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特開2024-57641光ファイバ特性測定装置及び光ファイバ特性測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057641
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】光ファイバ特性測定装置及び光ファイバ特性測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/353 20060101AFI20240418BHJP
   G01M 11/00 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
G01D5/353 B
G01M11/00 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164406
(22)【出願日】2022-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(74)【代理人】
【識別番号】100181124
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 壮男
(72)【発明者】
【氏名】松浦 聡
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 芳宏
【テーマコード(参考)】
2F103
2G086
【Fターム(参考)】
2F103CA07
2F103EB02
2F103EB11
2F103EC09
2G086DD04
2G086DD05
(57)【要約】
【課題】外乱による追従性の影響を抑えつつ、SN比を向上させることができる光ファイバ特性測定装置及び光ファイバ特性測定方法を提供する。
【解決手段】光ファイバ特性測定装置1は、所定の変調周波数で変調したレーザ光を射出する光源11と、レーザ光をプローブ光L1及びポンプ光L2として光ファイバ14の一端及び他端からそれぞれ入射させる入射部(12,13,15,16)と、光電変換素子、電流源、及び増幅回路を有し、光ファイバ14から射出される光を検出する光検出部17と、光検出部17から出力される検出信号D1を用いて光ファイバ14の特性を測定する測定部18と、プローブ光L1が含まれるがブリルアン散乱光が含まれない光が光ファイバ14から射出される期間である非含有期間における光検出部17の検出結果に基づいて電流源を制御する電流源制御部19と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の変調周波数で変調したレーザ光を射出する光源と、
前記レーザ光を連続光及びパルス光として光ファイバの一端及び他端からそれぞれ入射させる入射部と、
光電変換素子、前記光電変換素子に接続された電流源、及び前記光電変換素子と前記電流源との接続点に接続された増幅回路を有し、前記光ファイバから射出される光を検出する光検出部と、
前記光検出部から出力される検出信号を用いて前記光ファイバの特性を測定する測定部と、
前記連続光が含まれるがブリルアン散乱光が含まれない光が前記光ファイバから射出される期間である非含有期間における前記光検出部の検出結果に基づいて前記電流源を制御する電流源制御部と、
を備える光ファイバ特性測定装置。
【請求項2】
前記パルス光が前記光ファイバの他端に入射される周期は、少なくとも前記パルス光が前記光ファイバの一端と他端との間を往復するのに要する往復時間の2倍の時間に設定されており、
前記非含有期間は、前記パルス光が前記光ファイバの他端に入射されて前記往復時間が経過してから、次の前記パルス光が前記光ファイバの他端に入射されるまでの期間である、
請求項1記載の光ファイバ特性測定装置。
【請求項3】
前記電流源制御部は、前記パルス光が前記光ファイバの他端に入射される周期と同じ周期を有する同期信号を用いて、前記非含有期間における前記光検出部の検出結果を得る、請求項2記載の光ファイバ特性測定装置。
【請求項4】
前記電流源制御部は、前記光検出部の検出結果として、前記光検出部から出力される検出信号を得る、請求項3記載の光ファイバ特性測定装置。
【請求項5】
前記測定部は、前記光検出部から出力される検出信号のうち、前記光ファイバに設定された測定点近傍の光を検出して得られた検出信号の切り出しを行い、前記同期信号を用いて切り出しを行った検出信号を同期検波する同期検波装置を備え、
前記電流源制御部は、前記光検出部の検出結果として、前記同期検波装置で切り出しが行われた検出信号を得る、請求項3記載の光ファイバ特性測定装置。
【請求項6】
前記光検出部は、前記光電変換素子に流れる電流を検出する電流検出器を備えており、
前記電流源制御部は、前記光検出部の検出結果として、前記電流検出器の検出結果を得る、
請求項3記載の光ファイバ特性測定装置。
【請求項7】
所定の変調周波数で変調したレーザ光を射出する第1ステップと、
前記レーザ光を連続光及びパルス光として光ファイバの一端及び他端からそれぞれ入射させる第2ステップと、
光電変換素子、前記光電変換素子に接続された電流源、及び前記光電変換素子と前記電流源との接続点に接続された増幅回路を有する光検出部によって前記光ファイバから射出される光を検出する第3ステップと、
前記光検出部から出力される検出信号を用いて前記光ファイバの特性を測定する第4ステップと、
