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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057640
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】光硬化型ガスケット樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/10 20060101AFI20240418BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20240418BHJP
   C08F 290/04 20060101ALI20240418BHJP
   F16J 15/14 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
C09K3/10 E
C08F2/44 Z
C08F290/04
F16J15/14 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164405
(22)【出願日】2022-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】000100698
【氏名又は名称】アイカ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大谷 久貴
【テーマコード(参考)】
4H017
4J011
4J127
【Fターム(参考)】
4H017AA04
4H017AB01
4H017AC08
4H017AD01
4H017AE05
4J011PA07
4J011PA64
4J011PB40
4J011PC02
4J011PC08
4J011QA03
4J011QA45
4J011QB01
4J011RA10
4J011SA02
4J011SA03
4J011SA06
4J011SA14
4J011SA15
4J011SA16
4J011SA20
4J011SA54
4J011SA58
4J011SA61
4J011SA84
4J011TA02
4J011TA06
4J011TA08
4J011TA10
4J011UA01
4J011VA01
4J011VA05
4J011WA10
4J127AA03
4J127AA04
4J127BB031
4J127BB111
4J127BB221
4J127BC021
4J127BC151
4J127BD031
4J127BG021
4J127BG02Y
4J127BG171
4J127BG17Y
4J127CB142
4J127CB311
4J127CB401
4J127CC012
4J127CC161
4J127CC162
4J127DA08
4J127DA26
4J127DA42
4J127EA12
4J127EA15
4J127FA37
(57)【要約】
【課題】シリカ成分を含まずとも良好な作業性を有し、硬化性が良好であると共に透湿性が低く、安定したシール性の確保が容易な現場形成型ガスケット(CIPG:Cured In Place Gasket)として用いることが可能な光硬化型のガスケット樹脂組成物を提供する。
【解決手段】アクリロイル末端ポリイソブチレンと、C8~18の単官能アルキル(メタ)アクリレートモノマーと、ポリエチレンパウダーと、炭酸カルシウムと、多官能チオールと、光重合開始剤と、を含み、シリカ成分を含まないことを特徴とする光硬化型ガスケット樹脂組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリロイル末端ポリイソブチレン(A)と、C8~18の単官能アルキル(メタ)アクリレートモノマー(B)と、ポリエチレンパウダー(C)と、炭酸カルシウム(D)と、多官能チオール(E)と、光重合開始剤(F)と、を含み、シリカ成分を含まないことを特徴とする光硬化型ガスケット樹脂組成物。
【請求項2】
前記(D)が表面処理された軽質炭酸カルシウムであり、平均粒子径が10~500nmであることを特徴とする、請求項1記載の光硬化型ガスケット樹脂組成物。
【請求項3】
前記(D)の配合量が、組成物の固形分全量に対し3~40重量%であることを特徴とする、請求項1又は2いずれか記載の光硬化型ガスケット樹脂組成物。
【請求項4】
前記(C)の配合量が、組成物の固形分全量に対し5~35重量%であることを特徴とする、請求項1又は2いずれか記載の光硬化型ガスケット樹脂組成物。
【請求項5】
前記(B)が、脂環式骨格(メタ)アクリレート(b1)及び、直鎖アルキル(メタ)アクリレート(b2)を含むことを特徴とする、請求項1又は2いずれか記載の光硬化型ガスケット樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線などの光により硬化する現場形成ガスケット用樹脂として適する、光硬化型ガスケット樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶デバイスなどの電子機器、太陽電池や燃料電池などの電池ユニット、光ファイバーなどの光通信ユニットでは、様々な目的でシール剤(ガスケット)が用いられている。例えば精密な電子機器類では、機器内部に格納された部品を外部の埃や水分等から保護するためであり、電池ユニットでは燃料ガスや酸素ガスの漏れを防止するガスバリア性や、外部の水分侵入を防ぐためである。
