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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057750
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】水処理システム及び反応槽ユニット
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/08 20230101AFI20240418BHJP
【FI】
C02F3/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164613
(22)【出願日】2022-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】391022418
【氏名又は名称】株式会社西原環境
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100101890
【弁理士】
【氏名又は名称】押野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100098268
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100166420
【弁理士】
【氏名又は名称】福川 晋矢
(74)【代理人】
【識別番号】100150865
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 司
(72)【発明者】
【氏名】小関 進介
(72)【発明者】
【氏名】安中 祐子
(72)【発明者】
【氏名】濱田 眞輔
(72)【発明者】
【氏名】松岡 秀美
(72)【発明者】
【氏名】一宮 一彦
(72)【発明者】
【氏名】森井 萌子
(72)【発明者】
【氏名】董 亜坤
【テーマコード(参考)】
4D003
【Fターム(参考)】
4D003AA12
4D003AB02
4D003BA02
4D003CA02
4D003DA18
4D003DA19
4D003DA30
4D003EA14
4D003EA28
(57)【要約】
【課題】付着微生物を担持した担体を用いた水処理システムにおいて、水槽(生物反応槽)内の水を抜いた際に、水を含んだ担体の重みで反応タンク底部に設置されている散気装置が破損してしまうことを低減することが可能な水処理システムの提供。
【解決手段】付着微生物を担持した担体を用いた水処理システムであって、汚水及び担体2が投入されて生物処理を行う生物反応槽111と、生物反応槽111内に設けられる散気装置112と、散気装置112の上部に設置され、気体を透過させる一方で担体2は通さない散気装置保護部材113と、を備える水処理システム1。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物を担持した担体を用いた水処理システムであって、
汚水及び前記担体が投入されて生物処理を行う生物反応槽と、
前記生物反応槽内に設けられる散気装置と、
前記散気装置の上部に設置され、気体を透過させる一方で前記担体は通さない散気装置保護部材と、を備える水処理システム。
【請求項2】
前記散気装置保護部材が、前記散気装置の側面も覆うように構成されている、請求項1に記載の水処理システム。
【請求項3】
前記生物反応槽内において前記担体を内部に収容しつつ気体及び汚水を透過させる担体収容ケージを1つ以上備える、請求項1に記載の水処理システム。
【請求項4】
前記担体収容ケージが、前記散気装置の上部に配され、前記担体収容ケージの底面が、前記散気装置保護部材として機能する、請求項3に記載の水処理システム。
【請求項5】
前記担体収容ケージの上部が、汚水の水面より上に位置する、請求項3に記載の水処理システム。
【請求項6】
前記担体収容ケージの側面の上部に、汚水の水面の上下にわたって配される整流板が備えられている、請求項3に記載の水処理システム。
【請求項7】
前記整流板の高さ調節機構を備える、請求項6に記載の水処理システム。
【請求項8】
前記担体収容ケージに、吊り上げ係合部が備えられている、請求項3に記載の水処理システム。
【請求項9】
請求項1から8の何れかに記載の水処理システムに用いられる可搬型の反応槽ユニットであって、
