(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057736
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】エレベータ用巻上機および油分漏れ検知装置
(51)【国際特許分類】
B66B 5/02 20060101AFI20240418BHJP
B66B 11/08 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
B66B5/02 U
B66B11/08 A
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164592
(22)【出願日】2022-10-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109612
【弁理士】
【氏名又は名称】倉谷 泰孝
(74)【代理人】
【識別番号】100153176
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 重明
(74)【代理人】
【識別番号】100116643
【弁理士】
【氏名又は名称】伊達 研郎
(72)【発明者】
【氏名】本田 英人
【テーマコード(参考)】
3F304
3F306
【Fターム(参考)】
3F304BA13
3F304EA29
3F306BA08
3F306BA29
3F306BB01
(57)【要約】
【課題】エレベータ用巻上機1の軸受から流出した油分がブレーキディスク11に付着する前に油分漏れを定量的に検知する。
【解決手段】本開示に係るエレベータ用巻上機1は、軸受台5に固定された一対の軸受と、一対の軸受に回転可能に支持された回転軸4と、回転軸4と一体に回転するように回転軸4の軸周りに固定された綱車3と、綱車3の軸方向の一方側に固定されたブレーキディスク11と、ブレーキディスク11が綱車3に固定された部分を除く綱車3の軸方向の一方側の側面、または綱車3の軸方向の一方側の側面と一対の軸受との間の回転軸4の露出面を第一接触面として、綱車3の回転時に摩擦測定部材を第一接触面に接触させて摩擦力を測定する摩擦測定部13とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受台に固定された一対の軸受と、
前記一対の軸受に回転可能に支持された回転軸と、
前記回転軸と一体に回転するように前記回転軸の軸周りに固定された綱車と、
前記綱車の軸方向の一方側に固定されたブレーキディスクと、
前記ブレーキディスクが前記綱車に固定された部分を除く前記綱車の軸方向の一方側の側面、または前記綱車の軸方向の一方側の側面と前記一対の軸受との間の前記回転軸の露出面を第一接触面として、前記綱車の回転時に摩擦測定部材を前記第一接触面に接触させて摩擦力を測定する摩擦測定部と、
を備えたエレベータ用巻上機。
【請求項2】
前記摩擦測定部は、さらに、
記綱車の軸方向の他方側の側面、または前記綱車の軸方向の他方側の側面と前記一対の軸受との間の前記回転軸の露出面を第二接触面として、前記綱車の回転時に摩擦測定部材を前記第二接触面に接触させて摩擦力を測定する
請求項1に記載のエレベータ用巻上機。
【請求項3】
前記軸受台または前記軸受に前記摩擦測定部を取り付ける取付部を備えた
請求項1または2に記載のエレベータ用巻上機。
【請求項4】
前記摩擦測定部は、
前記摩擦測定部材を前記第一接触面または前記第二接触面に押し付ける弾性部材と、
前記弾性部材の押し付ける力に抗して、前記第一接触面または前記第二接触面から前記摩擦測定部材を離れる向きに吸引する電磁石と、
を備えた請求項1または2に記載のエレベータ用巻上機。
【請求項5】
前記摩擦測定部は、
前記取付部に取り付けられ、前記第一接触面または前記第二接触面に摺動可能に支持される前記摩擦測定部材を備え、
前記綱車の回転時に、前記摩擦測定部材を前記第一接触面または前記第二接触面に摺動させたときの摩擦力を測定する
請求項3に記載のエレベータ用巻上機。
【請求項6】
前記摩擦測定部は、
前記摩擦測定部材の後端側を挟んで対向して設けられ、前記摩擦測定部材から押される荷重を検出する一対の検出器を備え、
前記一対の検出器は、前記摩擦測定部材を前記第一接触面または第二接触面に摺動させるときに前記摩擦測定部材の後端側と接触し、前記摩擦測定部材から加わる荷重を検出する
