(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005756
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】ペーパータオルロール
(51)【国際特許分類】
D21H 27/00 20060101AFI20240110BHJP
A47K 10/16 20060101ALI20240110BHJP
B31F 1/07 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
D21H27/00 F
A47K10/16 D
B31F1/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106112
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大岡 康伸
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 光
(72)【発明者】
【氏名】藤田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】大篭 幸治
【テーマコード(参考)】
2D135
3E078
4L055
【Fターム(参考)】
2D135AA20
2D135AB06
2D135AB13
2D135AB14
2D135AC07
2D135AC08
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2D135DA13
2D135DA14
2D135DA34
3E078BB51
3E078BC06
3E078DD09
4L055AH37
4L055AJ07
4L055BE15
4L055EA08
4L055EA10
4L055GA29
(57)【要約】
【課題】吸水性及び強度に優れるペーパータオルシートをピックアップグルーを用いて紙管に巻取ったペーパータオルロールにおいて、紙管への巻取り状態が良好であり、ピックアップグルーが付着したシートであっても使いやすいペーパータオルロールを提供する。
【解決手段】エンボスパターンが付与された、曲げ抵抗が6mN以上26mN以下のペーパータオルシート1xを、ピックアップグルー2を用いて紙管10に巻付け、ロール状に巻取ったペーパータオルロール1であって、ペーパータオルシート1xの単位面積当たりの吸水量が、230g/m
2以上600g/m
2以下、製品プライ当たりの坪量が、30g/m
2以上54g/m
2以下であり、ロール幅280mm当たりのピックアップグルー2の塗布量が、0.1g以上2.8g以下であることを特徴とする、ペーパータオルロール1を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンボスパターンが付与された、曲げ抵抗が6mN以上26mN以下のペーパータオルシートを、ピックアップグルーを用いて紙管に巻付け、ロール状に巻取ったペーパータオルロールであって、
前記ペーパータオルシートの単位面積当たりの吸水量が、230g/m2以上600g/m2以下であり、
前記ペーパータオルシートの製品プライ当たりの坪量が、30g/m2以上54g/m2以下であり、
ロール幅280mm当たりの前記ピックアップグルーの塗布量が、0.1g以上2.8g以下であることを特徴とする、ペーパータオルロール。
【請求項2】
前記ペーパータオルシートが、前記エンボスパターンとは異なる抄紙工程由来の凹凸のパターンを有していることを特徴とする、請求項1に記載のペーパータオルロール。
【請求項3】
(前記紙管の外径/前記ペーパータオルシートの曲げ抵抗)から算出される値が、1.3以上8.5以下であることを特徴とする、請求項1に記載のペーパータオルロール。
【請求項4】
前記ピックアップグルーの塗布幅が、1.5mm以上40mm以下であることを特徴とする、請求項1に記載のペーパータオルロール。
【請求項5】
前記ペーパータオルシートの比容積が、7cm3/g以上22cm3/g以下であることを特徴とする、請求項1に記載のペーパータオルロール。
【請求項6】
前記ペーパータオルシートが、裏面側にエンボスを有さないことを特徴とする、請求項1に記載のペーパータオルロール。
【請求項7】
前記ペーパータオルシートがロール幅方向に略平行な折り曲げ線によって、テール部を設けるように折り曲げられ、
前記折り曲げ線より外巻側の前記ペーパータオルシートが、前記ピックアップグルーにより前記紙管に接着した状態で巻取られていることを特徴とする、請求項1に記載のペーパータオルロール。
【請求項8】
前記テール部の長さが、10mm以上500mm以下であることを特徴とする、請求項7に記載のペーパータオルロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ペーパータオルシートをロール状に巻取ったペーパータオルロールに関する。
【背景技術】
【0002】
ペーパータオルには、キッチン周りの油汚れ掃除、食器の水拭き、食品の水切り等、様々な用途がある。それらの用途から、ペーパータオルには十分な吸水量や強度が求められ、そのために吸水量や吸油量を高くしたり、紙を嵩高くしたりする(坪量を大きくしたりする)抄紙技術が開発されている。
【0003】
その中でも、通気乾燥を用いる所謂TAD(Through Air Dryer)抄紙技術によれば、吸水性が高く、やわらかな風合いをもつ原紙が得られることから、得られた原紙はキッチンタオルロールの原紙として優れている。
【0004】
例えば、特許文献1には、高バルクのティッシュ紙を製造するティッシュ製紙機械のプレス部分でプレスすることにより、湿った繊維性ウエブに凹凸付けするための凹凸付けベルトの凹凸付け層であって、凹凸付け層は不織であり、繊維性ウエブと協力する表面を伴うウエブ運搬側をもち、その表面には、その表面に三次元構造を形作るくぼみあるいは高くなった部分がある凹凸付け層、及びそれを含むティッシュ製紙機械、並びにそれを用いて製造される高バルクのティッシュ紙の製造方法が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、約0.012ミリメートル(0.005インチ)か、それ以上の高さを有する、6.45平方センチメートル(1平方インチ)あたり約10から約150の突出部を有し、機械横方向の伸長率が約9パーセントかそれ以上で、基本重量が約10から70グラム/平方メートルである、クレープ加工されていない通気乾燥されたティッシュシートが開示されている。また、通気乾燥により嵩高で高吸水性のティッシュシートが得られる旨も記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5504169号公報
【特許文献2】特許第3758702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、ペーパータオル等のロール製品においては、シートを紙管へ巻付けるときに、シワが発生するのを防止し、きれいに巻付ける(巻取る)ために、ピックアップ(紙管への巻始め)にグルー(糊)を塗布してシートのテール部(端部)を接着してから巻始めることがある。
通常のペーパータオルの場合、ピックアップに用いるグルー(以下、ピックアップグルーとも称する)の塗布量及びその組成を自由に調整することは可能だが、本願のように嵩高であり吸水性に優れたペーパータオルロール(シート)では、シートがグルーを多く吸収してしまうため、シートが紙管に接着しにくく、紙管への巻取りをきれいに行うことが難しい。
【0008】
さらに、嵩高のペーパータオルロールは、一般的なペーパータオルより紙厚が高い分、曲がりにくく(こわさが高く)、コア(紙管)への巻付けがより難しい。特に紙管の径が小さいと、より巻付けが困難になる。その結果、紙管への巻始めのシートがシワになりやすく、結果的に不良品になりやすい。
