(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057596
(43)【公開日】2024-04-24
(54)【発明の名称】パワーダイオード素子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/861 20060101AFI20240417BHJP
H01L 21/329 20060101ALI20240417BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
H01L29/91 D
H01L29/91 F
H01L29/91 B
H01L29/06 301S
H01L29/06 301V
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023175694
(22)【出願日】2023-10-11
(31)【優先権主張番号】111138688
(32)【優先日】2022-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】523282903
【氏名又は名称】ダイオーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100137969
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 憲昭
(74)【代理人】
【識別番号】100104824
【弁理士】
【氏名又は名称】穐場 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100121463
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 哲也
(72)【発明者】
【氏名】ツェン チン チウ
(72)【発明者】
【氏名】ロ ツ ユアン
(72)【発明者】
【氏名】チャン チャオ イ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】表面電界減少(RESURF)効果を有するパワーダイオード素子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】基板10を有するパワーダイオード素子1において、基板10は、第1導電型を有するコア層10bと、第1導電型を有する第1拡散層10aと、第2導電型を有する第2拡散層10cと、第2導電型を有する高濃度ドープ接触領域11と、を含む。コア層10bの厚さは、第2拡散層10cより厚い。コア層10bは、第1拡散層10aと第2拡散層10cとの間に位置する。高濃度ドープ接触領域11がコア層10bに向かって延伸することで、高濃度ドープ接触領域11とコア層10bに第1PN接合S1を形成させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワーダイオード素子であって、
基板を含み、その基板が、
第1表面と、前記第1表面に対向する第2表面を有し、第1導電型を有するコア層と、
第1表面と、前記第1表面に対向する第2表面を有し、前記第1導電型を有する第1拡散層と、
第1表面と、前記第1表面に対向する第2表面を有し、第2導電型を有する第2拡散層であって、前記コア層の厚さは前記第2拡散層より厚く、前記コア層は、前記コア層の前記第1表面を前記第1拡散層の前記第2表面と対面させ、前記コア層の前記第2表面を前記第2拡散層の前記第1表面と対面させるよう、前記第1拡散層と前記第2拡散層の間に位置しており、しかも、前記第2拡散層の前記第2表面が前記基板の上面を形成し、前記第1拡散層の前記第1表面が前記基板の下面を形成している第2拡散層と、
第1表面と、前記第1表面に対向する第2表面を有し、前記第2導電型を有する高濃度ドープ接触領域であって、前記高濃度ドープ接触領域の前記第2表面は前記第2拡散層の前記第2表面と共平面であり、かつ前記高濃度ドープ接触領域は前記コア層に向かって延伸し、前記高濃度ドープ接触領域の前記第1表面を前記コア層の前記第2表面に到達させ、または、前記コア層の前記第1表面と前記第2表面との間に到達させるが、前記第1表面には到達させず、前記高濃度ドープ接触領域と前記コア層に第1PN接合を形成させる、高濃度ドープ接触領域と、を含む、
パワーダイオード素子。
【請求項2】
前記コア層と前記第2拡散層が第2PN接合を形成しており、前記第1PN接合と前記第2PN接合が連続したPN接合を形成する、請求項1のパワーダイオード素子。
【請求項3】
前記基板の前記上面から前記基板の前記下面に向かう方向が第1方向であり、かつ前記連続したPN接合において、前記第1PN接合が前記第1方向に沿って前記第2PN接合から突出している、請求項2のパワーダイオード素子。
【請求項4】
前記基板がさらに、
前記高濃度ドープ接触領域を取り囲む隔離構造であって、前記隔離構造と前記高濃度ドープ接触領域が前記第2拡散層によって分離されている隔離構造を含む、
請求項1のパワーダイオード素子。
【請求項5】
前記隔離構造の深さが前記高濃度ドープ接触領域より深い、請求項4のパワーダイオード素子。
【請求項6】
前記基板の前記下面に位置して前記第1拡散層と接触する第1電極層と、
前記基板の前記上面に位置して前記高濃度ドープ接触領域と接触する第2電極層とをさらに含む、
請求項1のパワーダイオード素子。
【請求項7】
前記基板の前記上面に位置して前記高濃度ドープ接触領域と接触し、かつ前記第2電極層を取り囲む不動態層をさらに含む、
請求項6のパワーダイオード素子。
【請求項8】
パワーダイオード素子の製造方法であって、その方法が、
第1表面と、前記第1表面に対向する第2表面を有し、その前記第1表面が前記基板の下面を形成する、前記第1導電型を有する第1拡散層を第1導電型を有する基板内に形成することと、
第1表面と、前記第1表面に対向する第2表面を有し、その前記第2表面は前記基板の上面を形成しており、前記第1拡散層とは接触せず、かつ前記第1拡散層との間の部分がコア層である、第2導電型を有する第2拡散層を前記基板内に形成することと、
第1表面と、前記第1表面に対向する第2表面を有し、その前記第2表面が前記基板の前記上面と共平面である、前記第2導電型を有する高濃度ドープ接触領域を前記第2拡散層内に形成することと、