請求項1または2に記載のエレベータ用巻上機。
【請求項7】
請求項1または2に記載のエレベータ用巻上機に接続される油分漏れ検知装置であって、
前記エレベータ用巻上機の摩擦測定部から出力された摩擦力と基準値となる摩擦力を比較し、軸受から流出した油分の付着の有無を判定する判定部を備える
油分漏れ検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エレベータ用巻上機および油分漏れ検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータ用巻上機において、軸受に供給されたグリスから分離した油分が流出した場合、流出した油分がブレーキディスクに付着し、ブレーキトルクが低下する可能性がある。このため、ブレーキディスクに油分が付着する前に、軸受からの油分の流出を検知するエレベータ用巻上機が提案されている。
【0003】
従来のエレベータ用巻上機では、軸受を支持する軸受ブラケットの外側に軸受から流出した油分を逃がすための案内部を設け、案内部に備えた排出溝を水平方向に横断するようにカセットが挿入されている。カセット内には油分の流出の有無を検知する検知部材として綿が設けられ、綿に油分が浸込むことによる綿の変色を確認することで油分の有無を検知する。(例えば、特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来の技術では、軸受から流出した油分の有無を綿の色の変化具合から検査者の目視で判断しなければならず、判断が検査者の主観や経験に依存してしまう。このため、油分漏れを客観的に評価して監視することができず、軸受から流出した油分がディスクブレーキに付着する前に油分漏れを的確に検知することができないという課題があった。
【0006】
本開示は上記の課題を解決するためになされたものであり、エレベータ用巻上機の軸受から流出した油分がディスクブレーキに付着する前に、軸受から流出した油分を定量的に検知することを目的としている。
【0007】
本開示に係るエレベータ用巻上機は、軸受台に固定された一対の軸受と、一対の軸受に回転可能に支持された回転軸と、回転軸と一体に回転するように回転軸の軸周りに固定された綱車と、綱車の軸方向の一方側に固定されたブレーキディスクと、ブレーキディスクが綱車に固定された部分を除く綱車の軸方向の一方側の側面、または綱車の軸方向の一方側の側面と一対の軸受との間の回転軸の露出面を第一接触面として、綱車の回転時に摩擦測定部材を第一接触面に接触させて摩擦力を測定する摩擦測定部とを備える。
【0008】
また、本開示に係る油分漏れ検知装置は、エレベータ用巻上機に接続され、エレベータ用巻上機の摩擦測定部から出力された摩擦力と基準値となる摩擦力を比較し、軸受から流出した油分の付着の有無を判定する判定部を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、エレベータ用巻上機の軸受から流出した油分がディスクブレーキに付着する前に、軸受から流出した油分を定量的に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1におけるエレベータ用巻上機を示すy-z平面をx軸正方向から見た側断面図である。
【
図2】実施の形態1における測定時の摩擦測定部を示すy-z平面をx軸正方向から見た側断面図である。
【
図3】実施の形態1における非測定時の摩擦測定部を示すy-z平面をx軸正方向から見た側断面図である。
【
図4】実施の形態1における測定時の摩擦測定部を示すx-z平面をy軸負方向から見た図である。
【
図5】実施の形態1における測定時の摩擦測定部の測定部分を示すx-z平面をy軸負方向から見た図である。
【
図6】実施の形態1におけるエレベータ用巻上機および油分漏れ検知装置の構成を示すブロック図である。
【
図7】実施の形態1における油分漏れ検知装置のハードウェア構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本開示の実施の形態について添付の図面を用いて説明する。各図では、同一又は相当する部分に同一の符号を付している。重複する説明は、適宜簡略化あるいは省略する。なお、以下に説明される実施の形態により本開示が限定されるものではない。
【0012】
実施の形態1.