【0009】
一方、ピックアップグルーの塗布量を多くすると、きれいに巻取りやすくなるが、ピックアップグルーが付着したシートを水に濡らした際に、グルーが溶け出してシートがぬるぬるの状態になり、使いにくくなる。
【0010】
また、グルーの塗布面積(塗布幅)が小さすぎると、ピックアップ部分がきちんと接着せず、紙管への巻取りがきれいにならない。逆に、塗布面積が大きすぎると、使用時にシートが紙管から剥がしにくかったり、上述したように水濡れ時の使いやすさに劣ったりする。
【0011】
以上のことから、嵩高で吸水性に優れるペーパータオルでは、紙管への巻取りと、ピックアップグルーが付着したシートの使いやすさを両立することが困難であった。
【0012】
そこで、本発明は、吸水性及び強度に優れるペーパータオルシートをピックアップグルーを用いて紙管に巻取ったペーパータオルロールにおいて、紙管への巻取り状態が良好であり、ピックアップグルーが付着したシートであっても使いやすいペーパータオルロールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明者は鋭意検討を行い、エンボスパターンが付与された、所定の曲げ抵抗を有するペーパータオルシートを、ピックアップグルーを用いて紙管に巻付け、ロール状に巻取ったペーパータオルロールにおいて、ペーパータオルシートの単位面積当たりの吸水量及び製品プライ当たりの坪量と、ロール幅280mm当たりのピックアップグルーの塗布量をいずれも所定の数値範囲内とすることで、紙管への巻取り状態が良好であり、ピックアップグルーが付着したシートであっても使いやすいペーパータオルロールとすることができ、本発明を完成させるに至った。具体的には、本発明は、以下のものを提供する。
【0014】
(1)本発明の第1の態様は、エンボスパターンが付与された、曲げ抵抗が6mN以上26mN以下のペーパータオルシートを、ピックアップグルーを用いて紙管に巻付け、ロール状に巻取ったペーパータオルロールであって、前記ペーパータオルシートの単位面積当たりの吸水量が、230g/m2以上600g/m2以下であり、前記ペーパータオルシートの製品プライ当たりの坪量が、30g/m2以上54g/m2以下であり、ロール幅280mm当たりの前記ピックアップグルーの塗布量が、0.1g以上2.8g以下であることを特徴とする、ペーパータオルロールである。
【0015】
(2)本発明の第2の態様は、(1)に記載のペーパータオルロールであって、前記ペーパータオルシートが、前記エンボスパターンとは異なる抄紙工程由来の凹凸のパターンを有していることを特徴とするものである。
【0016】
(3)本発明の第3の態様は、(1)に記載のペーパータオルロールであって、(前記紙管の外径/前記ペーパータオルシートの曲げ抵抗)から算出される値が、1.3以上8.5以下であることを特徴とするものである。
【0017】
(4)本発明の第4の態様は、(1)に記載のペーパータオルロールであって、前記ピックアップグルーの塗布幅が、1.5mm以上40mm以下であることを特徴とするものである。
【0018】
(5)本発明の第5の態様は、(1)に記載のペーパータオルロールであって、前記ペーパータオルシートの比容積が、7cm3/g以上22cm3/g以下であることを特徴とするものである。
【0019】
(6)本発明の第6の態様は、(1)に記載のペーパータオルロールであって、前記ペーパータオルシートが、裏面側にエンボスを有さないことを特徴とするものである。
【0020】
(7)本発明の第7の態様は、(1)に記載のペーパータオルロールであって、前記ペーパータオルシートがロール幅方向に略平行な折り曲げ線によって、テール部を設けるように折り曲げられ、前記折り曲げ線より外巻側の前記ペーパータオルシートが、前記ピックアップグルーにより前記紙管に接着した状態で巻取られていることを特徴とするものである。
【0021】
(8)本発明の第8の態様は、(7)に記載のペーパータオルロールであって、前記テール部の長さが、10mm以上500mm以下であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、吸水性及び強度に優れるペーパータオルシートをピックアップグルーを用いて紙管に巻取ったペーパータオルロールにおいて、紙管への巻取り状態が良好であり、ピックアップグルーが付着したシートであっても使いやすいペーパータオルロールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態に係るペーパータオルロールの斜視図である。
【
図2】
図1のペーパータオルロールの巻始めにおけるピックアップ及びテール部の状態を示す斜視図である。
【
図3】本発明のペーパータオルロールにおけるエンボスパターンの一例を示す図である。
【
図4】マイクロスコープによるX-Y平面上の高さプロファイルを濃淡で示す図である。
【
図5】マイクロスコープによるX-Y平面上の高さプロファイルをグラフで示す図である。
【
図6】エンボスパターンについて、エンボスの深さの求め方を示す図である。
【
図7】非エンボス部の、マイクロスコープによるX-Y平面上の高さプロファイルを濃淡で示す図である。
【
図8】本発明のペーパータオルロールの吸水量の測定方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、以下の実施形態は例示の目的で提示するものであり、本発明は、以下に示す実施形態に、何ら限定されるものではない。
【0025】
<ペーパータオルロール>
図1は、本発明の一実施形態に係るペーパータオルロール1の斜視図である。
図2は、
図1のペーパータオルロール1においてペーパータオルシート1xを巻始める状態を示す斜視図である。なお、
図1に示すように、ペーパータオルシート1xの表面のうち、ロール外側に指向した表面を表面1a(ペーパータオルシート1xの表面)と称し、ロール中心部に指向した表面を裏面1b(ペーパータオルシート1xの裏面)と称する。
【0026】
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係るペーパータオルロール1は、エンボスパターンが付与された、曲げ抵抗が6mN以上26mN以下のペーパータオルシート1xを、ピックアップグルー2を用いて紙管10(以下、コアとも称する)に巻付け、ロール状に巻取ったペーパータオルロール1である。なお、ペーパータオルシート1xは、ロール巻方向Rの略等間隔において、ロール幅方向Wにミシン目を施されていることが好ましい(図示しない)。
なお、ペーパータオルシート1xは、プライ数は特に限定されないが、2プライ又は3プライであることが好ましく、2プライであることがより好ましい。
【0027】
ペーパータオルロール1としては、例えば、家庭のキッチンや飲食店の厨房等において水分又は油分のふき取りや汚れ落とし等に使用されるキッチンペーパー(ペーパータオル、クッキングペーパー等と称される場合もある。)のロール体(キッチンペーパーロール)、その他衛生紙のロール体等が挙げられる。これらはいずれも、ロール体の製造時に、ペーパータオルシート1xの巻始め部分(テール部4)の内側に、ロール幅方向Wに沿ってピックアップグルー2を塗布することでピックアップ3を形成する。
【0028】
(ピックアップ)
ペーパータオルロール1のピックアップ3は、ペーパータオルロール1のロール巻方向Rの巻始め部分のシワの発生を防止するために、巻始め部分のペーパータオルシート1xの裏面1bを紙管10に接着する。ピックアップ3は、ペーパータオルシート1xの巻始め部分にピックアップグルー2をロール幅方向Wに沿って塗布することにより形成される。例えば、ピックアップ3は、ピックアップグルー2をペーパータオルシート1xの裏面1b又は紙管10に塗布して形成することができる。
