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  • 特開-食器洗浄機 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057676
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】食器洗浄機
(51)【国際特許分類】
   A47L 15/42 20060101AFI20240418BHJP
【FI】
A47L15/42 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164471
(22)【出願日】2022-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】深尾 英臣
【テーマコード(参考)】
3B082
【Fターム(参考)】
3B082BB01
(57)【要約】
【課題】ハウジング内に前方に引き出し自在に収納される洗浄槽2と、洗浄槽2の前方に取付けられる前扉7とを備える食器洗浄機であって、洗浄槽2を引き出す際に、前扉7の上部71前面の取手部に指を掛けた使用者の手や腕に洗浄槽2内から吹き出す熱気が当たることを抑制できるようにする。
【解決手段】前扉7の上部71の取手部を含む所定の横方向範囲の部分である上部第1部分71から横方向に外れた部分である上部第2部分71の上面後縁71aが、上部第1部分71の上面後縁71aよりも前方に位置する。上部第2部分71の後面が、上部第2部分71の上面後縁71aから後方に向けて下方に傾斜する傾斜面71bに形成される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面が開放されたハウジングと、ハウジング内に前方に引き出し自在に収納される、食器類を収納可能な上面が開放された洗浄槽と、洗浄槽の前方に取付けられ、洗浄槽をハウジング内に収納したときにハウジングの前面開口を覆う前扉とを備える食器洗浄機であって、洗浄槽の上面よりも上方に突出する前扉の上部前面に、洗浄槽を前方に引き出すときに指を掛ける取手部が形成されるものにおいて、
前扉の上部の取手部を含む所定の横方向範囲の部分を上部第1部分、上部第1部分から横方向に外れた部分を上部第2部分として、上部第2部分の上面後縁が、上部第1部分の上面後縁よりも前方に位置し、上部第2部分の後面が、上部第2部分の上面後縁から後方に向けて下方に傾斜する傾斜面に形成されていることを特徴とする食器洗浄機。
【請求項2】
前記上部第2部分の前記上部第1部分寄りの端部の上面後縁は、上部第1部分の上面後縁から当該端部以外の上部第2部分の上面後縁に向けて斜め前方に傾斜した傾斜縁に形成され、この傾斜縁から上部第2部分の後面の傾斜面に向けて下方に落ち込む、傾斜縁を含む上下方向に平行な面に沿う段差面が当該端部に形成されることを特徴とする請求項1記載の食器洗浄機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前面が開放されたハウジングと、ハウジング内に前方に引き出し自在に収納される、食器類を収納可能な上面が開放された洗浄槽とを備える食器洗浄機であって、主としてシステムキッチンのカウンタトップの下に設置されるビルトイン式のものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の食器洗浄機では、洗浄槽の前方に、洗浄槽をハウジング内に収納したときにハウジングの前面開口を覆う前扉を取付けている。そして、洗浄槽の上面よりも上方に突出する前扉の上部前面に、洗浄槽を前方に引き出すときに指を掛ける取手部を形成している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、食器洗浄機では、洗浄効果、除菌効果等を得るために、一般的に、70℃以上の高温水を使用して食器類を洗浄している。そのため、食器洗浄機の運転中や運転停止直後の洗浄槽内の温度は70℃以上の高温になる。