(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057769
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】蒸気滅菌器
(51)【国際特許分類】
A61L 2/07 20060101AFI20240418BHJP
【FI】
A61L2/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164656
(22)【出願日】2022-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】592246705
【氏名又は名称】株式会社湯山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100114959
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 徹也
(72)【発明者】
【氏名】岸下 義孝
【テーマコード(参考)】
4C058
【Fターム(参考)】
4C058AA12
4C058AA25
4C058BB05
4C058CC05
4C058DD01
4C058DD03
4C058DD13
4C058EE22
4C058EE26
(57)【要約】
【課題】安定した蒸気滅菌処理が行える蒸気滅菌器の提供
【解決手段】被滅菌物が載置される載置部4を内部に有する缶体3と、缶体3の内部であって載置部4よりも下方に設けた貯水部5と、貯水部5に水を供給する給水機構Paと、貯水部5に設置されたヒータ7と、貯水部5に立設され、貯水部5の水位を検知するセンサ20と、センサ20の検知結果に基づき、給水機構Paによる給水停止を制御する制御部19と、を備え、センサ20が、貯水部5に取り付けられた基部20aと、基部20aから、貯水部5に貯められた水の水面より上方に、水面に沿う方向に延出する横架部20bと、基部20aから離れた位置で横架部20bから垂下し、水面と当接することで水面を検知する検知部20cと、を備えた蒸気滅菌器S。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被滅菌物が載置される載置部を内部に有する缶体と、
前記缶体の内部であって前記載置部よりも下方に設けた貯水部と、
前記貯水部に水を供給する給水機構と、
前記貯水部に設置されたヒータと、
前記貯水部に立設され、前記貯水部の水位を検知するセンサと、
前記センサの検知結果に基づき、前記給水機構による給水停止を制御する制御部と、を備え、
前記センサが、
前記貯水部に取り付けられた基部と、
前記基部から、前記貯水部に貯められた水の水面より上方に、前記水面に沿う方向に延出する横架部と、
前記基部から離れた位置で前記横架部から垂下し、前記水面と当接することで前記水面を検知する検知部と、を備えている蒸気滅菌器。
【請求項2】
前記基部の周囲が絶縁体で覆われている請求項1に記載の蒸気滅菌器。
【請求項3】
前記横架部が前記絶縁体で覆われている請求項2に記載の蒸気滅菌器。
【請求項4】
前記基部から複数組の前記横架部および前記検知部が異なる方向に延出している請求項1に記載の蒸気滅菌器。
【請求項5】
前記基部の下端部に雄ねじ部が形成されている請求項1に記載の蒸気滅菌器。
【請求項6】
前記基部が柱状を呈し、前記横架部が前記基部と同軸心状の円盤形状を呈しつつ前記基部の端部に取り付けられ、前記検知部が前記横架部の下面に突出形成された筒状の壁部である請求項1に記載の蒸気滅菌器。
【請求項7】
前記基部の端部と前記横架部とに亘って調高ねじ部が形成されている請求項6に記載の蒸気滅菌器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶体の内部に保持した被滅菌物を蒸気によって滅菌処理する蒸気滅菌器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このような蒸気滅菌器に関連する技術としては、例えば以下の特許文献1(明細書〔0006〕、〔0008〕、〔0026〕段落および