このとき、ピックアップグルー2を、ペーパータオルシート1xの巻始め部分に対向する紙管10に塗布して、ペーパータオルシート1xの巻始め部分を紙管10に接着させることができる。もしくは、ピックアップグルー2を、ペーパータオルシート1xの巻始め部分の裏面1bに塗布して、ペーパータオルシート1xの巻始め部分を紙管10に接着させることができるが、中でもピックアップグルー2を、ペーパータオルシート1xの巻始め部分に対向する紙管10に塗布して、ペーパータオルシート1xの巻始め部分を紙管10に接着させることが好ましい。なお、本実施形態では、ピックアップグルー2をロール幅方向Wに沿って直線状に連続して塗布したが、これに限定されるものではなく、例えば、ピックアップグルー2をロール幅方向Wに所定距離で離間させて塗布してもよい(図示しない)。その場合、ロール幅方向Wにおけるピックアップグルー2が塗布されていない箇所の割合は好ましくは40%以下であり、より好ましくは30%以下であり、更に好ましくは20%以下であり、最も好ましくは10%以下である。
【0029】
(グルーの組成)
ペーパータオルロール1のロール巻方向Rの巻始め部分を接着するグルー(ピックアップグルー2)は、公知のものを用いることができるが、水溶性高分子を含有することが好ましい。また、グルー中に含まれる水分以外(水溶性高分子やその他の助剤を含む)の濃度は、3%以上55%以下が好ましく、13%以上45%以下がより好ましく、23%以上35%以下が更に好ましい。グルーを上記の濃度とすることで、本願のような製造時にペーパータオルシート1xをきれいに巻付けることができ、使用時にピックアップグルー2が付着したペーパータオルシート1xであっても使用しやすいペーパータオルロール1とすることができる。
【0030】
(グルーの塗布位置)
ピックアップグルー2は、ペーパータオルロール1のロール巻方向Rにおける最内周の端縁1dからロール巻方向Rの基端側へ所定の長さL2だけ離間した位置(塗布位置)に塗布される。すなわち、ペーパータオルシート1xのうちピックアップグルー2(ピックアップ3)の塗布箇所よりもロール巻方向Rの巻始め側には、径方向内側のペーパータオルロール1に対して接着されない領域(テール部4)が設けられる。ピックアップグルー2(ピックアップ3)の塗布箇所よりもロール巻方向Rの巻始め側のペーパータオルシート1xのテール部4の長さL2(上記所定の長さL2)は、10mm以上500mm以下であることが好ましく、30mm以上350mm以下であることがより好ましく、50mm以上200mm以下であることが更に好ましい。ペーパータオルシート1xのテール部4の長さL2が上記の数値範囲内であることにより、本願のように紙管10への巻取り状態が良好なペーパータオルシート1x及びペーパータオルロール1とすることができる。また、ピックアップグルー2を適度に接着させることができる。
なお、ペーパータオルシート1xのテール部4の長さL2は、ロール幅方向Wの中心部及びロール幅に対して両端部から10%及び25%の位置の合計5点について測定し、その平均値とする。
また、ペーパータオルシート1xにおけるピックアップ3の接着の態様は、上記のL2の数値範囲内であれば特に制限されないが、
図2に示すようにピックアップ3で接着された部分に隣接するロール幅方向Wに略平行な折り曲げ線5によって、ロール巻方向Rの方向にL2の長さの分だけテール部4を設けるように折り曲げられ、その状態で折り曲げ線5より外巻側のペーパータオルシート1xが、(ピックアップ3の領域が)ピックアップグルー2により紙管10に接着した状態で(テール部4も含めて)紙管10に巻取られることが好ましい。なお、折り曲げ線5はピックアップ3の領域に重なっていてもよく(図示しない)、それによりピックアップグルー2が紙管10の表層に少し露出していてもよい(その場合は、露出したピックアップグルー2がより外巻のペーパータオルシート1xの裏面1bに接着される)。
【0031】
(グルーの塗布幅)
本実施形態に係るピックアップグルー2の塗布幅L1(ピックアップ3のロール巻方向Rの長さ)は、1.5mm以上40mm以下であることが好ましい。この塗布幅L1とは、ピックアップグルー2のロール巻方向Rにおける長さをいう。その際、長さはロール幅方向Wの中心部及びロール幅に対して両端部から10%及び25%の位置の合計5点について測定し、その平均値とする。ピックアップグルー2の塗布幅L1が1.5mm未満であると、ペーパータオルシート1xを紙管10へ巻取る際にきれいにならない。また、ピックアップグルー2の塗布幅L1が40mmを超えると、ピックアップグルー2が付着したペーパータオルシート1xが水濡れ時に粘着感があり、使いにくくなる。
なお、ピックアップグルー2の塗布幅L1は、4mm以上26mm以下であることがより好ましく、6mm以上17mm以下であることが更に好ましい。
【0032】
(グルーの塗布量)
ロール幅280mm当たりのピックアップグルー2の塗布量は、0.1g以上2.8g以下であることが好ましい。塗布量が0.1g未満であると、ペーパータオルシート1xを紙管10へ巻取る際にきれいにならない。また、塗布量が2.8gを超えると、水濡れ時にピックアップ3部分のペーパータオルシート1xに粘着感があり、使いにくくなる。
なお、ロール幅280mm当たりのピックアップグルー2の塗布量は、0.3g以上1.7g以下であることが好ましく、0.4g以上1.0g以下であることが更に好ましい。ロール幅280mm当たりのピックアップグルー2の塗布量とは、1ロール当たり(1ロールのロール幅当たり)に使用されているグルー量のことを意味する。ロール幅が280mmではない場合、比例計算によりロール幅280mmの値に換算する。
【0033】
ピックアップグルー2の塗布量は以下の方法で測定する。まず、ペーパータオルロール1のサンプルからピックアップグルー2が塗布されている箇所を含むテール部4のペーパータオルシート1xを全て採取する。この時、テール部4のシート以外にも内巻のシートについても何周分か採取する。次にピックアップグルー2が塗布されていない箇所のシートを上記で採取したシートと同じ枚数(面積)を採取する。次にそれぞれの採取したシートの重量を測定し、次の計算式によって1ロール当たりのピックアップグルー2の塗布量を算出する。
1ロール当たりのピックアップグルー2の塗布量=(ピックアップグルー2が塗布された箇所のシートの総重量)-(ピックアップグルー2が塗布されていない箇所のシートの総重量)
【0034】
(巻長及び巻直径)
ペーパータオルロール1の巻長は、14m以上44m以下であることが好ましく、21m以上38m以下であることがより好ましく、25m以上33m以下であることが更に好ましい。巻長が14m未満であると、一定の巻直径DRにするために、ペーパータオルシート1xの坪量が高くなり、結果としてピックアップグルー2を多く吸収してしまい、紙管10へ巻取る際にきれいにならない。また、巻長が44mを超えると、一定の巻直径にするために、ペーパータオルシート1xの坪量が低くなり、結果として吸水性に劣る。
【0035】
巻長は、次のように測定する。まず、ペーパータオルロール1のミシン目とミシン目の間のペーパータオルシート1xについて、10シート分の長さを実測する。その後、ペーパータオルロール1のシート数を実測し、巻長は10シート分の長さとシート数から比例計算で求める。例えば、10シート分の長さが1.80m、シート数が150シートの場合、1.80m×(150/10)=27mとなる。なお、ペーパータオルロール1にミシン目がない場合は、巻長を実測する。
【0036】
本実施形態に係るペーパータオルロール1の巻直径DRは、110mm以上189mm以下であることが好ましい。巻直径DRが110mm未満であると、ペーパータオルシート1xの坪量が低くなり、結果として吸水性に劣る。また、巻直径DRが189mmを超えると、ペーパータオルシート1xの坪量が高くなり、結果としてピックアップグルー2を多く吸収してしまい、紙管10へ巻取る際にきれいにならない。なお、ペーパータオルロール1の巻直径DRは、130mm以上176mm以下あることがより好ましく、140mm以上163mm以下であることが更に好ましい。
