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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057543
(43)【公開日】2024-04-24
(54)【発明の名称】発酵乾燥装置および発酵乾燥方法
(51)【国際特許分類】
   C05F 17/90 20200101AFI20240417BHJP
   C02F 11/02 20060101ALI20240417BHJP
   C02F 11/13 20190101ALI20240417BHJP
   B09B 3/60 20220101ALI20240417BHJP
【FI】
C05F17/90
C02F11/02 ZAB
C02F11/13
B09B3/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164365
(22)【出願日】2022-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】597150795
【氏名又は名称】中部エコテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174090
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 光
(74)【代理人】
【識別番号】100205383
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 諭史
(74)【代理人】
【識別番号】100224661
【弁理士】
【氏名又は名称】牧内 直征
(74)【代理人】
【識別番号】100100251
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 操
(72)【発明者】
【氏名】竹内 和敏
(72)【発明者】
【氏名】吉田 達宏
【テーマコード(参考)】
4D004
4D059
4H061
【Fターム(参考)】
4D004AA02
4D004AA03
4D004AA04
4D004BA04
4D004CA15
4D004CA19
4D004CA42
4D004CB01
4D004CB27
4D004CB43
4D004CC02
4D004DA01
4D004DA02
4D004DA06
4D004DA11
4D059AA01
4D059AA03
4D059AA07
4D059AA08
4D059BA03
4D059BA48
4D059BA56
4D059BD01
4D059BD24
4D059BJ03
4D059CA08
4D059CC01
4D059EA10
4D059EB15
4H061AA03
4H061GG04
4H061GG10
4H061GG19
4H061GG43
4H061GG49
4H061LL02
(57)【要約】
【課題】低コストかつ簡易な構造でありながら、発酵原料の発酵乾燥を安定的に実施できる発酵乾燥装置、および発酵乾燥方法を提供する。
【解決手段】発酵乾燥装置1は、送気ブロワにより容器内に外気を導入し、かつ、排気手段9により容器内から内気を排気しつつ、容器内に投入される発酵原料を撹拌翼4で撹拌しながら発酵および乾燥させ、排気手段9によって排出される内気の温度を検出する温度センサ12を備え、送気ブロワとして、温度センサ12によって検出される排気温度に基づいて相互に独立した入気量制御を行う、第1送気ブロワ6Aと第2送気ブロワ6Bとを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送気手段により容器内に外気を導入し、かつ、排気手段により前記容器内から内気を排気しつつ、前記容器内に投入される発酵原料を撹拌翼で撹拌しながら発酵および乾燥させ、前記排気手段によって排出される内気の温度を検出する温度センサを備える発酵乾燥装置であって、
前記発酵乾燥装置は、前記送気手段として、前記温度センサによって検出される排気温度に基づいて相互に独立した入気量制御を行う、第1送気手段と第2送気手段とを有することを特徴とする発酵乾燥装置。
【請求項2】
前記第1送気手段および前記第2送気手段の各送気手段に、低温側閾値と高温側閾値がそれぞれ設定されており、前記第1送気手段および前記第2送気手段はそれぞれ、前記排気温度が前記低温側閾値未満の場合に所定の最小入気量で前記容器内に外気を導入し、前記排気温度が前記高温側閾値以上の場合に所定の最大入気量で前記容器内に外気を導入することを特徴とする請求項1記載の発酵乾燥装置。