【0003】
最近では信頼性向上のため高度なシール機能を求められるようになり、未硬化の液状物を、シールすべき箇所に塗布して硬化させる現場形成型ガスケット(CIPG:Cured In Place Gasket)が増えてきている。CIPGは硬化前には粘性を有する流動体であるため、その流動特性を改善する目的で、組成物には様々な無機フィラーを配合する場合が多い。特に、塗布後のダレを防止するため、チクソ性を向上させるヒュームドシリカは、多くの組成物で用いられている(例えば特許文献1)。
【0004】
現在、国内市場におけるヒュームドシリカの入手性はほとんど問題ないが、その供給先の多くは海外メーカーであり、海外メーカー上位3社の市場占有率は約80%レベルと言われている。近年では、COVID‐19に代表される感染症流行による突然の生産停止や物流遅延、海外紛争に起因するエネルギー問題、更には各国間の対立激化による貿易制限等により、数年前には考えられなかった、突如サプライチェーンが寸断されるという状況が発生するようになり、特に海外生産が主である原材料については、BCPの観点から代替材料の検討が重要な課題になってきている。CIPGについても、ヒュームドシリカを含まずとも同レベルの物性を有する組成物を要求される場合が出てきており、改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6865792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、シリカ成分を含まずとも良好な作業性を有し、硬化性が良好で、硬化物の透湿性が低く安定したシール性の確保が容易なCIPGとして用いることが可能な光硬化型のガスケット樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、請求項1記載の発明は、アクリロイル末端ポリイソブチレン(A)と、C8~18の単官能アルキル(メタ)アクリレートモノマー(B)と、ポリエチレンパウダー(C)と、炭酸カルシウム(D)と、多官能チオール(E)と、光重合開始剤(F)と、を含み、シリカ成分を含まないことを特徴とする光硬化型ガスケット樹脂組成物を提供する。
【0008】
請求項2記載の発明は、前記(D)が表面処理された軽質炭酸カルシウムであり、平均粒子径が10~500nmであることを特徴とする、請求項1記載の光硬化型ガスケット樹脂組成物を提供する。
【0009】
請求項3記載の発明は、前記(D)の配合量が、組成物の固形分全量に対し3~40重量%であることを特徴とする、請求項1又は2いずれか記載の光硬化型ガスケット樹脂組成物を提供する。
【0010】
請求項4記載の発明は、前記(C)の配合量が、組成物の固形分全量に対し5~35重量%であることを特徴とする、請求項1又は2いずれか記載の光硬化型ガスケット樹脂組成物を提供する。
【0011】
請求項5記載の発明は、前記(B)が、脂環式骨格(メタ)アクリレート(b1)及び、直鎖アルキル(メタ)アクリレート(b2)を含むことを特徴とする、請求項1又は2いずれか記載の光硬化型ガスケット樹脂組成物を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明はシリカ成分を含まずとも良好な作業性を有し、硬化性が良好で、硬化物は透湿性が低く安定したシール性の確保が容易であるため、光硬化型のCIPG用樹脂組成物として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下本発明について詳細に説明する。
【0014】
本発明の組成物の構成は、アクリロイル末端ポリイソブチレン(A)と、C8~12の単官能アルキル(メタ)アクリレートモノマー(B)と、ポリエチレンパウダー(C)と、炭酸カルシウム(D)と、多官能チオール(E)と、光重合開始剤(F)である。なお、本明細書において(メタ)アクリレートとは、アクリレートとメタクリレートの双方を包含する。またシリカを含まないとは、特定の目的を達成するため、シリカ成分を意図的に配合することを除くことであり、配合する各成分に微量に含まれるシリカ成分までをも除くことは意味せず、そのシリカ配合量としては5重量%以下、典型的には1重量%以下を指す。
【0015】
本発明のアクリロイル末端ポリイソブチレン(A)は、ガスケット樹脂を構成するベースオリゴマーで、-[CHC(CH]-単位を含むポリイソブチレン骨格を有するポリマーであれば特に限定されるものではない。光照射による硬化性が高く、耐熱性や耐候性に優れ、ブタジエン系骨格のオリゴマーと比較して引張破断歪が大きく、また高いガスバリア性と低い水蒸気透過性を併せ持つ優れたポリマーである。
【0016】
前記(A)の23℃におけるE型粘度計での粘度は、100~10000Pa・sが好ましく、500~5000Pa・sが更に好ましく、1000~4000Pa・sが特に好ましい。100Pa・s以上とすることで充分な凝集力を確保することができ、10000Pa・s以下とすることで作業性に適した粘度に調整しやすくなる。市販としてはEP400V(商品名:カネカ社製、両末端アクリロイルオキシ基、粘度3500Pa・s/23℃)がある。
