(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057547
(43)【公開日】2024-04-24
(54)【発明の名称】防草施工方法
(51)【国際特許分類】
A01M 21/00 20060101AFI20240417BHJP
【FI】
A01M21/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022173793
(22)【出願日】2022-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】522422768
【氏名又は名称】有限会社伊藤テクノリサーチ
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 道寛
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA19
2B121BB25
2B121BB30
2B121EA21
(57)【要約】
【課題】屋根材と構造部材を用いて安価で長期間にわたり防草効果が高い防草施工方法を提供する。
【解決手段】遮光できる瓦と遮光できるコンクリートブロックを用いて、直接地面に防草効果が高い構造物を形成する施工方法であって、裏側にした瓦1の頭部10を手前にして瓦と瓦を組み合わせ、施工することを特徴とする第一の発明と、表側にした瓦19の尻部9を手前にして瓦と瓦を組み合わせ、施工することを特徴とする第二の発明のいずれかを用いて構造物を形成し、その周囲を構造部材で取り囲むことにより、光合成ができない遮光構造物を形成する。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面に2枚以上の屋根材と構造部材を用いて遮光できる構造に組み合わせ、遮光構造物を形成することを特徴とする防草施工方法。
【請求項2】
第一の発明の防草施工方法は、裏側にした瓦1を用い、瓦の頭部10を手前にして尻部9を構造部材6に突きあてると共に、瓦1の差し込み部11を構造部材7に突きあて、瓦の頭部10側を地面に着けて設置する。次にその瓦1の谷形状部14に二枚目に設置する瓦2の差し込み部11を被せ、上端面を揃えて瓦の頭部10側の一端31を地面に着けて設置し、その後においても瓦2と同様な方法で防草範囲まで施工する第一工程と、次に2列目の施工方法は、裏面にした瓦4の右上の切り欠け部16を一列目に設置した瓦2の左下の切り欠き部15に合わせて瓦1に被せながら、瓦の頭部10側の一端31を地面に着けて設置し、その後においても同様の方法で右方向に防草範囲まで施工を繰り返し行い、防草範囲の全域にわたり構造物を形成する第二工程と、形成した構造物の周囲を構造部材で取り囲み、遮光構造物に形成する第三工程と、を持つことを特徴とする請求項1に記載の防草施工方法。
【請求項3】
第二の発明の防草施工方法は、表側にした瓦19を用い、瓦19の尻部9を手前にして、頭部端面10を構造部材24に突きあてると共に、瓦19の桟28の右端面12を構造部材25に突きあて、瓦19の引掛け爪17および18を地面に着けて設置する。その瓦19の差し込み部11の上に、二枚目に設置する瓦20の桟部28を被せながら上端面を構造部材に揃え、瓦20の引掛け爪17および18を地面に着けて設置し、その後においても同様の方法で左方向へ防草範囲まで施工する第一工程と、次に2列目の施工方法は、表側にした瓦22の尻部9を手前にして左上の切り欠け部15を一列目に設置した瓦20の右下の切り欠き部16に合わせて瓦19に被せながら、瓦22の引掛け爪17および18を地面に着けて設置し、その後においても同様に左方向に防草範囲まで施工を繰り返し行い、防草範囲の全域にわたり構造物を形成する第二工程と、形成した構造物の周囲を構造部材で取り囲み、遮光構造物に形成する第三工程と、を持つことを特徴とする請求項1に記載の防草施工方法。
【請求項4】
前記の第一の発明と第二の発明で形成した遮光構造物を構成する瓦と構造部材との隙間に、建築材料または接着剤で塞ぐことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の防草施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根材と構造部材を用い、光合成ができない遮光構造物を形成する防草施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の防草方法は、防草シートを敷く方法や廃ガラス等を粉砕して化学的処理を行った人工砂利を施工する方法、またU字溝に防草シートを固定金具によって取付ける方法や除草剤を噴霧する方法があるがそれぞれに欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-185790号