前記連続光が含まれるがブリルアン散乱光が含まれない光が前記光ファイバから射出される期間である非含有期間における前記光検出部の検出結果に基づいて前記電流源を制御する第5ステップと、
を有する光ファイバ特性測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ特性測定装置及び光ファイバ特性測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバに光を入射させることによって発生するブリルアン散乱光は、光ファイバの温度や歪みの変化によってスペクトル(周波数)が変化する。このような性質を利用した光ファイバ特性測定装置は、ブルリアン散乱光の周波数の変化(ブリルアン周波数シフト(BFS:Brillouin Frequency Shift))を光ファイバの長さ方向に亘って検出することで、光ファイバの長さ方向の温度分布や歪み分布を測定する。
【0003】
このような光ファイバ特性測定装置の1つに、以下の特許文献1,2に開示されたBOCDA(Brillouin Optical Correlation Domain Analysis)方式のものがある。この方式の光ファイバ特性測定装置は、周波数変調された光(ポンプ光及びプローブ光)を光ファイバの両端からそれぞれ入射させる。そして、ポンプ光及びプローブ光の変調位相が一致する位置(「相関ピーク」が現れる位置)において、プローブ光が誘導ブリルアン散乱現象により増幅される性質を利用して光ファイバの特性を測定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3667132号公報
【特許文献2】特許第5654891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、光ファイバから射出される光は、プローブ光に微弱なブリルアン散乱光が重畳されたものであるため、この光を検出して得られる検出信号は、プローブ光の成分に比べて著しく信号強度が低いブリルアン散乱光の成分が含まれるものになる。このような検出信号を増幅器で増幅すると、プローブ光の成分によって増幅器が飽和してしまい、ブリルアン散乱光の成分を十分な大きさに増幅することができない。このため、ブリルアン散乱光の成分と雑音との比であるSN比(信号対雑音比)を向上させることができない。
【0006】
ここで、検出信号からプローブ光の成分を除き、ブリルアン散乱光の成分のみを増幅するようにすればブリルアン散乱光の成分を十分な大きさに増幅することが可能である。しかしながら、検出信号からプローブ光の成分を除去する方法によっては、例えば、光ファイバに曲げ等の外乱が加わって損失が急激に変化した場合に、測定結果が直ちに追随しない等の追従性の影響が生ずることが考えられる。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、外乱による追従性の影響を抑えつつ、SN比を向上させることができる光ファイバ特性測定装置及び光ファイバ特性測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様による光ファイバ特性測定装置(1~3)は、所定の変調周波数で変調したレーザ光を射出する光源(11)と、前記レーザ光を連続光(L1)及びパルス光(L2)として光ファイバ(14)の一端及び他端からそれぞれ入射させる入射部(12、13、15、16)と、光電変換素子(21)、前記光電変換素子に接続された電流源(22)、及び前記光電変換素子と前記電流源との接続点(CP)に接続された増幅回路(23)を有し、前記光ファイバから射出される光を検出する光検出部(17、17A)と、前記光検出部から出力される検出信号(D1)を用いて前記光ファイバの特性を測定する測定部(18)と、前記連続光が含まれるがブリルアン散乱光が含まれない光が前記光ファイバから射出される期間である非含有期間(T2)における前記光検出部の検出結果(D1、D2、D11)に基づいて前記電流源を制御する電流源制御部(19)と、を備える。
【0009】
本発明の第2の態様による光ファイバ特性測定装置は、本発明の第1の態様による光ファイバ特性測定装置において、前記パルス光が前記光ファイバの他端に入射される周期(T)が、少なくとも前記パルス光が前記光ファイバの一端と他端との間を往復するのに要する往復時間の2倍の時間に設定されており、前記非含有期間が、前記パルス光が前記光ファイバの他端に入射されて前記往復時間が経過してから、次の前記パルス光が前記光ファイバの他端に入射されるまでの期間である。
【0010】
本発明の第3の態様による光ファイバ特性測定装置は、本発明の第2の態様による光ファイバ特性測定装置において、前記電流源制御部が、前記パルス光が前記光ファイバの他端に入射される周期と同じ周期を有する同期信号(SY)を用いて、前記非含有期間における前記光検出部の検出結果を得る。
【0011】
本発明の第4の態様による光ファイバ特性測定装置は、本発明の第3の態様による光ファイバ特性測定装置において、前記電流源制御部が、前記光検出部の検出結果として、前記光検出部から出力される検出信号(D1)を得る。
【0012】
本発明の第5の態様による光ファイバ特性測定装置は、本発明の第3の態様による光ファイバ特性測定装置において、前記測定部が、前記光検出部から出力される検出信号のうち、前記光ファイバに設定された測定点近傍の光を検出して得られた検出信号の切り出しを行い、前記同期信号を用いて切り出しを行った検出信号を同期検波する同期検波装置(20)を備え、前記電流源制御部が、前記光検出部の検出結果として、前記同期検波装置で切り出しが行われた検出信号(D2)を得る。
