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  • 特開-水墨画複製方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057756
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】水墨画複製方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 5/50 20060101AFI20240418BHJP
【FI】
G06T5/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164629
(22)【出願日】2022-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】奥窪 宏太
(72)【発明者】
【氏名】高橋 英一
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 志津子
(72)【発明者】
【氏名】仲山 遵
(72)【発明者】
【氏名】大橋 未季
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 信博
【テーマコード(参考)】
5B057
【Fターム(参考)】
5B057AA20
5B057BA02
5B057BA25
5B057CA01
5B057CA08
5B057CA12
5B057CA16
5B057CB01
5B057CB08
5B057CB12
5B057CB16
5B057CC03
5B057CE03
5B057CE11
5B057DA04
5B057DB02
5B057DB05
5B057DB09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】和紙の経年変化、染みなどの汚れを除去することができる水墨画の複製方法を提供する。
【解決手段】方法は、水墨画を可視光撮影して可視光画像を取得しS1、水墨画を赤外線撮影して赤外線画像を取得しS2、参照する赤外線画像に対して輪郭線強調処理を行いS3、赤外線画像を参照して、可視光画像における水墨画の汚れを除去しS4、汚れ除去された可視光画像の濃度調整を行いS5、濃度調整した可視光画像をグレースケールに変換しS6、グレースケールに変換した可視光画像を印刷するS7。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水墨画を赤外線撮影して赤外線画像を取得する第1のステップと、
前記水墨画を可視光撮影して可視光画像を取得する第2のステップと、
前記赤外線画像を参照して、前記可視光画像における前記水墨画の汚れを除去する第3のステップと
を有する水墨画複製方法。
【請求項2】
前記赤外線画像に対して輪郭線強調処理を行う第4のステップを有し、
前記第3のステップにおいて参照する前記赤外線画像は、前記第4のステップにより輪郭線強調処理されている、
請求項1に記載の水墨画複製方法。
【請求項3】
前記第3のステップにより汚れが除去された前記可視光画像を、グレースケールに変換する第5のステップを有する、
請求項1または請求項2に記載の水墨画複製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水墨画複製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
絵画を撮像装置により撮像して画像データを生成し、該画像データに基づいた印刷により絵画を複製する複製方法がある。例えば、特許文献1が開示している複製方法では、ラインスキャンカメラを用いて絵画を撮像する際に、複数の所定の方向から照明して、絵画の凹凸による陰影から表面の高さを算出している。そして、撮像した画像データと、算出した高さに基づいて、絵画の複製を印刷により生成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-143972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の絵画の複製方法においては、水墨画を複製する際に、水墨画が描かれた和紙の経年変化、染みなどの汚れも複製してしまうことがあるという問題がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、和紙の経年変化、染みなどの汚れを除去することができる水墨画の複製方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は上述した課題を解決するためになされたもので、本発明の一態様は、水墨画を赤外線撮影して赤外線画像を取得する第1のステップと、前記水墨画を可視光撮影して可視光画像を取得する第2のステップと、前記赤外線画像を参照して、前記可視光画像における前記水墨画の汚れを除去する第3のステップとを有する水墨画複製方法である。
【0007】
また、本発明の他の一態様は、上述した水墨画複製方法であって、前記赤外線画像に対して輪郭線強調処理を行う第4のステップを有し、前記第3のステップにおいて参照する前記赤外線画像は、前記第4のステップにより輪郭線強調処理されている。
【0008】
また、本発明の他の一態様は、上述した水墨画複製方法であって、前記第3のステップにより汚れが除去された前記可視光画像を、グレースケールに変換する第5のステップを有する。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、和紙の経年変化、染みなどの汚れを除去して、水墨画を複製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】この発明の一実施形態による水墨画複製方法の概要を示す模式図である。
図2】同実施形態における水墨画複製方法を示すフローチャートである。
図3】同実施形態における水墨画G1の可視光画像の例である。
図4】同実施形態における水墨画G1の赤外線画像の例である。
図5】同実施形態における水墨画G1の赤外線画像の別の例である。
図6】同実施形態における水墨画G1の輪郭線強調された赤外線画像の例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。図1は、この発明の一実施形態による水墨画複製方法の概要を示す模式図である。図1において、水墨画G1は、複製対象の水墨画である。カメラC1は可視光撮影をするカメラである。カメラC2は赤外線撮影をするカメラである。画像処理装置A1は、画像編集アプリケーション(Photoshop(登録商標)など)を実行するコンピュータである。印刷機P1は、インクジェット方式などの印刷機である。
【0012】