【0017】
前記(A)の配合量は、硬化物の透湿度と組成物の特性バランスから固形分全量に対し10~55重量%が好ましく、15~50重量%が更に好ましく、20~48重量%が特に好ましい。10重量%以上とすることで十分なガスバリア性や低い透湿度を確保することができ、55重量%以下とすることで作業性に適した粘度に調整しやすくなる。
【0018】
本発明で使用される単官能アルキル(メタ)アクリレートモノマー(B)は、(A)を希釈すると同時に光硬化反応性を向上させるために配合される。アルキル数としてはC8~18であり、C8~C16が好ましく、C8~C14が更に好ましい。C8よりも小さいと、硬化物の柔軟性が低下する場合があり、C18よりも大きいと、硬化性が低下する傾向がある。特にシール性を向上させるためには、C8~18の剛性が高い脂環式骨格の(メタ)アクリレート(b1)及び/又は硬化性と柔軟性のバランスが取れた直鎖アルキル(メタ)アクリレート(b2)を含むことが好ましい。
【0019】
前記(B)の固形分全量に対する比率は、5~50重量%が好ましく、10~45重量%が更に好ましく、15~42重量%が特に好ましい。5重量%以上とすることで十分な硬化性を確保することができ、50重量%以下とすることで十分なガスバリア性や低い透湿度を確保することができる。
【0020】
前記(b1)としては、例えばジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンタニル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、単独あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中では硬化皮膜の弾性率を高められるジシクロペンテニル系の(メタ)アクリレートが好ましい。
【0021】
前記(b2)としては、例えば2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートが挙げられ、単独あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中ではTgが低く、(A)との相溶性が良好なnオクチルアクリレートが好ましい。
【0022】
前記(b1)と(b2)を併用する場合、(B)全量に対する(b1)の比率は、30~95重量%が好ましく、40~80重量%が更に好ましく、50~70重量%が特に好ましい。30重量%とすることで十分な剛性を確保することができ、また95重量%以下とすることで十分なガスバリア性や低い透湿度を確保することができる。
【0023】
本発明で使用されるポリエチレンパウダー(C)は、硬化皮膜表面のべとつきを抑え動摩擦係数を小さくする目的で配合される。耐摩耗性と自己潤滑性に優れる点で、分子量は100万~700万である超高分子量ポリエチレンであることが好ましい。また硬化表面の凹凸が微細化できるよう、平均粒径は10~50μmが好ましく、15~40μmが更に好ましい(コールターカウンター法)。
【0024】
前記(C)の配合量は、固形分全量に対し5~35重量%が好ましく、8~30重量%が更に好ましく、10~25重量%が特に好ましい。5重量%以上とすることで、充分な滑り性を確保し、結果として動摩擦係数を低くすることができ、35重量%以下とすることで適度な硬度と歪特性を確保することができる。市販品ではミペロン(商品名:三井化学社製、超高分子量ポリエチレン)が挙げられる。
【0025】
本発明で使用される炭酸カルシウム(D)は、本組成物にチクソ性を付与する目的で配合する。部材上でシール層を形成するCIPGでは、シール材として有用な高さに液状樹脂を塗布し、更に硬化するまでその形状を維持する必要があり、液状組成物に(D)を配合してチクソ性を付与することで実現できる。炭酸カルシウムには化学的に製造された軽質炭酸カルシウムと、物理的に粉砕・分球した重質炭酸カルシウムがあるが、粒子径や粒子形状が均一で不純物が少ない点で、軽質炭酸カルシウムであることが好ましい。
【0026】
前記(D)は、(A)~(C)成分との相溶性や、低粘度でも優れたチクソ性を得られる点で、表面処理されていることが好ましい。例えば、脂肪酸による表面処理が挙げられる。またBET比表面積としては5~50m/gであることが好ましく、10~40m/gであることが更に好ましく、15~35m/gであることが特に好ましい。5m/g以上とすることで十分なチクソ性の付与が可能となり、50m/g以下とすることで十分な粘度上昇の抑制が可能となる。なおBET比表面積の測定は、日本軽微性炭酸カルシウム工業組合にて制定されたJPCS試験方法に準拠した方法とする。
【0027】
前記(D)の平均一次粒子径としては10~500nmであることが好ましく、20~300nmであることが更に好ましく、20~150nmであることが特に好ましい。この範囲内とすることで、少ない配合量でも十分なチクソ性付与が可能となる。なお平均粒子径は走査型電子顕微鏡観察による。市販品では白艶華CC(商品名:白石工業社製、脂肪酸表面処理の軽質炭酸カルシウム、平均一次粒子径50nm、BET比表面積26m/g)等が挙げられる。