実施の形態1におけるエレベータ用巻上機1の構成を説明する。
図1は実施の形態1におけるエレベータ用巻上機1を示すy-z平面をx軸正方向から見た側断面図である。以下では、説明を容易にするため、図中に示したx-y-z軸を適宜参照しながら説明する。なお、以下の説明において、回転軸4が延びる方向を軸方向と呼ぶ。また、
図1に示した右側を一方側、左側を他方側と呼ぶ。また、綱車3のy軸正方向およびy軸負方向から見た外周面を綱車の側面と呼ぶ。
【0013】
図1において、エレベータ用巻上機1は、モータ2と、綱車3と、回転軸4と、軸受台5と、一対の軸受である第一軸受6および第二軸受7と、フェルトパッキン8、9と、制動装置10と、ブレーキディスク11と、ブレーキクランパ12と、摩擦測定部13を備える。
【0014】
エレベータ用巻上機1は、エレベータのかごとつり合い重りを繋ぐロープを巻き上げる。モータ2は、回転軸4を回転させ、ロープを巻き上げる駆動力を発生させる。綱車3は、巻き上げ対象のロープを巻き付けるための溝が形成され、回転軸4と一体に回転することでロープを巻き上げる。綱車3は、中心部に回転軸4が挿通されており、回転軸4の軸周りに固定される。回転軸4は、モータ2が発生した駆動力を綱車3に伝達する。第一軸受6および第二軸受7は軸受台5に固定され、回転軸4を回転可能に支持する。第一軸受6および第二軸受7に供給されるグリスは、第一軸受6および第二軸受7の上面に位置する図示しない給油口から注がれる。また、第一軸受6および第二軸受7の綱車3の側面と対向し回転軸4に接する面には、グリスから分離した油分の漏れを防止する部材として円環状のフェルトパッキン8、9が設けられる。なお、第一軸受6は軸方向の一方側、第二軸受7は軸方向の他方側に配置される。
【0015】
制動装置10は、ブレーキディスク11と、ブレーキクランパ12を備える。ブレーキディスク11は綱車3の軸方向の一方側に固定され、綱車3の回転に伴って回転軸4の軸回りに回転する。ブレーキクランパ12は、ブレーキパッドを支持し、ブレーキディスク11の制動面にブレーキパッドを押し付けて摩擦により制動を加える。
【0016】
摩擦測定部13は、摩擦測定部材を有する。摩擦測定部材は、ブレーキディスク11が綱車3に固定された部分を除く綱車3の軸方向の一方側の側面、または綱車3の軸方向の一方側の側面と第一軸受6との間の回転軸4の露出面に接触するように設けられる。以後、この摩擦測定部材と接触するエレベータ用巻上機1の面を第一接触面と呼ぶ。摩擦測定部13は、摩擦測定部材が第一接触面に押し付けられ、回転軸4の回転によって摩擦測定部材が接触面を滑っているときの動摩擦力を測定する。また綱車3の軸方向の他方側の側面、または綱車3の軸方向の他方側の側面と第二軸受7との間の回転軸4の露出面を第二接触面と呼び、第一接触面と第二接触面を特に区別しないときは単に接触面と呼ぶ。
【0017】
第一軸受6から流出した油分の流出経路について説明する。
図1において、第一軸受6から流出した油分は、フェルトパッキン8を超えて綱車3の軸方向の一方側の側面と第一軸受6との間の回転軸4の露出面に流出する。その後、油分はブレーキディスク11が綱車3に固定された部分を除く綱車3の軸方向の一方側の側面へと伝わり、最終的にブレーキディスク11に到達する。
【0018】
付加的構成として、摩擦測定部13は、綱車3の軸方向の他方側にも追加で設けられてもよい。綱車3の軸方向の他方側に着目すると、第二軸受7から流出した油分は、フェルトパッキン9を超えて綱車3の軸方向の他方側の側面と第二軸受7との間の回転軸4の露出面に流出する。その後、油分は綱車3の軸方向の他方側の側面へと伝わり、綱車3の溝に巻き付けられたロープを越え、綱車3の軸方向の一方側の側面へと伝わり、最終的にブレーキディスク11に油分が伝わる可能性がある。よって、綱車3の軸方向の他方側に追加で摩擦測定部13を設け、上述した第二接触面の摩擦力を測定することにより、第二軸受7から流出した油分が綱車3の軸方向の一方側へと伝わる前に油分漏れを検知できる。
