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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057700
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】入力表示装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/03 20060101AFI20240418BHJP
   G06F 3/04886 20220101ALI20240418BHJP
   G06F 3/04817 20220101ALI20240418BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20240418BHJP
   G06F 3/02 20060101ALI20240418BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
G06F3/03 400F
G06F3/04886
G06F3/04817
G06F3/041 580
G06F3/02 F
G06F3/044 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164522
(22)【出願日】2022-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】天野 崇
【テーマコード(参考)】
5B020
5E555
【Fターム(参考)】
5B020AA15
5B020CC06
5B020DD03
5B020DD29
5E555AA10
5E555BA23
5E555BB23
5E555BC04
5E555CA12
5E555CB23
5E555CC01
5E555DB18
5E555DC13
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】 立体的な操作部への引っ張り操作を検出することができる入力表示装置を提供する。
【解決手段】 本発明の入力表示装置は、画像を表示するためのディスプレイ110と、ディスプレイ110上に取り付けられ、表面に少なくとも1つの立体UI部130を含む静電容量型のタッチパネル120と、タッチパネル120への操作を検出する検出手段とを有する。立体UI部130は、引っ張りタイプのスイッチの形状を模した引っ張り部134を有し、検出手段は、引っ張り部134にタッチされた指Uからタッチパネル120までの距離の変化に応じた静電容量の変化を検出することにより引っ張り操作を判定する。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示するためのディスプレイと、
前記ディスプレイ上に取り付けられ、表面に少なくとも1つの立体的な操作部を含む静電容量型のタッチパネルと、
前記タッチパネルへの操作を検出する検出手段とを有し、
前記立体的な操作部は、引っ張りタイプのスイッチの形状を模した引っ張り部を有し、
前記検出手段は、前記引っ張り部にタッチされた指から前記タッチパネルまでの距離の変化に応じた静電容量の変化を検出することにより引っ張り操作の有無を判定する、入力表示装置。
【請求項2】
前記操作部は、弾性部材を介して前記タッチパネルから離間可能に取り付けられる、請求項1に記載の入力表示装置。
【請求項3】
前記弾性部材は、前記操作部の底面と前記ディスプレイを支持する固定部との間に設けられる、請求項2に記載の入力表示装置。
【請求項4】
前記操作部は、前記引っ張り部と当該引っ張り部の下方に配置される底面部とを有し、前記弾性部材は、前記引っ張り部と前記底面部との間に設けられる、請求項2に記載の入力表示装置。
【請求項5】
前記操作部は、前記引っ張り部と当該引っ張り部の下方に配置される底面部とを有し、前記弾性部材は、前記引っ張り部と前記ディスプレイを支持する固定部との間に設けられる、請求項2に記載の入力表示装置。
【請求項6】
前記引っ張り部は、引っ張り方向に弾性変形可能な部材から構成される、請求項1に記載の入力表示装置。
【請求項7】
前記検出手段は、前記引っ張り部の静電容量の低下が閾値以上の場合、引っ張り操作が行われたと判定する、請求項1に記載の入力表示装置。
