(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057649
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】ガスメータ及び設定移植方法
(51)【国際特許分類】
G01F 3/22 20060101AFI20240418BHJP
【FI】
G01F3/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164427
(22)【出願日】2022-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】永田 晃太
【テーマコード(参考)】
2F030
【Fターム(参考)】
2F030CC13
2F030CE09
(57)【要約】
【課題】移植作業の適切化を図ることができるガスメータ及び設定移植方法を提供する。
【解決手段】新ガスメータ100は、ガス流量を計測すると共に計測したガス流量を積算表示可能なものであって、製造会社及びメータ種別の少なくとも一方を含むメータ情報を、交換対象となる旧ガスメータから受信する通信制御部122と、通信制御部122により受信されたメータ情報と、自己のメータ情報とを対比させる対比部124と、対比部124により対比された結果に基づいて、自己に反映させることを禁止する設定情報に関するマスク設定を行うマスク設定部125と、旧ガスメータより受信し、且つ、マスク設定部125によりマスクされていない設定情報に基づいて、自己の設定を行う自己設定部123とを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス流量を計測すると共に計測したガス流量を積算表示可能なガスメータであって、
製造会社及びメータ種別の少なくとも一方を含むメータ情報を、交換対象となる他のガスメータから受信する受信手段と、
前記受信手段により受信された前記メータ情報と、自己の前記メータ情報とを対比させる対比手段と、
前記対比手段により対比された結果に基づいて、自己に反映させることを禁止する設定情報に関するマスク設定を行うマスク設定手段と、
前記他のガスメータより受信し、且つ、前記マスク設定手段によりマスクされていない設定情報に基づいて、自己の設定を行う自己設定手段と、
を備えることを特徴とするガスメータ。
【請求項2】
前記マスク設定手段は、前記他のガスメータより受信した設定情報を自己に反映させないための反映マスクの設定を行い、
前記自己設定手段は、前記他のガスメータより受信した設定情報のうち反映マスクの設定がされていない設定情報を自己の設定として反映させる
ことを特徴とする請求項1に記載のガスメータ。
【請求項3】
前記マスク設定手段は、更に、前記他のガスメータに対して特定の設定情報の要求を非実行とする送信マスクの設定を行う
ことを特徴とする請求項2に記載のガスメータ。
【請求項4】
ガス流量を計測すると共に計測したガス流量を積算表示可能なガスメータの設定移植方法であって、
製造会社及びメータ種別の少なくとも一方を含むメータ情報を、交換対象となる他のガスメータから受信する受信工程と、
前記受信工程において受信された前記メータ情報と、自己の前記メータ情報とを対比させる対比工程と、
前記対比工程において対比された結果に基づいて、自己に反映させることを禁止する設定情報に関するマスク設定を行うマスク設定工程と、
前記他のガスメータより受信し、且つ、前記マスク設定工程においてマスクされていない設定情報に基づいて、自己の設定を行う自己設定工程と、
を備えることを特徴とする設定移植方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスメータ及び設定移植方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、古いガスメータを新しいガスメータに交換するにあたり、旧ガスメータの設定情報(例えばLP容器のガス残量や遮断条件の情報)を新ガスメータに引き継ぐ移植作業を行うシステムが提案されている(例えば特許文献1参照)。このシステムによれば、新旧ガスメータを通信線で接続し、新ガスメータに対して所定の操作(例えば弁開スイッチの操作)を行うことで、まず新ガスメータから通信線を介して旧ガスメータに電文を送信し、その後通信電文の送受信を繰り返し、旧ガスメータの設定情報を新ガスメータに移植する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載のシステムにおいて、新旧ガスメータの製造会社(製造メーカ)が異なる場合やメータ種別が異なる場合等には、新ガスメータは旧ガスメータの設定をそのまま引き継げなかったり、無理やり引き継いで適切な設定とならなかったりすることがある。
