラーパラメータ特定手段56を含んでいる。調整ダンプ作成手段51は、FILのデバッグ作業対象ファイルの通常のダンプを調整した調整ダンプファイルを作成するものである。より具体的には、調整ダンプ作成手段51は、デバック処理に用いない変数とレジスタを特定して記憶した不要処理情報テーブルを備え、この不要処理情報テーブルに記憶された変数とレジスタとを除いて調整ダンプファイルとする変換処理を実行する。また、調整ダンプ作成手段51は、変換処理の場合に、通常ダンプから構造体の1レコード分を取り出し、必要な変数とレジスタの出力形式を変換して配列レジスタに並べる処理を上記通常ダンプにおける最初の構造体の1レコードから最終の構造体の1レコードまで続け、配列レジスタに蓄積された変換結果情報を出力するものである。
【0025】
例えば、通常ダンプ60が図6に示すようなファイルであるとして、図7に示すようなフローチャートにより処理を行う。まず、構造体の1レコードを読み出し(S11)、構造体の各変数の出力形式に変換する(S12)。従来は、1から4バイト単位の16進データであったのに対し、各変数3単位や変数のビット単位のデータに変換することとする。例えば、従来は、“0x9841a82e”であったのに対し、“Result Status=1”,“Not Executed=0”,“Bank Error=0”,“Op Error=0”,“Op Cancelled=0”,“Priority Bit=0”,“Command Tag=16”,“Num Of Plane=1”,“Channel=10”,“Bank=8”,“Group=1“Task=14”などとするものである。
【0026】
ステップS12に次いで、変換結果を配列レジスタへ格納し(S13)、最後の1レコードであるかを確認し(S14)、NOであればステップS11へ戻って処理を続け、ステップS14でYESとなると配列レジスタの内容をコンソール(表示部)へ出力すると共に、外部記憶装置23などのフィルへ記憶して(S15)エンドとなる。このファイルを、本実施形態では、調整ダンプファイルと称する。
【0027】
このフローチャートによる処理によって、無駄なデータの変換がなくなり、人手によるファイルへの格納作業を不要とし、処理時間を大きく短縮できる。また、各変数の出力形式を変更したため、変数の内容をオペレータ等の人が容易に理解できるようになる利点がある。図6には、構造体のみを通常ダンプ60として示したが、通常のプログラム等のダンプに現れるものが存在するが、説明の都合上で構造体のみとした。
【0028】
デバッグ用プログラム50のエラー箇所特定手段52は、上記調整ダンプファイルに基づきエラー箇所を特定する。より具体的には、上記エラー箇所特定手段52は、上記FILのデバッグ作業対象ファイルの中からNANDコマンドを抽出し、そのステータスに基づき最古のエラーのNANDコマンドから当該コマンドの物理位置を抽出して、エラー箇所とする。
【0029】
例えば、上記調整ダンプファイルには、リードコマンド、ライトコマンド、イレーズ(消去)コマンド等が入っているので、これらのコマンドについて処理ステータスを参照して処理を行う。図8に、この処理のフローチャートを示し、動作を説明する。まず、調整ダンプファイルを検索し、NANDコマンドの履歴を抽出する(S21)。抽出したNANDコマンドの処理ステータスを古い順に参照し、最も古くエラーとなっているNANDコマンドを検出する(S22)。次に、ステップS22において検出した最も古くエラーとなっているNANDコマンドの物理位置を検出する(S23)。
【0030】
検出した物理位置と同じ物理位置のコマンドを上記調整ダンプファイルにおいて全て検索し、それぞれの処理ステータスを参照して、各NANDコマンドの処理状況を求め、出力する(S24)。斯くして、同じ物理位置のNANDコマンドがエラーとなっていること、つまりNANDの疲弊状況の把握などが人手によらず行うことができ、デバッグの効果を上げることができる。
【0031】
本実施形態のデバッグ用プログラム50は、疲弊データ作成手段53、現状電圧変換手段54、疲弊診断用表示実行手段55、エラーパラメータ特定手段56を含んでおり、これらの手段によってNANDフラッシュメモリの疲弊診断を容易に適切に行うことが可能に構成されている。疲弊データ作成手段53は、エラー箇所特定手段52が上記調整ダンプファイルに基づきエラー箇所を特定すると、上記エラー箇所に基づきNAND疲弊データを作成するものである。本実施形態では、エラー箇所特定手段52が上記調整ダンプファイルに基づきリードエラー箇所を特定した場合に、上記リードエラー箇所に基づきNAND疲弊データを作成するものとする。このとき、リードエラー箇所の特定に伴ってエラーパラメータ特定手段56がリードエラーパラメータを特定する。リードエラーパラメータは、このときにNANDデータを得る場合用いた現状電圧が通常の閾値電圧からどれだけズレているかを示すシフト値として与えられる。現状電圧変換手段54は、エラーパラメータを現状閾値電圧に変換するものである。
【0032】
