(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057755
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/058 20100101AFI20240418BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20240418BHJP
H01M 50/609 20210101ALI20240418BHJP
H01M 50/636 20210101ALI20240418BHJP
【FI】
H01M10/058
H01M10/04 Z
H01M50/609
H01M50/636
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164626
(22)【出願日】2022-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】森 秀人
(72)【発明者】
【氏名】小山 修平
(72)【発明者】
【氏名】竹岡 駿
(72)【発明者】
【氏名】四本 賢佑
【テーマコード(参考)】
5H023
5H028
5H029
【Fターム(参考)】
5H023AA03
5H023BB01
5H023BB05
5H023CC30
5H028BB02
5H028BB03
5H028BB05
5H028BB10
5H028BB15
5H028HH08
5H029AK03
5H029AK11
5H029AK16
5H029AK18
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM05
5H029AM07
5H029CJ02
5H029CJ05
5H029CJ13
5H029CJ16
5H029CJ28
5H029HJ14
(57)【要約】 (修正有)
【課題】内圧の最高到達点を低く抑えることができる二次電池の製造方法を提供する。
【解決手段】電解液の注入、注入口の封止、初充電、及び高温エージングの工程を含む二次電池の製造方法であって、初充電と同時、直前又は直後に二次電池を加熱し、高温エージングの前にガス抜き封止をする工程を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解液の注入、注入口の封止、初充電、及び高温エージングの工程を含む二次電池の製造方法であって、
前記初充電と同時、直前又は直後に二次電池を加熱し、前記高温エージングの前にガス抜き封止をする工程を有する、二次電池の製造方法。
【請求項2】
前記初充電の前、及び、前記ガス抜き封止と高温エージングとの間の少なくとも一方に、さらなる加熱及びガス抜き封止の工程を有する、請求項1に記載の二次電池の製造方法。
【請求項3】
前記加熱、前記初充電、及び、前記高温エージングによるそれぞれの昇温の大きさを50℃以内にする、請求項1又は2に記載の二次電池の製造方法。
【請求項4】
前記ガス抜き封止は減圧封止である、請求項1又は2に記載の二次電池の製造方法。
【請求項5】
前記電解液の注入において電解質の温度を環境温度よりも高い温度で注入を行う、請求項1又は2に記載の二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は二次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電池ケースを両側から挟みこみ、拘束状態で充電及びガス抜き、高温エージングを行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
二次電池の製造過程において初充電や高温エージング中にガス発生等で内圧が上昇し、内圧に耐えきれなくなった外装体の脆弱部が開放してしまい、内部電解液が漏れ、電池品質を担保できないことがある。内圧の上昇の具体的原因として、電解液と活物質とが反応した際のガス発生、昇温による蒸気圧、昇温による内部の気体膨脹、昇温による液内溶存ガス飽和量低下による脱気等が挙げられる。
このような内圧上昇に対応して品質を担保するために、脆弱部となる封止部の強度をあげ、セル内圧に耐えるようにする。しかしながら、封止の強度を強くすることが困難な場合は、初充電後に封止を開放しガスを抜いて再度封止をする。ただし、初充電より高温エージングの方が内圧上昇が非常に大きいため、結局は封止部に高い耐圧強度が必要となる。
