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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057658
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】計測装置用架台及び計測装置設置方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/12 20060101AFI20240418BHJP
   E21F 13/08 20060101ALI20240418BHJP
   G01B 11/06 20060101ALN20240418BHJP
【FI】
E21D9/12 B
E21F13/08
G01B11/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164442
(22)【出願日】2022-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】594145297
【氏名又は名称】タグチ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 修
(72)【発明者】
【氏名】吉井 康宏
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】千北 幸治
(72)【発明者】
【氏名】大岐 拓也
【テーマコード(参考)】
2D054
2F065
【Fターム(参考)】
2D054DA02
2D054GA65
2D054GA82
2F065AA30
2F065BB01
2F065BB15
2F065DD03
2F065DD06
2F065FF41
2F065GG04
2F065HH13
2F065JJ05
2F065JJ09
2F065MM03
2F065PP01
2F065PP15
2F065PP22
2F065QQ25
(57)【要約】
【課題】トンネルの掘削作業に用いるベルトコンベヤの稼働率を向上できる計測装置用架台および計測装置設置方法を提案する。
【解決手段】本発明の架台5は、照射装置2Aが取り付けられており、ベルト11の搬送面側に位置する摺動部材51Aと、照射装置2Aに対向する照射装置2Bが取り付けられており、ベルト11の裏面側に位置する摺動部材51Bと、摺動部材51A,51Bを、ベルト11の幅方向の外側で連結する連結部材52と、を備え、摺動部材51Aは、照射装置2Aがベルト11の幅方向の外側に存在する位置から照射装置2Aがベルト11の端部に対向する位置まで幅方向にレール部6Aに沿って移動可能であり、摺動部材51Bは、照射装置2Bがベルト11の幅方向の外側に存在する位置から照射装置2Bがベルト11の端部に対向する位置まで幅方向にレール部6Bに沿って移動可能である。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1距離計測装置が取り付けられており、コンベヤベルトの搬送面側に位置する第1部材と、
前記第1距離計測装置に対向する第2距離計測装置が取り付けられており、前記コンベヤベルトの裏面側に位置する第2部材と、
前記第1部材及び前記第2部材を、前記コンベヤベルトの幅方向の外側で連結する第3部材と、を備え、
前記第1部材は、前記第1距離計測装置が前記コンベヤベルトの幅方向の外側に存在する位置から前記第1距離計測装置が前記コンベヤベルトの端部に対向する位置まで前記幅方向に移動可能であり、
前記第2部材は、前記第2距離計測装置が前記コンベヤベルトの幅方向の外側に存在する位置から前記第2距離計測装置が前記コンベヤベルトの端部に対向する位置まで前記幅方向に移動可能である、計測装置用架台。
【請求項2】
前記第1部材は、前記搬送面側で前記幅方向に延在している第1レール部に沿って移動可能であり、
前記第2部材は、前記裏面側で前記幅方向に延在している第2レール部に沿って移動可能である、請求項1に記載の計測装置用架台。
【請求項3】
前記第1距離計測装置及び前記第2距離計測装置は、前記端部を含む、前記コンベヤベルト上の幅方向線分にレーザを照射するレーザ変位センサである、請求項1又は請求項2に記載の計測装置用架台。
【請求項4】
コンベヤベルトの幅方向の外側で、計測装置用架台に取り付けられた状態で対向する、第1距離計測装置及び第2距離計測装置のキャリブレーションを行う第1工程と、
前記架台を前記幅方向に移動させ、前記コンベヤベルトの搬送面側の前記第1距離計測装置と前記コンベヤベルトの裏面側の前記第2距離計測装置とを、前記コンベヤベルトの端部に対向させる第2工程と、を備える計測装置設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測装置用架台及び計測装置設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネルの掘削作業では、長距離のベルトコンベヤがずり搬出に利用される。このとき、コンベヤベルトの蛇行や、ずり、異物等によって、コンベヤベルトが損傷する場合がある。これらの損傷を放置すると、ベルト切れやずりこぼれを引き起こし、その修復のためにベルトコンベヤの稼働率は大きく低下してしまう。そこで、このような兆候を早期に発見して予防保全を行う必要がある。
特許文献1には、「ベルトコンベアの異常を監視するためのシステムであって、ベルトコンベアに対してレーザ光を照射する、ラインレーザと、前記レーザ光の照射によってベルトコンベア上に描かれた輪郭線を、前記ラインレーザの照射方向と異なる角度から撮影する、デジタルカメラと、前記デジタルカメラによる撮影データに基づいて、ベルトの損傷程度を判定する、解析装置と、を少なくとも備えることを特徴とする、ベルトコンベア監視システム」が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-032346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ベルトコンベヤの損傷の態様として、コンベヤベルトの端部の剥離がある。端部の剥離は、例えば、トンネル曲線部において、コンベヤベルトがガイドローラやフレーム等に接触することに起因して生じる。端部の剥離についても、これを放置すると、ベルト切れやずりこぼれを引き起こし、その修復のためにベルトコンベヤの稼働率は大きく低下してしまう。そこで、このような兆候を早期に発見して予防保全(ベルトコンベヤの交換を含む)を行う必要がある。