【0019】
図2は実施の形態1における測定時の摩擦測定部13を示すy-z平面をx軸正方向から見た側断面図である。
図3は、実施の形態1における非測定時の摩擦測定部13を示すy-z平面をx正方向から見た側断面図である。
図4は実施の形態1における測定時の摩擦測定部13を示すx-z平面をy軸負方向から見た図である。
図5は実施の形態1における測定時の摩擦測定部13の測定部分を示すx-z平面をy軸負方向から見た図である。
【0020】
摩擦測定部13は、
図2から
図4に示すように、摩擦測定部材の一例であるカム14と、カム14に加わった力を検出する一対の検出器であるロードセル15とを有する。
図4に示すように、カム14はピン21で固定され、ピン21を軸として前述した接触面上を摺動可能に設けられる。また、
図5に示すように、ピン21の中心から接触面までの距離aとピン21の中心からカム14の摩擦測定部分までの距離Rが同じとなるように、すなわちエレベータ用巻上機1の綱車3の回転時に接触面と隙間が生じないように、カム14は接触面に対して摺動する。一対のロードセル15は、カム14の後端側を挟んで対向して設けられ、カム14が接触面に対して摺動し、摺動によってカム14に加わる荷重を検出することで、動摩擦力を測定する。
【0021】
なお、エレベータ用巻上機1は、軸受台5、第一軸受6、または第二軸受7に摩擦測定部13を取り付ける取付部16を備えてもよい。
図2と
図3は、摩擦測定部13を第一軸受6上の取付部16に取り付けた例である。取付部16は、ロードセル15が取り付けられカム14を摺動可能に取り付ける摩擦測定部材取付部17と、電磁石20を取り付ける電磁石取付部18を有する。電磁石取付部18には、カム14を第一接触面に押し付ける弾性部材としての、弾性部材19と、弾性部材19の押し付ける力に抗してカム14を綱車3の軸方向の一方側の側面または綱車3の軸方向の一方側の側面と第一軸受6間で露出している回転軸4の露出面から離れる向きに、すなわち、第一接触面から離れる向きに、ピン21を引き寄せる電磁石20を備える。
図2に示すように、これらの構成によって、摩擦測定時には電磁石20へ通電せず、弾性部材19によってカム14が第一接触面へと押し付けられる。また、
図3に示すように、非摩擦測定時には電磁石20へ通電させ、磁力によってカム14を電磁石20側へ引き寄せ吸引することで、カム14を第一接触面へ接触させない。なお、上述の弾性部材19と電磁石20による摩擦測定部材の摩擦測定時と非摩擦測定時の動作は第二接触面に対しても同じである。また、弾性部材として弾性部材19以外にゴムなどを用いてもよい。
【0022】
図6は実施の形態1におけるエレベータ用巻上機1および油分漏れ検知装置30の構成を示すブロック図である。油分漏れ検知装置30は、例えばパーソナルコンピュータである。エレベータ用巻上機1と油分漏れ検知装置30は有線、無線で通信可能に接続される。油分漏れ検知装置30はエレベータ用巻上機1と同じビル内に設置されていても良いし、ビル外に設けられてエレベータ用巻上機1を遠隔的に監視できるようにしても良い。また、油分漏れ検知装置30をエレベータ用巻上機1に組み込んでエレベータ用巻上機1と一体に構成することも可能である。
【0023】
油分漏れ検知装置30は、記録部31と、表示部32と、判定部33と、報知部34を備える。記録部31は摩擦測定部13から出力された動摩擦力を、時刻情報(例えば、動摩擦力を測定した時刻、あるいは摩擦測定部13から動摩擦力のデータを収集した時刻)と対応付けて時系列に記録する。表示部32は記録部31に出力された情報を表示する。表示される情報は、例えばタイムステップ毎の動摩擦力の変化を示す表やそれを基に作成した時間と動摩擦力の関係を示したグラフである。また、表示される情報は、油分漏れ検知装置30とは異なる端末に表示できても良い。判定部33は、記録部31から出力された動摩擦力と、接触面に油分が付着していないときの基準値となる動摩擦力を比較し、油分の付着を判定する。判定部33が判定した情報は、記録部31を通して表示部32に表示してもよい。報知部34は、判定部33が、油が付着していると判定した時、保守管理者に対して発報する。このように、判定部33が動摩擦力のデータと時刻情報を対応付けて記録することによって、油分漏れによる異常が発生した時刻を知ることができ、エレベータ用巻上機1の動作履歴などの情報と併せて異常発生原因を調査することができる。