前記高濃度ドープ接触領域を前記コア層内に向かって拡散させることで、前記高濃度ドープ接触領域と前記コア層に第1PN接合を形成させることと、を含む、
製造方法。
【請求項9】
前記基板内に、第2導電型を有する前記第2拡散層を形成することが、さらに、
前記基板の一部を除去することと、
前記基板の別の部分を前記第1導電型から前記第2導電型に反転させることにより、前記第2拡散層を形成することと、を含む、
請求項8の製造方法。
【請求項10】
前記高濃度ドープ接触領域を前記コア層内に向かって拡散させることが、さらに、
前記第2拡散層と前記高濃度ドープ接触領域を同時に前記コア層内に向かって拡散させることで、前記コア層と前記第2拡散層に第2PN接合を形成させることを含む、
請求項8の製造方法。
【請求項11】
前記高濃度ドープ接触領域を前記コア層内に向かって拡散させることが、さらに、
前記高濃度ドープ接触領域の前記第1表面を前記第2PN接合に到達させ、または前記第2PN接合から突出させることを含む、
請求項10の製造方法。
【請求項12】
前記第1PN接合と前記第2PN接合が連続したPN接合を形成する、請求項11の製造方法。
【請求項13】
前記第2拡散層内に、前記第1導電型を有する隔離構造を形成することをさらに含む、
請求項8の製造方法。
【請求項14】
前記隔離構造が、前記高濃度ドープ接触領域の前に形成される、請求項13の製造方法。
【請求項15】
前記高濃度ドープ接触領域を前記コア層内に向かって拡散させることが、さらに、
前記隔離構造と前記高濃度ドープ接触領域を同時に前記コア層内に向かって拡散させることを含む、
請求項13の製造方法。
【請求項16】
前記隔離構造と前記高濃度ドープ接触領域を同時に前記コア層内に向かって拡散させることが、さらに、
前記隔離構造の深さを前記高濃度ドープ接触領域より深くすることを含む、
請求項15の製造方法。
【請求項17】
前記基板の前記上面に、前記隔離構造と前記高濃度ドープ接触領域に接触する不動態層を形成することをさらに含む、
請求項13の製造方法。
【請求項18】
前記基板の前記下面に前記第1拡散層と接触する第1電極層を形成し、
前記基板の前記上面に前記高濃度ドープ接触領域と接触する第2電極層を形成することをさらに含む、
請求項8の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、パワーダイオード素子及びその製造方法に関し、より具体的には、表面電界減少(RESURF、reduced surface field)効果を有するパワーダイオード素子に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]よく知られているパワーダイオードは、アクティブ領域と接合端末(junction termination)を定義するためにメサ構造(mesa structure)を有している。メサ構造は、エッチングプロセスによって基板の側辺をエッチングすることによって形成することができる。基板の上半分にメサが形成されるため、厚さが比較的薄くなり、しかも構造強度が低下することがある。また、エッチングプロセスにおいて、メサの側面の勾配を正確に制御できない場合、破壊電圧が不十分になるなど、パワーダイオードの電気的パフォーマンスに影響が生じるおそれもある。
【0003】
[0003]また、プレーナ構造(planar structure)を有するパワーダイオードを使用し、かつ保護リング(guard ring)を形成することにより電界の分布を緩やかにして、パワーダイオードの破壊電圧を高めることもできる。但し、高電圧(例えば600Vを超える電圧)のパワーダイオードについては、破壊電圧をさらに高めるために保護リングの数を増やす必要があるが、保護リングの大きさは製造工程のライン幅能力の制限を受けることがある。また、保護リングの数が増えるにつれて、占有する面積の割合も増加するので、素子の体積縮小化に不利であり、製造工程のコストも高くなる。
【発明の概要】
【0004】
[0004]本発明の実施例は、パワーダイオード素子に関する。該パワーダイオード素子は基板を含み、その基板は、第1導電型を有するコア層と、該第1導電型を有する第1拡散層と、第2導電型を有する第2拡散層と、該第2導電型を有する高濃度ドープ接触領域とを含む。該コア層は、第1表面と、該第1表面に対向する第2表面とを有する。該第1拡散層は、第1表面と、該第1表面に対向する第2表面とを有する。該第2拡散層は、第1表面と、該第1表面に対向する第2表面とを有する。該コア層の厚さは、該第2拡散層より厚い。該コア層は、該コア層の該第1表面を該第1拡散層の該第2表面と対面させ、該コア層の該第2表面を該第2拡散層の該第1表面と対面させるよう、該第1拡散層と該第2拡散層の間に位置しており、しかも、該第2拡散層の該第2表面は該基板の上面を形成し、該第1拡散層の該第1表面は該基板の下面を形成している。該高濃度ドープ接触領域は、第1表面と、該第1表面に対向する第2表面を有し、該高濃度ドープ接触領域の該第2表面は、該第2拡散層の該第2表面と共平面であり、かつ該高濃度ドープ接触領域が該コア層に向かって延伸することで、該高濃度ドープ接触領域の該第1表面を該コア層の該第2表面に到達させ、または、該コア層の該第1表面と該コア層の該第2表面との間に到達させる。但し、該コア層の該第1表面には到達させない。該高濃度ドープ接触領域と該コア層に第1PN接合を形成させている。
【0005】
[0005]本発明の実施例は、パワーダイオード素子の製造方法に関する。該製造方法は、第1導電型を有する基板内に該第1導電型を有する第1拡散層を形成することを含む。該第1拡散層は、第1表面と、該第1表面に対向する第2表面とを有する。該第1拡散層の該第1表面は、該基板の下面を形成している。該製造方法は、該基板内に第2導電型を有する第2拡散層を形成することをさらに含み、そのうち、該第2拡散層は、第1表面と、該第1表面に対向する第2表面を有し、該第2拡散層の該第2表面は、該基板の上面を形成している。該第1拡散層は該第2拡散層とは接触しておらず、かつ該第1拡散層と該第2拡散層との間に介在する部分がコア層である。該製造方法は、該第2拡散層内に該第2導電型を有する高濃度ドープ接触領域を形成することをさらに含む。該高濃度ドープ接触領域は、第1表面と、該第1表面に対向する第2表面を有し、該高濃度ドープ接触領域の該第2表面は、該基板の該上面と共平面である。該製造方法は、該高濃度ドープ接触領域を該コア層内に向かって拡散させて、該高濃度ドープ接触領域と該コア層に第1PN接合を形成させることをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
