(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057772
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】電極体および電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20240418BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/62 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164662
(22)【出願日】2022-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】加藤 典之
(72)【発明者】
【氏名】榎原 勝志
(72)【発明者】
【氏名】海野 公則
(72)【発明者】
【氏名】小浦 兼嗣
(72)【発明者】
【氏名】近藤 剛司
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB12
5H050DA11
5H050FA02
5H050FA08
5H050FA10
5H050HA01
5H050HA04
5H050HA12
(57)【要約】 (修正有)
【課題】電極層の端面における欠陥の発生を抑制した電極体を提供する。
【解決手段】電池に用いられる電極体10であって、上記電極体は、集電体1および電極層を有し、上記電極層は、厚さ方向において、上記集電体側から順に、第1電極層2および第2電極層3を有し、上記第1電極層は端面Aを有し、上記第2電極層は端面Bを有し、上記厚さ方向の断面視において、上記端面Aは、上記集電体側の端部A
1と、上記第2電極層側の端部A
2と、を有し、上記端面Bは、上記第1電極層側の端部B
1と、上記第1電極層とは反対側の端部B
2と、を有し、上記端面Aは、上記厚さ方向に垂直な方向において、上記端部A
1が上記端部A
2より突出した第1傾斜部S
1を有し、上記電極体を上記厚さ方向から見た場合に、上記第2電極層の外縁全周が、上記第1電極層の外縁全周より内側に配置される、電極体を提供することにより、上記課題を解決する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池に用いられる電極体であって、
前記電極体は、集電体および電極層を有し、
前記電極層は、厚さ方向において、前記集電体側から順に、第1電極層および第2電極層を有し、
前記第1電極層は端面Aを有し、前記第2電極層は端面Bを有し、
前記厚さ方向の断面視において、前記端面Aは、前記集電体側の端部A1と、前記第2電極層側の端部A2と、を有し、前記端面Bは、前記第1電極層側の端部B1と、前記第1電極層とは反対側の端部B2と、を有し、
前記端面Aは、前記厚さ方向に垂直な方向において、前記端部A1が前記端部A2より突出した第1傾斜部を有し、
前記電極体を前記厚さ方向から見た場合に、前記第2電極層の外縁全周が、前記第1電極層の外縁全周より内側に配置される、電極体。
【請求項2】
前記端面Bは、前記厚さ方向に垂直な方向において、前記端部B1が前記端部B2より突出した第2傾斜部を有し、
前記厚さ方向の断面視において、前記第1傾斜部は、前記第2傾斜部より外側に配置される、請求項1に記載の電極体。
【請求項3】
前記電極体を前記厚さ方向から見た場合に、前記第1傾斜部は、前記第1電極層の前記外縁全周に沿って配置され、前記第2傾斜部は、前記第2電極層の前記外縁全周に沿って配置されている、請求項2に記載の電極体。
【請求項4】
前記電極体は、前記厚さ方向に垂直な方向において前記端部A2が前記端部B1より突出することで、前記第1電極層が前記第2電極層から露出した露出部を有する、請求項2に記載の電極体。
【請求項5】
前記電極体を前記厚さ方向から見た場合に、前記露出部は、前記第1電極層の前記外縁全周に沿って、前記第1傾斜部を介して配置されている、請求項4に記載の電極体。
【請求項6】
前記端面Aにおける前記端部A2は、前記厚さ方向に延在する突起の先端T1であり、
前記厚さ方向の断面視において、前記第2電極層の前記外縁に該当する端部B3は、前記先端T1より内側に配置される、請求項1に記載の電極体。
【請求項7】
前記電極体を前記厚さ方向から見た場合に、前記第2電極層の前記外縁全周が、前記先端T1の全周より内側に配置される、請求項6に記載の電極体。