【0013】
本発明の第6の態様による光ファイバ特性測定装置は、本発明の第3の態様による光ファイバ特性測定装置において、前記光検出部が、前記光電変換素子に流れる電流を検出する電流検出器(24)を備えており、前記電流源制御部が、前記光検出部の検出結果として、前記電流検出器の検出結果(D11)を得る。
【0014】
本発明の一態様による光ファイバ特性測定方法は、所定の変調周波数で変調したレーザ光を射出する第1ステップと、前記レーザ光を連続光(L1)及びパルス光(L2)として光ファイバ(14)の一端及び他端からそれぞれ入射させる第2ステップと、光電変換素子(21)、前記光電変換素子に接続された電流源(22)、及び前記光電変換素子と前記電流源との接続点(CP)に接続された増幅回路(23)を有する光検出部(17)によって前記光ファイバから射出される光を検出する第3ステップと、前記光検出部から出力される検出信号(D1)を用いて前記光ファイバの特性を測定する第4ステップと、前記連続光が含まれるがブリルアン散乱光が含まれない光が前記光ファイバから射出される期間である非含有期間(T2)における前記光検出部の検出結果に基づいて前記電流源を制御する第5ステップと、を有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、外乱による追従性の影響を抑えつつ、SN比を向上させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態による光ファイバ特性測定装置の要部構成を示すブロック図である。
図2】本発明の第1実施形態による光ファイバ特性測定装置に設けられる光検出部の要部構成を示す回路図である。
図3】本発明の第1実施形態において、同期検波装置で行われる処理を説明するための図である。
図4】本発明の第1実施形態において、電流源制御部で行われる処理を説明するための図である。
図5】本発明の第2実施形態による光ファイバ特性測定装置の要部構成を示すブロック図である。
図6】本発明の第2実施形態において、電流源制御部で行われる処理を説明するための図である。
図7】本発明の第3実施形態による光ファイバ特性測定装置の要部構成を示すブロック図である。
図8】本発明の第3実施形態による光ファイバ特性測定装置に設けられる光検出部の要部構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態による光ファイバ特性測定装置及び光ファイバ特性測定方法について詳細に説明する。以下では、まず、本発明の実施形態の概要について説明し、続いて本発明の各実施形態の詳細について説明する。
【0018】
〔概要〕
本発明の実施形態は、光ファイバ特性測定装置において、外乱による追従性の影響を抑えつつ、SN比を向上させるものである。具体的には、BOCDA方式の光ファイバ特性測定装置において、光ファイバから射出される光の検出信号からプローブ光の成分を除き、ブリルアン散乱光の成分のみを増幅させてSN比を向上させる。このとき、光ファイバの温度や歪みが急激に変化したとしても、その測定結果が直ちに追随するようにするものである。
【0019】
光ファイバに光を入射すると光ファイバ内の各所で微小な散乱光が生ずる。散乱光はその発生要因により、大きく3つ(レイリー散乱光、ブリルアン散乱光、ラマン散乱光)に分けられる。ブリルアン散乱光は、その周波数がファイバに加わる温度及び歪みに対して線形に変化する。そこで、ブリルアン散乱光の発生位置とその周波数を求めれば光ファイバそのものを歪みセンサ、温度センサ、又はその両方として用いることができる。この性質を利用して、通信用光ファイバ自体の敷設品質管理、橋梁やダムといった社会インフラ構造物又は航空機機体の構造健全性診断等へ応用する測定技術の研究・開発が盛んに行われている。
【0020】
ブリルアン散乱には、自然ブリルアン散乱(SpBS:Spontaneous Brillouin Scattering)と、誘導ブリルアン散乱(SBS:Stimulated Brillouin Scattering)とがある。自然ブリルアン散乱は、自然に存在する音響波により生じる散乱である。誘導ブリルアン散乱は、対向して伝播する2つの光が特定の条件を満足するときに生ずる強い音響波と光とが相互作用して生じる散乱である。
【0021】
上述した特許文献1,2に開示されたBOCDA方式の光ファイバ特性測定装置は、正弦波により周波数変調(FM変調)した光を光ファイバの両端から入射させる。そして、光ファイバ内において、それら2つの光の変調位相が一致する位置(相関ピークが現れる位置)が1つのみになるようにする。このとき、相関ピークが現れる位置では、強度の高い誘導ブリルアン散乱光が発生し、その位置以外では、強度の低い誘導ブリルアン散乱光が発生する。
【0022】
光ファイバ内で生じた全ての誘導ブリルアン散乱光のスペクトル(BGS:Brillouin Gain Spectrum)を観測すると、そのスペクトルの最大値付近の形状は、相関ピークが現れる位置で発生した誘導ブリルアン散乱光の形状が支配的になる。つまり、相関ピークが現れる位置で生じた誘導ブリルアン散乱光のスペクトルを観測し、その最大値の周波数と入射光との周波数差(BFS:Brillouin Frequency Shift)から相関ピークが現れる位置における温度又は歪みの情報を得ることができる。
