(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057747
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】超音波送信制御装置、超音波送信装置および水中探知装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/524 20060101AFI20240418BHJP
G01S 15/10 20060101ALI20240418BHJP
G01S 15/96 20060101ALN20240418BHJP
【FI】
G01S7/524 R
G01S15/10
G01S15/96
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164609
(22)【出願日】2022-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】森下 雅透
(72)【発明者】
【氏名】安川 正浩
【テーマコード(参考)】
5J083
【Fターム(参考)】
5J083AA02
5J083AB01
5J083AC04
5J083AD01
5J083AD04
5J083AE04
5J083AF15
5J083BA02
5J083BB02
5J083BB07
5J083BE26
5J083CA01
5J083CA12
5J083CB13
5J083DC05
(57)【要約】
【課題】超音波の送信距離をより長くすることが可能な超音波送信制御装置、超音波送信装置および水中探知装置を提供する。
【解決手段】信号波と三角波とを比較してPWM波からなる駆動信号を生成する駆動信号生成部DG1などに対し、信号波として、周波数f(t)が以下の数式(1)および数式(2)にしたがって変調する指数チャープ信号を出力する。
f(t)=(f0-1)+Kt・・・・・・(1)
K=(B+C)(1/tau)・・・・・・・・(2)
(fo:開始周波数、K:周波数の増加率、B:チャープ帯域幅、C:1以下の定数、tau:チャープ時間)
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動子に、PWM波からなる駆動信号に基づいて生成された送波信号を入力し、前記振動子から超音波を送信させる超音波送信制御装置であって、
信号波を生成する第1のDDSと、
キャリア波を生成する第2のDDSと、
前記信号波と前記キャリア波とを比較して前記駆動信号を生成するコンパレータと、
を備え、
前記信号波は、周波数f(t)が以下の数式(1)および数式(2)にしたがって変調する指数チャープ信号である、
ことを特徴とする超音波送信制御装置。
f(t)=(f0-1)+Kt・・・・・・(1)
K=(B+C)(1/tau)・・・・・・・・(2)
(fo:開始周波数、K:周波数の増加率、B:チャープ帯域幅、C:1以下の定数、tau:チャープ時間)
【請求項2】
複数の前記振動子のそれぞれに対応した前記駆動信号を生成する複数の駆動信号生成部を備え、
前記複数の駆動信号生成部は、前記コンパレータと、前記コンパレータに入力される前記信号波の位相を制御する位相制御部と、前記コンパレータに入力される前記信号波の振幅を制御する振幅制御部と、を備え、
前記第1のDDS、前記第2のDDSおよび前記複数の駆動信号生成部は、FPGAに搭載されており、
前記位相制御部および前記振幅制御部は、前記FPGAの動作クロック毎に前記信号波の位相制御および振幅制御を行なう、
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波送信制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の超音波送信制御装置と、
前記超音波送信制御装置から入力された駆動信号に基づいて送波信号を生成する複数の送波信号生成部と、
前記送波信号生成部から入力された前記送波信号に基づいて超音波を送信する複数の振動子と、
を備えることを特徴とする超音波送信装置。
【請求項4】
船舶に搭載される水中探知装置であって、
請求項3に記載の超音波送信装置と、
前記超音波送信装置の複数の振動子が超音波を受信することにより発生した受信信号を処理して物標の映像信号を生成し、モニタに表示する信号処理部と、
前記船舶の傾きを検出する傾き検出部と、
