(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057726
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】エンジンシステム
(51)【国際特許分類】
F01M 13/00 20060101AFI20240418BHJP
F02M 25/00 20060101ALI20240418BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20240418BHJP
F02M 21/02 20060101ALI20240418BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20240418BHJP
F02D 19/02 20060101ALI20240418BHJP
F02D 19/08 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
F01M13/00 K
F01M13/00 J
F01M13/00 N
F02M25/00 G
F01N3/24 L
F02M21/02 301Z
F01N3/24 R
F01N3/08 A
F02D19/02 Z
F02D19/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164576
(22)【出願日】2022-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】中谷 規之介
(72)【発明者】
【氏名】竹内 秀隆
(72)【発明者】
【氏名】本間 隆行
(72)【発明者】
【氏名】水谷 悦規
(72)【発明者】
【氏名】宮川 浩
(72)【発明者】
【氏名】鈴置 哲典
【テーマコード(参考)】
3G015
3G091
3G092
【Fターム(参考)】
3G015BD13
3G015BD23
3G015BD28
3G015CA05
3G015FA01
3G015FA03
3G015FC05
3G091AA02
3G091AA16
3G091AA19
3G091AA28
3G091AB02
3G091AB03
3G091AB05
3G091AB08
3G091BA03
3G091BA13
3G091CA03
3G091CA17
3G091CB07
3G091EA16
3G091EA18
3G091FA01
3G091HA10
3G091HA38
3G091HB09
3G092AB09
3G092AB19
3G092DE17S
3G092DE20S
3G092FA15
3G092HA06Z
(57)【要約】
【課題】クランクケース内に残存しているアンモニアのブローバイガスが大気中へ流出することを抑制することができるエンジンシステムを提供する。
【解決手段】エンジンシステム1は、第1酸素供給流路3におけるメインスロットルバルブ6よりも上流側とクランクケース21とを接続し、クランクケース21内に空気を供給する第2酸素供給流路30と、クランクケース21と第1酸素供給流路3におけるメインスロットルバルブ6よりも下流側とを接続し、クランクケース21内に残留するアンモニアのブローバイガスを第1酸素供給流路3に還流させるブローバイガス流路31と、クランクシャフト20を回転させるスタータ59と、スタータ59によってクランクシャフト20が回転している時に、第1酸素供給流路3にブローバイガスが還流するようにメインスロットルバルブ6の開度を制御するコントローラ60とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニアを燃焼させる燃焼室を往復動可能なピストンと、前記ピストンと連結されたクランクシャフトと、前記クランクシャフトを収容するクランクケースと、を有するエンジンを備えるエンジンシステムであって、
前記エンジンと接続され、前記燃焼室に供給される酸素含有ガスが流れる第1酸素供給流路と、
前記第1酸素供給流路に配設され、前記燃焼室に供給される前記酸素含有ガスの流量を制御する流量制御弁と、
前記エンジンと接続され、前記燃焼室から発生する排気ガスが流れる排気流路と、
前記排気流路に配設され、アンモニアを吸着及び酸化する排気触媒と、
前記第1酸素供給流路における前記流量制御弁よりも上流側の箇所と前記クランクケースとを接続し、前記クランクケース内に前記酸素含有ガスを供給する第2酸素供給流路と、
前記クランクケースと前記第1酸素供給流路における前記流量制御弁よりも下流側の箇所とを接続し、前記クランクケース内に残留するアンモニアのブローバイガスを前記第1酸素供給流路に還流させるブローバイガス流路と、
前記ブローバイガス流路に配設され、前記第1酸素供給流路に還流する前記アンモニアのブローバイガスの流量を調整するブローバイガス還流バルブと、
前記クランクシャフトを回転させるスタータと、
前記スタータによって前記クランクシャフトが回転している時に、前記第1酸素供給流路に前記ブローバイガスが還流するように前記流量制御弁の開度を制御する制御部とを備えるエンジンシステム。
【請求項2】
アンモニアを改質することにより、水素を含有した改質ガスを生成する改質器と、
前記改質器に前記酸素含有ガスを供給する改質用酸素供給流路と、
前記改質用酸素供給流路に配設され、前記改質器に供給される前記酸素含有ガスの流量を制御する改質用流量制御弁と、
前記改質器により生成された前記改質ガスを前記燃焼室に供給する改質ガス流路とを更に備え、