【0037】
ロールの巻直径DRは、ムラテックKDS株式会社製ダイヤメータールールを用いて実測する。測定は、10個のペーパータオルロール1を測定し、測定結果を平均する。
【0038】
(シート長)
ミシン目とミシン目の間のシート長(ロール巻方向Rのペーパータオルシート1xの長さ)は、100mm以上250mm以下が好ましく、130mm以上230mm以下がより好ましく、150mm以上210mm以下が更に好ましい。シート長が100mm未満であると、1枚当たりの吸水量が少なくなる。シート長が250mmを超えると、本願のように吸収性の高いペーパータオルシート1xでは、1枚当たりの吸水量が必要以上に多くなる。
【0039】
(ロール幅及びロール重量)
ペーパータオルロール1のロール幅は、150mm以上380mm以下であることが好ましく、200mm以上340mm以下であることがより好ましく、250mm以上300mm以下であることが更に好ましい。ロール幅が150mm未満であると、1枚当たりの吸水量が少なくなる。ロール幅が380mmを超えると、本願のように吸収性の高いペーパータオルシート1xでは、1枚当たりの吸水量が必要以上に多くなる。
【0040】
また、ペーパータオルロール1のロール重量は160g以上550g以下であることが好ましく、230g以上450g以下であることがより好ましく、270g以上380g以下であることが更に好ましい。ロール重量が160g未満であると、一定の巻長にするために、ペーパータオルシート1xの坪量が低くなり、結果として吸水性に劣る。ロール重量が550gを超えると、一定の巻長にするために、ペーパータオルシート1xの坪量が高くなり、結果としてピックアップグルー2を多く吸収してしまい、紙管10へ巻取る際にきれいにならない。
【0041】
なお、ロール重量は、コア(紙管10)を含まないロール幅280mmあたりの重量とする。ロール幅が280mmでない場合は、比例計算により280mmあたりの重量に換算する。
【0042】
(ロール密度)
本実施形態に係るペーパータオルロール1のロール密度は、0.04g/cm3以上0.15g/cm3以下であることが好ましい。ペーパータオルロール1のロール密度が0.04g/cm3未満であると、結果としてペーパータオルシート1xの坪量が低くなり、吸水性に劣る。また、ペーパータオルロール1のロール密度が0.15g/cm3を超えると、結果としてペーパータオルシート1xの坪量が高くなり、ピックアップグルー2を多く吸収してしまい、紙管10へ巻取る際にきれいにならない。
【0043】
なお、ペーパータオルロール1のロール密度は0.05g/cm3以上0.13g/cm3以下であることが好ましく、0.06g/cm3以上0.08g/cm3以下であることがより好ましい。
【0044】
ロール密度は、(ロール重量)÷(ロールの体積)で表される。ロール重量は、ロール幅280mmあたりのペーパータオルロール1の重量である。ロール体積は[{ロールの外径(巻直径DR)部分の断面積}-(紙管10の紙管外径DI部分の断面積)]×ロール幅(280mmあたりに換算する)で表される。例えば、ロール幅280mmあたりのロール重量(コアを除く)が382g、巻直径DRが150mm、紙管外径DIが39mmの場合、ロール密度=382g÷[{3.14×(150mm÷2÷10)2-3.14×(39mm÷2÷10)2}×(280mm÷10)]=0.08g/cm3となる。
【0045】
(巻密度)
本実施形態に係るペーパータオルロール1の巻密度は、0.21m/cm2以上0.68m/cm2以下であることが好ましい。ペーパータオルロール1の巻密度が0.21m/cm2未満であると、結果としてペーパータオルシート1xの坪量が高くなり、ピックアップグルー2を多く吸収してしまい、紙管10へ巻取る際にきれいにならない。また、ペーパータオルロール1の巻密度が0.68m/cm2を超えると、結果としてペーパータオルシート1xの坪量が低くなり、吸水性に劣る。
【0046】
なお、ペーパータオルロール1の巻密度は0.25m/cm2以上0.54m/cm2以下であることが好ましく、0.28m/cm2以上0.40m/cm2以下であることがより好ましい。
【0047】
巻密度は、(巻長×プライ数)÷(ロールの断面積)で表される。ロールの断面積は、{ロールの外径(巻直径DR)部分の断面積-(紙管10の紙管外径DI部分の断面積)}で表される。例えば、巻長27m、2プライ、巻直径DR150mm、紙管外径DI39mmの場合、巻密度=(27m×2)÷{3.14×(150mm÷2÷10)2-3.14×(39mm÷2÷10)2}=0.33m/cm2となる。
【0048】
(コア外径)
また、本発明のペーパータオルロール1の芯である紙管10の外径である、紙管外径DIは、28mm以上58mm以下であることが好ましい。紙管外径DIが28mm未満であると、本願のように、所定の曲げ抵抗を有するペーパータオルシート1xを紙管10へ巻取る際にきれいにならない。紙管外径DIが58mmを超えると、ペーパータオルロール1を一定の巻直径DRにするために、結果としてペーパータオルシート1xの坪量が低くなり、吸水性に劣る。
なお、紙管外径DIは、33mm以上53mm以下であることがより好ましく、38mm以上48mm以下であることが更に好ましい。
【0049】
紙管外径DIは、ムラテックKDS株式会社製ダイヤメータールールを用いて測定する。測定は、10個のペーパータオルロール1を測定し、測定結果を平均する。
【0050】
さらに、ロール幅280mmあたりの紙管10の重量は、9g以上28g以下であることが好ましく、12g以上25g以下であることがより好ましく、15g以上22g以下であることが更に好ましい。
【0051】
<ペーパータオルシート>
(坪量)
本実施形態に係るペーパータオルシート1xの製品プライ当たりの坪量は、30g/m2以上54g/m2以下である。製品プライ当たりの坪量が30g/m2未満であると、ペーパータオルシート1xが吸水性に劣る。また、坪量が54g/m2を超えると、結果としてペーパータオルシート1xのこわさが高くなり、紙管10へ巻取る際にきれいにならない。また、吸水量が高くなって、ペーパータオルシート1xがピックアップグルー2を吸収しやすくなり、紙管10へ巻取る際にきれいにならない。ここで、製品プライ当たりの坪量とは、ペーパータオルシート1xをプライ数を変更せずに(剥がしたり増やしたりせずに)測定する坪量を指す。
坪量はJIS P 8124に基づいて測定することができる。なお、ペーパータオルシート1xの製品プライ当たりの坪量は、34g/m2以上50g/m2以下であることが好ましく、38g/m2以上46g/m2以下であることがより好ましい。
【0052】
また、ペーパータオルシート1xの1プライの坪量は、表面1aも裏面1bもいずれも、14g/m2以上28g/m2以下であることが好ましく、16g/m2以上26g/m2以下であることがより好ましく、18g/m2以上24g/m2以下であることが更に好ましい。1プライの坪量は、製品プライ当たりの坪量を測定した後、プライを剥離し、表面1aと裏面1bの重量を測定して、その重量比から表面1aと裏面1bの坪量を算出する。
なお、ペーパータオルシート1xが3プライである場合、中層の1プライの坪量は10g/m2以上20g/m2以下であることが好ましく、11g/m2以上18g/m2以下であることがより好ましく、12g/m2以上16g/m2以下であることが更に好ましい。中層の1プライの坪量も2プライの場合と同様に、剥離後に各面の重量を測定し、その重量比から算出する。
【0053】