【特許文献2】特許4041525号
【実用新案文献】
【0004】
【実用新案文献1】
実用新案登録第3231554号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示の防草シートは、不織布であるが故、突き抜ける可能性があり、また風によるあおられなどでシートが剥がれたり、破れたりするなど防草シート特有の問題があり、長期にわたって防草ができないという課題がある。
【0006】
特許文献2に開示の廃ガラス粉砕物と貝殻戸を混合し焼成してなる人工砂利を用いて、粒径が小さい第一人工砂利層の上に、粒径が大きい第2人工砂利を敷く2層を形成する防草効果の高い施工技術があるが、焼成してなる人口砂利を用いて施工するためコスト高になる課題がある。
【0007】
実用新案文献1に開示の防草構造体は、U字溝に防草シートを固定金具によって取付ける防草効果を得る技術があるが、取付穴の加工や固定治具が必要となり、施工が難しくコストがかかるため課題である。
【0008】
また、除草剤を噴霧する防草方法があるが、年間に何回も散布する必要があり、薬剤による土壌や健康への影響が心配されることや散布する手間がかかり除草剤の費用がかさむ等の課題がある。
【0009】
本発明の目的は、以上のような欠点をなくすためになされたものであり、2枚以上の瓦と構造部材を用いて光合成ができない遮光構造物を形成することによって、雑草の育成を抑制し、長期にわたり防草ができる施工方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の内、請求項1に記載の発明は、防草範囲の地面に直接、遮光できる屋根材の瓦と遮光できる構造部材を用いて、防草効果が高い遮光構造物を形成する施工方法であって、裏側にした瓦1の頭部10を手前にして瓦と瓦を組み合わせ、右方向に施工することを特徴とする第一の発明と、表側にした瓦19の尻部9を手前にして瓦と瓦を組み合わせ、左方向に施工することを特徴とする第二の発明のいずれか一方を用いて遮光構造物を形成する。瓦は、組み立てが容易で遮光性がある粘土素材のJ型瓦を用いて施工するのが好ましく、当該瓦は、対角に2か所の切り欠け部を有し、瓦の全体形状は大半径の山部と小半径の谷部を有しており、凹凸のある瓦と瓦の組み合わせや、切り欠け部と切り欠け部の嵌めあいで位置決めすることができ、構成している瓦の一枚一枚を地面に設置する構造であるため、瓦をガタツキのない構造物に形成することができる。また、この構造物の周囲を取り囲む構造部材としては、コンクリートブロックを用いることが好ましく、これを用いることにより、構造物の施工基準としての役割と横からの太陽光の侵入を防ぐ役割を果たし、確実な遮光構造物に形成することができる。
【0011】
本発明の内、請求項2に記載された発明は、前記の瓦1の谷部14に2枚目の瓦2の差し込み部11を重ねることによって容易に位置決めができ、その後も右方向に連続して防草範囲まで組み合わせることで確実に構造物を形成することができる。また、2列目の組み合わせは、一列目の瓦2の切り欠け部15と2列目の瓦4の切り欠け部16を合わせて瓦1の上に瓦4を被せながら瓦の頭部10側の一端31を地面に着けて設置し、安定化させる。これは、
図4の矢視図および
図5の断面図で確認できる。その後も同様な方法で施工することで、防草範囲に勾配が付いた遮光性を持つ瓦の構造物が形成できることを特徴とする。また、角パイプ等の構造部材8をコンクリートブロック等の構造部材6の列に沿わせ、一列目の瓦の梁として用いることが好ましく、これは2列目以降の瓦の勾配に合うように設置するもので、一列目と2列目の勾配差をなくして接触面積を上げることより、確実に遮光できる構造物を形成することができる。
【0012】
本発明の内、請求項3に記載された発明は、表側にした瓦19の差し込み部11の上に2枚目の瓦20の桟部28を重ねることによって容易に位置決めができ、その後も左方向に連続して防草範囲まで組み合わせることで確実に構造物を形成することができる。また、2列目の組み合わせは、一列目の瓦20の右下の切り欠け部16の上に2列目の瓦22の左上の切り欠け部15を合わせて、瓦19の上に被せながら瓦の尻部9の引掛け爪17および18を地面に着けて設置し、安定化させる。これは、
図9の矢視図と