【0024】
ここで、油分漏れ検知装置30のハードウェア構成について説明する。
図7は実施の形態1における油分漏れ検知装置30のハードウェア構成を示す図である。
図7に示す油分漏れ検知装置30は、例えばパーソナルコンピュータ、マイクロコントローラなどのコンピュータにより実現される。
【0025】
油分漏れ検知装置30は、バス40を介して互いに接続された、プロセッサ41と、メモリ42と、インタフェース43と、二次記憶装置44と、を備える。
【0026】
プロセッサ41は、例えばCPU(Central Processing Unit:中央演算装置)である。プロセッサ41が、二次記憶装置44に記憶された動作プログラムをメモリ1002に読み込んで実行することにより、油分漏れ検知装置30の各機能が実現される。
【0027】
メモリ42は、例えば、RAM(Random Access Memory)により構成される主記憶装置である。メモリ42は、プロセッサ41が二次記憶装置44から読み込んだプログラムを記憶する。また、メモリ42は、プロセッサ41がプログラムを実行する際のワークメモリとして機能する。
【0028】
インタフェース43は、例えばシリアルポート、USB(Universal Serial Bus)ポート、ネットワークインタフェースなどのI/O(Input/Output)インタフェースである。インタフェース43に液晶ディスプレイなどの公知の表示デバイスが接続されることにより表示部32の機能が実現される。
【0029】
二次記憶装置44は、例えば、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)である。二次記憶装置44は、油分漏れ検知装置30の動作に必要な各種情報およびプロセッサ41が実行するプログラムを記憶する。二次記憶装置44により記録部31の機能が実現される。
【0030】
次に、実施の形態1におけるエレベータ用巻上機1の第一軸受6および第2軸受7から流出した油分を定量的に検知する動作について説明する。ここでは、摩擦測定部13として、摩擦測定部材であるカム14と、カム14に加わった荷重を検出する一対の検出器であるロードセル15を使用する場合について説明する。
【0031】
最初に、エレベータ稼働時に、接触面に油分が付着していない状態において、カム14が接触面に押し付けられ、回転軸4の回転によってカム14が接触面を滑り、一対のロードセル15がカム14から押されることによって生じるロードセル15に加わる荷重を検出することで動摩擦力を測定する。接触面に油分が付着していない状態で一定期間測定された動摩擦力の平均値は、基準値として記録される。
【0032】
その後、エレベータ稼働時に、例えば、一定間隔でカム14が接触面に押し付けられ、回転軸4の回転によってカム14が接触面を滑り、一対のロードセル15がカム14から加えられた荷重を検出することで動摩擦力を測定する。
【0033】
ロードセル15から出力された動摩擦力は時系列のデータとして記録される。このデータは油分漏れ検知装置30に備えられる記録部31に出力される。判定部33は、動摩擦力と基準値となる動摩擦力とを逐次比較し、油分の付着を判定する。ここで、判定部33は、測定された動摩擦力が基準値となる動摩擦力よりも小さい場合、油分の付着を検知したと判定する。その後、報知部34が保守管理者に対して発報する。
【0034】