【請求項8】
前記第2電極層の厚さが、前記第1電極層の厚さより大きい、請求項1に記載の電極体。
【請求項9】
前記電極層の厚さが、200μm以上である、請求項1に記載の電極体。
【請求項10】
前記第1電極層および前記第2電極層が、それぞれバインダを含有し、
前記第1電極層における前記バインダの割合が、前記第2電極層における前記バインダの割合より多い、請求項1に記載の電極体。
【請求項11】
請求項1から請求項10までのいずれかの請求項に記載の電極体を有する、電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電極体および電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池等の電池は、集電体と、活物質を含有する電極層と、を有する電極体を備える。例えば特許文献1には、集電体としての集電箔と、複数の電極膜層が積層された電極膜と、を有するリチウムイオン二次電池が開示されている。特許文献1には、リチウムイオン二次電池が、電極膜層として、集電箔側のバインダの濃度が集電箔の反対側のバインダの濃度よりも高い層を含むことが開示されている。
【0003】
特許文献2には、集電体の表面に第1層用スラリーを塗工する工程と、第1層用スラリーが乾燥する前に、第1層用スラリー上に第2層用スラリーを塗工する工程と、を有する二次電池用電極の製造方法が開示されている。特許文献2には、第1層用スラリーに用いる第1のバインダが、第2層用スラリーに用いる第2のバインダより、粘性が高いことが開示されている。
【0004】
特許文献3には、集電体と、集電体の表面に形成され、バインダ樹脂、活物質および導電助剤を含む電極層と、を有するリチウムイオン二次電池用電極が開示されている。特許文献3には、電極層は、第一電極層と、バインダ樹脂濃度が第一電極層のバインダ樹脂濃度よりも高い第二電極層とを有することが開示されている。また、電極に関する技術ではないものの、特許文献4には、基材と、LFP粒子および第1バインダを含む第1層と、有機粒子および第2バインダを含む第2層と、を有する分離膜が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-107182号公報
【特許文献2】特開2019-096501号公報
【特許文献3】国際公開第2011/142083号
【特許文献4】特開2020-136276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば特許文献2には、集電体の表面に、スラリーを塗工して電極層を作製することが開示されている。スラリーを集電体に塗工すると、スラリーの流動性によって、塗工層(乾燥前の電極層)の端面が傾斜する(ダレる)。傾斜した端面では、クラック等の欠陥が生じやすい。特に塗工層の厚さが大きいほど、端面の傾斜量(ダレ量)は大きくなり、欠陥の発生を抑制することが難しい。
【0007】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、電極層の端面における欠陥の発生を抑制した電極体を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]
電池に用いられる電極体であって、
上記電極体は、集電体および電極層を有し、
上記電極層は、厚さ方向において、上記集電体側から順に、第1電極層および第2電極層を有し、
上記第1電極層は端面Aを有し、上記第2電極層は端面Bを有し、
上記厚さ方向の断面視において、上記端面Aは、上記集電体側の端部A1と、上記第2電極層側の端部A2と、を有し、上記端面Bは、上記第1電極層側の端部B1と、上記第1電極層とは反対側の端部B2と、を有し、
上記端面Aは、上記厚さ方向に垂直な方向において、上記端部A1が上記端部A2より突出した第1傾斜部を有し、
上記電極体を上記厚さ方向から見た場合に、上記第2電極層の外縁全周が、上記第1電極層の外縁全周より内側に配置される、電極体。
【0009】
[2]
上記端面Bは、上記厚さ方向に垂直な方向において、上記端部B1が上記端部B2より突出した第2傾斜部を有し、
上記厚さ方向の断面視において、上記第1傾斜部は、上記第2傾斜部より外側に配置される、[1]に記載の電極体。
【0010】
[3]