を備え、
前記超音波送信装置の位相制御部は、前記傾き検出部により検出された前記船舶の傾き量および傾き方向に応じて前記信号波の位相を制御する、
ことを特徴とする水中探知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波送信制御装置と、超音波送信制御装置の制御により超音波を送信する超音波送信装置と、超音波送信装置を備えた水中探知装置と、に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶に搭載されるスキャニングソナーなどの水中探知装置は、送受波器に組み込まれた複数の振動子により、水中に超音波を送信し、物標によって反射した反射波を受信する。水中探知装置は、受信した反射波に基づいて魚群などの水中の情報に関する画像を生成し、表示装置にその画像を表示する。
【0003】
周知のとおり、水中における超音波の伝搬は、周波数が低いほど減衰が小さくなるため、指向性が広く、かつ、送信距離が長くなる。従来の水中探知装置には、振動子から線形チャープに変調された超音波を送信することにより、超音波の低周波数期間を長くして、超音波の送信距離を長くするものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、線形チャープでは、低周波数の期間が短いため、超音波の送信距離はそれほど長くはならない。
【0006】
そこで本発明は、超音波の送信距離をより長くすることが可能な超音波送信制御装置、超音波送信装置および水中探知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、振動子に、PWM波からなる駆動信号に基づいて生成された送波信号を入力し、前記振動子から超音波を送信させる超音波送信制御装置であって、信号波を生成する第1のDDSと、キャリア波を生成する第2のDDSと、前記信号波と前記キャリア波とを比較して前記駆動信号を生成するコンパレータと、を備え、前記信号波は、周波数f(t)が以下の数式(1)および数式(2)にしたがって変調する指数チャープ信号である、ことを特徴とする超音波送信制御装置。
f(t)=(f0-1)+Kt・・・・・・(1)
K=(B+C)(1/tau)・・・・・・・・(2)
(fo:開始周波数、K:周波数の増加率、B:チャープ帯域幅、C:1以下の定数、tau:チャープ時間)
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の超音波送信制御装置において、複数の前記振動子のそれぞれに対応した前記駆動信号を生成する複数の駆動信号生成部を備え、前記複数の駆動信号生成部は、前記コンパレータと、前記コンパレータに入力される前記信号波の位相を制御する位相制御部と、前記コンパレータに入力される前記信号波の振幅を制御する振幅制御部と、を備え、前記第1のDDS、前記第2のDDSおよび前記複数の駆動信号生成部は、FPGAに搭載されており、前記位相制御部および前記振幅制御部は、前記FPGAの動作クロック毎に前記信号波の位相制御および振幅制御を行なう、ことを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の超音波送信制御装置と、前記超音波送信制御装置から入力された駆動信号に基づいて送波信号を生成する複数の送波信号生成部と、前記送波信号生成部から入力された前記送波信号に基づいて超音波を送信する複数の振動子と、を備えることを特徴とする超音波送信装置である。
【0010】
請求項4に記載の発明は、船舶に搭載される水中探知装置であって、請求項3に記載の超音波送信装置と、前記超音波送信装置の複数の振動子が超音波を受信することにより発生した受信信号を処理して物標の映像信号を生成し、モニタに表示する信号処理部と、前記船舶の傾きを検出する傾き検出部と、を備え、前記超音波送信装置の位相制御部は、前記傾き検出部により検出された前記船舶の傾き量および傾き方向に応じて前記信号波の位相を制御する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1、3および4に記載の発明によれば、信号波に指数チャープ信号を用いてパルス圧縮を行なうとともに、指数チャープ信号のチャープ帯域幅Bに1以下の定数Cを加えることにより、定数Cを加えない従来の一般的な指数チャープよりも低周波の期間を長くすることができるので、より遠くまで超音波を伝搬して物標を検出することが可能である。