前記生物反応槽と、前記散気装置と、前記散気装置保護部材と、前記散気装置に気体を送るブロワと、前記生物反応槽に汚水を流入させる流入管との接続部である流入管接続部と、前記生物反応槽で処理された処理水を流出させる流出管との接続部である流出管接続部と、前記ブロワの制御を行う制御装置と、を備える、反応槽ユニット。
【請求項10】
吊り上げ係合部が備えられている、請求項9に記載の反応槽ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物を担持する担体を用いた水処理システム及びこれに用いる反応槽ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
下水等の汚水を処理する施設では、活性汚泥法と呼ばれる生物処理が一般的に行われている。活性汚泥法では、汚水中の汚濁成分を生物学的に分解する活性汚泥と呼ばれる微生物群を水槽(生物反応槽)内に維持して処理を行う。活性汚泥を蓄えた水槽に汚水を投入し、酸素を供給しながら撹拌することで汚濁成分は生物学的に分解される。汚濁成分の分解を終えた活性汚泥は固液分離され、増えた分は系外に引き抜かれ、残りは生物反応槽内の活性汚泥濃度を保持するために水槽に返される。一方、固液分離で活性汚泥から分離した液体は清浄な処理水となる。
このような活性汚泥法において、活性汚泥を担持する担体を用いる方法があり、特許文献1には、このような活性汚泥を担持する担体を用いた水処理装置に関する記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-313081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水槽(生物反応槽)内には、微生物に酸素を供給するための散気装置や溶存酸素量を測定するためのセンサ等の装置が設けられている。これらの水槽内の装置が故障した際の修理若しくは更新や、保守点検のため、および担体や水槽を洗浄するために、水槽内の水を抜く場合があるが、この際に、水を含んだ担体の重みで反応タンク底部に設置されている散気装置等の装置を破損する場合があった。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、微生物を担持した担体を用いた水処理システムにおいて、水槽(生物反応槽)内の水を抜いた際に、水を含んだ担体の重みで反応タンク底部に設置されている散気装置が破損してしまうことを低減することが可能な水処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(構成1)
微生物を担持した担体を用いた水処理システムであって、汚水及び前記担体が投入されて生物処理を行う生物反応槽と、前記生物反応槽内に設けられる散気装置と、前記散気装置の上部に設置され、気体を透過させる一方で前記担体は通さない散気装置保護部材と、を備える水処理システム。
【0007】
(構成2)
前記散気装置保護部材が、前記散気装置の側面も覆うように構成されている、構成1に記載の水処理システム。
【0008】
(構成3)
前記生物反応槽内において前記担体を内部に収容しつつ気体及び汚水を透過させる担体収容ケージを1つ以上備える、構成1又は2に記載の水処理システム。
【0009】
(構成4)
前記担体収容ケージが、前記散気装置の上部に配され、前記担体収容ケージの底面が、前記散気装置保護部材として機能する、構成3に記載の水処理システム。
【0010】
(構成5)
前記担体収容ケージの上部が、汚水の水面より上に位置する、構成3又は4に記載の水処理システム。
【0011】
(構成6)
前記担体収容ケージの側面の上部に、汚水の水面の上下にわたって配される整流板が備えられている、構成3から5の何れかに記載の水処理システム。
【0012】
(構成7)
前記整流板の高さ調節機構を備える、構成6に記載の水処理システム。
【0013】
(構成8)
前記担体収容ケージに、吊り上げ係合部が備えられている、構成3から7の何れかに記載の水処理システム。
【0014】
(構成9)
構成1から8の何れかに記載の水処理システムに用いられる可搬型の反応槽ユニットであって、前記生物反応槽と、前記散気装置と、前記散気装置保護部材と、前記散気装置に気体を送るブロワと、前記生物反応槽に汚水を流入させる流入管との接続部である流入管接続部と、前記生物反応槽で処理された処理水を流出させる流出管との接続部である流出管接続部と、前記ブロワの制御を行う制御装置と、を備える、反応槽ユニット。
