(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057681
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】管理システム、点検方法、サーバ装置
(51)【国際特許分類】
F24F 11/49 20180101AFI20240418BHJP
F24F 11/54 20180101ALI20240418BHJP
F24F 11/56 20180101ALI20240418BHJP
F24F 11/61 20180101ALI20240418BHJP
F24F 11/64 20180101ALI20240418BHJP
F24F 140/00 20180101ALN20240418BHJP
【FI】
F24F11/49
F24F11/54
F24F11/56
F24F11/61
F24F11/64
F24F140:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164484
(22)【出願日】2022-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】北出 幸生
(72)【発明者】
【氏名】八下田 政則
(72)【発明者】
【氏名】仙波 和人
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AB03
3L260BA31
3L260BA37
3L260BA64
3L260CB62
3L260CB69
3L260CB70
3L260FA02
3L260FA15
3L260HA06
3L260JA12
3L260JA23
(57)【要約】
【課題】シーズン前点検が行われない室内機が発生することを抑制すること。
【解決手段】本開示の第1の態様における管理システムは、室外機に複数の室内機が接続された空調機の運転データに基づいてサーバから空調機を管理する管理システムであって、前記サーバの制御部は、所定期間の間に運転した前記室外機に接続された複数の室内機のうち、前記所定期間内に運転していない室内機に対し、シーズン前点検を実施する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室外機に複数の室内機が接続された空調機の運転データに基づいてサーバから空調機を管理する管理システムであって、
前記サーバの制御部は、所定期間の間に運転した前記室外機に接続された複数の室内機のうち、前記所定期間内に運転していない室内機に対し、シーズン前点検を実施する管理システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記所定期間に運転していない室内機が所定の用途の室内機でないと判断すると、前記所定期間に運転していない室内機に対し、シーズン前点検を実施する請求項1に記載の管理システム。
【請求項3】
前記室外機に接続された複数の室内機が全て前記所定期間に運転していた場合、前記制御部は、前記室外機に接続された複数の室内機が所定の用途か否かを判断し、シーズン前点検の要否を判断する請求項1に記載の管理システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記室外機に接続された複数の室内機のうち、前記所定の用途の室内機に対し、シーズン前点検を指示しない請求項3に記載の管理システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記室外機に接続された複数の室内機のうち、前記所定の用途でない室内機に対し、シーズン前点検を指示する請求項3に記載の管理システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記室外機に接続された複数の室内機が所定の用途の室内機か否かを、前記室外機に接続された複数の室内機の設置場所に基づいて判断する請求項1~5のいずれか1項に記載の管理システム。
【請求項7】
前記制御部は、前記室外機に接続された複数の室内機が所定の用途の室内機か否かを、前記室外機に接続された複数の室内機の冬季における前記運転データに基づいて判断する請求項1~5のいずれか1項に記載の管理システム。
【請求項8】
前記制御部は、前記室外機に接続された複数の室内機が所定の用途の室内機か否かを、前記室外機に接続された複数の室内機の1日の前記運転データから求めた、24時間運転している日数の年間に対する比率に基づいて判断する請求項1~5のいずれか1項に記載の管理システム。
【請求項9】
室外機に複数の室内機が接続された空調機の運転データに基づいてサーバから空調機を管理する管理システムが行う点検方法であって、
前記サーバの制御部は、所定期間の間に運転した前記室外機に接続された複数の室内機のうち、前記所定期間内に運転していない室内機に対し、シーズン前点検を実施する点検方法。
【請求項10】
室外機に複数の室内機が接続された空調機の運転データに基づいてシーズン前点検を実施するサーバ装置であって、
所定期間の間に運転した前記室外機に接続された複数の室内機のうち、前記所定期間内に運転していない室内機に対し、シーズン前点検を実施する制御部、
を有するサーバ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、管理システム、点検方法、及びサーバ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
顧客側に設置された空調機などの機器とコントローラを接続し、コントローラとクラウドなどに配置されたサーバ装置とがネットワークを介して通信する管理システムが知られている。管理システムは、オフシーズンなどの一定期間、運転していない空調機に対してシーズン前運転を指示する。シーズン前運転の指示による運転を試運転という。
【0003】
特許文献1には、未操作期間が10日以上の場合に、気温情報に応じて試運転を指示する時期を決定する技術が開示されている。
【0004】
特許文献2には、設置地域情報を利用して、試運転を指示する時期を決定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-132235号公報
【特許文献2】特開2022-070128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の技術では、シーズン前点検が行われない室内機が発生するおそれがあるという問題がある。まず、サーバ装置からシーズン前点検を指示されたコントローラは、室外機が運転中の場合、試運転によりユーザーの設定よりも自動で温度が高くなったり低くなったりしないように、シーズン前点検の実施を制限する。ここで1つの室外機に複数の室内機が接続されているマルチ機では、一部の室内機のために室外機が常に運転している可能性があり、残りの室内機が所定期間停止していても、シーズン前点検が実施されない室内機が発生する可能性がある。
【0007】
本開示は、上記課題に鑑み、シーズン前点検が行われない室内機が発生することを抑制する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第1の態様における管理システムは、
室外機に複数の室内機が接続された空調機の運転データに基づいてサーバから空調機を管理する管理システムであって、