前記制御部は、前記スタータによって前記クランクシャフトが回転している時に、前記第1酸素供給流路に前記ブローバイガスが還流するように前記改質用流量制御弁の開度を制御する請求項1記載のエンジンシステム。
【請求項3】
前記排気触媒を加熱する加熱部を更に備える請求項1記載のエンジンシステム。
【請求項4】
エンジンオイルまたはエンジン冷却水の温度を検出する温度検出部を更に備え、
前記制御部は、前記温度検出部により検出された前記エンジンオイルまたは前記エンジン冷却水の温度に基づいて、前記流量制御弁の開度を制御する請求項1記載のエンジンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエンジンシステムとしては、例えば特許文献1に記載されている技術が知られている。特許文献1に記載のエンジンシステムは、エンジンブロックと、このエンジンブロックの吸気ポートに接続された吸気通路と、この吸気通路内に設けられたスロットルバルブと、このスロットルバルブより上流側の吸気通路とエンジンブロック内のクランク室とを接続し、吸気通路内の吸気(新気)をクランク室へ導入するための新気導入通路と、スロットルバルブより下流側の吸気通路とクランク室とを接続し、クランク室に残留するブローバイガスを吸気通路に戻すための還元通路と、この還元通路内に設けられたPCVバルブとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、アンモニアを燃料として使用するアンモニアエンジンがあるが、クランクケース内にはアンモニアのブローバイガスが残存するため、例えばメンテナンス時にアンモニアのブローバイガスが大気に流出することを抑制することが望まれている。
【0005】
本発明の目的は、クランクケース内に残存しているアンモニアのブローバイガスが大気中へ流出することを抑制することができるエンジンシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の一態様は、アンモニアを燃焼させる燃焼室を往復動可能なピストンと、ピストンと連結されたクランクシャフトと、クランクシャフトを収容するクランクケースとを有するエンジンを備えるエンジンシステムであって、エンジンと接続され、燃焼室に供給される酸素含有ガスが流れる第1酸素供給流路と、第1酸素供給流路に配設され、燃焼室に供給される酸素含有ガスの流量を制御する流量制御弁と、エンジンと接続され、燃焼室から発生する排気ガスが流れる排気流路と、排気流路に配設され、アンモニアを吸着及び酸化する排気触媒と、第1酸素供給流路における流量制御弁よりも上流側の箇所とクランクケースとを接続し、クランクケース内に酸素含有ガスを供給する第2酸素供給流路と、クランクケースと第1酸素供給流路における流量制御弁よりも下流側の箇所とを接続し、クランクケース内に残留するアンモニアのブローバイガスを第1酸素供給流路に還流させるブローバイガス流路と、ブローバイガス流路に配設され、第1酸素供給流路に還流するアンモニアのブローバイガスの流量を調整するブローバイガス還流バルブと、クランクシャフトを回転させるスタータと、スタータによってクランクシャフトが回転している時に、第1酸素供給流路にブローバイガスが還流するように流量制御弁の開度を制御する制御部とを備える。
【0007】
このようなエンジンシステムにおいては、エンジンの燃焼室内でアンモニアの燃焼が終了することによってクランクシャフトの回転が停止してから燃焼室内で再びアンモニアの燃焼が起こるまでの間の任意の期間に、第1酸素供給流路にアンモニアのブローバイガスが還流するように、流量制御弁の開度が制御されると共に、スタータによってクランクシャフトを回転させる。すると、第1酸素供給流路の燃焼室側の部分が負圧となるため、酸素含有ガスが第2酸素供給流路を流れてクランクケース内に導入されると共に、ブローバイガス還流バルブが開弁することで、クランクケース内に残留するアンモニアのブローバイガスが酸素含有ガスと一緒にブローバイガス流路を流れて第1酸素供給流路に還流する。そして、アンモニアのブローバイガスは、酸素含有ガスと一緒に第1酸素供給流路、エンジンの燃焼室及び排気流路を流れて排気触媒に供給され、排気触媒に吸着及び酸化される。その結果、クランクケース内に残留するアンモニアのブローバイガスが除去される。これにより、例えば、メンテナンス時にクランクケースを開けた際に、クランクケース内に残存しているアンモニアが大気中に流出することが抑制される。また、クランクケース内に残留するアンモニアのブローバイガスを定期的に除去しておけば、例えば、メンテナンス時にクランクケースを開けた際に、大量のアンモニアが大気中に流出することが抑制される。
【0008】
(2)上記(1)において、エンジンシステムは、アンモニアを改質することにより、水素を含有した改質ガスを生成する改質器と、改質器に酸素含有ガスを供給する改質用酸素供給流路と、改質用酸素供給流路に配設され、改質器に供給される酸素含有ガスの流量を制御する改質用流量制御弁と、改質器により生成された改質ガスを燃焼室に供給する改質ガス流路とを更に備え、制御部は、スタータによってクランクシャフトが回転している時に、第1酸素供給流路にブローバイガスが還流するように改質用流量制御弁の開度を制御してもよい。このような構成では、水素を含有した改質ガスがエンジンの燃焼室に供給されるため、燃焼室内でアンモニアが燃焼されやすくなる。
【0009】