【請求項8】
前記検出手段は、前記引っ張り部の静電容量の増加が閾値以上の場合、押下操作が行われたと判定する、請求項1に記載の入力表示装置。
【請求項9】
前記検出手段は、前記引っ張り部にタッチされた指の形状変化による静電容量の変化を検出することにより引っ張り操作の有無を判定する、請求項2に記載の入力表示装置。
【請求項10】
入力表示装置はさらに、前記ディスプレイの前記操作部に対応する位置に、入力操作を表すアイコンを表示させる表示手段を含む、請求項1に記載の入力表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人と機械とのインターフェース機能を備えた入力表示装置に関し、特に、立体形状の操作部を含む入力表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイに重畳して配置されたタッチパネル上に凸部を設け、当該凸部と重なる位置に操作アイコン等の画像を表示する入力表示装置が開示されている(例えば、特許文献1)。ユーザーは、凸部をタッチ操作することで入力を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-190832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
静電容量型のタッチ操作を行うディスプレイ機器において、カバーガラスに凹凸形状を持たせることによりタッチ位置を触覚的に認知させ、注視せずともタッチ位置を理解することができるユーザーインタフェース(以降、立体UIと呼ぶ)の提案がなされている。
【0005】
図1(A)は、従来のフラットなタッチパネルの操作例であり、ユーザーUは、ディスプレイ10に表示された操作アイコン12を視認し、操作アイコン12(図の例は音符)の位置をタッチ操作することで入力を行う。
【0006】
図1(B)は、立体UIを有するタッチパネルの操作例、図1(C)は、立体UIの概略断面図である。タッチパネル24上には、凹凸形状の透明なカバーレンズ26が取り付けられ、ディスプレイ20は、カバーレンズ26と重なる位置に操作アイコン22を表示する。ユーザーUは、カバーガラス26上に指をタッチすることで入力を行う。タッチ検出には、センサから距離が離れていても指の静電容量(距離)を検出することができる高感度静電センサが用いられ、厚みのあるカバーレンズ26の上からでもタッチの有無を判定することが可能である。これにより、運転中の車載ディスプレイへの注視が難しい状況下において、タッチミス(操作ミス)を低減することが可能である。
【0007】
上記したように、立体UIでは、車室内に存在する多様な物理スイッチ(ボタン、ノブ、スライダー等)を模した形状とその操作検出をタッチパネルで実現するため、多種多様の操作ジェスチャに対応することが求められる。
【0008】
その一つとして、車載スイッチの中には、図2(A)に示すように、パワーウインドウスイッチのような端部を上方に引っ張る(または持ち上げる)タイプのスイッチ30が存在する。このような引っ張りタイプのスイッチ30を模した形状をタッチパネルで実現する場合、図2(B)に示すように、ディスプレイ40上に搭載したタッチパネル50の表面に、指に引っ掛かりを与えるような片持ち梁状のカバーガラス60(樹脂等でも同様)を取り付ける必要がある。
【0009】
しかし、静電容量を検出するセンサと指のタッチ位置との間に距離があり、かつ、センサとは逆方向(矢印方向)に指を持ち上げるため、カバーガラス60の構成によって指の引っ張り操作を正確に検出することは困難である。
【0010】
その解決案として、図2(C)に示すように、カバーガラス60の片持ち梁状の操作部62の裏面に、静電容量を検出するタッチセンサ64を搭載することも考えられるが、タッチセンサ64の部品点数が増加し、構造が複雑になること等から現実的ではない。
【0011】
以上のことから、図2(B)に示すような引っ張りタイプ30のスイッチを模した構成を保ちつつ、引っ張り操作をより正確に検出することができる構造および手法が必要である。