【請求項3】
前記第1送気手段および前記第2送気手段にそれぞれ設定された前記低温側閾値と前記高温側閾値がいずれも15℃~40℃の範囲内に設定されることを特徴とする請求項2記載の発酵乾燥装置。
【請求項4】
前記第1送気手段の前記低温側閾値をTL1、前記高温側閾値をTH1とし、前記第2送気手段の前記低温側閾値をTL2、前記高温側閾値をTH2としたとき、TL1<TL2<TH1<TH2の関係式(1)、または、TL1<TH1<TL2<TH2の関係式(2)を満たすことを特徴とする請求項2または請求項3記載の発酵乾燥装置。
【請求項5】
前記第2送気手段に該送気手段の運転を停止する停止閾値TS2が設定されており、さらに、TL1<TS2<TH1の関係式(3)を満たすことを特徴とする請求項4記載の発酵乾燥装置。
【請求項6】
前記第1送気手段および前記第2送気手段の少なくとも一方の送気手段に該送気手段の運転を停止する停止閾値が設定されており、前記排気温度が前記停止閾値に基づいた所定の温度範囲に該当する場合に前記一方の送気手段を停止させて、他方の送気手段のみで前記容器内に外気を導入することを特徴とする請求項1または請求項2記載の発酵乾燥装置。
【請求項7】
前記撹拌翼は、前記容器内において回転軸の下部から上部にかけて所定間隔で離間して多段に設けられており、最下段の撹拌翼に、前記第1送気手段および前記第2送気手段と連通され、これら送気手段からの外気を該容器内に導入するための通気孔を有することを特徴とする請求項1または請求項2記載の発酵乾燥装置。
【請求項8】
送気手段により容器内に外気を導入し、かつ、排気手段により前記容器内から内気を排気しつつ、前記容器内に投入される発酵原料を撹拌翼で撹拌しながら発酵および乾燥させ、前記排気手段によって排出される内気の温度を検出する温度センサを備える発酵乾燥装置の発酵乾燥方法であって、
前記発酵乾燥装置は、前記送気手段として第1送気手段と第2送気手段とを有しており、これら送気手段を用いて、前記温度センサによって検出される排気温度に基づいて相互に独立した入気量制御を行うことを特徴とする発酵乾燥方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発酵乾燥装置および発酵乾燥方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、家畜排泄物や、食品廃棄物、下水汚泥などの発酵原料の発酵・乾燥を行う装置として、微生物の発酵作用を利用した発酵乾燥装置が知られている。この装置は、円筒縦型のタンク形状であり、密閉容器内に投入された発酵原料に強制通気しつつ乾燥と発酵を行なっている。
【0003】
例えば、特許文献1には、容器内に設けられた回転軸およびこれに付設された複数の撹拌翼と、送気手段と、排気手段とを備えてなる密閉型の発酵乾燥装置が開示されている。この装置では、所定時間当たりの発酵熱量や蒸発水分量を発酵指標とし、この発酵指標に基づいて容器内に導入される外気の量を調整している。指標となる発酵熱量や蒸発水分量は、容器に導入する外気の温度と流量、および容器内から排出される内気の温度と流量に基づいて算出されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-172272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1では、発酵熱量や蒸発水分量を発酵指標として、外気の量を調整することで、発酵原料の発酵乾燥を安定的に実施している。しかし、発酵指標の算出には、送気手段および排気手段に、温度センサや流量センサなどが必要となり、制御システムが煩雑になりやすい。また、各センサなどの設置費用やメンテナンス費用なども必要となるため、コスト増となる傾向がある。
【0006】
一方で、低コストな入気量制御として、容器内から排出される内気の温度(排気温度)を発酵指標とすることが考えられる。この場合、制御システムを簡素化できる一方で、入気量制御が単調になりやすい。その結果、過乾燥を招くなど、発酵乾燥物の品質にバラツキが生じるおそれがある。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、低コストかつ簡易な構造でありながら、発酵原料の発酵乾燥を安定的に実施できる発酵乾燥装置、および発酵乾燥方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発酵乾燥装置は、送気手段により容器内に外気を導入し、かつ、排気手段により上記容器内から内気を排気しつつ、上記容器内に投入される発酵原料を撹拌翼で撹拌しながら発酵および乾燥させ、上記排気手段によって排出される内気の温度を検出する温度センサを備える発酵乾燥装置であって、上記発酵乾燥装置は、上記送気手段として、上記温度センサによって検出される排気温度に基づいて相互に独立した入気量制御を行う、第1送気手段と第2送気手段とを有することを特徴とする。