図4等参照)に示すものがある。
【0003】
特許文献1に係る蒸気滅菌器は、被滅菌物を収容可能な缶体2と、缶体2の内部に給水する水の貯水タンク39と、缶体2に設けられた滅菌ヒータ12と、缶体2と貯水タンク39とを接続する給水管27と、給水管27の流路を開閉する給水電磁弁30と、缶体2に接続される通気管21と、通気管21に接続されたエアポンプ23と、を備えている。これらの構成により、缶体2の内部に水を貯水し、滅菌ヒータ12によって水を加熱して蒸気とし、缶体2の内部に保持した被滅菌物を蒸気滅菌するものである。
【0004】
蒸気滅菌処理が終了したのちは缶体2の内部の蒸気を排出するが、そこで残存した水分については、被滅菌物を確実に乾燥させるために、缶体2の内部をさらに乾燥ヒータ13で加熱しつつ蒸気化され排出される。
【0005】
当該蒸気滅菌器では、滅菌処理および乾燥処理が終了した際に被滅菌物の表面に水分が残らないよう、缶体2に供給する水の量が決められ、滅菌ヒータ12の温度調節工程や給水電磁弁30の開閉時期がタイムスケジュールに規定されている。このような構成により、従来の蒸気滅菌器によれば被滅菌物を効率的に蒸気滅菌することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の蒸気滅菌器では、缶体2に貯留する水の量を設定するために水位電極14が用いられている。水位電極14は、缶体2の底面に突設してあり、下から約3分の2の領域が絶縁材料で覆われており、その上方に水との接触で通電する電極が配置されている。缶体2の内部の水位が上昇し、水位電極14の絶縁部分を超えることで電気信号が発生し、所定水位となったことを把握するものである。
【0008】
ただし、水位電極14に沿って水位が上昇するとき、水位電極14の表面が乾いている場合と湿っている場合とでは、水の表面張力が異なる状態に作用する。例えば、水位電極14の表面が乾いているとき、表面と水との間で作用する表面張力により、水位電極14と水面との接触位置は実際の水面の高さよりも低くなる。このため、缶体に供給する水量が多くなり、被滅菌物の乾燥不良が発生する。
【0009】
一方、水位電極14の表面が湿っている場合には、表面に対する水の濡れ性によって、水位電極14と水面との接触位置は実際の水面の高さよりも僅かに高くなる。ただし、水面が高くなるのは表面近傍に限られるため、この場合、缶体2への供給水量は略正確なものとなる。
【0010】
このように、従来技術においては、缶体に供給する水の量が必ずしも正確ではなく、蒸気滅菌処理に際して特に乾燥処理の均一性が維持し難いという課題があった。そこで、従来より、安定した蒸気滅菌処理が行える蒸気滅菌器が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る蒸気滅菌器の特徴構成は、
被滅菌物が載置される載置部を内部に有する缶体と、
前記缶体の内部であって前記載置部よりも下方に設けた貯水部と、
前記貯水部に水を供給する給水機構と、
前記貯水部に設置されたヒータと、
前記貯水部に立設され、前記貯水部の水位を検知するセンサと、
前記センサの検知結果に基づき、前記給水機構による給水停止を制御する制御部と、を備え
前記センサが、
前記貯水部に取り付けられ、周囲が絶縁体で覆われた基部と、
前記基部から、前記貯水部に貯められた水の水面より上方に、前記水面に沿う方向に延出する横架部と、
前記基部から離れた位置で前記横架部から垂下し、前記水面と当接することで前記水面を検知する検知部と、を備えた点にある。
【0012】
(効果)
本構成の蒸気滅菌器は、貯水部に貯められた水の水面に当接するセンサを備えている。このセンサは、貯水部に取り付けられる基部と、当該基部から水面に沿う方向に延出し、水面から離れた状態の領域を有する横架部と、この横架部から垂下し、水面に当接する検知部とを備えている。
【0013】
この構成では、基部の少なくとも一部は貯水部の水に接触しており、基部の表面では水面との境界位置で表面張力が作用する。このため、実際の水面高さと、基部に接触する水の最高位置の高さとに差が生じる。