さらに、ペーパータオルシート1xにおいて、表面1aの坪量と裏面1bの坪量の差は、2g/m2以下が好ましい。ピックアップグルー2は裏面1b側に塗布するが、表面1aの坪量を裏面1bより高くしすぎると、裏面1bのシートを水で濡らして使用する時に使用しにくくなる。一方、表面1aの坪量を裏面1bより低くしすぎると、紙管10への巻取りがきれいにならず、不良品になる場合がある。なお、表面1aの坪量と裏面1bの坪量の差は1g/m2以下がより好ましく、0.5g/m2以下が更に好ましい。
【0054】
(曲げ抵抗)
本実施形態に係るペーパータオルシート1xの曲げ抵抗は、6mN以上26mN以下である。ペーパータオルシート1xの曲げ抵抗が6mN未満であると、ペーパータオルシート1xの坪量や強度が低くなり、吸水性に劣る。また、ペーパータオルシート1xの曲げ抵抗が26mNを超えると、ペーパータオルシート1xのこわさが高くなり、紙管10へ巻取る際にきれいにならない。
なお、ペーパータオルシート1xの曲げ抵抗は、9mN以上21mN以下であることが好ましく、10mN以上18mN以下であることがより好ましい。
【0055】
ペーパータオルシート1xの曲げ抵抗は、JIS P 8125-1:2017(ISO2493)に記載された方法に準拠し、L&Wベンディングテスター(Lorentzen&Wettre社製)を用いて測定することができる。幅38mm(CD方向)、長さ100mm(MD方向)のペーパータオルシート1xの試験片について、曲げ角度を15度、曲げ長(試料台のスパン)を10mmとしたときの測定値を曲げ抵抗(荷重)とした。
【0056】
なお、シートのミシン目の間隔が短くて、長さ100mmの試験片を採取できない場合は、試験片の長さを短くすることができる。
【0057】
また、上記のペーパータオルロール1の紙管10における紙管外径DIをペーパータオルシート1xの曲げ抵抗で割った(紙管10の紙管外径DI/ペーパータオルシート1xの曲げ抵抗)から算出される値が、1.3以上8.5以下であることが好ましい。値が1.3未満であると、紙管10に対してペーパータオルシート1xの曲げ抵抗が高く、紙管10へ巻取る際にきれいにならない。値が8.5を超えると、紙管10に対してペーパータオルシート1xの曲げ抵抗が低い、すなわち坪量が低いことになるので、吸水性に劣る。
なお、(紙管10の紙管外径DI/ペーパータオルシート1xの曲げ抵抗)から算出される値は、2.0以上5.5以下であることがより好ましく、2.4以上4.5以下であることが更に好ましい。
【0058】
(紙厚)
ペーパータオルシート1xの紙厚は、1.9mm/10枚以上4.5mm/10枚以下であることが好ましく、2.1mm/10枚以上3.9mm/10枚以下であることがより好ましく、2.6mm/10枚以上3.7mm/10枚以下であることが更に好ましい。紙厚が1.9mm/10枚未満であると、ペーパータオルシート1xが吸水性に劣り、4.5mm/10枚を超えると、結果としてペーパータオルシート1xのこわさが高くなり、紙管10へ巻取る際にきれいにならない。
紙厚は、シックネスゲージ(株式会社尾崎製作所製のダイヤルシックネスゲージ「PEACOCK」)を用いて測定することができる。測定条件は、測定荷重37.85gf/cm2、測定子直径30mmで、測定子と測定台の間に試料を置き、測定子を1秒間に1mm以下の速度で下ろしたときのゲージを読み取る。試料としては、ペーパータオルシート1xを10枚分(2プライの場合は5組分、3プライの場合は3組分として値を比例計算で10組分にする)として測定を行う。また、測定を異なる箇所で10回繰り返して測定結果を平均する。
【0059】
(エンボスパターン)
本発明のペーパータオルロール1(ペーパータオルシート1x)は、エンボス加工が施されてなるものであり、エンボスパターンを有している。また、本発明におけるペーパータオルシート1xは、シートにエンボス処理した後、2プライ以上の場合は積層する。積層する場合には、プライボンドグルー(糊)を用い、グルーを塗布して接着処理する。
プライボンドグルーは、2プライのペーパータオルシート1xのうち表面1a側のシートのエンボス部の裏面側(2プライの表面1a側のシートと裏面1b側のシートとの間)に塗布し、両シートを積層することが好ましい。また、3プライの場合、表面1a側の2層でエンボス処理して真ん中の層の裏面側に糊を付けることも、表面1a側の1層でエンボス処理して表面1a側の層の裏面側に糊を付けることも可能であるが、表面1a側の2層でエンボス処理して真ん中の層の裏面側に糊を付けることが好ましい。このように接着することにより、本願のように紙管10への巻取り状態が良好なペーパータオルシート1x及びペーパータオルロール1とすることができる。また、ピックアップグルー2を適度に接着させることができる。
【0060】
ペーパータオルシート1xの表面1aのプライには、エンボスパターンが施されている。エンボスパターンが表面1aに施されることで、エンボス部にグルーを塗布し、2プライ以上に積層することができる。また、裏面1bはエンボスを設けてもよいが設けないことが好ましい。エンボスを設けない(エンボス由来のシートの凹凸がない)ことで、ピックアップグルー2を裏面1bに塗布する際に均一に塗布しやすくなる。なお、エンボスパターンはドット状や線状等、ペーパータオルに一般的に施されるパターンであれば特に限定されないが、中でも線状のエンボスパターンであることが好ましい。線状のエンボスパターンとしては、具体的には
図3に示すような、1つのパターンが、略丸型の略円形とその内部に他の柄を有する図形と、全体として上下及び左右に略線対称で、複数の曲線及び図形の組み合わせを含む図形の2種類の図形を2個ずつ含むパターンであれば、特に限定されない。略丸型の略円形については、略丸型が二重になっていることが好ましい。
【0061】
また、エンボスパターンの寸法としては、エンボスパターンを囲む四角形E(Eはエンボスパターンではない)が、一辺2cm以上25cm以下四方の正方形であることが好ましく、一辺5cm以上20cm以下四方の正方形であることがより好ましく、一辺8cm以上15cm以下四方の正方形であることが更に好ましい。この四角形Eについて、縦方向はペーパータオルロール1のロール巻方向に平行であり、横方向はペーパータオルロール1の幅方向に平行であることが好ましいが、傾いていても良い。このような柄を用いることで、本願のような吸水量が高いペーパータオルシート1xにおいて、吸水量を良好にできる。また、ピックアップグルー2を適度に接着させることができる。
【0062】
このとき、線状のエンボスパターンにおける、太さが0.1mm以上4mm以下で、かつ長さが5mm以上であるエンボスについて、エンボスの長さを足した時の総長が50cm/100cm2以上550cm/100cm2以下であることが好ましく、80cm/100cm2以上410cm/100cm2以下であることがより好ましく、110cm/100cm2以上300cm/100cm2以下であることが更に好ましい。
【0063】
上記の総長は、
図3のように1つのエンボスパターンをすべて含むようにした四角形Eの内側において、太さが0.1mm以上4mm以下で、かつ長さが5mm以上のエンボスについて、エンボス長さを足した時の合計を総長として測定し、100cm
2当たりの総長とする。この四角形Eの一辺の大きさは、エンボスパターンの大きさによって適宜変更できる。なお、エンボスパターンをすべて含むようにした四角形内に、四角形内に含まれるエンボスパターンに隣接するエンボスパターンが含まれる場合は、その隣接するエンボスパターンの長さも測定し、総長に含める。また、エンボスパターンによって、四角形Eの1辺の大きさを明確に決められない場合は、四角形Eの大きさを10×10cmとして、この四角形Eに含まれるエンボス長さの総長を測定する。総長を上記の範囲にすることで、本願のような吸水量が高いペーパータオルシート1xにおいて、吸水量を良好にできる。また、ピックアップグルー2を適度に接着させることができる。総長は、上述した方法で実測して求める。なお、一般的な顕微鏡を用いて測定してもよい。