【0005】
そこで本開示は、内圧の最高到達点を低く抑えることができる二次電池の製造方法を提供することを課題する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願は、電解液の注入、注入口の封止、初充電、及び高温エージングの工程を含む二次電池の製造方法であって、初充電と同時、直前又は直後に二次電池を加熱し、高温エージングの前にガス抜き封止をする工程を有する、二次電池の製造方法を開示する。
【0007】
初充電の前、及び、ガス抜き封止と高温エージングとの間の少なくとも一方に、さらなる加熱及びガス抜き封止の工程を有するようにしてもよい。
【0008】
加熱、初充電、及び、高温エージングによるそれぞれの昇温の大きさを50℃以内にしてもよい。
【0009】
ガス抜き封止は減圧封止としてもよい。
【0010】
電解液の注入において電解質の温度を環境温度よりも高い温度で注入を行ってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、二次電池の製造過程において、内圧上昇を平準化して最高到達点を低く抑えることができるので、封止強度を強固にしたり、ガス発生を抑制するための材料や前工程条件を縛るような対策を要することなく、工程温度条件管理のみで内圧上昇をコントロールすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は二次電池10の概要を説明する図である。
【
図2】
図2は二次電池の製造方法S100の流れを示す図である。
【
図4】
図4は二次電池の製造方法S110の流れを示す図である。
【
図5】
図5は実施例における内圧の変化を表す図である。
【
図6】
図6は比較例における内圧の変化を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.二次電池の構成
二次電池としては電解液を含む二次電池であれば特に限定されることはなく本開示の製造方法を適用することができるが、典型的に次のような構成を有するリチウムイオン二次電池が挙げられる。
図1にその1つの形態例である二次電池10を概念的に示した。
【0014】
二次電池10は、複数の単位セル11が積層され、これらを2つの拘束板12で挟み込むようにして固定されている。2つの拘束板12は単位セル11よりも大きくされており、単位セル11からはみ出して対向するように配置された部位で、2つの拘束板12を渡すように配置された不図示の棒状部材と棒状部材に配置されたボルトにより固定される。当該ボルトの締結力を調整することにより単位セル11への押圧力を調整することができる。
【0015】
1.1.単位セル
二次電池10に具備される各単位セル11には、単位蓄電要素が複数積層されてなり、その端部が端部部材により結束されてなる。単位蓄電要素は正極、負極、セパレータを有する。さらに、各単位セル11にはその端面の一部に注液口11aを具備している。
【0016】
[単位蓄電要素]
<正極>
正極は、正極集電体と正極活物質層とが積層されており、例えば矩形状の電極である。
正極集電体は、リチウムイオン二次電池の放電又は充電の間、正極活物質層に電流を流し続けるための化学的に不活性な電気伝導体である。正極集電体を構成する材料としては、例えば、金属材料、導電性樹脂材料、導電性無機材料等を用いることができる。導電性樹脂材料としては、例えば、導電性高分子材料又は非導電性高分子材料に必要に応じて導電性フィラーが添加された樹脂等が挙げられる。集電体は、前述した金属材料又は導電性樹脂材料を含む1以上の層を含む複数層を備えてもよい。集電体の表面は、公知の保護層により被覆されてもよい。集電体の表面は、メッキ処理等の公知の方法により処理されてもよい。正極集電体は、例えば、箔状、シート状、フィルム状、メッシュ状等の形態に形成されていてもよい。正極集電体を金属箔とする場合、正極集電体として、例えば、アルミニウム箔、銅箔、ニッケル箔、チタン箔又はステンレス鋼箔等を用いることができる。集電体は、上記金属の合金箔又はクラッド箔であってもよい。
【0017】