【0012】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、立体的な操作部への引っ張り操作を検出することができる入力表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る入力表示装置は、画像を表示するためのディスプレイと、前記ディスプレイ上に取り付けられ、表面に少なくとも1つの立体的な操作部を含む静電容量型のタッチパネルと、前記タッチパネルへの操作を検出する検出手段とを有し、前記立体的な操作部は、引っ張りタイプのスイッチの形状を模した引っ張り部を有し、前記検出手段は、前記引っ張り部にタッチされた指からタッチパネルまでの距離の変化に応じた静電容量の変化を検出することにより引っ張り操作の有無を判定する。
【0014】
ある態様では、前記操作部は、弾性部材を介して前記タッチパネルから離間可能に取り付けられる。ある態様では、前記弾性部材は、前記操作部の底面と前記ディスプレイを支持する固定部との間に設けられる。ある態様では、前記操作部は、前記引っ張り部と当該引っ張り部の下方に配置される底面部とを有し、前記弾性部材は、前記引っ張り部と前記底面部との間に設けられる。ある態様では、前記操作部は、前記引っ張り部と当該引っ張り部の下方に配置される底面部とを有し、前記弾性部材は、前記引っ張り部と前記ディスプレイを支持する固定部との間に設けられる。ある態様では、前記引っ張り部は、引っ張り方向に弾性変形可能な部材から構成される。ある態様では、前記検出手段は、前記引っ張り部の静電容量の低下が閾値以上の場合、引っ張り操作が行われたと判定する。ある態様では、前記検出手段は、前記引っ張り部の静電容量の増加が閾値以上の場合、押下操作が行われたと判定する。ある態様では、前記検出手段は、前記引っ張り部にタッチされた指の形状変化による静電容量の変化を検出することにより引っ張り操作の有無を判定する。ある態様では、入力表示装置はさらに、前記ディスプレイの前記操作部に対応する位置に、入力操作を表すアイコンを表示させる表示手段を含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、引っ張り部にタッチされた指からタッチパネルまでの距離の変化に応じた静電容量の変化を検出することで引っ張り操作の有無を判定するようにしたので、タッチセンサの部品点数を増加させることなく、簡易な構造でありながら、より正確に引っ張り操作を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1(A)は、フラットなタッチパネルの操作例を示し、図1(B)は、立体UIのタッチパネルの操作例を示し、図1(C)は、立体UIの概略断面図である。
図2】従来の立体UI部の課題を説明する図である。
図3】本発明の実施例に係る入力表示装置の構成を示すブロック図である。
図4】本発明の実施例に係る入力表示装置の概要を説明する図であり、図4(B)は、クッション材を用いたときの指距離の変化を示し、図4(C)、(D)は、指の潰れを利用したときの指距離の変化を示す図である。
図5】本発明の実施例に係るクッション材を用いた立体UI部の引っ張り操作を説明するための概略断面図である。
図6】本発明の実施例に係るクッション材を用いない立体UI部の引っ張り操作を説明するための概略断面図である。
図7】本発明の実施例に係るクッション材を用いない立体UI部の引っ張り操作を判定するためのフローを示す図である。
図8図7のステップS100の動作を説明するための概略断面図である。
図9図7のステップS110の動作を説明するための概略断面図である。
図10図7のステップS120の動作を説明するための概略断面図である。
図11】実機によるクッション材を用いたい立体UI部への引っ張り操作を行ったときの静電容量の変化を検証するグラフである。
図12】実機による立体UI部への押下を行ったときの静電容量の変化を検証するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施の形態について説明する。本発明の入力表示装置は、人と機械との間のインターフェースを提供する。本発明の入力表示装置は、特に限定されないが、例えば、タッチパネル付きディスプレイを搭載する電子装置などに適用される。タッチパネル付きディスプレイを搭載する電子装置は、例えば、ナビゲーション機能、オーディオ・ビジュアル機能、テレビ機能などを備えた車載装置である。
【実施例0018】