【0028】
前記(D)の配合量は、固形分全量に対し3~40重量%が好ましく、5~35重量%が更に好ましく、15~30重量%が特に好ましい。3重量%以上とすることで十分なチクソ性付与が可能となり、40重量%以下とすることで作業性に適した粘度にコントロールしやすくできる。
【0029】
本発明で使用される多官能チオール(E)は、本組成物の光硬化性を向上させる目的で配合する。酸素による硬化阻害を抑制できるエンチオール反応が可能となるため、反応性が向上すると共に、硬化皮膜の伸び率も向上させることができる。例えば、2官能では1,4ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)が、3官能では1,3,5トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオン、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトウロピオネート)が、4官能ではペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)等があり、単独あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中では、反応性と保存安定性のバランスが取れた2級の多官能チオールが好ましい。
【0030】
前記(E)の配合量としては、固形分全量に対し0.5~5重量%が好ましく、0.8~3重量%が更に好ましく、1.0~2.0重量%が特に好ましい。またラジカル重合性分100重量部に対する配合は1~8重量部が好ましく、2~5重量部が更に好ましい。この範囲内とすることで、光反応を向上させると共に、充分な硬化皮膜の伸び率を確保することができる。市販品ではカレンズMT‐BD1(商品名:昭和電工社製、1,4ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン)がある。
【0031】
本発明に使用される光重合開始剤(F)は、紫外線や電子線などの照射でラジカルを生じ、そのラジカルが重合反応のきっかけとなるもので、ベンジルケタール系、アセトフェノン系、フォスフィンオキサイド系等汎用の光重合開始剤が使用できる。重合開始剤の光吸収波長を任意に選択することによって、紫外線領域から可視光領域にいたる広い波長範囲にわたって硬化性を付与することができる。具体的にはベンジルケタール系として2.2-ジメトキシ-1.2-ジフェニルエタン-1-オンが、α-ヒドロキシアセトフェノン系として1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン及び1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オンが、α-アミノアセトフェノン系として2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オンが、アシルフォスフィンオキサイド系として2.4.6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド及びビス(2.4.6‐トリメチルベンゾイル)‐フェニルフォスフィンオキサイド等があり、単独または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0032】
前記(F)の中では、黄変しにくいα-ヒドロキシアセトフェノン系を含むことが好ましく、市販品としてはOmnirad127、184、2959(商品名:IGM Resins社製)などが挙げられる。前記(B)のラジカル重合性分100重量部に対する配合は0.1~10重量部が好ましく、0.5~8重量部が更に好ましい。
【0033】
本発明では更に酸化防止剤を配合することが好ましい。酸化防止剤はラジカルを効率よくトラップする化合物で、保存性を向上させることができる。例えばヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、リン系、硫黄系などの酸化防止剤が挙げられ、単独あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中では、ヒンダードフェノール系又はヒンダードアミン系を含むことが好ましい。酸化防止剤を配合する場合の固形分全量に対する配合量は0.5~5重量%が好ましく、1~4重量%が好ましい。この範囲内とすることで、更に保存性を向上させることができる。市販品ではIrganox1010(商品名:BASFジャパン社製、ヒンダードフェノール系)及びTinuvin249(商品名:BASFジャパン社製、ヒンダードアミン系)などが挙げられる。
【0034】
本組成物には必要に応じシランカップリング剤、着色剤、熱重合開始剤、消泡剤、難燃剤、レベリング剤、分散剤、重合禁止剤、リン酸エステル、有機微粒子などの添加剤も併用することができる。
【0035】
