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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057706
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】立体物印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240418BHJP
   B41J 25/304 20060101ALI20240418BHJP
   B41J 3/407 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
B41J2/01 109
B41J2/01 303
B41J2/01 127
B41J2/01 401
B41J25/304 H
B41J3/407
B41J2/01 307
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164539
(22)【出願日】2022-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】和田 一志
【テーマコード(参考)】
2C056
2C064
【Fターム(参考)】
2C056EA20
2C056EB07
2C056EB30
2C056EB37
2C056EC07
2C056EC29
2C056FA04
2C056FA10
2C056FB09
2C056FB10
2C056HA11
2C056HA12
2C056HA29
2C056HA38
2C056HA44
2C056JA01
2C064CC04
2C064CC05
2C064DD02
2C064DD05
2C064DD09
(57)【要約】
【課題】メンテナンス性を向上させる。
【解決手段】立体物印刷装置は、第1ノズル列が設けられた第1ノズル面を有する第1ヘッドをZ軸に沿って移動させる第1のZ移動機構と、第2ノズル列が設けられた第2ノズル面を有する第2ヘッドをZ軸に沿って移動させる第2のZ移動機構と、有し、印刷状態とメンテナンス状態とを含む複数の状態を切り替え可能であり、印刷状態では、第1のZ移動機構および第2のZ移動機構が第1ノズル面および第2ノズル面の互いのZ軸に沿う相対位置を変化させつつ、第1ノズル列および第2ノズル列のうちの一方または両方から立体的なワークに向けて液体が吐出され、メンテナンス状態では、第1のZ移動機構および第2のZ移動機構が第1ノズル面および第2ノズル面の互いのZ軸に沿う相対位置を異なる状態で維持する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する第1ノズル列が設けられた第1ノズル面を有する第1ヘッドと、
液体を吐出する第2ノズル列が設けられた第2ノズル面を有する第2ヘッドと、
立体的なワークに対する前記第1ヘッドおよび前記第2ヘッドのそれぞれの位置を変更する移動機構と、を備え、
前記移動機構は、
前記第1ヘッドを前記Z軸に沿って移動させる第1のZ移動機構と、
前記第2ヘッドを前記Z軸に沿って移動させる第2のZ移動機構と、有し、
前記ワークに対して印刷を実行する印刷状態と、作業者による前記第1ヘッドまたは前記第2ヘッドのメンテナンスを受けるためのメンテナンス状態と、を含む複数の状態を切り替え可能であり、
前記印刷状態では、前記第1のZ移動機構および前記第2のZ移動機構が前記第1ノズル面および前記第2ノズル面の互いの前記Z軸に沿う相対位置を変化させつつ、前記第1ノズル列および前記第2ノズル列のうちの一方または両方から前記ワークに向けて液体が吐出され、
前記メンテナンス状態では、前記第1のZ移動機構および前記第2のZ移動機構が前記第1ノズル面および前記第2ノズル面の互いの前記Z軸に沿う相対位置を異なる状態で維持する、
ことを特徴とする立体物印刷装置。
【請求項2】
前記第1ヘッドおよび前記第2ヘッドは、前記Z軸に交差するX軸に沿う方向で互いに隣り合う、
ことを特徴とする請求項1に記載の立体物印刷装置。
【請求項3】
前記第1ノズル列および前記第2ノズル列のそれぞれは、前記Z軸に沿う一方の方向に向けて液体を吐出し、
前記メンテナンス状態では、前記第1ヘッドおよび前記第2ヘッドのうち、メンテナンスの対象となる一方のヘッドが他方のヘッドよりも前記一方の方向に位置する、
ことを特徴とする請求項2に記載の立体物印刷装置。
【請求項4】
液体を吐出する第3ノズル列が設けられた第3ノズル面を有する第3ヘッドをさらに備え、
前記移動機構は、前記第3ヘッドを前記Z軸に沿って移動させる第3のZ移動機構をさらに有し、
前記第1ヘッド、前記第2ヘッドおよび前記第3ヘッドは、この順で前記X軸に沿う方向に並んでおり、
前記メンテナンス状態では、前記第2ヘッドは、前記第1ヘッドおよび前記第3ヘッドよりも前記一方の方向に位置する、
ことを特徴とする請求項3に記載の立体物印刷装置。
【請求項5】
前記ワーク上の液体を硬化または固化させるエネルギーを出射するエネルギー出射部をさらに備え、
前記Z移動機構は、前記エネルギー出射部を前記Z軸に沿って移動させる第3のZ移動機構をさらに有し、
前記第1ヘッド、前記第2ヘッドおよび前記エネルギー出射部は、この順で前記X軸に沿う方向に並んでおり、
前記メンテナンス状態では、前記第2ヘッドは、前記第1ヘッドおよび前記エネルギー出射部よりも前記一方の方向に位置する、
ことを特徴とする請求項3に記載の立体物印刷装置。
【請求項6】
前記メンテナンス状態では、前記第2ヘッドがメンテナンスの対象である場合、前記第2ヘッドが前記第1ノズル面よりも前記一方の方向に位置する、
ことを特徴とする請求項3に記載の立体物印刷装置。
【請求項7】
前記メンテナンス状態における前記第1ノズル面と前記第2ノズル面との前記Z軸に沿う方向での距離は、前記印刷状態における前記第1ノズル面と前記第2ノズル面との前記Z軸に沿う方向での距離の最大値よりも大きい、
ことを特徴とする請求項1に記載の立体物印刷装置。
【請求項8】
前記移動機構の動作を制御する移動制御部と、
作業者からの指示を受け付ける受付部と、をさらに備え、
前記移動制御部は、前記複数の状態のうち前記メンテナンス状態以外の状態で前記受付部がメンテナンス作業に関する指示を受け付けた場合、前記メンテナンス状態に移行する動作を前記移動機構に実行させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の立体物印刷装置。
【請求項9】
前記受付部は、メンテナンスの対象となるヘッドを特定する情報を受け付ける、
ことを特徴とする請求項8に記載の立体物印刷装置。
【請求項10】
前記第1ヘッドおよび前記第2ヘッドは、前記Z軸に交差するX軸に沿う方向で互いに隣り合っており、
前記第1ヘッドは、前記第1のZ移動機構に対して前記X軸に沿う方向での挿抜により着脱可能であり、
前記第2ヘッドは、前記第2のZ移動機構に対して前記X軸に沿う方向での挿抜により着脱可能である、
ことを特徴とする請求項1に記載の立体物印刷装置。
【請求項11】
前記第1ノズル列および前記第2ノズル列のそれぞれは、前記Z軸に沿う一方の方向に向けて液体を吐出し、
前記第2ヘッドは、前記X軸に沿う方向を長さ方向とするネジを用いて前記第2のZ移動機構に対してネジ留めするためのネジ留め部を有し、
前記メンテナンス状態では、前記第2ヘッドがメンテナンスの対象である場合、前記ネジ留め部が前記第1ノズル面よりも前記一方の方向に位置する、
ことを特徴とする請求項10に記載の立体物印刷装置。
【請求項12】
前記メンテナンス状態では、前記第1ノズル列および前記第2ノズル列から液体が吐出されない、
ことを特徴とする請求項1に記載の立体物印刷装置。
【請求項13】
前記移動機構は、前記Z軸に交差するX軸に沿って前記第1ヘッドおよび前記第2ヘッドを移動させるX移動機構をさらに有し、
前記X移動機構は、前記印刷状態で動作し、前記メンテナンス状態で動作しない、
ことを特徴とする請求項12に記載の立体物印刷装置。
【請求項14】
前記第1ヘッドおよび前記第2ヘッドの互いの前記Z軸に沿う相対位置を揃えた場合、前記第1ヘッドと前記第2ヘッドとの間の距離は、100mm以下である、
ことを特徴とする請求項1に記載の立体物印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、立体物印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、立体的なワークの表面にインクジェット方式により印刷を行う立体物印刷装置が知られている。例えば、特許文献1に記載の装置は、複数のヘッドと、複数のヘッドを上下させるヘッド上下機構と、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-035552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の装置では、ヘッドを交換または調整等のメンテナンスを行う際、メンテナンスの対象となるヘッドに隣り合うヘッドのためのヘッド上下機構の存在により、メンテナンスのための作業スペースを確保することが難しい。このため、ヘッドのメンテナンス性が低いという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、本開示の立体物印刷装置の一態様は、液体を吐出する第1ノズル列が設けられた第1ノズル面を有する第1ヘッドと、液体を吐出する第2ノズル列が設けられた第2ノズル面を有する第2ヘッドと、立体的なワークに対する前記第1ヘッドおよび前記第2ヘッドのそれぞれの位置を変更する移動機構と、を備え、前記移動機構は、前記第1ヘッドを前記Z軸に沿って移動させる第1のZ移動機構と、前記第2ヘッドを前記Z軸に沿って移動させる第2のZ移動機構と、有し、前記ワークに対して印刷を実行する印刷状態と、作業者による前記第1ヘッドまたは前記第2ヘッドのメンテナンスを受けるためのメンテナンス状態と、を含む複数の状態を切り替え可能であり、前記印刷状態では、前記第1のZ移動機構および前記第2のZ移動機構が前記第1ノズル面および前記第2ノズル面の互いの前記Z軸に沿う相対位置を変化させつつ、前記第1ノズル列および前記第2ノズル列のうちの一方または両方から前記ワークに向けて液体が吐出され、前記メンテナンス状態では、前記第1のZ移動機構および前記第2のZ移動機構が前記第1ノズル面および前記第2ノズル面の互いの前記Z軸に沿う相対位置を異なる状態で維持する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態に係る立体物印刷装置の概略を示す斜視図である。