【0012】
請求項2、3および4に記載の発明によれば、FPGAにより構成されるデジタル回路上でPWM波からなる駆動信号を生成するととともに、FPGAの動作クロック毎に駆動信号の基となる信号波の位相を制御するので、高い分解能で駆動信号の位相制御を行なうことが可能である。また、FPGAにより構成されるデジタル回路上で駆動信号の基となる信号波の振幅を制御することにより窓関数を掛けることができるので、振動子から送信される超音波のエンベロープを任意に制御して不要波成分を除去することが可能である。さらに、アナログ回路の比率が少なくなり、必要なアナログ回路の構成もシンプルになるので、低コスト化を図ることが可能である。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、傾き検出部により検出された船舶の傾き量および傾き方向に応じて信号波の位相をFPGAの動作クロック毎に制御することができるので、船舶の傾きに応じて超音波の送信方向を迅速に、かつ、高い分解能で調整することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】この発明の実施の形態に係る水中探知装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1に示す超音波送信部の概略構成を示すブロック図である。
【
図3】指数チャープ信号からなる信号波の周波数の遷移を示すグラフである。
【
図4】指数チャープ信号からなる受信信号のパルス圧縮処理後の電力波形を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0016】
図1~
図4は、この発明の実施の形態を示し、
図1は、この実施の形態に係る水中探知装置1の概略構成を示すブロック図である。水中探知装置1は、例えば、船舶に搭載されている魚群探知装置であり、送受波器2と、本体部3と、モニタ4と、操作部5と、傾き検出部6と、を備えている。
【0017】
送受波器2は、複数個の振動子TD1、TD2~TDnを備えており、水中に配置されている。振動子TD1、TD2~TDnは、電気信号(送波信号) により駆動されて超音波を水中へ送信するとともに、物標によって反射した反射波を受信して電気信号(受信信号)に変換する。
【0018】
本体部3は、送受波器2に接続された送受切替部31と、送受切替部31と接続された送信制御部32および受信部33と、受信部33に接続された信号処理部34と、を備えている。送受切替部31は、超音波の送信時には、送信制御部32によって生成された送波信号が、送信制御部32から送受波器2に送られる接続に切り替える。また、送受切替部31は、反射波の受信時には、送受波器2によって超音波から変換された受信信号が、送受波器2から受信部33に送られる接続に切り替える。
【0019】
送信制御部32は、モニタ4および操作部5において設定された条件に基づいて送波信号を生成し、送受切替部31を介して送受波器2へ出力する。なお、送受波器2および送信制御部32は、後述する超音波送信部(超音波送信装置)7を構成している。
【0020】
受信部33は、送受波器2から出力された受信信号をアナログ回路で増幅し、A/D変換してデジタルの受信データを生成し、受信データにパルス圧縮処理を施して信号処理部34に出力する。信号処理部34は、受信部33から出力された受信データを処理し、物標の映像信号を生成する。なお、受信部33では、受信信号をパルス圧縮処理してから増幅し、その後にA/D変換してデジタルの受信データを生成してもよい。
【0021】
モニタ4は、信号処理部34から出力された映像信号に応じた映像を表示画面に表示する。ユーザは、当該表示画面を見て、自船周囲における海中の状態(魚群や海底の状態など)を確認することができる。また、モニタ4には、水中探知装置1の設定画面が表示される。ユーザは、この設定画面を確認しながら操作部5の入力キーなどを操作し、超音波の送信周波数などの各種設定を行なうことができる。
【0022】
傾き検出部6は、例えば、ジャイロセンサなどであり、水平面に対する船舶の傾き量と、傾き方向とを検出し、その検出値を送信制御部32へ出力する。
【0023】
