(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057768
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】取り外し治具及び取り外し方法
(51)【国際特許分類】
B25B 27/14 20060101AFI20240418BHJP
H02G 3/30 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
B25B27/14 Z
H02G3/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164653
(22)【出願日】2022-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】308011351
【氏名又は名称】大和化成工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131048
【弁理士】
【氏名又は名称】張川 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100174377
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100215038
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 友子
(72)【発明者】
【氏名】加藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】澤田 直洋
(72)【発明者】
【氏名】平川 勝也
(72)【発明者】
【氏名】村本 俊教
【テーマコード(参考)】
3C031
5G363
【Fターム(参考)】
3C031EE59
5G363AA16
5G363AA20
5G363BA02
5G363DA13
5G363DA15
5G363DA16
5G363DC02
(57)【要約】
【課題】板状部材の貫通孔に挿入固定された係合部を、容易に取り外し可能な取り外し治具及び取り外し方法を提供する。
【解決手段】 板状部材100の貫通孔101に固定部材10の係合部15が挿入固定された固定構造1において、挿入固定された係合部15に対し、取り外し治具400の対向する挟持部410、410の各押付部411を、対をなす弾性係止片12、12の側からそれぞれ支柱11を挟むように板状部材100と皿状当接部13との間に進入させ、進入先で各弾性係止片12を押し付けて係止状態を解除し、係合部15を抜き取り可能にする一方、挟持部410、410が狭まる過程でそれぞれの凹部412が貫通孔内位置決め部14A、14Aを収容する。
【選択図】
図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔が設けられる板状部材と、
上下方向に延びる支柱と、前記支柱を左右方向から挟むように対をなし、それぞれが支柱上端側から支柱下端側に向けて延びる弾性係止片と、前記支柱の下端側から前記支柱を取り囲みつつ外向き斜め上方へと拡径する皿状当接部と、を有した係合部が設けられ、前記係合部が、前記支柱に対し上下方向と左右方向の双方に直交する前後方向の第一側に偏った位置で左右側に延び出す第一側挿入部を有する固定部材と、
を備え、前記貫通孔に前記支柱と前記第一側挿入部と各前記弾性係止片を支柱上端側から挿入することにより、各前記弾性係止片が、前記支柱に接近する弾性変形を伴う形で通過し、所定係合位置に到達したとき弾性復帰して前記貫通孔の周辺部に対し上側から係止し、かつ前記皿状当接部が、当該周辺部に対し下側から環状に当接する形で前記係合部が係合固定された固定構造に対し、当該係合固定を解除して前記板状部材から前記固定部材を取り外すための取り外し治具であって、
互いが対向する挟持部と、それら挟持部を後方側で連結する連結部と、それら挟持部を互いの対向方向に接近させるための操作部と、を有し、
各前記挟持部は、前記対向方向の内向きに突出する押付部と、前記押付部よりも後方側で前記対向方向の内側に、前記第一側挿入部を収容可能に形成された凹部と、を有し、
前記板状部材に係合固定された前記係合部に対し前記取り外し治具を前後方向の第一側に配置し、前記支柱を左右方向から挟むように前記挟持部を離間させ、その対向間を狭める取り外し操作を前記操作部に行うことにより、各前記押付部が前記板状部材と前記皿状当接部との間に進入し、進入先で各前記弾性係止片を前記支柱側に押し付けて弾性変形させ、各前記弾性係止片の係止状態を解除することで前記係合部を抜き取り可能にするとともに、前記挟持部の対向間が狭まっていく過程で各前記凹部に各前記第一側挿入部が収容されることを特徴とする取り外し治具。
【請求項2】
前記係合部は、前記支柱に対し上下方向と左右方向の双方に直交する前後方向の第一側に偏った位置で左右に配置される第一側位置決め部と、前後方向の第一側とは逆の第二側に配置される第二側位置決め部と、を含み、前記貫通孔に挿入されたときにはその内壁面に前記第一側位置決め部及び前記第二側位置決め部が当接するように設けられ、
前記第一側挿入部は、前記第一側位置決め部である請求項1に記載の取り外し治具。
【請求項3】
各前記挟持部は、前記凹部よりも後方側に前方側を臨むように立ち上がるガイド立面を有し、
各前記ガイド立面は、前記操作部に前記取り外し操作を行ったとき、各前記凹部に各前記第一側挿入部が収容されるよりも前に、前記板状部材に環状に当接する前記皿状当接部の前後方向の第一側に対し当接し、以降、前記係止状態が解除されるまで、前記皿状当接部の前後方向の第一側との当接を継続可能である請求項1に記載の取り外し治具。
【請求項4】
各前記挟持部は、前記凹部よりも後方側に前記対向方向の内向きに膨出した側方位置決め部を有し、
前記取り外し操作は、前記板状部材に係合固定された前記係合部に対し前後方向の第一側に配置された前記取り外し治具を、対をなす前記挟持部を所定の離間状態とした上で、その対向間の中心部を前記支柱に向かうよう前後方向に沿って接近させ、その接近において各前記側方位置決め部が前記板状部材に環状に当接する前記皿状当接部の環状当接部に対し当接する当接位置にて前記操作部を操作し、それら挟持部の対向間を狭めるものである請求項1に記載の取り外し治具。
【請求項5】
対向する前記挟持部は、前記所定の離間状態となるよう位置決めする離間位置決め部を備える請求項4に記載の取り外し治具。
【請求項6】
対をなす長手状部材は、前端部に前記挟持部、後端部に前記操作部がそれぞれ形成されるとともに、それら長手状部材が交差する形で配置され、その交差部において連結されるとともに、