図2】実施形態に係る立体物印刷装置の電気的な構成を示すブロック図である。
図3】ヘッドユニットおよび調整機構の概略構成を示す斜視図である。
図4】ヘッドユニットの側面図である。
図5】第1実施形態に係る立体物印刷装置の動作の一例を示す図である。
図6】受付部のための表示例を示す図である。
図7】メンテナンスの対象となるヘッドを特定する情報を受け付けるための表示例を示す図である。
図8】待機状態におけるZ移動機構を示す模式図である。
図9】印刷状態におけるZ移動機構を示す模式図である。
図10】メンテナンス状態おけるZ移動機構を示す模式図である。
図11】変形例1におけるメンテナンス状態のZ移動機構を示す模式図である。
図12】変形例2におけるメンテナンス状態のZ移動機構を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付図面を参照しながら本開示に係る好適な実施形態を説明する。なお、図面において各部の寸法および縮尺は実際と適宜に異なり、理解を容易にするために模式的に示している部分もある。また、本開示の範囲は、以下の説明において特に本開示を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られない。
【0008】
以下の説明は、便宜上、互いに交差するX軸、Y軸およびZ軸を適宜に用いて行う。また、以下の説明では、X軸に沿う一方向がX1方向であり、X1方向と反対の方向がX2方向である。同様に、Y軸に沿って互いに反対の方向がY1方向およびY2方向である。また、Z軸に沿って互いに反対の方向がZ1方向およびZ2方向である。
【0009】
ここで、X軸、Y軸およびZ軸は、後述の移動機構2および支持機構4が設置される空間に設定されるワールド座標系の座標軸に相当する。典型的には、Z軸が鉛直な軸であり、Z2方向が鉛直方向での下方向に相当する。以下では、便宜上、ワールド座標系を用いて移動機構2の動作を制御する場合が例示される。
【0010】
なお、Z軸は、鉛直な軸でなくともよい。また、X軸、Y軸およびZ軸は、典型的には互いに直交するが、これに限定されず、直交しない場合もある。例えば、X軸、Y軸およびZ軸が80°以上100°以下の範囲内の角度で互いに交差すればよい。
【0011】
1.第1実施形
1-1.印刷装置の概略
図1は、実施形態に係る立体物印刷装置1の概略を示す斜視図である。立体物印刷装置1は、立体的なワークWの表面にインクジェット方式により印刷を行う装置である。
【0012】
ワークWは、印刷対象となる面WFを有する。図1に示す例では、面WFが曲率の異なる複数の部分を有する凸曲面である。なお、印刷対象は、ワークWが有する複数の面のうち面WF以外の面でもよい。また、ワークWの大きさ、形状または設置姿勢は、図1に示す例に限定されず、任意である。
【0013】
図1に示すように、立体物印刷装置1は、基台10と移動機構2とヘッドユニット3_1~3_4とセンサーユニット30と支持機構4とメンテナンス機構12とを備える。以下、図1に基づいて、立体物印刷装置1の各部を順次簡単に説明する。なお、以下では、ヘッドユニット3_1~3_4のそれぞれをヘッドユニット3という場合がある。
【0014】
基台10は、移動機構2、支持機構4およびメンテナンス機構12を支持する面10aを有する台である。面10aは、Z1方向を向く面である。ここで、移動機構2、支持機構4およびメンテナンス機構12のそれぞれは、基台10に対して、ネジ止め等により直接的または他の部材を介して間接的に固定される。
【0015】
図1に示す例では、基台10が箱状をなしており、面10aがZ1方向を向く面である。基台10に対してZ1方向の位置には、詳細な図示を省略するが、図1中の二点鎖線で示すように、ケース11が配置される。ケース11は、基台10に支持される移動機構2、支持機構4およびメンテナンス機構12等の構造物を収容する空間を面10aとの間に形成する箱状の構造体である。ケース11は、例えば、金属等で構成される複数の柱および複数の梁と、アクリル樹脂等の透明材料で構成される天板および壁板等の複数の板材と、を有する。また、図1では図示を省略するが、ケース11には、支持機構4へのワークWの供給および取り出しのための扉と、ケース11の外部からメンテナンス機構12を視認するための窓と、が設けられる。
【0016】
なお、基台10の構成は、図1に示す例に限定されず、任意である。また、基台10およびケース11のそれぞれは、必要に応じて設ければよく、省略されてもよい。基台10が省略される場合、立体物印刷装置1の各構成要素は、例えば、建物の床、壁または天井等に設置される。言い換えると、基台10は、立体物印刷装置1の構成要素でなくともよく、例えば、建物の床、壁または天井等でもよい。本実施形態では、移動機構2、支持機構4およびメンテナンス機構12が同一平面である面10aに支持されるが、これらが互いに異なる方向を向く面に支持されてもよい。例えば、床、壁および天井のうち、1つに、移動機構2が設置され、他の1つに、支持機構4が設置されてもよい。また、互いに異なる方向を向く複数の壁のうち、1つに、移動機構2が設置され、他の1つに、支持機構4が設置されてもよい。
【0017】
移動機構2は、ワークWに対するヘッドユニット3_1~3_4およびセンサーユニット30の相対的な位置を変化させる機構である。
【0018】
図1に示す例では、移動機構2は、ワークWに対するヘッドユニット3_1~3_4およびセンサーユニット30の相対的な位置をX軸およびZ軸に沿う方向で変化させる。移動機構2は、X移動機構2XとZ移動機構2Z_1~2Z_5とを備える。なお、以下では、Z移動機構2Z_1~2Z_5のそれぞれをZ移動機構2Zという場合がある。
【0019】
ここで、Z移動機構2Z_1~2Z_4のうち、任意の1つのZ移動機構2Zが「第1のZ移動機構」の一例であり、他の任意の1つのZ移動機構2Zが「第2のZ移動機構」の一例である。また、Z移動機構2Z_1~2Z_5のうち、「第1のZ移動機構」および「第2のZ移動機構」とは異なるZ移動機構2Zが「第3のZ移動機構」の一例である。なお、以下では、Z移動機構2Z_1を「第1のZ移動機構」とし、Z移動機構2Z_2を「第2のZ移動機構」とし、Z移動機構2Z_3またはZ移動機構2Z_5を「第3のZ移動機構」とする場合が例示される。
【0020】
X移動機構2Xは、Z軸と直交するX軸に沿ってワークWに対するヘッドユニット3およびセンサーユニット30のそれぞれの相対位置を変化させる直動機構である。図1に示す例では、X移動機構2Xは、Z移動機構2Z_1~2Z_5を介してヘッドユニット3_1~3_4およびセンサーユニット30を支持しており、ヘッドユニット3_1~3_4およびセンサーユニット30をX軸に沿う方向に移動させる。
【0021】
X移動機構2Xは、1対の柱2aと梁2bと1対のレール2cと可動体2dとを有する。これらは、例えば、鉄、ステンレス鋼またはアルミニウム合金等の金属で構成される。
【0022】
1対の柱2aのそれぞれは、基台10の面10aからZ1方向に延びる部材である。図1に示す例では、1対の柱2aがX軸に沿う方向に並ぶ。1対の柱2aの先端には、梁2bが架け渡される。梁2bは、1対の柱2aに支持される部材である。図1に示す例では、梁2bは、X軸に沿う方向に延びており、Z軸に沿う方向を厚さ方向とする板状をなす。梁2bのZ1方向を向く面には、1対のレール2cが配置される。1対のレール2cのそれぞれは、可動体2dを1対の柱2aおよび梁2bに対してX軸に沿う方向に相対的に移動させるように案内するリニアレールであり、X軸に沿う方向に延びる。1対のレール2cには、図示しない直動軸受を介して、可動体2dが取り付けられる。可動体2dは、1対の柱2aおよび梁2bに対してX軸に沿う方向に相対的に移動する部材である。図1に示す例では、Z軸に沿う方向を厚さ方向とする板状をなす。図示しないが、X移動機構2Xは、当該移動のための駆動力を発生させるサーボモーター等の電動機を有するアクチュエーターと、当該移動の動作量を検出するリニアエンコーダー等のエンコーダーと、を有する。なお、X移動機構2Xの構成は、図1に示す例に限定されない。
【0023】
以上のX移動機構2Xの可動体2dには、支持体2eを介してZ移動機構2Z_1~2Z_5が取り付けられる。これにより、可動体2dの移動に伴って、Z移動機構2Z_1~2Z_5がX軸に沿う方向に移動する。
【0024】
ここで、支持体2eは、図示しない直動機構を介して可動体2dに取り付けられる。当該直動機構は、可動体2dに対して支持体2eをZ軸に沿う方向に移動させる。これにより、Z移動機構2Z_1~2Z_5が一括してZ軸に沿う方向に移動する。当該直動機構は、例えば、Z移動機構2Zと同様に構成される電動式の機構であってもよいし、手動式の機構であってもよい。当該直動機構は、電動式である場合、印刷時に駆動制御されてもよい。
【0025】
Z移動機構2Z_1~2Z_4のそれぞれは、Z軸に沿ってワークWに対するヘッドユニット3の位置を変化させる直動機構である。図1に示す例では、Z移動機構2Z_1~2Z_4が支持体2eを介して前述のX移動機構2Xの可動体2dに取り付けられており、ヘッドユニット3をZ軸に沿う方向に移動させる。また、Z移動機構2Z_1~2Z_4がこの順でX1方向に並ぶ。
【0026】
ここで、Z移動機構2Z_1~2Z_4には、ヘッドユニット3_1~3_4がそれぞれ一対一で対応する。そして、Z移動機構2Z_1~2Z_4のそれぞれには、対応するヘッドユニット3が取り付けられる。したがって、Z移動機構2Z_1は、ワークWに対するヘッドユニット3_1の相対的な位置をZ軸に沿う方向で変化させる。同様に、Z移動機構2Z_2~2Z_4は、ワークWに対するヘッドユニット3_2~3_4の相対的な位置をそれぞれZ軸に沿う方向で変化させる。このように、Z移動機構2Z_1~2Z_4は、ワークWに対するヘッドユニット3_1~3_4の相対的な位置を互いに独立にZ軸に沿う方向で変化させる。
【0027】
これに対し、Z移動機構2Z_5は、Z軸に沿ってワークWに対するセンサーユニット30の位置を変化させる直動機構であり、前述のZ移動機構2Z_1~2Z_4のそれぞれとは独立に動作する。Z移動機構2Z_5には、センサーユニット30が取り付けられる。図1に示す例では、Z移動機構2Z_5が支持体2eを介して前述のX移動機構2Xの可動体2dに取り付けられており、センサーユニット30をZ軸に沿う方向に移動させる。このように、Z移動機構2Z_5は、ワークWに対するセンサーユニット30の相対的な位置をヘッドユニット3_1~3_4のそれぞれとは独立にZ軸に沿う方向で変化させる。