(3)上記(1)または(2)において、エンジンシステムは、排気触媒を加熱する加熱部を更に備えてもよい。このような構成では、排気触媒がアンモニアを酸化させることが可能な温度まで排気触媒を加熱することで、アンモニアが排気触媒に迅速に酸化される。従って、エンジンの冷間状態でも、排気触媒によりアンモニアを効果的に浄化することができる。
【0010】
(4)上記(1)~(3)の何れかにおいて、エンジンシステムは、エンジンオイルまたはエンジン冷却水の温度を検出する温度検出部を更に備え、制御部は、温度検出部により検出されたエンジンオイルまたはエンジン冷却水の温度に基づいて、流量制御弁の開度を制御してもよい。このような構成では、エンジンの温度によって第1酸素供給流路に発生する負圧が変動する場合でも、流量制御弁をエンジンの温度に応じた適切な開度に調整することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、クランクケース内に残存しているアンモニアのブローバイガスが大気中へ流出することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るエンジンシステムを示す概略構成図である。
【
図2】
図1に示されたアンモニアエンジン及び吸気系の断面図である。
【
図3】
図1に示されたコントローラにより実行されるブローバイガス除去制御処理の手順を示すフローチャートである。
【
図4】
図2に示されたPCVバルブの流量特性の一例を示すグラフである。
【
図5】本発明の第2実施形態に係るエンジンシステムを示す概略構成図である。
【
図6】
図5に示されたコントローラにより実行されるブローバイガス除去制御処理の手順を示すフローチャートである。
【
図7】本発明の第3実施形態に係るエンジンシステムを示す概略構成図である。
【
図8】
図7に示されたコントローラにより実行されるブローバイガス除去制御処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。
[第1実施形態]
【0014】
図1は、本発明の第1実施形態に係るエンジンシステムを示す概略構成図である。
図1において、本実施形態のエンジンシステム1は、車両(図示省略)に搭載されている。エンジンシステム1は、アンモニアエンジン2と、第1酸素供給流路3と、排気流路4と、メインインジェクタ5と、メインスロットルバルブ6とを備えている。
【0015】
アンモニアエンジン2は、アンモニアガス(NH3ガス)を燃料として使用するエンジンである。アンモニアエンジン2では、難燃性のアンモニアガスを燃焼しやすくするため、助燃材としての水素(H2)がアンモニアガスに混合される。アンモニアエンジン2は、例えば4気筒エンジンである。
【0016】
アンモニアエンジン2は、
図2に示されるように、シリンダブロック11と、このシリンダブロック11に組み付けられたシリンダヘッド12と、シリンダブロック11の内部に往復動可能に配置された複数(ここでは4つ)のピストン13と、ピストン13と連結されたクランクシャフト20と、クランクシャフト20を収容するクランクケース21とを有している。
【0017】
アンモニアエンジン2は、アンモニアが水素と共に燃焼して排気ガスが発生する複数(ここでは4つ)の燃焼室14を有している。燃焼室14は、シリンダブロック11とシリンダヘッド12とピストン13とで囲まれる空間によって画成されている。
【0018】
シリンダヘッド12には、各燃焼室14と連通された吸気ポート15及び排気ポート16が複数ずつ(ここでは4つずつ)設けられている。吸気ポート15は、吸気弁17により開閉される。排気ポート16は、排気弁18により開閉される。
【0019】
各ピストン13は、コンロッド19を介してクランクシャフト20と連結されている。クランクケース21は、シリンダブロック11におけるシリンダヘッド12が設けられる端部とは反対側の端部に組み付けられている。クランクケース21におけるシリンダブロック11が設けられる端部とは反対側の端部には、エンジンオイルeoを貯留するオイルパン22が着脱可能に組み付けられている。クランクケース21及びオイルパン22の内部は、クランク室23を形成している。
【0020】
第1酸素供給流路3は、アンモニアエンジン2の各吸気ポート15と接続されたインテークマニホールド24と、このインテークマニホールド24と接続された吸気管25とを有している。第1酸素供給流路3は、アンモニアエンジン2の各燃焼室14に供給される空気が流れる流路である。空気は、酸素を含有した気体(酸素含有ガス)である。吸気管25には、空気中に含まれる塵や埃等の異物を除去するエアクリーナ7が配設されている。
【0021】
排気流路4は、アンモニアエンジン2の各排気ポート16と接続されたエギゾーストマニホールド26と、エギゾーストマニホールド26と接続された排気管27とを有している。排気流路4は、アンモニアエンジン2の各燃焼室14から発生した排気ガスが流れる流路である。
【0022】
図1に戻り、排気流路4には、排気ガス中に含まれる有害物質である未燃のアンモニア及び窒素酸化物(NOx)を浄化する三元触媒8と、未燃のアンモニアを吸着するSCR触媒9とが配設されている。三元触媒8及びSCR触媒9は、上記の排気管27に配設されている。
【0023】
三元触媒8は、主として三元触媒8に流入する空気を用いてアンモニアを酸化させる。また、三元触媒8は、SCR触媒9と比較すると微量ではあるがアンモニアを吸着する。SCR触媒9は、アンモニアを吸着すると共に、SCR触媒9に流入するNOxを用いてアンモニアを酸化させる。なお、NOxは還元される。三元触媒8及びSCR触媒9は、排気流路4に配設された排気触媒を構成している。