[0006]本発明の若干の実施例の形態は、図面と併せて以下の詳細な説明を閲読することで、最適に理解することができる。各種の構造は比例に基づいて作成しなくてもよいという点に注意が必要である。実際には、論述を明確にするという見地から、各種の構造の大きさは、任意に拡大または縮小することができる。
【
図1】本願のいくつかの実施例に基づくパワーダイオード素子の断面図である。
【
図2A】本願のいくつかの実施例に基づくパワーダイオード素子の部分拡大図である。
【
図2B】
図2A中のパワーダイオード素子の接線Xに沿った電界強度曲線図である。
【
図3A】本願のいくつかの実施例に基づくパワーダイオード素子の製造方法における1つ以上の段階を示している。
【
図3B】本願のいくつかの実施例に基づくパワーダイオード素子の製造方法における1つ以上の段階を示している。
【
図3C】本願のいくつかの実施例に基づくパワーダイオード素子の製造方法における1つ以上の段階を示している。
【
図3D】本願のいくつかの実施例に基づくパワーダイオード素子の製造方法における1つ以上の段階を示している。
【
図3E】本願のいくつかの実施例に基づくパワーダイオード素子の製造方法における1つ以上の段階を示している。
【
図3F】本願のいくつかの実施例に基づくパワーダイオード素子の製造方法における1つ以上の段階を示している。
【
図3G】本願のいくつかの実施例に基づくパワーダイオード素子の製造方法における1つ以上の段階を示している。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[0007]同一または類似する構成部品は、図式及び詳細な説明において、同様の参照符号を使用して表示している。本発明の若干の実施例は、以下の詳細な説明と図面により、速やかに理解することができる。
【0008】
[0008]以下で開示する内容は、提供される主題の様々な特徴を実施するための多くの異なる実施例または範例を提供している。以下では、構成部品及び構成の具体例について説明している。もちろん、これらは範例にすぎないので、限定的でないことが望ましい。本発明では、第2の特徴の上方または上に第1の特徴を形成するという引用は、第1の特徴と第2の特徴が直接接触として形成される実施例を含むことができ、かつ第1の特徴と第2の特徴との間に第1の特徴と第2の特徴を直接接触させない別の特徴を形成する実施例を含むこともできる。また、本発明では、各実施例の中で図面符号及び/または文字が重複してもよい。この重複は、簡単かつ明確にするために行われるものであり、かつそれ自体が、論述されている各実施例及び/または構成の間の関係を示しているわけではない。
【0009】
[0009]以下では、本発明の実施例について詳細に論述する。しかし、本発明が様々な特定の環境下で具体化することができる多くの適用概念を提供していることを、理解しておかなければならない。論述されている具体的な実施例は説明的なものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0010】
[0010]本発明は、パワーダイオード素子及びその製造方法を提供している。メサ構造を有するパワーダイオード素子と比べて、本発明のパワーダイオード素子は構造強度が比較的高い。また、電界分布を緩やかにするために保護リングを形成するパワーダイオード素子と比べて、本発明のパワーダイオード素子は、製造工程のライン幅能力の制限を受けず、かつ端末長さ(terminal length)が比較的短いので、素子の体積の縮小化に有利である。
【0011】
[0011]
図1を参照すると、
図1は、本願のいくつかの実施例に基づくパワーダイオード素子1の断面図である。パワーダイオード素子1は、基板10と、高濃度ドープ接触領域11と、隔離構造12と、電極層13と、不動態層14と、電極層15とを含むことができる。
【0012】
[0012]基板10は半導体基板を含むことができる。基板10は、例えばケイ素(Si)、窒化ガリウム(GaN)、ガリウム砒素(GaAs)、窒化アルミニウム(AlN)、炭化ケイ素(SiC)、リン化インジウム(InP)、セレン化亜鉛(ZnSe)またはその他のVI族、III-V族またはII-VI族半導体材料を含むことができる(但し、これらに限らない)。いくつかの実施例では、体積抵抗率が約45と約60Ohm-cmの間のN型単結晶シリコンウェハを使用して、基板10を形成することができる。基板10は、第1拡散層10a(以下、拡散層10aと略称)、コア層10b及び第2拡散層10c(以下、拡散層10cと略称)を含むことができる。
【0013】
[0013]コア層10bは、拡散層10aと拡散層10cの間に位置することができる。例えば、コア層10bは、拡散層10aと拡散層10cとの間に挟まれることができる。コア層10bは、もとの半導体基板の一部であってもよい。コア層10bには、例えば
図1で「N」と表示されている領域のように、N型不純物をドープすることができる。N型不純物は、リン、ヒ素、アンチモンなどの5価の元素を含むことができる。他の実施例では、コア層10bに、ホウ素、アルミニウム、ガリウムなどの三価の元素であるP型不純物をドープすることができる。コア層10bは、第1表面10b1(以下、表面10b1と略称)と、表面10b1に対向する第2表面10b2(以下、表面10b2と略称)を含むことができる。コア層10bの表面10b1は拡散層10aに面しており、かつコア層10bの表面10b2は拡散層10cに面している。
【0014】
[0014]拡散層10aは、N型不純物をドープした半導体層を含むことができる。拡散層10aとコア層10bは同じ導電型を有してもよいが、拡散層10aの不純物濃度がコア層10bの不純物濃度よりも高いことがあるので、