【0014】
そこで、本構成のセンサを用いることで、検知部が当接する水面の位置を、基部から水面に沿って離間した位置に設定する。このときの横架部の延出方向には、水面と平行な方向と、水面に対して所定の角度を持つ方向とが含まれる。これにより、表面張力の影響をなくし、基部の表面の清浄状態の違いなどに拘わらず水面の位置を常に正確に測定できることとなる。
【0015】
この結果、従来のセンサのように、表面張力の影響を解消するための演算を行う必要がなく、また、基部の清浄度を整える必要もなく、貯水部の液面高さの設定を極めて簡便にかつ正確に行うことができる。
【0016】
本発明に係る蒸気滅菌器にあっては、前記基部の周囲が絶縁体で覆われていると好都合である。
【0017】
(効果)
基部の周囲を絶縁体で覆うことで、基部と貯水との接触によって検知信号が誤発生することがない。また、例えば、基部と検知部を同じ素材で構成することもでき、センサの構成を簡略化できるうえ、基部として取り得る構成範囲を拡大することができる。
【0018】
本発明に係る蒸気滅菌器にあっては、前記横架部が絶縁体で覆われているとより好都合である。
【0019】
(効果)
横架部は、基部から水面に沿って延出する部位であるから貯水に接触する機会は少ない。ただし、横架部を絶縁体で覆っておくことで、仮に、横架部に水滴が付着しているような場合でも誤って検知信号が発せられることが確実に防止される。よって、より信頼性の高い蒸気滅菌器を得ることができる。
【0020】
本発明に係る蒸気滅菌器にあっては、前記基部から複数組の前記横架部および前記検知部が異なる方向に延出するように構成することができる。
【0021】
(効果)
本構成の如く、複数組の横架部および検知部を設けることで、各検知部の検出値に誤差があった場合でも誤差を平均化することで正しい水面高さに近付けることができる。例えば、蒸気滅菌器が傾斜状態に設置された場合などに水面高さの測定精度が向上する。
【0022】
また、仮に複数組の検知部の一つが故障している場合でも、少なくとも一つ得られた検知データを用いて水面高さを検知することができるうえ、逆に、全ての検知部が機能していない場合には素早くエラー判定を発出して測定精度を高く維持することも可能となる。
【0023】
本発明に係る蒸気滅菌器にあっては、前記基部の下端部に雄ねじ部が形成されていると好都合である。
【0024】
(効果)
前記基部の下端部に雄ねじ部が形成されていれば、貯水部の底に対するセンサの取り付けが容易となる。例えば、雄ねじ部が缶体の底部を貫通するように構成しておくことで、缶体の外部においてナット等により固定することができる。本構成であれば、缶体に対する雄ねじ部の挿入深さを変更することができ、貯水部におけるセンサの高さ設定が容易となる。
【0025】
本発明に係る蒸気滅菌器にあっては、前記基部が柱状を呈し、前記横架部が前記基部と同軸心状の円盤形状を呈しつつ前記基部の端部に取り付けられ、前記検知部が前記横架部の下面に突出形成された筒状の壁部であれば好都合である。
【0026】
(効果)
仮に、検知部が基部に対して一方方向にのみ延出形成されている場合には、蒸気滅菌器が例えば横架部の延出方向に低く傾斜している場合には水面の検知が早くなり、逆に、横架部の延出方向と反対側に低く傾斜している場合には、水面の検知が遅くなり両者の差が大きくなる。
【0027】
しかし、本構成のように検知部が基部の全周囲に設けられることで、仮に蒸気滅菌器が傾斜設置された場合でも、検知部のうち最下位置にある検知部が水面と反応する。よって、蒸気滅菌器が正常な姿勢に設置された場合の水面検知位置との誤差が小さくなり、蒸気滅菌器は安定した乾燥機能を発揮し易くなる。
【0028】
本発明に係る蒸気滅菌器にあっては、前記基部の上端部と前記横架部とに亘って調高ねじ部が形成されていると好都合である。
【0029】
(効果)