【0005】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、移植作業の適切化を図ることができるガスメータ及び設定移植方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るガスメータは、ガス流量を計測すると共に計測したガス流量を積算表示可能なガスメータであって、製造会社及びメータ種別の少なくとも一方を含むメータ情報を、交換対象となる他のガスメータから受信する受信手段と、前記受信手段により受信された前記メータ情報と、自己の前記メータ情報とを対比させる対比手段と、前記対比手段により対比された結果に基づいて、自己に反映させることを禁止する設定情報に関するマスク設定を行うマスク設定手段と、前記他のガスメータより受信し、且つ、前記マスク設定手段によりマスクされていない設定情報に基づいて、自己の設定を行う自己設定手段と、を備える。
【0007】
本発明に係る設定移植方法は、ガス流量を計測すると共に計測したガス流量を積算表示可能なガスメータの設定移植方法であって、製造会社及びメータ種別の少なくとも一方を含むメータ情報を、交換対象となる他のガスメータから受信する受信工程と、前記受信工程において受信された前記メータ情報と、自己の前記メータ情報とを対比させる対比工程と、前記対比工程において対比された結果に基づいて、自己に反映させることを禁止する設定情報に関するマスク設定を行うマスク設定工程と、前記他のガスメータより受信し、且つ、前記マスク設定工程においてマスクされていない設定情報に基づいて、自己の設定を行う自己設定工程と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、移植作業の適切化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る設定移植システムを示す外観図である。
【
図2】
図1に示した新ガスメータ及び旧ガスメータの一部を示す正面図である。
【
図3】
図1に示した新ガスメータの制御ブロック図である。
【
図4】
図1に示した旧ガスメータの制御ブロック図である。
【
図5】
図2に示した第2記憶部の記憶内容の一例を示す概念図である。
【
図6】第1実施形態に係る新ガスメータの処理を示すフローチャートであって、前半部分を示している。
【
図7】第1実施形態に係る新ガスメータの処理を示すフローチャートであって、後半部分を示している。
【
図8】
図6に示した対比・マスク選択処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図9】第2実施形態に係る新ガスメータの記憶内容の一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾点が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用されていることはいうまでもない。
【0011】
図1は、本発明の第1実施形態に係る設定移植システムを示す外観図である。
図1に示すように、設定移植システム1は、新規に設置される新ガスメータ(ガスメータ)100と、交換対象となる旧ガスメータ(他のガスメータ)200とを備え、旧ガスメータ200の設定情報を新ガスメータ100に移植するものである。移植にあたり、新ガスメータ100と旧ガスメータ200とは通信線Lによって接続され、旧ガスメータ200の設定情報は通信線Lを介して新ガスメータ100に送信され、新ガスメータ100において記憶される。
【0012】
図2は、
図1に示した新ガスメータ100及び旧ガスメータ200の一部を示す正面図である。
図1に示す新ガスメータ100及び旧ガスメータ200は、前面下方にカバーCを備えている。新旧ガスメータ100,200は、カバーCを取り外すことにより、
図2に示す端子台Tが露出する。
【0013】