【0064】
エンボスパターンにおいて、エンボスの深さは、0.06mm以上1.05mm以下であることが好ましく、0.10mm以上0.55mm以下であることがより好ましく、0.14mm以上0.35mm以下であることが更に好ましい。エンボスの深さが0.06mm未満であると、プライ間の接着や紙管10への接着が弱くなり、紙管10へ巻取る際にきれいにならない。また、エンボスの深さが1.05mmを超えるとペーパータオルシート1xが潰れてしまい、吸水性に劣る。
【0065】
エンボスの深さは、マイクロスコープを用いて測定する。マイクロスコープとしては、KEYENCE社製の製品名「ワンショット3D測定マクロスコープ VR-3100」を使用することができる。マイクロスコープの画像の観察・測定・画像解析ソフトウェアとしては、製品名「VR-H1A」を使用することができる。また、測定条件は、倍率25倍、視野面積12mm×9mmの条件で測定する。測定倍率と視野面積は、求めるエンボスの大きさによって、適宜変更してもよい。
【0066】
図4は、マイクロスコープによるX-Y平面上の高さプロファイルを示し、ペーパータオルシート1x表面の高さが濃淡で表されている。
図4の濃淡が周辺と異なる線状の部位が、個々のエンボスを示している。エンボスの深さは、上記のマイクロスコープを用いて上述のエンボスの高低差を測定して求める。なお、測定はペーパータオルシート1xの表面1a側で行う。また、測定時に、ペーパータオルロール1からペーパータオルシート1xを3周分取り除き、4周目のペーパータオルシート1xを用いて、プライ数を変更せずに、そのシートの状態で測定する。また、ミシン目がある場合は、いずれも避けて測定する。
【0067】
まず、
図4のように線分ABを引き、
図5の高さプロファイルを得る。なお、線分ABは、エンボスを横切るように引けばよい。また、線分ABは、ペーパータオルシート1xのロール幅方向W(CD方向)になるように引くが、エンボスとエンボスの間隔が例えば2mm以下と狭く、下記の凸部の高さが低くなってしまう場合は、線分を斜め方向に引いたり、ロール巻方向Rに引いたりしてもよい。高さプロファイルは、実際のペーパータオルシート1xの試料表面の凹凸を表す(測定)断面曲線S1であるが、ノイズ(ペーパータオルシート1xの表面に繊維塊があったり、繊維がヒゲ状に伸びていたり、繊維のない部分に起因した急峻なピーク)をも含んでおり、凹凸の高低差の算出に当たっては、このようなノイズピークを除去する必要がある。
【0068】
そこで、
図5の(測定)断面曲線S1を重み平均ラジオボタンのフィルターのサイズを±12とし、スムージングした
図6の断面曲線S2を得る。なお、重み平均ラジオボタンのフィルターを用いたスムージングは、上記の解析ソフトを使用すれば、自動で得られる。そして、
図6に示すグラフにおいて、グラフの凸部H1と、凸部H1に隣接する凸部H2の縦軸のそれぞれの最大値の平均値を算出し、凸部H1と凸部H2とに挟まれる凹部D1における縦軸の最小値を求める。このようにして求められた最大値の平均値から最小値を差し引いた数値を暫定的なエンボスの深さとする。そして、
図6に示すように、断面曲線上において連続する計2か所(凹部D1と、凸部H3と凸部H4に挟まれる凹部D2の連続する計2か所)について同様の測定を行う(この時点で2つの測定結果が得られる)。その後、ペーパータオルシート1xのロール巻方向Rにペーパータオルロール1を90度ずつ3回に分けて回転させた各位置において上記同様の測定を行い(ロール巻方向Rにおける測定位置は計4か所となる)、合計8か所(2×4)の平均値をエンボスの深さとして最終的に採用する。
【0069】
なお、本発明のペーパータオルシート1xはエンボスパターンとは異なる抄紙工程由来の凹凸のパターンを有しているため、凹部を挟んでいる左右の凸部の高さにばらつきが見られる。そのため、凹部を挟む凸部と凸部(例えば、凹部D2を挟む凸部H3と凸部H4)の縦軸の値の差が0.2mm以上ある場合は、その部分を避けた箇所で測定を行う。
【0070】
ペーパータオルシート1xの裏面1bは、エンボスパターンとは異なる抄紙工程由来の凹凸のパターンを有していれば、エンボスのパターンが施されているかどうかに関しては特に制限はない。ネステッドエンボスやピントゥピンエンボスが施されていてもよく、又はエンボスを施されていなくてもかまわないが、好ましくはネステッドエンボス又はエンボスなしであり、より好ましくはエンボスなしである。従来のペーパータオルは、ピントゥピンやネステッド形式で吸水量を確保しているが、本願のように、紙厚の高い原紙を用いた場合、先に述べたように、エンボスを設けることで紙がつぶれてしまい、吸水量が下がる場合がある。このため、表面1aは線状のエンボスであり、裏面1bはエンボスなしが好ましい。エンボスを設けないことで、ピックアップグルー2を均一に塗布でき、紙管10への巻取りが良好になる。
【0071】
このとき、ペーパータオルシート1xの、エンボスパターンが付与されていない部分(以下、非エンボス部とも称する)における表面粗さの二乗平均平方根高さSqは、35μm以上であることが好ましく、50μm以上150μm以下であることがより好ましく60μm以上120μm以下であることが更に好ましく、70μm以上100μm以下であることが最も好ましい。表面粗さの二乗平均平方根高さSqが35μm未満の場合、ペーパータオルシート1xが吸収性に劣る。また、表面粗さの二乗平均平方根高さSqの上限は特に限定されないが、値が高くなりすぎるとペーパータオルシート1xを紙管10に巻取る際に、きれいにならない場合がある。
【0072】
非エンボス部の表面粗さの二乗平均平方根高さSqは、マイクロスコープを用いて測定する。マイクロスコープとしては、上述のエンボスの深さと同様に、KEYENCE社製の製品名「ワンショット3D測定マクロスコープ VR-3100」を使用することができる。マイクロスコープの画像の観察・測定・画像解析ソフトウェアとしては、製品名「VR-H1A」を使用することができる。また、測定条件は、倍率38倍、視野面積8mm×6mmの条件で測定する。測定倍率と視野面積は、求めるエンボスの大きさによって、適宜変更してもよい。
【0073】
図7は、非エンボス部の、マイクロスコープによるX-Y平面上の高さプロファイルを濃淡で示す図である。
【0074】
図7に示す得られた画像について、上述のエンボスの深さと同様、フィルターを設定する。具体的には、S-フィルター(ローパスフィルター)を設定することで、カットオフ波長よりも小さいスケールの成分、L-フィルター(ハイパスフィルター)を設定することで、カットオフ波長よりも大きいスケールの成分を画像から取り除く。ここでは、S-フィルターは500μm、L-フィルターは8mmとする。S-フィルター及びL-フィルターを選択すれば、自動で二乗平均平方根高さSqが算出される。
【0075】
非エンボス部は、エンボス深さと同様、ペーパータオルロール1からペーパータオルシート1xを3周分取り除き、4周目のペーパータオルシート1xを用いて、プライ数を変更せずに、そのシートの状態で測定する。また、ミシン目がある場合は、いずれも避けて測定する。ペーパータオルロール1のロール幅方向Wで2か所測定し、その後、ロール巻方向Rにペーパータオルロール1を90度ずつ3回に分けて回転させた各位置において上記同様の測定を行い(ロール巻方向Rにおける測定位置は計4か所となる)、合計8か所(2×4)の平均値を二乗平均平方根高さSqとして最終的に採用する。
なお、測定する箇所は、ペーパータオルシート1xの裏面1b側において、ペーパータオルシート1xの表面1a側のエンボスパターン部でプライボンドグルーによりプライが接着していない箇所とする。
【0076】
(吸水量)