その連結部は、各前記挟持部が前記対向方向において接近及び離間できるよう所定の回転軸周りに回動可能に連結する請求項1に記載の取り外し治具。
【請求項7】
対をなす長手状部材は対向配置され、前端部にそれぞれ前記挟持部が形成されるとともに、後端部同士が、それら挟持部が前記対向方向において接近及び離間できるよう弾性変形可能に連結され、
その連結部は、自然状態においてそれら挟持部が前記所定の離間状態となるよう連結する請求項4に記載の取り外し治具。
【請求項8】
貫通孔が設けられる板状部材と、
上下方向に延びる支柱と、前記支柱を左右方向から挟むように対をなし、それぞれが支柱上端側から支柱下端側に向けて延びる弾性係止片と、前記支柱の下端側から前記支柱を取り囲みつつ外向き斜め上方へと拡径する皿状当接部と、を有した係合部が設けられ、前記係合部が、前記支柱に対し上下方向と左右方向の双方に直交する前後方向の第一側に偏った位置で左右側に延び出す第一側挿入部を有する固定部材と、
を備え、前記貫通孔に前記支柱と前記第一側挿入部と各前記弾性係止片を支柱上端側から挿入することにより、各前記弾性係止片が、前記支柱に接近する弾性変形を伴う形で通過し、所定係合位置に到達したとき弾性復帰して前記貫通孔の周辺部に対し上側から係止し、かつ前記皿状当接部が、当該周辺部に対し下側から環状に当接する形で前記係合部が係合固定された固定構造に対し、取り外し治具を用いて当該係合固定を解除して前記板状部材から前記固定部材を取り外す取り外し方法であって、
前記取り外し治具は、互いが対向する挟持部と、それら挟持部を後方側で連結する連結部と、それら挟持部を互いの対向方向に接近させるための操作部と、を備え、
各前記挟持部には、前記対向方向の内向きに突出する押付部と、前記押付部よりも後方側で前記対向方向の内側に、前記第一側挿入部を収容可能に形成された凹部と、が設けられ、
前記板状部材に係合固定された前記係合部に対し前記取り外し治具を前後方向の第一側に配置し、前記支柱を左右方向から挟むように前記挟持部を離間させる第一ステップと、
離間した前記挟持部の対向間を狭める取り外し操作を前記操作部に行うことにより、各前記押付部が前記板状部材と前記皿状当接部との間に進入し、進入先で各前記弾性係止片を前記支柱側に押し付けて弾性変形させ、各前記弾性係止片の係止状態を解除することで前記係合部を抜き取り可能にする第二ステップと、
を有し、前記第二ステップにおける前記挟持部の対向間が狭まっていく過程で各前記凹部に各前記第一側挿入部が収容されることを特徴とする取り外し方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は取り外し治具及び取り外し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤーハーネスを保持する車両用の保持部材(固定部材)には、ワイヤーハーネスを保持する保持部と、板状部材(車両用パネル材)の貫通孔に係合挿入する係合部が設けられる(特許文献1参照)。
【0003】
具体的にいえば、係合部には、支柱と、支柱を挟むように対をなしそれぞれが支柱の上端側から下端側に向けて延びる弾性係止片と、支柱の下端側から支柱を取り囲みつつ支柱の径方向の外向き斜め上方へと広がる皿状当接部と、が設けられる。支柱及び弾性係止片が板状部材の貫通孔に対し支柱上端側から挿入されると、対をなす弾性係止片が、支柱に接近する内向きの弾性変形を伴う形で貫通孔を通過し、所定係合位置に到達したときに弾性復帰(完全に復帰した状態でなくてもよい)して、それら弾性係止片の先端の各係止部が、貫通孔の内周壁を外向きに押し付け、かつ貫通孔の周辺部を挿入方向の奥側から係止した係止状態となるとともに、皿状当接部が、貫通孔の周辺部に対し挿入方向の手前側から環状に当接した当接状態となる。これにより、係合部が板状部材を挿入方向において挟んだ係合固定状態となる。
【0004】
こうした係合部による保持部材(固定部材)の固定構造において、係合部を板状部材から取り外すためには、従来であれば、例えば板状部材と皿状当接部との間にマイナスドライバー等の治具を差し入れて、貫通孔から下方に突出している各弾性係止片の突出先端部を、それぞれ支柱側に押し付けて弾性変形させることにより係合を解除し、その上で挿入方向の逆向きに抜き取ることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、こうした従来のやり方では、互いに強く密着した板状部材と皿状当接部との間にマイナスドライバー等の治具を差し入れることが難しく、容易に取り外すことはできない。また、治具を差し入れる位置がずれることで、各弾性係止片の突出先端部を押し付けることができず係合解除に失敗する等、作業性も悪い。
【0007】
本発明の課題は、板状部材の貫通孔に挿入固定された係合部を、容易に取り外し可能な取り外し治具及び取り外し方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0008】
上記課題を解決するための取り外し治具は、
貫通孔が設けられる板状部材と、
上下方向に延びる支柱と、前記支柱を左右方向から挟むように対をなし、それぞれが支柱上端側から支柱下端側に向けて延びる弾性係止片と、前記支柱の下端側から前記支柱を取り囲みつつ外向き斜め上方へと拡径する皿状当接部と、を有した係合部が設けられ、前記係合部が、前記支柱に対し上下方向と左右方向の双方に直交する前後方向の第一側に偏った位置で左右側に延び出す第一側挿入部を有する固定部材と、
を備え、前記貫通孔に前記支柱と前記第一側挿入部と各前記弾性係止片を支柱上端側から挿入することにより、各前記弾性係止片が、前記支柱に接近する弾性変形を伴う形で通過し、所定係合位置に到達したとき弾性復帰して前記貫通孔の周辺部に対し上側から係止し、かつ前記皿状当接部が、当該周辺部に対し下側から環状に当接する形で前記係合部が係合固定された固定構造に対し、当該係合固定を解除して前記板状部材から前記固定部材を取り外すための取り外し治具であって、
互いが対向する挟持部と、それら挟持部を後方側で連結する連結部と、それら挟持部を互いの対向方向に接近させるための操作部と、を有し、
各前記挟持部は、前記対向方向の内向きに突出する押付部と、前記押付部よりも後方側で前記対向方向の内側に、前記第一側挿入部を収容可能に形成された凹部と、を有し、