図10の断面図で確認できる。その後も同様な方法で施工することで防草範囲に勾配が付いた遮光性を持つ瓦の構造物を形成できることを特徴とする。また、角パイプ等の構造部材26をコンクリートブロック等の構造部材24の列に沿わせ、一列目の瓦の梁として用いることが好ましく、これは2列目以降の瓦の勾配に合うように設置するもので、一列目と2列目の勾配差をなくして接触面積を上げることにより、確実に遮光できる構造物を形成することができる。
【0013】
請求項4に記載された発明は、遮光構造物を構成する構造部材のコンクリートブロックと屋根材である瓦との隙間に建築材料であるモルタルまたは接着剤で塞ぐことで遮光性の向上と構造自体の強度の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、以上で説明したように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。
【0015】
図1(A)の斜視図および
図6(A)の斜視図より、山と谷がある瓦と瓦の組み合わせや、切り欠け部の嵌めあいによってガタツキがないように組み合わせ、さらに瓦の一端を必ず地面に設置するので、強固な構造物を形成することができる。また、構造物は粘土やセメントなどの耐久性がある素材で作られており、重量があるため風などによって煽られることがなく確実に遮光性を保つことができるので、植物が光合成をすることができず、長期にわたって雑草が生えにくい環境にすることができる。
【0016】
本発明で形成した構造物は、
図4の矢視図(a)、(b)、(c)、(d)と
図5の(A)の断面
図A-A、B-B、C-C、D-D、
図5の(B)の断面
図E-E、F-F、G-Gと
図9の矢視図(e)、(f)、(g)、(h)と
図10(A)の断面
図H-H、I-I、J-J、K-K、
図10の(B)の断面
図L-L、M-Mより、いずれの図面においても、空からの太陽光を確実に遮光できる構造であることから、植物が光合成をすることができない環境となり、雑草の育成を抑制することができる。
【0017】
また、上記の
図4,
図5、
図9,
図10より、構造物と地面の間には空間があることと、
図2および
図7の斜線部において、瓦の差し込み部11と谷部14の重なりにおいては、水返し29および30があるので隙間があり、また、瓦の大半径の山13どうしの重なりは、瓦と瓦が同径であるので密着していないので、空気や水が滞留することなく通気性があり雑菌の繁殖などが発生しにくい。さらに、降雨の場合においても瓦の一枚一枚に勾配があり、瓦の一端が地面に設置しているので、直ぐに地面に浸透するため、土壌環境に悪影響を与えない。
【0018】
施工する瓦に廃瓦を活用すれば、安価に施工することができる上に、解体工事で出た屋根瓦は、産業廃棄物となり処分されるため、廃瓦を活用することにより廃棄物を減らすことができるので、環境保護や資源の有効活用の観点からも、環境的にも経済的にも効果的である。
【0019】
本発明の施工方法は、瓦やコンクリートブロック等の屋根材及び構造部材を組み合わせる構成だから、必要に応じて構成材料を増減することで任意の面積を防草することができる。また、防草土地を利活用する場合においても、構造物を取り除くことによって元の状態にすることができるので、土地の再利用が可能となり構造物を形成していた屋根部材や構造部材においても、廃棄することなく別の土地で継続的に再利用ができるので、SDGsの持続可能な開発目標の達成を図ることができる。
【0020】
雑草が繁茂する太陽光発電の敷地や、未整備な空き地や耕作していない田畑等において、本発明の防草施工を実施すると、除草剤の散布が必要なく防草ができるので、環境面での優位性と低コストで防草ができるメリットや美観の向上を図ることができる。さらに、雑草の中でもキク科のヨモギ、ブタクサ、イネ科のカモガヤ、アサ科のカナムグラ等の花粉は、花粉症の原因でもあるので、花粉症の軽減や除草剤の削減により健康への影響を低減できるなどの効果がある。
【0021】
本発明の係る防草施工方法は、上記の如く優れた効果を奏するものであるので、雑草の成長を抑制したい地面等に施工方法として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1の(A)は、本発明の第一実施形態に係る施工方法を示す説明図である。
図1の(B)は、本発明の第一実施形態に用いるJ形瓦の裏側の斜視図である。
【
図2】
図2は、瓦の施工方法の手順:1)2)3)4)である。
【
図3】
図3は、本発明の第一実施形態に係る正面図である。
【
図4】
図4は、
図3の矢視図(a)(b)(c)(d)である。
【
図6】