そして、食器洗浄機の運転途中や運転停止直後に洗浄槽を引き出すと、洗浄槽内の熱気が前扉の上部上方に吹き出し、取手部に指を掛けた使用者の手や腕に熱気が当たって、不快感を与えてしまうことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-86796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、洗浄槽を引き出す際に、使用者の手や腕に熱気が当たることを抑制できるようにした食器洗浄機を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、前面が開放されたハウジングと、ハウジング内に前方に引き出し自在に収納される、食器類を収納可能な上面が開放された洗浄槽と、洗浄槽の前方に取付けられ、洗浄槽をハウジング内に収納したときにハウジングの前面開口を覆う前扉とを備える食器洗浄機であって、洗浄槽の上面よりも上方に突出する前扉の上部前面に、洗浄槽を前方に引き出すときに指を掛ける取手部が形成されるものにおいて、前扉の上部の取手部を含む所定の横方向範囲の部分を上部第1部分、上部第1部分から横方向に外れた部分を上部第2部分として、上部第2部分の上面後縁が、上部第1部分の上面後縁よりも前方に位置し、上部第2部分の後面が、上部第2部分の上面後縁から後方に向けて下方に傾斜する傾斜面に形成されていることを特徴とする。
【0007】
ここで、食器洗浄機をシステムキッチンのカウンタトップの下に配置した場合、洗浄槽を引き出す際に、前扉の上部の上面後縁がカウンタトップの前縁よりも前方に変位したところで、洗浄槽内の熱気が外部に吹き出す。本発明では、洗浄槽を引き出す際に、前扉の上部のうち上部第2部分の上面後縁が上部第1部分の上面後縁よりも先にカウンタトップの前縁よりも前方に変位する。従って、取手部が存在する上部第1部分から横方向に外れた上部第2部分側で洗浄槽内の熱気が外部に吹き出すことになる。更に、本発明では、上部第2部分の後面が後下がりの傾斜面に形成されるため、熱気は上部第2部分側から前方に向かう方向成分を持って吹出すことになる。その結果、取手部に指を掛けた使用者の手や腕に熱気が当たることを抑制できる。
【0008】
また、本発明において、上部第2部分の上部第1部分寄りの端部の上面後縁は、上部第1部分の上面後縁から当該端部以外の上部第2部分の上面後縁に向けて斜め前方に傾斜した傾斜縁に形成され、この傾斜縁から上部第2部分の後面の傾斜面に向けて下方に落ち込む、傾斜縁を含む上下方向に平行な面に沿う段差面が当該端部に形成されることが望ましい。これによれば、上部第2部分側から吹き出す熱気に、上記段差面によって、上部第1部分から遠ざかる方向の横向き成分が与えられる。従って、取手部に指を掛けた使用者の手や腕に熱気が当たることを一層効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態の食器洗浄機の斜め前方から見た斜視図。
図2】実施形態の食器洗浄機の切断側面図。
図3】実施形態の食器洗浄機の要部の斜め後方から見た斜視図。
図4】カウンタトップの上方から見た実施形態の食器洗浄機のロック解除時の要部の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1図2に示す本発明の実施形態の食器洗浄機は、システムキッチンのカウンタトップCTの下に設置されるビルトイン式のものであり、前面が開放されたハウジング1と、ハウジング1内に前方に引き出し自在に収納される、食器類を収納可能な上面が開放された洗浄槽2とを備えている。ハウジング1内の上部には、洗浄槽2の開放された上面を閉塞するシール蓋11が設けられている。シール蓋11は、図外のばねで斜め前上方に付勢され、洗浄槽2をハウジング1から引き出した状態では、図示の位置よりも前上方の待機位置に変位する。また、洗浄槽2の上面前端部の横方向両端部には、シール蓋11の前縁の横方向両端部に前方から当接可能な突起部21が突設されている。そして、洗浄槽2をハウジング1内に収納するときに、収納最終段階で突起部21が待機位置に存するシール蓋11の前縁に当接し、以後、シール蓋11がばねの付勢力に抗して洗浄槽2と一緒に後方に移動すると共に図外のカム機構の働きで下方に移動して、洗浄槽2の上面を閉塞する図示の位置に変位する。
【0011】