【0028】
以上のZ移動機構2Z_1~2Z_5は、前述のように移動の対象が異なること以外は、互いに同様に構成される。図示しないが、Z移動機構2Z_1~2Z_5のそれぞれは、レールと可動体とアクチュエーターとエンコーダーとを有する。当該レールは、支持体2eに固定されており、Z軸に沿う方向に延びるリニアレールである。当該可動体は、直動軸受を介して当該レールに取り付けられており、Z軸に沿う方向に移動する。当該アクチュエーターは、当該移動のための駆動力を発生させるサーボモーター等の電動機を有する。当該エンコーダーは、当該移動の動作量を検出するリニアエンコーダー等である。なお、Z移動機構2Z_1~2Z_5の構成は、互いに異なってもよい。ただし、低コスト化等の観点から、Z移動機構2Z_1~2Z_5は、互いに同一の構成であることが好ましい。
【0029】
図1では、図示を省略するが、当該可動体には、ヘッドユニット3またはセンサーユニット30の姿勢を微調整するための調整機構を介して、ヘッドユニット3またはセンサーユニット30が取り付けられる。当該調整機構の具体例については、後に図3に基づいて説明する。
【0030】
ヘッドユニット3_1~3_4のそれぞれは、「液体」の一例であるインクをワークWに向けて吐出するヘッド3aを有するアセンブリーである。なお、ヘッドユニット3の詳細については、後に図3に基づいて説明する。
【0031】
当該インクとしては、特に限定されず、例えば、水系溶媒に染料または顔料等の色材を溶解させた水系インク、紫外線硬化型等の硬化性樹脂を用いた硬化性インク、および、有機溶剤に染料または顔料等の色材を溶解させた溶剤系インク等が挙げられる。中でも、硬化性インクが好適に用いられる。硬化性インクは、特に限定されず、例えば、熱硬化型、光硬化型、放直線硬化型および電子線硬化型等のいずれでもよいが、紫外線硬化型等の光硬化型が好適である。なお、当該インクは、溶液に限定されず、分散媒に色材等を分散質として分散させたインクでもよい。また、当該インクは、色材を含むインクに限定されず、例えば、配線等を形成するための金属粒子等の導電性粒子を分散質として含むインクでもよいし、クリアインクでもよいし、ワークWの表面処理のための処理液でもよい。
【0032】
ヘッドユニット3には、図示しない配線および供給管が接続される。当該配線は、ヘッド3aを駆動するための電気信号をヘッド3aに供給する。当該配線は、当該供給管と同じ経路で配置されてもよいし、当該供給管と異なる経路で配置されてもよい。当該供給管は、図示しないインクタンクからのインクをヘッドユニット3に供給する可撓性の管体である。なお、ヘッドユニット3_1~3_4に用いるインクの種類は、互いに同一であっても異なってもよい。
【0033】
センサーユニット30は、ワークWとの位置関係を検出するセンサー31を有するアセンブリーである。図1に示す例では、センサーユニット30は、センサー31とエネルギー出射部32とを有する。
【0034】
センサー31は、例えば、ワークWとの接触を検出する接触式のセンサーと、ワークWとの間の距離を検出する光学式の変位センサーと、のうちの一方または両方を有する。エネルギー出射部32は、ワークW上のインクを硬化または固化させるための光、熱、電子線または放射線等のエネルギーを出射する。エネルギー出射部32は、例えば、紫外線を出射するLED(light emitting diode)等の発光素子等で構成される。なお、エネルギー出射部32は、エネルギーの出射方向または出射範囲等を調整するためのレンズ等の光学部品等を有してもよい。
【0035】
支持機構4は、ワークWを支持する機構である。図1に示す例では、支持機構4は、Y移動機構4Yを有する。
【0036】
Y移動機構4Yは、ワークWに対するヘッドユニット3_1~3_4およびセンサーユニット30の相対的な位置をY軸に沿う方向で変化させる直動機構である。図1に示す例では、Y移動機構4Yは、ワークWをY軸に沿う方向に移動させる。
【0037】
Y移動機構4Yは、支持体4aと1対のレール4bと可動体4cとを有する。これらは、例えば、鉄、ステンレス鋼またはアルミニウム合金等の金属で構成される。
【0038】
支持体4aは、基台10の面10aにネジ留め等により固定される部材である。図1に示す例では、支持体4aは、Y軸に沿う方向に延びており、Z軸に沿う方向を厚さ方向とする板状をなす。支持体4aのZ1方向を向く面には、1対のレール4bが配置される。1対のレール4bのそれぞれは、可動体4cを支持体4aに対してY軸に沿う方向に相対的に移動させるように案内するリニアレールであり、Y軸に沿う方向に延びる。1対のレール4bには、図示しない直動軸受を介して、可動体4cが取り付けられる。可動体4cは、支持体4aに対してY軸に沿う方向に相対的に移動する部材である。図1に示す例では、Z軸に沿う方向を厚さ方向とする板状をなす。図示しないが、Y移動機構4Yは、当該移動のための駆動力を発生させるサーボモーター等の電動機を有するアクチュエーターと、当該移動の動作量を検出するリニアエンコーダー等のエンコーダーと、を有する。
【0039】
可動体4cには、ステージ4dが取り付けられる。ステージ4dは、ワークWを載置するための部材である。図1に示す例では、ステージ4dは、板状をなす。ここで、図示しないが、可動体4cとステージ4dとの間には、可動体4cに対してステージ4dをX軸に平行な軸まわりに回動させる調整機構が介在する。当該調整機構により、ワークWのX軸に平行な軸まわりの姿勢を微調整することができる。当該調整機構は、アクチュエーターおよびエンコーダーを含む電動式の構成であってもよいし、手動で調整可能な構成であってもよい。
【0040】
なお、Y移動機構4Yの構成は、図1に示す例に限定されない。例えば、支持体4aが省略されてもよいし、支持体4aが1対のレール4bと一体で構成されてもよい。支持体4aが省略される場合、1対のレール4bが基台10に直接にネジ留め等により固定される。また、可動体4cとステージ4dとの間に介在する調整機構は、必要に応じて設けられ、省略されてもよい。
【0041】
メンテナンス機構12は、ヘッドユニット3のヘッド3aのメンテナンスを行うための機構である。図1に示す例では、メンテナンス機構12は、キャップユニット12aとキャップカバー12bとを有する。キャップユニット12aは、ヘッド3aのノズル面を覆うことにより、当該ノズル面のノズル付近のインクの乾燥、硬化または固化を防止する。キャップカバー12bは、Y軸に沿う方向に移動可能に構成されており、Z軸に沿う方向にみてキャップユニット12aに重なる状態と重ならない状態とを切り替える。ここで、キャップユニット12aを使用しない場合、キャップカバー12bは、Z軸に沿う方向にみてキャップユニット12aに重なる状態であり、キャップユニット12aを覆うカバーとして機能する。この状態のキャップカバー12bは、試験印刷のための媒体を支持する検査台としても利用可能である。一方、キャップユニット12aを使用する場合、キャップカバー12bは、Z軸に沿う方向にみてキャップユニット12aに重ならない状態である。
【0042】
なお、メンテナンス機構12の構成は、図1に示す例に限定されず、任意である。また、メンテナンス機構12は、必要に応じて設けられ、省略されてもよい。
【0043】
1-2.印刷装置の電気的な構成
図2は、実施形態に係る立体物印刷装置1の電気的な構成を示すブロック図である。図2では、立体物印刷装置1の構成要素のうち、電気的な構成要素が示される。図2に示すように、立体物印刷装置1は、前述の図1に示す構成要素のほか、コントローラー5と制御モジュール6とコンピューター7とを有する。以下、コントローラー5、制御モジュール6およびコンピューター7を順次説明する。
【0044】
なお、図2に示す電気的な各構成要素は、適宜に分割されてもよいし、一部が他の構成要素に含まれてもよいし、他の構成要素と一体で構成されてもよい。例えば、コントローラー5または制御モジュール6の機能の一部または全部は、コンピューター7により実現されてもよいし、LAN(Local Area Network)またはインターネット等のネットワークを介してコントローラー5に接続されるPC(personal computer)等の他の外部装置により実現されてもよい。
【0045】
コントローラー5は、移動機構2および支持機構4の駆動を制御する機能と、ヘッドユニット3でのインクの吐出動作を移動機構2の動作に同期させるための信号D3を生成する機能と、を有する。
【0046】
コントローラー5は、記憶回路5aと処理回路5bとを有する。
【0047】
記憶回路5aは、処理回路5bが実行する各種プログラムと、処理回路5bが処理する各種データと、を記憶する。記憶回路5aは、例えば、RAM(Random Access Memory)等の揮発性のメモリーとROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)またはPROM(Programmable ROM)等の不揮発性メモリーとの一方または両方の半導体メモリーを含む。なお、記憶回路5aの一部または全部は、処理回路5bに含まれてもよい。
【0048】
記憶回路5aには、経路情報Daが記憶される。経路情報Daは、移動機構2の動作の制御に用いられ、ヘッド3aの移動すべき経路におけるヘッド3aの位置を示す情報である。経路情報Daは、例えば、ワールド座標系の座標値を用いて表される。経路情報Daは、ワークWの少なくとも一部の形状を表すワークデータに基づいて、コンピューター7により生成される。経路情報Daは、コンピューター7から記憶回路5aに入力される。なお、経路情報Daは、ワーク座標系の座標値を用いて表されてもよい。この場合、経路情報Daは、ワーク座標系の座標値からワールド座標系の座標値に変換した後に移動機構2の動作の制御に用いられる。
【0049】
処理回路5bは、移動機構2の動作を制御する移動制御部5b1として機能するとともに、信号D3を生成する。処理回路5bは、例えば、1個以上のCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサーを含む。なお、処理回路5bは、CPUに代えて、または、CPUに加えて、FPGA(field-programmable gate array)等のプログラマブルロジックデバイスを含んでもよい。
【0050】