【0015】
(構成10)
吊り上げ係合部が備えられている、構成9に記載の反応槽ユニット。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、微生物を担持した担体を用いた水処理システムにおいて、生物反応槽内の水を抜いた際に、水を含んだ担体の重みで反応タンク底部に設置されている散気装置が破損してしまうことを低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る実施形態1の水処理システムの構成の概略を示すブロック図
図2】実施形態1の水処理システムの反応槽ユニットの概略を示す図
図3】実施形態2の水処理システムの反応槽ユニットの概略を示す図
図4】実施形態2の担体収容ケージを示す図
図5】担体収容ケージの別の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化する際の一形態であって、本発明をその範囲内に限定するものではない。
【0019】
<実施形態1>
図1は、本発明に係る実施形態1の水処理システムの構成の概略を示すブロック図である。また、図2は、本実施形態の水処理システムで使用される反応槽ユニットの概要を示す図であり、図2(a)は一部を透過的に示した側面図、図2(b)は上面図である。
水処理システム1は、微生物を担持する担体2を用いた水処理システムであって、
汚水及び担体2が投入されて生物処理を行う生物反応槽111と、
生物反応槽111内に設けられる散気装置112と、
散気装置112に気体を送るブロワ116と、
散気装置112の上部に設置され、散気装置112を保護する散気装置保護部材113と、
生物反応槽111に汚水を流入させる流入管114と、
生物反応槽111で処理された処理水を流出させる流出管115と、
生物反応槽111に設けられたDOセンサ(不図示)からのセンサ値(溶存酸素量)に基づくなどして、ブロワ116の制御等を行う制御装置117と、
生物反応槽111で処理された処理水に含まれる微細粒子などの浮遊固形物を凝集させる凝集装置12と、
凝集装置12からの処理水(凝集溶液)を固液分離する固液分離装置(ろ過装置)13と、
を備えている。
【0020】
本実施形態の水処理システム1では、可搬型の反応槽ユニット11として、ユニット化された生物反応槽を用いている。
反応槽ユニット11は、生物反応槽111と、散気装置112と、散気装置保護部材113と、ブロワ116と、流入管114との接続部である流入管接続部1141と、流出管115との接続部である流出管接続部1151、制御装置117と、を備えている。
なお、本実施形態の生物反応槽111は、パンチングスクリーンによって区切られた、第1槽111aと第2槽111bの2槽に分かれており(図2参照)、各槽の負荷に適した微生物を担体2(なお、見易さの観点等から図では担体2を一部だけ記載するものとしている)に付着させ、高負荷処理を可能にしている。第1槽111aの散気装置112は、第2槽111bよりも多く配置されている。また、第1槽111aと第2槽111bの2槽のそれぞれの下流側には担体分離装置が設けられている(不図示)。担体分離装置は、単体を流出させないようにするパンチングスクリーンと、当該パンチングスクリーンの下部付近に設けられた散気装置によって構成され、散気装置によるバブリングによって、パンチングスクリーンに担体が張り付くこと等が抑止される。
【0021】
凝集装置12は、攪拌装置を備えた凝集混和槽を有し、生物反応槽111で処理された処理水に凝集剤を添加して攪拌し、処理水に含まれている浮遊固形物を凝集させる装置である。本実施形態では、可搬型の凝集ユニットが用いられている。
固液分離装置13は、本実施形態では、可搬型のドラムフィルターユニット(ろ過装置)が用いられており、目幅40μmのフィルターが設けられた回転ドラムで処理水とSSの固液分離を行う。
本実施形態の水処理システム1では、生物反応槽111への担体2の充填率が40%~60%であり、生物反応槽内の担体による微生物保持量が多く、汚水処理に必要な微生物量を生物反応槽内に保持し続けることができるため、生物反応槽の容量を従来の1/8~1/6と小さくすることができる。又、流出した浮遊汚泥の返送が不要である。なお且つ、生物反応槽越流水に凝集剤を添加し、固形物を大きくしているため、固液分離をろ過装置で充分に行えるため、最終沈殿池に替えてドラムフィルターユニットを用いることが可能なものである。