図1では「N+」領域として表示している。本発明で使用する「N+」領域または「P+」領域中の不純物濃度は、その隣接領域中の不純物濃度より高い。拡散層10aは、第1表面10a1(以下、表面10a1と略称)と、表面10a1に対向する第2表面(図中未表示、コア層10bの表面10b1に面する)を含むことができる。拡散層10aの表面10a1は、基板10の下面を形成している。
【0015】
[0015]いくつかの実施例では、拡散層10aは、基板10の下面からコア層10b内に向かってN型不純物を拡散させることによって形成することができる(例えば
図3Aの通り)。いくつかの実施例では、拡散層10aとコア層10bとの間に拡散境界を形成することができる。いくつかの実施例では、拡散層10aとコア層10bとの間の拡散境界は、高濃度N型不純物(N+)領域とN型不純物(N)領域との間の境界である。
【0016】
[0016]拡散層10cは、
図1の「P」で示す領域のように、P型不純物をドープした半導体層を含むことができる。拡散層10cとコア層10bは、逆の導電型を有することができる。拡散層10cと拡散層10aは、逆の導電型を有することができる。拡散層10cは、第1表面(図中未表示、コア層10bの表面10b2に面する)と、対向する第2表面10c2(以下、表面10c2と略称)を含むことができる。拡散層10cの表面10c2は基板10の上面を形成している。即ち、拡散層10cの表面10c2と拡散層10aの表面10a1とは、基板10の対向する2つの表面であってよい。
【0017】
[0017]いくつかの実施例では、拡散層10cは、基板10の上面からN型コア層10bの一部をP型に反転させ(例えば
図3Cの通り)、さらに拡散させる(例えば
図3Fの通り)ことによって形成することができる。例えば、いくつかの実施例では、拡散層10cは、高濃度ドープ接触領域11の拡散中に、高濃度ドープ接触領域11と同時にコア層10b内に向かって拡散し、かつコア層10bとの間に拡散境界を形成することができる。いくつかの実施例では、拡散層10cとコア層10bとの間の拡散境界は、P型不純物(P)領域とN型不純物(N)領域との間の境界またはPN接合(PN junction)S2である。
【0018】
[0018]高濃度ドープ接触領域11は基板10内に位置することができる。いくつかの実施例では、高濃度ドープ接触領域11は拡散層10cによって囲まれることができる。例えば、高濃度ドープ接触領域11は拡散層10c内に位置することができる。例えば、断面図で見ると、高濃度ドープ接触領域11は、左右2つの拡散層10cの間に位置することができる。
【0019】
[0019]高濃度ドープ接触領域11は、P型不純物をドープした半導体層を含むことができる。高濃度ドープ接触領域11と拡散層10cは同じ導電型を有していてもよいが、高濃度ドープ接触領域11の不純物濃度が拡散層10cの不純物濃度よりも高いことがあるので、
図1では「P+」領域として表示している。
【0020】
[0020]いくつかの実施例では、高濃度ドープ接触領域11は、基板10の上面からコア層10b内に向かってP型不純物を拡散させることにより形成することができる(例えば
図3Fの通り)。いくつかの実施例では、高濃度ドープ接触領域11とコア層10bとの間に拡散境界を形成することができる。いくつかの実施例では、高濃度ドープ接触領域11とコア層10bとの間の拡散境界は、P型不純物(P)領域とN型不純物(N)領域との間の境界またはPN接合S1である。
【0021】
[0021]いくつかの実施例では、高濃度ドープ接触領域11とコア層10bとの間のPN接合S1を第1PN接合と呼び、拡散層10cとコア層10bとの間のPN接合S2を第2PN接合と呼ぶことができる。いくつかの実施例では、PN接合S2とPN接合S1は連続した接合であってよい。いくつかの実施例では、PN接合S1は、基板10の上面から基板10の下面に向かう方向においてPN接合S2から突出している。
【0022】
[0022]高濃度ドープ接触領域11は、第1表面(PN接合S1と同じ位置)及び対向する第2表面(以下、表面112と略称)を含むことができる。表面112と拡散層10cの表面10c2とは共平面であってよい。言い換えると、表面112及び基板10の上面は共平面であってよい。
【0023】
[0023]いくつかの実施例では、高濃度ドープ接触領域11はコア層10bに向かって延伸しており、その第1表面(PN接合S1と同じ位置)はコア層10bの表面10b2に達することができる。例えば、PN接合S1は、コア層10bの表面10b2と共平面であってよい。いくつかの実施例では、高濃度ドープ接触領域11はコア層10bに向かって延伸しており、その第1表面(PN接合S1と同じ位置)はコア層10bの表面10b2と表面10b1の間に達することはできるが、表面10b1には達しない。例えば、PN接合S1は、コア層10bの表面10b2と表面10b1との間に位置することができる。例えば、PN接合S1は、表面10b2を超えることはできるが、表面10b1は超えない。
【0024】
[0024]隔離構造12は基板10内に位置することができる。隔離構造12は、N型不純物をドープした半導体層を含むことができる。隔離構造12とコア層10bは同じ導電型を有していてもよいが、隔離構造12の不純物濃度がコア層10bの不純物濃度よりも高いことがあるので、
図1では「N+」領域として表示している。
【0025】
[0025]いくつかの実施例では、隔離構造12は拡散層10cを取り囲むことができる。いくつかの実施例では、隔離構造12は高濃度ドープ接触領域11を取り囲むことができる。例えば、断面図で見ると、高濃度ドープ接触領域11は、左右2つの隔離構造12の間に位置することができる。拡散層10cは、高濃度ドープ接触領域11と左右の2つの隔離構造12とを分離することができる。例えば、拡散層10cは、高濃度ドープ接触領域11と隔離構造12との間に位置することができる。
【0026】
[0026]いくつかの実施例では、隔離構造12は、基板10の上面からコア層10b内にN型不純物を拡散させることにより形成することができる(例えば
図3Fの通り)。いくつかの実施例では、隔離構造12と拡散層10cとの間に拡散境界を形成することができる。いくつかの実施例では隔離構造12と拡散層10cとの間の拡散境界は、N型不純物(N)領域とP型不純物(P)領域との間の境界またはPN接合S3である。いくつかの実施例では、隔離構造12と拡散層10cとの間のPN接合S3を、第3PN接合と呼ぶことができる。いくつかの実施例では、PN接合S3とPN接合S2は連続した接合であってよい。