本構成であれば、例えば、横架部を基部に対して高さ位置変更自在に螺合させることができ、横架部の調高作業が極めて容易となる。特に、本構成であれば、センサが缶体の内部に取り付けられた後においても調高作業が容易となる。よって、貯水部に供給される水の水面高さに合わせて横架部の高さ位置を迅速かつ正確に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図2】本実施形態の蒸気滅菌器の全体構成を示す説明図
【
図3】本実施形態におけるセンサの構成および水面の検知態様を示す説明図
【
図4】本実施形態の蒸気滅菌器の動作要領を示すタイムチャート
【
図5】本実施形態の蒸気滅菌器の給水処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0031】
〔実施形態〕
(概要)
本発明に係る蒸気滅菌器Sの実施形態を
図1乃至
図5に示す。この蒸気滅菌器Sは、例えば揺動開閉する扉1を備えた装置本体2の内部に筒状の缶体3を備えており、この缶体3の内部に配置した医療用器具や薬瓶などの被滅菌物を高温蒸気によって滅菌処理するものである。缶体3の内部には、被滅菌物の載置部4として例えば受け皿状の部材を備え、その載置部4よりも下方には水を貯める貯水部5が設けられている。貯水部5は、缶体3の内壁の一部を利用するものである。
【0032】
貯水部5には缶体3の外部上方に設けた貯水タンク6との間で水の給排が可能であり、貯水部5に貯めた水が滅菌ヒータ7により蒸気化される。缶体3は、その他、缶体3を加熱して内部を乾燥させるよう缶体3の外面に設けた乾燥ヒータ8や、缶体3の圧力を常時検出する圧力スイッチ9などが設けられている。滅菌ヒータ7や乾燥ヒータ8は、各別に設けられた過熱検知用サーミスタ10と温調用サーミスタ11を用いて温度管理される。
【0033】
缶体3の側面には連通管12が接続され、連通管12には、エア電磁弁13およびエアポンプ14、エアフィルタ15が接続されている。これらにより、缶体3の内部圧力が調節される。
【0034】
缶体3の下部には給排水用の給排管16が接続されている。給排管16は途中で給水管16aと排水管16bとに分岐し、夫々給水電磁弁SV3および排水電磁弁SV4を介して貯水タンク6に接続される。特に、排水管16bの端部は貯水タンク6の内部に挿入されサイレンサ18が取り付けられている。これにより、排水時のノイズを除去することができる。
【0035】
これらの構成のうち、特に、缶体3に対する水の給排を行うために機能する連通管12およびエア電磁弁13、エアポンプ14、エアフィルタ15、給排管16、給水管16a、排水管16b、給水電磁弁SV3、排水電磁弁SV4を総称して給排水機構Pと称する。尚、特に、連通管12およびエア電磁弁13、エアポンプ14、エアフィルタ15、給排管16、給水管16a、給水電磁弁SV3を特に給水機構Paと称することがある。
【0036】
蒸気滅菌器Sは、制御部19によって、待機状態から、予熱・給水処理、加熱処理、滅菌処理、排蒸処理、及び、乾燥処理を、順次実行する。
【0037】
(1)予熱・給水処理
図4のタイムチャートに示すように、予熱・給水処理では、缶体3の内部に被滅菌物を収容し、排水電磁弁SV4を開くと共にエアポンプ14を所定時間(ここでは30秒)駆動して排水処理を行う。
【0038】
続けて、滅菌ヒータ7及び乾燥ヒータ8に通電し、夫々70℃に設定する。滅菌ヒータ7及び乾燥ヒータ8が70℃となれば、各ヒータへの通電を停止し、給水電磁弁SV3を開けて缶体3に給水する。この給水は、センサ20によって所定水位に達するまで行う。
【0039】
(2)加熱処理
滅菌ヒータ7に通電して貯水部5の水を加熱し蒸気を発生させる。このとき、缶体3の内部の空気が第2配管21を介して排出される。缶体3の内部温度が95℃に達したあと、所定時間(例えば3分)が経過するまで滅菌ヒータ7への通電を続ける。
【0040】
続いて、缶体3の内部温度が102℃を超えるか、あるいは、過熱検知用サーミスタ10での検知温度と温調用サーミスタ11での検知温度との差が1℃以下となれば、缶体3の内部が蒸気で充満されたとして第2配管21の排蒸電磁弁SV1を閉鎖する。
【0041】
(3)滅菌処理