前記板状部材に係合固定された前記係合部に対し前記取り外し治具を前後方向の第一側に配置し、前記支柱を左右方向から挟むように前記挟持部を離間させ、その対向間を狭める取り外し操作を前記操作部に行うことにより、各前記押付部が前記板状部材と前記皿状当接部との間に進入し、進入先で各前記弾性係止片を前記支柱側に押し付けて弾性変形させ、各前記弾性係止片の係止状態を解除することで前記係合部を抜き取り可能にするとともに、前記挟持部の対向間が狭まっていく過程で各前記凹部に各前記第一側挿入部が収容されることを特徴とする。
【0009】
上記課題を解決するための取り外し方法は、
貫通孔が設けられる板状部材と、
上下方向に延びる支柱と、前記支柱を左右方向から挟むように対をなし、それぞれが支柱上端側から支柱下端側に向けて延びる弾性係止片と、前記支柱の下端側から前記支柱を取り囲みつつ外向き斜め上方へと拡径する皿状当接部と、を有した係合部が設けられ、前記係合部が、前記支柱に対し上下方向と左右方向の双方に直交する前後方向の第一側に偏った位置で左右側に延び出す第一側挿入部を有する固定部材と、
を備え、前記貫通孔に前記支柱と前記第一側挿入部と各前記弾性係止片を支柱上端側から挿入することにより、各前記弾性係止片が、前記支柱に接近する弾性変形を伴う形で通過し、所定係合位置に到達したとき弾性復帰して前記貫通孔の周辺部に対し上側から係止し、かつ前記皿状当接部が、当該周辺部に対し下側から環状に当接する形で前記係合部が係合固定された固定構造に対し、取り外し治具を用いて当該係合固定を解除して前記板状部材から前記固定部材を取り外す取り外し方法であって、
前記取り外し治具は、互いが対向する挟持部と、それら挟持部を後方側で連結する連結部と、それら挟持部を互いの対向方向に接近させるための操作部と、を備え、
各前記挟持部には、前記対向方向の内向きに突出する押付部と、前記押付部よりも後方側で前記対向方向の内側に、前記第一側挿入部を収容可能に形成された凹部と、が設けられ、
前記板状部材に係合固定された前記係合部に対し前記取り外し治具を前後方向の第一側に配置し、前記支柱を左右方向から挟むように前記挟持部を離間させる第一ステップと、
離間した前記挟持部の対向間を狭める取り外し操作を前記操作部に行うことにより、各前記押付部が前記板状部材と前記皿状当接部との間に進入し、進入先で各前記弾性係止片を前記支柱側に押し付けて弾性変形させ、各前記弾性係止片の係止状態を解除することで前記係合部を抜き取り可能にする第二ステップと、
を有し、前記第二ステップにおける前記挟持部の対向間が狭まっていく過程で各前記凹部に各前記第一側挿入部が収容されることを特徴とする。
【0010】
上記の固定構造及び取り外し治具によれば、取り外し治具の対向する挟持部の対向幅を狭めていく過程で、板状部材の貫通孔に係合固定された係合部の各弾性係止片を押付部が押し付けて係合解除される一方で、第一側挿入部が凹部に収容されていく。つまり、対向する挟持部を、凹部に第一側挿入部を確実に収容させる軌道でその対向間を狭めていけば、それら挟持部の押付部は確実に弾性係止片を支柱側に押し付け、係合解除できる。言い換えれば、係合固定状態の係合部の係合解除を、凹部に第一側挿入部を収容させるというガイドを受ける形で確実に行うことができる。また、係合解除状態で係合部を貫通孔から抜き取るとき、押付部は弾性係止片を支柱側に押し付け続け、係合解除状態を維持しなければならないが、凹部に第一側挿入部が収容された状態が継続していれば、押付部が位置ずれすることが無いため、容易に係合解除状態を維持でき、係合部を安定して抜き取ることができる。
【0011】
前記係合部は、前記支柱に対し上下方向と左右方向の双方に直交する前後方向の第一側に偏った位置で左右に配置される第一側位置決め部と、前後方向の第一側とは逆の第二側に配置される第二側位置決め部と、を含み、前記貫通孔に挿入されたときにはその内壁面に前記第一側位置決め部及び前記第二側位置決め部が当接するように設けられ、前記第一側挿入部は、前記第一側位置決め部とすることができる。この構成によれば、係合部の貫通孔内での位置決め部である第一側位置決め部を利用して、対向する挟持部を狭めるときのガイド構造を形成できる。
【0012】
各前記挟持部は、前記凹部よりも後方側に前方側を臨むように立ち上がるガイド立面を有し、各前記ガイド立面は、前記操作部に前記取り外し操作を行ったとき、各前記凹部に各前記第一側挿入部が収容されるよりも前に、前記板状部材に環状に当接する前記皿状当接部の前後方向の第一側に対し当接し、以降、前記係止状態が解除されるまで、前記皿状当接部の前後方向の第一側との当接を継続可能とすることができる。この構成によれば、各ガイド立面と、皿状当接部の前後方向の第一側とが当接することで、前後方向の第二側への取り外し治具の位置ずれを防ぐことができる。また、当該当接を継続しながら挟持部を接近させていけば、挟持部は、当該当接によるガイドを受け続ける形で、押付部によって弾性係止片を押し付ける正しい軌道を通過できる。
【0013】
各前記挟持部は、前記凹部よりも後方側に前記対向方向の内向きに膨出した側方位置決め部を有し、前記取り外し操作は、前記板状部材に係合固定された前記係合部に対し前後方向の第一側に配置された前記取り外し治具を、対をなす前記挟持部を所定の離間状態とした上で、その対向間の中心部を前記支柱に向かうよう前後方向に沿って接近させ、その接近において各前記側方位置決め部が前記板状部材に環状に当接する前記皿状当接部の環状当接部に対し当接する当接位置にて前記操作部を操作し、それら挟持部の対向間を狭めるものとすることができる。この構成によれば、取り外し治具の操作部に取り外し操作(挟持部を接近させる操作)を行う位置(取り外し操作開始位置)を、各側方位置決め部と、皿状当接部の前後方向の第一側との当接位置として定めることができるから、操作タイミングがわかりやすい。この当接位置から挟持部を接近させていくことで、挟持部は、押付部によって弾性係止片を押し付ける正しい軌道を通過できる。
【0014】
上記構成において、対向する前記挟持部は、前記所定の離間状態となるよう位置決めする離間位置決め部を備えるようにできる。この構成によれば、対向する挟持部を容易かつ安定的に所定の離間状態とすることができる。
【0015】
対をなす長手状部材は、前端部に前記挟持部、後端部に前記操作部がそれぞれ形成されるとともに、それら長手状部材が交差する形で配置され、その交差部において連結されるとともに、その連結部は、各前記挟持部が前記対向方向において接近及び離間できるよう所定の回転軸周りに回動可能に連結するように構成できる。この構成によれば、取り外し治具は、ハサミのような形状となり、ハサミを操作するような形で容易に係合部の係合解除が可能になる。
【0016】