本発明の光硬化型ガスケット樹脂組成物の使用方法としては、部材上に塗布した後、紫外線などの光照射により硬化させで、シール層を形成する。光源としては高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、LEDランプ、無電極紫外線ランプ等の公知の光源が適用可能であり、紫外線照射条件としては、50mW/cm~3,000mW/cmの照射強度で、積算光量としては500mJ/cm~10,000mJ/cmが例示できる。
【0036】
本発明の光硬化型ガスケット樹脂組成物を硬化させたシール層のJIS Z0208に準じた60℃90%RHでの透湿度としては40g/m・24h以下が好ましく、30g/m・24h以下が更に好ましい。硬化物がこれらの範囲にあれば、シール層からの水分や異物の透過を抑えることができCIPGとして十分使用することができる。
【0037】
以下、本発明を実施例、比較例に基づき詳細に説明するが、具体例を示すものであって特にこれらに限定するものではない。なお表記が無い場合は、室温は25℃相対湿度65%の条件下で測定を行った。
【0038】
実施例1~7
前記(A)としてEPION EP400V(商品名:カネカ社製、アクリロイル末端ポリイソブチレン)を、(b1)としてFA-512AS(商品名:日立化成社製、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート)を、(b2)としてNOAA(商品名:大阪有機化学工業社製、n-オクチルアクリレート)を、(C)としてミペロンXM-200(商品名:三井化学社製、平均分子量200万、コールターカウンター法による平均粒径30μm)を、(D)として白艶華CC(商品名:白石工業社製、脂肪酸表面処理の軽質炭酸カルシウム、平均一次粒子径40nm)を、(E)としてカレンズMT-BD1(商品名:昭和電工社製、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン)を、(F)としてOmnirad184(商品名:IGM社製、α-ヒドロキシアセトフェノン系)を、酸化防止剤としてTinuvin249(商品名:BASFジャパン社製、ヒンダードアミン系)及びIrganox1010(商品名:BASFジャパン社製、ヒンダードフェノール系)を、表1記載の配合で均一に溶解するまで撹拌し実施例1~7の光硬化型ガスケット樹脂組成物を調整した。
【0039】
比較例1~4
実施例で用いた材料の他、アクリル系オリゴマーとしてUV-3700B(商品名:三菱ケミカル社製、ウレタンアクリレート、Mw38000)を用い、表2記載の配合で均一に溶解するまで撹拌し比較例1~4の光硬化型ガスケット樹脂組成物を調整した。
【0040】
表1
【0041】
表2
【0042】
評価方法は以下の通りとした。
【0043】
粘度・TI値:東機産業製のコーンプレート型粘度計RE-215Rを用い、コーン角3°×R7.7で25±1℃、回転数10rpm及び1rpmで測定し、その比をチクソ値(TI値)とした。粘度が測定範囲を外れる場合は、10rpmから測定可能な範囲となるよう1rpm→0.1rpmと回転数を下げて測定し、その10分の1の回転数で測定した粘度の値との比をTI値とした。
TI値の評価は1.5未満の場合を×、1.6~2.5の場合を〇、2.5超の場合を◎とした。
【0044】
表面硬化性:上記で調整した組成物を専用の型(PP製、6mmT、Φ26mm)にすりきりいっぱい充填し、FUSIONUV System社製のUV照射装置UV LIGHT HAMMER 6Dbulbを用い、照射度300mw/cm、積算光量6,000mJ/cmの条件で硬化させ、表面のタックを指触で評価し、タックがない場合を○、タックが残っている場合を×とした。
【0045】
圧縮永久歪:上記で調整した組成物を離型PETフィルム上に厚さ2mmになるよう塗布し、FUSIONUV System社製のUV照射装置UV LIGHT HAMMER 6Dbulbを用い、照射度300mw/cm、積算光量6,000mJ/cmの条件で硬化させた。これを幅5mm×長さ15mmに切り出し、1mmのスペーサーを設けたSUS板で挟んで圧縮固定し、80℃で16時間養生した。所定時間後取り出し、試験片に大きな割れが発生しているもの又は長さ1mm以上の割れが3か所以上生じているものを×、長さ1mm未満の割れが2か所未満のものを〇、割れが無いものを◎とした。
【0046】
透湿度:JIS Z0208に準じて測定を行った。UV照射条件は上記照射装置で照射度300mw/cm、積算光量6,000mJ/cmとし、測定条件は60℃/90%RH環境下で厚さ1mmの試料を24時間放置し、その重量変化から透湿度を算出した。評価は透湿度が30g/m・24h未満の場合を◎、30~40g/m・24hの場合を○、40g/m・24h超の場合を×とした。
【0047】
実施例評価結果
表3
【0048】
比較例評価結果
表4
【0049】
実施例はTI値、表面硬化性、圧縮永久歪、透湿度すべての面で問題は無く良好であった。
【0050】
一方、(C)を含まない比較例1は表面硬化性が劣り、(D)を含まない比較例2はTI値が低いと同時に表面硬化性が劣っていた。また(E)を含まない比較例3は圧縮永久歪が劣り、(A)以外のバインダー用いた比較例4は透湿度が高く、いずれも本願発明に適さないものであった。