【0024】
メインインジェクタ5は、アンモニアエンジン2の燃焼室14に向けてアンモニアガスを噴射する電磁式の燃料噴射弁である。メインインジェクタ5は、例えばアンモニアエンジン2の気筒の数(ここでは4つ)だけ設けられている。メインインジェクタ5は、後述のコントローラ60からの制御指令に応じて動作する。
【0025】
メインスロットルバルブ6は、第1酸素供給流路3に配設されている。メインスロットルバルブ6は、アンモニアエンジン2に供給される空気の流量を制御する電磁式の流量制御弁である。メインスロットルバルブ6は、後述のコントローラ60からの制御指令に応じて動作する。
【0026】
また、エンジンシステム1は、第2酸素供給流路30と、ブローバイガス流路31と、PCVバルブ32(PositiveCrankcase Ventilationバルブ)とを備えている。
【0027】
第2酸素供給流路30は、第1酸素供給流路3におけるメインスロットルバルブ6よりも上流側の箇所とクランクケース21とを接続する流路である。第2酸素供給流路30は、クランクケース21内(クランク室23)に酸素含有ガスである空気を供給する。
【0028】
第2酸素供給流路30は、
図2に示されるように、吸気管25におけるエアクリーナ7とメインスロットルバルブ6との間の箇所とアンモニアエンジン2のシリンダヘッド12とを接続する配管33と、この配管33とクランク室23とを連通させるようにシリンダヘッド12及びシリンダブロック11に設けられた通路34とを有している。
【0029】
ブローバイガス流路31は、クランクケース21と第1酸素供給流路3におけるメインスロットルバルブ6よりも下流側の箇所とを接続する流路である。ブローバイガス流路31は、クランクケース21内(クランク室23)に残留するアンモニアのブローバイガスを第1酸素供給流路3に還流させる流路である。
【0030】
ブローバイガス流路31は、
図2に示されるように、アンモニアエンジン2のシリンダヘッド12と、吸気管25におけるメインスロットルバルブ6とインテークマニホールド24との間の箇所とを接続する配管35と、この配管35とクランク室23とを連通させるようにシリンダヘッド12及びシリンダブロック11に設けられた通路36とを有している。
【0031】
PCVバルブ32は、ブローバイガス流路31に配設されている。PCVバルブ32は、第1酸素供給流路3に還流するアンモニアのブローバイガスの流量を調整するブローバイガス還流バルブである。PCVバルブ32は、
図2に示されるように、例えばアンモニアエンジン2のシリンダヘッド12に取り付けられている。PCVバルブ32は、ブローバイガス流路31における配管35と通路36との間に配設されている。
【0032】
PCVバルブ32は、軸方向に並んで配置されるように組み付けられたハウジング37A,37Bと、このハウジング37A内に移動可能に収容された弁体38と、この弁体38をハウジング37B側に付勢するバネ39とを有している。PCVバルブ32は、クランク室23側から第1酸素供給流路3側への一方向のみにブローバイガスを流す。
【0033】
インテークマニホールド24内の圧力が正圧であるときは、バネ39の付勢力により弁体38がハウジング37Bにおけるハウジング37A側の端部に設けられた弁座37aに押し付けられることで、通路が遮断されるため、PCVバルブ32が閉弁する。インテークマニホールド24内の圧力が負圧になると、バネ39の付勢力に抗して弁体38が第1酸素供給流路3側に移動することで、通路が形成されるため、PCVバルブ32が開弁する(
図2中のA参照)。
【0034】
図1に戻り、エンジンシステム1は、アンモニアタンク40と、気化器41と、改質器42と、改質用酸素供給流路43と、改質スロットルバルブ44と、改質インジェクタ45と、改質ガス流路46と、クーラ47と、流量調整弁48とを備えている。
【0035】
アンモニアタンク40は、アンモニアを液体状態で貯留する容器である。つまり、アンモニアタンク40は、液体アンモニアを貯留する。
【0036】
気化器41は、アンモニア供給流路49を介してアンモニアタンク40と接続されている。気化器41は、アンモニアタンク40に貯留された液体アンモニアを気化させてアンモニアガスを生成する。気化器41で発生したアンモニアガスは、アンモニア供給流路50を流れてメインインジェクタ5に供給されると共に、アンモニア供給流路51を流れて改質インジェクタ45に供給される。
【0037】
改質器42は、アンモニアガスを改質することにより、水素を含有した改質ガスを生成する。改質器42は、円筒状の筐体52と、この筐体52内に収容された改質触媒53及びヒータ54とを有している。
【0038】
筐体52は、アンモニアガスに対して耐腐食性を有するステンレス鋼等の金属材料で形成されている。改質触媒53は、例えばハニカム構造を呈する担体に塗布されている。改質触媒53は、アンモニアガスを燃焼させると共に、アンモニアガスを水素に分解する触媒である。改質触媒53は、例えばATR(Autothermal Reformer)式アンモニア改質触媒である。
【0039】
ヒータ54は、筐体52内における改質触媒53よりも上流側に配置されている。ヒータ54は、改質触媒53を加熱する。ヒータ54は、筐体52内を流れるアンモニアガスを加熱することで、アンモニアガスの熱を利用して改質触媒53を加熱する。ヒータ54としては、例えば電気加熱触媒(EHC)等が使用される。なお、ヒータ54は、改質触媒53を直接加熱してもよい。