正極活物質層は、リチウムイオン等の電荷担体を吸蔵及び放出し得る正極活物質を含む。正極活物質としては、層状岩塩構造を有するリチウム複合金属酸化物、スピネル構造の金属酸化物、ポリアニオン系化合物など、リチウムイオン二次電池の正極活物質として使用可能なものを採用すればよい。また、2種以上の正極活物質を併用してもよい。
【0018】
<負極>
負極は、負極集電体と負極活物質層とが積層されており、例えば矩形状の電極である。
負極集電体は正極集電体と同様に考えることができる。
負極活物質層は、リチウムイオンなどの電荷担体を吸蔵及び放出可能である単体、合金又は化合物であれば特に限定はなく使用可能である。例えば、負極活物質としてLiや、炭素、金属化合物、リチウムと合金化可能な元素もしくはその化合物等が挙げられる。炭素としては天然黒鉛、人造黒鉛、あるいはハードカーボン(難黒鉛化性炭素)やソフトカーボン(易黒鉛化性炭素)を挙げることができる。人造黒鉛としては、高配向性グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ等が挙げられる。リチウムと合金化可能な元素の例としては、シリコン(ケイ素)及びスズが挙げられる。
【0019】
<セパレータ>
セパレータは正極と負極との間に配置され、正極と負極とを隔離して両極の接触による短絡を防止しつつ、リチウムイオン等の電荷担体を通過させる部材である。セパレータはその一方の面に正極の正極活物質層が接するように積層され、他方の面に負極の負極活物質層が接するように積層される。
セパレータは、例えば、電解質を吸収保持するポリマーを含む多孔性シート又は不織布であってもよい。セパレータを構成する材料としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂の他、ポリアミド、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリアニリン、ポリエチレンテレフタラート、ポリスチレンセルロースなど、種々の樹脂材料が挙げられる。セパレータは、単層構造又は多層構造を有してもよい。多層構造は、例えば、接着層、耐熱層としてのセラミック層等を有してもよい。セパレータには電解質が含浸されている。
【0020】
セパレータに含浸される電解質としては、例えば、非水溶媒と非水溶媒に溶解した電解質塩とを含む液体電解質(電解液)などが挙げられる。
電解液は、非水溶媒と非水溶媒に溶解した電解質とを含んでいる。非水溶媒としては、環状カーボネート類、環状エステル類、鎖状カーボネート類、鎖状エステル類、エーテル類等の公知の溶媒を使用できる。また、これらの材料を単独、または二種以上組合せて用いてもよい。電解質としては、LiClO4、LiAsF6、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(FSO2)2、LiN(CF3SO2)2等の公知のリチウム塩を使用できる。
【0021】
[注液口]
注液口11aは単位セル11の端面に形成され、単位セル11のセパレータに含浸される電解液の注入口となる。従って注液口11aから各セパレータには電解液が流れる流路が形成されている。ここで、電解液が流れる流路はセパレータ毎に設定されており独立している。従って具備されるセパレータの数の独立の流路があり、注液口11aも当該流路の数だけ設けられている。
この注液口11aは不図示の封止材が被せられることで封止され、内部の気密が保たれている。この封止が内圧上昇等により解除され気密が破れて漏れが生じやすい状況にある。これに対して本開示によれば内圧の最高到達点を抑えることができるので封止を維持することに有利である。封止の方法は特に限定されることはないが、例えば、注液口を形成する枠体の端面に樹脂シート(ポチエチレンとポリエチレンテレフタレートとの積層シート)、金属板(アルミニウム)等の封止材を溶着することで注液口11aを塞いで封止することができる。
【0022】
2.二次電池の製造方法
2.1.形態1
図2には形態1にかかる二次電池の製造方法S100の流れを説明する図を示した。二次電池の製造方法S100は液注入S101、封止S102、加熱初充電S103、ガス抜き封止S104、高温エージングS105、及び、冷却S106の各工程を具備している。以下に各工程について説明する。
【0023】
2.1.1.液注入