上記電極体を上記厚さ方向から見た場合に、上記第1傾斜部は、上記第1電極層の上記外縁全周に沿って配置され、上記第2傾斜部は、上記第2電極層の上記外縁全周に沿って配置されている、[1]または[2]に記載の電極体。
【0011】
[4]
上記電極体は、上記厚さ方向に垂直な方向において上記端部A2が上記端部B1より突出することで、上記第1電極層が上記第2電極層から露出した露出部を有する、[1]から[3]までのいずれかに記載の電極体。
【0012】
[5]
上記電極体を上記厚さ方向から見た場合に、上記露出部は、上記第1電極層の上記外縁全周に沿って、上記第1傾斜部を介して配置されている、[4]に記載の電極体。
【0013】
[6]
上記端面Aにおける上記端部A2は、上記厚さ方向に延在する突起の先端T1であり、
上記厚さ方向の断面視において、上記第2電極層の上記外縁に該当する端部B3は、上記先端T1より内側に配置される、[1]または[2]に記載の電極体。
【0014】
[7]
上記電極体を上記厚さ方向から見た場合に、上記第2電極層の上記外縁全周が、上記先端T1の全周より内側に配置される、[6]に記載の電極体。
【0015】
[8]
上記第2電極層の厚さが、上記第1電極層の厚さより大きい、[1]から[7]までのいずれかに記載の電極体。
【0016】
[9]
上記電極層の厚さが、200μm以上である、[1]から[8]までのいずれかに記載の電極体。
【0017】
[10]
上記第1電極層および上記第2電極層が、それぞれバインダを含有し、
上記第1電極層における上記バインダの割合が、上記第2電極層における上記バインダの割合より多い、[1]から[9]までのいずれかに記載の電極体。
【0018】
[11]
[1]から[10]までのいずれかに記載の電極体を有する、電池。
【発明の効果】
【0019】
本開示における電極体は、電極層の端面における欠陥の発生を抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本開示における電極体を例示する概略平面図および概略断面図である。
【
図2】本開示における電極体を例示する概略断面図である。
【
図3】本開示における電極体を例示する概略断面図である。
【
図4】本開示における電極体を例示する概略平面図および概略断面図である。
【
図5】本開示における電極体を例示する概略断面図である。
【
図6】本開示における電極体の製造方法を説明する概略断面図である。
【
図7】本開示における電池を例示する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本開示における実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。以下に示す各図は、模式的に示したものであり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張している。また、本明細書において、ある部材に対して他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」または「下に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上または直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方または下方に、別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含む。
【0022】
A.電極体
図1(a)は本開示における電極体を例示する概略平面図であり、
図1(b)は
図1(a)のX-X断面図である。
図1(a)および
図1(b)に示すように、電極体10は、集電体1と、集電体1上に配置された電極層E
1とを有する。電極層E
1は、厚さ方向D
3において、集電体1側から順に、第1電極層2および第2電極層3を有する。また、
図1(b)に示すように、第1電極層2は端面Aを有し、第2電極層3は端面Bを有する。
【0023】
図1(b)に示すように、厚さ方向D
3の断面視において、端面Aは、集電体1側の端部A
1と、第2電極層3側の端部A
2と、を有する。また、端面Bは、第1電極層2側の端部B
1と、第1電極層2とは反対側の端部B
2と、を有する。また、端面Aは、厚さ方向D
3に垂直な方向D
1において、端部A
1が端部A
2より突出した第1傾斜部S
1を有する。また、
図1(a)に示すように、電極体10を厚さ方向から見た場合に、第2電極層3の外縁O