図2に示す端子台Tにおいて、第1端子T1は、フレームグラウンド端子であり、第2端子T2及び第3端子T3は、Nラインによる通信(第1の通信プロトコルによる通信)を行うための端子であって、Nライン通信を行うための通信接続部となるものである。第4端子T4は、グラウンド端子である。第5端子T5及び第6端子T6は、建物内に設けられるガス漏れ警報器との接続端子である。第7端子T7及び第8端子T8は、第2のガス漏れ警報器、CO警報器、及び自動切替調整器等との接続端子である。第9端子T9及び第10端子T10は、Uバスによる通信(第2の通信プロトコルによる通信)を行うための端子であって、Uバス通信を行うための通信接続部となるものである。Uバス通信はNライン通信(さらには後述のHライン通信)よりも高速且つ大容量のデータを伝送可能となっている。
【0014】
ここで、設定情報の移植作業を行う作業者は、新ガスメータ100と旧ガスメータ200との第9端子T9及び第10端子T10同士を通信線Lにより接続する。又は、作業者は、新ガスメータ100と旧ガスメータ200との第2端子T2及び第3端子T3同士を通信線Lにより接続する。そして、作業者は、所定の入力(操作又は信号送信等)を行い、Uバス通信又はNライン通信により、旧ガスメータ200の設定情報を新ガスメータ100に移植することとなる。
【0015】
なお、新旧ガスメータ100,200は、Uバス通信及びNライン通信のほか、Hライン通信により移植を行ってもよい。また、上記では、通信線Lを接続のうえ、移植作業を行う例を説明したが、特に通信線Lを接続する場合に限らず、無線接続によって移植作業が行われてもよい。
【0016】
図3は、
図1に示した新ガスメータ100の制御ブロック図である。
図3に示すように、新ガスメータ100は、流量計測部110と、制御部120と、表示部130と、通信接続部140と、操作部150と、記憶部160とを備えている。
【0017】
流量計測部110は、新ガスメータ100内に形成された流路(図示せず)を流れる燃料ガスの流量を計測するものであって、流量センサ(図示せず)及び演算部(図示せず)等によって構成されている。流量計測部110によって計測された流量の情報は制御部120に送信される。制御部120は、新ガスメータ100の全体を制御するものであって、表示制御部121と、通信制御部(受信手段)122とを備えている。
【0018】
表示制御部121は、表示部130の表示内容を制御するものである。表示部130は、例えば流量計測部110によって計測された流量の積算表示を行うものである。この表示部130は、
図1に示すように、新ガスメータ100の正面側から視認可能に設けられている。
【0019】
通信制御部122は、旧ガスメータ200(
図1参照)との通信を制御するものであって、旧ガスメータ200に対して電文を送信したり旧ガスメータ200からの電文を受信して処理したりするものである。特に、第1実施形態において通信制御部122は、通信接続部140に接続される通信線L(
図1参照)を通じて旧ガスメータ200と情報の送受信を行う。なお、通信接続部140は、Nライン通信やUバス通信を行うための接続部であって、
図2に示した第2端子T2及び第3端子T3、並びに、第9端子T9及び第10端子T10が該当する。
【0020】
操作部150は、新ガスメータ100に対して操作を行うためのものであって、例えば
図1に示す復帰ボタン151と容器リセットスイッチ152とが該当する。復帰ボタン151は、押下操作を行うことで流路を遮断した遮断弁(図示せず)を開放状態に移行させるものである。容器リセットスイッチ152は、LPガス容器(図示せず)の交換時等において磁石を近接させることでガスの残容量をリセットさせるものである。新ガスメータ100は、復帰ボタン151及び容器リセットスイッチ152が操作されることで、口火登録等の各種設定を行うこともできる。
【0021】
また、制御部120は自己設定部(自己設定手段)123を備えている。自己設定部123は、所定の入力を受け付けた場合に通信制御部122を通じて旧ガスメータ200の設定情報を取得して記憶部160に記憶することにより自己に設定を反映させるものである。
【0022】
第1実施形態において所定の入力は、例えば復帰ボタン151を押しながら容器リセットスイッチ152をオンする操作であるが、特にこれに限らず、他の操作であってもよい。特に操作は、新ガスメータ100に対して行われる操作に限らず、新ガスメータ100に接続される端末等への操作であってもよい。さらには、操作に限らず、ガス管理センター等から送信される特定信号の入力であってもよい。