例えば、2つのレーザ変位センサを使用してコンベヤベルトの端部の剥離を評価する手法がある。この手法では、コンベヤベルトの搬送面側及び裏面側にそれぞれ位置決めされたレーザ変位センサに対して、光軸を合わせる位置調整作業や基準厚さ設定(キャリブレーション)を行う必要があった。しかし、キャリブレーションを行う場合には、レーザ変位センサから照射されたレーザをコンベヤベルトが遮らないよう、コンベヤベルトの張力を緩め、コンベヤベルトの端部を強引にずらす必要があった。このため、キャリブレーションに多くの人員と時間を要してしまい、ベルトコンベヤの稼働率が低下するという問題があった。
このような観点から、本発明は、トンネルの掘削作業に用いるベルトコンベヤの稼働率を向上できる計測装置用架台および計測装置設置方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決する本発明は、第1距離計測装置が取り付けられており、コンベヤベルトの搬送面側に位置する第1部材と、前記第1距離計測装置に対向する第2距離計測装置が取り付けられており、前記コンベヤベルトの裏面側に位置する第2部材と、前記第1部材及び前記第2部材を、前記コンベヤベルトの幅方向の外側で連結する第3部材と、を備え、前記第1部材は、前記第1距離計測装置が前記コンベヤベルトの幅方向の外側に存在する位置から前記第1距離計測装置が前記コンベヤベルトの端部に対向する位置まで前記幅方向に移動可能であり、前記第2部材は、前記第2距離計測装置が前記コンベヤベルトの幅方向の外側に存在する位置から前記第2距離計測装置が前記コンベヤベルトの端部に対向する位置まで前記幅方向に移動可能である、計測装置用架台である。
【0006】
かかる構成によれば、第1距離計測装置がコンベヤベルトの搬送面側に配置され、第2距離計測装置がコンベヤベルトの裏面側に配置される。また、コンベヤベルトの幅方向の外側に計測装置用架台を移動させると、第1距離計測装置および第2距離計測装置のキャリブレーションを行うことができる。つまり、コンベヤベルト計測するための第1距離計測装置及び第2距離計測装置に対して、光軸を合わせる位置調整作業や基準厚さ設定を行うことができる。よって、コンベヤベルトの張力を緩めたり、コンベヤベルトの端部を強引にずらしたり、といった作業を回避できる。その結果、作業員1人であっても、短時間で第1距離計測装置及び第2距離計測装置のキャリブレーションを行うことができる。
【0007】
また、前記第1部材は、前記搬送面側で前記幅方向に延在している第1レール部に沿って移動可能であり、前記第2部材は、前記裏面側で前記幅方向に延在している第2レール部に沿って移動可能である、ことが好ましい。
【0008】
これにより、コンベヤベルトの幅方向に架台を容易に移動させることができ、キャリブレーションが完了した第1距離計測装置及び第2距離計測装置をコンベヤベルトの端部に対向させることができる。
【0009】
また、前記第1距離計測装置及び前記第2距離計測装置は、前記端部を含む、前記コンベヤベルト上の幅方向線分にレーザを照射するレーザ変位センサである、ことが好ましい。
【0010】
これにより、コンベヤベルトの端部の厚さの計測を確実に行うことができる。
【0011】
また、本発明は、コンベヤベルトの幅方向の外側で、計測装置用架台に取り付けられた状態で対向する、第1距離計測装置及び第2距離計測装置のキャリブレーションを行う第1工程と、前記架台を前記幅方向に移動させ、前記コンベヤベルトの搬送面側の前記第1距離計測装置と前記コンベヤベルトの裏面側の前記第2距離計測装置とを、前記コンベヤベルトの端部に対向させる第2工程と、を備える計測装置設置方法である。
【0012】
かかる方法によれば、コンベヤベルトを計測するための第1距離計測装置及び第2距離計測装置に対して、コンベヤベルトを介在させない状態で位置調整を行うことができる。よって、コンベヤベルトの張力を緩めたり、コンベヤベルトの端部を強引にずらしたり、といった作業を回避できる。その結果、作業員1人であっても、短時間で第1距離計測装置及び第2距離計測装置のキャリブレーションを行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、トンネルの掘削作業に用いるベルトコンベヤの稼働率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態のベルト測定システムの構成図(1/2)である。
図2】(a)が、図1のA-A視端面図であり、(b)が、ベルトの搬送面の図である。
図3】端部の厚さの測定の説明図である。
図4】測定点の説明図である。
図5】端部の厚さの測定結果である。
図6】端部の厚さの測定に関するフローチャートである。
図7】架台及びレール部の構成図であり、(a)が平面図であり、(b)が側面図である。
図8】照射装置の光軸合わせの説明図である。
図9】照射装置の基準厚さ設定の説明図である。
図10】本実施形態の計測装置設置方法の説明図である。
図11】本実施形態のベルト測定システムの構成図(2/2)である。
図12】損傷監視タグと補修監視タグの説明図である。
図13】ベルトの位置の測定に関するフローチャートである。
図14】ベルトの1か所に3つの電子タグを貼設した場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施をするための形態を、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。なお、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0016】