【0027】
[0027]いくつかの実施例では、隔離構造12とコア層10bとの間に拡散境界を形成することができる。いくつかの実施例では、隔離構造12とコア層10bとの間の拡散境界は、高濃度N型不純物(N+)領域とN型不純物(N)領域との間の境界である。
【0028】
[0028]いくつかの実施例では、隔離構造12は高濃度ドープ接触領域11と同時に拡散することができる。例えば、隔離構造12と高濃度ドープ接触領域11は同じステップで形成することができる。いくつかの実施例では、隔離構造12はコア層10bに向かって延伸することができ、その1つの表面はコア層10bの表面10b2に達することができる。例えば、隔離構造12とコア層10bの拡散境界は、コア層10bの表面10b2と共平面であってよい。いくつかの実施例では、隔離構造12はコア層10bに向かって延伸することができ、その1つの表面はコア層10bの表面10b2と表面10b1の間に達することはできるが、表面10b1には達しない。例えば、隔離構造12とコア層10bの拡散境界は、コア層10bの表面10b2と表面10b1の間であってよい。例えば、隔離構造12とコア層10bの拡散境界は、表面10b2を超えることはできるが、表面10b1は超えない。
【0029】
[0029]電極層15(第1電極層15とも呼ぶ)は、基板10の下面に位置することができる。例えば、電極層15は、拡散層10aの表面10a1上に配置することができる。例えば、電極層15は、拡散層10aの一部と接触し、または被覆することができる。例えば、電極層15は、拡散層10aの表面10a1を完全に被覆することができる。電極層15は、パワーダイオード素子1の電気端子と見なすことができる。例えば、電極層15は、パワーダイオード素子1の電気端子に電気接続することができる。
【0030】
[0030]電極層13(第2電極層13とも呼ぶ)は、基板10の上面に位置することができる。例えば、電極層13は、高濃度ドープ接触領域11の表面112上に配置することができる。例えば、電極層13は、高濃度ドープ接触領域11の一部と接触し、または被覆することができる。例えば、電極層13は、隔離構造12の一部と接触し、または被覆することができる。電極層13は、パワーダイオード素子1の電気端子と見なすことができる。例えば、電極層13は、パワーダイオード素子1の電気端子に電気接続することができる。電極層15と電極層13の間に基板10を挟むことができる。
【0031】
[0031]いくつかの実施例では、断面図で見ると、電極層15の幅は電極層13の幅より大きくてよい。いくつかの実施例では、電極層15の総表面積は、電極層13の総表面積より大きくてよい。
【0032】
[0032]いくつかの実施例では、電極層15及び電極層13は、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、タングステン(W)、錫(Sn)、またはその他の金属または合金を含むことができる。いくつかの実施例では、電極層15及び電極層13は、同じ材料、例えばどちらもアルミニウムを含むことができる。いくつかの実施例では、電極層15及び電極層13は、例えば電極層15はアルミニウム、電極層13は銀、ニッケルまたはチタンというように、異なる材料を含むこともできる。
【0033】
[0033]不動態層14は、基板10の上面に位置することができる。例えば、不動態層14は、高濃度ドープ接触領域11の表面112上に配置することができる。例えば、不動態層14は、拡散層10cの表面10c2に配置することができる。例えば、不動態層14は、高濃度ドープ接触領域11の表面112の一部と接触し、または被覆することができる。例えば、不動態層14は、拡散層10cの表面10c2の一部と接触し、または被覆することができる。例えば、不動態層14は、拡散層10cの表面10c2を完全に被覆することができる。例えば、不動態層14は、隔離構造12の一部と接触し、または被覆することができる。
【0034】
[0034]いくつかの実施例では、不動態層14は電極層13を取り囲むことができる。例えば、断面図で見ると、電極層13は左右2つの不動態層14の間に位置することができる。いくつかの実施例では、不動態層14と電極層13は共平面であってよい。しかし、他の実施例では、不動態層14と電極層13は共平面でなくてもよい。例えば、不動態層14の辺縁は、電極層13によって被覆されていてもよい。例えば、基板10の上面から基板10の下面に向かう方向において、不動態層14と電極層13は互いに重なっていてもよい。
【0035】
[0035]いくつかの実施例では、拡散層10cを低減表面電界層とすることができる。例えば、拡散層10cがより均一な電界分布を達成することで、パワーダイオード素子1の破壊電圧を増加させることができる。
【0036】
[0036]いくつかの実施例では、拡散層10c及びコア層10bを空乏拡張領域DRとすることができる。拡散層10c及びコア層10bは、もともと高濃度ドープ接触領域11と隔離構造12との間に集中していた電界を緩和することができる。例えば、拡散層10c及びコア層10bの不純物ドーピング濃度は隔離構造12よりも低いため、パワーダイオード素子1に逆方向バイアスが印加されると、拡散層10c及びコア層10b内のキャリアが空乏化(depleted)し、空乏拡張領域DRが広がることで、パワーダイオード素子1の破壊電圧が増加する。言い換えると、耐圧の需要の違いに基づいて、拡散層10cの長さを調整し、電界強度を緩和する作用を果たすことができるのである。
【0037】
[0037]
図2Aは、パワーダイオード素子1の部分拡大図である。具体的には、
図2Aは
図1中のパワーダイオード素子の2a部分を表している。
図2及び
図1における同一または類似する素子は同じ素子符号で表しており、該素子の詳細な説明については繰り返し述べないものとする。
【0038】