対をなす長手状部材は対向配置され、前端部にそれぞれ前記挟持部が形成されるとともに、後端部同士が、それら挟持部が前記対向方向において接近及び離間できるよう弾性変形可能に連結され、その連結部は、自然状態においてそれら挟持部が前記所定の離間状態となるよう連結するように構成できる。この構成によれば、取り外し治具は、ピンセットのような形状となり、ピンセットを操作するような形で容易に係合部の係合解除が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の取り外し治具による取り外し対象である固定部材の一実施例を示した斜視図。
【
図5】
図1の係合部の挿入孔に対する係合固定状態を示した断面図。
【
図6】
図5の係合固定状態の解除を説明する断面図。
【
図7】
図3のVII-VII断面を用いて係合解除状態を示した断面図。
【
図8】本発明の取り外し治具の一実施例を示した斜視図。
【
図9】
図8の取り外し治具の挟持部を所定の離間状態としたときの斜視図。
【
図11】
図8の取り外し治具による係合固定状態の係合部を取り外す手順を模式的に示した第一の説明図。
【
図16】
図8の取り外し治具による係合固定状態の解除の係合部の抜き取り手順を示す断面図。
【
図18】
図8の取り外し治具の変形例を示す斜視図。
【
図19】
図1の固定部材の第一変形例における係合部の拡大背面図。
【
図21】
図1の固定部材の第二変形例を使用状態にて示した斜視図。
【
図22】
図1の固定部材の第三変形例を示した斜視図。
【
図23】
図22の固定部材が備える機能部の使用方法を説明する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施例を、図面を参照して説明する。
【0019】
図1及び
図2に示す固定部材10は樹脂成形体であり、板状部材100の貫通孔101に挿入固定される係合部15と、係合部15の下側に設けられる所定機能を有した機能部16と、を備える。これにより、固定部材10は、板状部材100に固定された状態で機能部16を機能させることができる。
【0020】
ここでの機能部16は、長手状配策材の保持機能を有した保持部として設けられる。具体的には、
図1及び
図2に示すように、機能部16は、長手状配策材200(例えばワイヤーハーネス)の外周を取り巻くベルト部16Bと、ベルト部16Bをその先端側から受け入れて固定可能なバックル部16Aと、を有した周知の結束部(例えばワイヤーハーネス保持部)である。
【0021】
係合部15は、
図3及び
図4に示すように、上下方向Zに延びる支柱11と、支柱11を左右(左右方向Y)から挟むように対をなし、それぞれが支柱上端側から支柱下端側に向けて延び、それぞれの先端部に係止部12Aを有した弾性係止片12、12と、支柱11の下端側に接続し、支柱11を取り囲みつつ外向き斜め上方へと拡径する皿状(スカート状)の皿状当接部13(拡径当接部)と、を備える。なお、ここでいう互いに直交する上下方向Z及び左右方向Yや、それらと直交する前後方向Xは、3次元形状を説明するために便宜的に設定した方向であり、支柱11の延出方向が上下方向に一致している必要はない。
【0022】
図5に示すように、係合部15は、板状部材100の貫通孔101に対し支柱11及び弾性係止片12、12を支柱上端側から挿入する(挿入方向I)ことにより、貫通孔101に挿入固定される。挿入に際しては、対をなす弾性係止片12、12が、支柱11に接近する内向きの弾性変形を伴う形で幅を狭めて貫通孔101を通過するとともに、貫通孔101を通過して所定係合位置に到達したときには弾性復帰(自然状態に完全復帰しなくてもよい)して広がる。このとき係止部12Aは、貫通孔101内を通って下方に突出して内壁面101aを外向きに押し付け、かつ貫通孔101の周辺部102を上側(挿入方向Iの奥側)から係止した係止状態(抜け止め状態)となる。一方で、皿状当接部13は、貫通孔101に対し挿入されず、貫通孔101の周辺部102に対し下側(挿入方向Iの手前側)から環状に当接して押し付けた押付状態(当接状態)となる。その結果、板状部材100は、貫通孔101の周辺部102において上下から(挿入方向Iの手前側と奥側から)挟持(具体的には挟圧)された係合固定状態となる。これにより、固定部材10が板状部材100に固定された固定構造1が形成される。
【0023】
なお、ここでの係止部12Aは、対をなす弾性係止片12、12の並び方向(左右方向Y)の外向き(支柱11から離れる方向)に階段状に複数段(ここでは3段)突出する係止突出部12cを有する。係止突出部12cを階段状に複数段有することで、様々な厚み、様々な貫通孔形状の板状部材100に対応できるようになっている。複数段の係止突出部12cにおいて、各段の下方を臨む面が貫通孔101の周辺部102を上側から係止する係止面であり、各段の弾性係止片12、12の並び方向Yの外側を臨む面が貫通孔101の内壁面101aを外向きに押し付ける押付面である。
【0024】
また、係合部15は、
図7に示すように、板状部材100の貫通孔101に対し支柱11及び弾性係止片12、12と共に挿入され、係合固定状態となったときに貫通孔101の内壁面101aに対し当接し、係合部15を位置決めする貫通孔内位置決め部14A、14A、14Bを備える。
【0025】
貫通孔内位置決め部14A、14A、14Bは2以上又は3以上(ここでは合計3個)設けられ、貫通孔101内においてそれぞれが内壁面101aに対し接触する。これらの接触により、係合部15は、貫通孔101内において位置決めされる。ここでの貫通孔内位置決め部14A、14A、14Bは、支柱11に対し上下方向Zと左右方向Yの双方に直交する前後方向Xの第一側(
図7上側)に偏った位置で、左右に配置される第一側位置決め部14A、14A(第一側挿入部)と、前後方向Xの第一側とは逆の第二側(
図7下側)に配置される第二側位置決め部14Bと、を含む。第一側位置決め部14A、14Aは、ここでは支柱11に対し対をなす弾性係止片12、12の側にそれぞれ振り分けて設けられるが、左右方向Yに延びる単体の位置決め部として設けられてもよい。第二側位置決め部14Bは、支柱11の一部として設けられる。
【0026】
第一側位置決め部14A、14A(第一側挿入部)は、係合固定状態にある係合部15の支柱11の前後方向Xの第一側(一方側:
図7上側)において、それぞれが支柱11から左右方向Yの両外側に膨出する膨出壁部として設けられる。第一側位置決め部14A、14Aは、それぞれ左右方向の内側から外側にむけて先細る形状をなす。貫通孔101の内壁面101aの前後方向Xの両側(
図7上下側)には、それぞれが左右方向Yに直線状に延びる内壁中央面101a1、101a1を有し、内壁面101aの左右方向Yの両側には、それら内壁中央面101a1、101a1から続く形で左右方向Yの外側に円弧状に湾曲して延びる内壁湾曲面と101a2、101a2を有しており、貫通孔内位置決め部14A、14Aは、前後方向Xの第一側(