液注入S101では単位セル11に電解液を注入する。液注入S101では、例えば、液注入前の二次電池がチャンバが入れられ、注液口11aに液供給管が接続される。液供給管に配置されたバルブを開いた真空引き管を介して真空ポンプによってチャンバ内の真空引きが行われ、バルブが閉じられてチャンバ内が減圧状態に保たれる。その状態で液供給管のバルブが開けられ、電解液がチャンバ内の二次電池(セル)へ送り込まれて電解液が単位セル11に注入される。
【0024】
なお、液注入のときの電解液の温度を周囲温度よりも高くしてもよい。これによれば後述する加熱による昇温を補助し、初期状態で内圧上昇を抑制する条件に資することができ、本開示の効果を高めることができる。
【0025】
2.1.2.封止
封止S102では、単位セル11に電解液が注入された状態で封止をする。封止の方法は特に限定されることはないが、例えば、注液口11aを形成する枠体の端面に樹脂シート(ポチエチレンとポリエチレンテレフタレートとの積層シート)、金属板(アルミニウム)等の封止材を溶着することで注液口11aを塞いで封止することができる。
【0026】
また、封止S102では減圧封止を行ってもよい。これは単位セル11内を減圧してから封止を行う。減圧封止では、単位セル11に電解液が注入された状態で単位セル11の内部を減圧し、封止をする。減圧の方法は特に限定されることはないが、注液口11aからの真空引きや製造中の二次電池を真空チャンバに入れること等を挙げることができる。
減圧された状態で注液口11aを封止する。封止の方法は上記と同様に考えることができる。
【0027】
なお、封止の後には漏れ検査(リーク検査)を行うようにしてもよい。漏れ検査では漏れの有無を検査する。漏れの有無の検査は公知の通りで行うことができるが、本形態では電解液成分を検知することが好ましい。これにより実際に漏れを防ぐ必要がある物質の漏れを直接に検知するため、必要な漏れ検査の精度を高めることができる。漏れ検査で漏れの検査対象とする部位は特に限定されることはないが、注液口11aを検査対象とすることが好ましい。漏れが生じる場合の多くは注液口であることによる。二次電池全体を漏れ検査の対象とする場合には二次電池を所定の空間内に配置して空間内から気体を吸引してここに電解液成分が含まれるかを調べる。注液口11aを検査対象とする場合には注液口11aを覆うような部材を配置し、この部材内の気体を吸引してここに電解液成分が含まれるかを調べる。これによりさらに精度を高めることができる。
【0028】
2.1.3.加熱初充電
加熱初充電S103では、加熱及び初充電を行う。すなわち、加熱の工程と初充電の工程とを同時に行う。
加熱は注液口11aが封止された状態で二次電池10(単位セル11)を加熱して昇温する。この加熱による昇温により単位セル11の内部圧力(内圧)が上昇する。具体的にはこの加熱により単位セル11内の電解液の蒸気圧や単位セル11内に含まれる気体の膨張により内圧が上昇する。
【0029】
二次電池の加熱方法は特に限定されることはないが二次電池を室温が調整された恒温室に配置して所定の時間の経過させる方法を挙げることができる。
【0030】
加熱により達するべき具体的な温度は特に限定されることはなく単位セル11の内圧が外部圧力に比べて高まれば効果を得ることはできるが、より効果を高める観点からは加熱前の状態に対して5℃以上50℃以下の範囲で高いことが好ましい。より好ましくは10℃以上40℃以下である。さらに好ましくは10℃以上30℃以下である。単位セル11に含まれる電解質の種類等によって加熱昇温による内圧上昇の程度は若干異なるが、発明者らの知見によれば、上記したような通常用いられる電解質であれば上記した範囲に昇温することによって顕著な効果を奏するものとなる。
一方、加熱による昇温の上限は特に限定されることはないが、温度を上げるほど内圧が高くなるため温度を上げすぎると最高到達点を上げてしまう可能性があるため二次電池を60℃以上としないことが好ましい。
【0031】
ここで目的とする温度に至ったか否かについては、恒温室に入っていた時間と二次電池10の単位セル11の積層体うち最も積層方向端部に配置された集電板(正極集電板又は負極集電板)における温度分布との関係を予め調べておき、実際の二次電池の製造及び漏れ検査では恒温室の温度と時間で目的とする温度に至ったかを判定する。
ここで予め調べておく温度と時間との関係は、
図3に示したように当該集電板10aの中央(a)、集電板10aの1つの隅部(b)、集電板10aの矩形における長辺の中央(c)、集電板10aの矩形における短辺の中央(d)の各温度の全てが目的の温度に至るまでの時間とする。