【0023】
相関ピークが現れる位置は、周波数変調の周波数を変えることによって移動させることができる。このため、相関ピークが現れる位置を光ファイバの長さ方向に移動させることで、光ファイバの長さ方向における任意の位置における温度又は歪みの情報を得ることができる。
【0024】
一方、光ファイバに入射させる光を正弦波によって周波数変調した場合には、光ファイバの長さ方向に沿って一定間隔で相関ピークが現れる。光ファイバ内において、相関ピークが現れる位置が1つのみになるようにするには、光ファイバの長さを相関ピークの間隔よりも短くしなければならない。この制約を回避するための一方法として、上述した特許文献2に開示された時間ゲート法と呼ばれるものがある。この時間ゲート法は、端的にいうと、光ファイバから順次射出される光のうち、光ファイバ内に設定した測定点及びその近傍で発生した光を検出して得られた検出信号のみを切り出す方法である。これにより、相関ピークが現れる位置が光ファイバ内に複数存在したとしても、光ファイバ内に設定した測定点及びその近傍で発生した光を検出して得られた検出信号のみが得られる。
【0025】
このようなBOCDA方式の光ファイバ特性測定装置では、プローブ光に微弱なブルリアン散乱光が重畳された光を検出する。この光を検出して得られる検出信号は、プローブ光の成分に比べて著しく信号強度が低いブリルアン散乱光の成分が含まれるものになる。このような検出信号を増幅器で増幅すると、プローブ光の成分によって増幅器が飽和してしまい、ブリルアン散乱光の成分を十分な大きさに増幅することができない。このため、ブリルアン散乱光の成分と雑音との比であるSN比を向上させることができない。
【0026】
ここで、検出信号からプローブ光の成分を除き、ブリルアン散乱光の成分のみを増幅するようにすればブリルアン散乱光の成分を十分な大きさに増幅することが可能である。しかしながら、検出信号からプローブ光の成分を除去する方法によっては、光ファイバの温度や歪みが急激に変化した場合に、その測定結果が直ちに追随しない等の追従性の影響が生ずることが考えられる。
【0027】
本実施形態では、まず、所定の変調周波数で変調されたレーザ光を、連続光及びパルス光として光ファイバの一端及び他端からそれぞれ入射させる。次に、光電変換素子、光電変換素子に接続された電流源、及び光電変換素子と電流源との接続点に接続された増幅回路を有する光検出部によって、光ファイバから射出される光を検出する。次いで、連続光が含まれるがブリルアン散乱光が含まれない光が光ファイバから射出される期間である非含有期間における光検出部の検出結果に基づいて、光検出部に設けられる電流源を制御する。そして、光検出部から出力される検出信号を用いて光ファイバの特性を測定する。これにより、外乱による追従性の影響を抑えつつ、SN比を向上させることができる。
【0028】
〔第1実施形態〕
〈光ファイバ特性測定装置〉
図1は、本発明の第1実施形態による光ファイバ特性測定装置の要部構成を示すブロック図である。図1に示す通り、本実施形態の光ファイバ特性測定装置1は、光源11、光分岐器12(入射部)、光変調器13(入射部)、光ファイバ14、パルス変調器15(入射部)、方向性結合器16(入射部)、光検出部17、測定部18、及び電流源制御部19を備える。このような光ファイバ特性測定装置1は、光ファイバ14の長さ方向における特性(例えば温度分布や歪み分布等)を測定する。
【0029】
光源11は、半導体レーザ11a及び信号発生器11bを備えており、所定の変調周波数fmで変調したレーザ光を射出する。半導体レーザ11aは、例えば、光ファイバ14での吸収が少ない波長(例えば、1.55μm)のレーザ光を射出する。信号発生器11bは、半導体レーザ11aから射出されるレーザ光を変調周波数fmで周波数変調する正弦波信号(変調信号)を半導体レーザ11aに出力する。光分岐器12は、光源11から射出されたレーザ光を、例えば1対1の強度比で2分岐する。
【0030】
光変調器13は、マイクロ波発生器13aとSSB(Single Side Band:単側波帯)光変調器13bとを備える。光変調器13は、光分岐器12で分岐された一方のレーザ光を変調して(光周波数シフトさせて)、レーザ光の中心周波数に対する側波帯(単側波帯)を発生させる。尚、本実施形態では、低周波側の単側帯波が光変調器13から出力されるとする。
【0031】
マイクロ波発生器13aは、光分岐器12で分岐された一方のレーザ光に与える周波数シフト分の周波数を有するマイクロ波を出力する。SSB光変調器13bは、入力光の中心周波数に対してマイクロ波発生器13aから出力されるマイクロ波の周波数に等しい周波数差を有する単側帯波を発生させる。尚、マイクロ波発生器13aから出力されるマイクロ波の周波数は可変である。光変調器13で変調された光は、プローブ光L1(連続光)として光ファイバ14の一端から光ファイバ14内に入射する。
【0032】
パルス変調器15は、信号発生器15aと光強度変調器15bとを備えており、光分岐器12で分岐された他方のレーザ光をパルス化してパルス光を生成する。ここで、パルス変調器15は、少なくとも、パルス光が光ファイバ14の一端と他端との間を往復するのに要する時間の2倍の時間に設定された周期Tでパルス光を生成する。信号発生器15aは、レーザ光をパルス化するタイミングを規定するタイミング信号を出力する。光強度変調器15bは、例えばEO(Electro-Optic:電気光学)スイッチであり、信号発生器15aから出力されるタイミング信号で規定されるタイミングで光分岐器12からのレーザ光をパルス化する。