図7上側)において、それぞれが内壁中央面101a1と、対応する側の内壁湾曲面と101a2とに接触する形状をなす。
【0027】
一方、第二側位置決め部14Bは、前後方向Xの第二側(他方側:
図7下側)に設けられる。ここでの貫通孔内位置決め部14Bは、当該他方側に位置する支柱11の外壁部である。この貫通孔内位置決め部14Bは、貫通孔101の前後方向Xの第二側(
図7下側)で、直線状に延びる内壁中央面101a1と接触する形状をなす。これら貫通孔内位置決め部14A、14A、14Bが存在することにより、係合部15は、貫通孔101内でガタつきが抑えられた係合固定状態となる。
【0028】
ところで、ここでの皿状当接部13は、
図5に示すように、支柱11に接続する底面部13Bと、底面部13Bから軸線11Zに対する径方向の外向き斜め上方へ延びる主皿状部13Aと、その先から外向き斜め下方に折り返す折り返し部13Sと、を有する。折り返し部13Sは、対をなす弾性係止片12、12の側にそれぞれ設けられる。さらにいえば、折り返し部13Sは、左右方向Yにおいて各弾性係止片12、12の支柱11との接続位置12r、12r(各弾性係止片12、12の付け根部分)よりも外側にそれぞれ独立して形成される。ここでの皿状当接部13には、支柱11の軸線11Zの方向から見たときに(
図4参照)、略楕円形状(オーバル形状:卵形や長円、あるいは楕円や、角丸長方形等を含む)をなし、その長径方向(ここではY方向に一致する)の両側において折り返し部13Sが形成されている。
【0029】
各折り返し部13Sの上面13sは、支柱11の軸線11Z周りに滑らかに連続する湾曲面をなし、かつ支柱11の軸線Zの方向から見たときの当該湾曲面の外縁から自然状態(弾性変形していない状態)の弾性係止片12、12の最下端12bに向かう方向が、上り勾配となるよう形成される。具体的にいえば、各折り返し部13Sは、対応する側の弾性係止片12、12が自然状態にあるときのその最下端12b(
図3及び
図4参照)を左右方向Yの外側で弧状をなして取り囲みつつその弧状の両端位置が、各弾性係止片12、12の支柱11との接続位置12r、12r(各弾性係止片12、12の付け根部分)よりも左右方向Yの外側(
図3及び
図4において破線RPよりも左右外側)となる。
【0030】
係合固定状態における皿状当接部13は、
図5に示すように、主皿状部13Aにおいて外向き斜め上方へと延びた先の端部である環状の環状当接部13U(屈曲部)によって板状部材100に上方(挿入方向Iの奥側)に押し付ける一方で、当該環状当接部13Uが下方に押し下げられて主皿状部13Aが弾性変形した状態となる。
【0031】
係合固定状態における各折り返し部13Sの上面13sは、板状部材100に対し間に空隙を挟んで上下方向Zに対面する。この上面13sは、
図3及び
図4に示すように、支柱11の軸線11Z周りに滑らかに連続する弧状の湾曲面をなし、かつ軸線11Zの方向(軸線方向)から見たときの当該湾曲面の外縁から自然状態の弾性係止片12、12の最下端12bの位置に向かう方向が、上り勾配の傾斜面となるように形成される。
【0032】
また、各折り返し部13Sの支柱11の軸線11Zに対する径方向の長さは、支柱11に対する左右方向Yの外側において最も長く、そこから当該軸線11Zの周りに向かって離れていくほど短くなるように形成され、当該軸線11Zの周りの両端側で皿状当接部13における折り返し部13Sの非形成部13Tに対し滑らかに接続するように形成される。つまり、弧状の湾曲面をなす折り返し部13Sは、弧状の中央部ほど斜面長さが長く(斜面幅が広く)、弧状の両端側ほど斜面斜面長さが短く(斜面幅が狭く)なるように形成される。具体的にいえば、当該折り返し部13Sの長さは、並び方向Y(弾性係止片12、12の対向方向)の外側から弧状に沿って一定距離離れるまでは、ほぼ同一長さに形成され、そこから軸線11Z周りにさらに離れていくに従い短くなるように形成されている。そして、各折り返し部13Sは、弧状の両端においてその長さがゼロになる形で非形成部13Tに対し滑らかに接続する。
【0033】
なお、折り返し部13Sは、皿状当接部13の底面13b(機能部16との接続面でもよい)よりも下方に突出しないように形成されている。ここでの折り返し部13Sは、
図3に示すように、皿状当接部13の高さh(上下方向幅)に対し上から2/3の位置h0よりも下方に突出しない(h0よりも上となる)ように定められており、折り返し部13Sの長さを制限している。これは大型化を避けるためだけでなく、皿状当接部13の直下の機能部16との干渉を避けるためでもある。
【0034】
一方、各弾性係止片12、12は、係合固定状態において、
図5に示すように、係止部12Aの一部(12p)が板状部材100の貫通孔101を下方に向けて突出する。このとき貫通孔101から下方に突出している突出先端部12pは、皿状当接部13の内側に隠され、板状部材100の下側において非露出とされる。
【0035】
各弾性係止片12、12は、それぞれの突出先端部12pに対し、治具400を接触させて支柱11側へと押し付けることにより、係止部12Aによる係止状態(抜け止め状態)が解除され、係合部15を貫通孔101から挿入方向Iの逆向きに抜き取ることが可能になる。ところが、押し付けるべき突出先端部12pは皿状当接部13の内側に隠された状態にあり、治具400を板状部材100と皿状当接部13との間に差し入れるときの位置合わせが難しい。
【0036】
ここで、係止部12Aによる係止状態(抜け止め状態)を解除する取り外し治具400について説明する。
【0037】
取り外し治具400は、
図5の固定構造1から固定部材10(係合部15)を取り外すために使用されるものであり、
図8及び
図9に示すように、互いが対向する挟持部410、410と、挟持部410、410を後端側で連結させる連結部420と、挟持部410、410を互いの対向方向Q(
図10参照)に接近させる操作をするための操作部430、430と、を有する。
【0038】
ここでの取り外し治具400は、対をなす長手状部材401、401の一端部(前端部、先端部)に挟持部410、410、他端部(後端部、基端部)に操作部430、430がそれぞれ形成される。それら長手状部材401、401は、互いに交差する形で重なって配置され、その交差部において長手状部材401、401のそれぞれの長手方向に直交する軸線周りに回動可能となるよう、回動軸403によって連結(連結部420)したハサミ型をなす。このように、挟持部410、410は、操作部430、430を接近・離間させる操作によって回動軸403周りを回動するように形成され、操作部430、430を接近させたときには互いが接近、操作部430、430を離間させたときには互いが離間するように動作する。