2の全周が、第1電極層2の外縁O
1の全周より内側に配置される。
図1(a)および
図1(b)において、第1電極層2の外縁O
1は、端面Aにおける端部A
1により規定され、第2電極層3の外縁O
2は、端面Bにおける端部B
1により規定される。
【0024】
本開示によれば、電極層が第1電極層および第2電極層を有し、さらに、第2電極層の外縁全周が、第1電極層の外縁全周より内側に配置されることから、電極層の端面における欠陥の発生を抑制した電極体となる。上述したように、例えば特許文献2には、集電体の表面に、スラリーを塗工して電極層を作製することが開示されている。スラリーを集電体に塗工すると、スラリーの流動性によって、塗工層(乾燥前の電極層)の端面が傾斜する(ダレる)。傾斜した端面では、クラック等の欠陥が生じやすい。特に塗工層の厚さが大きいほど、端面の傾斜量(ダレ量)は大きくなり、欠陥の発生を抑制することが難しい。
【0025】
これに対して、本開示における電極層は、第1電極層および第2電極層を有する。そのため、第1電極層および第2電極層の作製時に、第1電極層の端面形状および第2電極層の端面形状を、緻密に制御できる。その結果、例えば同じ厚さの電極層を作製する場合、電極層が第1電極層のみの単層である場合に比べて、電極層の端面における欠陥の発生を抑制できる。
【0026】
さらに、第2電極層の外縁全周が、第1電極層の外縁全周より内側に配置されることから、第2電極層の端面の傾斜量(ダレ量)が過大になることを防止できる。その結果、第2電極層の端面における欠陥の発生を抑制できる。また、電極層の端面の傾斜量(ダレ量)が過大になることを防止することで、電極層の有効面積が小さくなることを防止でき、高容量な電極体が得られる。
【0027】
また、電極層の端面の傾斜量(ダレ量)が小さすぎると、電極層の搬送時および電極層プレスに、電極層の角が剥離しやすくなる。これに対して、本開示においては、第1電極層および第2電極層が、それぞれ端面Aおよび端面Bを有することから、電極層の端面の傾斜量(ダレ量)が小さくなりすぎることを防止でき、電極層の角が剥離することを防止できる。
【0028】
1.電極体の構成
本開示における電極体は、集電体および電極層を有する。
【0029】
(1)集電体
集電体の平面視形状(厚さ方向から見た形状)は、特に限定されないが、例えば、長方形、正方形等の四角形である。例えば、
図1(a)に示す集電体1の平面視形状は長方形であり、第1方向D
1が長手方向に該当し、第2方向D
2(第1方向D
1に直交する方向)が短手方向に該当する。第1方向D
1は、例えば、電極体の作製時における集電体1の搬送方向に該当する。
【0030】
(2)電極層
電極層の平面視形状は、特に限定されないが、例えば、長方形、正方形等の四角形である。
図1(a)に示す電極層E
1の平面視形状は長方形であり、第1方向D
1が長手方向に該当し、第2方向D
2が短手方向に該当する。
【0031】
図1(a)および
図1(b)に示すように、電極層E
1は、厚さ方向D
3において、集電体1側から順に、第1電極層2および第2電極層3を有する。すなわち、集電体1上に第1電極層2が配置され、第1電極層2上に第2電極層3が配置される。厚さ方向D
3は、電極体の厚さに対応する方向であり、通常、第1方向D
1および第2方向D
2に直交する。
【0032】
図1(b)に示すように、第1電極層2は、集電体1側の主面21と、第2電極層3側の主面22と、を有する。第1電極層2における端面Aは、主面21および主面22を結ぶ側面である。端面Aは、主面21の外縁全周、および、主面22の外縁全周に沿って配置される。
【0033】
図1(b)に示すように、端面Aは、厚さ方向D
3に垂直な方向D
1において、端部A
1が端部A
2より突出した第1傾斜部S
1を有する。第1傾斜部S
1は、典型的には、第1電極層2の作製時に、スラリーの流動性に起因して生じる部位である。
図1(b)では、第1方向D
1における端面Aが、第1傾斜部S
1を有する。図示しないが、第1方向D
1において、対向する2つの端面Aが、それぞれ、第1傾斜部S
1を有していてもよい。また、
図1(a)に示すように、第2方向D
2における端面Aが、第1傾斜部S
1を有していてもよい。図示しないが、第2方向D
2において、対向する2つの端面Aが、それぞれ、第1傾斜部S
1を有していてもよい。
【0034】