前記サーバの制御部は、所定期間の間に運転した前記室外機に接続された複数の室内機のうち、前記所定期間内に運転していない室内機に対し、シーズン前点検を実施する。
【0009】
本開示の第1の態様によれば、シーズン前点検が行われない室内機が発生することを抑制できる。
【0010】
本開示の第2の態様における管理システムは、第1の態様に記載の管理システムであって、
前記制御部は、前記所定期間に運転していない室内機が所定の用途の室内機でないと判断すると、前記所定期間に運転していない室内機に対し、シーズン前点検を実施する。
【0011】
本開示の第3の態様における管理システムは、第1の態様に記載の管理システムであって、
前記室外機に接続された複数の室内機が全て前記所定期間に運転していた場合、前記制御部は、前記室外機に接続された複数の室内機が所定の用途か否かを判断し、シーズン前点検の要否を判断する。
【0012】
本開示の第4の態様における管理システムは、第3の態様に記載の管理システムであって、
前記制御部は、前記室外機に接続された複数の室内機のうち、前記所定の用途の室内機に対し、シーズン前点検を指示しない。
【0013】
本開示の第5の態様における管理システムは、第3の態様に記載の管理システムであって、
前記制御部は、前記室外機に接続された複数の室内機のうち、前記所定の用途でない室内機に対し、シーズン前点検を指示する。
【0014】
本開示の第6の態様における管理システムは、第1~5の態様に記載の管理システムであって、
前記制御部は、前記室外機に接続された複数の室内機が所定の用途の室内機か否かを、前記室外機に接続された複数の室内機の設置場所に基づいて判断する。
【0015】
本開示の第7の態様における管理システムは、第1~5の態様に記載の管理システムであって、
前記制御部は、前記室外機に接続された複数の室内機が所定の用途の室内機か否かを、前記室外機に接続された複数の室内機の冬季における前記運転データに基づいて判断する。
【0016】
本開示の第8の態様における管理システムは、第1~5の態様に記載の管理システムであって、
前記制御部は、前記室外機に接続された複数の室内機が所定の用途の室内機か否かを、前記室外機に接続された複数の室内機の1日の前記運転データから求めた、24時間運転している日数の年間に対する比率に基づいて判断する。
【0017】
本開示の第9の態様における管理システムは、
室外機に複数の室内機が接続された空調機の運転データに基づいてサーバから空調機を管理する管理システムが行う点検方法であって、
前記サーバの制御部は、所定期間の間に運転した前記室外機に接続された複数の室内機のうち、前記所定期間内に運転していない室内機に対し、シーズン前点検を実施する。
【0018】
本開示の第9の態様によれば、シーズン前点検が行われない室内機が発生することを抑制できる。
【0019】
本開示の第10の態様における管理システムは、
室外機に複数の室内機が接続された空調機の運転データに基づいてシーズン前点検を実施するサーバ装置であって、
所定期間の間に運転した前記室外機に接続された複数の室内機のうち、前記所定期間内に運転していない室内機に対し、シーズン前点検を実施する。
【0020】
本開示の第10の態様によれば、シーズン前点検が行われない室内機が発生することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】管理システムがシーズン前点検を行う室内機を判断する流れを説明するフローチャート図の一例である。
【
図2】運転パターン1,2の使用形態を模式的に示す図である。
【
図3】管理システムのシステム構成の一例を示す図である。
【
図4】エッジ装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図5】サーバ装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図6】シーズン前点検に関する全体的な処理の流れを説明する図である。
【
図7】管理システムにおける室外機、エッジ装置、及び、サーバ装置の機能をブロックに分けて説明する機能ブロック図の一例である。
【
図8】機器情報記憶部に記憶されている機器情報の一例を示す図である。
【
図9】運転データ記憶部に記憶されている運転データの一例を示す図である。
【
図10】点検実行判断部が判断方法Aで室外機の運転パターンを判断する処理を説明するフローチャート図の一例である。
【
図11】点検実行判断部が判断方法Bで室外機の運転パターンを判断する処理を説明するフローチャート図の一例である。
【
図12】運転パターン1,2の判断に基づいて、サーバ装置がシーズン前点検を、エッジ装置を介して室外機に送信する処理を説明するシーケンス図の一例である。
【
図13】点検実行判断部が運転パターン3の室外機か否か判断し、室外機に接続された複数の室内機にシーズン前点検を実施するか否か判断する手順を説明するフローチャート図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本開示を実施するための形態の一例として、管理システムと管理システムが行う点検方法について説明する。
【0023】
<管理システムの動作の概略>
空調機は、一定期間、動作していない場合(オフシーズンなど継続的に停止していた場合)、不具合が発生していないことを点検することが好ましいとされている。このような点検をシーズン前点検という。サーバ装置は、例えばシーズン前の予め指定されたタイミングでエッジ装置にシーズン前点検を指示する。シーズン前点検を行うことを試運転という。
【0024】
エッジ装置は、シーズン前遠隔点検指示を受け取った場合、対象の室外機の運転状態(現在、運転している、運転していない)を判断し、試運転の要否を決定する。エッジ装置は、「すでに運転しているのあれば、ユーザーの使用を妨げないように、点検を中断する」という仕様になっている。
【0025】
ここで、一台の室外機に複数の室内機が接続されているマルチ機において、一台がサーバなどの設備冷却用空調機で、残りの室内機が一般空調機として使われる場合がある。マルチ機の態様の1つである冷暖フリー機は、室外機に接続された複数の室内機の一部を冷房運転、残りを暖房運転することができる。設備冷却用空調機は、年間を通して冷房運転されるため、エッジ装置は残りの室内機が運転停止中でも、室外機が運転中なので残りの室内機も運転中と判断してしまい、シーズン前運転を行うことができない。
【0026】
一方、マルチ機の態様の1つである年間冷専機のように常時冷房運転している室外機の場合、室内機がシーズン前運転の指示で試運転すると、一時的に能力が抑えられ室温が上昇したり、強制的に能力アップが行われ室温が低下したりする可能性がある。したがって、エッジ装置は年間冷専機に対しシーズン前点検を指示すべきでない。年間冷専機とは、温度により歩留まりの影響を受ける精密組み立て工場、貯蔵室、保管室、食品などの生産、醸造、製薬などで使用され、年間を通して冷却のみ行う室外機である。年間冷専機がサーバ室の冷却に使用される場合もある。年間冷専機は標準的な室外機であり、複数の室内機は同時には冷房運転又は暖房運転のどちらか一方のみ可能である。年間冷専機に接続された室内機も設備冷却用空調機の一種である。試運転では暖房運転する場合もあり、更に設備に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0027】