現状電圧変換手段54は、エラーパラメータであるシフト値を現状閾値電圧に変換するための変換テーブルを有している。この現状電圧変換手段54の動作を図9のフローチャートを参照して説明する。エラーパラメータ特定手段56がリードエラーパラメータを特定しているので、このリードエラーパラメータに基づき、変換テーブルを参照し、リードエラーパラメータ(シフト値)から現状閾値電圧を求め(S41)、疲弊診断用表示実行手段55へ渡す(S42)。この現状電圧変換手段54は、エラーパラメータ特定手段56が特定している全てのリードエラーパラメータに対する変換処理を終了したかを検出し(S43)、NOとなるとステップS41へ戻って処理を続ける。一方、ステップS43においてYESへ分岐すると処理を終了し、ENDとなる。
【0033】
疲弊診断用表示実行手段55は、上記疲弊データと上記現状閾値電圧を1画像にまとめた疲弊診断用表示データを作成し、表示器である表示装置25に表示するものである。疲弊診断用の情報表示は、最終的に疲弊診断用表示実行手段55が行うものであるが、調整ダンプ作成手段51、エラー箇所特定手段52、疲弊データ作成手段53、現状電圧変換手段54、疲弊診断用表示実行手段55、エラーパラメータ特定手段56の全てが関わって行われる。これらの各手段による疲弊診断用の情報表示を図10に示すフローチャートを参照して以下に説明する。
【0034】
調整ダンプ作成手段51により作成された、FILのデバッグ作業対象ファイルの調整ダンプファイルを検索してリードエラー箇所を特定する(S61)と共に、リードエラーとなっている箇所(または、コマンド)のリードエラーパラメータを求める(S62)。
【0035】
上記において特定されたリードエラー箇所の情報を用い、NAND疲弊データを収集するスクリプト(NAND疲弊データ収集スクリプト)を適用してNAND疲弊データを収集する(S63)。NAND疲弊データ収集スクリプトを用いて収集したNAND疲弊データについて閾値電圧を横軸に採り、存在するメモリセルの数(ビット変化量)を縦軸に採り画像とするならば、図11に示すようになる。ここでは、NAND疲弊データ収集スクリプトを用いて収集したデータは、CVSにより得られている。
【0036】
これまでに、NAND疲弊データ(CVS)とリードエラーパラメータとが得られているので、これらをNAND疲弊診断情報作成ツールに入力して、NAND疲弊グラフ(エクセル)と疲弊診断用データ(エクセル)を得る。NAND疲弊診断情報作成ツールは、既に説明した疲弊診断用表示実行手段55、エラーパラメータ特定手段56を含んでいる。従って、NAND疲弊グラフ(エクセル)は、図11に示したようなグラフであり、疲弊診断用データ(エクセル)は図9のフローチャートを参照して説明した如き現状電圧のグラフ(線分)となる。
【0037】
次いで、NAND疲弊診断情報作成ツールは、NAND疲弊グラフ(エクセル)と疲弊診断用データ(エクセル)をまとめて1画像とし、表示器である表示装置25に表示するものである(S64)。このとき、上記疲弊診断用表示実行手段55は、上記現状閾値電圧と共に正常時閾値電圧(通常状態で用いている閾値電圧)を1画像にまとめた疲弊診断用表示データを作成し、表示器に表示する。このようにしてできた1画像を図12に示す。本実施形態では、3ビットのNANDフラッシュメモリのセルを示しており、NAND疲弊グラフが7ステート分の7つの山が生じる場合を示している。そして、Tracking_BRとTracking_DRとTracking_FRの3つの現状閾値電圧と対応する正常時閾値電圧(Normal_BRとNormal_DRとNormal_FR)が表示される。現状閾値電圧と対応する正常時閾値電圧の差(ズレ)をオペレータが目視することにより、NAND疲弊度を容易に適切に診断することができる。
【0038】
以上の実施形態に係るデバッグ装置及びデバッグ用プログラムによって、各手段を用いた場合の効果を従来の手法と比較して図13に示す。改善1は、調整ダンプ作成手段51による処理へ改善したことを示している。改善2は、エラー箇所特定手段52による処理へ改善したことを示している。改善3は、疲弊データ作成手段53、現状電圧変換手段54、疲弊診断用表示実行手段55、エラーパラメータ特定手段56による処理へ改善したことを示している。「作業回数」は各手段による作業の回数を示し、改善3にあっては疲弊データ作成手段53、現状電圧変換手段54、疲弊診断用表示実行手段55、エラーパラメータ特定手段56による一連の処理を1回として数えるものである。全体として、図14の棒グラフに示すように、135.2時間を要していた処理を10.8時間に短縮することができ、作業時間の削減率は92%とすることができた。
【符号の説明】
【0039】
10 CPU 11 主メモリ
12 バス 13 外部記憶インタフェース
14 入力インタフェース 15 表示インタフェース
16 通信インタフェース 23 外部記憶装置
24 入力装置 25 表示装置
26 回線 50 デバッグ用プログラム
51 調整ダンプ作成手段 52 エラー箇所特定手段
53 疲弊データ作成手段 54 現状電圧変換手段
55 疲弊診断用表示実行手段 56 エラーパラメータ特定手段
60 通常ダンプ(ファイル) 100 コンピュータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14