[構成(1/2)]
図1に示すように、本実施形態のベルト測定システム100は、トンネルの掘削作業に用いられるベルトコンベヤ1のベルト11の損傷を監視するシステムである。ベルト測定システム100は、照射装置2A,2B(第1距離計測装置、第2距離計測装置)と、演算装置3とを備えている。
なお、本実施形態のベルト測定システム100は、基本的にベルトコンベヤ1の稼働時に測定するシステムである。ベルト測定システム100は、所定速度(高速でもよいし、低速でもよい)で移動するベルト11の端部の厚さを測定できる。ベルト測定システム100の使用者は、稼働中や停止後にベルト測定システム100のデータを確認でき、ベルト11の損傷箇所の経過を観察したり、補修時期を見定めたりできる。
【0017】
<ベルトコンベヤ>
ベルトコンベヤ1は、トンネル掘削が行われる切羽(上流側)で発生した荷(ずり)を坑口側に設けられたずり出し場(下流側)へ搬送する。ベルトコンベヤ1は、図示しないモータで回転するローラ12と、ローラ12に巻回されているベルト(コンベヤベルト)11と、延長装置Bを備えている。ベルト11は、複数枚のゴム製の板が積層され、各板が接着された積層構造をとっている。延長装置Bは、トンネル掘削の進行に応じてベルト11に新たなベルトを継ぎ足し、ベルト長を増大するための装置である。
【0018】
<照射装置>
照射装置2A,2Bは、駆動中のベルト11にレーザ21,22を照射し、照射装置2A,2Bとベルト11との距離を計測する装置である。例えば、照射装置2A,2Bとしては、ベルト11からの反射光を受光し、増幅したり演算処理したりするレーザ変位センサを用いることができるが、これに限定されない。
図1に示すように、ベルトコンベヤ1のリターン側(切羽に向かうベルト11)には、ベルト11の垂直部分が用意されている。照射装置2A,2Bは、同じ高さにおいてベルト11の垂直部分を挟んで対向配置されている。照射装置2Aは、ベルト11の搬送面(ずりが載置される面)にレーザ21を照射し、照射装置2Aからベルト11の搬送面までの距離(第1距離)を計測できる。照射装置2Bは、ベルト11の裏面にレーザ22を照射し、照射装置2Bからベルト11の裏面までの距離(第2距離)を計測できる。ベルト11の垂直部分は、ベルト11の自重に起因して生じる撓みの影響を受け難いため、照射装置2A,2Bの計測において、撓みに起因する計測誤差を無くすことができる。
また、ベルトコンベヤ1のリターン側に配置されている洗浄装置(延長装置Bの構成要素。図示せず。)の後段(切羽側)にベルト11の垂直部分を設ける構成が好ましい。かかる構成により、ベルト11の両面に砂、泥等が無い条件で照射装置2A,2Bの計測ができ、計測誤差を低減できる。また、ベルトコンベヤ1のリターン側に配置されている緊張装置(延長装置Bの構成要素。図示せず。)の後段(切羽側)にベルト11の垂直部分を設ける構成が好ましい。緊張装置は、移動中のベルト11の撓みを低減する装置である。かかる構成により、ベルト11の垂直部分の撓みを低減でき、計測誤差を低減できる。
【0019】
<演算装置>
演算装置3は、照射装置2A,2Bと通信可能に接続されており、所定の演算処理をするコンピュータである。演算装置3は、入力部、出力部、制御部、および、記憶部といったハードウェアを備える。例えば、制御部がCPU(Central Processing Unit)から構成される場合、その制御部を含むコンピュータによる情報処理は、CPUによるプログラム実行処理で実現される。また、そのコンピュータに含まれる記憶部は、CPUの指令により、そのコンピュータの機能を実現するためのさまざまなプログラムを記憶する。これによりソフトウェアとハードウェアの協働が実現される。前記プログラムは、記録媒体に記録したり、ネットワークを経由したりすることで提供可能となる。出力部は、画面表示をする表示部の機能を含めてもよい。
図1に示すように、演算装置3は、検知部31と、厚さ測定部32と、補正部33とを備えている。
検知部31は、ベルト11の端部を検知する。
厚さ測定部32は、照射装置2A,2Bの各々が計測した距離を用いて、ベルト11の端部の厚さを測定する。
補正部33は、照射装置2A,2Bの各々が計測した距離を補正する。
【0020】
図1に示すように、照射装置2A,2Bは、架台5(計測装置用架台)の上面に取り付けられている。架台5は、レール部6A,6B(第1レール部、第2レール部)の上面に配置されており、ベルト11の幅方向(図1において紙面垂直方向)に沿って移動可能である。また、照射装置2Bの上方には、タグリーダ4がベルト11の裏面に対向配置されている。タグリーダ4は、例えば、ベルトコンベヤ1の支持架台(図示せず)に取り付けられており、ベルト11の幅方向に移動可能である。
【0021】
[レーザの照射の詳細]
図2(a)に示すように、照射装置2A,2Bは、照射口からベルト11に向けて、幅方向の線状のレーザ21,22を照射する。例えば、図2(b)に示すように、ベルト11の搬送面に到達したレーザ21の線分の第1端21aは、ベルト11の端部Eから中央付近の任意の位置とすることができる。また、レーザ21の線分の第2端21bは、ベルト11の端部Eよりも所定量だけ外側の位置とすることができる。ベルト11の端部Eから第2端21bまでに照射されたレーザ21は反射されず、照射装置2Aは、反射光を受光できない。検知部31は、照射装置2Aがベルト11に照射したレーザ21の反射の有無から両者(反射の有無)の境界を特定することで、ベルト11の端部Eを検知できる。また、ベルトコンベヤ1が駆動中の場合、ベルト11は幅方向に変位するように蛇行する。このため、ベルト11の幅方向外側への最大変位点よりも幅方向外側にレーザ21の線分の第2端21bが位置するように、レーザ21を照射することが好ましい。上記説明は、照射装置2Bがベルト11の裏面に照射するレーザ22に対しても当てはまる。かかる照射により、照射装置2A,2Bによる距離計測中、検知部31がベルト11の端部を追尾できる。