【0009】
上記第1送気手段および上記第2送気手段の各送気手段に、低温側閾値と高温側閾値がそれぞれ設定されており、上記第1送気手段および上記第2送気手段はそれぞれ、上記排気温度が上記低温側閾値未満の場合に所定の最小入気量で上記容器内に外気を導入し、上記排気温度が上記高温側閾値以上の場合に所定の最大入気量で上記容器内に外気を導入することを特徴とする。
【0010】
上記第1送気手段および上記第2送気手段にそれぞれ設定された上記低温側閾値と上記高温側閾値はいずれも15℃~40℃の範囲内に設定されることを特徴とする。
【0011】
上記第1送気手段の上記低温側閾値をTL1、上記高温側閾値をTH1とし、上記第2送気手段の上記低温側閾値をTL2、上記高温側閾値をTH2としたとき、TL1<TL2<TH1<TH2の関係式(1)、または、TL1<TH1<TL2<TH2の関係式(2)を満たすことを特徴とする。
【0012】
上記第2送気手段に該送気手段の運転を停止する停止閾値TS2が設定されており、さらに、TL1<TS2<TH1の関係式(3)を満たすことを特徴とする。
【0013】
上記第1送気手段および上記第2送気手段の少なくとも一方の送気手段に該送気手段の運転を停止する停止閾値が設定されており、上記排気温度が上記停止閾値に基づいた所定の温度範囲に該当する場合に上記一方の送気手段を停止させて、他方の送気手段のみで上記容器内に外気を導入することを特徴とする。
【0014】
上記撹拌翼は、上記容器内において回転軸の下部から上部にかけて所定間隔で離間して多段に設けられており、最下段の撹拌翼に、上記第1送気手段および上記第2送気手段と連通され、これら送気手段からの外気を該容器内に導入するための通気孔を有することを特徴とする。
【0015】
本発明の発酵乾燥方法は、送気手段により容器内に外気を導入し、かつ、排気手段により上記容器内から内気を排気しつつ、上記容器内に投入される発酵原料を撹拌翼で撹拌しながら発酵および乾燥させ、上記排気手段によって排出される内気の温度を検出する温度センサを備える発酵乾燥装置の発酵乾燥方法であって、上記発酵乾燥装置は、上記送気手段として第1送気手段と第2送気手段とを有しており、これら送気手段を用いて、上記温度センサによって検出される排気温度に基づいて相互に独立した入気量制御を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の発酵乾燥装置は、送気手段として、温度センサによって検出される排気温度に基づいて相互に独立した入気量制御を行う、第1送気手段と第2送気手段とを有するので、例えば発酵熱量を用いる入気量制御に比べて、低コストかつ簡易な構造としつつ、相互に独立した入気量制御を行うことで、より厳密な入気量制御が可能である。その結果、例えば実施例で示すように、堆肥の含水率を所定の範囲内に抑えることができ、発酵乾燥を安定的に実施できる。また、粉塵の発生も少なくすることができる。
【0017】
また、第1送気手段および第2送気手段はそれぞれ、排気温度が低温側閾値未満の場合に所定の最小入気量で容器内に外気を導入し、排気温度が高温側閾値以上の場合に所定の最大入気量で容器内に外気を導入するものであり、第1送気手段および第2送気手段にそれぞれ設定された低温側閾値と高温側閾値はいずれも15℃~40℃の範囲内に設定されるので、排気温度がある程度高い期間には簡易な入気量制御を行いつつ、排気温度が低く、入気量制御が重要な発酵初期および仕上がり期には、第1送気手段および第2送気手段を用いて細やかな入気量制御を行うことで、例えば仕上がり期の過乾燥などを抑制でき、粉塵の発生を好適に少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の発酵乾燥装置の一例を示す縦断面図である。
図2】発酵乾燥処理における排気温度の推移のイメージ図である。
図3】入気量制御の各閾値の設定画面の一例を示す図である。
図4】表1の入気量制御における排気温度とインバータ周波数の関係を示す図である。
図5】実施例1の入気量制御における排気温度と送風量の関係を示す図である。
図6】実施例2の入気量制御における排気温度と送風量の関係を示す図である。