次に、本発明の実施例について図面を参照して詳細に説明する。図3は、本発明の実施例に係る入力表示装置の構成を示すブロック図である。本実施例の入力表示装置100は、画像や映像を表示するためのディスプレイ110と、ディスプレイ110上に搭載された静電容量型のタッチパネル120と、タッチパネル120の表面に取り付けられた1つまたは複数の立体形状を有する立体UI部(または操作部)130と、ディスプレイ110の画像表示やタッチパネル110のタッチ検出などを制御するコントローラ140を含んで構成される。
【0019】
ディスプレイ110は、特に限定されないが、例えば、液晶パネルまたは有機ELパネルを含み、コントローラ140から提供される画像データを表示する。例えば、立体UI部130の下方には、当該立体UI部130の入力操作を表すようなアイコンを表示する。
【0020】
タッチパネル120は、例えば、複数のX側およびY側の電極ラインが交差する位置に形成された複数の検出部(センサ)を含み、当該検出部は、ユーザーの指や手などがタッチパネル110に接近または接触したときに静電容量を変化させる。タッチパネル120は、ディスプレイ110上に搭載され、ユーザーがディスプレイ110に表示されたアイコン等への入力を行うための入力インターフェースを提供する。
【0021】
タッチパネル120は、透明なパネルの表面上にさらに、1つまたは複数の立体UI部(操作部)130を含む。立体UI部130は、ユーザーが指によって引張り操作を行うことができるような形状を有し、例えば、図2(A)に示すようなパワーウインドウスイッチの形状を模した、図2(B)に示すような端部を上方に引っ張る(または持ち上げる)片持ち梁状の引っ張り部134を有する。立体UI部130の数や大きさなどは特に限定されないが、ユーザーの手や指が立体UI部130を引っ張るまたは持ち上げる操作をしたとき、その位置の静電容量が変化するように立体UI部130が構成される。
【0022】
図3には、4つの立体UI部130がタッチパネル120の下方に取付けられた例が示されている。立体UI部130は、例えば、アクリル、ポリカーボネート、ガラスなどの透明な材質を用いて構成され、ディスプレイ110の立体UI部130と対応する位置には、ユーザーの入力操作を表すアイコンが表示される。但し、立体UI部130の全てが透明である必要はなく、アイコンと干渉しない部分は非透明であってもよい。ユーザーは、立体UI部130の下方に表示されたアイコンを視認し、立体UI部130の引っ張り操作を行うことで入力を行う。
【0023】
次に、本実施例の入力表示装置100の概要について図4を参照して説明する。図4(A)は、立体UI部130の概略断面を示している。同図に示すように、ディスプレイ110は、製品カバー(またはカバーガラスなど)170上に固定され、その上にタッチパネル120が搭載される。タッチパネル120の表面には、立体UI部130が取り付けられる。
【0024】
立体UI部130は、例えば、底面部132と、底面部132から片持ち梁状に延在する引っ張り部134とを含む。底面部132は、例えば、両面接着剤などを用いてタッチパネル120の決められた位置に貼り付けられる。底面部132の取り付け位置や底面部132の形状を示す座標は、コントローラ140に予め登録される。例えば、底面部132が円形状であれば、その中心の座標と半径が登録され、底面部132が矩形状であれば、その対角線の交点の座標やコーナーの座標が登録される。また、立体UI部130の引っ張り部134の高さも登録される。
【0025】
本実施例では、立体UI部130にて、引っ張り部134に指Uをタッチしたときの指Uからタッチパネル120の検出部(センサ)までの距離(以下、指距離という)の変化を検出することで、引っ張り部134への引っ張り操作を検出することを可能にする。
【0026】
図4(A)に示すように、例えば、パワーウインドウスイッチの操作のように、指Uを引っ張り部134の端部に引っ掛け、引っ張り動作をする際に指Uがタッチセンサから離れていく指距離Dの変化を検出し、引張り操作の有無を判定する。引っ張り動作によって指距離Dが大きくなると、タッチセンサで検出する静電容量の値は減少する。そのために、本実施例では、指Uで引っ張ったときに指距離Dの変化が生じ易くなるような図4(B)に示すクッション材180を用いた検出構造や、図4(C)、(D)に示すような引っ張り操作時に指Uの変形を検出する引っ張り検出アルゴリズムを実装することで、引張り操作の検出を実現する。