本発明において、ペーパータオルシート1xの単位面積当たりの吸水量は、230g/m2以上600g/m2以下である。単位面積当たりの吸水量が230g/m2未満であると、ペーパータオルシート1xが吸水性に劣る。また、単位面積当たりの吸水量が600g/m2を超えると、ペーパータオルシート1xがピックアップグルー2を多く吸収してしまい、紙管10へ巻取る際にきれいにならない。
なお、ペーパータオルシート1xの単位面積当たりの吸水量は、270g/m2以上550g/m2以下であることが好ましく、330g/m2以上480g/m2以下であることがより好ましい。
【0077】
また、ペーパータオルシート1xの単位重量当たりの吸水量は、6.0g/g以上であることが好ましい。単位重量当たりの吸水量が6.0g/g未満であると、ペーパータオルシート1xが吸水性に劣る。単位重量当たりの吸水量の上限は特に規定されないが、高すぎるとペーパータオルシート1xがピックアップグルー2を多く吸収してしまい、紙管10へ巻取る際にきれいにならない。なお、単位重量当たりの吸水量は、7.0g/g以上14.0g/g以下であることがより好ましく、8.0g/g以上12.0g/g以下であることが更に好ましい。
【0078】
さらに、ペーパータオルシート1xの2プライ間の(単位面積当たりの)吸水量(ペーパータオルシート1xが3プライである場合は、プライ間の2か所の吸水量)は、110g/m2以上300g/m2以下であることが好ましく、130g/m2以上280g/m2以下であることがより好ましく、160g/m2以上260g/m2以下であることが更に好ましい。ペーパータオルシート1xの(単位面積当たりの)吸水量が上記の数値範囲内であることにより、本願のように紙管10への巻取り状態が良好なペーパータオルシート1x及びペーパータオルロール1とすることができる。また、ピックアップグルー2を適度に接着させることができる。
このとき、ペーパータオルシート1xの2プライ間の(単位面積当たりの)吸水量とは、ペーパータオルシート1xの単位面積当たりの吸水量から、後述する1プライ(表面1a)の単位面積当たりの吸水量及び1プライ(裏面1b)の単位面積当たりの吸水量を差し引いた値である。なお、ペーパータオルシート1xが3プライである場合は、下記の式より求める値となる。
単位面積当たりの3プライ間の吸水量=3プライの吸水量-1プライ(表面1a)の吸水量-1プライ(裏面1b)の吸水量-1プライ(真ん中の層)の吸水量
【0079】
なお、ペーパータオルシート1xが2プライの場合の各吸水量は以下のように測定する。
【0080】
まず、2プライに重ねられたペーパータオルシート1xを採取し、一片が7.6cm(3インチ)の正方形の型版を用いてカットし、一辺7.6cmの矩形の試験片を作製する。吸水前の試験片の重量を電子天秤で測定しておく。試験片をホルダー(試験片の3点を固定するジグで、ジグは水分を吸収しない金属からなる)にセットする。
【0081】
次に、市販のバットに、蒸留水を深さ2cm入れ、ホルダーにセットした試験片を蒸留水中に2分間浸漬する。2分浸漬後に試験片をホルダーと共に蒸留水から取り出し、
図8に示すように、試験片200の1つの隅部200dに帯210を貼り付ける。帯210は、測定するペーパータオル2プライと同じペーパータオルを1プライに剥離して、その紙製ペーパータオル1プライを3mm×長さ38mmの大きさに切り、試験片200の隅部200dから中心に向かって6mmの部分に貼り付ける。次に、ホルダー220と試験片200を、隅部200dに対向する隅部200aが上になるようにして空の水槽内に設置した棒にぶら下げ、水槽の蓋を閉めて15分間、放置する。
その後、ホルダー220と試験片200を水槽から取り出し、帯210とホルダー220を外し、電子天秤で試験片200の重量を測定する。蒸留水に浸す前後での試験片200の重量変化から、試験片200の単位面積当たりの蒸留水の吸水量(水g/シートm
2、1m
2当たり。略してg/m
2とする。)を計算する。さらに、単位面積当たりの吸水量(水g/シートm
2)を試験片200の製品プライの坪量で割ることにより、単位面積当たりの吸水量(水g/シートm
2)/坪量(シートg/シートm
2)=単位重量当たりの吸水量(水g/シートg、1g当たり。略してg/gとする。)を算出する。測定は各サンプル5回ずつ行い、平均値を採用する。
【0082】
なお、1プライの吸水量は、2プライに重ねられたペーパータオルシート1xを7.6×7.6cm(3インチ)の正方形に切断して試験片200を作製し、その後、プライを剥離して、これを1プライの吸水量測定用の試験片200とする。測定方法は、2プライと同様にする。
ペーパータオルシート1xが1プライの場合は、剥離せずにそのまま試料片200として用い、2プライの場合と同様に測定する。3プライの場合は、2プライの場合と同様に測定する。
【0083】
本測定は、JIS P 8111法に従い、温度23±1℃、湿度50±2%の状態で行う。また、蒸留水は23±1℃に保持する。
【0084】
なお、本発明において、ペーパータオルシート1xの1プライ(表面1a)の単位面積当たりの吸水量は50g/m2以上170g/m2以下であることが好ましく、60g/m2以上160g/m2以下であることがより好ましく、70g/m2以上150g/m2以下であることが更に好ましい。それに対して、ペーパータオルシート1xの1プライ(裏面1b)の単位面積当たりの吸水量は52g/m2以上172g/m2以下であることが好ましく、62g/m2以上162g/m2以下であることがより好ましく、72g/m2以上152g/m2以下であることが更に好ましい。
【0085】
また、ペーパータオルシート1xの1プライ(表面1a)の単位重量当たりの吸水量は3.0g/g以上であることが好ましく、3.5g/g以上7.0g/g以下であることがより好ましく、4.0g/g以上6.0g/g以下であることが更に好ましい。それに対して、ペーパータオルシート1xの1プライ(裏面1b)の単位重量当たりの吸水量は3.1g/g以上であることが好ましく、3.6g/g以上7.1g/g以下であることがより好ましく、4.1g/g以上6.1g/g以下であることが更に好ましい。
【0086】
(比容積)
ペーパータオルシート1xの比容積は、7cm3/g以上22cm3/g以下であることが好ましい。ペーパータオルシート1xの比容積が7cm3/g未満であると、ペーパータオルシート1xが吸水性に劣る。また、ペーパータオルシート1xの比容積が22cm3/gを超えると、ペーパータオルシート1xのこわさが高くなり、紙管10へ巻取る際にきれいにならない。
なお、ペーパータオルシート1xの比容積は、9cm3/g以上20cm3/g以下であることがより好ましく、12cm3/g以上17cm3/g以下であることが更に好ましい。比容積は、ペーパータオルシート1xの1プライ当たりの紙厚を1プライ当たりの坪量で割り、単位g当たりの容積cm3で表す。
【0087】
(DMDT及びDCDT)
ペーパータオルシート1xの、JIS P 8113に基づく乾燥時の縦方向(MD方向:ロール巻方向R)の引張強さDMDT(Dry Machine Direction Tensile Strength)は、6N/25mm以上15N/25mm以下であることが好ましく、また、乾燥時の横方向(CD方向:ロール幅方向W)の引張強さDCDT(Dry Cross Direction Tensile Strength)が6N/25mm以上15N/25mm以下であることが好ましい。DMDT又はDCDTが6N/25mm未満であると、結果としてペーパータオルシート1xの坪量が低くなり、吸水性に劣る。DMDT又はDCDTが15N/25mmを超えると、ペーパータオルシート1xのこわさが高くなり、紙管10へ巻取る際にきれいにならない。
【0088】
なお、DMDTは、7N/25mm以上13N/25mm以下であることがより好ましく、8N/25mm以上12N/25mm以下であることが更に好ましい。また、DCDTは7N/25mm以上13N/25mm以下であることがより好ましく、8N/25mm以上12N/25mm以下であることが更に好ましい。