また、照射装置2A,2Bは、レーザ21,22を扇状に照射するため、照射装置2A,2Bの照射口から、ベルト11の表面に到達したレーザ21,22の線分の任意点までの距離は、大抵は斜めの距離になる。補正部33は、斜めの距離を垂直にオフセットするように補正する。このような補正により、照射装置2A,2Bの各々は、照射装置2A,2Bの各々と上記任意点との垂直の距離を計測できる。なお、各照射装置が複数の照射口を備え、ベルト11の表面に垂直なレーザを各照射口から照射できる場合は、補正を省略してもよい。
【0022】
[ベルトの端部の厚さの測定]
図3に示すように、照射装置2A,2B間の距離をL、照射装置2Aからベルト11の搬送面までの距離をL1、照射装置2Bからベルト11の裏面までの距離をL2とする。この場合、厚さ測定部32は、ベルト11の端部の厚さTを、T=L-L1-L2(式1)として測定できる。
よって、作業員や管理者(ベルト測定システム100の使用者)は、元々のベルト11の端部の厚さと測定した端部の厚さTとの差分から、ベルト11の損傷(剥離)の程度を判断できる。つまり、ベルト測定システム100の使用者は、ベルトコンベヤの予防保全に利用可能な新たな判断材料を手にすることができる。
したがって、トンネルの掘削作業に用いるベルトコンベヤの予防保全の判断精度を向上できる。その結果、使用者は、予防保全の種類を正しく選択できる。予防保全には、例えば、損傷箇所を塞ぐパッチによる補修、コンベヤベルトの交換がある。
【0023】
[測定点]
図4に示すように、演算装置3は、ベルト11の搬送面に到達したレーザ21の線分上に複数の測定点M1~M7を設定できる。なお、図4では、便宜上、測定点M1~M7に別々のマークを付している。測定点の数、位置は適宜変更可能である。測定点M1~M7は、照射装置2Aがベルト11の搬送面までの距離を計測するために設定された点である。例えば、測定点M1~M7は、検知部31が検知したベルト11の端部E(レーザ21の線分上)からベルト11の幅方向に並べられ、かつ、互いに所定の間隔だけ離間して設定することができる。図4の測定点Mk(k=1,2,・・・,7)は、端部Eから5mm(ミリメートル)だけ離間している。照射装置2Aは、照射装置2Aから測定点M1~M7の各々までの距離を測定できる。なお、端部Eに測定点を設定することもできる。つまり、照射装置2Aは、照射装置2Aから端部Eまでの距離を測定できる。なお、図4に示す測定点Mkの数、間隔は、レーザ21、22の照射の幅やベルト11の蛇行による余裕代を考慮して決定する。
上記説明は、照射装置2Bがベルト11の裏面に到達したレーザ22にも当てはまる。レーザ22の線分上に設定した複数の測定点の各々は、測定点M1~M7に対向している。
厚さ測定部32は、測定点M1~M7の各々について、式1に従い、ベルト11の厚さを測定できる。図5は、ベルトコンベヤ1を稼働し、150m/分で移動する300mの延長用ベルトを対象にし、測定点M1~M7の各々で当該ベルトの厚さを測定したときの測定結果である。図5に示すように、ベルトの端部に近い測定点ほどベルトの厚さが大きくなっており、端部からベルトの剥離が進行している状態が確認できる。
このように、厚さ測定部32は、測定点M1~M7の各々で測定したベルト11の厚さを用いて、ベルト11の幅方向に亘る厚さ広がり(厚さの変化状況)を測定できる。よって、コンベヤベルトの端部の剥離状態(剥離面積など)をより詳細に把握できる。したがって、トンネルの掘削作業に用いるコンベヤベルトの予防保全の判断精度をより向上できる。
【0024】
[処理(1/2)]
ベルト測定システム100による、ベルト11の端部の厚さの測定に関する処理は、図6に示すとおりである。つまり、まず、演算装置3の検知部31がベルト11の端部を検知する(ステップA1)。次に、演算装置3が設定した複数の測定点ごとに、ステップA2a~A2bのループ処理が実行される。説明の便宜上、測定点は、ベルト11の端部を含むものとして説明する。ループ処理ではまず、照射装置2Aが、照射装置2Aからベルト11の搬送面までの第1距離を計測する(ステップA3)。またステップA3と同時に、照射装置2Bが、照射装置2Bからベルト11の裏面までの第2距離を計測する(ステップA4)。次に、演算装置3の補正部33が補正処理をする(ステップA5)。具体的には、補正部33は、レーザの照射角度に基づき第1距離と第2距離を補正する。補正処理は、選択的に行われ、補正不要の場合は省略可能である。次に、演算装置3の厚さ測定部32が、測定点におけるベルト11の厚さを算定する(ステップA6)。ループ処理終了後、図6の処理が終了する。
なお、測定点ごとにベルト11の厚さを測定するため、厚さ測定部32は、測定点ごとのベルト11の厚さを用いて、ベルト11の幅方向に亘る厚さ広がりを測定できる。
【0025】
[架台の摺動機構]
図7は、架台及びレール部の構成図であり、(a)が平面図であり、(b)が側面図である。架台5は、摺動部材51A,51B(第1部材、第2部材)と、連結部材52(第3部材)と、ブラケット53A,53Bとを備えている。本実施形態の架台5は、平面視コ字状を呈している。