<本開示の管理システムの基本的な処理の流れ>
そこで、
図1に示すように、本開示の管理システムは、以下のようにシーズン前点検が行われない室内機の発生を抑制する。
図1は、管理システムがシーズン前点検を行う室内機を判断する流れを説明するフローチャート図である。
【0028】
まず、後述するサーバ装置が、室外機に接続された複数の室内機が所定期間、停止しているか否か判断する(S1)。室外機が所定期間停止していれば、室外機に接続された複数の室内機も所定期間、停止している。
【0029】
ステップS1の判断がYesの場合、全ての室内機がシーズン前点検の対象となるので、サーバ装置は、全ての室内機がシーズン前点検の対象であると判断する(S6)。
【0030】
ステップS1の判断がNoの場合、サーバ室などのために所定期間に運転している室内機があるので、サーバ装置は、室外機に接続された複数の室内機のそれぞれについて所定期間に運転しているか否か判断する(S2)。ステップS2の判断方法として後述する運転パターン1~3がある。
【0031】
複数の室内機のうち少なくとも一台が運転していない場合、サーバ装置は所定期間内に運転していない室内機に対しシーズン前点検を行うと判断する(S3)。
【0032】
複数の室内機の全てが運転していた場合、サーバ装置は、室内機がサーバ室専用など特定の用途か否かを判断する(S4)。室内機が特定の用途か否かを判断する方法としては以下のように室内機の運転パターンを判断する方法がある。
・一般空調機として使われている室内機と設備冷却用空調機として使われている室内機とが1つの室外機に混在する運転パターン(パターン1)
・室外機に接続された全ての室内機が設備冷却用空調機であり、年間冷専機のように室外機が常時冷房運転している運転パターン(パターン2)
・室外機が冷暖フリー機であり、室内機がサーバ室などの設置場所に設置されている運転パターン(パターン3)
ステップS4の判断がYesの場合、サーバ室の室内機はシーズン前点検すべきでないので、サーバ装置は、サーバ室の室内機に対しシーズン前点検しないと判断する(S5)。
【0033】
ステップS4の判断がNoの場合、特定の用途でない室内機はシーズン前点検してよく、サーバ装置は、サーバ室の室内機でない室内機に対しシーズン前点検すると判断する(S6)。
【0034】
このように、本開示の管理システムは、室内機50が所定期間に運転しているか確認し、更に、特定の用途か否か判断するので、シーズン前点検を実施すべき室内機についてシーズン前点検を実施できる。
【0035】
<パターン1~3について>
パターン1~3について詳細に説明する。室外機30が冷暖フリー機であり、室外機に接続された複数の室内機に、一般空調機として使われている室内機50と設備冷却用空調機として使われている室内機50とが混在する運転パターンをパターン1という。パターン1の場合、サーバ装置60が一般空調機に対して試運転ができなくなる。
【0036】
また、年間冷専機のように室外機30が常時冷房運転している運転パターンをパターン2という。パターン2の場合、エッジ装置10がシーズン前点検の対象から外す必要がある。
【0037】
図2は、パターン1,2の使用形態を模式的に示す。
図2(a)は、パターン1で使用されている管理システム100を示し、
図2(b)はパターン2で使用される管理システム100を示す。
図2(a)の室外機30は冷暖フリー機で、室内機50bは設備冷却用空調機であり、室内機50aは一般空調機である。
図2(b)の室外機30は年間冷専機で、室内機50c、50dはいずれも設備冷却用空調機である。
【0038】
パターン3は、パターン1、2を室内機50の設置場所と室外機30の機能により判断した場合における運転パターンである。
図2(a)において、室外機30が冷暖フリー機で、室内機50bがサーバ室に設置されていることが分かれば、室内機50bはシーズン前点検の対象でない。室外機30が冷暖フリー機で、室内機50aがサーバ室に設置されていないことが分かれば、室内機50aはシーズン前点検の対象である。
図2(b)において、室外機30が冷暖フリー機なく、室内機50c、50dがサーバ室に設置されていることが分かれば、室内機50c、50dはシーズン前点検の対象でない。
【0039】
本開示では、サーバ装置60が室内機50の過去の運転データ又は設置場所などを分析し、上記運転パターンを自動で判断し、室内機50ごとにシーズン前点検を行うか否か判断する。運転パターンの判断方法の詳細は後述する。サーバ装置60は運転パターンに応じて、以下のように、適切な対処を行う。
【0040】
パターン1の場合:
サーバ装置60はパターン1の室外機30であることをエッジ装置10に通知する。エッジ装置10は、サーバ装置60からシーズン前点検の指示を受信した場合、設備冷却用として判断された室内機50に対し、指示が冷房、暖房、又はシーズン前点検のいずれであるか関わらず冷房モードで運転させる。エッジ装置10は、一般空調機として判断された室内機50に対し、シーズン前点検を実施する。
【0041】
パターン2の場合:
サーバ装置60は年間冷専機に対しては、シーズン前点検を室外機30に指示しない。また、サーバ装置60は、ユーザーに対してはシーズン前点検の対象外である旨を伝える。
【0042】
パターン3の場合:
パターン3の場合、パターン1と2のいずれかと同じになり、室内機50の設置場所と室外機30の機能に応じて、シーズン前点検が実施される。
【0043】
このように、本開示の管理システム100は、マルチ機であっても室内機50ごとに運転しているか否か確認したのちに、一定期間、運転していない室内機50については各室内機50にシーズン前点検を指示でき、シーズン前点検が行われない室内機50が発生することを抑制できる。また、管理システム100は、シーズン前点検を行うべきでない室内機50をシーズン前点検の対象から除外できる。
【0044】
<用語について>
所定期間とは、シーズン前の所定期間である。例えば、東京における冷房のシーズン前の場合、所定期間は4月と5月であり、暖房のシーズン前の場合、所定期間は10月と11月である。シーズン前の所定期間は地域によって異なってよい。
【0045】
特定の用途とは、室内機50が設備冷却用空調機であることをいう。本開示では、特定の用途として、室内機50がサーバ室に設置されることを例に説明する。また、特定の用途であるかどうかが、室内機50の設置場所で判断されてよい。また、室外機に接続された全ての室内機50が特定の用途で使用されていることが分かれば、室外機の設置場所で判断されてもよい。
【0046】
<管理システムのシステム構成>
次に、
図3を参照し、管理システム100のシステム構成について説明する。
図3は、管理システム100のシステム構成の一例を示す図である。
【0047】
管理システム100は、空調、照明などの各種の機器90とクラウド側のサーバ装置60を、ネットワークNを介して通信させることで、管理者から一般ユーザーに至るまでIoTを活用した様々なサービスを提供する。エッジ装置10、機器90、センサスイッチ類53及びユーザー端末70は顧客側に配置され、サーバ装置60はデータセンターやインターネット等のクラウドに配置される。
【0048】