【0027】
クッション材を用いた検出構造は、ユーザーが引っ張り部134を持ち上げた際に指距離Dが大きくなれば、クッション材の形状、材質、大きさ、取り付け位置等は特に限定されない。図4(B)に示す検出構造では、立体UI部130の底部132の両端と製品カバー170との間に、垂直方向に弾性変形可能な2つのクッション材180が取り付けられる。クッション材180は、例えば、ゴム、バネ、スポンジ、樹脂のように弾力性のある部材を用いることができる。ユーザーが指Uで引っ張り部134を引っ張る操作をしたとき、立体UI部130は、クッション材180により上方に幾分持ち上がり、底部132とタッチパネル120の表面との間に僅かな距離Lが生じる。これにより、指距離がDからD1に変化し(D<D1)、この変化は、引張り操作の有無を判定するための静電容量の変化をもたらす。
【0028】
上記の例では、クッション材180を用いて立体UI部130がタッチパネル120から引っ張り方向に離間できるようにしたが、例えば、立体UI部130の引っ張り部134そのものに弾性を持たせることで、クッション材を用いないで引っ張り部134を引っ張り方向に変位させるようにしてもよい。例えば、引っ張り部134の片持ち梁状の基部の幅を狭くしたり、あるいは基部の厚さを薄くしたりして弾性変形を容易にし、あるいは引っ張り部134を弾性のある材料から構成するようにしてもよい。
【0029】
次に、指の変形を検出する引っ張り検出アルゴリズムについて説明する。図4(C)は、指Uを引っ張り部134にタッチした状態を示し、このときの指距離はDである。ユーザーが指Uを引っ張り部134に引っ掛けて持ち上げると、その応力で指の形状が引っ張る方向に圧縮するようにつぶれる。これにより、指距離がDからD2に変化する(D<D2)。この指距離の変化は、引っ張り操作を検出することができる静電容量の変化をもたらし、
タッチパネル120は、そのような静電容量の変化を検出することができる感度を有する。
【0030】
次に、コントローラ140の詳細について説明する。コントローラ140は、ディスプレイ110およびタッチパネル120に電気的に接続され、ディスプレイ110の画像制御およびタッチパネル120のタッチ制御を行う。コントローラ140は、立体UI部130の高さ、形状、位置、映像表示エリアなどのデータ保持し、表示エリア補正処理、タッチパネル120の出力値からタッチ検出や操作判定(タッチ座標検出、指距離/静電容量の大きさ検出)したり、それに応じて映像表示/映像切り替えの処理など、入力表示装置の処理全般を担う。コントローラ140の処理は、ハードウエアおよび/またはソフトウエアにより実行され、例えば、演算処理部、ROM/RAMを含むマイクロコントローラなどを用いて実行される。
【0031】
コントローラ140は、図3に示すように、タッチ検出部150、操作判定部160、表示制御部170を含んで構成される。タッチ検出部150は、タッチパネル120のX側および/またはY側の複数の電極ラインを駆動し、駆動した電極ラインの各検出部の静電容量を測定し、測定結果を操作判定部160に提供する。
【0032】
操作判定部160は、タッチ検出部150の測定結果に基づきタッチパネル120へのタッチ操作や引張り操作を検出する。ここで言うタッチとは、ユーザーの指がタッチパネル120への接触のみならず、指がタッチパネル120から一定の距離に接近することを含む。例えば、ユーザーの指がタッチパネル120のフラットな表面に接触または接近したとき、操作判定部160は、対応する検出部の静電容量の変化に基づきタッチ操作があったと判定し、同様に、ユーザーの指が立体UI部130に接触または接近すると、立体UI部130に対応する検出部の静電容量が変化し、この静電容量の変化により立体UI部130へのタッチ操作があったと判定する。
【0033】
また、操作判定部160は、立体UI部130へのタッチ操作が検出された場合、そのタッチ位置において一定時間内に静電容量の変化が生じた場合には、その変化から引張り操作の有無を判定する。つまり、図4(B)や図4(D)に示したように、指距離の変化に応じて静電容量が変化した場合、その変化がある閾値以上であれば、立体UI部130への引っ張り操作があったと判定する。操作判定部160によってタッチ操作や引っ張り操作があったと判定されると、コントローラ140は、当該入力を他の電子機器に提供したり、当該入力に応じた表示制御などを実行する。