【0022】
散気装置保護部材113は、本実施形態では脚部を有する金網で構成されている。脚部によって散気装置112の上部に金網が位置するものである。
図2に示されるように、本実施形態では、第1槽111aと第2槽111bのそれぞれにおいて、2つの散気装置保護部材113が設けられている。なお、本発明をこれに限るものではなく、1つの槽に1つの散気装置保護部材が設けられるものや、3つ以上の散気装置保護部材が設けられるものであってもよい。
以下で説明するように、散気装置保護部材113は、水を含んだ担体の重みを保持するものであるため、それに必要な強度をもって形成される。“必要な強度”は、各水槽の処理能力の設定に基づく担体の量等に基づいて、製品ごとに適宜決定されるものである。
【0023】
本実施形態の水処理システム1における水処理の概略は以下の通りである。
1.微生物が付着した担体を蓄えた生物反応槽111に下水や排水などの汚水を流入管114から継続的に投入する。なお、汚水は、最初沈殿池から流入されるものであり、必要に応じて一定以上の大きさの固形物を除去するためのスクリーン槽を介して、生物反応槽111に汚水が投入される。
2.生物反応槽111の底部に設けられた散気装置112によって、微生物に酸素を供給しながら撹拌することで、汚濁成分を生物学的に分解する。
3.流出管115から流出される、汚濁成分が浄化された処理水が、凝集装置12へ供給され、凝集剤を添加することで、浮遊固形物を大きな塊とする。この凝集溶液が固液分離装置13へと供給され、固液分離装置13において固液分離処理が行われる。
4.固液分離装置13で凝集装置12の凝集水から分離した液体は清浄な処理水となる。
なお、生物処理法の概念自体は、従来と同様のものであるため、ここでのこれ以上の詳しい説明を省略する。
【0024】
前述のごとく、本実施形態の水処理システム1は、反応槽ユニット11(及び凝集装置12や固液分離装置13)を可搬型のユニットとしている。生物処理に必要な設備が集約されたユニットとしているため、例えば、災害時や、既存の水処理施設の補修や改築の期間における代用、季節的な要因などにより一時的に排水負荷が増大する場合への対応などにおいて、仮設の水処理施設としてすぐに利用することが可能であり、非常に利便性の高いものである。
なお、反応槽ユニット11(及び凝集装置12や固液分離装置13)において、可搬性をより向上するために、フックやこれに係合する金具(吊り上げ係合部)を備えさせるようにするとよい。また、トレーラー等の車両に積載して運搬できるよう、反応槽ユニットは、車両の制限に関する法令や国際海上コンテナに関するISO規格に準拠した寸法とするのがよく、例えば40フィート型コンテナの外形寸法に準じて、長さ12.192m、高さ2.591m、幅2.438m(若しくはこれ以下の外形寸法)とするとよい。
【0025】
反応槽ユニット11は、上記のごとく仮設の水処理施設として高い利用性を有しており、一定期間の使用後に撤収され、別の時期や別の場所で再利用されることになる。
撤収する際には、次回の使用に備えて、反応槽内の水を抜き、担体の洗浄・取出し・乾燥を行い、反応槽ユニット11の清掃、散気装置等の点検などを行う必要がある。
本実施形態で使用されている担体2自体は軽量(水よりも比重が軽く水に浮く)であるが、使用時は水に濡れて、微生物が付着したり、間隙に水が入ったりしているため、多量の担体の総重量は大きなものとなる。従って、反応槽内の水を抜くことによって担体が散気装置に積み重なる状態になると、これらの水を含んだ担体の重みで散気装置が破損してしまう恐れがある。
これに対し、本実施形態の水処理システム1(反応槽ユニット11)では、散気装置保護部材113が、散気装置112の上部に設置されているため、水を抜いた際にも担体2は散気装置保護部材113によって保持され、散気装置112に対して積み重なることが低減されるため、担体の重みで散気装置が破損してしまうことを低減することができる。
【0026】
以上のごとく、本実施形態の水処理システム1(反応槽ユニット11)によれば、生物反応槽内の水を抜いた際に、水を含んだ担体の重みで反応タンク底部に設置されている散気装置が破損してしまうことを低減することが可能である。