【0040】
改質用酸素供給流路43は、第1酸素供給流路3と改質器42とを接続している。改質用酸素供給流路43は、改質器42に供給される空気が流れる流路である。改質用酸素供給流路43の一端は、第1酸素供給流路3におけるエアクリーナ7とメインスロットルバルブ6との間の箇所に接続されている。改質用酸素供給流路43の他端は、改質器42の筐体52の入口部に接続されている。改質用酸素供給流路43は、改質器42に酸素含有ガスを供給する。
【0041】
改質スロットルバルブ44は、改質用酸素供給流路43に配設されている。改質スロットルバルブ44は、改質器42に供給される空気の流量を制御する電磁式の流量制御弁である。改質スロットルバルブ44は、後述のコントローラ60からの制御指令に応じて動作する。改質スロットルバルブ44は、改質器42に供給される酸素含有ガスの流量を制御する改質用流量制御弁を構成している。
【0042】
改質インジェクタ45は、改質器42に向けてアンモニアガスを噴射する電磁式の燃料噴射弁である。改質インジェクタ45は、改質用酸素供給流路43における改質スロットルバルブ44と改質器42との間にアンモニアガスを噴射する。改質インジェクタ45の数としては、複数(ここでは2つ)でもよいし、或いは1つでもよい。改質インジェクタ45は、後述のコントローラ60からの制御指令に応じて動作する。
【0043】
改質ガス流路46は、改質器42と第1酸素供給流路3とを接続している。改質ガス流路46の一端は、改質器42の筐体52の出口部に接続されている。改質ガス流路46の他端は、第1酸素供給流路3におけるメインスロットルバルブ6とアンモニアエンジン2との間の箇所に接続されている。改質ガス流路46は、改質器42により生成された改質ガスをアンモニアエンジン2の燃焼室14に供給する流路である。
【0044】
クーラ47は、改質ガス流路46に配設されている。クーラ47は、例えばアンモニアエンジン2を冷却するエンジン冷却水を用いて、改質ガス流路46を流れる改質ガスを冷却する。
【0045】
流量調整弁48は、改質ガス流路46におけるクーラ47よりも下流側に配設されている。流量調整弁48は、アンモニアエンジン2の燃焼室14に供給される改質ガスの流量を調整する電磁弁である。流量調整弁48は、後述のコントローラ60からの制御指令に応じて動作する。流量調整弁48は、開閉弁(ON/OFF弁)であってもよい。
【0046】
また、エンジンシステム1は、スタータ59と、コントローラ60とを備えている。スタータ59は、アンモニアエンジン2のクランクシャフト20を回転させるものである。
【0047】
コントローラ60は、例えばCPU、ROM、RAM及び入出力インターフェース等を有する電子制御ユニットである。コントローラ60は、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、そのプログラムをCPUで実行することにより、アンモニアエンジン2の駆動制御を含む各種の制御機能を行う。
【0048】
コントローラ60は、車両の運転を開始する時には、スタータ59及びヒータ54の電源55を起動すると共に、メインインジェクタ5、メインスロットルバルブ6、改質インジェクタ45及び改質スロットルバルブ44を開弁するように制御する。これにより、アンモニアエンジン2の燃焼室14及び改質器42にアンモニアガス及び空気が供給されると共に、改質器42により生成された改質ガスが燃焼室14に供給されるため、燃焼室14においてアンモニアガスが水素と一緒に燃焼する。
【0049】
コントローラ60は、アンモニアエンジン2の定常運転時には、アクセル開度に応じた空燃比が得られるようにメインインジェクタ5の開度、メインスロットルバルブ6の開度、改質インジェクタ45の開度及び改質スロットルバルブ44の開度を制御する。
【0050】
また、コントローラ60は、アンモニアエンジン2の燃焼室14内でアンモニアガスの燃焼が終了することによってクランクシャフト20の回転が停止してから燃焼室14内で再びアンモニアガスの燃焼が起こるまでの間の任意の期間において、アンモニアエンジン2のクランクケース21内(クランク室23)に残留しているアンモニアのブローバイガスを除去する制御を行う。ブローバイガスは、シリンダブロック11とピストン13との隙間からクランク室23に漏れる未燃ガスである。
【0051】
具体的には、コントローラ60は、スタータ59によってクランクシャフト20の回転が再開された際に、第1酸素供給流路3にPCVバルブ32及びブローバイガス流路31を介してブローバイガスが還流するように、メインスロットルバルブ6の開度及び改質スロットルバルブ44の開度を制御する制御部を構成している。
【0052】
図3は、コントローラ60により実行されるブローバイガス除去制御処理の手順を示すフローチャートである。本実施形態では、クランクシャフト20の回転が停止した後にドライバの指示により本処理が開始される。ドライバは、例えば、車両から降車する前、或いはアンモニアエンジン2のメンテナンス前に、手動スイッチ等によりブローバイガスの除去の実施を指示する。
【0053】
なお、アンモニアエンジン2の燃焼室14内でアンモニアガスの燃焼が終了する時には、メインインジェクタ5、メインスロットルバルブ6、改質インジェクタ45及び改質スロットルバルブ44は、基本的には閉弁状態となっている。
【0054】