移動制御部5b1は、処理回路5bが記憶回路5a等から読み込んだプログラムを実行することにより実現される。移動制御部5b1は、経路情報Daを移動機構2の移動量および移動速度等の動作量に変換する演算を行う。そして、移動制御部5b1は、移動機構2の実際の動作量が前述の演算結果となるように、移動機構2の各エンコーダーからの出力信号Dx、Dz_1~Dz5に基づいて、制御信号Sx、Sz_1~Sz_5を出力する。出力信号Dxは、X移動機構2Xのエンコーダーから出力される信号である。出力信号Dz_1~Dz_5は、Z移動機構2Z_1~2Z_5のエンコーダーから出力される信号である。制御信号Sxは、X移動機構2Xのアクチュエーターの駆動を制御するための信号である。制御信号Sz_1~Sz_5は、Z移動機構2Z_1~2Z_5のアクチュエーターの駆動を制御するための信号である。ここで、制御信号Sx、Sz_1~Sz_5は、必要に応じて、センサーユニット30のセンサー31からの出力信号D1に基づいて移動制御部5b1により補正される。
【0051】
特に、移動制御部5b1は、後述の受付部7b1の受付結果に基づいて、移動機構2の動作状態を複数の状態から選択する。当該複数の状態は、ワークWに対して印刷を実行する印刷状態と、作業者によるヘッド3aのメンテナンスを受けるためのメンテナンス状態と、を含む。本実施形態の当該複数の状態は、印刷状態およびメンテナンス状態のほか、初期状態を含む。これらの詳細については、後に図9から図11に基づいて説明する。
【0052】
このように、移動制御部5b1は、Z移動機構2Z_1~2Z_5の駆動を独立に制御する。なお、移動制御部5b1の一部または全部がコンピューター7等の他の装置により実現されてもよい。
【0053】
また、処理回路5bは、出力信号Dx、Dz_1~Dz_5のうちの少なくとも1つの信号に基づいて、信号D3を生成する。例えば、処理回路5bは、出力信号Dxが所定値となるタイミングのパルスを含む信号D3を生成する。
【0054】
制御モジュール6は、コントローラー5から出力される信号D3とコンピューター7からの印刷データとに基づいて、ヘッドユニット3でのインクの吐出動作を制御する回路である。制御モジュール6は、タイミング信号生成回路6aと電源回路6bと制御回路6cと駆動信号生成回路6dとを有する。
【0055】
タイミング信号生成回路6aは、信号D3に基づいてタイミング信号PTSを生成する。タイミング信号生成回路6aは、例えば、信号D3の検出を契機としてタイミング信号PTSの生成を開始するタイマーで構成される。
【0056】
電源回路6bは、図示しない商用電源から電力の供給を受け、所定の各種電位を生成する。生成した各種電位は、制御モジュール6およびヘッドユニット3の各部に適宜に供給される。例えば、電源回路6bは、電源電位VHVとオフセット電位VBSとを生成する。オフセット電位VBSは、ヘッドユニット3に供給される。また、電源電位VHVは、駆動信号生成回路6dに供給される。
【0057】
制御回路6cは、タイミング信号PTSに基づいて、制御信号SI_1~SI_4と波形指定信号dComとラッチ信号LATとクロック信号CLKとチェンジ信号CNGとを生成する。これらの信号は、タイミング信号PTSに同期する。これらの信号のうち、波形指定信号dComは、駆動信号生成回路6dに入力され、それ以外の信号は、ヘッドユニット3のスイッチ回路3eに入力される。制御信号SI_1~SI_4は、ヘッドユニット3_1~3_4にそれぞれ一対一で対応する。なお、以下では、制御信号SI_1~SI_4のそれぞれを制御信号SIという場合がある。
【0058】
制御信号SIは、ヘッドユニット3のヘッド3aが有する駆動素子の動作状態を指定するためのデジタルの信号である。具体的には、制御信号SIは、印刷データに基づいて、当該駆動素子に対して後述の駆動信号Comを供給するか否かを指定するための信号である。この指定により、例えば、当該駆動素子に対応するノズルからインクを吐出するか否かを指定したり、当該ノズルから吐出されるインクの量を指定したりする。波形指定信号dComは、駆動信号Comの波形を規定するためのデジタル信号である。ラッチ信号LATおよびチェンジ信号CNGは、制御信号SIと併用され、当該駆動素子の駆動タイミングを規定することにより、当該ノズルからのインクの吐出タイミングを規定するための信号である。クロック信号CLKは、タイミング信号PTSに同期した基準となるクロック信号である。
【0059】
以上の制御回路6cは、例えば、1個以上のCPU等のプロセッサーを含む。なお、制御回路6cは、CPUに代えて、または、CPUに加えて、FPGA等のプログラマブルロジックデバイスを含んでもよい。
【0060】
駆動信号生成回路6dは、ヘッドユニット3のヘッド3aの有する各駆動素子を駆動するための駆動信号Comを生成する回路である。具体的には、駆動信号生成回路6dは、例えば、DA変換回路と増幅回路とを有する。駆動信号生成回路6dでは、当該DA変換回路が制御回路6cからの波形指定信号dComをデジタル信号からアナログ信号に変換し、当該増幅回路が電源回路6bからの電源電位VHVを用いて当該アナログ信号を増幅することで駆動信号Comを生成する。ここで、駆動信号Comに含まれる波形のうち、当該駆動素子に実際に供給される波形の信号が駆動パルスPDである。駆動パルスPDは、ヘッドユニット3のスイッチ回路3eを介して、駆動信号生成回路6dから当該駆動素子に供給される。
【0061】
ここで、スイッチ回路3eは、制御信号SIに基づいて、駆動信号Comに含まれる波形のうちの少なくとも一部を駆動パルスPDとして供給するか否かを切り替えるスイッチング素子を含む回路である。
【0062】
コンピューター7は、プログラムをインストールしたデスクトップ型またはノート型等のコンピューターである。コンピューター7は、経路情報Daを生成する機能と、コントローラー5に経路情報Da等の情報を供給する機能と、制御モジュール6に印刷データ等の情報を供給する機能と、作業者からの指示を受け付ける機能と、を有する。本実施形態のコンピューター7は、これらの機能のほか、ヘッドユニット3のエネルギー出射部3cとセンサーユニット30のエネルギー出射部32との駆動を制御する機能を有する。
【0063】
コンピューター7は、記憶回路7aと処理回路7bと表示装置7cと入力装置7dとを有する。
【0064】
記憶回路7aは、処理回路7bが実行する各種プログラムと、処理回路7bが処理する経路情報Da等の各種データと、を記憶する。記憶回路7aは、例えば、RAM等の揮発性のメモリーとROM、EEPROMまたはPROM等の不揮発性メモリーとの一方または両方の半導体メモリーを含む。なお、記憶回路7aの一部または全部は、処理回路7bに含まれてもよい。
【0065】
処理回路7bは、記憶回路7aからプログラムを読み込んで実行することにより、受付部7b1を含む前述の各種機能を実現する。処理回路7bは、例えば、1個以上のCPU等のプロセッサーを含む。なお、処理回路7bは、CPUに代えて、または、CPUに加えて、FPGA等のプログラマブルロジックデバイスを含んでもよい。
【0066】
受付部7b1は、作業者からの指示を受け付ける。具体的には、受付部7b1は、作業者からの指示を受け付けるのに必要なGUI(Graphical User Interface)用の画像を表示装置7cに表示させたり、当該画像に基づく入力装置7dへの入力結果に従って、作業者からの指示を受け付けたりする。当該画像の具体例については、後に図7および図8に基づいて説明する。
【0067】
表示装置7cは、処理回路7bによる制御のもとで各種の画像を表示する。ここで、表示装置7cは、例えば、液晶表示パネルまたは有機EL(electro-luminescence)表示パネル等の各種の表示パネルを有する。なお、表示装置7cは、コンピューター7の外部に設けられてもよい。
【0068】
入力装置7dは、作業者からの操作を受け付ける機器である。例えば、入力装置7dは、タッチパッド、タッチパネルまたはマウス等のポインティングデバイスを有する。ここで、入力装置7dは、タッチパネルを有する場合、表示装置7cを兼ねてもよい。なお、入力装置7dは、コンピューター7の外部に設けられてもよい。
【0069】
1-3.ヘッドユニットの構成
図3は、ヘッドユニット3および調整機構2f、2g、2hの概略構成を示す斜視図である。図4は、ヘッドユニット3の側面図である。図3に示すように、ヘッドユニット3は、調整機構2f、2g、2hを介してZ移動機構2Zに支持される。図3に示す例では、調整機構2f、2g、2hは、この順でZ2方向に並ぶ。
【0070】
調整機構2fは、Z移動機構2Zとヘッドユニット3とのY軸に沿う方向での位置関係を微調整するための機構である。図3に示す例では、調整機構2fは、第1部材2f1と第2部材2f2とを有し、これらがY軸に沿う方向の相対的な位置を変更可能に構成される。図示しないが、調整機構2fには、当該微調整のためのツマミ等が設けられており、手動により当該微調整が可能である。第1部材2f1は、Z移動機構2Zにネジ留め等により取り付けられる。なお、第1部材2f1は、Z移動機構2Zと一体で構成されてもよい。
【0071】
調整機構2gは、Z移動機構2Zとヘッドユニット3とのX軸に平行な軸まわりの位置関係を微調整するための機構である。図3に示す例では、調整機構2gは、第1部材2g1と第2部材2g2とを有し、これらがX軸に平行な軸まわりの相対的な姿勢を変更可能に構成される。調整機構2gには、当該微調整のためのツマミ等が設けられており、手動により当該微調整が可能である。第1部材2g1は、調整機構2fの第2部材2f2に取り付けられる。なお、第1部材2g1は、第2部材2f2と一体で構成されてもよい。
【0072】
調整機構2hは、Z移動機構2Zとヘッドユニット3とのZ軸に平行な軸まわりの位置関係を微調整するための機構である。図3に示す例では、調整機構2hは、第1部材2h1と第2部材2h2とを有し、これらがZ軸に平行な軸まわりの相対的な姿勢を変更可能に構成される。図示しないが、調整機構2hには、当該微調整のためのツマミ等が設けられており、手動により当該微調整が可能である。第1部材2h1は、調整機構2gの第2部材2g2に取り付けられる。なお、第1部材2h1は、第2部材2g2と一体で構成されてもよい。
【0073】
なお、調整機構2f、2g、2hの並び順は、図3に示す例に限定されず、任意である。また、調整機構2f、2g、2hは、電動により微調整を行う構成であってもよい。
【0074】