図7】実施例1~2および比較例1~3の各発酵乾燥処理における堆肥の含水率を示す図である。
図8】実施例1~2における容器内の温度とインバータ周波数の経時変化を示す図である。
図9】比較例1~2における容器内の温度とインバータ周波数の経時変化を示す図である。
図10】他の入気量制御における排気温度と送風量の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の発酵乾燥装置の概要を図1に基づいて説明する。図1は発酵乾燥装置の構成の一例を示す縦断面図である。図1に示すように、発酵乾燥装置1は、円筒縦型の容器2と、容器2内に縦方向に設けられた回転軸3と、回転軸3周りに多段に付設された複数枚の撹拌翼4と、容器2内に外気を取り入れるための送気手段としての送気ブロワと、容器2内に蓄積する内気を容器外部に排出するための排気手段9とを備えてなる密閉縦型の発酵乾燥装置(「コンポ」とも呼ぶ)である。この発酵乾燥装置は、堆肥化を行なう場合は堆肥化装置ともいえる。本発明における該装置は、容器2の内容積が10m以上である業務用の大型の装置を主な対象としている。撹拌翼4の形状は、特に制限なく、例えば、回転軸3から容器2の内壁側に向けて直線的に延設されたピッチドパドル形状とし、その回転方向前側に傾斜面を有する形状などとできる。
【0020】
発酵乾燥装置1は、送気ブロワとして、温度センサ12によって検出される排気温度に基づいて相互に独立した入気量制御を行う、第1送気ブロワ6Aと第2送気ブロワ6Bとを有している。発酵乾燥装置1では、排気温度を発酵指標としている。第1送気ブロワ6Aおよび第2送気ブロワ6Bを用いて入気量制御を行うことで、1つの送気ブロワを用いる場合に比べて、入気量制御をより細分化しやすく、また、送気ブロワの大容量化を防ぐことから送気ブロワ自体の耐焼き付き性や耐久性の面でも好ましい。この装置構成は、特に大きな入気量が必要となる内容積が50m以上の発酵乾燥装置により適している。また、後述するように、第1送気ブロワ6Aおよび第2送気ブロワ6Bのうち一方の送気ブロワを停止することも可能であり、容量が大きい1つの送気ブロワを低出力で常時運転させる場合に比べて消費電力量を抑えることができ、ランニングコストにも優れる。
【0021】
送気ブロワ6Aおよび6Bは、相互に独立した入気量制御が可能であればよく、各送気ブロワの装置スペックや装置構成は、互いに同じでも異なってもいてもよい。送気ブロワ6Aおよび6Bとしては、入気量を調整しやすくするため、ブロワ回転数をインバータ周波数で制御できるものを用いることが好ましい。送気ブロワ6Aおよび6Bとしては、例えばリングブロワを用いることができる。また、送気ブロワ6Aおよび6Bの各配管の途中に、入気量を調整する送気バルブをそれぞれ設けてもよい。送気ブロワ6Aおよび6Bの具体的な入気量制御については後述する。
【0022】
送気ブロワ6Aおよび6Bの各配管は独立した形で回転軸3の下部まで配設され、回転軸3の下部に設けられた集合ボックスで合流する。合流後は、単一の配管pとして回転軸内を通り撹拌翼4に接続される。具体的には、発酵乾燥装置1は、最下段の撹拌翼の下部に通気孔4aを有し、送気ブロワ6Aおよび6Bから送られる外気(入気)を回転軸内に設けられた配管pを介して該通気孔より容器内に導入している。配管p内は、第1送気ブロワ6Aの送風量と第2送気ブロワ6Bの送風量の合計量が通過する。なお、送気ブロワ6Aおよび6Bの各配管と配管pが接続される接続箇所において、送気ブロワ6Aおよび6Bの各配管には、他方の配管からの送気の流入を防ぐため、逆止弁を設けることが好ましい。発酵槽である容器2は、金属製外層と断熱層とを有する断熱容器であり、かつ、通気孔から導入される以外の外気とは接触しにくい気密性容器である。また、容器2の上部に発酵原料の投入口2aと、排気口2cとを有し、底部に処理後の発酵乾燥物の取出口2bを有する。排気口2cは排気手段9に連結されている。投入口2aおよび取出口2bには、容器の気密性を確保するための開閉可能な蓋などが設けられている。
【0023】
図1に示す形態では、容器2の下方に機械室5が設けられ、この機械室内に回転軸3の駆動手段8が設けられている。回転軸3は、機械室5内に貫通しており、駆動手段8により所定回転数で回転させられる。また、必要に応じて、送気ブロワから送られる外気を加温するためのヒータが設けられている。図1では、第1送気ブロワ6Aの配管の途中にヒータ7Aが設けられ、第2送気ブロワ6Bの配管の途中にヒータ7Bが設けられている。なお、ヒータは必須ではなく、例えば、排気手段9からの排気の熱を利用して送気ブロワから容器内に導入される外気を加温する熱交換手段(図示省略)を設けてもよい。