過熱検知用サーミスタ10での検出温度に基づき、滅菌温度が維持されるよう滅菌ヒータ7への通電を制御する。これにより、缶体3に収容された被滅菌物が高温蒸気によって滅菌される。
【0042】
(4)排蒸水処理
まず、第2配管21に設けられた排蒸電磁弁SV1を開放する。これにより、缶体3の蒸気は排蒸タンク22で減圧されたのち貯水タンク6に排出される。その際にノイズが発生するが、貯水タンク6の内部に設けられたサイレンサ18によって消音される。排蒸処理の開始から所定時間(例えば80秒)が経過すれば排水処理を開始する。排蒸水処理に際しては、滅菌ヒータ7を170℃に維持し、乾燥ヒータ8を130℃に維持する。
【0043】
排蒸電磁弁SV1に続いて排水電磁弁SV4を開放する。これにより、缶体3に残存している水を貯水タンク6に排出する。このように、まず排蒸処理で高圧の蒸気を排出したのち排水を行うことで蒸気が結露して被滅菌物を濡らすことがない。
【0044】
排水電磁弁SV4の開放から所定時間(例えば10秒)経過したのち、一旦、排蒸電磁弁SV1を閉じる。これにより、缶体3の内部の蒸気圧が過度に下がり残留水が排出できなくなることが防止される。排水管16bの先端部分にもサイレンサ18が設けられており排出時のノイズが除去される。
【0045】
排蒸電磁弁SV1の閉じ操作から所定時間(例えば10秒)が経過したことで缶体3の残留水が全て排出されたものとし、排蒸電磁弁SV1を開くと共に排水電磁弁SV4を閉じる。また、このとき排気電磁弁SV2を開放する。これにより、排蒸タンク22の蒸気が貯水タンク6に戻される。
【0046】
その後、排気電磁弁SV2の開放から所定時間(例えば80秒)経過後にエアポンプ14を駆動開始し、一時的に排水電磁弁SV4を開いて缶体3の内部に残留する水を内圧により排出する。
【0047】
(5)乾燥処理
排蒸水処理の後、引き続き滅菌ヒータ7と乾燥ヒータ8に通電しながらエアポンプ14を駆動し、缶体3の内部を乾燥する。
【0048】
(センサ)
図3に本実施形態の蒸気滅菌器Sに用いるセンサ20を示す。このセンサ20は、電極Fの一部として機能するよう導電性の部材で形成した棒状の基部20aと、当該基部20aの先端に取り付けられた横架部20bとを備えている。横架部20bの先端には貯水部5に溜まった水と接触する検知部20cが設けられている。
【0049】
基部20aの下端部には雄ねじ部20dが形成され、センサ20は、この雄ねじ部20dによって貯水部5の底に垂直な姿勢で取り付けられる。雄ねじ部20dは缶体3の底部を貫通し、缶体3の外においてナット20iにより固定される。その際には、水が漏洩しないように、絶縁体20eと缶体3との間、および、缶体3とナット20iとの間には環状のシールリング20jが取り付けられる。缶体3に対する雄ねじ部20dの挿入深さを変更することで貯水部5におけるセンサ20の高さを容易に調節することができる。
【0050】
基部20aの周囲には、筒状の部材で構成された絶縁体20eが外挿配置されている。絶縁体20eは、例えばシリコンゴム等により形成される。この絶縁体20eにより、基部20aに対する水の接触が防止され、検知信号が生じないように構成してある。また、基部20aと検知部20cを同じ素材で構成すると、センサ20の構成が簡略化されるうえ、基部20aとして取り得る構成範囲を拡大することができる。
【0051】
また、
図3に示すように、基部20aの端部には雌ねじ部20fが形成され、横架部20bには基部20aの端部が挿入される孔部20gが形成されている。雌ねじ部20fには固定ボルト20hが螺合し、横架部20bが基部20aの端部に固定される。これら基部20aおよび横架部20bは例えばステンレス鋼材で形成される。
【0052】
本実施形態のセンサ20は、貯水部5の水面高さが異なる複数種の蒸気滅菌器Sに用いることができるから、例えば従来の蒸気滅菌器Sの改良が容易となり、蒸気滅菌器Sの信頼度が向上する。
【0053】