機器90は、電力を消費する装置全般を指し、例えば、空調機、防犯設備、熱源機器、火災警報器、AHU(エアハンドリングユニット)、電力量計、照明等である。センサスイッチ類53は、各種センサ、ランプ、リレー等である。機器90及びセンサスイッチ類53は、専用ケーブル又はLAN等のネットワークを介してエッジ装置10と通信可能に接続されている。機器90及びセンサスイッチ類53は無線通信でエッジ装置10と通信可能に接続されていてもよい。
【0049】
機器90及びセンサスイッチ類53は、エッジ装置10により制御される。換言すると、エッジ装置10は、機器90及びセンサスイッチ類53の目的に適合するように、機器90及びセンサスイッチ類53に所要の操作を加える。制御の内容は、機器90及びセンサスイッチ類53の種類によって様々だが、例えば機器90が空調機の場合、空調機にて一般に設定可能な冷暖モード、設定温度、風量、湿度、風向等、空調機が有する機能に関する全ての制御が含まれてよい。また、制御には、シーズン前点検専用モードなどの動作モード、マイコンリセット、運転の停止、及び、機能の代用などもある。
【0050】
エッジ装置10は機器90に応じた運転データを収集し、サーバ装置60に主に定期的に送信する。定期的とは例えば1回/1分間、1回/10分間、1回/60分間等であるが、ユーザーやサーバ装置60が設定できてよい。また、エッジ装置10やユーザー端末70からの要求で、機器90が運転データをエッジ装置10に送信できる。運転データは、機器90によって様々であるが、例えば、空調機の場合、冷媒の高圧圧力、低圧圧力、冷媒温度、ファンの回転数、及びマイコンのCPU温度など、様々である。
【0051】
また、機器90が異常を検知した場合は異常コードをエッジ装置10に送信する。異常を検知した機器90は運転を停止する。エッジ装置10は異常コードをサーバ装置60に送信する。センサスイッチ類53に関してもエッジ装置10の処理は同様でよい。センサスイッチ類53はエッジ装置10に主に定期的に自機の情報を送信したり、異常コードを送信したりする。
【0052】
なお、機器90は、自機が有する故障予知エンジンにより故障の予知を検知し、予知コードをエッジ装置10に送信することができる。
【0053】
エッジ装置10は、機器90及びセンサスイッチ類53を制御するコントローラである。エッジ装置10は、機器90及びセンサスイッチ類53を制御する制御装置、運転データ等を処理する情報処理装置、及び、サーバ装置60と通信する通信装置としての機能を有している。エッジ装置10は、例えば機器90から受信した異常コードをサーバ装置60に送信し、サーバ装置60から異常コードに応じた指示を受信する。あるいは、エッジ装置10が、サーバ装置60に何ら情報を送信しなくても、サーバ装置60から指示を受信する(例えばユーザー端末70からサーバ装置60に指示がある場合)。エッジ装置10は、機器90及びセンサスイッチ類53の機種に応じて指示を適切な指示に変換し、機器90及びセンサスイッチ類53に送信する。
【0054】
サーバ装置60は、一台以上の情報処理装置である。
図3では一台のサーバ装置60が示されているが、サーバ装置60は機能ごとにいくつかに分かれて配置されてよい。また、サーバ装置60は、一台の情報処理装置によりその機能が集約されていてもよい。また、サーバ装置60は、複数台の同じ機能のものが用意されていて、複数のサーバ装置60がサーバクラスタのように通信しながら処理してもよい。
【0055】
サーバ装置60は、ネットワークNを介してエッジ装置10から送信される異常コードなどを受信し、必要な指示を生成する。例えば異常コードに対しサーバ装置60は、応急運転をエッジ装置10に指示する。また、サーバ装置60は、ユーザー端末70が設定したスケジュールや操作に応じてシーズン前点検など、機器90への指示をエッジ装置10に送信することもできる。
【0056】
サーバ装置60は、Webサーバの機能も有している。Webサーバはユーザーが手元で操作するWebブラウザなどのクライアントソフトウェア(Webクライアント)からの要求に応えて、HTMLファイル、XML、CSSファイル、JavaScript(登録商標)などで記述された画面情報をクライアントに提供する。このようにWebの仕組みを使用するアプリケーションをWebアプリという。
【0057】
なお、サーバ装置60は、クラウドコンピューティングに対応していることが好ましい。クラウドコンピューティングとは、特定ハードウェア資源が意識されずにネットワーク上のリソースが利用される利用形態をいう。クラウドコンピューティングは、従来はユーザーが手元のコンピュータで利用していたデータやソフトウェアを、ネットワーク経由で、サービスとしてユーザーに提供する。ユーザー側はパーソナルコンピュータや携帯情報端末などで動作するWebブラウザ、及びインターネット接続環境などを用意することで、どの端末からでも、様々なサービスを利用することができる。
【0058】
ユーザー端末70は、サーバ装置60が提供する各種の画面を表示するクライアント端末である。ユーザー端末70は、管理者が使用してもよいし、一般ユーザーが使用してもよい。管理者には顧客側の管理者と管理システム側の管理者がいるが本開示では区別しない。また、管理者は、日常的に機器90を使用する一般ユーザーが行わない保守や管理を行う者である。
【0059】
ユーザー端末70が表示する画面は多種多様であるが、一例として、エッジ装置10に接続された機器90及びセンサスイッチ類53の一覧画面、機器90及びセンサスイッチ類53が配置された場所を示す社内マップ、及び、機器90やセンサを操作する操作画面などがある。
【0060】
ユーザー端末70は、例えば、PC(Personal Computer)、スマートフォン、タブレット端末、PDA(Personal Digital Assistant)、ウェアラブルPC(サングラス型、腕時計型など)などである。ただし、通信機能を有しWebブラウザが動作すればよい。また、ユーザー端末70ではWebブラウザでなく、管理システム100に専用のネイティブアプリが動作してもよい。
【0061】
<エッジ装置及びサーバ装置のハードウェア構成>
次に、
図4を参照して、エッジ装置10のハードウェア構成について説明する。
図4は、エッジ装置10のハードウェア構成の一例を示す図である。
図4に示すように、エッジ装置10は、プロセッサ201、メモリ202、補助記憶装置203、I/F(Interface)装置204、通信装置205、ドライブ装置206を有する。なお、エッジ装置10の各ハードウェアは、バス207を介して相互に接続されている。
【0062】
プロセッサ201は、CPU(Central Processing Unit)等の各種演算デバイスを有する。プロセッサ201は、各種プログラムをメモリ202上に読み出して実行する。
【0063】
メモリ202は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の主記憶デバイスを有する。プロセッサ201とメモリ202とは、いわゆるコンピュータを形成し、プロセッサ201が、メモリ202上に読み出した各種プログラムを実行する。
【0064】
補助記憶装置203は、各種プログラムや、各種プログラムがプロセッサ201によって実行される際に用いられる各種データを格納する。
【0065】