【0039】
挟持部410、410は、
図10に示すように、それぞれ長手状部材401、401の一端(前端)側から順に、押付部411と、凹部412と、側方位置決め部414と、ガイド立面413と、を有する。
【0040】
挟持部410、410の対向方向Q(挟み方向)の外側は対向外側部415として形成される。凹部412は、挟持部410、410の対向方向Q(挟み方向)の内側において対向方向Qの外側に向けて凹み、対向外側部415を底としており、対応する第一側位置決め部14A(第一側挿入部)を収容可能に形成される。ここでの凹部412は、開口側(対向方向Qの内側)にむけて対向幅(開口幅)が広がるように形成される。押付部411は、凹部412よりも挟持部410、410の前端において、対向外側部415から対向方向Qの内向きに延びる形で形成され、凹部412の内壁面のうち挟持部前端側の内壁面を形成する。側方位置決め部414は、凹部412よりも挟持部410、410の後端側において、対向外側部415から対向方向Qの内向きに膨出(突出)した形で形成され、凹部412の内壁面のうち挟持部後端側の内壁面を形成する。
【0041】
押付部411は、挟持部410の前端において対向方向Qの外側から内向きに突出する突出片である。ここでの押付部411は、対向方向Qの外側の対向外側部415から内側に向けて突出し、対向外側部415との境界には、対向方向Qの内側に向かって上面が下方に沈む段差を有し、対向外側部415よりも薄い片をなす。符号411aは押付部411の上面、符号411bは当該段差の立面、符号415aは対向外側部415の上面である。
【0042】
側方位置決め部414は、挟持部410の後端側において対向方向Qの外側から内向きに膨出する膨出片である。ここでの側方位置決め部414は、対向方向Qの外側の対向外側部415から内側に向けて膨出し、対向外側部415との境界には、対向方向Qの内側に向けて上面が下方に沈む段差を有し、対向外側部415よりも薄い片形状をなす。符号414aは側方位置決め部414の上面、符号414bは当該段差の立面である。また、ここでの側方位置決め部414は、押付部411よりも対向方向Qの内側に突出している。
【0043】
ガイド立面413は、各挟持部410、410の側方位置決め部414よりも後端側において前端側に向けて上面が下方に沈む段差の立面であって、それら挟持部410、410の前端側を臨み、かつ対向方向Qに延びるように形成される。長手状部材401、401は、各挟持部410、410の後端側から、対向外側部415、押付部411及び側方位置決め部414の順で上面の高さが下がる形で薄くなる。
【0044】
また、
図8~
図10に示すように、対向する挟持部410、410は、互いを所定の離間状態(互いの押付部411を所定幅隔にて離間させた状態)となるよう位置決めする離間位置決め部440を有する。ここでの離間位置決め部440は、対向する挟持部410、410が所定の離間状態を越えて離間しないよう、挟持部410、410の一方に設けられた他方の回動規制する回動規制部として設けられる。具体的にいえば、離間位置決め部440は、長手状部材401、401の一方において交差部(回動軸403)周辺の操作部430側から対向方向Qの外側に突出し、その先で長手状部材401、401の重なり方向に屈曲した屈曲片として形成され、回動する長手状部材401の他方の交差部(回動軸403)周辺の挟持部410側に当接して回動規制する。
【0045】
また、対をなす長手状部材401、401は、挟持部410、410が位置する前端側においてそれぞれ略直線状に形成される一方、回動軸403よりも後端側において、回動軸403の軸線方向(それら挟持部410、410の延出方向(長手方向)と対向方向Qとの双方と直交する直交方向)側へ屈曲して形成される。屈曲した先には、それぞれの操作部430、430が形成され、ここでは環状(指を入れられる輪形状)をなす。
【0046】
ここで、取り外し治具400を用いて係合固定状態の固定構造1から固定部材10を取り外す取り外し操作の手順(取り外し方法)について説明する。
【0047】
まずは、板状部材100に係合固定された係合部15に対し取り外し治具400を前後方向Xの第一側に配置する。そして、支柱11を左右方向Yから挟むように挟持部410、410を離間させ(第一ステップ)、その対向間を狭める取り外し操作を操作部430、430に行う(第二ステップ)。これにより、各押付部411、411が板状部材100と皿状当接部13との間に進入し、進入先で各弾性係止片12、12を支柱11側に押し付けて弾性変形させ、各弾性係止片12、12の係止状態を解除する。その結果、当該係止によって抜け止め状態とされていた係合部15が抜き取り可能になる。一方で、挟持部410、410は、対向間が狭まっていく過程で各凹部412、412に各第一側位置決め部14A、14Aが収容されることにより、ガイドを受ける。つまり、挟持部410、410の各凹部412、412が各第一側位置決め部14A、14A14A、14Aの先端を内側に収めて少しずつ奥へと進入させる形で収容していくとき、互いの対向間を狭める挟持部410、410のそれぞれの軌道は制限され、ほぼ一定の軌道を通って移動する。ここではそれら挟持部410、410の軌道が、それぞれの押付部411、411が各弾性係止片12、12に当たる軌道に設定されているため、各押付部411、411によって各弾性係止片12、12を確実に押し付けることができる。
【0048】
具体的にいえば、まずは
図11に示すように、挟持部410、410を、押付部411、411が所定幅隔てて離間した所定の離間状態とする(第一ステップ)。この離間状態は、長手状部材401、401の一方を、回動軸403周りにおいて離間位置決め部440に当接させて、更なる離間が阻止された回転規制状態である。
【0049】
続いて、取り外し治具400を係合固定状態の係合部15に対し前後方向Xの第一側(第一側位置決め部14A、14A側:
図11の下側)に配置する(第一ステップ)。そして、所定の離間状態とした挟持部410、410の対向間の中心部を、それら挟持部410、410の前端側(押付部411、411側)を先頭にして、係合固定状態の係合部15の支柱11に向けて前後方向Xに沿って接近させる(
図11→
図12)。この接近において、挟持部410、410は、板状部材100上を摺動する形で、板状部材100と皿状当接部13の折り返し部13Sとの間に進入していく(