摺動部材51Aは、例えば、4面にT溝が形成された断面角形のアルミニウム合金製押出形材からなる。摺動部材51Aは、ベルト11の搬送面側に位置する。また、摺動部材51Aは、レール部6Aの上面に配置されている。レール部6Aは、例えば、4面にT溝が形成された断面角形のアルミニウム合金製押出形材からなる。レール部6Aは、ベルト11の搬送面側においてベルト11の幅方向に延在している。レール部6Aの両端(図示略)は、ベルトコンベヤ1の支持架台に固定されている。摺動部材51Aの外側面及びレール部6Aの外側面には、接続プレート54A,54Aが設けられている(図10参照)。接続プレート54Aは、例えば、矩形のアルミニウム合金製板材からなる。接続プレート54Aの四隅には板厚方向に貫通した孔が形成されており、摺動部材51Aの外側面のT溝、及びレール部6Aの外側面のT溝に連通している。接続プレート54Aの四隅の孔にはボルト54Aaが挿通されている。ボルト54Aaの頭部は、摺動部材51Aの外側面のT溝、及びレール部6Aの外側面のT溝に挿入されている。ボルト54Aaの軸部は、接続プレート54Aの孔に挿入されており、接続プレート54Aの外側に突出した軸部にはナットが締結されている。ボルト54Aaを緩めることで、摺動部材51Aは、レール部6Aに沿ってベルト11の幅方向に移動可能となる。また、摺動部材51Aの上面には、L字片55Aが設けられている。L字片55Aは、照射装置2Aを摺動部材51Aに取り付けるための部材である。L字片55Aの底部には板厚方向に貫通した孔が形成されており、摺動部材51Aの上面のT溝に連通している。L字片55Aの底部の孔には、ボルト55Aaが挿通されている。ボルト55Aaの頭部は、摺動部材51Aの上面のT溝に挿入されており、L字片55Aの上側に突出したボルト55Aaの軸部にナットが締結されている。ボルト55Aaを緩めることで、照射装置2Aは、摺動部材51Aに沿ってベルト11の幅方向に移動可能となる。
【0026】
摺動部材51Bは、例えば、4面にT溝が形成された断面角形のアルミニウム合金製押出形材からなる。摺動部材51Bは、ベルト11の裏面側に位置する。また、摺動部材51Bは、レール部6Bの上面に配置されている。レール部6Bは、例えば、4面にT溝が形成された断面角形のアルミニウム合金製押出形材からなる。レール部6Bは、ベルト11の裏面側においてベルト11の幅方向に延在している。レール部6Bの両端(図示略)は、ベルトコンベヤ1の支持架台に固定されている。摺動部材51Bの外側面及びレール部6Bの外側面には、接続プレート54B,54Bが設けられている。接続プレート54Bは、例えば、矩形のアルミニウム合金製板材からなる。接続プレート54Bの四隅には板厚方向に貫通した孔が形成されており、摺動部材51Bの外側面のT溝、及びレール部6Bの外側面のT溝に連通している。接続プレート54Bの四隅の孔にはボルト54Baが挿通されている。ボルト54Baの頭部は、摺動部材51Bの外側面のT溝、及びレール部6Bの外側面のT溝に挿入されている。ボルト54Baの軸部は、接続プレート54Bの孔に挿入されており、接続プレート54Bの外側に突出した軸部にはナットが締結されている。ボルト54Baを緩めることで、摺動部材51Bは、レール部6Bに沿ってベルト11の幅方向に移動可能となる。また、摺動部材51Bの上面には、L字片55Bが設けられている。L字片55Bは、照射装置2Bを摺動部材51Bに取り付けるための部材である。L字片55Bの底部には板厚方向に貫通した孔が形成されており、摺動部材51Bの上面のT溝に連通している。L字片55Bの底部の孔には、ボルト55Baが挿通されている。ボルト55Baの頭部は、摺動部材51Bの上面のT溝に挿入されており、L字片55Bの上側に突出したボルト55Baの軸部にナットが締結されている。ボルト55Baを緩めることで、照射装置2Bは、摺動部材51Bに沿ってベルト11の幅方向に移動可能となる。
【0027】
連結部材52は、摺動部材51A,51Bを、ベルト11の幅方向の外側で連結する。ブラケット53Aは、摺動部材51Aと連結部材52とを接合するための部材である。ブラケット53Aは、例えば、摺動部材51Aの内側面のT溝、及び連結部材52の内側面のT溝に挿入されたボルト(図示略)によって摺動部材51Aおよび連結部材52に固定されている。ブラケット53Aを構成する直交した2つの面には板厚方向に貫通した孔が形成されており、摺動部材51Aの内側面のT溝、及び連結部材52の内側面のT溝に連通している。ブラケット53Aの孔にはボルトが挿通されており、ボルトの頭部が摺動部材51Aの内側面のT溝、及び連結部材52の内側面のT溝に挿入され、ブラケット53Aから突出したボルトの軸部にナットが締結されている。ブラケット53Aによって、摺動部材51A及び連結部材52が直角に接合される。
ブラケット53Bは、摺動部材51Bと連結部材52とを接合するための部材である。ブラケット53Bは、例えば、摺動部材51Bの内側面のT溝、及び連結部材52の内側面のT溝に挿入されたボルト(図示略)によって摺動部材51Aおよび連結部材52に固定されている。ブラケット53Bを構成する直交した2つの面には板厚方向に貫通した孔が形成されており、摺動部材51Bの内側面のT溝、及び連結部材52の内側面のT溝に連通している。ブラケット53Bの孔にはボルトが挿通されており、ボルトの頭部が摺動部材51Bの内側面のT溝、及び連結部材52の内側面のT溝に挿入され、ブラケット53Bから突出したボルトの軸部にナットが締結されている。ブラケット53Bによって、摺動部材51B及び連結部材52が直角に接合される。
【0028】
連結部材52によって、摺動部材51A,51Bの位置関係が定まり、摺動部材51A,51Bの位置関係が定まり、摺動部材51A,51Bの上面においてL字片55A,55Bの位置を調整(摺動部材51A,51Bの長手方向にスライド)することにより、照射装置2A,2Bを対向させることができる。また、L字片55A,55Bを摺動部材51A,51Bに固定した状態で、レール部6A,6Bに挿入されたボルト54Aa,54Baを緩め、レール部6A,6Bの長手方向に沿って架台5をスライドさせることで、照射装置2A,2Bが対向した状態を維持しつつ、ベルト11の端部に対向する位置まで照射装置2A、2Bを同時に移動させることができる。
【0029】
[キャリブレーション]