図2は、上記の超音波送信部7の概略構成を示すブロック図である。上述したように、超音波送信部7は、送受波器2および送信制御部32によって構成されている。すなわち、
図2に示す超音波送信部7は、送受切替部31により、送受波器2と送信制御部32とが接続されて構成されている。
【0024】
超音波送信部7を構成する送信制御部32は、本発明の超音波送信制御装置に相当するFPGA321と、複数の送波信号生成部TG1、TG2~TGnと、を備えている。複数の送波信号生成部TG1、TG2~TGnは、FPGA321と、送受波器2の各振動子TD1、TD2~TDnとの間に接続されている。
【0025】
FPGA321は、信号波DDS(第1のDDS)3211と、三角波DDS(第2のDDS)3212と、複数の駆動信号生成部DG1、DG2~DGnと、を備えている。各駆動信号生成部DG1、DG2~DGnと、これに対応する各送波信号生成部TG1、TG2~TGnおよび各振動子TD1、TD2~TDnにより、複数の超音波の送信チャンネルが構成される。
【0026】
三角波DDS3212は、所定の振幅および周波数を有する三角波(キャリア波)を生成する。なお、キャリア波としては、三角波の他に、鋸歯波などを用いてもよい。
【0027】
信号波DDS3211は、所定の振幅および周波数を有する信号波を生成する。信号波DDS3211により生成される信号波は、
図3に示すように、周波数が指数関数的に増加する指数チャープ信号である。より具体的には、信号波は、周波数f(t)が以下の数式(1)および数式(2)にしたがって変調する。なお、下記数式のf0は開始周波数、Kは周波数の増加率、Bはチャープ帯域幅、Cは1以下の定数、tauはチャープ時間を示している。また、チャープ信号を求める一般的な数式は、「f(t)=f0+K
t」であるが、t=0のときにk
t=1となり、最初の周波数がf0+1Hzとなるため、下記数式(1)では、「f0-1」としている。
f(t)=(f0-1)+K
t・・・・・・(1)
K=(B+C)
(1/tau)・・・・・・・・(2)
【0028】
上記の数式(2)では、周波数の増加率Kを求める際に、チャープ帯域幅Bに対して定数Cを加算することで、
図3に示す線形チャープ(図中2点鎖線)および一般的な指数チャープ(図中破線)よりも低周波の期間を長くしている。周知のとおり、水中における超音波の伝搬は、周波数が低いほど減衰が小さくなるため、指向性が広く、かつ、送信距離が長くなる。そのため、信号波を上記の指数チャープ信号にすることにより、より遠くまで超音波を送信して物標を検出することが可能となる。なお、定数Cは、所望の送信距離に応じて1以下の任意の数値を選択することが可能であり、定数Cを大きくするほど、超音波の送信距離を長くすることができる。
【0029】
図4は、上記の指数チャープ信号からなる信号波に基づいて送信された超音波の受信信号を、受信部33によってパルス圧縮処理した電力波形を示している。この電力波形によれば、従来の線形チャープよりもビーム幅は広くなるが、サイドローブの発生を低減することができる。なお、信号波の中心周波数を22.5kHzとした場合における受信信号のパルス圧縮処理した電力波形を示しているが、中心周波数を例えば、17.5kHz、20.0kHzにした場合でも同様の傾向の電力波形を得ることができる。
【0030】
次に、FPGA321の駆動信号生成部DG1、DG2~DGnについて説明する。なお駆動信号生成部DG1、DG2~DGnは、同じ構成を備えているため、以下では、駆動信号生成部DG1について説明し、駆動信号生成部DG2~DGnについての詳しい説明は省略する。
【0031】
駆動信号生成部DG1は、コンパレータ35と、乗算器36、37と、振幅制御部38と、位相制御部39と、を備えている。コンパレータ35は、信号波DDS3211から出力された信号波と、三角波DDS3212から出力された三角波とを比較することにより、PWM波からなる駆動信号を生成する。すなわち、駆動信号生成部DG1は、いわゆる三角波比較方式によってPWM波からなる駆動信号を生成する。
【0032】
なお、三角波は、FPGA321に設けられた周波数逓倍回路(図示せず)により、周波数がN倍(例えば、12倍)されてから、コンパレータ35に入力される。三角波比較方式では、三角波の周波数を高くすることにより、PWM波のパルス幅がより狭くなるように制御することができるので、振動子TD1などから送信される超音波のエンベロープをより細かく制御することが可能となる。なお、三角波の逓倍数は、アナログ回路である送波信号生成部TG1の応答速度に応じて任意の値に設定することができ、逓倍数を大きくするほど、PWM波のパルス幅を狭くすることができる。