図1(a)に示すように、電極体10を厚さ方向から見た場合に、第1傾斜部S
1は、第1電極層2の外縁O
1の全周に沿って配置されていてもよい。この場合、外縁O
1は、端面Aにおける端部A
1により規定され、外縁O
1の内側に第1傾斜部S
1が配置される。
【0035】
図1(a)に示すように、電極体10を厚さ方向から見た場合に、第2電極層3の外縁O
2の全周が、第1電極層2の外縁O
1の全周より内側に配置される。これにより、電極層の端面における欠陥の発生を抑制できる。
【0036】
図1(b)に示すように、端面Bは、厚さ方向D
3に垂直な方向D
1において、端部B
1が端部B
2より突出した第2傾斜部S
2を有していてもよい。第2傾斜部S
2は、典型的には、第2電極層2の作製時に、スラリーの流動性に起因して生じる部位である。
図1(b)では、第1方向D
1における端面Bが、第2傾斜部S
2を有する。図示しないが、第1方向D
1において、対向する2つの端面Bが、それぞれ、第2傾斜部S
2を有していてもよい。また、
図1(a)に示すように、第2方向D
2における端面Bが、第2傾斜部S
2を有していてもよい。図示しないが、第2方向D
2において、対向する2つの端面Bが、それぞれ、第2傾斜部S
2を有していてもよい。
【0037】
図1(a)に示すように、電極体10を厚さ方向から見た場合に、第2傾斜部S
2は、第2電極層3の外縁O
2の全周に沿って配置されていてもよい。この場合、外縁O
2は、端面Bにおける端部B
1により規定され、外縁O
2の内側に第2傾斜部S
2が配置される。
【0038】
厚さ方向D
3の断面視において、第1傾斜部S
1は、第2傾斜部S
2より外側に配置されることが好ましい。例えば、
図1(b)では、第1方向D
1において、第1傾斜部S
1の全体が、第2傾斜部S
2より外側に配置されている。
【0039】
図1(b)に示すように、電極体10は、露出部23を有していてもよい。露出部23は、厚さ方向D
3に垂直な方向D
1において端部A
2が端部B
1より突出することで、第1電極層2が第2電極層3から露出した部位である。
図1(b)では、第1方向D
1における端面Aおよび端面Bの間に、露出部23が配置されている。図示しないが、第1方向D
1における電極層10の両端面に、それぞれ、露出部23が配置されていてもよい。また、
図1(a)に示すように、第2方向D
2における端面Aおよび端面Bの間に、露出部23が配置されていてもよい。図示しないが、第2方向D
2における電極層10の両端面に、それぞれ、露出部23が配置されていてもよい。また、
図1(a)に示すように、電極体10を厚さ方向から見た場合に、露出部23は、第1電極層2の外縁O
1の全周に沿って、第1傾斜部S
1を介して、配置されていてもよい。
【0040】
図1(b)に示すように、第1傾斜部S
1の幅をW
Aとし、第2傾斜部S
2の幅をW
Bとし、露出部23の幅をW
Cとする。W
Aは、例えば、0.1mm以上10mm以下であり、0.5mm以上2mm以下であってもよい。W
Bは、例えば、0.1mm以上10mm以下であり、0.5mm以上2mm以下であってもよい。W
Cは、例えば、0.1mm以上10mm以下であり、0.1mm以上2mm以下であってもよい。
【0041】
第1電極層の厚さ、および、第2電極層の厚さの関係は、特に限定されない。両者の厚さは、同じであってもよく、異なっていてもよい。「第1電極層の厚さ、および、第2電極層の厚さが同じである」とは、両者の厚さの差が、10μm以下であることをいう。
【0042】
図2(a)に示すように、第2電極層3の厚さT
2は、第1電極層2の厚さT
1より大きくてもよい。この場合、T
1に対するT
2の割合(T
2/T
1)は、1より大きく、1.5以上であってもよい。一方、T
2/T
1は、例えば10以下であり、5以下であってもよい。
【0043】
図2(b)に示すように、第2電極層3の厚さT
2は、第1電極層2の厚さT
1より小さくてもよい。この場合、T
1に対するT
2の割合(T
2/T
1)は、1より小さく、0.9以下であってもよく、0.5以下であってもよい。一方、T
2/T
1は、例えば0.1以上である。
【0044】
本開示における電極層は、第1電極層および第2電極層を少なくとも有する。
図2(a)に示すように、電極層E
1は、第1電極層2および第2電極層3のみを有していてもよい。一方、
図2(c)に示すように、電極層E