照射装置2A,2Bのキャリブレーションについて説明する。図8は、照射装置の光軸合わせの説明図である。図9は、照射装置の基準厚さ設定の説明図である。照射装置2A,2Bのキャリブレーションとして照射装置2A,2Bの各々の光軸を合わせる必要がある。具体的には、図8に示すように、作業員は、照射装置2A,2Bの各々の位置や角度を調整し、照射装置2Aが照射するレーザ21と、照射装置2Bが照射するレーザ22とを同一面上に重ねる。また、照射装置2A,2Bのキャリブレーションとして照射装置2A,2Bによる計測の初期値(基準厚さ)を設定する必要がある。具体的には、図9に示すように、作業員は、照射装置2A,2Bの間に厚さが既知である基準片7を置き、照射装置2A,2Bによる計測を行う。作業員は、計測結果に基づいて、照射装置2A,2Bが計測する厚さの初期値(校正値)を設定する。
【0030】
ベルト11を挟むようにして照射装置2A,2Bを設置した状態では、光軸合わせや基準厚さ設定といったキャリブレーションを行うことができない。このため、キャリブレーションを行う場合には、照射装置2A,2Bから照射されたレーザ21,22をベルト11が遮らないよう、ベルト11の張力を緩め、ベルト11の端部を強引にずらす必要があった。このため、キャリブレーションに多くの人員と時間を要してしまい、ベルトコンベヤ1の稼働率が低下するという問題があった。
【0031】
そこで、本実施形態では、ベルトコンベヤ1に対して、架台5及びレール部6A,6Bを用いてベルト11の幅方向の外側で照射装置2A,2Bのキャリブレーションを行う方法を用意した。図10は、本実施形態の計測装置設置方法の説明図である。図10に示すように、作業員は、ベルト11の幅方向の外側に架台5を設置する。次に、作業員は、架台5の摺動部材51A,51Bの各々に照射装置2A,2Bを対向配置する。続いて、作業員は、対向した照射装置2A,2Bに対して光軸合わせや基準厚さ設定といったキャリブレーションを行う。なお、作業員は、L字片55A,55Bの位置を微調整することによって、摺動部材51A,51Bに対する照射装置2A,2Bの位置を適宜設定できる。この段階で、照射装置2A,2B間の距離L(図3参照)が決まる。
【0032】
次に、作業員は、レール部6A,6Bに沿って架台5を移動させる。すなわち、照射装置2A,2Bの光軸合わせがなされた状態を維持しつつ、ベルト11に近づける方向に架台5を移動させ、照射装置2A,2Bを正規位置に固定する。具体的には、架台5を幅方向に移動させ、ベルト11の搬送面側の照射装置2Aとベルト11の裏面側の照射装置2Bとを、ベルト11の端部に対向させる(図7(b)参照)。その後、接続プレート54A,54Bのボルトを締結して照射装置2A,2Bの位置決めを完了する。
【0033】
上記方法によれば、照射装置2A,2Bに対して、ベルト11を介在させない状態で光軸合わせや基準厚さ設定といったキャリブレーションを行うことができる。よって、ベルト11の張力を緩めたり、ベルト11の端部を強引にずらしたり、といった作業を回避できる。その結果、作業員1人であっても、短時間で照射装置2A,2Bのキャリブレーションを行うことができる。また、摺動部材51A,51Bは、レール部6A,6Bに沿って移動可能であるため、ベルト11の幅方向に架台5を容易に移動させることができ、キャリブレーションが完了した照射装置2A,2Bをベルト11の端部に対向させることができる。また、照射装置2A,2Bをレーザ変位センサとすることで、ベルト11の端部の厚さの計測を確実に行うことができる。
【0034】
[構成(2/2)]
図11に示すように、本実施形態のベルト測定システム100は、トンネルの掘削作業に用いられるベルトコンベヤ1のベルト11の位置を測定するシステムである。ベルト測定システム100は、演算装置3と、タグリーダ4とを備えている。なお、図11は、タグリーダ4を用いた実施形態を便宜的に説明するための図であるが、タグリーダ4の位置は任意とすることができ、好適にはベルト11の垂直部分の裏面に対向する位置である(図1参照)。
【0035】
<電子タグ>
図11に示すように、複数の電子タグ13が、ベルト11の長手方向に所定の間隔だけ離間してベルト11に配置されている。例えば、ベルト長が5000mであるベルト11に対して、50mごとに電子タグ13を配置できる。電子タグ13は、例えば、RFID(Radio Frequency IDentifier)タグとすることができるが、これに限定されない。電子タグ13は、例えば、タグリーダ4の無線部とやり取りする無線部と、タグリーダ4のアンテナに電波を送信するアンテナとを備えている。
電子タグ13の各々は、例えば、自身を識別する識別子と、ベルト11の基準位置からの配置位置とを記憶している。基準位置は任意に設定でき、基準位置に電子タグ13を配置してもよい。
ベルト11に対する電子タグ13の配置方法の例は以下の通りである。つまり、まず、ベルト11の片面(搬送面でもよいし、裏面でもよい)に電子タグ13を受容できる程度の穴を設ける。次に、ベルト11の穴の面積よりも十分に大きな面積を持つパッチの片面に接着剤を塗布し、電子タグ13を接着させる。最後に、ベルト11の穴を覆うようにパッチを接着させ、ベルト11の穴に電子タグ13を受容させる。
【0036】
<タグリーダ>
タグリーダ4は、ベルト11に配置されている電子タグ13から情報(例えば、識別子と配置位置)を取得する。タグリーダ4は、例えば、電子タグ13の無線部とやり取りする無線部と、電子タグ13のアンテナから電波を受信するアンテナと、タグリーダ4の動作を制御する制御部と、演算装置3とやり取りする通信部とを備えている。タグリーダ4は、演算装置3と通信可能に接続されており、電子タグ13の情報を演算装置3に送信できる。
【0037】
<演算装置>
演算装置3は、すでに説明した検知部31と、厚さ測定部32と、補正部33に加えて、位置測定部34と、タグテーブル35とを備えている。
位置測定部34は、タグリーダ4を介して取得した電子タグ13の情報を用いて、ベルト11の位置を測定する。
タグテーブル35は、電子タグ13の情報を管理する。例えば、タグテーブル35は、電子タグ13ごとに、識別子と、ベルト11の基準位置からの配置位置とを関連付けて記憶している。また、タグテーブル35は、位置測定部34の位置測定の際、電子タグ13ごとにタグリーダ4の検知があったか否かを示すフラグや、電子タグ13を取り付けるパッチの状態(剥がれにくさなど)を示すフラグを関連付けて記憶することもできる。