【0023】
記憶部160は、新ガスメータ100を制御するための制御プログラムや、送信する電文内容の情報、及び、旧ガスメータ200から受信して自己に設定する設定情報等を記憶したものである。
【0024】
図4は、
図1に示した旧ガスメータ200の制御ブロック図である。
図4に示すように、旧ガスメータ200は、流量計測部210と、制御部220と、表示部230と、通信接続部240と、操作部250と、記憶部260とを備えている。
【0025】
流量計測部210は、旧ガスメータ200に形成された流路(図示せず)を流れる燃料ガスの流量を計測するものであって、流量センサ(図示せず)及び演算部(図示せず)等によって構成されている。流量計測部210によって計測された流量の情報は制御部220に送信される。制御部220は、旧ガスメータ200の全体を制御するものであって、表示制御部221と、通信制御部222とを備えている。
【0026】
表示制御部221は、表示部230の表示内容を制御するものである。表示部230は、例えば流量計測部210によって計測された流量の積算表示等を行うものである。この表示部230は、
図1に示すように、旧ガスメータ200の正面側から視認可能に設けられている。
【0027】
通信制御部222は、新ガスメータ100(
図1参照)との通信を制御するものであって、新ガスメータ100に対して電文を送信したり新ガスメータ100からの電文を受信して処理したりするものである。特に、第1実施形態において通信制御部222は、通信接続部240に接続される通信線L(
図1参照)を通じて新ガスメータ100と情報の送受信を行う。なお、通信接続部240は、Nライン通信やUバス通信を行うための接続部であって、
図2に示した第2端子T2及び第3端子T3、並びに、第9端子T9及び第10端子T10が該当する。
【0028】
操作部250は、旧ガスメータ200に対して操作を行うためのものであって、例えば
図1に示す復帰ボタン251と容器リセットスイッチ252とが該当する。復帰ボタン251及び容器リセットスイッチ252は、新ガスメータ100のものと同様である。記憶部260は、旧ガスメータ200を制御するための制御プログラム等のほか、設定情報及び後述のメータ情報を記憶したものである。
【0029】
再度、
図3を参照する。第1実施形態において記憶部160は、第1記憶部161と、第2記憶部162とを備えている。第1記憶部161は、新ガスメータ100のメータ情報を記憶したものである。メータ情報は、ガスメータ100の製造会社(製造メーカ)及びメータ種別の少なくとも一方を含むものである。第1実施形態においてメータ情報は、製造メーカの情報、及び、メータ種別の情報の双方により構成されているが、これに限らず、ソフトバージョン等の他の情報を含んでいてもよい。ここで、メータ種別とは、規格に基づくメータ種類と、ガスメータ100の使用最大流量とから定まるものである。規格に基づくメータ種類とは、例えば、膜式の家庭用マイコンメータ(S)、膜式の業務用マイコンメータ(SB)、超音波式の家庭用マイコンメータ(E)、超音波式の業務用マイコンメータ(EB)、膜式の4号家庭用マイコンメータ(S4)、及び、超音波式の4号家庭用マイコンメータ(E4)の6種類に分類されるものである。使用最大流量とは、所定機関に対して型式承認手続きを行う際に申告した最大の流量であって、2.5m
3/h,4m
3/h,6m
3/h,10m
3/h,16m
3/h,25m
3/hの6種類に分類されるものである。このように、メータ種別とは、規格に基づくメータ種類と、ガスメータ100の使用最大流量とから決定されるものであり、第1記憶部161は、このメータ種別を含むメータ情報を記憶している。
【0030】
なお、上記において規格に基づくメータ種類及び使用最大流量が共に6種類であることを説明したが、この種類数は出願時点のものであり、後に規格が変更されたり、申告時最大流量が6種類に限られなくなったりした場合には、6種類に限られなくなることは言うまでもない。
【0031】
第2記憶部162は、マスク設定に関する情報を記憶したものである。第1実施形態に係る新ガスメータ100は、旧ガスメータ200の設定情報の全てを無条件で自己に反映させるわけではなく必要に応じてマスク設定を行って設定情報の一部等を反映させないものとする。すなわち、第2記憶部162は、このような反映をさせないための情報を記憶していることとなる。