ヘッドユニット3は、ヘッド3aと流路構造体3bとエネルギー出射部3cと温度センサー3kとヒーター3dと支持体3gとカバー3hとを有する。ヘッドユニット3を構成する要素のうち、支持体3g以外の要素は、支持体3gに直接的または間接的に支持される。なお、図3に示す例では、ヘッドユニット3が有するヘッド3aおよび流路構造体3bのそれぞれの数が1個であるが、当該数は、図3に示す例に限定されず、2個以上でもよい。また、流路構造体3bは、ヘッドユニット3の外部に設けられてもよい。また、ヒーター3dおよびそれに関する構成は、必要に応じて設けられ、省略されてもよい。
【0075】
支持体3gは、前述の調整機構2f、2g、2hを介してZ移動機構2Zに装着される。したがって、ヘッド3a、流路構造体3bおよびエネルギー出射部3cが支持体3gにより一括してZ移動機構2Zに支持される。
【0076】
支持体3gは、実質的な剛体であり、例えば、金属材料等で構成される。支持体3gは、ヒーター3dに熱的に接続されており、ヒーター3dからの熱を受ける。なお、図3では、支持体3gが板状をなすが、支持体3gの形状は、特に限定されず、任意である。また、支持体3gは、複数の部材で構成されてもよい。
【0077】
図4に示すように、支持体3gは、ヒーター3dからの熱を輻射または対流により流路構造体3bに伝えるための加熱面FHを有する。図4に示す例は、加熱面FHは、支持体3gのa1方向を向く面である。ここで、加熱面FHには、ヒーター3dからの熱を流路構造体3bに向けて効率的に輻射するよう、黒色塗装および黒色アルマイト処理の処理が施されることが好ましい。
【0078】
支持体3gのa1方向を向く面には、ヒーター3dが配置される。図4に示す例では、ヒーター3dは、ヘッド3aと支持体3gとの間に配置される。
【0079】
ヒーター3dは、通電により発熱する発熱抵抗体を有する構造体である。ヒーター3dとしては、特に限定されないが、面状ヒーターが好適である。面状ヒーターは、例えば、樹脂等で構成される絶縁性のフィルムと、当該フィルム上に設けられる金属等で構成される発熱抵抗体と、を有する。ヒーター3dの一部はヘッド3aに接触または金属等の熱伝導性部材を介して接続されており、ヒーター3dから発生した熱は熱伝導により直接的にヘッド3aに伝搬される。
【0080】
前述の支持体3gに対してX1方向の位置には、ヘッド3a、流路構造体3bおよびカバー3hが配置される。
【0081】
ここで、支持体3gのX1方向を向く面には、支持体3gに対するヘッド3aの位置決めのための複数の突起3g1と、支持体3gに対するヘッド3aのネジ留めのための複数のネジ孔3g2と、が設けられる。複数の突起3g1のそれぞれは、支持体3gからX1方向に突出しており、ヘッド3aに設けられる孔3a1に挿入される。これにより、支持体3gに対してX軸に沿う方向でのヘッド3aの移動を許容しつつX軸に対して交差する方向でのヘッド3aの移動が規制される。複数のネジ孔3g2のそれぞれは、X軸に沿う方向に延びており、ヘッド3aに設けられる孔であるネジ留め部3a2に挿入されるネジ3jに嵌め合う。これにより、支持体3gに対してヘッド3aがネジ留めされる。こうした構造から理解されるように、ヘッド3aは、Z移動機構2Zによって支持された支持体3gに対してX軸に沿う方向での挿抜により着脱可能である。したがって、作業者がヘッド3aの交換に伴う着脱やアライメント調整等を行う場合には、Z移動機構2Zまたは支持体3gに対してX軸に沿う方向において、作業者が手や工具等によって作業可能となる一定の空間が必要となる。
【0082】
なお、突起3g1の外周面には、雄ねじが設けられてもよい。この場合、当該雄ねじを支持体3gに対するヘッド3aのねじ留めに用いることができる。この結果、ネジ3jによるネジ留めが不要となる。また、突起3g1およびネジ3jのそれぞれの数は、特に限定されず、任意である。
【0083】
ヘッド3aは、ノズル面FNと、ノズル面FNに開口する複数のノズルNと、を有する。図3に示す例では、ノズル面FNの法線方向がZ2方向であり、当該複数のノズルNは、X軸に沿う方向に互いに間隔をあけて並ぶノズル列NLaとノズル列NLbとに区分される。ノズル列NLaおよびノズル列NLbのそれぞれは、Y軸に沿う方向であるノズル列方向DNに直線状に配列される複数のノズルNの集合である。ここで、ヘッド3aにおけるノズル列NLaの各ノズルNに関連する要素とノズル列NLbの各ノズルNに関連する要素とがX軸に沿う方向で互いに略対称な構成である。
【0084】
ただし、ノズル列NLaにおける複数のノズルNとノズル列NLbにおける複数のノズルNとのb軸に沿う方向での位置が互いに一致してもよいし異なってもよい。また、ノズル列NLaおよびノズル列NLbのうちの一方の各ノズルNに関連する要素が省略されてもよい。以下では、ノズル列NLaにおける複数のノズルNとノズル列NLbにおける複数のノズルNとのb軸に沿う方向での位置が互いに一致する構成が例示される。また、以下では、ノズル列NLaおよびノズル列NLbの集合をノズル列NLという場合がある。
【0085】
図示しないが、ヘッド3aは、ノズルNごとに、駆動素子である圧電素子と、インクを収容するキャビティと、有する。ここで、当該圧電素子は、当該圧電素子に対応するキャビティの圧力を変化させることにより、当該キャビティに対応するノズルからインクを吐出させる。このようなヘッド3aは、例えば、エッチング等により適宜に加工したシリコン基板等の複数の基板を接着剤等により貼り合わせることにより得られる。なお、ノズルからインクを吐出させるための駆動素子として、当該圧電素子に代えて、キャビティ内のインクを加熱するヒーターを用いてもよい。
【0086】
図4に示すように、ヘッド3aのa2方向を向く面には、温度センサー3kが配置される。温度センサー3kは、例えば、サーミスターまたは熱電対等である。なお、温度センサー3kの位置は、図4に示す例に限定されない。ただし、ヘッド3a内のインクの温度が変動すると、ヘッド3a内のインクの粘度が変動し、ヘッド3aからのインクの吐出特性の悪化を招く。したがって、ヘッド3aの温度を高精度に制御する観点から、ヘッド3aの温度を好適に検出し得るようできるだけヘッド3aに近い位置に温度センサー3kが配置されることが好ましい。
【0087】
以上のヘッド3aには、流路構造体3bを介して供給管20aおよび排出管20bに接続される。供給管20aは、図示しないインクタンクからのインクをヘッドユニット3に供給する可撓性の管体である。排出管20bは、図示しない循環機構または排出機構へインクを移送するための可撓性の管体である。
【0088】
流路構造体3bは、図4に示すように、ヘッド3aに対してZ1方向の位置に配置される。また、流路構造体3bは、供給管3i1および排出管3i2を介してヘッド3aに接続される。供給管3i1は、流路構造体3bからヘッド3aにインクを供給するための管体である。排出管3i2は、ヘッド3aから排出されるインクを流路構造体3bに導入するための管体である。
【0089】
供給管3i1および排出管3i2は、前述のようなインクを移送する機能だけでなく、ヘッド3aに対して流路構造体3bを支持する機能を有する。したがって、供給管3i1および排出管3i2は、ヘッド3aに対して流路構造体3bを支持し得る剛性を有し、例えば、フッ素系樹脂等の樹脂材料で構成される。また、供給管3i1および排出管3i2は、ヘッド3aおよび流路構造体3bに対して嵌合等により接続されており、ヘッド3aおよび流路構造体3bのうちの一方または両方に対して着脱可能である。例えば、供給管3i1には、流路構造体3bの図示しない排出口が着脱可能に挿入される。排出管3i2には、流路構造体3bの図示しない導入口が着脱可能に挿入される。
【0090】
流路構造体3bは、X2方向を向く第1面F1とX1方向を向く第2面F2とを有する板状をなしており、第1面F1が加熱面FHに対向する。図4に示す例では、第1面F1および加熱面FHは、互いに接触しておらず、これらの間には、空気が介在する。なお、第1面F1および加熱面FHは、互いに接触してもよい。
【0091】
流路構造体3bは、ヘッド3a内のインクの圧力に応じて開閉する弁機構である。この開閉により、ヘッド3aと前述の図示しないインクタンクとの位置関係が変化しても、ヘッド3a内のインクの圧力が所定範囲内の負圧に維持される。このため、ヘッド3aのノズルNに形成されるインクのメニスカスの安定化が図られる。この結果、ノズルN内に気泡が入り込んだり、ノズルNからインクが溢れ出したりすることが防止される。また、流路構造体3bからのインクは、図示しない分岐流路を介してヘッド3aの複数箇所に適宜に分配される。ここで、図示しないインクタンクからのインクは、ポンプ等により所定の圧力で供給管20a内に移送される。
【0092】
カバー3hは、流路構造体3bの周囲を覆う箱状の部材である。図4に示す例では、カバー3hは、支持体3gとの間に流路構造体3bを収容する空間を形成する。当該空間は、密閉されてもよいし、外部に開放されてもよい。また、カバー3hは、流路構造体3bに接触しておらず、カバー3hと流路構造体3bとの間には、空気が介在する。このため、カバー3hから流路構造体3bへの熱伝導が防止される。
【0093】
カバー3hは、熱伝導性を有しており、例えば、金属材料等で構成される。カバー3hは、ヒーター3dに熱的に接続されており、ヒーター3dからの熱を受ける。図4に示す例では、カバー3hは、支持体3gに接触することにより、支持体3gを介してヒーター3dに熱的に接続される。なお、カバー3hは、支持体3gに対してねじ留め等により固定される。
【0094】
支持体3gに対してX2方向の位置には、エネルギー出射部3cが配置される。エネルギー出射部3cは、ワークW上のインクを硬化または固化させるための光、熱、電子線または放直線等のエネルギーを出射する。例えば、インクが紫外線硬化性を有する場合、エネルギー出射部3cは、紫外線を出射するLED(light emitting diode)等の発光素子等で構成される。また、エネルギー出射部3cは、エネルギーの出射方向または出射範囲等を調整するためのレンズ等の光学部品等を適宜に有してもよい。
【0095】
ここで、エネルギー出射部3cは、ワークW上のインクを半硬化または半固化させるための光、熱、電子線または放射線等のエネルギーを出射する。「半硬化」とは、完全硬化に至らずに部分的に硬化した状態をいう。同様に、「半固化」とは、完全固化に至らずに部分的に固化した状態をいう。エネルギー出射部3cは、例えば、紫外線を出射するLED(light emitting diode)等の発光素子等で構成される。なお、エネルギー出射部3cは、エネルギーの出射方向または出射範囲等を調整するためのレンズ等の光学部品等を有してもよい。なお、エネルギー出射部3cは、必要に応じて設ければよく、省略されてもよい。また、仮硬化用光源5cは、後述のエネルギー出射部32と同様、ワークW上のインクを完全硬化させてもよい。