【0033】
振幅制御部38は、乗算器36を介して信号波の振幅を制御する。すなわち、振幅制御部38は、信号波の振幅を制御して駆動信号のパルス幅を制御することにより、窓関数を掛けて超音波のエンベロープを任意に制御して不要波成分を除去する。
【0034】
位相制御部39は、乗算器36を介して信号波の位相を制御する。より具体的には、位相制御部39は、傾き検出部6から出力された検出値に応じて、信号波の位相に遅延が生じるように、コンパレータ35への入力タイミングである時間オフセットを制御する。これにより、駆動信号生成部DG1、DG2~DGnから出力される各駆動信号には、船舶の揺動に応じた遅延が発生するので、船舶が揺動した場合でも超音波の指向性を制御して、常に一定方向へ超音波を送信することができる。
【0035】
なお、振幅制御部38および位相制御部39は、FPGA321の動作クロック毎に信号波の振幅制御および位相制御を行なう。これにより、高い分解能で駆動信号の振幅制御および位相制御を行なうことが可能である。
【0036】
送波信号生成部TG1、TG2~TGnは、詳しくは図示しないが、例えば、出力段にローパスフィルタが接続されたプッシュプル型のスイッチング回路によって構成されている。送波信号生成部TG1、TG2~TGnは、各駆動信号生成部DG1、DG2~DGnから出力されたPWM波からなる駆動信号に基づいて送波信号を生成し、各振動子TD1、TD2~TDnへ出力する。各振動子TD1、TD2~TDnは、送波信号に基づいて駆動することにより超音波を発生する。
【0037】
図中、送受波器2の右側には、各振動子TD1、TD2~TDnから送信される超音波の波形と、そのエンベロープとを示している。これらの超音波波形から分かるように、各振動子TD1、TD2~TDnから送信される超音波には、船舶の揺動に応じた遅延が発生している。また、三角波の逓倍数と、信号波の振幅とを任意に制御することにより、エンベロープの立ち上がりと立ち下がりとに傾斜が生じるように制御され、不要波成分が除去される。
【0038】
以上で説明したように、本実施の形態に係る水中探知装置1によれば、信号波に指数チャープ信号を用いてパルス圧縮を行なうとともに、指数チャープ信号のチャープ帯域幅Bに1以下の定数Cを加えることにより、定数Cを加えない従来の一般的な指数チャープよりも低周波の期間を長くすることができるので、より遠くまで超音波を伝搬して物標を検出することが可能である。
【0039】
また、本実施の形態に係る水中探知装置1によれば、FPGA321により構成されるデジタル回路上でPWM波からなる駆動信号を生成するととともに、FPGA321の動作クロック毎に駆動信号の基となる信号波の位相を制御するので、高い分解能で駆動信号の位相制御を行なうことが可能である。また、FPGA321により構成されるデジタル回路上で駆動信号の基となる信号波の振幅を制御することにより窓関数を掛けることができるので、振動子TD1、TD2~TDnから送信される超音波のエンベロープを任意に制御して不要波成分を除去することが可能である。さらに、アナログ回路の比率が少なくなり、必要なアナログ回路の構成もシンプルになるので、低コスト化を図ることが可能である。
【0040】
さらに、本実施の形態に係る水中探知装置1によれば、傾き検出部6により検出された船舶の傾き量および傾き方向に応じて、信号波の位相をFPGA321の動作クロック毎に制御することができるので、船舶の傾きに応じて超音波の送信方向を迅速に、かつ、高い分解能で調整することが可能である。
【0041】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。
【0042】
1 水中探知装置
2 送受波器
3 本体部
31 送受切替部
32 送信制御部
321 FPGA(超音波送信制御装置)
3211 信号波DDS
3212 三角波DDS
33 受信部
34 信号処理部
35 コンパレータ
36、37 乗算器
38 振幅制御部
39 位相制御部
4 モニタ
5 操作部
6 傾き検出部
7 超音波送信部(超音波送信装置)
DG1~DGn 駆動信号生成部
TG1~TGn 送波信号生成部
TD1~TDn 振動子