なお、エレベータ用巻上機1に油分漏れ検知装置30を接続せず、摩擦測定部13で測定した動摩擦力と基準値となる動摩擦力とを検査者が逐次比較し、測定された動摩擦力が基準値となる動摩擦力よりも小さい場合、油分の付着を検知したと判定してもよい。このような場合であっても、検査者は動摩擦力の基準値と現在の数値を定量的に比較することになるため、客観的な評価によって判断することが可能となる。
【0035】
また、摩擦測定部13は、図示しない制御回路によって電磁石20の通電が制御されることで、摩擦測定時と摩擦非測定時の切り替えを制御できる。
図2に示すように、摩擦測定時には摩擦測定時には電磁石20へ通電しないことによって、カム14が接触面へと押し付けられる。また、
図3に示すように、非摩擦測定時には電磁石20へ通電させ、磁力によってカム14を電磁石20側へ引き寄せることでカム18を接触面へ接触させない。摩擦測定時と非摩擦測定時の切り替えについて、綱車3が回転する毎に測定する、あるいは、所定の間隔を空けて測定してもよい。例えば、新しい軸受に交換した際、また、軸受にグリスを供給した際、などの何らかの異常によって軸受からの油分漏れが起こる可能性があるときには、綱車3が回転する毎に測定する、あるいは、測定の間隔を短くする設定とし、それ以外のときは、測定間隔を長くする設定にすることも可能である。このように、軸受の使用状況に応じて測定間隔を変更することにより、摩擦測定部材の摩耗を低減することができる。
【0036】
以上より、エレベータ用巻上機1は、軸受台5に固定された第一軸受6および第二軸受7と、第一軸受6および第二軸受7に回転可能に支持された回転軸4と、回転軸4と一体に回転するように回転軸の軸周りに固定された綱車3と、綱車3の軸方向の一方側に固定されたブレーキディスク11と、ブレーキディスク11が綱車3に固定された部分を除く綱車3の軸方向の一方側の側面、または綱車3の軸方向の一方側の側面と第一軸受6との間の回転軸4の露出面を第一接触面として、綱車3の回転時に摩擦測定部材を第一接触面に接触させて摩擦力を測定する摩擦測定部13を備えることによって、第一軸受6から流出した油分がディスクブレーキ13に付着する前に、軸受から流出した油分を定量的に検知することができる。
【0037】
また、エレベータ用巻上機1は、綱車3の軸方向の他方側の側面、または綱車3の軸方向の他方側の側面と第一軸受6および第二軸受7との間の回転軸4の露出面を第二接触面として、綱車3の回転時に摩擦測定部材を第二接触面に接触させて摩擦力を測定することで、他方側に設けられた第二軸受7から流出した油分がディスクブレーキ13に付着する前に、軸受から流出した油分を定量的に検知することができる。
【0038】
また、エレベータ用巻上機1は、軸受台5、または第一軸受6、または第二軸受7に摩擦測定部13を取り付ける取付部16を備え、取付部16には摩擦測定部材を接触面に押し付ける弾性部材19と、弾性部材19の押し付ける力に抗して摩擦測定部材を接触面から離れる向きに、吸引する電磁石20とを有することによって、摩擦測定時と摩擦非測定時の切り替えを制御でき、摩擦測定部材は所定の間隔の摩擦測定時のみ接触面を摺動するため、摩擦測定部材の摩耗を抑制することができる。
【0039】
また、エレベータ用巻上機1に接続される油分漏れ検知装置30は、エレベータ用巻上機1の摩擦測定部13から出力された摩擦力と基準値となる摩擦力を比較し、軸受から流出した油分の付着の有無を判定する判定部33を備える。これによって、軸受けから流出した油分がディスクブレーキ13に付着する前に、軸受から流出した油分を自動的に定量的に検知することができる。
【0040】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
(付記1)
軸受台に固定された一対の軸受と、
前記一対の軸受に回転可能に支持された回転軸と、
前記回転軸と一体に回転するように前記回転軸の軸周りに固定された綱車と、
前記綱車の軸方向の一方側に固定されたブレーキディスクと、