【0027】
本実施形態では、散気装置保護部材が金網で構成されるものを例としたが、本発明をこれに限るものではなく、散気装置保護部材は「気体や汚水(処理水)を透過させる一方で担体は通さない(具体例としては、穴の直径(若しくは目幅)が20mm以下)」ように構成されるものであればよく、例えば、パンチングメタルで構成するもの等であってもよい。
【0028】
散気装置保護部材は、少なくとも、散気装置がある範囲において散気装置の上部に設けられるものであればよいが、散気装置の側面も覆うことで散気装置保護部材が槽の底面に接するようにする(或いは散気装置保護部材を六面体として散気装置を全体的に覆う)ようにしても良い。散気装置保護部材を散気装置の上部だけに設けるようにした場合、装置の通常の運用中に、担体が散気装置保護部材の下(散気装置との間のすき間など)に入りこんでしまう可能性がある。このように隙間などに入り込んで流動性がなくなってしまった担体は、担体同士の接触等による余剰な微生物の剥離などが起きにくくなり、増殖、堆積した微生物の内部では十分な酸素の供給が行われず、微生物の腐敗等による処理効率の低下につながる可能性がある。散気装置の側面も覆うこと等により、散気装置保護部材の下部に担体が溜まらないように構成することで、このような問題の発生を低減することができる。
同様の目的で、散気装置保護部材を、生物反応槽111の底面部において散気装置よりも上部となる面を全面的に覆うように構成してもよい。生物反応槽111の底面部分を全面的に覆うことにより、それより下に担体が入り込まないようにすることができるものである。
【0029】
<実施形態2>
図3は、実施形態2の水処理システムの反応槽ユニットの概略を示す図であり、図3(a)は一部を透過的に示した側面図、図3(b)は上面図である。水処理システムの全体構成としての概念は、実施形態1の水処理施設1(図1)と同様であるため、ここでの説明を省略する。
また、実施形態1の反応槽ユニット11と同様の構成については、実施形態1と同一の符号を使用し、ここでの説明を簡略化若しくは省略する。
【0030】
本実施形態の反応槽ユニット11-1は、担体2が外部に流出しないように内部に収容する担体収容ケージ(金網のカゴ)118を、生物反応槽111内に備えている。
図4は、担体収容ケージ118を示す斜視図である。
担体収容ケージ118は、その基本態様が直方体状の金網のカゴであり、内部に担体(水を含んだ担体)を保持して持ち上げることができる強度で形成するために、アングル材によって格子状の骨組み構造が構成され、当該骨組み構造に対して金網が設けられることにより、直方体状の金網のカゴとなる構成を有している。担体収容ケージ118は脚部を有し、図3(a)に示されるように、当該脚部によって散気装置112の上部に担体収容ケージ118が位置するものである。なお、生物反応槽111内に設置された担体収容ケージ118は、その上部側(好ましくは汚水面より上)において生物反応槽111に対して固定される(例えば、槽上部に設けられた係合部に対して、担体収容ケージ118に設けられた係合部を係合させる等)。上部側で固定することにより、生物反応槽111内の水を抜かなくても、担体収容ケージ118を引き上げる(そのための固定を解除する)ことができる。
【0031】
担体収容ケージ118は、生物反応槽111内に配置された際に、その上部が、汚水の水面よりも上となる高さをもって形成される。
担体収容ケージ118の上部(上面)が、水面よりも低いと(即ち、担体収容ケージ118が水没する場合)、散気装置からの散気等によって押し上げられた担体が、担体収容ケージ118の上面に張り付くように位置して、流動性を失う恐れがある。担体の流動性が失われると、前述のように、付着微生物の腐敗等による処理効率の低下につながる可能性がある。これに対し、担体収容ケージ118の上部(上面)が水面より高い位置となるように構成することで、担体の流動性を高くすることができるものである。
【0032】
また、図4に示されるように、担体収容ケージ118の上部には、担体収容ケージ118の周りを囲むようにして、担体収容ケージ118の側面に整流板1181が備えられている。整流板1181は、担体収容ケージ118内に配置された際に、汚水の水面の上下にわたって位置するように配される。本実施形態では、担体収容ケージ118の側面の上部から、担体収容ケージ118の高さの1/3~1/2となる範囲が覆われるように、整流板1181が設けられる。