図3において、コントローラ60は、まずメインスロットルバルブ6及び改質スロットルバルブ44の開度を制御する(ステップS101)。コントローラ60は、第1酸素供給流路3にブローバイガスが還流するようにメインスロットルバルブ6の開度及び改質スロットルバルブ44の開度を制御する。更に詳述すると、コントローラ60は、スタータ59によってクランクシャフト20の回転が再開された際、インテークマニホールド24内を負圧に保つようにメインスロットルバルブ6の開度及び改質スロットルバルブ44の開度を制御する。
【0055】
なお、この時のメインスロットルバルブ6及び改質スロットルバルブ44は、スタータ59によってクランクシャフト20の回転が再開された際、第1酸素供給流路3にブローバイガスを還流させられる開度であればよく、全閉(開度ゼロ)されていてもよい。
【0056】
続いて、コントローラ60は、スタータ59を起動する(ステップS102)。すると、アンモニアエンジン2のクランクシャフト20が回転し、インテークマニホールド24内が負圧状態となる。なお、ステップS102をステップS101の前に実行してもよいし、ステップS101,S102を同時に実行してもよい。
【0057】
このとき、インテークマニホールド24内が負圧であるため、第1酸素供給流路3内の空気が第2酸素供給流路30を流れてクランク室23に供給され、その空気がクランク室23に残留しているアンモニアのブローバイガスと一緒にPCVバルブ32を介してブローバイガス流路31を流れて第1酸素供給流路3に還流する。また、メインスロットルバルブ6及び改質スロットルバルブ44は閉弁されているため、その分だけ第2酸素供給流路30を流れる空気量が多くなる。
【0058】
ここで、PCVバルブ32は、
図4に示されるように、インテークマニホールド24内の負圧が規定圧Nに達するまでは高くなるほどブローバイガスが流れやすくなるが、インテークマニホールド24内の負圧が規定圧N以上になると、ブローバイガスが逆に流れにくくなる、という流量特性を有している。このため、コントローラ60は、インテークマニホールド24内の負圧が規定圧Nとなるように、メインスロットルバルブ6及び改質スロットルバルブ44の開度を制御することが好ましい。規定圧Nは、PCVバルブ32を単位時間当たりに流れる空気の流量が最も多くなるような負圧である。
【0059】
このようにメインスロットルバルブ6及び改質スロットルバルブ44の開度を制御することにより、PCVバルブ32を通して第1酸素供給流路3に還流する空気の流量が直接制御される。このため、単なる逆止弁を使用する場合に比べて、ブローバイガスの排出を効率良く行うことができる。
【0060】
以上のようなエンジンシステム1において、ドライバがブローバイガスの除去を指示すると、スタータ59を起動させることで、クランクシャフト20を回転させると共に、メインスロットルバルブ6及び改質スロットルバルブ44の開度調整が行われる。
【0061】
すると、インテークマニホールド24内が負圧となるため、第1酸素供給流路3内の空気が第2酸素供給流路30の配管33及び通路34を流れてクランク室23に供給され、その空気がクランク室23に残留しているアンモニアのブローバイガスと一緒にブローバイガス流路31の通路36、PCVバルブ32及びブローバイガス流路31の配管35を流れて第1酸素供給流路3に還流する。
【0062】
そして、アンモニアのブローバイガスは、第1酸素供給流路3からアンモニアエンジン2の燃焼室14及び排気流路4を流れて、三元触媒8及びSCR触媒9に供給される。そして、三元触媒8及びSCR触媒9において、アンモニアのブローバイガスが浄化される。
【0063】
具体的には、三元触媒8の温度が活性温度以上である場合は、三元触媒8によりアンモニアが主として酸化して燃焼される。三元触媒8の温度が活性温度よりも低い場合は、SCR触媒9によりアンモニアが吸着される。これにより、アンモニアのブローバイガスが排気流路4を流れて排出されることが抑制される。
【0064】
以上のように本実施形態にあっては、アンモニアエンジン2の燃焼室14内でアンモニアガスの燃焼が終了することによってクランクシャフト20の回転が停止してから燃焼室14内で再びアンモニアガスの燃焼が起こるまでの間の任意の期間に、第1酸素供給流路3にアンモニアのブローバイガスが還流するように、メインスロットルバルブ6の開度及び改質スロットルバルブ44の開度が制御されると共に、スタータ59によってクランクシャフト20を回転させる。すると、第1酸素供給流路3の一部分であるインテークマニホールド24内が負圧となるため、空気が第2酸素供給流路30を流れてクランクケース21内に導入されると共に、PCVバルブ32が開弁することで、クランクケース21内に残留するアンモニアのブローバイガスが空気と一緒にブローバイガス流路31を流れて第1酸素供給流路3に還流する。そして、アンモニアのブローバイガスは、空気と一緒に第1酸素供給流路3、アンモニアエンジン2の燃焼室14及び排気流路4を流れて三元触媒8に供給され、三元触媒8に吸着及び酸化される。その結果、クランクケース21内に残留するアンモニアのブローバイガスが除去される。これにより、例えば、メンテナンス時にオイルパン22を取り外してクランクケース21を開けた際に、クランクケース21内に残存しているアンモニアが大気中に流出することが抑制される。また、クランクケース21内に残留するアンモニアのブローバイガスを定期的に除去しておけば、例えば、メンテナンス時にオイルパン22を取り外してクランクケース21を開けた際に、大量のアンモニアが大気中に流出することが抑制される。
【0065】
また、本実施形態では、水素を含有した改質ガスがアンモニアエンジン2の燃焼室14に供給されるため、アンモニアエンジン2の燃焼室14内でアンモニアが燃焼されやすくなる。