横架部20bは、原則として、貯水部5の水面よりも高い位置に保持される。横架部20bの外周縁は下方に垂下した検知部20cであり、この検知部20cの最下面が水面に対する検知面20kとなる。そのためには、横架部20bおよび検知部20cのうち、検知面20kを除く領域を例えば絶縁性の塗料などで塗装するか、シリコンゴム等の絶縁材料を貼り付けておくのが好ましい。これにより、仮に横架部20bに水滴が付着していたとしても、水面検知の信号が誤って発出されることがなく、より信頼性の高い蒸気滅菌器Sを得ることができる。
【0054】
このように垂下状の検知部20cを設けてあるのは、貯水部5に供給された水の水面高さを正確に検知するためである。本構成であれば、貯水部5の水中から立設する基部20aに対し、検知部20cは横架部20bを介して水面に沿って離間した位置に設定される。
図3(b)のうち点線は、例えば絶縁体20eの表面が清浄であって、水面と絶縁体20eとの境界が水面に対して上方に盛り上がった状態である。一方、一点鎖線は、例えば絶縁体20eの表面が汚れていて、水面と絶縁体20eとの境界が水面に対して下方に下がった状態である。
【0055】
このように基部20aの表面に対して水の表面張力の影響が出る領域、つまり、基部20aの表面近傍の領域から離れた位置において、検知部20cは水面に当接する。よって、基部20aの表面の清浄状態の違い等に拘わらず検知面20kは正しい水面高さを検出することができる。
【0056】
本構成であれば、従来のセンサ20のように、表面張力の影響を解消するための演算を行う必要がなく、また、基部20aの清浄度を整える必要もなく、貯水部5の液面高さの設定を極めて簡便にかつ正確に行うことができる。
【0057】
特に、横架部20bの形状が円盤状であり、全周縁部が基部20aを中心として水面に沿って延出することで、仮に蒸気滅菌器Sが傾斜して設置された場合でも、検知部20cのうち最下位置にある検知面20kが水面と反応する。よって、蒸気滅菌器Sが正常な姿勢に設置された場合の水面検知位置との誤差が小さくなり、蒸気滅菌器Sは安定した乾燥機能を発揮し易くなる。
【0058】
(給水処理の作業フロー)
図5には、上記センサ20を用いた給水処理のフローチャートを示す。貯水部5に対する新たな給水に先立ち、缶体3の内部の水分を除去すべく15秒間のポンプ排蒸処理を行う(♯1)。続けて、ポンプ排蒸処理の終了から3分が経過したか、或は、滅菌ヒータ7の温度が170℃未満に下がったか否かを確認する(♯2)。
【0059】
3分の経過時間を確認することで、貯水部5に対して水の供給が開始されない状態でのセンサ20の誤検知が防止される。例えば、蒸気滅菌器Sを連続運転する場合に、仮に滅菌ヒータ7が熱いままで次の運転が行われると、供給された水が急激に蒸発する。これにより発生した蒸気がセンサ20の検知部20cに触れると検知信号が生じることがある。そこで給水工程開始から3分間を設定して滅菌ヒータ7の冷却時間を確保している。
【0060】
ステップ♯2の確認終了に続けてセンサ20の回路がON状態にあるか否かを確認する(♯3)。ここで、センサ20の状態を確認するのは、以前の蒸気滅菌処理による何らかの不具合の存在を確認するためである。例えば、乾燥処理が行われず水が残っている場合や、貯水タンク6からではなく使用者が水を缶体3に直に投入した場合など、例外的に水が残っている場合がある。もし既にON状態になっているときは、フローチャートのエンドまで進み、再度、ポンプ排蒸処理を行う。
【0061】
一方、センサ20の回路がまだONになっていない場合には、缶体3の扉1を所定量だけ開き(♯4)、缶体3の内部の空気を排出する。仮に、内部に水分が残っており滅菌ヒータ7の温度が未だ高温である場合に缶体3の内部圧力が上昇する場合がある。その場合に、後の滅菌工程等において蒸気が漏れ出る等の不都合を防止するためである。
【0062】
続けて、扉1を開いた状態で貯水部5に給水を行う(♯5)。これに続けて、缶体3のエア抜き処理の確認を行う。ポンプ排蒸処理の開始から5分が経過したか否か、および、缶体3のエア抜きが行われたか否かを確認(♯6)し、5分が経過しエア抜きが未実施である場合にエア抜き動作(♯7)を行う。これにより、缶体3の内部が所定の圧力に設定される。このあと、ポンプ排蒸処理の開始から10分が経過しているか否かを確認する(♯8)。