図5→
図6)。このとき、まずは側方位置決め部414、414が、皿状当接部13の環状当接部13Uに対し最初に接触(当接)する(
図12)。
【0050】
この接触状態(当接状態:
図12)の取り外し治具400は、操作部430、430によって挟持部410、410の対向間を狭める操作を開始する位置(操作開始位置)に位置決めされた状態である(第一ステップ)。ここでの側方位置決め部414、414は、押付部411、411よりも対向方向Qの内側に膨出しており、対向方向Qの内側で、かつ前端側(凹部412側)の角部が、後端側ほど対向方向Qの内側に位置する斜めに伸びる面取り状をなす。このため、この接触状態を安定して維持しやすい。この接触状態(
図12)となることで、この後、操作部430、430を操作して挟持部410、410の対向間を狭めたときに、挟持部410、410が正しい軌道(凹部412、412に第一側位置決め部14A、14Aを収容し、かつ押付部411、411が弾性係止片12、12を支柱11側に押し付ける軌道)を通過できる。
【0051】
この位置決め状態で操作部430、430を操作して挟持部410、410の対向間を狭める(第二ステップ)。これにより、側方位置決め部414、414は、板状部材100と皿状当接部13の環状当接部13Uとの間を押し広げ(
図6参照)、環状当接部13Uよりも内側に入り込む(
図12→
図13、
図5→
図6)。一方、押付部411、411は、板状部材100上を摺動する形で、板状部材100と皿状当接部13の折り返し部13Sとの間に進入し、皿状当接部13の環状当接部13Uに対し接触する(
図12→
図13)。
【0052】
この接触状態(
図13)で操作部430、430をさらに操作して挟持部410、410の対向間を狭めると、押付部411、411も、板状部材100と皿状当接部13の環状当接部13Uとの間を押し広げ(
図6参照)、環状当接部13Uよりも内側に入り込む(
図13→
図14)。そして、押付部411、411は、入り込んだ先で、対をなす弾性係止片12、12において貫通孔101よりも下方に突出した突出先端部12p、12pに対し、それぞれが接触する(
図14)。
【0053】
これら押付部411、411の突出先端部12p、12pへの接触時において(接触前後でもよい。接触後には押付部411、411の環状当接部13Uの内側への進入状態を含む。)、押付部411、411及び側方位置決め部414、414の対向方向Qの外側の各立面411b、414bは、皿状当接部13の環状当接部13U又は折り返し部13Sの上面13sに対しそれぞれが接触した位置決め状態となる。ここでの各立面411b、414bは、環状当接部13U又は折り返し部13Sの上面13sに対し安定して接触できるよう、接触部分に対応した形状(ここでは環状当接部13Uに対応した形状)で形成され、接触区間がより長くなるようになっている(
図14参照)。これら4つの立面411b、414bによる位置決めにより、取り外し治具400は、この後、操作部430、430を操作して挟持部410、410の対向間を狭めたときに、挟持部410、410が正しい軌道(凹部412、412に第一側位置決め部14A、14Aを収容し、かつ押付部411、411が弾性係止片12、12を支柱11側に押し付ける軌道)を安定して通過できる姿勢をとることができる。
【0054】
一方、これら押付部411、411の突出先端部12p、12pへの接触時(接触前後でもよい。接触後とは押付部411、411の環状当接部13Uの内側への進入状態を含む。)において、ガイド立面413、413が皿状当接部13の環状当接部13Uに対し接触する(
図14)。具体的には、ガイド立面413、413の対向方向Qの内側端部と、皿状当接部13の前後方向Xの第一側縁部とが最初に接触し、この接触以降において操作部430、430を操作して挟持部410、410の対向間を狭めていく際、ガイド立面413、413と環状当接部13Uの第一側とが継続的に接触する(摺動する)。つまり、以降は、取り外し治具400の接近方向の手前側の位置が、ガイド立面413、413と環状当接部13Uの前後方向Xの第一側との常時接触(摺動)によって位置決めされ、挟持部410、410は正しい軌道(凹部412、412に第一側位置決め部14A、14Aを収容する形で押付部411、411を支柱11側に押し付ける軌道:
図14→
図15)を通って互いに接近することになる。
【0055】
この軌道に沿って挟持部410、410が互いに接近すると、押付部411、411が対をなす弾性係止片12、12の突出先端部12p、12pを押し付け、各弾性係止片12、12には支柱11側に接近する弾性変形が生じる(
図5→
図6、
図14→
図15)。このとき、凹部412、412が貫通孔内位置決め部14A、14A(第一側位置決め部)を収容していくため、押付部411、411は、当該収容によるガイドを受ける形で、突出先端部12p、12pを支柱11側に押し付けることができる。
【0056】
この押し付けにより、係止部12Aの係止突出部12cが貫通孔101の周辺部102を上側(挿入方向Iの奥側)から係止した係止状態(抜け止め状態)が解除され、係合部15を下方(挿入方向Iの逆向き:
図6の下向き)に抜き取り可能な状態となる(
図6参照)。このとき、凹部412、412が貫通孔内位置決め部14A、14A(第一側位置決め部)を収容しているため、押付部411、411に位置ずれが生じるようなことはなく、この解除状態(抜き取り可能状態)を安定して保持できる。
【0057】
この解除状態(抜き取り可能状態)は、押付部411、411が対をなす弾性係止片12、12の突出先端部12p、12pを支柱11側に押し付けて挟んで保持した挟持状態である。このため、
図16に示すように、交差部近辺(連結部420近辺)を支点とし、操作部430、430を板状部材100に接近させるように操作する(第三ステップ)ことで、てこの原理を利用して係合部15を下方(挿入方向Iとは逆向き:
図16では上方)に抜き取ることができる。この抜き取りの際にも、凹部412、412が貫通孔内位置決め部14A、14A(第一側位置決め部)を収容しているため、押付部411、411には前後方向Xへの位置ずれが生じるようなことはなく、安定して係合部5を貫通孔101から抜き取ることができる。
【0058】
なお、上記の取り外し方法においては、係合固定状態の係合部15に対し前後方向Xの第一側、即ち貫通孔内位置決め部14A、14A(第一側位置決め部)が存在する側に取り外し治具400を配置(
図11~
図15参照)した上で挟持部410、410の先端側(押付部411、411側)を先頭にして係合固定状態の係合部15に向けて近づけ(