【0038】
[ベルトの位置の測定]
ベルトコンベヤ1の駆動中、タグリーダ4は、自身の検知範囲に進入した電子タグ13から情報を取得し、演算装置3に送信する。位置測定部34は、取得した電子タグ13の情報に含まれる配置位置を基準にして、ベルトコンベヤ1が備えるプーリ14の回転数を測定することで、ベルト11の移動距離を算出する。位置測定部34は、配置位置に移動距離を加味した位置を、ベルト11の位置として測定する。プーリ14の回転数は、例えば、プーリ14の回転速度を検出して測定してもよいし、撮影装置(図示せず)で撮影して求めてもよい。また、撮影装置が、基準となる配置位置の電子タグ13の移動を撮影し、位置測定部34が、画像解析により電子タグ13の移動距離を求めてベルト11の位置を測定してもよい。このように、電子タグ13の識別子と電子タグ13の配置位置とを関連付けて管理することで、ベルト11の剥離箇所等の任意の位置を容易に特定できる。
【0039】
従来では、ベルトコンベヤが備えるプーリの回転数を測定し、ベルトに任意に設定した長手方向の原点からの移動距離を算出することで、ベルトの位置を測定していた。しかし、このような原点管理測定は、ベルト伸縮の影響を受けやすいため、測定誤差を小さくすることが困難であった。例えば、ベルト長が5000mであり、ベルト伸縮率が2%である場合、ベルト伸縮に起因する測定誤差は、5000m×2%=100mにもなっていた。トンネル掘削が進むと、使用中のベルトに新たなベルト(例えば、ベルト長は300m)を継ぎ足すことで作業を継続する。このため、ベルト長が増大し、測定誤差を小さくすることがより困難であった。
本実施形態によれば、位置測定部34が、ベルト11の長手方向に複数配置されている電子タグ13の配置位置からの移動距離を算出することで、ベルト11の位置を測定する。算出する移動距離が従来と比較して小さいため、ベルト伸縮の影響を小さくでき、測定誤差を小さくできる。例えば、ベルト長が5000mであり、ベルト伸縮率が2%であり、電子タグ13を25個等間隔に配置した場合、ベルト伸縮に起因する測定誤差は、5000m×2%/25個=4mで済む。電子タグ13の使用数を増やすことで、所望の許容範囲内の測定誤差を実現できる。また、トンネル掘削が進むと、新たなベルトを継ぎ足すことでベルト長が増大するが、新たなベルトの任意の位置に任意個数の電子タグ13を追加できる。このため、ベルト長の増大に対しても所望の許容範囲内の測定誤差を実現できる。
【0040】
[電子タグの応用例]
図12に示すように、ベルト11の損傷箇所11aの付近に損傷監視タグ13aを配置できる。損傷監視タグ13aは、ベルト11の損傷箇所11aを監視するための電子タグ13であり、ベルトコンベヤ1の供用中に後付けされる。損傷監視タグ13aは、例えば、自身を識別する識別子と、ベルト11の基準位置からの配置位置とを記憶している。タグテーブル35は、損傷監視タグ13aを管理する。例えば、タグテーブル35は、損傷監視タグ13aの識別子と、ベルト11の基準位置からの配置位置とを関連付けて記憶している。また、タグテーブル35は、位置測定部34の位置測定の際、タグリーダ4による損傷監視タグ13aの検知があったか否かを示すフラグ、損傷監視タグ13aを取り付けるパッチの状態(剥がれにくさなど)を示すフラグ、損傷が発生したタイミング(または損傷確認後、損傷監視タグ13aを配置したタイミング)、損傷状態(使用者の入力コメントなど)を関連付けて記憶することもできる。
【0041】
損傷監視タグ13aを用いることで、ベルト11の損傷箇所を容易に特定できる。すなわち、当該損傷の経過も容易に監視できる。例えば、使用者が損傷の現状を目視確認したい場合、タグテーブル35を参照して損傷監視タグ13aの配置位置を知得し、当該配置位置に確実に到達できる。
損傷がベルト11の端部の剥離である場合、剥離監視用の損傷監視タグ13aを用いることで、タグテーブル35は、厚さ測定部32が測定した端部の厚さを関連付けて記憶することもできる。測定した端部の厚さが所定の閾値を超えていた場合、演算装置3は使用者にアラートを通知できる。
【0042】
また、図12に示すように、ベルト11の補修箇所11bの付近に補修監視タグ13bを配置できる。補修監視タグ13bは、ベルト11の補修箇所11bを監視するための電子タグ13である。補修箇所11bは、ベルト11の損傷に対して補修用パッチを貼るなどの補修を施した箇所である。補修監視タグ13bは、例えば、自身を識別する識別子と、ベルト11の基準位置からの配置位置とを記憶している。タグテーブル35は、補修監視タグ13bを管理する。例えば、タグテーブル35は、補修監視タグ13bの識別子と、ベルト11の基準位置からの配置位置とを関連付けて記憶している。また、タグテーブル35は、位置測定部34の位置測定の際、タグリーダ4による補修監視タグ13bの検知があったか否かを示すフラグ、補修監視タグ13bを取り付けるパッチの状態(剥がれにくさなど)を示すフラグ、補修したタイミング(または補修監視タグ13bを配置したタイミング)、補修状態(使用者の入力コメントなど)を関連付けて記憶することもできる。
【0043】
補修監視タグ13bを用いることで、ベルト11の補修箇所を容易に特定できる。すなわち、当該補修の経過も容易に監視できる。例えば、使用者が補修後の損傷の現状を目視確認したい場合、タグテーブル35を参照して補修監視タグ13bの配置位置を知得し、当該配置位置に確実に到達できる。
補修対象の損傷がベルト11の端部の剥離である場合、補修監視用の補修監視タグ13bを用いることで、タグテーブル35は、厚さ測定部32が測定した端部の厚さを関連付けて記憶することもできる。測定した端部の厚さが所定の閾値を超えていた場合、演算装置3は使用者にアラートを通知できる。
【0044】
[処理(2/2)]