【0024】
容器内で発生したガスや水蒸気などは、排気口2cから排気手段9を介して外気へ排気される。排気手段9は、排気管10と、排気ファン11と、脱臭装置(図示省略)とを有する。排気ファン11は、容器内のガスなどを強制的に排気させる。脱臭装置は、例えば、ガスなどに洗浄液としての水や酸などを接触させて臭気成分を捕捉する吸収塔などである。臭気成分としては、プロピオン酸、ノルマル酪酸、イソ吉草酸などの低級脂肪酸や、硫黄化合物、アンモニアなどが挙げられる。排気管10において、排気口2cから排気ファン11までの排気経路上には、容器2内から排出される内気の温度を検出する温度センサ12が設けられる。
【0025】
本発明の発酵乾燥装置において、発酵乾燥処理の対象となる発酵原料には、有機質成分を多く含む、家畜排泄物、食品廃棄物、汚泥、またはこれらの混合物が挙げられる。具体的には、家畜排泄物として、鶏糞、豚糞、牛糞、馬糞などが挙げられ、食品廃棄物として生ごみ、食品製造副産物などが挙げられ、汚泥として、下水処理施設から発生する汚泥、農業集落排水処理施設から発生する汚泥、畜産汚水処理過程で発生する汚泥、食品工場の排水処理過程で発生する汚泥などが挙げられる。また、発酵乾燥装置における発酵乾燥処理は、容器内において、好気性発酵菌の存在下で通気しながら好気発酵させて行なう。好気性発酵菌としては、30~90℃程度で活性化する発酵菌が好ましく、例えば、ジオバチスル属やバチルス属などが挙げられる。
【0026】
図1に示すように、発酵乾燥装置1には、該装置の運転を制御する制御盤13が備え付けられている。制御盤13により、例えば、自動運転モードと手動運転モードの切り替えや、自動運転モードの各種設定操作、手動運転モードにおける各種操作(例えば、送気ブロワ6A、6BのON/OFF、排気ファン11のON/OFF、駆動手段8のON/OFF、バケット(図示省略)の昇降など)を行うことができる。
【0027】
発酵乾燥装置1は、周知のCPU、ROM、RAMなどからなるマイクロコンピュータを主体として構成される制御装置14を有する。制御装置14には、温度センサ12の検出信号が入力され、例えば、排気温度を任意の時間間隔で取得、記憶できる構成となっている。また、制御装置14は、各種演算機能も有している。この制御装置14が第1送気ブロワ6Aおよび第2送気ブロワ6Bの入気量を制御する。
【0028】
以下には、第1送気ブロワ6Aおよび第2送気ブロワ6Bの入気量制御の一形態について説明する。なお、以後は、送気ブロワのインバータ周波数を調整することによる入気量制御について述べる。
【0029】
この形態において、第1送気ブロワ6Aには、排気温度に関する閾値として低温側閾値TL1と高温側閾値TH1が設定されている。そして、第1送気ブロワ6Aは、排気温度が低温側閾値TL1未満の場合に所定の最小入気量で容器内に外気を導入し、排気温度が高温側閾値TH1以上の場合に所定の最大入気量で容器内に外気を導入するように制御される。具体的には、インバータ周波数が所定の最低出力値に設定されることで所定の最小入気量となり、インバータ周波数が所定の最高出力値に設定されることで所定の最大入気量となる。
【0030】
また、第2送気ブロワ6Bには、排気温度に関する閾値として低温側閾値TL2と高温側閾値TH2が設定されている。そして、第2送気ブロワ6Bは、排気温度が低温側閾値TL2未満の場合に所定の最小入気量で容器内に外気を導入し、排気温度が高温側閾値TH2以上の場合に所定の最大入気量で容器内に外気を導入するようになっている。具体的には、インバータ周波数が所定の最低出力値に設定されることで所定の最小入気量となり、インバータ周波数が所定の最高出力値に設定されることで所定の最大入気量となる。
【0031】
なお、第1送気ブロワ6Aおよび第2送気ブロワ6Bにおけるインバータ周波数の最低出力値および最高出力値は、任意の値に適宜設定される。また、各最低出力値や各最高出力値は、互いに同じでも異なっていてもよい。
【0032】
第1送気ブロワ6Aおよび第2送気ブロワ6Bにおける各閾値の大小関係は特に限定されないが、仮にTH1<TH2としたとき、TL1<TL2<TH1<TH2の関係式(1)、または、TL1<TH1<TL2<TH2の関係式(2)を満たすことが好ましい。
【0033】
また、TL1、TH1、TL2、およびTH2の具体的な数値は特に限定されないが、いずれも15℃~45℃の範囲内に設定されることが好ましく、15℃~40℃の範囲内に設定されることがより好ましく、20℃~40℃の範囲内に設定されることがさらに好ましい。