【0063】
また、(♯6)において、ポンプ排蒸処理の開始から5分が経過したこと、および、エア抜きしていないことの双方が満たされていないとき、つまり、逆に解釈すると、ポンプ排蒸処理の開始からの経過時間が5分以内の短時間であるか、又は、エア抜きが完了している場合には、通常の給水過程にあるとして引き続き経過時間をカウントする。
【0064】
ステップ♯8では、ポンプ排蒸処理の開始から10分が経過しているか否かを確認する。この10分間の時間カウントは、センサ20が水面を検知する迄の通常時間を考慮したものである。よって、処理ステップ(♯8)において10分が経過していない場合には、センサ20がON状態ったか否かを確認する(♯9)。仮にセンサ20がON状態となれば給水を停止する(♯10)。
【0065】
一方、ステップ(♯8)においてセンサ20がON状態にならないまま10分が経過すれば、何かのエラーが発生したとして給水を停止する(♯13)。給水を停止した際は給水タイムアウトエラーと判断して(♯14)2分間の排水動作を行う(♯15)。このとき、使用者に対しては、例えば音や液晶表示等によりエラー状態にあることが報知される。使用者は缶体3の状況を確認するなどエラー解除作業を行う。
【0066】
処理ステップ(♯9)においてセンサ20がONになっていなければ、給水開始から90秒が経過したか否かを確認し(♯16)、90秒が経過していない場合には給水処理を続ける。一方、90秒が既に経過している場合には、缶体3の扉1が開いていないかどうかを確認する(♯17)。もし扉1が開いていなければ給水処理を続行し、扉1が開いている場合には、給水の漏れを防止するために扉1を閉じ操作したのち(♯18)給水処理を続ける。
【0067】
ステップ(♯10)において給水が停止されたら給水開始からの時間が30秒以上であるか否かを確認する(♯11)。通常の給水作業は、貯水部5の容積に鑑みて30秒は必要である。よって、給水作業の確実性を経過時間によっても確認する。経過時間が30秒以上の場合には、缶体3の蓋が閉じ位置にあるか確認する(♯12)。ステップ(♯4)において扉1を開けているため、初めてステップ(♯12)に到達した場合には、ここでの判断はNOとなる。続くステップ(♯23)で扉1が閉じられ給水作業が完了する。一方、上述のステップ(♯18)等で既に扉1が閉じられている場合には、ステップ(♯12)でYESとなり給水作業が完了する。
【0068】
尚、ステップ(♯11)においてポンプ排蒸処理から30秒以上経過していない場合には、給水処理がリトライ中であるかを確認する(♯19)。つまり、給水処理が開始されてから30秒より短い時間(♯11)で給水が停止された(♯10)場合、通常はこのような短時間で貯水部5が満たされることは無いから、一旦、排水処理を行う。具体的には、最初にステップ(♯19)に到達した場合、給水処理がリトライされているものではないので、NOと判定して扉1を閉じ操作(♯21)し、30秒間の排水を行う(♯22)。
【0069】
一方、ステップ(♯19)に到達した際に、既に少なくとも一回ステップ(♯5)に戻った経過を有する場合には、ステップ(♯19)においては給水処理がリトライされているとして扉1を閉じ、ステップ(♯14)の給水タイムアウトエラーと判定する。つまり、ステップ(♯22)において排水処理を行い給水処理を最初から行っても短時間でセンサ20が水面を検知する場合には、センサ20に異常がある等と判定してエラー処理を行う。
【0070】
〔別実施形態〕
センサ20の別実施形態としては、
図6に示すように、基部20aから検知部20cまでを一体の導通部材で構成し、全体を例えばJの字状に曲げたものであってもよい。基部20aのうち直線状の部位の端部には雄ねじ部20dを形成し、曲がった側の先端に検知部20cを形成する。検知部20c以外の領域は絶縁体20eで被覆する。
【0071】
本構成であれば、センサ20の構造が極めて簡単でありながら、検知部20cは表面張力の影響が出ていない水面に当接可能であり、検知精度の高いセンサ20を得ることができる。