[0038]いくつかの実施例では、基板10の厚さ10hは、約240マイクロメートル(μm)と約280μmの間、例えば約260μmであってよい。いくつかの実施例では、拡散層10aの厚さ10ahは、約110μmと約150μmの間、例えば約130μmであってよい。いくつかの実施例では、コア層10bの厚さ10bhは、約80μmと約120μmの間、例えば約100μmであってよい。いくつかの実施例では、拡散層10cの厚さ10chは、約10μmと約50μmの間、例えば約30μmであってよい。
【0039】
[0039]いくつかの実施例では、拡散層10cの厚さ10chとコア層10bの厚さ10bhは異なってもよい。例えば、拡散層10cの厚さ10chは、コア層10bの厚さ10bhより薄くてよい。例えば、コア層10bの厚さ10bhは、拡散層10cの厚さ10chの3倍以上であってよい。
【0040】
[0040]いくつかの実施例では、拡散層10cの厚さ10chと拡散層10aの厚さ10ahは異なってもよい。例えば、拡散層10cの厚さ10chは、拡散層10aの厚さ10ahより薄くてよい。例えば、拡散層10aの厚さ10ahは、拡散層10cの厚さ10chの4倍以上であってよい。
【0041】
[0041]いくつかの実施例では、高濃度ドープ接触領域11の深さ11hは、約10μmと約50μmの間、例えば約30μmであってよい。いくつかの実施例では、隔離構造12の深さ12hは、約30μmと約70μmの間、例えば約50μmであってよい。いくつかの実施例では、隔離構造12の深さ12hは、高濃度ドープ接触領域11の深さ11hより深くてよい。例えば、隔離構造12と高濃度ドープ接触領域11は同時に拡散することができ(例えば
図3Fの通り)、隔離構造12のキャリア拡散速度は、高濃度ドープ接触領域11のキャリア拡散速度より速くてよい。
【0042】
[0042]いくつかの実施例では、高濃度ドープ接触領域11の深さ11hと拡散層10cの厚さ10chはほぼ等しくてよい。いくつかの実施例では、高濃度ドープ接触領域11の深さ11hは拡散層10cの厚さ10chを上回ってよい。いくつかの実施例では、拡散層10cの厚さ10chをコア層10bの厚さ10bhより薄くすると、製造コストが高くなるおそれがある。但し、拡散層10cの厚さ10chを制御して、厚さ10chを約10μmと約50μmの間(例えば約30μm)にすることで、高濃度ドープ接触領域11をコア層10b内に拡散できるようにすると、パワーダイオード素子1のサージ能力(surge capacity)を向上させることができる。
【0043】
[0043]いくつかの実施例では、高濃度ドープ接触領域11と隔離構造12との間の距離D1は、約160μmと約140μmの間、例えば約150μmであってよい。いくつかの実施例では、距離D1を調整することによって破壊電圧を調整することができる。受ける破壊電圧が高くなるほど、距離D1を大きくする必要がある。いくつかの実施例では、隔離構造12はスクライブラインであってよい。いくつかの実施例では、隔離構造12の距離D2は、約2.5ミル(mil)または63.5μmであってよい。
【0044】
[0044]いくつかの実施例では、不動態層14は複数の層を有する積層構造を含むことができる。例えば、不動態層14は、酸化物層14a、窒化物層14b、酸化物層14c及び絶縁層14dを含むことができる。酸化物層14a及び酸化物層14cは、低温酸化物層(LTO、low temperature oxide)を含むことができる。酸化物層14a及び酸化物層14cは、応力緩衝層として配置することができる。窒化物層14bは窒化ケイ素(Si3N4)を含むことができる。窒化物層14bは、水気や汚染を隔絶するよう配置することができる。絶縁層14dは、半絶縁性多結晶シリコン層(SIPOS、Semi-Insulating Polycrystalline Silicon)を含むことができる。絶縁層14dは表面電荷を除去するよう配置することができ、例えばキャリアがパワーダイオード素子の表面に累積することにより生じる漏電流を防止することができる。
【0045】
[0045]
図2Bは、
図2A中のパワーダイオード素子の2a部分における、線X-Xに沿った電界強度曲線図である。そのうち、X軸は線X-Xに沿った位置を表し、単位はμmであり、Y軸は電界強度を表し、単位はボルト/メートル(V/m)である。
図2Bの位置L1は
図2Aの位置L1に対応し、かつ
図2Bの位置L2は
図2Aの位置L2に対応している。電界ピーク値P1は1.05×10
5V/mであり、その位置は隔離構造12と拡散層10cの間の接合に隣接している。電界ピーク値P2は1.2×10
5V/mであり、その位置は拡散層10cと高濃度ドープ接触領域11の間の接合に隣接している。電界ピーク値P2は電界ピーク値P1より大きい。即ち、拡散層10cと高濃度ドープ接触領域11との間の接合に隣接する電界は、隔離構造12と拡散層10cとの間の接合に隣接する電界よりも大きいのである。
【0046】
[0046]上述の複数の実施例は、N型単結晶シリコンウェハを使用して作製されたパワーダイオード素子に関する。ドーピングタイプが反対のP型単結晶シリコンウェハで作製されたパワーダイオード素子も、本発明の保護範囲内にあることを知っておかなければならない。1つの実施例では、第1導電型はN型不純物のドーピングを指し、第2導電型はP型不純物のドーピングを指している。別の実施例では、第1導電型はP型不純物のドーピングを指し、第2導電型はN型不純物のドーピングを指している。
【0047】
[0047]
図3A~
図3Gを参照すると、
図3A~
図3Gは、パワーダイオード素子1の製造方法の実施例の概略図である。
図2Aと同様に、
図3A~
図3Gの実施例でも、
図1のパワーダイオード素子の2a部分の各段階における構造により、例示的な説明を行う。よって、
図3A~
図3Gと
図1の同一または類似する素子は同じ素子符号で表しており、該素子の詳細な説明については繰り返し述べないものとする。これらの図面の少なくともいくつかは、本発明の形態をより適切に理解できるよう、すでに簡略化されている。
【0048】
[0048]
図3Aを参照すると、該製造方法は、基板10内に拡散層10aを形成することを含む。基板10は、N型またはP型不純物をドープした半導体基板を含むことができる。
図3A~
図3Gに示す実施例及び以下の説明では、N型シリコンウェハを基板10として使用することを例としている。いくつかの実施例では、基板10の厚さ10h’は、約480μmと約520μmの間であってよい。いくつかの実施例では、体積抵抗率が約45と約60Ohm-cmの間のN型シリコンウェハを使用することができる。