I/F装置204は、外部装置の一例である機器90、センサスイッチ類53と、エッジ装置10とを接続する接続デバイスである。
【0066】
通信装置205は、ネットワークNを介してサーバ装置60と通信するための通信デバイスである。
【0067】
ドライブ装置206は記録媒体210をセットするためのデバイスである。ここでいう記録媒体210には、CD-ROM、フレキシブルディスク、光磁気ディスク等のように情報を光学的、電気的あるいは磁気的に記録する媒体が含まれる。また、記録媒体210には、ROM、フラッシュメモリ等のように情報を電気的に記録する半導体メモリ等が含まれていてもよい。
【0068】
なお、補助記憶装置203にインストールされる各種プログラムは、例えば、配布された記録媒体210がドライブ装置206にセットされ、該記録媒体210に記録された各種プログラムがドライブ装置206により読み出されることでインストールされる。あるいは、補助記憶装置203にインストールされる各種プログラムは、通信装置205を介してネットワークNからダウンロードされることで、インストールされてもよい。
【0069】
一方、
図5は、サーバ装置60のハードウェア構成の一例を示す図である。なお、サーバ装置60のハードウェア構成は、エッジ装置10のハードウェア構成と概ね同じであるため、ここでは、エッジ装置10のハードウェア構成との相違点を中心に説明する。
【0070】
プロセッサ221は、各種プログラムをメモリ222上に読み出して実行する。プロセッサ221は、サーバ装置60の全体を制御する制御部110に相当する。
【0071】
I/F装置224は、外部装置の一例である表示装置230、操作装置240と、サーバ装置60とを接続する接続デバイスである。表示装置230は、サーバ装置60の内部状態を表示する。操作装置240は、サーバ装置60の管理者がサーバ装置60に対して各種指示を入力する際に用いられる。
【0072】
通信装置225は、ネットワークNを介してエッジ装置10及びユーザー端末70と通信するための通信デバイスである。
【0073】
<シーズン前点検の全体の流れ>
図6は、シーズン前点検に関する全体的な処理の流れを説明する図である。以下、処理の流れに沿って説明する。
【0074】
(1) サーバ装置60は、例えば過去一年分の室内機50の運転データに基づいて、パターン1,2を判断し、パターン1の場合は室内機50ごとに設備冷却用空調機か一般空調機かを判断する。また、サーバ装置60は室内機50の設置場所と室外機30が冷暖フリー機かどうかによりパターン3(パターン1,2が含まれる)を判断することができる。サーバ装置60は、室内機50に対応付けて室内機判別情報を保持する。室内機判別情報は、室内機50ごとに設備冷却用空調機か一般空調機か区別された情報である。
【0075】
(2) サーバ装置60は、予め設定されたタイミング(季節の切り替わりなど)を検出して、自動的に点検案内メールを顧客の管理者に送信する。
【0076】
(3) 顧客の管理者はメールによりシーズン前の試運転を行うべきと判断すると、点検日時をサーバ装置60に設定する。なお、必ずしもメールはなくてもよいし、電話やSNSで連絡されてもよい。
【0077】
(4) サーバ装置60は設定された点検日時に、パターン1~3に応じた室内機50別の点検指示をエッジ装置10に送信する。詳細は後述する。
【0078】
(5) エッジ装置10は、パターン1の室外機30に対して、設備冷却用空調機には冷房モードの運転を指示し、一般空調機には通常の点検指示を行う。エッジ装置10は、パターン2の室外機30に対して、点検指示を送信しない。パターン3の場合は、パターン1,2の組み合わせとなる。
【0079】
(6) パターン1の室外機30は、指示に応じた運転を、設備冷却用空調機及び一般空調機のそれぞれに対して指示する。
【0080】
(7) シーズン前点検プログラムには故障予知エンジン33が含まれるので、運転データに対し故障を予知する。故障が予知されると予知コードが生成される。室外機30は予知コードをエッジ装置10に送信し、エッジ装置10がサーバ装置60に送信する。
【0081】
(8) サーバ装置60は、故障予知記憶部65に保存された点検結果(予知コード又は正常)に基づいて、点検結果をメール等で顧客に送信する。
【0082】
<機能について>
次に、
図7を参照して、管理システム100が有する各装置の機能構成について詳細に説明する。
図7は、管理システム100における室外機30、エッジ装置10、及び、サーバ装置60の機能をブロックに分けて説明する機能ブロック図の一例である。
【0083】
<<室外機>>
室外機30は、通信部31、運転部32、故障予知エンジン33、及び、試運転実行部34を有している。室外機30が有するこれら各部は、室外機30が有するマイコンがプログラムの命令を実行することや、室内機50又は室外機30が有する空調機構などの制御によって実現される機能又は手段である。室外機30には、シーズン前点検プログラム40がインストールされている。シーズン前点検プログラム40は、点検専用モードで室外機30を運転するためのプログラムである。故障予知エンジン33と試運転実行部34はシーズン前点検プログラム40により実現される。
【0084】
通信部31は、エッジ装置10と専用ケーブルやネットワークを介して通信する。本開示では、通信部31は、運転データをエッジ装置10に送信したり、シーズン前点検の指示をエッジ装置10から受信したりする。
【0085】
運転部32は、室外機30、室内機50をそれぞれ制御して、ユーザーがリモコン等で設定した冷暖モード、設定温度、風量などに応じた空調運転を行う。
【0086】
故障予知エンジン33は故障を予知する機能である。故障を予知とは、運転を継続できないほどの異常ではなく、運転は可能だが故障につながるおそれがある状態が検出されることをいう。これに対し、運転の継続が困難な状態を故障という。故障予知エンジン33は、運転データと故障が生じた場合と生じない場合の対応を機械学習の学習データとして、ディープラーニングなどのアルゴリズムで、運転データに対し故障の可能性を出力するように学習させた識別モデルをいう。故障予知エンジン33は、入力された運転データに対し故障の可能性(確率)を出力する。故障予知エンジン33はこの確率が閾値を超えた場合、故障を予知したと判断する。
【0087】
機械学習とは、コンピュータに人のような学習能力を獲得させるための技術であり、コンピュータが、データ識別等の判断に必要なアルゴリズムを、事前に取り込まれる学習データから自律的に生成し、新たなデータについてこれを適用して予測を行う技術のことをいう。機械学習のための学習方法は、教師あり学習、教師なし学習、半教師学習、強化学習、深層学習のいずれかの方法でもよく、更に、これらの学習方法を組み合わせた学習方法でもよく、機械学習のための学習方法は問わない。機械学習の手法には、パーセプトロン、ディープラーニング、サポートベクターマシン、ロジスティック回帰、ナイーブベイズ、決定木、ランダムフォレストなどがあり、本開示で説明する手法には限られない。
【0088】
例えば、ディープラーニングは、入力されたデータABCに基づいてXYZを予測した後に、教師データとの誤差を減らすために誤差逆伝播法でニューラルネットワーク間の重みを調整するアルゴリズムである。
【0089】