【0034】
表示制御部170は、ディスプレイ110に画像や映像を表示させ、立体UI部130の対応する位置にはアイコンを表示させる。アイコンは、ユーザーの入力操作を表すデザインであることができ、例えば、立体UI部130の下方には、パワーウィンドウの操作を表すアイコンが表示される。また、表示制御部170は、操作判定部160によりタッチ操作や引っ張り操作があったと判定されたことに応じてディスプレイ120に表示する画像を別な画像に切替えたりする。
【0035】
次に、本実施例の立体UI部130の詳細について説明する。まず、クッション材を用いた立体UI部130の指距離検出方法について説明する。図5(A)に示す構造では、製品カバー170と立体UI部130の底面部132との間にクッション材180を挟み、指Uで引っ張り部134を引っ張ると、クッション材180が上下方向に伸びることで、底面部132がタッチパネル120の表面から離間し、タッチパネル120と指Uとの間の指距離が大きくなり、タッチパネル120で検出される静電容量が減少する。この静電容量の変化が閾値以上であれば、これを引っ張り操作と判定する。
【0036】
他方、図5(B)に示すように、引っ張り操作とは逆に、引っ張り部134の端部を指Uで押し込んだ場合には、クッション材180が上下方向に圧縮され、底面部132がタッチパネル120の表面に近接し、タッチパネル120と指Uとの間の指距離が小さくなるため、タッチパネル120で検出される静電容量が増加する。この静電容量の変化が閾値以上であれば、これを押し込み操作と判定する。
【0037】
また、クッション材180は、表示されるアイコンの視認性が低下しないように、あるいは立体UI部130の構造の自由度が低下しないように、適切な位置に取り付けられる。図5(A)に示す立体UI部130は、底面部132と引っ張り部134とが一体成型されてもよいし、両者が接着剤や両面テープなどで貼り合わされてもよい。底面部132と引っ張り部134とが一体成型または貼り合わされた場合には、クッション材180は、タッチパネル120のセンサやアイコン表示の外周部に設置または取り付けることが望ましい。
【0038】
クッション材180が透明な場合、もしくは透明である必要が無い場合には、図5(C)に示すように、底面部132と引っ張り部134との間にクッション材180を挟んで貼り合わせるようにしてもよい。この場合、引っ張り部134がクッション材180を介して引っ張り方向または押下方向に変化し、底面部132は変化しない。
【0039】
また、立体UI部130の底面部132と引っ張り部134とが直接接触または貼り付けられない構成の場合、図5(D)に示すように、クッション材180は、底面部132、タッチパネル120、ディスプレイ110の側部において、引っ張り部134と製品カバー170との間に取り付けられる。この場合にも、引っ張り部134がクッション材180を介して引っ張り方向または押下方向に変化し、底面部132は変化しない。
【0040】
次に、クッション材を用いない立体UI部130の指距離検出方法について説明する。指距離の小さな変化(例えば、2mm程度)を検出することが可能な精度のセンサであればクッション材を使わない構造でも、引っ張り操作や押下操作を検出することができる。図6(A)、(B)は、指Uを引っ張り部134の端部にタッチしたときの様子を示し、センサから指までの指距離はDである。図6(C)、(D)は、指Uを引っ張り部134の端部に引っ掛けても引っ張る操作をしたときの指Uの変形(潰れ)の様子を示し、指Uが2mm程度変形することで、センサから指Uまでの指距離はD2に増加する(D2>D)。
【0041】
次に、クッション材を用いないときの操作判定部160の判定動作のフローを図7に示す。操作判定部160は、タッチ検出部150による静電容量の測定結果に基づき引っ張り部134の下方での指の有無を検出する(S100)。図8に示すように、引っ張り部134に指Uを引っ掛ける際の位置座標(矢印Hの部分)、引っ張り部134の下に指Uが有るときの指距離/静電容量の閾値(矢印Vの部分)を予め操作判定部160に登録しておく。なお、図には、矢印Hの一方向の座標範囲のみを示しているが、矢印Hによる座標範囲は、平面座標と特定するものであってもよい。