【0032】
加熱と同時に行う初充電は特に限定されることなく公知の通りである。初充電によっても、充電によりガスが発生し、単位セル11の内圧及び温度が若干上昇する。
【0033】
本開示では高温エージングより前の段階で加熱をすることでこの段階での内圧を上昇させ、後で行われる高温エージングでの内圧の上昇を抑えることができる。その結果、二次電池の製造過程における内圧の最高到達点を下げることが可能となる。
【0034】
本形態では加熱と初充電とを同時に行う態様であるが、加熱と初充電とを同時でなくずらして行ってもよい。例えば初充電の直前に加熱を行ってもよいし、初充電の直後に加熱を行ってもよい。
【0035】
2.1.4.ガス抜き封止
ガス抜き封止S104では、封止を解いてガス抜きを行い、さらに封止をする。
ガス抜きについては、この段階では加熱初充電S103で内圧が上げられているので、本工程では封止S102で取り付けた封止材を除去することにより自然にガス抜きを行うことができる。
また、封止については、上記封止S102と同様に考えることができる。従ってガス抜きをしてそのまま封止してもよいし、減圧封止をしてもよい。
【0036】
2.1.5.高温エージング
高温エージングS105では、二次電池10を例えば65℃の高温で15時間静置するような手順で慣らしを行う。高温エージングの方法は特に限定されることはなく、公知の方法により行うことができる。
ただし、本形態では上記したように初充電時の加熱(加熱初充電S103)及びガス抜きによる減圧(ガス抜き封止)を経ているため、高温エージングS105で到達する内圧の最高到達点を従来よりも低く抑えることができる。
【0037】
2.1.6.冷却
冷却S106では高温エージングS105で上昇させた温度を冷却する。冷却の方法は特に限定されることはなく公知の方法でよく、自然冷却でも強制冷却でもよい。
【0038】
2.2.形態2
図4には形態2にかかる二次電池の製造方法S110の流れを説明する図である。二次電池の製造方法S110は液注入S111、封止S112、加熱S113、ガス抜き封止S114、加熱初充電S115、ガス抜き封止S116、第一高温エージングS117、ガス抜き封止S118、第二高温エージングS119、冷却S120の各工程を具備している。以下に各工程について説明する。
【0039】
2.2.1.液注入
液注入S111は上記した液注入S101と同様に考えることができる。
【0040】
2.2.2.封止
封止S112は上記した封止S102と同様に考えることができる。
【0041】
2.2.3.加熱
加熱S113では二次電池を加熱して昇温する。加熱については上記した加熱初充電S103の説明のうち加熱についての説明と同様に考えることができる。これにより二次電池10の内部圧力が上昇する。
【0042】
2.2.4.ガス抜き封止
ガス抜き封止S114は上記したガス抜き封止S104と同様に考えることができる。これにより二次電池10の内部圧力を減圧できる。
【0043】
2.2.5.加熱初充電
加熱初充電S115は上記した加熱初充電S103と同様に考えることができる。なお、本形態の二次電池の製造方法S110では本工程を加熱を伴う初充電としているが、本形態では別途加熱S113を具備しているため、必ずしも加熱を伴わなくてもよい。すなわち、ここでは加熱初充電の代わりに加熱を伴わない初充電とすることもできる。
【0044】
2.2.6.ガス抜き封止
ガス抜き封止S116は上記したガス抜き封止S104と同様に考えることができる。ただし、加熱初充電S115で加熱を伴わないで初充電を行った場合にはこの工程を行わないことができる。
【0045】
2.2.7.第一高温エージング~第二高温高温エージング
第一高温エージングS117~第二高温エージングS119では、上記した高温エージングS105を2回の高温エージングに分けて行う。具体的には第一高温エージングS117を行い、その後ガス抜き封止S118を経て第二高温エージングS119を行う。なお、ガス抜き封止S118は上記ガス抜きS104と同様に考えることができる。