図6の(A)は、本発明の第二実施形態に係る施工方法を示す説明図である。
図6の(B)は、本発明の第二実施形態に用いるJ形瓦の表側の斜視図である。
【
図7】
図7は、瓦の施工方法の手順:1)2)3)4)である。
【
図8】
図8は、本発明の第二実施形態に係る正面図である。
【
図9】
図9は、
図8の矢視図(e)(f)(g)(h)である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した本発明の第一実施形態および第二実施形態に係る施工方法について説明する。
【実施例0024】
本発明の防草施工方法は、防草する範囲の整地を行い、施工を正確にするために水糸等で防草範囲を示し、施工基準を決めてから実施すれば効率よく施工ができる。例えば、コンクリートブロック等の構造材を水糸に沿って設置し、施工基準を定めてから以下のように施工することが好ましい。
【0025】
第一実施形態において、
図1(A)の斜視図から、コンクリートブロック6と7を直角に設置し、施工基点として瓦1を設置する。この瓦は、
図1(B)に示すJ形瓦を裏側にした瓦を、瓦の頭部10を手前にして右方向に施工することで効率よく確実に構造物を形成することができる。
【0026】
また、一列目の瓦の下に、構造材である角パイプ等をコンクリートブロック6に沿わせて瓦の梁として設置すると、瓦の尻部9の高さを揃えることができ、さらに2列目以降の瓦との勾配を揃えることができる上、構造物の遮光性の向上や瓦どうしの接触面積が増え、構造物に強度の向上が見込めるので梁を設けることが好ましい。
【0027】
図1(A)の一列目の施工は、
図2の施工手順:1)より、施工基準瓦1の谷部14の斜線部の上に、二枚目の瓦2の差し込み部11を被せ、瓦の尻部9をコンクリートブロック6に突きあて、梁としての角パイプ等8の上に乗せると共に、瓦の頭部10側の一端31を地面に着けて設置する。
【0028】
次に、
図2の施工手順:2)より、瓦1と瓦2を設置後、同様に瓦3を瓦2の谷部14の斜線部に被せ、尻部9を揃え、瓦の頭部10側の一端31を地面に着けて設置する。その後も同様に防草範囲まで繰り返し施工する。
【0029】
次に、2列目の施工方法は、施工手順:3)より、設置した一列目の瓦1の上に、二列目の瓦4を瓦1の斜線部の上に覆い被せながら一列目の瓦2の切り欠き部15に瓦4の右上の切り欠き部16を合わせ、瓦4の頭部10側の一端31を地面に着けて設置する。
【0030】
続けて瓦4から右方向への施工方法は、
図2の施工手順:4)より、瓦4と瓦2の斜線部分に瓦5の差し込み部11と尻部9を被せながら、瓦5の右上の切り欠け部16を瓦3の左下の切り欠け部に合わせて、頭部10側の一端31を地面に着けて設置する。その後も同様な方法で施工範囲まで繰り返し設置する。
【0031】
以上の施工方法により、防草施工範囲に構造物を完成させた後、構造物の周囲をコンクリートブロック等の構造物材で囲むことにより、確実に遮光ができる構造物を形成することができる。
【0032】
また、遮光構造物を構成する瓦とコンクリートブロックの隙間にモルタルまたは接着剤で塞ぐことで遮光性の向上と構造物自体の強度の向上を図ることができる。
また、一列目の瓦の下に、構造材である角パイプ等26をコンクリートブロックに沿わせて瓦の梁として設置すると、瓦の頭部10の高さを揃えることができ、さらに2列目以降の瓦との勾配を揃えることができる上、構造物の遮光性の向上や瓦どうしの接触面積が増え、構造物に強度の向上が見込めるので梁を設けることが好ましい。
次に、施工手順:2)において、瓦19と瓦20の設置後、同様に瓦21を瓦20の斜線部に被せ、瓦の頭部10を揃え、尻部9の引掛け爪17および18を地面に設置することを防草範囲まで繰り返し施工する。
次に、2列目の施工方法は、施工手順:3)において、設置した一列目の瓦19の上に二列目の瓦22を瓦19の斜線部の上に覆い被せながら一列目の瓦20の右下の切り欠き部16に瓦22の左上の切り欠き部15に合わせて、瓦22の頭部にある引掛け爪17および18を地面に設置する。
以上の施工方法により、防草施工範囲に構造物を完成させた後、構造物の周囲をコンクリートブロック等の構造物材で囲むことにより遮光ができる構造物を形成することができる。
なお、構造物の周囲を囲む方法として、コンクリートブロックの代わりにレンガやJ形軒瓦、J形左袖瓦、J形右瓦、のし瓦、冠瓦等を用いて太陽光の侵入を防いでもかまわない。
以上のように、第一実施形態および第二実施形態の発明は、どちらも廃瓦を利用して瓦の特徴を生かした施工方法であり、容易に遮光構造物を形成して確実に防草ができる防草施工方法を提供することができる。