試運転実行部34は、室外機30、室内機50の部品チェックを行える状態を強制的に生じさせる。故障予知エンジン33は試運転における運転状態からも故障の予知を検知できる。主に、夏や冬に空調機が使用されるシーズン前に行われる点検をシーズン前点検という。ただし、試運転はシーズン前でなくても実行可能である。シーズン前点検プログラムは、通常の運転では生じない部品の状態を強制的に生じさせることができる。一例として、シーズン前点検は、膨張弁が決まった可動範囲で開閉するか、圧縮機が決まった圧力を生成できるか、電磁弁の開閉が可能か、任意のアクチュエータがコマンドどおりに動作するか、などを行う。
【0090】
<<エッジ装置>>
エッジ装置10は、通信部11、13、及び、指示制御部12を有している。エッジ装置10が有するこれら各部は、
図4に示されている各構成要素のいずれかが、補助記憶装置203からメモリ202に展開されたプログラムに従ったプロセッサ201からの命令によって動作することで実現される機能、又は手段である。
【0091】
通信部13は、室外機30と専用ケーブルやネットワークを介して通信する。本開示では、通信部13は、室外機30に対し、サーバ装置60から指示された、パターン1~3に応じたシーズン前点検の実行を指示する。
【0092】
また、通信部11は、サーバ装置60とネットワークNを介して通信する。本開示では、通信部11はシーズン前点検の実行指示をサーバ装置60から受信する。
【0093】
指示制御部12は、サーバ装置60からシーズン前点検指示を受信すると、パターン1の設備冷却用空調機と判断された室内機50を冷房モードで運転させるよう室外機30に指示する。エッジ装置10は、一般空調機として判断された室内機50に対し、シーズン前点検を実施するよう室外機30に指示する。いずれの場合も指示制御部12は、室内機50が運転中はシーズン前点検の実施を指示しない。また、指示制御部12は、パターン2の設備冷却用空調機と判断された室内機50のみを有する室外機30(年間冷専機)にはシーズン前点検を指示しない(そもそも、サーバ装置60からエッジ装置10にシーズン前点検の指示が送信されないが、仮に指示が来てもシーズン前点検を指示しない)。
【0094】
<<サーバ装置>>
サーバ装置60は、通信部61、試運転指示部62、点検実行判断部63、スケジュール記憶部64、故障予知記憶部65、運転データ記憶部66、及び、機器情報記憶部67、を有している。サーバ装置60が有するこれら各部は、
図5に示されている各構成要素のいずれかが、補助記憶装置223からメモリ222に展開されたプログラムに従ったプロセッサ221からの命令によって動作することで実現される機能、又は手段である。またスケジュール記憶部64、故障予知記憶部65、運転データ記憶部66、及び機器情報記憶部67は、
図5に示されている補助記憶装置223等によって構築される。
【0095】
通信部61は、エッジ装置10とネットワークNを介して通信する。本開示では、通信部61はシーズン前点検の実行指示をエッジ装置10に送信する。
【0096】
試運転指示部62は、スケジュール記憶部64に設定された試運転のスケジュールに基づいて、シーズン前点検の実行指示(試運転の指示)をエッジ装置10に送信する。ただし、試運転指示部62は、パターン2の室外機30についてはシーズン前点検を指示しない。
【0097】
点検実行判断部63は、室外機30に接続されている複数の室内機50の運転状態に基づいて、パターン1,2を判断する。パターン1,2の判断方法の一例としてA、Bの2つ判断方法を挙げる。
【0098】
A:各室内機50の冬季における運転状況
・特定の室内機50が冷房、残りの室内機50が暖房 →パターン1
・全ての室内機50が冷房 →パターン2
B:各室内機50の1日の運転状況(24時間運転していた)
・特定の室内機50が24時間運転、残りの室内機50が昼間のみ運転 →パターン1
・全ての室内機50が24時間運転 →パターン2
また、点検実行判断部63は、パターン3に関する判断も行うことができる。点検実行判断部63は、室内機50の設置場所と室外機30の機能(主に冷暖フリー機かどうか)により室内機50がシーズン前点検の対象かどうか判断する。
【0099】
スケジュール記憶部64には、ユーザー端末70から設定されたシーズン前点検を実施する日時が設定されている。顧客が勤務中に不意に空調機が動作し、気温や湿度が大きく変動すると業務に支障を来すので、通常、勤務時間外にシーズン前点検の日時が設定される。
【0100】
故障予知記憶部65には、故障予知エンジン33で検知された予知コードが室内機と室内機の識別情報に対応付けて記録される。点検指示に対し故障予知エンジン33で予知コードが生成されない場合も、点検の結果問題ない旨(正常)が室内機と室外機の識別情報等に対応付けて記録される。予知コードが記憶された顧客に対しては、カスタマーエンジニアなどが訪問することができる。正常が記憶された顧客に対しては、点検の結果問題ない旨がメールなどで顧客の管理者に送信される。
【0101】
次に、
図8を参照し機器情報記憶部67について説明する。
図8は、機器情報記憶部67に記憶されている機器情報を示す。機器情報記憶部67には、室外機30の運転パターン及び室内機判別情報が登録されている。
【0102】
・室外機IDは、室外機30の識別情報である。室外機IDは、例えば型番に製造番号を組み合わせたものなど、室外機30が送信でき、室外機30を一意に識別できるものであればよい。
【0103】
・機種は、室外機30が冷暖フリー機、又は年間冷専機(標準機)等を示す。
【0104】
・運転パターンは、パターン1か2を示す。
【0105】
・室内機判別情報は、運転パターンがパターン1の場合、室内機IDと一般空調機又は設備冷却用空調機の区別を対応付けた情報である。運転パターンがパターン2の場合、室内機判別情報は不要であるが、室内機50は全て設備冷却用空調機である。系統/設置場所は、室外機30の系統名と室内機50の設置場所である。パターン2の場合は系統名だけあればよい。系統とは室外機30を識別するための設置場所や冷却先などをいう。
【0106】
室外機ID、機種、及び、系統/設置場所は、空調機の設置者等がサーバ装置60に登録しておく。その他の情報はサーバ装置60が判断する。
【0107】
図9は、運転データ記憶部66に記憶されている運転データを示す。運転データ記憶部66には、室外機に接続された複数の室内機の運転データが保存されている。室外機30は1時間に1回などの決まったタイミングで、室外機に接続された各室内機50の運転データを、エッジ装置10を介してサーバ装置60に送信している。運転データは、例えば運転モード(冷房、暖房)、1時間当たりの運転時間、設定温度、及び外気温等である。
図9では、便宜上、1つの室外機30について、運転データから判断された、24時間運転か又は一時運転かが、日付に対応付けて設定されている。24時間運転又は一時運転の際、冷房運転か、暖房運転かも設定されている。
図9では1月1日から3日までしかないが、同様の運転データが年間にわたって保持される。
【0108】
室外機30が複数の室内機50に対し同時に冷房運転と暖房運転を混在した状態で実行しているか、又は、室外機30に接続された各室内機50が、24時間運転されているどうかによりパターン1,2の判断が可能である。
【0109】
<<ユーザー端末>>