図11)、それら挟持部410、410を互いに接近させて係合を解除し、係合部15を抜き取るに至った。この場合、押付部411、411が突出先端部12p、12pを支柱11側に押し付けるときの最終段階において、凹部412、412が貫通孔内位置決め部14A、14A(第一側位置決め部)を収容していくことで、ガイドを受ける。ただし、このガイドは受けなくてもよい。即ち、
図17に示すように、係合固定状態の係合部15に対し前後方向Xの第一側ではなく、その逆の第二側、即ち貫通孔内位置決め部14B(第二側位置決め部)が存在する側に取り外し治具400を配置した上で、挟持部410、410の先端側(押付部411、411側)を先頭にして係合固定状態の係合部15に向けて近づけ、それら挟持部410、410を互いに接近させて係合を解除してもよい。この場合であっても、同様の操作により係合部15を抜き取ることは可能である。
【0059】
以上、本発明の一実施例を説明したが、これはあくまでも例示にすぎず、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、追加及び省略等の種々の変更が可能である。
【0060】
上記実施例の固定構造1においては、押付部411、411が突出先端部12p、12pを支柱11側に押し付けるときのガイドとして、凹部412、412に貫通孔内位置決め部14A、14A(第一側位置決め部)を収容させたが、凹部412、412に貫通孔内位置決め部14A、14A(第一側位置決め部)とは異なる部位を収容させてもよい。例えば、係合部15に、上記実施例の貫通孔内位置決め部14A、14Aと同様に凹部412、412に収容されるが貫通孔内位置決め部14A、14Aとしての機能を有さない第一側挿入部を、支柱11に対し上下方向Zと左右方向Yの双方に直交する前後方向Xの第一側に偏った位置で、左右に配置される形で設けてもよい。
【0061】
また、係合部15は、上記実施例の貫通孔内位置決め部14A、14Aや上述の第一側挿入部を、前後方向Xの第一側とその逆の第二側との双方に設けてもよい。
【0062】
また、上記実施例の取り外し治具400に、対向する挟持部410、410の対向間を広げるように付勢するばね部材等の付勢手段を設けてもよい。この場合、付勢手段によって、対向する挟持部410、410の一方が離間位置決め部440に常時当接し、それら挟持部410、410が所定の離間状態に保持されるから、側方位置決め部414、414との最初の当接による、挟持部410、410の対向間を狭める操作の開始位置合わせが容易になる。
【0063】
上記実施例の取り外し治具400はハサミ型であったが、それ以外の形状であってもよい。例えば
図18に示すように、対をなす長手状部材401、401が対向配置され、一端部にそれぞれ挟持部410、410が形成され、他端部同士を、それら挟持部410、410が接近可能となるよう弾性変形可能に連結する。そして、その連結部420は、自然状態においてそれら挟持部410、410が所定の離間状態となるよう連結しており、各長手状部材401、401の対向面とは逆側の面が挟持部410、410を接近させる操作面430sとなる形でそれら長手状部材401、401全体に操作部430、430が形成されるように構成できる。
【0064】
上記実施例の固定部材10の第一変形例について、
図19及び
図20を用いて説明する。上記実施例の皿状当接部13は、皿状当接部13に折り返し部13Sが形成されているが、第一変形例の皿状当接部13には、折り返し部13Sが形成されていない。
【0065】
上記実施例の固定部材10の第二変形例について、
図21を用いて説明する。
【0066】
上記実施例の皿状当接部13は、支柱11の軸線11Zの方向から見たときに、対をなす弾性係止片12、12の並び方向Yを長径方向とする略楕円形状をなし、その長径方向の両端に折り返し部13Sがそれぞれ設けられているが、第二変形例の固定部材10の皿状当接部13は、支柱11の軸線11Zの方向から見たときに、対をなす弾性係止片12、12の並び方向Yを短径方向とする略楕円形状をなし、その短径方向の両端に折り返し部13Sがそれぞれ設けられている。
【0067】
また、第二変形例の固定部材10の機能部16は、上記実施例と同様、長手状配策材200(例えばワイヤーハーネス)の保持機能を有するが、その保持形態が異なっている。即ち、上記実施例の機能部16は、ベルト部16Bによって長手状配策材200を結束保持するが、第二変形例の機能部16は、係合部15の下端から、上下方向Zと直交する所定方向に延びる板状の袖部16C、16Cを有した形状をなす。板状の袖部16C、16Cには、底面上に長手状配策材200を載置し、載置した長手状配策材200を袖部16C、16Cごとテープ等の結束部材20、20で結束して保持状態とする。
【0068】
上記実施例の固定部材10の第三変形例について、
図22及び
図23を用いて説明する。
【0069】
第三変形例では、皿状当接部13を含む係合部15の形状が上記実施例と同様であるが、機能部16が異なる。第三変形例の機能部16は着脱部であり、機能部16に対し所定機能を有した別体の組付け機能部160を組み付けること、そして取り外すことが可能となっている。なお、この組付け構造及び組付け方法については周知のものであるから、詳細な説明は省略する(
図23参照)。なお、組付け機能部160についてはその全体が図示はされていないが、既に述べた長手状配策材200(例えばワイヤーハーネス)の保持機能部としてもよいし、配線部材の端部に設けられたコネクタ等としてもよいし、他の機能部としてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 固定部材の固定構造
10 固定部材
11 支柱
11Z 支柱の軸線
12 弾性係止片
12A 係止部
12p 突出先端部(下方突出部)
12c 係止突出部
13 皿状当接部
13U 環状当接部
14A、14A 第一側位置決め部(貫通孔内位置決め部、第一側挿入部)
14B 第二側位置決め部(貫通孔内位置決め部)
15 係合部
16 機能部(ハーネス保持部)
100 板状部材
101 貫通孔
101a 貫通孔の内壁面
102 貫通孔の周辺部
200 長手状配策材(ワイヤーハーネス)
400 取り外し治具
401、401 長手状部材
403 回動軸
410、410 挟持部
411 押付部
412 凹部
413 ガイド立面
414 側方位置決め部
420 連結部
430 操作部
430s 操作面
440 離間位置決め部(回動規制部)
I 挿入方向
X 前後方向
Y 左右方向(弾性係止片の並び方向)
Z 上下方向
Q 対向方向(挟み方向)