【0072】
図示は省略するが、さらに、このようなセンサ20を二つあるいは複数をセットにして設置し、夫々の横架部20bの延出方向が、隣接する横架部20bどうしの水平面内における角度が等しくなるように設置することもできる。この場合、一つの基部20aから複数組の横架部20bおよび検知部20cが延出する構成であってもよい。
【0073】
本構成の如く、複数組のセンサ20を設けることで、各検知部20cの検出値に誤差があった場合でも誤差が平均化されより正確な水面高さを得ることができる。例えば、蒸気滅菌器Sが傾斜状態に設置された場合などに水面高さの測定精度が向上する。
【0074】
また、仮に複数組の検知部20cの一つが故障している場合でも、少なくとも一つ得られた検知データを用いて水面高さを検知することができるし、逆に、全ての検知部20cが機能していない場合には素早くエラー判定を発出して測定精度を高く維持することも可能となる。
【0075】
本実施形態の蒸気滅菌器Sであれば、給水処理に際して適切な量の水を貯水部5に供給することができ、特に滅菌処理後の被滅菌物が未乾燥状態となることがなく、蒸気滅菌処理を確実に行うことができる。
【0076】
図7には、さらに別のセンサを示す。この例では、基部20aに対する横架部20bの高さ調節が可能である。具体的には、基部20aの上端部には調高ねじ部としての調高雄ねじ部20mが形成してあり、横架部20bには調高ねじ部としての調高雌ねじ部20nが形成してある。これにより、横架部20bを基部20aに対して高さ位置変更自在に螺合させることができる。基部20aに対する横架部20bの高さ位置を決定したのち固定ナット20pを調高雄ねじ部20mに螺合し、横架部20bに圧着する状態に締結することで横架部20bが安定固定される。
【0077】
本構成であれば、横架部20bの調高作業が極めて容易となる。横架部20bの高さを調節するには、基部20aの下端に形成した雄ねじ部20dの螺合深さを調節することでも可能である。しかし、その場合にはナット20iを貯水部5の裏側から締結しなければならず調高作業が煩雑となる。この点、本別実施形態であれば、缶体3の内部において調高作業が可能である。よって、貯水部5に供給される水の水面高さに合わせて横架部20bの高さ位置を容易かつ正確に設定することができる。
【0078】
図5のフローチャートにおけるステップ♯2の前に、給水開始から所定の短時間のうちにセンサ20の状態を確認してもよい。例えば、給水開始から5秒間などの時間を設定し、そこでセンサ20がON状態となっている場合には誤検知が生じているとする。その場合、一旦排水処理を行い給水処理を改めて行う。このような給水処理のリトライによってもセンサ20が誤検知する場合、センサ20が故障している可能性が高い。よって、短時間でセンサ20がON状態となる場合には、その後の空焚き等を防止するためにエラー表示とするのがよい。
【0079】
また、センサ20の誤検知は、センサ20の汚れによって生じることがある。その場合、速やかにセンサ20を清掃するべく、例えば、以下の工程により汚れの有無を確認する。運転開始時にセンサ20がON状態となる場合には、缶体3にエアー圧を加えて内部の水を排水する。これにより、センサ20がOFF状態になるかを確認する。仮に、ON状態が維持される場合にはエラー表示を行い清掃を促すこととする。これにより、蒸気滅菌器Sの不都合を早期に改善することができる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明に係る蒸気滅菌器は、水位を測定する検知部として、側面に沿って水面が上下する方式のセンサを用いたものに広く適用することができる。
【符号の説明】
【0081】
3 缶体
4 載置部
5 貯水部
7 ヒータ(滅菌ヒータ)
19 制御部
20 センサ
20a 基部
20b 横架部
20c 検知部
20d 雄ねじ部
20e 絶縁体
Pa 給水機構
S 蒸気滅菌器
20m 調高雄ねじ部(調高ねじ部)
20n 調高雌ねじ部(調高ねじ部)