【0032】
さらに、第1実施形態において制御部120は、対比部(対比手段)124、及びマスク設定部(マスク設定手段)125を備えている。第1実施形態に係る新ガスメータ100は、これら各部124,125と、記憶部160の記載内容とに基づいて、新旧ガスメータ100,200の製造メーカ等が異なる場合であっても、適切に設定情報の移植を行うこととなる。以下、詳細に説明する。
【0033】
対比部124は、旧ガスメータ200から受信したメータ情報と、第1記憶部161に記憶される自己のメータ情報とを対比させるものである。旧ガスメータ200からのメータ情報は、移植通信の開始時、新ガスメータ100の要求に応じて旧ガスメータ200から送信される。この対比部124は、メータ情報同士を対比させることで、新旧ガスメータ100,200の製造メーカが異なることやメータ種別が異なること等を判断する。
【0034】
マスク設定部125は、対比部124により対比された結果に基づいて、自己に反映させることを禁止する設定情報のマスク設定を行うものである。このマスク設定部125は、第2記憶部162に記憶されるマスクデータに基づいてマスク設定を行う。マスク設定部125は、製造メーカが一致するか、メータ種別が一致するか等に基づいて、第2記憶部162に記憶される複数種のマスクデータのうち1つを選択し、選択したマスクデータに基づいてマスク設定を実行する。
【0035】
図5は、
図2に示した第2記憶部162の記憶内容の一例を示す概念図である。第2記憶部162は、設定情報(
図5において「要求内容」)と、番号情報(
図5において「No」)と、送信マスクの情報と、反映マスクの情報とを対応付けて記憶している。例えば、第2記憶部162は、番号情報「1」と、「容器のガス残量値」という設定情報と、送信マスクの情報と、反映マスクの情報とを対応付けて記憶している。同様に、第2記憶部162は、番号情報「3」と、「共通制御コードK0」、「共通制御コードK7」及び「共通制御コードK9」という複数の設定情報と、送信マスクの情報と、反映マスクの情報とを対応付けて記憶している。
【0036】
この第2記憶部162は、送信マスクについて、1類~6類の6種の情報(複数種のマスクデータに相当)を記憶している。1類~6類のそれぞれは、番号情報ごとに、「〇」「×」の情報を有している。「〇」は、旧ガスメータ200に対して設定情報の送信を要求することを示し、「×」は、旧ガスメータ200に対して設定情報の送信を要求しないことを示している。
【0037】
さらに、第2記憶部162は、反映マスクについて、1類~6類の6種の情報(複数種のマスクデータに相当)を記憶している。1類~6類のそれぞれは、番号情報ごとに、「〇」「×」の情報を有している。「〇」は、旧ガスメータ200から受信した設定情報を自己に反映させることを示し、「×」は、旧ガスメータ200から受信した設定情報を自己に反映させないことを示している。なお、「-」は、そもそも設定情報の受信が行われないことを示している。
【0038】
このような複数種のマスクデータが記憶されているため、
図3に示すマスク設定部125は、製造メーカが一致するか、メータ種別が一致するか等の対比部124による対比結果に基づいて、1類~6類のいずれか1つを選択してマスク設定を行う。
【0039】
一例を挙げて説明する。例えばマスク設定部125が新旧ガスメータ100,200のメータ情報の対比結果に基づいて第5類を選択したとする。マスク設定部125は、選択した第5類に基づいて、送信マスク設定と反映マスク設定との双方の設定を行う。
【0040】
送信マスクについて説明する。まず、第5類が選択されている場合、マスク設定部125は、番号情報「4」の設定情報について要求電文を送信しない旨のマスク設定を行う。これにより、通信制御部122は、番号情報「1」~「3」の設定情報について要求電文を送信するが、番号情報「4」の設定情報(特定の設定情報)について要求電文を送信しない(要求を非実行とする)こととなる。
【0041】
また、反映マスクについて説明する。第5類が選択されている場合、マスク設定部125は、要求電文を送信して受信した番号情報「3」の設定情報のうち「共通制御コードK7」及び「共通制御コードK9」について自己の設定に反映させない旨のマスク設定を行う。これにより、自己設定部123は、受信した番号情報「1」「2」の設定情報、及び、番号情報「3」の設定情報のうち「共通制御コードK0」について自己の設定に反映させる。一方、自己設定部123は、番号情報「3」の設定情報のうち「共通制御コードK7」及び「共通制御コードK9」について自己の設定に反映させないこととなる。