【0034】
ここで、図2に、発酵原料の投入から取り出しまでの一連の発酵乾燥処理(バッチ方式)における排気温度の推移のイメージ図を示す。なお、スタート時(投入直後)の排気温度は、投入時の発酵原料の温度によって異なる。図2(a)は、スタート時から排気温度が40℃を超えている場合を示し、図2(b)は、スタート時に排気温度が40℃を下回っている場合を示している。
【0035】
図2に示すように、排気温度は20℃~70℃程度の範囲で変動し、微生物活性の向上に伴って上昇した後、緩やかに低下して、仕上がり期を迎えて取り出される。容器内における発酵原料の状態は、発酵が主体の状態、発酵と乾燥が主体の状態、乾燥が主体の状態に大別される。図2に示すような排気温度の推移において、高温領域(例えば40℃~70℃程度)での入気量制御は、発酵乾燥物の品質にそれほど影響しないと考えられる。一方で、低温領域である仕上がり期での入気量制御は、発酵乾燥物の品質に影響しやすいことから重要となる。仕上がり期の入気量制御によっては、発酵乾燥物の粉塵が問題になりやすい。そのため、低温領域においてより細やかな入気量制御を可能とするべく、TL1、TH1、TL2、およびTH2は上述の範囲内(例えば15℃~45℃)に設定されることが好ましい。
【0036】
また、図2(b)に示すようなスタート時に排気温度が40℃を下回っている場合には、上記のように設定することで、低温領域である発酵初期においてもより細やかな入気量制御を行なうことができる。これにより、排気温度に応じた入気量を供給でき、微生物の活性を促進させやすくなる。
【0037】
第1送気ブロワ6Aおよび第2送気ブロワ6Bにおいて、低温側閾値と高温側閾値の間の周波数制御は、特に限定されない。排気温度が高いほど発酵が活発に行われていることから、排気温度が高い場合には、インバータ周波数を増加させて入気量を増大させるようにすることが好ましい。例えば、周波数制御としては、低温側閾値と高温側閾値の間の全温度範囲において排気温度が高くなるほどインバータ周波数を連続的に増加させる比例制御としてもよく、段階的に増加させる制御としてもよい。また、低温側閾値と高温側閾値の間を複数の温度領域(例えば3つ以上)に分割して、その温度領域ごとに応じた制御としてもよい。
【0038】
上記形態において、第1送気ブロワ6Aおよび第2送気ブロワ6Bの少なくとも一方の送気ブロワに該送気手段の運転を停止する停止閾値を設定することが好ましい。さらにこの場合、排気温度が停止閾値に基づいた所定の温度範囲に該当する場合に一方の送気ブロワを停止させて、他方の送気ブロワのみで容器内に外気を導入することが好ましい。排気温度が低下した場合に、一方の送気ブロワを停止することで、送気を行いつつ消費電力量を抑えることができる。
【0039】
例えば、停止閾値を一方の送気ブロワ(例えば第2送気ブロワ6B)のみに設定してもよい。この場合、該停止閾値未満の場合に、一方の送気ブロワを停止させて、他方の送気ブロワは常時運転させるようにする。また、別の形態として、第1送気ブロワ6Aの停止閾値をTS1、第2送気ブロワ6Bの停止閾値をTS2としたとき(TS1<TS2を満たす)、排気温度がTS1以上TS2未満の場合に、第2送気ブロワ6Bを停止させて第1送気ブロワ6Aのみで容器内に外気を導入するようにしてもよい。
【0040】
各閾値を設定する方法について図3を用いて説明する。図3は、制御盤などに備えられる表示部および操作キーの一例を示す。図左側は、第1送気ブロワの設定パネルを示し、図右側は、第2送気ブロワの設定パネルを示す。表示切替ボタンなどを操作して設定する閾値を表示して、その数値を上下させることで、閾値を設定することができる。
【0041】
上記形態における閾値として具体的な数値を設定した一例を下記の表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
表1の入気量制御では、第1送気ブロワの停止閾値TS1が0℃に設定され、第2送気ブロワの停止閾値TS2が25℃に設定されている。通常の発酵乾燥処理では、排気温度が0℃未満になることはほとんどなく、この入気量制御は、第1送気ブロワが常時運転することを想定している。
【0044】
表1において、各閾値は、上記関係式(2)を満たしており、さらに、TL1<TS2<TH1の関係式(3)を満たしている。具体的には、TL1<TS2<TH1<TL2<TH2の関係になっている。例えば、関係式(3)を満たすように設定することで、より低温になる前に送風量を減らし、無駄な消費電力を減らすことなどが可能になる。