【0096】
1-4.印刷装置の(メンテナンス)動作
図5は、第1実施形態に係る立体物印刷装置1の動作の一例を示す図である。立体物印刷装置1では、図5に示すように、まず、ステップS0において、移動制御部5b1が移動機構2を初期状態とする。ここで、移動制御部5b1は、例えば、立体物印刷装置1の電源投入または作業者からの指示等を契機として、移動機構2を初期状態とする。この初期状態は、例えば、基準となる状態であり、待機状態として利用される。初期状態の具体例については、後に図8に基づいて説明する。
【0097】
ステップS0の後、ステップS1において、移動制御部5b1は、印刷指示の有無を判断する。この判断は、例えば、受付部7b1の受付結果に基づいて行われる。
【0098】
印刷指示がある場合(ステップS1:YES)、ステップS2において、移動制御部5b1は、移動機構2を印刷状態とする。この印刷状態は、ワークWに対して印刷を実行する状態であり、ヘッド3aからのインクの吐出を伴う。印刷状態の具体例については、後に図9に基づいて説明する。
【0099】
一方、印刷指示がない場合(ステップS1:NO)、または、ステップS2の後、ステップS3において、移動制御部5b1は、メンテナンス指示の有無を判断する。この判断は、例えば、受付部7b1の受付結果に基づいて行われる。
【0100】
メンテナンス指示がある場合(ステップS3:YES)、ステップS4において、移動制御部5b1は、移動機構2をメンテナンス状態とする。このメンテナンス状態は、作業者によるヘッド3aのメンテナンスを受けるための状態であり、ヘッド3aからのインクの吐出を伴わない。メンテナンス状態の具体例については、後に図10に基づいて説明する。
【0101】
このように、移動制御部5b1は、複数の状態のうちメンテナンス状態以外の状態で受付部7b1がメンテナンス作業に関する指示を受け付けた場合、メンテナンス状態に移行する動作を移動機構2に実行させる。ここで、受付部7b1は、メンテナンスの対象となるヘッド3aを特定する情報を受け付ける。
【0102】
ステップS4の後、ステップS5において、移動制御部5b1は、メンテナンスが終了したか否かを判断する。この判断は、例えば、受付部7b1の受付結果に基づいて行われる。なお、移動制御部5b1は、ステップS4の実行後に所定時間を経過した場合、メンテナンスが終了したと判断してもよい。
【0103】
メンテナンスが終了した場合(ステップS5:YES)、または、メンテナンス指示がない場合(ステップS3:NO)、ステップS6において、移動制御部5b1は、終了指示の有無を判断する。この判断は、例えば、受付部7b1の受付結果に基づいて行われる。
【0104】
終了指示がない場合(ステップS6:NO)、または、メンテナンスが終了していない場合(ステップS5:NO)、移動制御部5b1は、ステップS1に戻る。なお、終了指示がない場合(ステップS6:NO)、移動制御部5b1は、ステップS0に戻ってもよい。一方、終了指示がある場合(ステップS6:YES)、移動制御部5b1は、処理を終了する。
【0105】
図6は、受付部7b1のための表示例を示す図である。受付部7b1は、例えば、図6に示すように、作業者からの指示を受け付けるためのGUI用の画像としてウインドウWD1を表示装置7cに表示させる。ウインドウWD1は、入力領域GU1、GU2、GU3とボタンGU4、GU5、GU6、GU7、GU8と表示領域RE1とを含む。
【0106】
入力領域GU1は、ジョブファイルを選択するための領域である。当該ジョブファイルは、印刷のための設定に関する情報を示す所定形式のデータである。当該設定は、例えば、入力領域GU2、GU3を用いて行われる。図6に示す例では、入力領域GU1は、ジョブファイルのファイル名を表示する領域と、既存のジョブファイルを読み込むためのボタンと、新規にジョブファイルを作成するためのボタンと、を含む。
【0107】
入力領域GU2は、ワークWを選択するための領域である。この選択は、ワークWの形状データを読み込むことにより行われる。図6に示す例では、入力領域GU2は、ワークWの形状をプレビュー表示する領域と、形状データのファイル名を表示する領域と、形状データを読み込むためのボタンと、を含む。
【0108】
入力領域GU3は、印刷設定のための領域であり、印刷に用いる画像データの選択等に用いられる。図6に示す例では、入力領域GU3は、画像データに基づく画像をプレビュー表示する領域と、画像データのファイル名を表示する領域と、画像データを読み込むためのボタンと、画像データを削除するためのボタンと、その他の詳細設定のためのウインドウを開くためのボタンと、を含む。
【0109】
ボタンGU4は、画像データに基づく画像を詳細にプレビュー表示するためのウインドウを開くためのボタンである。ボタンGU5は、入力領域GU2、GU3を用いた入力結果をジョブファイルとして登録するためのボタンである。ボタンGU6は、入力領域GU2、GU3を用いた入力結果に基づいて印刷を開始するためのボタンである。ボタンGU6の操作により、印刷指示が生成される。ボタンGU7は、ヘッド3aのクリーニング動作を実行するためのボタンである。ボタンGU8は、メンテナンスを開始するためのボタンである。
【0110】
本実施形態では、ボタンGU8が操作されると、メンテナンスのためのメニューが表示される。当該メニューに対する操作により、メンテナンス指示が生成される。当該メニューについては、後に図7に基づいて説明する。なお、ボタンGU8の操作により、メンテナンス指示が生成されてもよい。この場合、立体物印刷装置1は、テストパターンの印刷や各種のセンシング技術によって、メンテナンスの必要なヘッド3aを自動的に特定する機能を有することが好ましい。
【0111】
表示領域RE1は、ヘッド3aの状態を報知するための領域である。この報知に基づいて、作業者がメンテナンスの必要性等を判断することができる。例えば、作業者が表示領域RE1の表示に基づいて、ヘッドの交換が必要だと判断した場合、作業者はボタンGU8の走査を行う。図6に示す例では、第2ヘッドの交換時期が近づいていること、および、マゼンタのインクの残りが10%であることが表示領域RE1に表示される。なお、表示領域RE1の表示内容は、図6に示す例に限定されず、任意である。
【0112】
図7は、メンテナンスの対象となるヘッドを特定する情報を受け付けるための表示例を示す図である。前述の図6に示すボタンGU8が操作されると、図7に示すように、メンテナンスのためのGUI用の画像としてウインドウWD2が表示される。ウインドウWD2は、入力領域GU9とボタンGU10とを含む。
【0113】
入力領域GU9は、ヘッド3aのメンテナンスに必要な事項を入力するための領域である。図7に示す例では、入力領域GU9は、インク充填、アライメントおよびヘッド交換に関する事項を入力するための領域を切り替え可能なタブを有する。ここで、図7では、ヘッド交換のためのタブが選択された状態が示されており、この状態において、入力領域GU9は、交換対象となるヘッド3aを指定するための領域GU9aと、領域GU9aでの指定結果に基づいてメンテナンスの実行を開始するためのボタンGU9bと、を含む。ボタンGU9bの操作により、メンテナンス指示が生成される。例えば、作業者が入力領域GU9を介して、交換対象のヘッドとして「ヘッドNo.2」に対応するヘッド3a_2を指定した場合、立体物印刷装置1は、後述するヘッド3a_2を対象としたメンテナンス状態に移行する。ボタンGU10は、ウインドウWD2を閉じた後に、前述の図6に示すウインドウWD1に表示を戻すためのボタンである。
【0114】
図8は、待機状態におけるZ移動機構2Zを示す模式図である。図8では、待機状態におけるX移動機構2XとZ移動機構2Z_1、2Z_2、2Z_3、2Z_4、2Z_5とヘッド3a_1、3a_2、3a_3、3a_4とセンサーユニット30が模式的に示される。
【0115】
図8に示すように、待機状態では、Z移動機構2Z_1、2Z_2、2Z_3、2Z_4がノズル面FN_1、FN_2、FN_3、FN_4の互いのZ軸に沿う相対位置を揃う状態で維持する。
【0116】
図8に示す例では、待機状態では、ノズル面FN_1、FN_2、FN_3、FN_4が同一の平面LS1上に位置する。平面LS1は、Z軸に直交する仮想的な平面であり、Z軸に沿う方向においてZ移動機構2Zによるノズル面FNの移動可能な範囲内に位置する。なお、待機状態では、ノズル面FN_1、FN_2、FN_3、FN_4の互いのZ軸に沿う相対位置が異なってもよい。
【0117】
ここで、待機状態では、Z移動機構2Z_5がセンサーユニット30のZ2方向での端を平面LS1よりもZ1方向に位置する状態で維持する。なお、待機状態では、センサーユニット30のZ2方向での端が平面LS1上に位置してもよいし、平面LS1よりもZ2方向に位置してもよい。
【0118】
また、ヘッド3a_1、ヘッド3a_2、ヘッド3a_3、ヘッド3a_4およびエネルギー出射部32は、この順で、X1方向に並ぶ。したがって、ヘッド3a_1およびヘッド3a_2は、他のヘッド3aが介在せずに、X軸に沿う方向で互いに隣り合う。同様に、ヘッド3a_2およびヘッド3a_3は、他のヘッド3aが介在せずに、X軸に沿う方向で互いに隣り合う。ヘッド3a_3およびヘッド3a_4は、他のヘッド3aが介在せずに、X軸に沿う方向で互いに隣り合う。ヘッド3a_4およびエネルギー出射部32は、他のヘッド3aが介在せずに、X軸に沿う方向で互いに隣り合う。特に、待機状態では、ヘッド3a_1、ヘッド3a_2、ヘッド3a_3、ヘッド3a_4およびエネルギー出射部32がX軸に沿う方向にみて互いに重なる。
【0119】
このように、待機状態では、ヘッド3a_1、ヘッド3a_2、ヘッド3a_3、ヘッド3a_4の互いのZ軸に沿う相対位置が揃う。このような待機状態では、隣り合う2つのヘッド3a間の距離Lhは、特に限定されないが、100mm以下である。このような構成では、後述のメンテナンス状態によるメンテナンス性向上の効果が顕著となる。
【0120】
待機状態において、X移動機構2Xは、X軸に沿う方向での任意の位置でノズル面FN_1、FN_2、FN_3、FN_4を位置させる。また、待機状態では、不要な動作を防止する観点から、X移動機構2Xが停止した状態であることが好ましい。