【0042】
このように、第1実施形態に係る新ガスメータ100は、新旧ガスメータ100,200のメータ情報を対比してマスク設定することで、製造メーカの相違やメータ種別の相違等に応じて適切に設定情報の移植を行うこととなる。
【0043】
次に、第1実施形態に係る新ガスメータ100の設定移植方法について説明する。
図6及び
図7は、第1実施形態に係る新ガスメータ100の処理を示すフローチャートである。
図6に示すように、まず、新ガスメータ100の自己設定部123は、所定の操作があったかを判断する(S1)。所定の操作がなかった場合(S1:NO)、所定の操作があるまで、この処理が繰り返される。
【0044】
一方、所定の操作があった場合(S1:YES)、自己設定部123は、旧ガスメータ200から設定情報を取得すべく旧ガスメータ200と通信線Lで接続されているかを判断する(S2)。この処理において新ガスメータ100の自己設定部123は、通信制御部122を制御して通信を行う旨の電文を送信する。自己設定部123は、この電文に対して旧ガスメータ200から電文が返信されたか否かに応じて、旧ガスメータ200と通信線Lで接続されているかを判断する。
【0045】
新ガスメータ100が旧ガスメータ200と通信線Lで接続されていない場合(S2:NO)、自己設定部123は、表示制御部121を制御して、表示部130に通信が失敗した旨(移植作業が失敗した旨)を表示させる(S3)。その後、
図6及び
図7に示す処理は終了する。
【0046】
一方、新ガスメータ100が旧ガスメータ200と通信線Lで接続されている場合(S2:YES)、自己設定部123は、表示制御部121を制御して、表示部130に通信中である旨を表示させる(S4)。次に、自己設定部123は、通信制御部122を制御して、旧ガスメータ200に対してメータ情報を要求する電文を送信する(S5)。
【0047】
その後、対比・マスク選択処理が実行される(S6)。
図8は、
図6に示した対比・マスク選択処理(S6)の詳細を示すフローチャートである。
図8に示すように、自己設定部123は、まず旧ガスメータ200に要求したメータ情報が受信されたかを判断する(S21)。メータ情報が受信されなかった場合(S21:NO)、マスク設定部125は、複数のマスクデータのうち6類を選択する(S22)。その後、
図8に示す処理は終了し、処理は
図6のステップS7に移行する。
【0048】
メータ情報が受信された場合(S21:YES)、対比部124は、受信した旧ガスメータ200のメータ情報と、自己のメータ情報とを対比させて、ステップS23,S24,S26,S27,S30の判断を実行する。すなわち、対比部124は、まずメーカコードが同じであるかを判断する(S23)。メーカコードが同じである場合(S23:YES)、対比部124は、メータ種別が同じであるかを判断する(S24)。
【0049】
メータ種別が同じでない場合(S24:NO)、マスク設定部125は、複数のマスクデータのうち3類を選択する(S25)。その後、
図8に示す処理は終了し、処理は
図6のステップS7に移行する。
【0050】
メータ種別が同じである場合(S24:YES)、対比部124は、ソフトバージョンの要求電文を送信し(S26)、ソフトバージョンが同じであるかを判断する(S27)。ソフトバージョンが同じである場合(S27:YES)、マスク設定部125は、複数のマスクデータのうち1類を選択する(S28)。その後、
図8に示す処理は終了し、処理は
図6のステップS7に移行する。
【0051】
一方、ソフトバージョンが同じでない場合(S27:NO)、マスク設定部125は、複数のマスクデータのうち2類を選択する(S29)。その後、
図8に示す処理は終了し、処理は
図6のステップS7に移行する。
【0052】
ところで、ステップS23においてメーカコードが同じでない場合(S23:NO)、対比部124は、メータ種別が同じであるかを判断する(S30)。メータ種別が同じである場合(S30:YES)、マスク設定部125は、複数のマスクデータのうち4類を選択する(S31)。その後、
図8に示す処理は終了し、処理は
図6のステップS7に移行する。
【0053】