洗浄槽2内には、食器類を支持する後述する食器かごが設置されると共に、食器かごに向けて洗浄水を噴射する洗浄ノズル3が設けられている。洗浄槽2の底部には、残菜フィルタ22を介して洗浄槽2内に連通する洗浄水の溜り部23が設けられている。洗浄槽2の底部下側には、溜り部23に連通する洗浄ポンプ4が設置されている。そして、洗浄ポンプ4を正転させたとき、洗浄槽2内の洗浄水が溜り部23と洗浄ポンプ4とを介して洗浄ノズル3に供給され、洗浄ポンプ4を逆転させたとき、洗浄水が洗浄槽2から排水されるようにしている。
【0012】
洗浄ノズル3は、洗浄槽2の下部で水平方向にのび、長手方向中央部で鉛直軸線回りに旋回自在な下ノズル31と、下ノズル31の長手方向中央部に立設された、洗浄槽2の中央部で上方にのびるセンターノズル32とを有している。下ノズル31は、これに形成したノズル孔31aから洗浄水を噴射し、この噴射反力により旋回する。センターノズル32は、その上部に形成したノズル孔32aから洗浄水を噴射する。
【0013】
また、食器かごとして、洗浄槽2の下部に、下ノズル31の上方に位置させて配置される、大皿、小皿、中鉢、椀等の比較的大型の食器類W1を支持する下かご5と、洗浄槽2の上部であって、センターノズル32から後方に離れた部分に配置される、湯呑みやコップ等の有底筒状の食器類W2を支持する上かご6とが設けられている。下かご5の中央部には、これに載置する食器類W1がセンターノズル32に干渉することを防止できるように、センターノズル32を囲うノズルガード枠51が立設されている。
【0014】
洗浄槽2の前方には、洗浄槽2をハウジング1内に収納したときにハウジング1の前面開口1aを覆う前扉7が取付けられている。前扉7は、洗浄槽2の前面の横方向両側部から前方に延出された取付板部24の前端に取付けられている。また、洗浄槽2の上面よりも上方に突出する前扉7の上部71には、横方向中央部の前面に位置させて、洗浄槽2を前方に引き出すときに指を掛ける取手部72が形成されている。取手部72には、ロック片721が付設されている。洗浄槽2がハウジング1内に収納されると、ハウジング1の前面開口1aの上縁部に設けられた被係合部12にロック片721が係合して、洗浄槽2が収納位置にロックされる。また、取手部72に指を掛ける際に、ロック片721が操作されてロックが解除される。そして、ロック解除時に、シール蓋11用のばねの付勢力によりシール蓋11が前上方の待機位置に移動すると共に、この移動に伴い洗浄槽2が突起部21を介して押されて所定ストロークだけ前方にせり出す。
【0015】
前扉7の上部71には、その後面下部から洗浄槽2の上面とほぼ同レベルで後方に延出される延出部74が設けられている。そして、延出部74の前方から見て右寄り部分に、運転スイッチを含む複数の操作スイッチ75a及び操作スイッチ75aによって設定された状態を表す表示器75bが配置された食器洗浄機の操作部75が設けられている。
【0016】
運転スイッチをオンしてから洗浄槽2をハウジング1内に収納すると、先ず、洗浄槽2に給水され、この水に図外の洗剤供給手段から洗剤が混入されて洗浄水が生成される。そして、洗浄水を洗浄槽2内のヒータ(図示せず)で70℃以上に加熱しつつ洗浄ポンプ4を正転させて、洗浄水を洗浄ノズル3から噴射させる洗浄運転を所定時間行う。洗浄運転完了後は、洗浄ポンプ4を逆転させて洗浄槽2内の洗浄水を排水する。次に、洗浄槽2に再び給水した後、洗浄ポンプ4を正転させて、洗浄ノズル3から水を噴射させるすすぎ運転を所定時間行った後、洗浄ポンプ4を逆転させて洗浄槽2内の水を排水する。尚、すすぎ運転は所定回数実施するが、最後の一回は水をヒータによる加熱で70℃以上の高温水にしつつ噴射させる加熱すすぎ運転を行う。次に、洗浄槽2内の空気をヒータで加熱しつつ図外の乾燥ファンにより洗浄槽2内に空気を送風する乾燥運転を所定時間行う。尚、洗浄槽2に図外の給湯器から高温水を供給することも可能であり、この場合は、乾燥運転専用のヒータを洗浄槽2内又は乾燥ファンから洗浄槽2へと繋がる送風路内に設ける。また、洗浄水を加熱するヒータと乾燥のために送風する空気を加熱するヒータとを分けて設けてもよい。
【0017】
上記の如く水や空気をヒータで加熱するのは、洗浄効果、除菌効果、乾燥効果を高めるためであり、食器洗浄機の運転中や運転停止直後の洗浄槽2内の温度は70℃以上の高温になる。そして、食器洗浄機の運転途中や運転停止直後に洗浄槽2を引き出すと、前扉7の上部71の上面後縁がカウンタトップCTの前縁よりも前方に変位したところで、洗浄槽2内の熱気が外部に吹き出す。この熱気が取手部72に指を掛けた使用者の手や腕に当たると、不快感を与えてしまう。