【0033】
方向性結合器16は、パルス変調器15から出力されるパルス化されたレーザ光をポンプ光L2(パルス光)として光ファイバ14の他端から光ファイバ14内に入射させる。また、方向性結合器16は、光ファイバ14を伝播して光ファイバ14の他端から射出されたプローブ光L1を含む光(検出光L11)を光検出部17に向けて射出する。尚、検出光L11の強度は、光ファイバ14内で生ずる誘導ブリルアン散乱現象による影響を受けたものとなる。光検出部17は、検出光L11を検出(受光)して検出信号D1を出力する。
【0034】
図2は、本発明の第1実施形態による光ファイバ特性測定装置に設けられる光検出部の要部構成を示す回路図である。図2に示す通り、光検出部17は、フォトダイオード21(光電変換素子)、電流源22、及び増幅回路23を備える。
【0035】
フォトダイオード21は、検出光L11を光電変換し、検出光L11に応じた電流を出力する。このフォトダイオード21としては、例えば、アバランシェ・フォト・ダイオード等の高感度の受光素子を用いることができる。フォトダイオード21のカソードは、バイアス端子T11に接続されており、フォトダイオード21のアノードは、電流源22の一端に接続されている。尚、バイアス端子T11は、フォトダイオード21に印加されるバイアス電圧が入力される端子である。
【0036】
電流源22は、制御信号入力端子T13から入力される制御信号C1(詳細は後述する)に応じた電流を出力する。この電流源22は、フォトダイオード21から出力される電流から、検出光L11に含まれるプローブ光L1の成分を除去するために設けられる。電流源22の一端は、フォトダイオード21のアノードに接続され、電流源22の他端は、負電源端子T12に接続されている。
【0037】
増幅回路23は、フォトダイオード21から出力される電流(正確には、フォトダイオード21から出力される電流から、電流源22に流れた電流が差し引かれた電流)を増幅し、増幅した電流を電圧に変換して出力する。増幅回路23は、増幅器23a及び帰還抵抗器23bを備える。増幅器23aの入力端は、フォトダイオード21と電流源22との接続点CPに接続されており、増幅器23aの出力端は、出力端子T14に接続されている。帰還抵抗器23bは、増幅器23aの入力端と出力端との間に接続されており、増幅器23aとともに電流電圧変換回路を構成する。このため、出力端子T14から出力される検出信号D1は、フォトダイオード21から出力される電流から、電流源22に流れた電流が差し引かれた電流に応じた電圧を有するものとなる。
【0038】
測定部18は、光検出部17から出力される検出信号D1を用いて光ファイバ14の長さ方向における特性を測定する。測定部18は、光検出部17から出力される検出信号D1の同期検波を行う同期検波装置20を備える。同期検波装置20は、光検出部17から出力される検出信号D1のうち、光ファイバ14内に設定した測定点(特性を測定しようとする点)及びその近傍で発生した誘導ブリルアン散乱光を含む光を検出して得られた検出信号の切り出しを行う。そして、所定の周期を有する同期信号SY(図3参照)を用いて切り出しを行った検出信号D2を同期検波する。同期検波装置20は、タイミング調整器20a及びロックインアンプ20b(同期検波器)を備える。
【0039】
タイミング調整器20aは、例えばオン状態(検出信号D1を通過させる状態)とオフ状態(検出信号D1を遮断する状態)との切り替えを高速に行うことができる電気スイッチ(高速アナログスイッチ)で実現される。このタイミング調整器20aは、光検出部17から出力される検出信号D1のうち、光ファイバ14内に設定した測定点及びその近傍で発生した誘導ブリルアン散乱光を含む光を検出して得られた検出信号を通過させることによって検出信号の切り出しを行う。尚、タイミング調整器20aの動作周期は、上記同期信号SYの周期の半分の周期に設定される。
【0040】
ロックインアンプ20bは、上述した同期信号SYを用いて、タイミング調整器20aを通過した検出信号D2(タイミング調整器20aで切り出しが行われた検出信号)を同期検波する。ここで、上記の同期信号SYの周期は、ポンプ光L2が光ファイバ14の他端に入射される周期と同じ周期(少なくとも、パルス光が光ファイバ14の一端と他端との間を往復するのに要する時間の2倍の時間)に設定されている。尚、ロックインアンプ20bの構成は、検出信号D2及び同期信号SYを外部に出力可能に構成されている点を除き、前述した特許文献2に開示されたものと同様の構成であるため、詳細な説明は省略する。
【0041】
電流源制御部19は、ロックインアンプ20bから出力される検出信号D2(光検出部の検出結果)及び同期信号SYを用いて、光検出部17の電流源22を制御する制御信号C1を生成する。具体的に、電流源制御部19は、検出信号D2及び同期信号SYを用いて、プローブ光L1が含まれるがブリルアン散乱光が含まれない光が光ファイバ14から射出される期間(図3図4におけるT2:非含有期間)に光検出部17から出力される検出信号D1を抽出する。そして、電流源制御部19は、抽出した検出信号D1を用いて制御信号C1を生成し、生成した制御信号C1を光検出部17に出力する。
【0042】