一方、メータ種別が同じでない場合(S30:NO)、マスク設定部125は、複数のマスクデータのうち5類を選択する(S32)。その後、
図8に示す処理は終了し、処理は
図6のステップS7に移行する。
【0054】
再度
図6を参照する。
図6のステップS7においてマスク設定部125は、
図8の処理において選択したマスクデータに基づき送信マスクを行う(S7)。例えばマスク設定部125は、6類のマスクデータが選択されている場合、番号情報「1」~「4」の設定情報うち番号情報「3」「4」の設定情報に対して送信マスクを行うこととなる。
【0055】
その後、制御部120は、変数nを初期化する(S8)。次に、自己設定部123は、番号情報「n」の設定情報に対して送信マスクがされているかを判断する(S9)。送信マスクがされている場合(S9:YES)、制御部120は、変数nをインクリメントし(S10)、処理はステップS9に移行する。
【0056】
番号情報「n」の設定情報に対して送信マスクがされていない場合(S9:NO)、自己設定部123は、通信制御部122を制御して、番号情報「n」の設定情報を要求する電文を送信する(S11)。特に、第1実施形態に係る新ガスメータ100は、
図5に示すように、番号情報「3」及び「4」について複数の設定情報が対応して記憶されている。このため、番号情報「3」及び「4」については複数の設定情報を一括して送信するよう要求することとなる。複数の設定情報を一括して要求する場合、新旧ガスメータ100,200は、Uバス通信を行うことが好ましい。Uバス通信であれば、大容量且つ高速の通信が可能であるためである。
【0057】
要求電文の送信後(S11の後)、自己設定部123は、番号情報「n」の要求電文に応じた設定情報を受信したかを判断する(S12)。設定情報が受信されない場合(S12:NO)、設定情報が受信されるまで、この処理が繰り返される。
【0058】
一方、設定情報が受信された場合(S12:YES)、マスク設定部125は、受信した設定情報に対して反映マスクを実行し、自己設定部123は、反映マスクされていないものを記憶・書込等することで自己に反映させる(S13)。例えば、複数のマスクデータのうち2類が選択されている場合、マスク設定部125は、番号情報「3」の設定情報を受信すると、「共通制御コードK7」及び「共通制御コードK9」の設定情報に対して反映マスクを設定する。このため、自己設定部123は、「共通制御コードK7」及び「共通制御コードK9」について自己に反映させることなく「共通制御コードK0」について自己に反映させることとなる。番号情報「4」の設定情報についても同様であって、自己設定部123は、マスク設定部125により設定された反映マスクに基づいて、「自社独自制御コードG2」について自己に反映させることなく「自社独自制御コードG0」及び「自社独自制御コードG1」について自己に反映させることとなる。
【0059】
次いで、自己設定部123は、全設定情報で処理が完了したかを判断する(S14)。全設定情報で処理が完了していない場合(S14:NO)、制御部120は、変数nをインクリメントし(S10)、処理はステップS9に移行する。
【0060】
一方、全設定情報で処理が完了した場合(S14:YES)、自己設定部123は、表示制御部121を制御して、表示部130に移植作業が完了した旨を表示させる(S15)。その後、
図6及び
図7に示した処理は終了する。
【0061】
このようにして、第1実施形態に係る新ガスメータ100及び設定移植方法によれば、旧ガスメータ200のメータ情報と新ガスメータ100のメータ情報とを対比させ、対比結果に基づいて自己への反映を禁止するマスク設定を行うため、製造会社やメータ種別等に基づいて自己に反映させるべきでない設定情報については自己へ反映することを禁止することができる。この結果、旧ガスメータ200の設定を引き継げなかったり、仮に引き継いだ場合に適切な設定とならなかったりする場合に自己への反映を禁止することができる。従って、移植作業の適切化を図ることができる。
【0062】
また、旧ガスメータ200より受信した設定情報を自己に反映させないための反映マスクを行うため、設定情報について一度受信したうえで、反映マスクによって設定情報を自己に反映させるか選別することができる。特に、番号情報「3」「4」の要求電文のように、複数の設定情報を一まとめにして要求する場合には、複数の設定情報を一括して受信した後に一部の設定情報のみを自己に反映させないようにすることもでき、移植作業の効率化を図ることができる。