ユーザー端末70はWebブラウザでサーバ装置60に接続し、スケジュール設定画面を表示する。顧客の管理者はスケジュール設定画面から所望の日時を設定できる。なお、管理者がシーズン前にシーズン前点検の実施を失念しないように、自動的に又はカスタマーエンジニアなどが顧客の管理者にスケジュールの設定をメールや電話などで促すとよい。顧客の管理者は、メールに所望の日時を設定して返送するだけで、所望の日時を設定できる。
【0110】
<パターン1,2の判断>
まず、
図10を参照して、パターン1,2の判断方法を説明する。
図10は、点検実行判断部63が判断方法Aで室外機30の運転パターンを判断する処理を説明するフローチャート図である。
【0111】
点検実行判断部63は、運転データ記憶部66からの過去の冬期の運転データを取得する(S11)。冬期の運転データは例えば直近の冬期でよい。冬期とは北半球ではおよそ12月~2月までをいう。
【0112】
点検実行判断部63は、冬期の全期間で、特定の室内機50が冷房運転のみを継続して行い、残りの室内機50が特定の室内機50と同時に暖房運転を行っているか判断する(S12)。
【0113】
ステップS12の判断がYesの場合、点検実行判断部63は、当該室外機30の運転パターンをパターン1と判断する(S13)。
【0114】
ステップS12の判断がNoの場合、点検実行判断部63は、冬期の全期間で、全ての室内機50が冷房運転のみを行っているか判断する(S14)。
【0115】
ステップS14の判断がYesの場合、点検実行判断部63は、当該室外機30の運転パターンをパターン2と判断する(S15)。
【0116】
ステップS14の判断がNo場合、点検実行判断部63は、当該室外機30の運転パターンがパターン1,2のどちらでもないと判断する(S16)。この場合は、シーズン前点検の対象としてよいが、好ましくはサーバ室の室内機50かどうか判断するとよい。
【0117】
図11は、点検実行判断部63が判断方法Bで室外機30の運転パターンを判断する処理を説明するフローチャート図である。
【0118】
点検実行判断部63は、運転データ記憶部66から運転データを日にち別に取得する(S21)。
【0119】
点検実行判断部63は、一部の室内機50が24時間運転で、残りの室内機50が一時運転か判断する(S22)。点検実行判断部63は、例えば、一部の室内機50が年間の日数の90~100%以上の比率で24時間運転しており、残りの室内機50が年間の日数の5%未満の比率で24時間運転しているなどの条件を満たすかどうか判断する。
【0120】
ステップS22の判断がYesの場合、点検実行判断部63は、当該室外機30の運転パターンをパターン1と判断する(S23)。
【0121】
ステップS22の判断がNoの場合、点検実行判断部63は、室外機に接続された全ての室内機50が24時間運転か判断する(S24)。点検実行判断部63は、全ての室内機50が年間の日数の90~100%以上の比率で、24時間運転であるなどの条件を満たすかどうか判断する。
【0122】
ステップS24の判断がYesの場合、点検実行判断部63は、当該室外機30の運転パターンをパターン2と判断する(S25)。
【0123】
ステップS24の判断がNoの場合、点検実行判断部63は、当該室外機30の運転パターンがパターン1,2のどちらでもないと判断する(S26)。この場合は、シーズン前点検の対象としてよいが、好ましくはサーバ室の室内機50かどうか判断するとよい。
【0124】
図10,
図11で、パターン1と判断されることは、
図1のステップS2で少なくとも一台が所定期間に運転していないと判断されること、又は、
図1のステップS4で室内機50によってYes又はNoと判断されることに相当する。
【0125】
図10,
図11で、パターン2と判断されることは、
図1のステップS2で全てが運転されていると判断され、更に、ステップS4で全ての室内機50がYesと判断されることに相当する。
【0126】
<パターン1,2の判断に基づいたシーズン前点検の指示の流れ>
まず、
図12を参照して、パターン1,2の判断に基づくシーズン前点検の流れについて説明する。
図12は、パターン1,2の判断に基づいて、サーバ装置60がシーズン前点検を、エッジ装置10を介して室外機30に送信する処理を説明するシーケンス図である。
【0127】
S101~S106:室外機に接続された各室内機50は、一時間に1回などの決まったタイミングで、運転データを室外機30に送信する。室外機30は、各室内機50の識別情報と運転データを対応付けて、エッジ装置10に送信し、エッジ装置10は運転データをサーバ装置60に送信する。サーバ装置60の通信部61は運転データを受信し、運転データ記憶部66に保存する。
【0128】
S107、S107-2:サーバ装置60の試運転指示部62は、スケジュール記憶部64に保存されたシーズン前点検の時期になると、シーズン前点検の実行に関する処理を開始する。本開示では、パターン1,2に応じた処理の前に、まず、試運転指示部62が、室外機30が所定期間、停止されているか判断する。これにより、一定期間停止していた空調機の点検運転を確実に行うことができる。更に、最初からすべての室内機50の運転状態を確認するのではなく、まず室外機30の運転状態を確認することで、運転状態の確認を行う室内機50の数を減らすことができる。最初から各室内機50の運転状態を確認すると、すべての室内機50の台数分の確認が必要になる。一方で、室外機30ごとに一定期間運転していたか否か確認することで、停止していた室内機50の運転状態を確認する必要がないため運転状態を確認する必要がある室内機50の数を少なくすることができる。このステップS107-2の判断は、
図1のステップS1の判断に相当する。
【0129】
S108:室外機30が所定期間、停止している場合、サーバ装置60の試運転指示部62は、室外機30に対するシーズン前点検の実行指示をエッジ装置10に送信する。すなわち、室外機30に接続された全ての室内機50がシーズン前点検の対象になる。
【0130】
S109:エッジ装置10の通信部11は、シーズン前点検の実行指示を受信し、試運転実行部34が運転中でない室外機30に対しシーズン前点検プログラムの実行を指示する。この後の処理は従来と同様であり、故障予知エンジン33による故障予知が実施される。
【0131】
S110:室外機30が所定期間に運転されている場合、点検実行判断部63は、
図10,
図11で説明したように、室外機30の運転パターン(パターン1,2)を判断する。
【0132】
S111:パターン1の場合、試運転指示部62は、一般空調機に対してはシーズン前点検の実行指示を、設備冷却用空調機に対しては冷房運転の実行指示をエッジ装置10に送信する。
【0133】
S112:エッジ装置10の通信部11は、指示を受信し、一般空調機に対するシーズン前点検プログラムの実行を室外機30に指示し、設備冷却用空調機に対する冷房運転の実行を室外機30に指示する。
【0134】
S113:室外機30の通信部31は指示を受信し、試運転実行部34は、一般空調機に対してシーズン前点検プログラムを実行し、設備冷却用空調機に対しては冷房運転を実行する。
【0135】
S114:室外機30の故障予知エンジン33が故障予知を行い、その結果である予知コード又は正常を通信部がエッジ装置10に送信する。
【0136】
S115:エッジ装置10の通信部13が予知コード又は正常を受信し、通信部11が予知コード又は正常をサーバ装置60に送信する。