担体収容ケージ118は「金網カゴ」であり、従って汚水(処理水)は担体収容ケージ118を透過して担体収容ケージ118の内外に流出入可能である。担体収容ケージ118は、内包する担体への酸素の供給を効率的にするために散気装置112の上部に配置されるため、汚水(処理水)は担体収容ケージ118の下側付近から流入して上部へと向かう流れを形成する。この汚水(処理水)の流れは、水面付近で水平方向へ向かう流れとなり、上述のように、担体収容ケージ118の上部は水面よりも上となる高さを有しているため、整流板1181がない場合、担体収容ケージ118の上側の側面から、流出する流れとなる。この場合、汚水(処理水)の流れにのった担体が、担体収容ケージ118の上部の側面に張り付くように位置して、流動性を失う恐れがある。これにより、上述と同様の現象が生じ、処理効率の低下につながる可能性がある。これに対し、担体収容ケージ118の上部側面を囲うように整流板1181を設けていることにより、水面付近で水平方向へ向かう流れとなった汚水(処理水)が、整流板1181にぶつかることで下方へと流れを変えることになり、これによって、担体収容ケージ118の内部で還流を生じさせることができる。当該構成により、担体の流動性を高くすることができるものである。
【0033】
担体収容ケージ118の内外への汚水(処理水)の流出入を効率よく行わせつつ、且つ、上記の担体収容ケージ118の内部の還流を効率よく形成するためには、整流板1181の設置範囲の設定(基本的には整流板の設置高さ)が最適化されることが望まれる。
従って、整流板1181の高さを調節させるための高さ調節機構を備えさせるようにするとよい。
本実施形態では、整流板1181を上下方向にスライド可能に設置させるガイド溝が担体収容ケージ118に形成されており、ねじ止め等の係止手段によって整流板1181を任意の高さに設置できる構成を有している。また、整流板1181の上部に取っ手1181-1を備えることにより、整流板1181の脱着や設置位置の調節作業の作業性が向上されるように構成している。なお、「整流板の高さ調節機構」は、整流板の高さの設定を変更することができるものであればよく、例えば、高さが異なる整流板を交換するようなものであってもよい。また、整流板は、水の流れを完全に遮蔽する(汚水を通さない)ものに限られるものではなく、例えばその一部において汚水を透過させることができるものであってもよい。
【0034】
担体収容ケージ118の上部(角部の4か所)には、担体収容ケージ118を吊り上げる際に使用するフックやこれに係合する金具である吊り上げ係合部1182が備えられている。
【0035】
本実施形態の水処理システム(反応槽ユニット11-1)によれば、担体収容ケージ118によって、担体2が高い流動性を有しつつその内部に保持されるため、高い処理能力が得られると共に、仮設の水処理施設としての利用後の撤収時等における、水抜き、担体の洗浄・取出し・乾燥、反応槽ユニットの清掃、散気装置等の点検などの作業の作業性が大幅に向上される。
即ち、担体2は担体収容ケージ118に収容されているため、担体収容ケージ118を引き上げることで、担体2を生物反応槽111から取り出すことができるため、担体の洗浄・取出し・乾燥の作業性が大幅に向上されるとともに、水を抜いた際に、水を含んだ担体の重みで反応タンク底部に設置されている散気装置が破損してしまうことも防止することができる。なお、担体が水を含んだ状態で担体収容ケージ118を引き上げると、重量が大きく、クレーン等による吊り上げ時に大きな力を要すると共に、担体収容ケージ118(例えば吊り上げ係合部1182やこれに関連した箇所など)にも高い強度を要する(コスト高になる)ことになる。従って、先に水を抜いてしばらく放置しておくことで担体の水切りを行ってから、担体収容ケージ118を引き上げるようにしてもよい。この場合、水を抜いた際に、担体収容ケージ118(の底面)によって担体が保持され、水を含んだ担体の重みによる散気装置の破損が防止されるものであり、従って、「担体収容ケージの底面が、散気装置保護部材として機能する」ものである。
【0036】