ここで、検出信号D2及び同期信号SYを用いて抽出される検出信号D1は、プローブ光L1の強度を示すものである。電流源制御部19は、抽出した検出信号D1に基づいて、図2に示すフォトダイオード21から出力される電流から、検出光L11に含まれるプローブ光L1の成分を除去し得る制御信号C1を生成する。このような制御信号C1を生成するのは、プローブ光L1の成分によって図2に示す増幅回路23が飽和するのを防止し、ブリルアン散乱光の成分が十分な大きさに増幅されるようにすることでSN比(ブリルアン散乱光の成分と雑音との比)を向上させるためである。
【0043】
〈光ファイバ特性測定方法〉
測定が開始されると、変調周波数fmで周波数変調されたレーザ光が光源11から射出される(第1ステップ)。光源11から射出されたレーザ光は、光分岐器12で分岐される。光分岐器12で分岐された一方のレーザ光は光変調器13へ入射してSSB光変調器13bで変調されることにより、レーザ光の中心周波数に対する単側波帯が生成される。光変調器13から射出された単側波帯を有するレーザ光(連続光)は、プローブ光L1として光ファイバ14の一端から光ファイバ14内に入射する(第2ステップ)。
【0044】
これに対し、光分岐器12で分岐された他方のレーザ光は、パルス変調器15に入射して光強度変調器15bで強度変調されることによりパルス化される。具体的には、前述した周期T(少なくとも、パルス光が光ファイバ14の一端と他端との間を往復するのに要する時間の2倍の時間に設定された周期)でパルス光が生成される。このパルス光は、方向性結合器16を介してポンプ光L2として光ファイバ14の他端から光ファイバ14内に入射する(第2ステップ)。
【0045】
変調周波数fmで周波数変調された連続光としてのプローブ光L1とパルス光としてのポンプ光L2とが光ファイバ14内に入射すると、ポンプ光L2が光ファイバ14内を伝播するに伴って、光ファイバ14中の異なる位置で相関ピークが順次発生する。各相関ピークの位置において、プローブ光L1は、ポンプ光L2によって誘導ブリルアン増幅による利得(ゲイン)を得る。
【0046】
相関ピークの位置で、ポンプ光L2を基準としてポンプ光L2とプローブ光L1との周波数差を変化させると、ブリルアン周波数シフトνBを中心周波数とするローレンツ関数の形状をしたブリルアン・ゲイン・スペクトル(BGS)と呼ばれるスペクトルが得られる。このブリルアン周波数シフトνBは、光ファイバ14の材質、温度、歪み等に依存して変化し、特に歪みに対して線形的に変化することが知られている。このため、ブリルアン・ゲイン・スペクトルのピーク周波数を検出することで、光ファイバ14の歪み量を求めることができる。
【0047】
光ファイバ14を介したプローブ光L1及び光ファイバ14内で発生した誘導ブリルアン散乱光は、光ファイバ14の他端から射出された後に方向性結合器16を介して検出光L11として光検出部17に入射する。そして、光検出部17において検出光L11が検出され、その検出結果を示す検出信号D1が光検出部17から出力される(第3ステップ)。光検出部17から出力された検出信号D1は、測定部18に入力されて同期検波装置20で同期検波される。
【0048】
図3は、本発明の第1実施形態において、同期検波装置で行われる処理を説明するための図である。尚、以下では説明を簡単にするため、ポンプ光L2が光ファイバ14の他端に入射される周期T(同期信号SYの周期)は、ポンプ光L2が光ファイバ14の一端と他端との間を往復するのに要する時間の2倍の時間に設定されているものとする。
【0049】
同期信号SYの1周期Tの前半部分T1においては、光ファイバ14を介したプローブ光L1と光ファイバ14内で発生した誘導ブリルアン散乱光とが含まれる検出光L11が光検出部17に入射する。このため、図3に示す通り、光検出部17からは誘導ブリルアン散乱光の影響を受けた検出信号D1が出力される。尚、図3においては、誘導ブリルアン散乱光の影響を受けた部分(例えば、符号P1~P4で指し示した部分)を黒帯で表現している。
【0050】
これに対し、同期信号SYの1周期Tの後半部分T2(非含有期間)においては、光ファイバ14を介したプローブ光L1は含まれるが誘導ブリルアン散乱光が含まれない検出光L11が光検出部17に入射する。このため、図3に示す通り、光検出部17からは誘導ブリルアン散乱光の影響を受けていない(黒帯が付されていない)検出信号D1が出力される。尚、ポンプ光L2は、周期Tで繰り返し入射されるため、誘導ブリルアン散乱光の影響を受けた検出信号D1と受けていない検出信号D2とがT/2毎に交互に出力される。
【0051】
ここで、図3に示す通り、タイミング調整器20aは、その動作周期がT/2に設定されており、各々の周期において、光ファイバ14内に設定した測定点及びその近傍で発生した誘導ブリルアン散乱光を含む光を検出して得られた検出信号を通過させる動作を行う。図3に示す例では、タイミング調整器20aは、光検出部17から出力される検出信号D1のうち、符号P1で指し示した部分を通過させるようにオン状態・オフ状態が切り替えられる。これにより、ロックインアンプ20bには、タイミング調整器20aによって切り出しが行われた図3に示す検出信号D2が入力される。
【0052】
この検出信号D2がロックインアンプ20bに入力されると、まず、同期信号SYを用いて検出信号D2の極性を交互に反転させる処理が行われる。具体的に、同期信号SYの1周期Tの前半部分T1では極性を反転せず、同期信号SYの1周期Tの後半部分T2で極性を反転させる処理が行われる。このような処理が行われることで、検出信号D2のうちの誘導ブリルアン散乱光の影響を受けていない部分の極性が反転された信号S1が得られる。