【0121】
図9は、印刷状態におけるZ移動機構2Zを示す模式図である。図9では、待機状態におけるX移動機構2XとZ移動機構2Z_1、2Z_2、2Z_3、2Z_4、2Z_5とヘッド3a_1、3a_2、3a_3、3a_4とセンサーユニット30が模式的に示される。
【0122】
図9に示すように、印刷状態では、Z移動機構2Z_1、2Z_2、2Z_3、2Z_4がノズル面FN_1、FN_2、FN_3、FN_4の互いのZ軸に沿う相対位置を変化させつつ、ヘッド3a_1、3a_2、3a_3、3a_4はいずれもワークWに向けてインクを吐出する。したがって、印刷状態における隣り合う2つのヘッド3aのノズル面FNのZ軸に沿う方向での距離Lpは、前述の待機状態における隣り合う2つのヘッド3aのノズル面FNのZ軸に沿う方向での距離Lsよりも大きくなる。
【0123】
また、印刷状態において、X移動機構2Xは、X軸に沿う方向におけるノズル面FN_1、FN_2、FN_3、FN_4の位置を変化させる。このとき、ノズル面FN_1、FN_2、FN_3、FN_4がワークWの面WFに沿うように変化する。そして、ノズル列NL_1からノズル列NL_4のうちの少なくとも1つからワークWに向けてインクが吐出される。
【0124】
さらに、印刷状態では、Z移動機構2Z_5がセンサーユニット30をワークWに対してZ1方向に退避させる。ここで、センサーユニット30のZ軸方向での位置は、変化してもよいし、一定でもよい。なお、図示を省略するが、印刷状態による印刷後には、センサーユニット30をワークW上を走査させつつ、エネルギー出射部32からエネルギーが照射されることにより、ワークW上のインクを硬化または固化させる処理が行われる。
【0125】
図10は、メンテナンス状態おけるZ移動機構2Zを示す模式図である。図10では、メンテナンス状態におけるX移動機構2XとZ移動機構2Z_1、2Z_2、2Z_3、2Z_4、2Z_5とヘッド3a_1、3a_2、3a_3、3a_4とセンサーユニット30が模式的に示される。
【0126】
図10に示すように、メンテナンス状態では、Z移動機構2Z_1、2Z_2、2Z_3、2Z_4がノズル面FN_1、FN_2、FN_3、FN_4のうちメンテナンス対象のノズル面FNと他のノズル面FNとの互いのZ軸に沿う相対位置を異なる状態で維持する。また、メンテナンス状態では、ノズル列NL_1、NL_2、NL_3、NL_4のいずれからもインクが吐出されない。さらに、メンテナンス状態では、X移動機構2Xが動作しない。
【0127】
図10では、ヘッド3a_2がメンテナンス対象である場合が例示される。図10に示す例では、ノズル面FN_2が平面LS1よりもZ2方向に位置する。これに対し、ノズル面FN_1、FN_3、FN_4およびセンサーユニット30が平面LS1よりもZ1方向に位置する。
【0128】
ここで、前述のように、ヘッド3aは、Z移動機構2Zに対してX軸に沿う方向での挿抜により着脱可能である。そこで、ヘッド3aの着脱を容易に行う観点から、メンテナンス状態では、ヘッド3a_1、3a_2、3a_3、3a_4のうち、メンテナンスの対象となるヘッド3a_2が他のヘッド3aよりも吐出方向DEに位置する。同様の観点から、メンテナンス状態では、メンテナンス対象となるヘッド3a_2は、エネルギー出射部32よりも吐出方向DEに位置する。
【0129】
また、前述のように、ヘッド3aは、X軸に沿う方向を長さ方向とするネジ3jを用いてZ移動機構2Zに対してネジ留めするためのネジ留め部3a2を有する。そこで、ネジ留め部3a2への工具等のアクセスを容易にする観点から、メンテナンス状態では、メンテナンス対象のヘッド3aのネジ留め部3a2が他のヘッド3aのノズル面FNよりも吐出方向DEに位置する。
【0130】
このようなメンテナンス状態における互いに隣り合う2つのノズル面FN間のZ軸に沿う方向での距離Lmは、印刷状態における互いに隣り合う2つのノズル面FN間のZ軸に沿う方向での距離Lpの最大値よりも大きい。
【0131】
以上のように、立体物印刷装置1は、「第1ヘッド」の一例であるヘッド3a_1と、「第2ヘッド」の一例であるヘッド3a_2と、移動機構2と、を備える。ヘッド3a_1は、「第1ノズル面」の一例であるノズル面FN_1を有する。ノズル面FN_1には、「第1ノズル列」の一例であるノズル列NL_1が設けられており、ノズル列NL_1は、「液体」の一例であるインクを吐出する。ヘッド3a_2は、「第2ノズル面」の一例であるノズル面FN_2を有する。ノズル面FN_2には、「第2ノズル列」の一例であるノズル列NL_2が設けられており、ノズル列NL_2は、インクを吐出する。移動機構2は、立体的なワークWに対するヘッド3a_1およびヘッド3a_2のそれぞれの位置を変更する。
【0132】
移動機構2は、「第1のZ移動機構」の一例であるZ移動機構2Z_1と、「第2のZ移動機構」の一例であるZ移動機構2Z_2と、有する。Z移動機構2Z_1は、ヘッド3a_1をZ軸に沿って移動させる。Z移動機構2Z_2は、ヘッド3a_2をZ軸に沿って移動させる。
【0133】
そのうえで、立体物印刷装置1は、ワークWに対して印刷を実行する印刷状態と、作業者によるヘッド3a_1またはヘッド3a_2のメンテナンスを受けるためのメンテナンス状態と、を含む複数の状態を切り替え可能である。ここで、印刷状態では、Z移動機構2Z_1およびZ移動機構2Z_2がノズル面FN_1およびノズル面FN_2の互いのZ軸に沿う相対位置を変化させつつ、ノズル列NL_1およびノズル列NL_2のうちの一方または両方からワークWに向けてインクが吐出される。これに対し、メンテナンス状態では、Z移動機構2Z_1およびZ移動機構2Z_2がノズル面FN_1およびノズル面FN_2の互いのZ軸に沿う相対位置を異なる状態で維持する。
【0134】
以上の立体物印刷装置1では、メンテナンス状態ではノズル面FN_1およびノズル面FN_2の互いのZ軸に沿う相対位置が異なる状態で維持されるので、作業者によるヘッドの交換またはアライメント調整等のメンテナンスのための空間を確保することができる。このため、当該メンテナンスの作業性を向上させることができる。
【0135】
なお、印刷状態では、Z移動機構2Z_1およびZ移動機構2Z_2のうち一方または両方を動作させることにより、ノズル面FN_1およびノズル面FN_2のうち、ワークWに向けてインクを吐出するノズル列NLに対応する一方または両方のノズル面FNをZ軸に沿って移動させる。つまり、印刷状態では、ノズル列NL_1およびノズル列NL_2のうち、一方のノズル列NLからワークWに向けてインクが吐出される場合、他方のノズル列NLに対応するノズル面FNをZ軸に沿って移動させないで、当該一方のノズル列NLに対応するノズル面FNをZ軸に沿って移動させることもできる。
【0136】
本実施形態では、前述のように、ヘッド3a_1およびヘッド3a_2は、Z軸に交差するX軸に沿う方向で互いに隣り合う。すなわち、ヘッド3a_1とヘッド3a_2との間に他のヘッド3aが介在しない。ここで、X軸に沿う方向にみてヘッド3a_1およびヘッド3a_2が待機状態で互いに重なる。このような場合、メンテナンス状態において、ノズル面FN_1およびノズル面FN_2の互いのZ軸に沿う相対位置を異なる状態で維持することによるメンテナンス性向上の効果が顕著となる。
【0137】
また、前述のように、ノズル列NL_1およびノズル列NL_2のそれぞれは、Z軸に沿う一方の方向である吐出方向DEに向けてインクを吐出する。メンテナンス状態では、ヘッド3a_1およびヘッド3a_2のうち、メンテナンスの対象となる一方のヘッド3aが他方のヘッド3aよりも吐出方向DEに位置する。このため、メンテナンスの対象となる一方のヘッド3aが他方のヘッド3aよりも吐出方向DEとは反対方向に位置する場合に比べて、ヘッド3aのメンテナンスのための空間を容易に確保することができる。また、メンテナンスの対象となる一方のヘッド3aが他方のヘッド3aよりも吐出方向DEとは反対方向に位置する場合に比べて、ヘッド3aのメンテナンスのための空間を確保するのに必要なZ移動機構2Zの動作量を少なくすることができる。
【0138】
さらに、前述のように、立体物印刷装置1は、「第3ヘッド」の一例であるヘッド3a_3をさらに備える。ヘッド3a_3は、「第3ノズル面」の一例であるノズル面FN_3を有する。ノズル面FN_3には、「第3ノズル列」の一例であるノズル列NL_3が設けられており、ノズル列NL_3は、インクを吐出する。移動機構2は、「第3のZ移動機構」の一例であるZ移動機構2Z_3をさらに有する。Z移動機構2Z_3は、ヘッド3a_3をZ軸に沿って移動させる。
【0139】
ここで、ヘッド3a_1、ヘッド3a_2およびヘッド3a_3は、この順でX軸に沿う方向に並ぶ。そして、メンテナンス状態では、ヘッド3a_2は、ヘッド3a_1およびヘッド3a_3よりも吐出方向DEに位置する。このため、ヘッド3a_2に対してX軸に沿う両方向での位置にメンテナンスのための空間を容易に確保することができる。
【0140】
また、前述のように、立体物印刷装置1は、エネルギー出射部32をさらに備える。エネルギー出射部32は、ワークW上のインクを硬化または固化させるエネルギーを出射する。移動機構2は、「第3のZ移動機構」の一例であるZ移動機構2Z_5をさらに有する。Z移動機構2Z_5は、エネルギー出射部32をZ軸に沿って移動させる。ヘッド3a_1、ヘッド3a_2およびエネルギー出射部32は、この順でX軸に沿う方向に並ぶ。メンテナンス状態では、ヘッド3a_2は、ヘッド3a_1およびエネルギー出射部32よりも吐出方向DEに位置する。このため、ヘッド3a_2に対してX軸に沿う両方向での位置にメンテナンスのための空間を容易に確保することができる。
【0141】
なお、本実施形態の立体物印刷装置1は、前述のように、ヘッド3aをZ軸に沿って移動させる機構として、Z移動機構2Z_1およびZ移動機構2Z_2のほか、Z移動機構2Z_3およびZ移動機構2Z_4を備える。ここで、「第1のZ移動機構」および「第2のZ移動機構」は、Z移動機構2Z_1~2Z_4のうちの任意の2つのZ移動機構2Zであってもよい。
【0142】
さらに、前述のように、メンテナンス状態では、ヘッド3a_2がメンテナンスの対象である場合、ヘッド3a_2がノズル面FN_1よりも吐出方向DEに位置する。このため、メンテナンスのための空間を容易に確保することができる。
【0143】