【0045】
次に、表1に基づく入気量制御の排気温度とインバータ周波数との関係を図4に示す。なお、図4では停止閾値TS1を省略している。図4に示す入気量制御では、送気ブロワ6Aにおいて低温側閾値TL1と高温側閾値TH1の間の全温度範囲において排気温度が高くなるほどインバータ周波数を一定割合で増加させる比例制御としている。また、送気ブロワ6Bについても同様に低温側閾値TL2と高温側閾値TH2の間を比例制御としている。
【0046】
図4を用いて、発酵原料の投入から取り出しまでの一連の流れの入気量制御について説明する。運転手順としては、まず、発酵乾燥装置の投入口から容器の内部に発酵原料を投入する。具体的には、該装置の内容積に対して10~30%の空間(ヘッドスペース)を残して、発酵原料を投入する。10~30%の空間を残して発酵原料を投入することにより、撹拌が十分になされるため、発酵および乾燥が効率よくなされる。
【0047】
発酵原料の投入直後は排気温度が低くなっている場合があり、例えば、排気温度が40℃を下回っている例として、TS1以上TL1未満になっている場合を想定する。この場合、第1送気ブロワ6Aのみが30Hzで一定運転している。その後、発酵が進み、排気温度が上昇して低温側閾値TL1以上になると、第1送気ブロワ6Aの出力を排気温度に応じて増加させる。そして、排気温度が高温側閾値TH1以上になると第1送気ブロワ6Aを60Hzで一定運転させる。
【0048】
一方、第2送気ブロワ6Bは、発酵原料の投入後しばらくの間停止しており、排気温度が停止閾値TS2以上になると運転を開始させる。このとき、第2送気ブロワ6Bは30Hzで一定運転させる。その後、排気温度が低温側閾値TL2以上になると、第2送気ブロワ6Bの出力を排気温度に応じて増加させる。そして、排気温度が高温側閾値TH2以上になると第2送気ブロワ6Bを60Hzで一定運転させる。それ以後は、しばらくの間、第1送気ブロワ6Aおよび第2送気ブロワ6Bを60Hzで一定運転させて、発酵乾燥処理を行う。
【0049】
このように発酵乾燥処理のスタート時に排気温度が低い場合(例えばTL1未満の場合)には、第1送気ブロワ6Aおよび第2送気ブロワ6Bの出力を制御して細やかな入気量制御を行なう。一方で、発酵乾燥処理のスタート時から排気温度が高い場合(例えば40℃を超えている場合)には、当初から、第1送気ブロワ6Aおよび第2送気ブロワ6Bを最大周波数で運転させて、最大温度までの立ち上がりを速くする。
【0050】
そして、図4において、発酵乾燥物の仕上がり期(発酵乾燥処理の終盤)には、排気温度が低下する。この際、排気温度が高温側閾値TH2(またはTH1)未満になると、第2送気ブロワ6B(または第1送気ブロワ6A)の出力を排気温度に応じて減少させる。また、排気温度が低温側閾値TL2(またはTL1)未満になると、第2送気ブロワ6B(または第1送気ブロワ6A)を30Hzで一定運転させる。さらに、排気温度が停止閾値TS2未満になると、第2送気ブロワ6Bの運転を停止させる。
【0051】
上記入気量制御は、所定の滞留期間(3日~6日)発酵および乾燥して、発酵乾燥物の全量を取り出すバッチ方式の運転に限らず、容器内に発酵乾燥物を一部残しつつ、発酵乾燥物の取り出しと、発酵原料の投入を行ないながら、連続的に運転する方式でもよい。連続方式の運転では、例えば投入は毎日行ない、所定の滞留期間(3日~20日程度)発酵および乾燥して、一定期間(例えば毎日)毎に所定量(例えば20質量%程度)の発酵乾燥物を取り出す。
【0052】
本発明の発酵乾燥装置によって、得られる発酵乾燥物の含水率は、例えば10.0質量%~40.0質量%であり、好ましくは20.0質量%~30.0質量%である。なお、発酵原料の含水率は、60.0~85.0質量%程度である。
【0053】
発酵乾燥装置から取り出された発酵乾燥物(例えば堆肥)は、回転ふるいなどにかけられ、その後ペレット化される。この回転ふるいの処理は、過乾燥の堆肥であると粉塵が舞いやすく、作業環境の低下を招きやすい。これに対して、本発明の発酵乾燥装置によれば、過乾燥を抑えた上で(例えば含水率20.0%以上とした上で)堆肥の含水率が大きく変わることなく仕上がり、粉塵の発生も抑えることができる。
【0054】
本発明の発酵乾燥装置の構成は、上記図1に限定されるものではない。例えば、最下段の撹拌翼の上段の撹拌翼に、第1送気ブロワ6Aおよび第2送気ブロワ6Bとは異なる送気ブロワと連通され、該送気ブロワからの外気を該容器内に導入するための通気孔を有する構成としてもよい。この場合、第1送気ブロワ6Aおよび第2送気ブロワ6Bとは異なる送気ブロワには、第1送気ブロワ6Aおよび第2送気ブロワ6Bよりも低出力のものが用いられる。