【0053】
次に、信号S1に対するローパスフィルタ処理が行われる。このローパスフィルタ処理が行われると、前半部分T1においてプローブ光L1のみを検出して得られた検出信号に相当する信号d11と、後半部分T2においてプローブ光L1のみを検出して得られた検出信号に相当する信号d12とが相殺される。これにより、ロックインアンプ20bから出力される測定値V1は、図3に示す通り、誘導ブリルアン散乱光のレベルを示すものとなる。タイミング調整器20aの切り出しタイミングを変更することによって光ファイバ14内に設定する測定点の位置を変えつつ、以上説明した動作が繰り返される。これにより、光ファイバ14の長さ方向における特性が測定される(第4ステップ)。
【0054】
図4は、本発明の第1実施形態において、電流源制御部で行われる処理を説明するための図である。まず、電流源制御部19は、ロックインアンプ20bから出力される同期信号SYを反転させた反転同期信号SY ̄を生成し、生成した反転同期信号SY ̄を用いて、検出信号D2から信号S2を抽出する。尚、本明細書では、表記の都合上、記号「SY」の上部に記号「 ̄」付されたものを記号「SY ̄」で表す。
【0055】
次に、電流源制御部19は、抽出した信号S2を同期信号SYの1周期Tに亘って平滑化し、適宜増幅して制御信号C1を生成する。そして、電流源制御部19は、生成した制御信号C1を光検出部17に出力して、電流源22から出力される電流を制御する(第5ステップ)。尚、電流源制御部19は、同期信号SYの1周期T毎に制御信号C1を生成する。
【0056】
ここで、電流源制御部19で抽出された信号S2は、後半部分T2においてプローブ光L1のみを検出して得られた検出信号に相当する信号d13である。このため、信号d13に応じた制御信号C1を生成して電流源22を制御することで、フォトダイオード21から出力される電流のうち、検出光L11に含まれるプローブ光L1に由来する電流を電流源22に流す(吸収する)ことができる。これにより、増幅回路23がプローブ光L1の成分によって飽和することがなく、ブリルアン散乱光の成分が十分な大きさに増幅される。
【0057】
以上説明した通り、本実施形態では、プローブ光L1が含まれるがブリルアン散乱光が含まれない光が光ファイバ14から射出される期間(同期信号SYの1周期Tの後半部分T2)における光検出部17の検出結果に基づいて電流源22を制御するようにしている。これにより、増幅回路23がプローブ光L1の成分によって飽和することがなく、ブリルアン散乱光の成分が十分な大きさに増幅されるため、SN比(ブリルアン散乱光の成分と雑音との比)を向上させることができる。
【0058】
また、本実施形態では、制御信号C1を生成するために要する時間幅が最大でも同期信号SYの1周期である。このため、例えば、光ファイバ14に曲げ等の外乱が加わって損失が急激に変化したような場合であっても、測定結果が直ちに追随しない等の追従性の影響を抑えることができる。
【0059】
〔第2実施形態〕
図5は、本発明の第2実施形態による光ファイバ特性測定装置の要部構成を示すブロック図である。尚、図5においては、図1に示す構成と同様の構成については同一の符号を付してある。本実施形態の光ファイバ特性測定装置2は、図1に示す光ファイバ特性測定装置1とは、基本構成において同様であるが、光検出部17から出力される検出信号D1(光検出部の検出結果)を用いて制御信号C1が生成する点が異なる。
【0060】
図5に示す通り、電流源制御部19には、光検出部17から出力される検出信号D1と、ロックインアンプ20bから出力される同期信号SYとが入力される。電流源制御部19は、これら検出信号D1と同期信号SYとを用いて制御信号C1を生成する。
【0061】
図6は、本発明の第2実施形態において、電流源制御部で行われる処理を説明するための図である。第1実施形態と同様に、電流源制御部19は、ロックインアンプ20bから出力される同期信号SYを反転させた反転同期信号SY ̄を生成し、生成した反転同期信号SY ̄を用いて、検出信号D1から信号S2を抽出する。そして、電流源制御部19は、抽出した信号S2を同期信号SYの1周期Tに亘って平滑化し、適宜増幅して制御信号C1を生成する。
【0062】
ここで、電流源制御部19で抽出された信号S2は、後半部分T2の全て(T/2)においてプローブ光L1のみを検出して得られた検出信号に相当する信号d14である。このため、信号d14に応じた制御信号C1を生成して電流源22を制御することで、フォトダイオード21から出力される電流のうち、検出光L11に含まれるプローブ光L1に由来する電流を電流源22に流す(吸収する)ことができる。これにより、増幅回路23がプローブ光L1の成分によって飽和することがなく、ブリルアン散乱光の成分が十分な大きさに増幅される。
【0063】
尚、本実施形態の光ファイバ特性測定装置2は、図1に示す光ファイバ特性測定装置1とは、制御信号C1の生成の仕方が異なるのみであり、光ファイバ特性測定装置2の基本的な動作は光ファイバ特性測定装置1と同様である。このため、光ファイバ特性測定装置2の動作の詳細は省略する。
【0064】