カメラC1は、水墨画G1を可視光撮影して可視光画像を取得する。カメラC2は、水墨画G1を赤外線撮影して赤外線画像を取得する。水墨画G1を描くのに用いられた墨は、赤外線撮影により撮影されるが、水墨画G1が描かれている和紙の経年劣化、水墨画G1に付いた染みなどの汚れは、赤外線撮影により撮影されない、あるいは可視光撮影よりも薄く撮影される。このことを利用して、可視光画像に写っているものが、赤外線画像にもあるか否かで、和紙の経年変化や染みなどの汚れなのか、墨で描かれたものなのかを判断することができる。画像処理装置A1のオペレータは、カメラC2が取得した赤外線画像を参照して、カメラC1が取得した可視光画像における水墨画G1の汚れを除去する。
【0013】
なお、オペレータは、赤外線画像に対して画像処理装置A1による輪郭線強調処理を行い、可視光画像における汚れを除去する際に、輪郭線強調された赤外線画像を参照してもよい。また、赤外線画像は、可視光画像よりも解像度、階調度が低い画像であってもよい。例えば、可視光画像の解像度800dpi階調度16ビットに対し、赤外線画像の解像度400dpi階調度14ビットであってもよい。印刷機P1は、汚れが除去された可視光画像に基づき、水墨画G1の複製を印刷する。
【0014】
図2は、本実施形態における水墨画複製方法を示すフローチャートである。まず、カメラC1を用いて、水墨画G1の可視光撮影が行われる(ステップS1)。次に、カメラC2を用いて、水墨画G1の赤外線撮影が行われる(ステップS2)。これらステップS1、S2における撮影は、水墨画G1を複数の領域に分割して撮影し、カメラC1、C2の画角の中心部のみを用いるようにしてもよい。このようにすることで、高解像度、かつ、歪の少ない画像を得ることができる。なお、上述の領域の数は、カメラC1とカメラC2とで異なっていてもよい。また、ステップS1は、ステップS2または後述するステップS3よりも後で行ってもよいし、ステップS1は、ステップS2、あるいはステップS2およびステップS3と並行して行ってもよい。
【0015】
次に、オペレータは、画像処理装置A1を用いて、ステップS2の赤外線撮影で得られた赤外線画像に対して、輪郭線強調処理(シャープネス)を施す(ステップS3)。これにより、水墨画が描かれている部分と、描かれていない部分との境界を判別し易くすることができる。次に、オペレータは、ステップS3で輪郭線強調された赤外線画像を参照して、画像処理装置A1を用いて、ステップS1の可視光撮影で得られた可視光画像の汚れ除去を行う(ステップS4)。
【0016】
このとき、オペレータは、可視光画像に写っているもののうち、赤外線画像に写っていないものを、汚れと判断して除去する。汚れの除去には、画像編集アプリケーションのコピースタンプツール、覆い焼きツールなどを用いる。例えば、階調変化の少ない、あるいは無い部分の汚れについては、コピースタンプツールにより、同じような階調となっている部分からのコピーにより汚れを除去する。また、水墨画を描いたときの刷毛の隙間があるような細かい部分の汚れについては、覆い焼きツールにより、汚れ部分の階調を明るくする。なお、ステップS4において、輪郭線強調された赤外線画像に代えて、輪郭線強調処理されていない赤外線画像を参照するようにしてもよいし、両者を参照するようにしてもよい。
【0017】
次に、オペレータは、ステップS4で汚れ除去をした可視光画像の濃度調整を行う(ステップS5)。具体的には、画像編集アプリケーションにより、元の水墨画G1のグラデーションが主観的に再現されるように、トーンカーブを補正する。このとき、いくつかの階層ごとにトーンカーブを補正し、各階層を抽出したものを合成することで、濃度調整が行われるようにしてもよい。
【0018】
次に、オペレータは、ステップS5で濃度調整した可視光画像をグレースケールに変換する(ステップS6)。このとき、何も描かれていない部分の色(紙の色)が、K5%(黒5%)となるように設定する。これにより、印刷した結果において、階調が「0」の部分と「1」の部分の間で、階調が大きくジャンプしてしまうことを防ぐことができる。
【0019】
次に、印刷機P1を用いて、ステップS6でグレースケールに変換した可視光画像を印刷する(ステップS7)。印刷する和紙には、耐水化材などを吹き付けておいてもよい。
【0020】
図3は、本実施形態における水墨画G1の可視光画像の例である。図4は、本実施形態における水墨画G1の赤外線画像の例である。例えば、図3の領域Rに対応する図4の領域には、何も写っていないことから、図3の領域Rに写っているのは汚れであることが分かる。このように、赤外線画像を参照することで、可視光画像に写っているもののうち、いずれが汚れであり、いずれが墨により描かれたものであるかを判断することができる。
【0021】
図5は、本実施形態における水墨画G1の赤外線画像の別の例である。図6は、本実施形態における水墨画G1の輪郭線強調された赤外線画像の例である。図6の例は、図5の例に対して輪郭線強調処理を施したものである。このように、赤外線画像に対して輪郭線強調処理を施すことで、水墨画が描かれている部分と、描かれていない部分との境界を判別し易くすることができる。
【0022】
このように、本実施形態における水墨画複製方法は、水墨画G1を可視光撮影して可視光画像を取得する第1のステップ(ステップS1)と、水墨画G1を赤外線撮影して赤外線画像を取得する第2のステップ(ステップS2)と、赤外線画像を参照して、可視光画像における水墨画の汚れを除去する第3のステップ(ステップS4)とを有する。
これにより、赤外線画像には映らない和紙の経年変化、染みなどの汚れを除去して、水墨画を複製することができる。
【0023】
また、本実施形態における水墨画複製方法は、さらに、赤外線画像に対して輪郭線強調処理を行う第4のステップ(ステップS3)を有し、第3のステップにおいて参照する赤外線画像は、第4のステップにより輪郭線強調処理されている。
これにより、赤外線画像において水墨画が描かれている部分と、描かれていない部分との境界を判別し易くすることができる。赤外線画像において水墨画が描かれていない部分と対応する可視光画像の部分に写っているものは汚れであるので、可視光画像に写っているものが汚れか否かをより判別し易くすることができる。
【0024】
また、本実施形態における水墨画複製方法は、さらに、第3のステップにより汚れが除去された可視光画像を、グレースケールに変換する第5のステップ(ステップS6)を有する。
これにより、黒い墨のみで描かれた水墨画に色が混じるのを防ぐことができる。
【0025】
以上、この発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0026】
A1 画像処理装置
C1、C2 カメラ
G1 水墨画
P1 印刷機
図1
図2
図3
図4
図5
図6