【0055】
また、第1送気ブロワ6Aおよび第2送気ブロワ6Bをトラブル発生時に60Hzで一定運転させるようにしてもよい。
【実施例0056】
11月の1ヶ月の期間において、所定の入気量制御の発酵乾燥装置(実施例1~2)を用いて発酵乾燥処理を実施した。送気ブロワには同スペックの送気ブロワを2台使用した。4日間のバッチ式の発酵乾燥処理を1サイクルとして、それを各実施例において複数回実施した。各発酵乾燥処理前における発酵原料の含水率は75質量%程度であった。下記の表2には、実施例1および実施例2の入気量制御の設定条件を示す。
【0057】
【表2】
【0058】
また、実施例1および実施例2の入気量制御における排気温度と送風量の関係を図5図6に示す。各図(a)は、第1送気ブロワと第2送気ブロワの各送風量を示し、各図(b)は、それらの合計の送風量を示している。1台の送気ブロワは、30Hz(下限周波数)の送風量が5m/minであり、60Hz(上限周波数)の送風量が10m/minである。実施例1では、21℃~33℃の範囲において送風量(およびインバータ周波数)を変化させ、実施例2では、26℃~40℃の範囲において送風量(およびインバータ周波数)を変化させた。投入時の発酵原料の温度の関係から、各実施例では、主に仕上がり期において、送風量を変化させる制御を行った。また、仕上がり期において送風量を下げることにより、消費電力を低減できる。
【0059】
また、比較対象として、周波数の一定制御の発酵乾燥装置(比較例1~3)を用いて発酵乾燥処理を実施した。これらでは、排気温度によらず送気ブロワの周波数を60Hzとした。
【0060】
各試験例において発酵乾燥処理後に排出された発酵乾燥物(堆肥)の含水率をそれぞれ測定した。結果を表3に示す。また、表3の含水率を発酵乾燥処理ごとの時系列でプロットした図を図7に示す。
【0061】
【表3】
【0062】
表3および図7に示すように、全ての試験例において堆肥の含水率は15.0%~30.0%の範囲内であった。特に、実施例1~2は、比較例1~3に比べると含水率が高めであり、具体的には22.0%~26.0%の範囲内であった。また、実施例1~2の堆肥を扱う場合の粉塵の発生も極めて少なかった。特に、仕上がり期において、細やかな入気量制御を行なうことで、過乾燥を防ぐことができたと考えられる。
【0063】
また、上記の試験とは異なる期間(12月21日~12月28日)において、実施例1~2および比較例1~2の入気量制御で発酵乾燥処理を行なった際の、容器内の温度とインバータ周波数について時系列で示した図を図8および図9に示す。なお、容器内の温度は、容器内に設置される高さが異なる3つの温度計によって測定した。
【0064】
図8に示すように、実施例1および実施例2では、仕上がり期(排出/投入の直前期)において、各送気ブロワのインバータ周波数が低減された。実施例1では最終的には1台の送気ブロワで容器内への入気が行われた。一方、図9に示すように、比較例1および比較例2では、各送気ブロワのインバータ周波数はほぼ一定に制御された。図8図9を対比すると、仕上がり期における容器内の温度は、実施例1~2の方が、比較例1~2よりも低くなっている。実施例1~2では、上述した入気量制御により、仕上がり期の容器内の温度を適度に保つことができ、結果として堆肥の過乾燥の防止に繋がったと考えられる。
【0065】
また、上述の試験例とは異なる入気量制御として、図10に示すような入気量制御を行ってもよい。この入気量制御は、実施例1のTS2を18℃に変更したものであり、TL1<TS2<TH1の大小関係がTS2<TL1<TH1に変更されている。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の発酵乾燥装置は、低コストかつ簡易な構造でありながら、発酵原料の発酵乾燥を安定的に実施できるので、例えば、有機性廃棄物を発酵乾燥するための装置として好適に利用できる。
【符号の説明】
【0067】
1 発酵乾燥装置
2 容器
2a 投入口
2b 取出口
2c 排気口
3 回転軸
4 撹拌翼
4a 通気孔
5 機械室
6A 第1送気ブロワ(第1送気手段)
6B 第2送気ブロワ(第2送気手段)
7A ヒータ
7B ヒータ
8 駆動装置
9 排気手段
10 排気管
11 排気ファン
12 温度センサ
13 制御盤
14 制御装置
p 配管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10