[第2実施形態]
【0066】
図5は、本発明の第2実施形態に係るエンジンシステムを示す概略構成図である。
図5において、本実施形態のエンジンシステム1Aは、電気ヒータ61及び温度センサ62を更に備えると共に、コントローラ60に代えてコントローラ60Aを備えている点で、上記の第1実施形態のエンジンシステム1と異なっている。
【0067】
電気ヒータ61は、三元触媒8を加熱する加熱部を構成している。電気ヒータ61は、三元触媒8の周囲に配置されていてもよいし、三元触媒8の上流側に配置されていてもよい。温度センサ62は、三元触媒8の温度を検出するセンサである。
【0068】
コントローラ60Aは、アンモニアエンジン2の燃焼室14内でアンモニアガスの燃焼が終了することによってクランクシャフト20の回転が停止してから燃焼室14内で再びアンモニアガスの燃焼が起こるまでの間の任意の期間に、電気ヒータ61を起動する。また、コントローラ60Aは、電気ヒータ61を起動した後、温度センサ62により検出された三元触媒8の温度が規定温度以上となった場合、第1酸素供給流路3にアンモニアのブローバイガスが還流するように、メインスロットルバルブ6の開度及び改質スロットルバルブ44の開度を制御すると共に、スタータ59を起動させることによってクランクシャフト20を回転させる。
【0069】
図6は、コントローラ60Aにより実行されるブローバイガス除去制御処理の手順を示すフローチャートであり、
図3に対応している。
【0070】
図6において、コントローラ60Aは、まず電気ヒータ61を起動する(ステップS111)。すると、三元触媒8が昇温する。続いて、コントローラ60Aは、温度センサ62の検出値に基づいて、三元触媒8の温度が規定温度以上であるかどうかを判断する(ステップS112)。規定温度は、例えば三元触媒8の活性温度(酸化可能温度)である。
【0071】
コントローラ60Aは、三元触媒8の温度が規定温度以上であると判断したときは、電気ヒータ61の作動を終了する(ステップS113)。これにより、三元触媒8の昇温が停止する。
【0072】
そして、コントローラ60Aは、メインスロットルバルブ6の開度及び改質スロットルバルブ44の開度を制御する(ステップS101)。続いて、コントローラ60Aは、スタータ59を起動する(ステップS102)。これにより、クランクシャフト20が回転し、インテークマニホールド24内が負圧状態となる。
【0073】
このように本実施形態では、三元触媒8がアンモニアを酸化させることが可能な温度(活性温度)まで三元触媒8を加熱することで、アンモニアが三元触媒8に迅速に酸化される。従って、アンモニアエンジン2の冷間状態でも、三元触媒8によりアンモニアを効果的に浄化することができる。その結果、場合によってはSCR触媒9を使用しなくて済む。
【0074】
なお、本実施形態では、電気ヒータ61が起動された後、三元触媒8の温度が規定温度まで上昇したときに、メインスロットルバルブ6の開度及び改質スロットルバルブ44の開度を制御すると共に、スタータ59によってクランクシャフト20を回転させているが、特にその手法には限られない。電気ヒータ61が起動された後、所定時間が経過した時点で、メインスロットルバルブ6の開度及び改質スロットルバルブ44の開度を制御すると共に、スタータ59によってクランクシャフト20を回転させてもよい。
[第3実施形態]
【0075】
図7は、本発明の第3実施形態に係るエンジンシステムを示す概略構成図である。
図7において、本実施形態のエンジンシステム1Bは、温度センサ65を更に備えると共に、コントローラ60に代えてコントローラ60Bを備えている点で、上記の第1実施形態のエンジンシステム1と異なっている。なお、本実施形態を上記の第2実施形態と組み合わせてもよい。
【0076】
温度センサ65は、アンモニアエンジン2のオイルパン22に溜められたエンジンオイルeo(
図2参照)またはアンモニアエンジン2を冷却するエンジン冷却水(図示省略)の温度を検出する温度検出部である。
【0077】
コントローラ60Bは、アンモニアエンジン2の燃焼室14内でアンモニアガスの燃焼が終了することによってクランクシャフト20の回転が停止してから燃焼室14内で再びアンモニアガスの燃焼が起こるまでの間の任意の期間に、温度センサ65により検出されたエンジンオイルeoまたはエンジン冷却水の温度に基づいて、第1酸素供給流路3にアンモニアのブローバイガスが還流するように、メインスロットルバルブ6の開度及び改質スロットルバルブ44の開度を制御すると共に、スタータ59を起動する。
【0078】
図8は、コントローラ60Bにより実行されるブローバイガス除去制御処理の手順を示すフローチャートであり、
図3に対応している。
【0079】
図8において、コントローラ60Bは、まず温度センサ65の検出値を取得する(ステップS121)。そして、コントローラ60Bは、温度センサ65の検出値に基づいて、メインスロットルバルブ6の開度及び改質スロットルバルブ44の開度を制御する(ステップS101)。
【0080】
具体的には、エンジンオイルまたはエンジン冷却水の温度が常温よりも高いときは、アンモニアエンジン2が常温時よりも回転しやすい状態であるため、インテークマニホールド24内の負圧が高くなりやすい。この場合には、コントローラ60Bは、インテークマニホールド24内の負圧が規定圧N(前述)になるように、メインスロットルバルブ6及び改質スロットルバルブ44の開度を常温時よりも大きくする。