ベルト測定システム100による、ベルト11の位置の測定に関する処理は、図13に示すとおりである。つまり、まず、演算装置3の位置測定部34が、タグリーダ4を介して電子タグ13の情報を取得する(ステップB1)。次に、位置測定部34が、プーリ14の回転数を測定する(ステップB2)。次に、位置測定部34が、電子タグ13の配置位置からの移動距離を算出する(ステップB3)。最後に、位置測定部34が、電子タグ13の配置位置に算出した移動距離を加味してベルト11の位置を測定する(ステップB4)。以上で、図13の処理が終了する。
【0045】
[電子タグの検知率]
上述したように、電子タグ13を、ベルト11の長手方向に所定の間隔(例えば200m)だけ離間してベルト11に配置することで、ベルト伸縮に起因する測定誤差を所望の許容範囲内に抑えることができる。しかし、タグリーダ4が電子タグ13を検知するためにベルト11に向けて電波を発信するところ、電波の発信は連続的ではなく、断続的(パルス)である。このため、タグリーダ4からの電波の発信タイミング次第では、電波が発信されない間に電子タグ13がタグリーダ4の検知範囲を通過してしまい、タグリーダ4が電子タグ13を検知できない、という問題があった。
【0046】
そこで、本実施形態では、ベルト11の所定の1か所に複数の電子タグ13を配置することとし、複数の電子タグ13をベルト11の長手方向に微小の間隔で並べることとした。なお、並べる電子タグ13の数は任意である。図14は、ベルトの1か所に3つのタグを貼設した場合の説明図である。図14に示すように、ベルト11の所定の1か所に3つの電子タグ13-1(13),13-2(13),13-3(13)を配置する。また、電子タグ13同士の間隔を200mとした場合、電子タグ13-1,13-2,13-3の間隔を例えば20cmとすることができるが、これに限定されない。タグリーダ4は、対象1か所の電子タグ13-1,13-2,13-3の少なくとも1つを検知すれば、当該1か所の電子タグ13を検知したとし、位置測定部34はベルト11の位置測定の処理をする。かかる構成によれば、電子タグ13-1,13-2,13-3がタグリーダ4の検知範囲を通過する間にタグリーダ4から電波が発信されるようになるため、電子タグ13の検知率を向上させることができる。
【0047】
発明者らによる複数回の試行結果によれば、ベルト11の所定の1か所に1つの電子タグ13を配置した場合の検知率は平均約17%(=1/6)であったが、図14の場合の検知率は平均約83%(=5/6)となり、良好であった。また、ベルト11の速度やタグリーダ4からの電波(パルス波)の周期などに応じて電子タグ13同士の配置間隔や、1か所あたりの電子タグ13の配置枚数を変えることによって電子タグ13の検知率をより向上させることができる。
【0048】
[変形例]
(a):厚さ測定部32によるベルト11の端部の厚さの測定は、ベルトコンベヤ1が駆動中でもできるが、ベルトコンベヤ1が停止中でもできる。また、位置測定部34によるベルト11の位置の測定についても同様である。
(b):照射装置2A,2Bは、ベルト11の垂直部分ではなく、ベルト11の水平部分に照射してもよい。また、ベルト11の任意の位置に照射してもよい。
(c)ベルト11の端部の検知は、照射装置2A,2Bが照射したレーザ21,22の反射の有無の境界の特定ではなく、撮影装置がベルト11の端部を撮影したときの画像を解析することで実現してもよい。
(d)照射装置2A,2Bを、ベルト11の端部の片側だけでなく、反対側にも用意し、ベルト11の端部の両側の厚さをまとめて測定してもよい。また、ベルト11の一方の端部から他方の端部までの幅方向全体を照査可能となるように照射装置を用意し、ベルト11の幅方向全体の厚さを測定してもよい。
(e)電子タグ13は、パッシブ型でもよいし、アクティブ型でもよいし、セミパッシブ型でもよい。
(f)電子タグ13に代えて、電子タグ13と同等の情報を含む所定のコード(例:バーコード、QRコード(登録商標))が印刷されたラベルまたは目印を用意する。また、タグリーダ4に代えて撮影装置を用意する。撮影装置がコードを読み取り、情報を取得することで、位置測定部34によるベルト11の位置測定を実現してもよい。
(g):架台5は、ベルト11の垂直部分ではなく、ベルト11の水平部分を挟む構成としてもよい。
(h):架台5をベルト11の端部の片側だけでなく、反対側にも用意し、ベルト11の端部の両外側でキャリブレーションを行ってもよい。また、ベルト11の一方の端部から他方の端部までの幅方向全体を照査可能となるように照射装置、及び当該照射装置が配置される架台を用意し、ベルト11の端部の外側でキャリブレーションを行ってもよい。
(i):損傷箇所1か所に複数の損傷監視タグ13aを配置する構成としてもよい。また、補修箇所1か所に複数の補修監視タグ13bを配置する構成としてもよい。
【0049】
(j):本実施形態で説明した種々の技術を適宜組み合わせた技術を実現することもできる。
(k):本実施形態で説明したソフトウェアをハードウェアとして実現することもでき、ハードウェアをソフトウェアとして実現することもできる。
(l):その他、ハードウェア、ソフトウェア、フローチャートなどについて、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0050】
100 ベルト測定システム
1 ベルトコンベヤ
11 ベルト(コンベヤベルト)
11a 損傷箇所
11b 補修箇所
12 ローラ
13 電子タグ
13a 損傷監視タグ
13b 補修監視タグ
14 プーリ
2A,2B 照射装置(第1距離計測装置、第2距離計測装置)
21,22 レーザ
3 演算装置
31 検知部
32 厚さ測定部
33 補正部
34 位置測定部
35 タグテーブル
4 タグリーダ
5 架台(計測装置用架台)
51A,51B 摺動部材(第1部材、第2部材)
52 連結部材(第3部材)
53A,53B ブラケット
54A,54B 接続プレート
55A,55B L字片
6A,6B レール部
7 基準片
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14