【0018】
そこで、本実施形態では、使用者の手や腕に熱気が当たることを抑制できるように、前扉7の上部71の形状を工夫している。以下、上部71の取手部72を含む所定の横方向範囲の部分、即ち、横方向中央部の所定範囲を上部第1部分71、上部第1部分71から横方向に外れた部分、即ち、上部第1部分71の横方向両側方に位置する部分を上部第2部分71として、上部71の形状について説明する。
【0019】
図3も参照して、上部第2部分71の上面後縁71aは、上部第1部分71の上面後縁71aよりも前方に位置している。また、上部第2部分71の後面は、上部第2部分71の上面後縁71aから後方に向けて下方に傾斜する傾斜面71bに形成されている。尚、上部第1部分71の後面は、殆どが上下方向に沿う面になっている。
【0020】
本実施形態によれば、図4に示す如く、洗浄槽2を引き出す際に、前扉7の上部71のうち上部第2部分71の上面後縁71aが上部第1部分71の上面後縁71aよりも先にカウンタトップCTの前縁よりも前方に変位する。従って、取手部72が存在する上部第1部分71から横方向に外れた上部第2部分71側で洗浄槽2内の熱気が外部に吹き出すことになる。ここで、上部第2部分71の後面が上下方向に沿う面であると、熱気がこの後面に沿って上方に吹き出し、吹き出した熱気が横方向に回り込んで取手部72に指を掛けた使用者の手や腕に当たることがある。これに対し、本実施形態では、上部第2部分71の後面が後下がりの傾斜面71bに形成されるため、熱気は、図4に矢印で示す如く、上部第2部分71側から前方に向かう方向成分を持って吹き出すことになる。その結果、取手部72に指を掛けた使用者の手や腕に熱気が当たることを抑制できる。
【0021】
また、本実施形態において、上部第2部分71の上部第1部分71寄りの端部の上面後縁は、上部第1部分71の上面後縁71aから当該端部以外の上部第2部分71の上面後縁71aに向けて斜め前方に傾斜した傾斜縁71cに形成されている。更に、上部第2部分71の上部第1部分71寄りの端部には、上記傾斜縁71cから上部第2部分71の後面の傾斜面71bに向けて下方に落ち込む、傾斜縁71cを含む上下方向に平行な面に沿う段差面71dが形成されている。これによれば、上部第2部分71側から吹き出す熱気に、段差面71dによって、上部第1部分71から遠ざかる方向の横向き成分が与えられる。従って、取手部72に指を掛けた使用者の手や腕に熱気が当たることを一層効果的に抑制することができる。
【0022】
尚、洗浄槽2を引き出す際に最初にロック片721を操作して行うロック解除で、上述したように洗浄槽2が所定ストロークだけ前方にせり出す。この所定ストロークは、上部第2部分71の上面後縁71aのみがカウンタトップCTの前縁よりも前方に位置するようなストロークに設定される。従って、ロック解除時に、洗浄槽2内の熱気が上部第2部分71側から外部に吹き出すことになる。そのため、ロック解除後の洗浄槽2の引き出し操作で、上部第1部分71の上面後縁71aがカウンタトップCTの前縁より前方に変位しても、上部第1部分71側から熱気が吹き出すようなことはない。
【0023】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記実施形態では、前扉7の上部71の横方向中央部に取手部72を設けているが、取手部72を前扉7の上部71の横方向一方に片寄った部分に設けることも可能である。但し、上記実施形態によれば、洗浄槽2を引き出す際に吹き出す熱気が左右に分散されるため、取手部72に左右どちらの手の指を掛けた場合でも、効果の偏りがなく、有利である。また、上記実施形態では、前扉7の上部71の上面前縁が上部第1部分71から上部第2部分71に亘り前後方向に揃った直線状になっているが、上部71の上面前縁を前後方向に湾曲した曲線等の前後方向に揃っていない形状にすることも可能である。
【符号の説明】
【0024】
1…ハウジング、2…洗浄槽、7…前扉、71…上部、71…上部第1部分、71a…上部第1部分の上面後縁、71…上部第2部分、71a…上部第2部分の上面後縁、71b…傾斜面、71c…傾斜縁、71d…段差面、72…取手部。
図1
図2
図3
図4