【0137】
S116:サーバ装置60の通信部61は、予知コード又は正常を受信し、故障予知記憶部65に保存する。
【0138】
S117:パターン2の場合、試運転指示部62は、シーズン前点検の実行をエッジ装置10に送信しない。
【0139】
<パターン3に基づくシーズン前点検の実施判断>
続いて、
図13を参照し、パターン3を用いたシーズン前点検の実施判断について説明する。
図13は、点検実行判断部63がパターン3の室外機30か否か判断し、室外機に接続された複数の室内機50にシーズン前点検を実施するか否か判断する手順を説明するフローチャート図である。
図13の処理は、スケジュール記憶部64に保存されているシーズン前点検を実施する時期が到来すると実行される。
【0140】
まず、サーバ装置60の試運転指示部62は、運転データを参照し、室外機30が所定期間、停止しているか否か判断する(S201)。このステップS201の判断は、
図1のステップS1の判断に相当する。
【0141】
ステップS201の判断がYesの場合、サーバ装置60の試運転指示部62は、室外機30に対するシーズン前点検の実行指示をエッジ装置10に送信する(S206)。すなわち、室外機に接続された全ての室内機50がシーズン前点検の対象になる。
【0142】
ステップS201の判断がNoの場合、サーバ装置60の点検実行判断部63は、設置場所がサーバ室の室内機50があるか否か判断する(S202)。サーバ室は一例であって、特定の用途の室内機かどうかが設置場所で判断される。
【0143】
ステップS202の判断がNoの場合、シーズン前点検すべきなので、試運転指示部62は、全ての室外機30に対するシーズン前点検の実行指示をエッジ装置10に送信する(S206)。
【0144】
ステップS202の判断がYesの場合、点検実行判断部63は、室外機30が冷暖フリー機以外かどうか判断する(S203)。
【0145】
サーバ室に設置された室内機50があり、室外機30が冷暖フリー機以外の場合(S203のYes)、室外機30は年間冷専機、室外機30に接続された全ての室内機50は設備冷却用空調機であるので、試運転指示部62は、室外機30に対しシーズン前点検の実行指示をエッジ装置10に送信しない(S204)。この判断は、パターン2の判断に相当する。より詳細には、この判断は、
図1のステップS2で全てが運転されていると判断され、更に、ステップS4で全ての室内機50がYesと判断されることに相当する。
【0146】
サーバ室に設置された室内機50があり、室外機30が冷暖フリー機の場合(S203のNo)、室外機30に接続された複数の室内機50には一般空調機と設備冷却用空調機であるので、試運転指示部62は、一般空調機に対してはシーズン前点検の実行指示を、設備冷却用空調機に対しては冷房運転の実行指示をエッジ装置10に送信する(S205)。この判断は、パターン1の判断に相当する。より詳細には、この判断は、
図1のステップS4で室内機50によってYes又はNoと判断されることに相当する。
【0147】
次に、エッジ装置10は、室外機30が停止中か否か、又は、一般空調機が停止中か否か判断する(S207)。サーバ室に設置された室内機50がある場合、室外機30が停止中になることは少ないが、仮にサーバ室にサーバがないため室内機50が停止されるような場合、室外機30が停止中となる。
【0148】
室外機30が停止中、又は、一般空調機が停止中の場合(S207のYes)、エッジ装置10の試運転実行部34は、一般空調機に対してはシーズン前点検プログラムを実行し、設備冷却用空調機に対しては冷房運転の実行を指示する(S208)。
【0149】
室外機30が停止中でもなく、又は、一般空調機が停止中でもない場合(S207のNo)、試運転実行部34は各室内機50に対しシーズン前運転及び冷房運転の指示を中止する(S209)。この場合、サーバ装置60が再度、
図13の処理を実行する。
【0150】
ステップS206に続く処理では、エッジ装置10の試運転実行部34は、室外機30が停止中か否か判断する(S210)。
【0151】
室外機30が停止中の場合(S210のYes)、試運転実行部34は各室内機50に対しシーズン前運転プログラムを実行する(S211)。
【0152】
室外機30が停止中でない場合(S210のNo)、試運転実行部34は各室内機50に対しシーズン前運転の指示を中止する(S212)。この場合、サーバ装置60が再度、
図13の処理を実行する。
【0153】
<主な効果>
本開示の管理システムは、マルチ機であっても室内機50ごとに運転しているか否か確認したのちに、一定期間、運転していない室内機50については各室内機50にシーズン前点検を指示でき、シーズン前点検が行われない室内機50が発生することを抑制できる。また、管理システム100は、シーズン前点検を行うべきでない室内機50をシーズン前点検の対象から除外できる。
【0154】
<その他の適用例>
以上、本開示を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本開示はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【0155】
例えば、サーバ装置60とエッジ装置10を接続するのでなく、サーバ装置60と室外機30が直接、通信可能に接続されていてもよい。また、本開示で説明したサーバ装置60の処理をエッジ装置10が行ってもよい。
【0156】
また、シーズン前点検は、夏期と冬期の前だけでなく乾期や雨期の前、又は、長期間、室内機が運転されていない場合に任意のタイミングで行われてよい。
【0157】
空調機以外の機器90に対しシーズン前点検が行われてもよい。
【0158】
また、
図7などの構成例は、室外機30、エッジ装置10,及び、サーバ装置60による処理の理解を容易にするために、主な機能に応じて分割したものである。処理単位の分割の仕方や名称によって本開示が制限されることはない。室外機30、エッジ装置10,及び、サーバ装置60の処理は、処理内容に応じて更に多くの処理単位に分割することもできる。また、1つの処理単位が更に多くの処理を含むように分割することもできる。
【0159】
また、実施例に記載された装置群は、本明細書に開示された本開示を実施するための複数のコンピューティング環境のうちの1つを示すものにすぎない。ある実施形態では、サーバ装置60は、サーバクラスタといった複数のコンピューティングデバイスを含む。複数のコンピューティングデバイスは、ネットワークや共有メモリなどを含む任意のタイプの通信リンクを介して互いに通信するように構成されており、本明細書に開示された処理を実施する。
【0160】
上記で説明した本開示の各機能は、プログラムの実行によるソフトウェア処理だけでなく、一又は複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」は、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、上記で説明した各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、及び、従来の回路モジュール等のデバイスを含む。
【符号の説明】
【0161】
10 エッジ装置
30 機器
60 サーバ装置
100 管理システム