以上説明した通り、本実施形態においても、プローブ光L1が含まれるがブリルアン散乱光が含まれない光が光ファイバ14から射出される期間(同期信号SYの1周期Tの後半部分T2)における光検出部17の検出結果に基づいて電流源22を制御するようにしている。これにより、増幅回路23がプローブ光L1の成分によって飽和することがなく、ブリルアン散乱光の成分が十分な大きさに増幅されるため、SN比(ブリルアン散乱光の成分と雑音との比)を向上させることができる。
【0065】
また、本実施形態においても、制御信号C1を生成するために要する時間幅が最大でも同期信号SYの1周期である。このため、例えば、光ファイバ14に曲げ等の外乱が加わって損失が急激に変化したような場合であっても、測定結果が直ちに追随しない等の追従性の影響を抑えることができる。
【0066】
〔第3実施形態〕
図7は、本発明の第3実施形態による光ファイバ特性測定装置の要部構成を示すブロック図である。尚、図7においては、図1,5に示す構成と同様の構成については同一の符号を付してある。本実施形態の光ファイバ特性測定装置3は、図1,5に示す光ファイバ特性測定装置1,2の光検出部17を光検出部17Aに替え、光検出部17Aから出力される電流検出信号D11(光検出部の検出結果)を用いて制御信号C1を生成するようにしたものである。
【0067】
図8は、本発明の第3実施形態による光ファイバ特性測定装置に設けられる光検出部の要部構成を示す回路図である。尚、図8においては、図2に示す構成と同様の構成については同一の符号を付してある。図8に示す通り、光検出部17Aは、フォトダイオード21、電流源22、及び増幅回路23に加えて、電流検出器24を備える。
【0068】
電流検出器24は、フォトダイオード21とバイアス端子T11との間に設けられており、フォトダイオード21から出力される電流を検出する。尚、電流検出器24は、フォトダイオード21と接続点CPとの間に設けられていてもよい。電流検出器24の検出結果は、電流検出信号出力端子T15から電流検出信号D11として出力される。
【0069】
図7に示す通り、電流源制御部19には、光検出部17Aから出力される電流検出信号D11と、ロックインアンプ20bから出力される同期信号SYとが入力される。電流源制御部19は、これら電流検出信号D11と同期信号SYとを用いて制御信号C1を生成する。尚、制御信号C1を生成するために電流源制御部19で行われる処理は、第1,第2実施形態において電流源制御部19で行われる処理と同様である。
【0070】
つまり、電流源制御部19では、まず、ロックインアンプ20bから出力される同期信号SYを反転させた反転同期信号SY ̄を生成し、生成した反転同期信号SY ̄を用いて、電流検出信号D11から信号S2に相当する信号を抽出する処理が行われる。次に、抽出した信号を同期信号SYの1周期Tに亘って平滑化し、適宜増幅して制御信号C1を生成する処理が行われる。
【0071】
尚、本実施形態の光ファイバ特性測定装置3は、図1,5に示す光ファイバ特性測定装置1,2とは、制御信号C1の生成の仕方が異なるのみであり、光ファイバ特性測定装置3の基本的な動作は光ファイバ特性測定装置1,2と同様である。このため、光ファイバ特性測定装置3の動作の詳細は省略する。
【0072】
以上説明した通り、本実施形態においても、プローブ光L1が含まれるがブリルアン散乱光が含まれない光が光ファイバ14から射出される期間(同期信号SYの1周期Tの後半部分T2)における光検出部17の検出結果に基づいて電流源22を制御するようにしている。これにより、増幅回路23がプローブ光L1の成分によって飽和することがなく、ブリルアン散乱光の成分が十分な大きさに増幅されるため、SN比(ブリルアン散乱光の成分と雑音との比)を向上させることができる。
【0073】
また、本実施形態においても、制御信号C1を生成するために要する時間幅が最大でも同期信号SYの1周期である。このため、例えば、光ファイバ14に曲げ等の外乱が加わって損失が急激に変化したような場合であっても、測定結果が直ちに追随しない等の追従性の影響を抑えることができる。
【0074】
以上、本発明の実施形態による光ファイバ特性測定装置及び光ファイバ特性測定方法について説明したが、本発明は上記実施形態に制限されることなく、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、上述した第1~第3実施形態では、電流源制御部19が、抽出した信号S2を同期信号SYの1周期Tに亘って平滑化し、適宜増幅して制御信号C1を生成する例について説明した。しかしながら、電流源制御部19は、抽出した信号S2(信号d13,d14)又は信号S2に相当する信号レベルを、サンプリングして同期信号SYの1周期Tに亘ってホールドし、そのレベルに基づいて制御信号C1を制御してもよい。また、制御信号C1を生成するために要する時間幅を同期信号SYの一周期の範囲内に限らずに、それ以前の制御信号C1の値を必要に応じて重みづけするなどして利用しても良い。
【符号の説明】
【0075】
1~3 光ファイバ特性測定装置
11 光源
12 光分岐器
13 光変調器
14 光ファイバ
15 パルス変調器
16 方向性結合器
17,17A 光検出部
18 測定部
19 電流源制御部
20 同期検波装置
21 フォトダイオード
22 電流源
23 増幅回路
24 電流検出器
CP 接続点
D1,D2 検出信号
D11 電流検出信号
L1 プローブ光
L2 ポンプ光
SY 同期信号
T 周期
T2 後半部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8