【0081】
一方、エンジンオイルまたはエンジン冷却水の温度が常温よりも低いときは、アンモニアエンジン2が常温時よりも回転しにくい状態であるため、インテークマニホールド24内の負圧が低くなりやすい。この場合には、コントローラ60Bは、インテークマニホールド24内の負圧が規定圧N(前述)になるように、メインスロットルバルブ6及び改質スロットルバルブ44の開度を常温時よりも小さくする。
【0082】
続いて、コントローラ60Bは、スタータ59を起動する(ステップS102)。これにより、クランクシャフト20が回転し、インテークマニホールド24内が負圧状態となる。
【0083】
このように本実施形態では、エンジンオイルまたはエンジン冷却水の温度に基づいて、メインスロットルバルブ6の開度及び改質スロットルバルブ44の開度を制御することにより、アンモニアエンジン2の温度によって第1酸素供給流路3に発生する負圧が変動する場合でも、メインスロットルバルブ6及び改質スロットルバルブ44をアンモニアエンジン2の温度に応じた適切な開度に調整することができる。
【0084】
なお、本発明は、上記実施形態には限定されない。例えば上記実施形態では、三元触媒8が排気触媒として主に用いられているが、排気触媒としては、特にその形態には限られず、1種類又は複数種類の触媒によってアンモニアを吸着及び酸化すればよい。例えば、上記のSCR触媒9を排気触媒として主に用いてもよいし、三元触媒8及びSCR触媒9に代えて酸化触媒を用いてもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、第2酸素供給流路30は、第1酸素供給流路3とアンモニアエンジン2のシリンダヘッド12とを接続する配管33と、この配管33とクランク室23とを連通させるようにシリンダヘッド12及びシリンダブロック11に設けられた通路34とを有しているが、特にそのような形態には限られない。第2酸素供給流路30は、第1酸素供給流路3とクランク室23とを直接接続する配管であってもよい。
【0086】
また、上記実施形態では、ブローバイガス流路31は、第1酸素供給流路3とシリンダヘッド12とを接続する配管35と、この配管35とクランク室23とを連通させるようにシリンダヘッド12及びシリンダブロック11に設けられた通路36とを有しているが、特にそのような形態には限られない。ブローバイガス流路31は、クランク室23と第1酸素供給流路3とを直接接続する配管であってもよい。この場合、PCVバルブ32は、当該配管に配設されることとなる。
【0087】
また、上記実施形態では、ドライバの指示によりブローバイガスの除去処理が実施されているが、特にその形態には限られず、ブローバイガスの除去処理が自動的に開始されてもよい。
【0088】
また、上記実施形態では、ドライバが車両から降車する前、或いはアンモニアエンジン2のメンテナンス前に、ドライバの指示によりブローバイガス除去制御処理が実行されているが、特にそのような形態には限られない。アンモニアエンジン2の燃焼室14内でアンモニアガスの燃焼が終了することによってクランクシャフト20の回転が停止してから燃焼室14内で再びアンモニアガスの燃焼が起こるまでの間の任意の期間において、ドライバの指示もしくは自動的にブローバイガス除去制御処理が実行されればよく、例えば、アイドリングストップからスタータ59によってクランクシャフト20を回転させる時にブローバイガス除去制御処理が実行されてもよい。この場合であっても、定期的にクランクケース21内に残存するアンモニアのブローバイガスを除去することができるため、例えばメンテナンス時にアンモニアのブローバイガスが大気に流出することを抑制することができる。
【0089】
また、上記実施形態では、改質用酸素供給流路43は第1酸素供給流路3に接続されているが、改質用酸素供給流路43としては、特にその形態には限られず、第1酸素供給流路3とは別のルートから供給される空気が流れる流路であってもよい。
【0090】
また、上記実施形態では、改質器42は、アンモニアガスを燃焼させる機能とアンモニアガスを水素に分解する機能とを併せ持った改質触媒53を有しているが、特にそのような形態には限られない。改質器42は、アンモニアガスを燃焼させる燃焼触媒と、アンモニアガスを水素に分解する改質触媒とを別々に有していてもよい。
【0091】
また、上記実施形態では、アンモニアエンジン2及び改質器42に空気が供給されているが、空気に代えて、酸素のみをアンモニアエンジン2及び改質器42に供給してもよい。
【0092】
また、上記実施形態では、改質器42により水素を含有した改質ガスが生成され、その改質ガスがアンモニアと共にアンモニアエンジン2に供給されているが、本発明は、水素がアンモニアエンジン2に供給されないエンジンシステムにも適用可能である。
【符号の説明】
【0093】
1,1A,1B…エンジンシステム、2…アンモニアエンジン(エンジン)、3…第1酸素供給流路(酸素供給流路)、4…排気流路、6…メインスロットルバルブ(流量制御弁)、8…三元触媒(排気触媒)、9…SCR触媒(排気触媒)、13…ピストン、14…燃焼室、20…クランクシャフト、21…クランクケース、30…第2酸素供給流路、31…ブローバイガス流路、32…PCVバルブ(ブローバイガス還流バルブ)、42…改質器、43…改質用酸素供給流路、44…改質スロットルバルブ(改質用流量制御弁)、46…改質ガス流路、59…スタータ、60,60A,60B…コントローラ(制御部)、61…電気ヒータ(加熱部)、65…温度センサ(温度検出部)。