【0049】
[0049]いくつかの実施例では、裏面拡散(backside diffusion)技術を通して基板10の下面からN型不純物を拡散させることができる。例えば、基板10の下面にリン紙を付けてから拡散を行い、拡散境界を広げることで、比較的深いN+層を形成することができる。いくつかの実施例では、約1280℃の温度で約22時間拡散することができる。いくつかの実施例では、拡散層10aの厚さ10ahは、約110μmと約150μmの間、例えば約130μmであってよい。基板10の残りの部分はコア層10bを形成することができる。いくつかの実施例では、拡散層10aの表面10a1が基板10の下面を形成することができ、拡散層10aとコア層10bとの間に拡散境界(コア層10bの表面10b1と同じ位置)を形成することができる。他の実施例では、気相または液相のN型不純物拡散源を使用することもできる。
【0050】
[0050]他の実施例では、両面拡散(double-side diffusion)技術を通して、基板10の上下表面からN型不純物を拡散させることができる。基板10は、両面拡散後にN+/N/N+の構造を形成する。基板10の残りの部分はコア層10bを形成することができる。例えば、コア層10bを、不純物濃度の比較的高い上下2つの拡散層で挟むことができる。
【0051】
[0051]
図3Bを参照すると、該製造方法は、基板10を研磨(grinding)及びバフ加工(polishing)してコア層10bの一部を除去し、基板10の厚さ10hを約240μmと約280μmの間、例えば約260μmまで減らすことを含む。
【0052】
[0052]他の実施例では、両面拡散技術によって基板10の上下表面からN型不純物を拡散させる場合、該製造方法は、基板10に対して研磨及びバフ加工を行ってその中の1つの拡散層を除去してコア層10bを露出させるとともに、基板10の厚さ10hを約240μmと約280μmの間、例えば約260μmまで減らすことを含む。
【0053】
[0053]
図3Cを参照すると、該製造方法は、基板10内に拡散層10cを形成することを含む。ホウ素の使用を例に挙げると、液相源拡散、固相源拡散、またはイオン注入という方式を使用して、コア層10bの一部をN型からP型に反転させることができる。いくつかの実施例では、イオン注入の方式が採用されている。いくつかの実施例では、アニーリング、酸化及び拡散によって拡散層10cを形成することができる。いくつかの実施例では、拡散層10cを形成する前に、イオン注入時の欠陥の発生を回避するために、まずコア層10b上に緩衝層としての酸化層を形成することができる。いくつかの実施例では、拡散層10cの表面10c2が基板10の上面を形成することができ、拡散層10cとコア層10bとの間に拡散境界(コア層10bの表面10b2’と同じ位置)を形成することができる。
【0054】
[0054]
図3Dを参照すると、該製造方法は、基板10内に隔離構造12を形成することを含む。いくつかの実施例では、拡散層10cの表面10c2上に、マスクまたはフォトマスクなどの保護層30を形成することができる。保護層30内には、隔離構造12を形成する位置を画定する開口30hを形成することができる。いくつかの実施例では、リンの使用を例に挙げると、オキシ塩化リン(POCl
3)をリン源として用いて予備堆積を行うことができる。その後、予備堆積させた基板10に対して主拡散を行うことで、拡散境界を拡張し、比較的深いN+層を形成する。拡散層10aと同様に、隔離構造12は、リン紙、気相または液相のN型不純物拡散源を透過することができる。
【0055】
[0055]
図3Eを参照すると、該製造方法は、基板10内に高濃度ドープ接触領域11を形成することを含む。いくつかの実施例では、保護層30を除去することができる。保護層30は、エッチング、剥離またはその他の適切な製造工程によって除去することができる。拡散層10cの表面10c2上には、マスクやフォトマスクなどの保護層31を形成することができる。保護層31内には、高濃度ドープ接触領域11を形成する位置を画定する開口31hを形成することができる。いくつかの実施例では、ホウ素の使用を例に挙げると、三塩化ホウ素(BCl
3)をホウ素源として用いて予備堆積を行うことができる。その後、予備堆積させた基板10に対して主拡散を行うことで、拡散境界を拡張し、比較的深いP+層を形成する。高濃度ドープ接触領域11は表面112を含むことができる。いくつかの実施例では、表面112は表面10c2と共平面であってよい。表面112は基板10の上面と共平面であってよい。
【0056】
[0056]
図3Fを参照すると、該製造方法は、高濃度ドープ接触領域11をコア層10bに向かって拡散させることを含む。いくつかの実施例では、高濃度ドープ接触領域11をコア層10bに向かって拡散させることにより、高濃度ドープ接触領域11の表面をコア層10bの表面10b2に到達させることができ、または、コア層10bの表面10b2と表面10b1の間に到達させることができる。但し、表面10b1には到達しない。いくつかの実施例では、高濃度ドープ接触領域11をコア層10bに向かって拡散させることで、高濃度ドープ接触領域11とコア層10bとの間にPN接合S1を形成させる。
【0057】
[0057]いくつかの実施例では、保護層31を除去することができる。保護層31は、エッチング、剥離またはその他の適切な製造工程によって除去することができる。拡散層10cの表面10c2及び高濃度ドープ接触領域11の表面112上には、マスクやフォトマスクなどの保護層32を形成することができる。いくつかの実施例では、約1250℃の温度で約15時間拡散することができる。
【0058】
[0058]いくつかの実施例では、拡散層10cは高濃度ドープ接触領域11と同時に拡散することができる。例えば、拡散層10cと高濃度ドープ接触領域11は同じステップで形成することができる。いくつかの実施例では、拡散層10cがコア層10bに向かって拡散し、拡散層10cとコア層10bとの間の表面10b2’(
図3Eの通り)が下向きに移動して表面10b2となり、PN接合S2を形成することができる。
【0059】