また、前述のように、メンテナンス状態におけるノズル面FN_1とノズル面FN_2とのZ軸に沿う方向での距離Lmは、印刷状態におけるノズル面FN_1とノズル面FN_2とのZ軸に沿う方向での距離Lpの最大値よりも大きい。このため、ヘッド3a_2の全体が露出するように、ヘッド3a_2に対してX軸に沿う両方向での位置にメンテナンスのための空間を形成することができる。
【0144】
さらに、前述のように、立体物印刷装置1は、移動機構2の動作を制御する移動制御部5b1と、作業者からの指示を受け付ける受付部7b1と、をさらに備える。移動制御部5b1は、複数の状態のうちメンテナンス状態以外の状態で受付部7b1がメンテナンス作業に関する指示を受け付けた場合、メンテナンス状態に移行する動作を移動機構2に実行させる。このため、所望時に作業者からの指示によりメンテナンス状態とすることができる。
【0145】
また、前述のように、受付部7b1は、メンテナンスの対象となるヘッド3aを特定する情報を受け付ける。このため、作業者からの指示によりメンテナンスの対象となるヘッド3aのためのメンテナンス状態とすることができる。
【0146】
さらに、前述のように、ヘッド3a_1およびヘッド3a_2は、Z軸に交差するX軸に沿う方向で互いに隣り合う。ヘッド3a_1は、Z移動機構2Z_1に対してX軸に沿う方向での挿抜により着脱可能である。同様に、ヘッド3a_2は、Z移動機構2Z_2に対してX軸に沿う方向での挿抜により着脱可能である。このように、ヘッド3aをZ移動機構2Zに対してX軸に沿う方向での挿抜により着脱可能とすることにより、ノズル列NLのX軸まわりの姿勢を所望に規制するように、ヘッド3aの位置決め精度を高めることができる。また、このような構成では、メンテナンス状態において、ノズル面FN_1およびノズル面FN_2の互いのZ軸に沿う相対位置を異なる状態で維持することによるメンテナンス性向上の効果が顕著となる。
【0147】
また、前述のように、ノズル列NL_1およびノズル列NL_2のそれぞれは、Z軸に沿う一方の方向である吐出方向DEに向けて液体を吐出する。ヘッド3a_2は、X軸に沿う方向を長さ方向とするネジ3jを用いてZ移動機構2Z_2に対してネジ留めするためのネジ留め部3a2を有する。メンテナンス状態では、ヘッド3a_2がメンテナンスの対象である場合、ネジ留め部3a2がノズル面FN_1よりも吐出方向DEに位置する。このような構成では、ヘッド3aの着脱の際、ネジ3jを回すための工具による作業のための空間を確保する必要がある。したがって、このような構成では、メンテナンス状態において、ノズル面FN_1およびノズル面FN_2の互いのZ軸に沿う相対位置を異なる状態で維持することにより、当該空間を容易に確保することができるという利点がある。
【0148】
さらに、前述のように、メンテナンス状態では、ノズル列NL_1およびノズル列NL_2からインクが吐出されない。このため、メンテナンスを好適に行うことができる。
【0149】
また、前述のように、移動機構2は、Z軸に交差するX軸に沿ってヘッド3a_1およびヘッド3a_2を移動させるX移動機構2Xをさらに有する。X移動機構2Xは、印刷状態で動作し、メンテナンス状態で動作しない。このため、印刷およびメンテナンスのそれぞれを好適に行うことができる。
【0150】
さらに、前述のように、ヘッド3a_1およびヘッド3a_2の互いのZ軸に沿う相対位置を揃えた場合、ヘッド3a_1とヘッド3a_2との間の距離Lhは、100mm以下である。このような構成では、メンテナンス状態において、ノズル面FN_1およびノズル面FN_2の互いのZ軸に沿う相対位置を異なる状態で維持することによるメンテナンス性向上の効果が顕著となる。
【0151】
2.変形例
以上の例示における各形態は多様に変形され得る。前述の各形態に適用され得る具体的な変形の態様を以下に例示する。なお、以下の例示から任意に選択される2以上の態様は、互いに矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
【0152】
2-1.変形例1
図11は、変形例1におけるメンテナンス状態のZ移動機構2Z_1、2Z_2、2Z_3、2Z_4、2Z_5、2Z_6を示す模式図である。変形例1は、センサーユニット30に代えてヘッド3a_5を備えるとともに、Z移動機構2Z_6およびヘッド3a_6を追加したこと以外は、前述の実施形態と同様である。
【0153】
変形例1では、ヘッド3a_1、ヘッド3a_2、ヘッド3a_3、ヘッド3a_4、ヘッド3a_5、ヘッド3a_6は、この順で、X1方向に並ぶ。ここで、Z移動機構2Z_5は、ヘッド3a_5をZ軸に沿って移動させる。Z移動機構2Z_6は、ヘッド3a_6をZ軸に沿って移動させる。
【0154】
変形例1のメンテナンス状態では、ヘッド3a_1、3a_3、3a_5がヘッド3a_2、3a_4、3a_6よりも吐出方向DEに位置する。このため、ヘッド3a_1、3a_3、3a_5をメンテナンス対象として交換等のメンテナンスを行うことができる。ここで、ヘッド3a_1、3a_3、3a_5のいずれかが「第2ヘッド」の一例であり、ヘッド3a_2、3a_4、3a_6のいずれかが「第1ヘッド」の一例である。
【0155】
なお、ヘッド3a_2、3a_4、3a_6をメンテナンス対象とする場合、ヘッド3a_2、3a_4、3a_6がヘッド3a_1、3a_3、3a_5よりも吐出方向DEに位置すればよい。また、1つまたは2つのヘッド3aのみがメンテナンス対象である場合、当該1つまたは2つのヘッド3aのみが他のヘッド3aよりも吐出方向DEに位置してもよい。
【0156】
以上の変形例1によっても、メンテナンス性を向上させることができる。なお、ヘッド3aおよびZ移動機構2Zのそれぞれの数は、前述の形態または変形例に限定されず、2以上であればよい。
【0157】
2-2.変形例2
図12は、変形例2におけるメンテナンス状態のZ移動機構2Zを示す模式図である。変形例2は、支持機構4に代えて支持機構8を備えるとともに、X移動機構2Xを省略したこと以外は、前述の実施形態と同様である。
【0158】
支持機構8は、ワークWを支持する多関節ロボットであり、ワークWの位置および姿勢を変化させる。このような変形例2によっても、メンテナンス性を向上させることができる。このように、支持機構4のY移動機構4Yが省略されてもよいし、X移動機構2Xが省略されてもよい。
【0159】
なお、移動機構2がヘッドユニット3およびセンサーユニット30をY軸に沿う方向に移動させる機構を備えてもよい。
【0160】
2-3.変形例3
また、前述の形態では、硬化動作を実行する態様が例示されるが、この態様に限定されず、硬化動作が省略されてもよい。この場合、例えば、エネルギー出射部3cは、ワークW上のインクを完全硬化させてもよい。
【0161】
2-4.変形例4
本開示の印刷装置の用途は印刷に限定されない。例えば、色材の溶液を吐出する印刷装置は、液晶表示装置のカラーフィルターを形成する製造装置として利用される。また、導電材料の溶液を吐出する印刷装置は、配線基板の配線や電極を形成する製造装置として利用される。また、印刷装置は、接着剤等の液体を媒体に塗布するジェットディスペンサーとしても利用できる。
【符号の説明】
【0162】
1…立体物印刷装置、2…移動機構、2X…X移動機構、2Z…Z移動機構、2Z_1…Z移動機構(第1のZ移動機構)、2Z_2…Z移動機構(第2のZ移動機構)、2Z_3…Z移動機構(第3のZ移動機構)、2Z_4…Z移動機構、2Z_5…Z移動機構(第3のZ移動機構)、2Z_6…Z移動機構、2a…柱、2b…梁、2c…レール、2d…可動体、2e…支持体、2f…調整機構、2f1…第1部材、2f2…第2部材、2g…調整機構、2g1…第1部材、2g2…第2部材、2h…調整機構、2h1…第1部材、2h2…第2部材、3…ヘッドユニット、3_1…ヘッドユニット、3_2…ヘッドユニット、3_3…ヘッドユニット、3_4…ヘッドユニット、3a…ヘッド、3a1…孔、3a2…ネジ留め部、3a_1…ヘッド(第1ヘッド)、3a_2…ヘッド(第2ヘッド)、3a_3…ヘッド(第3ヘッド)、3a_4…ヘッド、3a_5…ヘッド、3a_6…ヘッド、3b…流路構造体、3c…エネルギー出射部、3d…ヒーター、3e…スイッチ回路、3g…支持体、3g1…突起、3g2…ネジ孔、3h…カバー、3i1…供給管、3i2…排出管、3j…ネジ、3k…温度センサー、4…支持機構、4Y…Y移動機構、4a…支持体、4b…レール、4c…可動体、4d…ステージ、5…コントローラー、5a…記憶回路、5b…処理回路、5b1…移動制御部、5c…仮硬化用光源、6…制御モジュール、6a…タイミング信号生成回路、6b…電源回路、6c…制御回路、6d…駆動信号生成回路、7…コンピューター、7a…記憶回路、7b…処理回路、7b1…受付部、7c…表示装置、7d…入力装置、8…支持機構、10…基台、10a…面、11…ケース、12…メンテナンス機構、12a…キャップユニット、12b…キャップカバー、20a…供給管、20b…排出管、30…センサーユニット、31…センサー、32…エネルギー出射部、CLK…クロック信号、CNG…チェンジ信号、Com…駆動信号、D1…出力信号、D3…信号、DE…吐出方向、DN…ノズル列方向、Da…経路情報、Dx…出力信号、Dz_1~Dz_5…出力信号、F1…第1面、F2…第2面、FH…加熱面、FN…ノズル面、FN_1…ノズル面(第1ノズル面)、FN_2…ノズル面(第2ノズル面)、FN_3…ノズル面(第3ノズル面)、FN_4…ノズル面、FN_5…ノズル面、FN_6…ノズル面、GU1…入力領域、GU2…入力領域、GU3…入力領域、GU4…ボタン、GU5…ボタン、GU6…ボタン、GU7…ボタン、GU8…ボタン、GU9…入力領域、GU9a…領域、GU9b…ボタン、GU10…ボタン、LAT…ラッチ信号、LS1…平面、Lh…距離、Lm…距離、Lp…距離、Ls…距離、N…ノズル、NL…ノズル列、NL_1…ノズル列(第1ノズル列)、NL_2…ノズル列(第2ノズル列)、NL_3…ノズル列(第3ノズル列)、NL_4…ノズル列、NL_5…ノズル列、NL_6…ノズル列、NLa…ノズル列、NLb…ノズル列、PD…駆動パルス、PTS…タイミング信号、RE1…表示領域、S0…ステップ、S1…ステップ、S2…ステップ、S3…ステップ、S4…ステップ、S5…ステップ、S6…ステップ、SI…制御信号、SI_1~SI_4…制御信号、Sx…制御信号、Sz_1~Sz_5…制御信号、VBS…オフセット電位、VHV…電源電位、W…ワーク、WD1…ウインドウ、WD2…ウインドウ、WF…面、dCom…波形指定信号。
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