前記ブレーキディスクが前記綱車に固定された部分を除く前記綱車の軸方向の一方側の側面、または前記綱車の軸方向の一方側の側面と前記一対の軸受との間の前記回転軸の露出面を第一接触面として、前記綱車の回転時に摩擦測定部材を前記第一接触面に接触させて摩擦力を測定する摩擦測定部と、
を備えたエレベータ用巻上機。
(付記2)
前記摩擦測定部は、さらに、
記綱車の軸方向の他方側の側面、または前記綱車の軸方向の他方側の側面と前記一対の軸受との間の前記回転軸の露出面を第二接触面として、前記綱車の回転時に摩擦測定部材を前記第二接触面に接触させて摩擦力を測定する
付記1に記載のエレベータ用巻上機。
(付記3)
前記軸受台または前記軸受に前記摩擦測定部を取り付ける取付部を備えた
付記1または2に記載のエレベータ用巻上機。
(付記4)
前記摩擦測定部は、
前記摩擦測定部材を前記第一接触面または前記第二接触面に押し付ける弾性部材と、
前記弾性部材の押し付ける力に抗して、前記第一接触面または前記第二接触面から前記摩擦測定部材を離れる向きに吸引する電磁石と、
を備えた付記1から3のいずれか1項に記載のエレベータ用巻上機。
(付記5)
前記摩擦測定部は、
前記取付部に取り付けられ、前記第一接触面または前記第二接触面に摺動可能に支持される前記摩擦測定部材を備え、
前記綱車の回転時に、前記摩擦測定部材を前記第一接触面または前記第二接触面に摺動させたときの摩擦力を測定する
付記3に記載のエレベータ用巻上機。
(付記6)
前記摩擦測定部は、
前記摩擦測定部材の後端側を挟んで対向して設けられ、前記摩擦測定部材から押される荷重を検出する一対の検出器を備え、
前記一対の検出器は、前記摩擦測定部材を前記第一接触面または第二接触面に摺動させるときに前記摩擦測定部材の後端側と接触し、前記摩擦測定部材から加わる荷重を検出する
付記1から5のいずれか1項に記載のエレベータ用巻上機。
(付記7)
付記1から6のいずれか1項に記載のエレベータ用巻上機に接続される油分漏れ検知装置であって、
前記エレベータ用巻上機の摩擦測定部から出力された摩擦力と基準値となる摩擦力を比較し、軸受から流出した油分の付着の有無を判定する判定部を備える
油分漏れ検知装置。
【符号の説明】
【0041】
1 エレベータ用巻上機
2 モータ
3 綱車
4 回転軸
5 軸受台
6 第一軸受
7 第二軸受
8、9 フェルトパッキン
10 制動装置
11 ブレーキディスク
12 ブレーキクランパ
13 摩擦測定部
14 カム
15 ロードセル
16 取付部
17 摩擦測定部材取付部
18 電磁石取付部
19 弾性部材
20 電磁石
21 ピン
30 油分漏れ検知装置
31 記録部
32 表示部
33 判定部
34 報知部
【手続補正書】
【提出日】2023-03-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受台に固定された一対の軸受と、
前記一対の軸受に回転可能に支持された回転軸と、
前記回転軸と一体に回転するように前記回転軸の軸周りに固定された綱車と、
前記綱車の軸方向の一方側に固定されたブレーキディスクと、
前記ブレーキディスクが前記綱車に固定された部分を除く前記綱車の軸方向の一方側の側面、または前記綱車の軸方向の一方側の側面と前記一対の軸受との間の前記回転軸の露出面を第一接触面として、前記綱車の回転時に摩擦測定部材を前記第一接触面に接触させて摩擦力を測定する摩擦測定部と、
を備えたエレベータ用巻上機。
【請求項2】
前記摩擦測定部は、さらに、
記綱車の軸方向の他方側の側面、または前記綱車の軸方向の他方側の側面と前記一対の軸受との間の前記回転軸の露出面を第二接触面として、前記綱車の回転時に摩擦測定部材を前記第二接触面に接触させて摩擦力を測定する
請求項1に記載のエレベータ用巻上機。
【請求項3】
前記軸受台または前記軸受に前記摩擦測定部を取り付ける取付部を備えた
請求項2に記載のエレベータ用巻上機。
【請求項4】
前記摩擦測定部は、
前記摩擦測定部材を前記第一接触面または前記第二接触面に押し付ける弾性部材と、