第一高温エージングS117、第二高温エージングS119における温度及び時間は特に限定されることはなく、最終的に必要な高温エージングがなされればよい。各エージングの温度と時間とをそれぞれ必要に応じて設定することができ、例えば第一高温エージングS117による高温エージングの温度を第二高温エージングS119による高温エージングの温度よりも低く設定し、それぞれ同じ時間のエージングを行う等を挙げることができる。
また、本工程では高温エージングを2回に分けたがこれに限らず3回以上に分けてもよい。
【0046】
このように、高温エージングを複数回に分けて行い、各回の高温エージングの間にガス抜き封止工程を入れることにより各回の内部圧力の最高到達点を抑えることができ、二次電池の製造方法S110の全体としてもさらに最高到達点を抑えることが可能である。
【0047】
2.2.8.冷却
冷却S120は上記した冷却S106と同様に考えることができる。
【0048】
3.効果等
本開示の二次電池の製造方法によれば、二次電池の製造過程において、内圧上昇を平準化して最高到達点を低く抑えることができるので、封止強度を強固にしたり、ガス発生を抑制するための材料や前工程条件を縛るような対策を要することなく、工程温度条件管理のみで内圧上昇をコントロールすることができる。例えば、封止強度を従来に比べて低く抑えることが可能となる。
【0049】
なお、本開示の二次電池の製造方法において、複数の加熱の工程(加熱初充電における加熱昇温を含む。)が備えられている場合には昇温の程度は各工程で概ね同じであることが好ましい。限定されることはないが、各複数の加熱間で昇温の程度の差が5℃以内が好ましく、より好ましくは3℃以内である。
【0050】
4.実施例
実施例では、工程を変えて具体的な温度管理を行って内圧の変化を調べた。
【0051】
4.1.使用した二次電池(各例共通)
各例では次の仕様の二次電池を用いた。
・電池容量:14Ah
・拘束圧:100kPa
・正極目付:22.3mg/cm2
・負極目付:11.4mg/cm2
・電極面積:4300mm2
・残空間体積:拘束前49mL、拘束後46mL
・構造:正極、負極極、セパレータから構成される捲回体と、封口体(フタ)を集電体で溶接したものを、アルミニウムケースに封入し、封口体とケースを溶接し、電解液を注入し、封口体の注液口を溶接にて封止
【0052】
4.2.実施例1
実施例1では上記二次電池の製造方法S100に倣って各工程を行った。各工程における温度は表1に示した。本例では後述するように内圧を調べる試験としたので、内圧の上昇があっても封止による気密が破れないようにするため封止材としてステンレス製のボルトを用いた。
【0053】
4.3.実施例2
実施例2では実施例1の封止の工程における封止を減圧封止に変更した以外は実施例1と同じ条件とした。各工程における温度は表1に示した。減圧封止における減圧は、チャンバ内に単位セルを入れ、注液口に部分チャンバを接続し、チャンバー内を減圧することで行った。チャンバ減圧後、部分チャンバにて単位セル内部を減圧し、その後に注液口を封止した。
【0054】
4.4.実施例3
実施例3では上記二次電池の製造方法S110に倣って各工程を行った。各工程における温度は表1に示した。本例でも後述するように内圧を調べる試験としたので、内圧の上昇があっても封止による気密が破れないようにするため封止材としてステンレス製のボルトを用いた。
【0055】
4.5.比較例1
比較例1では加熱の工程を含まない初充電とした以外は実施例1と同じとした。
【0056】
4.6.比較例2
比較例2では比較例1からさらにガス抜き封止を行わないものとした。
【0057】
【0058】
4.7.結果
図5、
図6には各例について、工程ごとに二次電池の内圧を比で表した。各図において横軸に工程名、縦軸に内圧の比を表している。縦軸は、封止前の大気圧開放時のスタートの液注入時を0とし、比較例2の高温エージング後の最高到達圧力を1.0として各工程における内圧を比率で表した。
【0059】
図5、
図6からわかるように各実施例によれば各比較例に対して内圧の最高到達点を抑えることができる。表2には比較例2の内圧の最高到達圧力を1.0としたときの各例における内圧の最高到達圧力を比率で示した。封止強度は内圧の最高到達圧力を考慮して設定することができるので、本開示のよれば封止強度を低く抑えることが可能となる。
【0060】
【符号の説明】
【0061】
10…二次電池、11…単位セル、11a…注液口、12…拘束板、S100…二次電池の製造方法、S110…二次電池の製造方法