【0042】
操作判定部160は、タッチ検出部150の測定結果に基づき、矢印Hによる位置座標内にあり、かつ、矢印Vによる静電容量の閾値内(指距離内)の値を検出した場合に、指Uが引っ張り部134の下方に存在すると判定する。
【0043】
次に、操作判定部160は、静電容量の変化を見て引っ張り操作を判定する(S110)。図9(A)は、引っ張り操作前の状態を示し、図9(B)は、引っ張り操作中の状態を示している。図9(B)に示すように、引っ張り操作の動作により、指先が圧迫されたり、つぶされたりして指の角度が変わることで、指距離が図9(A)のときのDからD2に変化する。これにより、タッチパネル120のセンサで検出している静電容量の値が減少する。操作判定部160は、この静電容量の変化を検出することで引っ張り操作を判定する。
【0044】
次に、操作判定部160は、引っ張り操作があったと判定した場合には、静電容量の変化を見て引っ張り動作の終了を判定する(S120)。図10(A)は、引っ張り操作中の状態を示し、図10(B)は、引っ張り操作終了の状態を示している。図10(B)に示すように、引っ張り操作の終了の動作では、引っ張り操作のときと反対に、指が元の状態に戻ることで、指距離が図10(A)のときのD2からDに変化する。これにより、タッチパネル120のセンサで検出している静電容量の値が増加する。操作判定部160は、この静電容量の変化を検出することで引っ張り動作の終了を判定する。
【0045】
次に、実機によるクッション材を用いない立体UI部への引っ張り操作を行ったときの静電容量の変化の検証結果を図11のグラフに示す。縦軸は、静電容量の値、横軸は、検出データ数である。なお、今回検証した実機では、80fps(フレーム/秒)で静電容量の検出を行っている。
【0046】
同グラフに示すように、立体UI部130を引っ張っていないとき(指距離が小さいとき)の静電容量の値が概ね1100以上であり、立体UI部130を引っ張ったとき(指距離が大きいとき)の静電容量の値が概ね800~600に低下した。それ故、引っ張り操作の有無を判定するための閾値を800から1100の範囲内(例えば、閾値を950)に設定することで、引っ張り操作の有無を正確に判定することができる。
【0047】
また、実機による立体UI部への押下を行ったときの静電容量の変化の検証結果を図12のグラフに示す。縦軸は、静電容量の値、横軸は、検出データ数である。なお、今回検証した実機では、80fps(フレーム/秒)で静電容量の検出を行っている。
【0048】
引っ張り操作と違い、押下操作では、指の潰れによる指距離の変化が生じないため、立体UI部130の引っ張り部134自身が撓むような素材から構成されるか(図12(A))、クッション材180を立体UI部130と製品カバーとの間に挟む構成(図12(B))により押し込み時に指距離が小さくなる構造であることが必要である。
【0049】
ここでの検出例では、引っ張り操作時ほど押し込み操作の有無の検出値の差は大きくないものの、押し込み操作時の静電容量の変化をグラフから読み取ることができる。例えば、静電容量の値が325以上または以下で閾値を設定することで、押し込み状態または非押し込み状態を判定することが可能である。
【0050】
このように本実施例によれば、立体UIを有する製品において、タッチセンサの数を増やさず、シンプルな構造で、引っ張り操作の正確な検出が可能になる。これにより、引っ張りタイプのスイッチの操作ジェスチャにも立体UIで対応することができる。
【0051】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨の範囲において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0052】
30:引っ張りタイプのスイッチ
100:入力表示装置
110:ディスプレイ
120:タッチパネル
130:立体UI部(操作部)
132:底面部
134:引っ張り部
140:コントローラ
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