前記弾性部材の押し付ける力に抗して、前記第一接触面または前記第二接触面から前記摩擦測定部材を離れる向きに吸引する電磁石と、
を備えた請求項2に記載のエレベータ用巻上機。
【請求項5】
前記摩擦測定部は、
前記取付部に取り付けられ、前記第一接触面または前記第二接触面に摺動可能に支持される前記摩擦測定部材を備え、
前記綱車の回転時に、前記摩擦測定部材を前記第一接触面または前記第二接触面に摺動させたときの摩擦力を測定する
請求項3に記載のエレベータ用巻上機。
【請求項6】
前記摩擦測定部は、
前記摩擦測定部材の後端側を挟んで対向して設けられ、前記摩擦測定部材から押される荷重を検出する一対の検出器を備え、
前記一対の検出器は、前記摩擦測定部材を前記第一接触面または前記第二接触面に摺動させるときに前記摩擦測定部材の後端側と接触し、前記摩擦測定部材から加わる荷重を検出する
請求項2に記載のエレベータ用巻上機。
【請求項7】
請求項1または2に記載のエレベータ用巻上機に接続される油分漏れ検知装置であって、
前記エレベータ用巻上機の摩擦測定部から出力された摩擦力と基準値となる摩擦力を比較し、軸受から流出した油分の付着の有無を判定する判定部を備える
油分漏れ検知装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0040
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0040】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
(付記1)
軸受台に固定された一対の軸受と、
前記一対の軸受に回転可能に支持された回転軸と、
前記回転軸と一体に回転するように前記回転軸の軸周りに固定された綱車と、
前記綱車の軸方向の一方側に固定されたブレーキディスクと、
前記ブレーキディスクが前記綱車に固定された部分を除く前記綱車の軸方向の一方側の側面、または前記綱車の軸方向の一方側の側面と前記一対の軸受との間の前記回転軸の露出面を第一接触面として、前記綱車の回転時に摩擦測定部材を前記第一接触面に接触させて摩擦力を測定する摩擦測定部と、
を備えたエレベータ用巻上機。
(付記2)
前記摩擦測定部は、さらに、
記綱車の軸方向の他方側の側面、または前記綱車の軸方向の他方側の側面と前記一対の軸受との間の前記回転軸の露出面を第二接触面として、前記綱車の回転時に摩擦測定部材を前記第二接触面に接触させて摩擦力を測定する
付記1に記載のエレベータ用巻上機。
(付記3)
前記軸受台または前記軸受に前記摩擦測定部を取り付ける取付部を備えた
付記2に記載のエレベータ用巻上機。
(付記4)
前記摩擦測定部は、
前記摩擦測定部材を前記第一接触面または前記第二接触面に押し付ける弾性部材と、
前記弾性部材の押し付ける力に抗して、前記第一接触面または前記第二接触面から前記摩擦測定部材を離れる向きに吸引する電磁石と、
を備えた付記2または3に記載のエレベータ用巻上機。
(付記5)
前記摩擦測定部は、
前記取付部に取り付けられ、前記第一接触面または前記第二接触面に摺動可能に支持される前記摩擦測定部材を備え、
前記綱車の回転時に、前記摩擦測定部材を前記第一接触面または前記第二接触面に摺動させたときの摩擦力を測定する
付記3に記載のエレベータ用巻上機。
(付記6)
前記摩擦測定部は、
前記摩擦測定部材の後端側を挟んで対向して設けられ、前記摩擦測定部材から押される荷重を検出する一対の検出器を備え、
前記一対の検出器は、前記摩擦測定部材を前記第一接触面または前記第二接触面に摺動させるときに前記摩擦測定部材の後端側と接触し、前記摩擦測定部材から加わる荷重を検出する
付記2から5のいずれか1項に記載のエレベータ用巻上機。
(付記7)
付記1から6のいずれか1項に記載のエレベータ用巻上機に接続される油分漏れ検知装置であって、
前記エレベータ用巻上機の摩擦測定部から出力された摩擦力と基準値となる摩擦力を比較し、軸受から流出した油分の付着の有無を判定する判定部を備える
油分漏れ検知装置。