【0089】
また、DCDTに対するDMDTの比率(DMDT/DCDT)は0.8以上1.4以下であることが好ましく、0.9以上1.3以下であることがより好ましく、1.0以上1.2以下であることが更に好ましい。一般的なペーパータオルのDMDT/DCDTは2.0~4.0程度であるが、本願のような高吸収ペーパータオルでは、DMDT/DCDTを上記の範囲とすることでDCDT方向に破れにくくなり、使用時にピックアップ3を剥がす際にも、ペーパータオルシート1xが破れずに剥がしやすいペーパータオルロール1とすることができる。
【0090】
(WMDT及びWCDT)
また、ペーパータオルシート1xの、旧JIS S 3104に基づく湿潤時の縦方向の引張強さWMDT(Wet Machine Direction Tensile Strength)が1.5N/25mm以上8.0N/25mm以下であることが好ましく、また、湿潤時の横方向の引張強さWCDT(Wet Cross Direction Tensile Strength)が1.4N/25mm以上7.9N/25mm以下であることが好ましい。WMDT又はWCDTがいずれも上記の数値範囲内であることにより、本願のように紙管10への巻取り状態が良好なペーパータオルシート1x及びペーパータオルロール1とすることができる。また、ピックアップグルー2を適度に接着させることができる。
【0091】
なお、WMDTは、2.0N/25mm以上6.0N/25mm以下であることがより好ましく、2.5N/25mm以上4.5N/25mm以下であることが更に好ましい。また、WCDTは1.9N/25mm以上5.9/25mm以下であることがより好ましく、2.4N/25mm以上4.4N/25mm以下であることが更に好ましい。
【0092】
また、WCDTに対するWMDTの比率(WMDT/WCDT)は0.8以上1.4以下であることが好ましく、0.9以上1.3以下であることがより好ましく、1.0以上1.2以下であることが更に好ましい。
【0093】
<ペーパータオルシート及びペーパータオルロールの製造方>
ペーパータオルシート1x及びペーパータオルロール1は、例えば(1)抄紙及びクレーピング、(2)エンボス処理、(3)ピックアップグルー塗布及び接着、(4)ロール巻取り加工の順で製造することができる。製造(抄紙)工程においては、TAD抄紙技術を用いることが好ましい。このとき、抄紙工程において、上述のエンボスパターンとは異なる抄紙工程(ファブリック)由来の凹凸のパターンがペーパータオルシート1xに施されることが好ましい。この凹凸のパターンを有することにより、ペーパータオルシート1xの吸水量が更に高くなる。なお、抄紙工程由来とは、ペーパータオルシート1xの抄紙工程において、抄紙機のヘッドボックスからヤンキードライヤーの入口までの間に付与されることを意味し、特にスルーエアードライヤー部でシートがファブリックと共に乾燥されることで、凹凸が形成される。
【0094】
また、凹凸のパターンは、ファブリックのパターン(細かいパターン、荒いパターン)を変更することで、適宜変更することができる。凹凸のパターンを変更すると比容積(紙厚)が変わるが、原紙の比容積(紙厚)が後述する数値範囲内になるようなパターンを選定することが好ましい。また、ペーパータオルシート1xの非エンボス部の表面粗さの二乗平均平方根高さSqが上述した数値範囲内になるようなパターンを選定することが好ましい。
【0095】
このスルーエアードライヤーを用いて抄紙された原紙を用いる場合、エンボスパターンを施すためのエンボスロールにおける凸部の面積率が4%以上35%以下であることが好ましい。面積率が4%未満であると、ペーパータオルシート1xがピックアップグルー2を多く吸収してしまい、紙管10へ巻取る際にきれいにならない。面積率が35%を超えると、ペーパータオルシート1xが吸水性に劣る。
【0096】
なお、凸部の面積率は6%以上25%以下であることがより好ましく、9%以上18%以下であることが更に好ましい。また、凸部及びエンボス単体の形状は、円形、楕円形、長方形、正方形、花柄、ロゴ、文字等、特に制限なく用いることができるが、上述したように線状のエンボスが好ましい。このエンボスは、上述したようにペーパータオルシート1xの表面1aのみに設けることが好ましい。
【0097】
このとき、ペーパータオルシート1xの製造に用いる原紙の2プライの坪量(1プライの坪量を2倍したもの)は、31g/m2以上55g/m2以下であることが好ましく、35g/m2以上51g/m2以下であることがより好ましく、39g/m2以上47g/m2以下であることが更に好ましい。また、紙厚は2.0mm/10枚以上5.0mm/10枚以下であることが好ましく、2.2mm/10枚以上4.5mm/10枚以下であることがより好ましく、2.7mm/10枚以上4.2mm/10枚以下であることが更に好ましい。さらに、比容積は8cm3/g以上25cm3/g以下であることが好ましく、10cm3/g以上23cm3/g以下であることがより好ましく、12cm3/g以上21cm3/g以下であることが更に好ましい。
【0098】
本発明は上記した実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。
【実施例0099】
(1)抄紙及びクレーピング(比較例6は、TADを用いず、一般的なヤンキードライヤー(YD)を用いた)、(2)エンボス処理、(3)ピックアップグルー塗布及び接着、(4)ロール巻取り加工の工程を経て、実施例1から実施例14、比較例1から比較例6のペーパータオルシート及びペーパータオルロールを製造した。そして、全ての実施例、及び比較例のペーパータオルロールに関して上述の各パラメーターを測定し、かつ、下記の評価を行った。なお、エンボスは全てペーパータオルシートの表側のみに設けた。
【0100】
製造したペーパータオルシート及びペーパータオルロールについて、以下の3つの項目(紙管へのシートの巻取り状態のきれいさ、吸水性、水濡れ時の粘着感)の評価を行った。
【0101】
(紙管へのシートの巻取り状態のきれいさ)
製造後のペーパータオルロール30個について、巻始めのシートがシワになっていたロールの個数を計測し、5段階にて評価した。評価基準は以下のとおりである。
◎ :巻始めのシートがシワになっているロールが0~1個
○ :巻始めのシートがシワになっているロールが2~4個
△ :巻始めのシートがシワになっているロールが5~7個
× :巻始めのシートがシワになっているロールが8~14個
××:巻始めのシートがシワになっているロールが15個以上
【0102】
(吸水性)
製造後のペーパータオルシートの単位面積当たりの吸水量を実測して、5段階にて評価した。評価基準は以下のとおりである。
◎ :330g/m2以上のとき
○ :270g/m2以上330g/m2未満のとき
△ :230g/m2以上270g/m2未満のとき
× :170g/m2以上230g/m2未満のとき
××:170g/m2未満のとき
【0103】
(水濡れ時の粘着感)
ピックアップグルーで接着された部分のペーパータオルシートを水で濡らして使用した際の粘着感を、30人のモニターよって官能評価し、「粘着感がある」と感じた人数によって4段階にて評価した。評価基準は以下のとおりである。
◎ :「粘着感がある」と感じた人数が0~2人
○ :「粘着感がある」と感じた人数が3~5人
△ :「粘着感がある」と感じた人数が6~10人
× :「粘着感がある」と感じた人数が11人以上
【0104】
得られた結果を表1及び表2に示す。
【0105】
【0106】
【0107】
以上より、本発明のペーパータオルロールは、吸水性及び強度に優れるペーパータオルシートをピックアップグルーを用いて紙管に巻取ったペーパータオルロールであり、紙管への巻取り状態が良好であり、ピックアップグルーが付着したシートであっても使いやすいペーパータオルロールであることが分かる。