また、本実施形態の水処理システム(反応槽ユニット11-1)によれば、担体収容ケージ118によって、担体2が高い流動性を有しつつその内部に保持されるため、実施形態1の担体分離装置や、特許文献1で記載されているような担体を上流側へと戻すための返送管といった装置を設ける必要がない。通常、生物反応槽内で浮遊する担体は、処理水の全体的な流れ(水槽に投入された汚水が生物処理されつつ、処理水として沈殿池等の固液分離施設へと排出される流れ)に沿って下流側へと流れて、下流側で溜まってしまうため、担体を上流側へと戻すためのなんらかの手段を講じる必要があるものであったが、本実施形態の水処理システム(反応槽ユニット11-1)によれば、このような担体返送手段を別途設ける必要がないため、非常に有用である。
なお、当該機能のみを主眼とした場合、担体収容ケージの側面が生物反応槽の底面にまで至っていれば(担体が外部へ流出しないようになっていれば)、担体収容ケージの底面部は必ずしも必要ない。
【0037】
なお、本実施形態では、担体収容ケージ118が「金網カゴ」であるもの例としたが、本発明をこれに限るものではなく、担体収容ケージは「気体や汚水(処理水)を透過させる一方で、担体は通さない(具体例としては、穴の直径(若しくは目幅)が20mm以下)」ように構成されるものであればよく、例えば、パンチングメタルで構成するもの等であってもよい。
また、本実施形態では、担体収容ケージ118が直方体状のものを例としているが、本発明をこれに限るものではなく、内部に担体を保持させつつ、上記説明した概念を適用可能な容器状のものであれば、担体収容ケージの形状は任意のもの(例えば円筒状の形状など)であってよい。
また、本実施形態では、担体収容ケージ118が全面的に(4方の側面、並びに、上面及び下面が)金網とされるものを例としているが、側面又は上面の何れか、若しくは各面の一部分において、金網(気体や汚水が透過できる部材)でない面若しくは箇所があってもよい。
【0038】
本実施形態では、担体収容ケージ118が、生物反応槽111の第1槽111aと第2槽111bのそれぞれに対して2つずつ設けられているものを例としたが、本発明をこれに限るものではなく、生物反応槽1に1つの担体収容ケージが設けられるものであってもよいし、3つ以上の担体収容ケージを設けるようにしてもよい。
【0039】
本実施形態では、散気装置が生物反応槽に設けられているものを例としたが、これに替えて若しくはこれに加えて、担体収容ケージに散気装置を備えさせるようにしてもよい。
図5には、そのようなものの一例を示した。図5の担体収容ケージ118-1は、カゴの底面の下に、散気装置1183を備え、また、ブロワ等と接続するための通気管1184を備えている。
【0040】
本実施形態では、担体収容ケージが上面も有しているもの(上面も金網があるもの)を例としているが、本発明をこれに限るものではない。上述のように、担体収容ケージの上部が水面よりも上となる高さをもって形成されている場合には、上面は必ずしも必要無い。
【0041】
各実施形態では、反応槽ユニットを可搬型のユニットとしていることにより、仮設の水処理施設として繰り返しの利用を可能とし得るものを例としているが、本発明をこれに限るものではなく、本設の水処理施設に対しても上記説明した概念を適用することができる。
即ち、可搬型等ではない、本設の水処理施設においても、水槽内に設置されている各種の装置の修理、保守点検、更新等のために水を抜く場合があり、従って「散気装置保護部材」を設けることで、水を含んだ担体の重みによる散気装置等の装置の破損を低減することができる。
また、可搬型等ではない本設の水処理施設においても、「担体収容ケージ」を設けることにより、担体が高い流動性を有しつつその内部に保持されるため、高い処理能力が得られると共に、担体返送手段を別途設ける必要がないため有用である。
各実施形態では、固液分離装置についても可搬型のユニット(ドラムフィルターユニット)であるものを例としたが、本発明をこれに限るものではなく、固液分離が可能な任意の装置や施設(例えば最終沈殿池など)を利用するものであってよい。
【符号の説明】
【0042】
1...水処理システム
11...反応槽ユニット
111...生物反応槽
112...散気装置
113...散気装置保護部材
1141...流入管接続部
1151...流出管接続部
116...ブロワ
117...制御装置
118...担体収容ケージ
1181...整流板
1182...吊り上げ係合部
2...担体
図1
図2
図3
図4
図5