[0059]いくつかの実施例では、PN接合S2とPN接合S1は連続した接合であってよい。いくつかの実施例では、PN接合S1は、基板10の上面から基板10の下面に向かう方向においてPN接合S2から突出している。
【0060】
[0060]いくつかの実施例では、隔離構造12は高濃度ドープ接触領域11と同時に拡散することができる。例えば、隔離構造12と高濃度ドープ接触領域11は同じステップで形成することができる。いくつかの実施例では、隔離構造12がコア層10bに向かって拡散することにより、その表面がコア層10bの表面10b2に到達することができ、または、コア層10bの表面10b2と表面10b1の間に到達することができる。但し、表面10b1には到達しない。いくつかの実施例では、隔離構造12のキャリア拡散速度は、高濃度ドープ接触領域11のキャリア拡散速度より速くてもよいので、隔離構造12の深さ12hは、高濃度ドープ接触領域11の深さ11hより大きくてもよい。
【0061】
[0061]
図3Gを参照すると、該製造方法は、基板10の上面に不動態層14を形成することを含む。いくつかの実施例では、保護層32を除去することができる。保護層32は、エッチング、剥離またはその他の適切な製造工程によって除去することができる。
【0062】
[0062]その後、基板10の上下表面上に、金属マスク(metal mask)(図中未表示)を介して電極層13及び電極層15を形成する。いくつかの実施例では、電極層13及び電極層15は、スパッタリング、化学めっき、電気めっき、プリントまたはその他の適切な製造工程によって形成することができる。金属マスクは、エッチング、剥離またはその他の適切な製造工程によって除去することができる。以上のステップを経て形成される半導体構造は、
図2Aのパワーダイオード素子の2a部分と同じであってよい。
【0063】
[0063]本願のパワーダイオード素子の製造方法では、N型(またはP型)の単結晶シリコンウェハを用いて拡散層10cを形成する。エピタキシャル層を使用する場合と比べて、拡散層10cを形成するコストは比較的低くなる。また、拡散の過程において、拡散層10cの厚さ10chを50μmを超えない、または30μmを超えないよう制御することにより、高濃度ドープ接触領域11を比較的容易にコア層10b内に拡散させ、パワーダイオード素子1のサージ能力を向上させることができる。
【0064】
[0064]また、本願のパワーダイオード素子の製造方法では、3つのフォトマスクを使用する。保護リングを形成して電界分布を緩和させたパワーダイオード素子の製造方法(通常は少なくとも4つのフォトマスクが必要)と比べて、本願で使用する必要のあるフォトマスクの数は比較的少なく、そのため、製造工程が簡略化され、コストも比較的低くなる。
【0065】
[0065]本文中では、記述しやすいように、「の下」、「下面」、「下部」、「上方」、「上部」、「左側」、「右側」などの空間に対応する用語を用いて、図面に示すような1つの構成部品または特徴と、別の、または複数の構成部品または特徴との関係を記述している。図面に記載されている方向の他に、空間対応用語は、装置の使用時または運転時の異なる方向をカバーすることもある。その他の方式で装置の方向(90度回転、またはその他の向き)を決めることができ、かつ同様に相応の方式により本文中で使用する空間対応用語を解釈することもできる。構成部品が他の構成部品に「接続され」、または「連結され」ているとされる場合は、他の構成部品に直接接続または連結されていてもよいし、中間構成部品が存在してもよいという点を理解しておかなければならない。
【0066】
[0066]本文で使用されているように、用語の「概ね」、「基本的に」、「ほぼ」及び「約」は、小さな変化を記述及び解釈するために使用される。イベントまたは状況と結び付けて使用される場合、該用語は、イベントまたは状況が間違いなく発生した実例、及びイベントまたは状況が発生間近の実例を指すことができる。本文で所定の値または範囲に関して使用される場合、用語の「約」は、全体的に所定の値または範囲の±10%、±5%、±1%または±0.5%以内にあることを意味する。本文では、範囲を1つの端点からもう1つの端点まで、または2つの端点の間として表している。本文で開示しているすべての範囲には、別途明示していない限り、端点が含まれている。「ほぼ共平面」という用語は、2つの表面が同一平面に沿って位置決めされている位置の差が数マイクロメートル(μm)以内にあること、例えば、同一平面に沿って位置決めされている位置の差が10μm以内、5μm以内、1μm以内、または0.5μm以内にあることを指すことができる。数値または特性が「基本的に」同一とされる場合、該用語は、該値の平均値の±10%、±5%、±1%または±0.5%以内の値を指すことができる。
【0067】
[0067]前述の内容は、いくつかの実施例の特徴及び本発明の詳細な形態を概述している。本発明に記載されている実施例は、同一または類似する目的を実施するため、及び/または本文で紹介している実施例の同一または類似する利点を実現するためにその他の製造工程及び構造を設計し、または修正するための基礎として容易に用いることができる。このような同等の構造が本発明の主旨及び範疇から逸脱せず、かつ本発明の主旨及び範疇から逸脱しない状況において、各種の改変、置換及び変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0068】
[0068]
1 パワーダイオード素子
2a パワーダイオード素子の一部
10 基板
10a 拡散層
10a1 表面
10ah 厚さ
10b コア層
10b1 表面
10b2 表面
10b2’ 表面
10bh 厚さ
10c 拡散層
10c2 表面
10ch 厚さ
10h 厚さ
10h’ 厚さ
11 高濃度ドープ接触領域
11h 深さ
12 隔離構造
12h 深さ
13 電極層
14 不動態層
14a 酸化物層
14b 窒化物層
14c 酸化物層
14d 絶縁層
15 電極層
30 保護層
30h 開口
31 保護層
31h 開口
32 保護層
112 表面
D1 距離
D2 距離
DR 空乏拡張領域
L1 位置
L2 位置
P1 ピーク値
P2 ピーク値
S1 PN接合
S2 PN接合
S3 PN接合
X 接線
【外国語明細書】