【0063】
また、旧ガスメータ200に対して特定の設定情報の要求を非実行とする送信マスクの設定を行うため、特定の設定情報についてはそもそも要求電文の送信自体を行うことなく、要求電文の送信回数を減らし、移植作業の簡素化に貢献することができる。
【0064】
次に、本発明に係る第2実施形態を説明する。第2実施形態に係る移植設定システムは、第1実施形態のものと同様であるが、一部構成が異なっている。以下、第1実施形態との相違点について説明する。
【0065】
図9は、第2実施形態に係る第2記憶部162の記憶内容の一例を示す概念図である。
図9に示すように、第2実施形態に係る第2記憶部162は、1つの番号情報に対して、1つの設定情報を対応付けて記憶している。
【0066】
具体的に第1実施形態では
図5に示すように、「共通制御コードK0」「共通制御コードK7」「共通制御コードK9」の3つの設定情報に対して1つの番号情報が付与されていた。このため、
図7のステップS11に示すように、複数の設定情報を一まとめにして要求電文を送信していた。しかし、第2実施形態では
図9に示すように、「共通制御コードK0」「共通制御コードK7」「共通制御コードK9」の3つの設定情報に対して、番号情報「3」「4」「5」が個々に付与されている。このため、
図7のステップS11においては、1つずつ設定情報を要求する電文が送信されることとなる。
【0067】
ここで、Nライン通信等のように通信速度が比較的遅い通信方式においては、設定情報を1つずつ受信することが好適であるといえる。このため、第2実施形態においては個々の設定情報に対して個々に要求電文を送信するよう、
図9に示すように1つの設定情報に対して1つの番号情報を付与することとしている。
【0068】
このようにして、第2実施形態に係る新ガスメータ100及び設定移植方法によれば、第1実施形態と同様に、移植作業の適切化、効率化、及び簡素化を図ることができる。
【0069】
さらに、第2実施形態によれば、1つずつ設定情報を要求するため、Nライン通信等のように通信速度が比較的遅い通信方式においても、移植作業を実行することができる。
【0070】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、可能な範囲で適宜他の技術を組み合わせてもよい。
【0071】
例えば、上記実施形態において新ガスメータ100と旧ガスメータ200とが通信線Lによって接続されている。しかし、これに限らず、無線により接続されて、無線により設定情報が移植される構成であってもよい。
【0072】
また、上記実施形態に係る新ガスメータ100は、容器リセットスイッチ152を備えているが、特にLPガスの流量を計測するガスメータに限らず、都市ガスの流量を計測するガスメータであってもよい。
【0073】
加えて、上記実施形態において新ガスメータ100及び旧ガスメータ200については、新ガスメータ100の方が新規に製造されたものであり、旧ガスメータ200が新ガスメータ100よりも古いものであるとは限らない。例えば製造年月日の基準で新ガスメータ100の方が旧ガスメータ200よりも古いものであってもよいし、製造年月日が同日のものであってもよい。すなわち、旧ガスメータ200とは既に設置されているガスメータであり、新ガスメータ100は新たに設置されるガスメータであって、製造年月日等を問うものではない。
【0074】
また、可能であれば、移植作業を開始するための所定の操作が旧ガスメータ200に対して行われてもよい。
【0075】
さらに、上記において設定情報は、
図5及び
図9に示したものに限らず、遮断弁の遮断条件、遮断弁の遮断時の発呼音の有無、微少漏洩機能の有無、及び、可視光通信出力等、種々の情報を含み得るものである。
【0076】
さらに、上記実施形態においては送信マスクと反映マスクとの双方が行われているが、これに限らず、例えば、いずれか一方のみのマスクが実行されるようになっていてもよい。
【符号の説明】
【0077】
1 :設定移植システム
100 :新ガスメータ(ガスメータ)
122 :通信制御部(受信手段)
123 :自己設定部(自己設定手段)
124 :対比部(対比手段)
125 :マスク設定部(マスク設定手段)
160 :記憶部
161 :第1記憶部
162 :第2記憶部
200 :旧ガスメータ(他のガスメータ)
260 :記憶部
L :通信線
T :端子台