1は、第1電極層2および第2電極層3に加えて、他の電極層4を有していてもよい。他の電極層4は、単一の層であってもよく、複数の層であってもよい。
【0045】
第1電極層2の厚さT1は、例えば、50μm以上であり、500μm以下である。第2電極層3の厚さT2は、例えば、50μm以上であり、500μm以下である。また、電極層E1の厚さは、例えば200μm以上であり、400μm以上であってもよく、600μm以上であってもよい。一方、電極層E1の厚さは、例えば1000μm以下である。
【0046】
図2(d)に示すように、電極体10は、上述した露出部(例えば、
図1(b)における露出部23)を有しなくてもよい。
図2(d)において、第1電極層2における端部A
2の位置と、第2電極層3における端部B
1の位置とが、一致している。
【0047】
第1電極層および第2電極層は、それぞれバインダを含有していてもよい。その場合、第1電極層におけるバインダの割合(重量%)と、第2電極層におけるバインダの割合(重量%)との関係は特に限定されない。両者の割合は、同じであってもよく、異なっていてもよい。「第1電極層におけるバインダの割合(重量%)と、第2電極層におけるバインダの割合(重量%)とが同じである」とは、両者の割合の差が、1%以下であることをいう。
【0048】
第1電極層におけるバインダの割合(重量%)をC1とし、第2電極層におけるバインダの割合(重量%)をC2とする。C1>C2の場合、C2に対するC1の比率(C1/C2)は、例えば3以上であり、5以上であってもよい。一方、C1/C2は、例えば10以下である。また、C1>C2の場合、上述した厚さの関係は、特に限定されず、T2>T1であってもよく、T2=T1であってもよく、T2<T1であってもよい。
【0049】
C1<C2の場合、C2に対するC1の比率(C1/C2)は、例えば0.9以下であり、0.8以下であってもよい。一方、C1/C2は、例えば0.1以上である。また、C1<C2の場合、上述した厚さの関係は、特に限定されず、T2>T1であってもよく、T2=T1であってもよく、T2<T1であってもよい。なお、C1=C2の場合も、上述した厚さの関係は、特に限定されず、T2>T1であってもよく、T2=T1であってもよく、T2<T1であってもよい。
【0050】
図3(a)に示すように、電極体10は、集電体1の一方の面上に電極層E
1を有し、集電体1の他方の面上に電極層を有しなくてもよい。また、
図3(b)に示すように、電極体10は、集電体1の一方の面上に電極層E
1を有し、集電体1の他方の面上に電極層E
2を有してもよい。電極層E
2は、単一の層であってもよく、複数の層であってもよい。例えば、
図3(b)における電極層E
2は、集電体1側から順に、第3電極層5および第4電極層6を有する。電極層E
1および電極層E
2は、極性が同じであってもよく、逆であってもよい。前者の場合、電極層E
1および電極層E
2が正極層であってもよく、電極層E
1および電極層E
2が負極層であってもよい。後者の場合、電極層E
1が正極層であり、電極層E
2が負極層であってもよく、電極層E
1が負極層であり、電極層E
2が正極層であってもよい。電極層E
2の詳細については、上述した電極層E
1に記載した内容と同様である。第3電極層は、上述した第1電極層と同様の特徴を有していてもよい。また、第4電極層は、上述した第2電極層と同様の特徴を有していてもよい。
【0051】
(変形例)
本開示における電極層の好ましい変形例は、以下の通りである。すなわち、上記端面Aにおける上記端部A2は、上記厚さ方向に延在する突起の先端T1であり、上記厚さ方向の断面視において、上記第2電極層の上記外縁に該当する端部B3は、上記先端T1より内側に配置されることが好ましい。なお、変形例の好ましい特徴については、突起を設けたこと以外は、上述した内容と同様である。
【0052】
図4(a)は本開示における電極体を例示する概略平面図であり、
図4(b)は
図4(a)のX-X断面図である。
図4(b)に示すように、端面Aにおける端部A
2は、厚さ方向D
3に延在する突起Pの先端T
1であり、厚さ方向D
3の断面視において、第2電極層3の外縁O
2に該当する端部B
3は、先端T
1より内側に配置されることが好ましい。
【0053】
図4(b)に示すように、第1方向D
1において、第2電極層3の外縁O
2に該当する端部B
3は、先端T
1より内側に配置されていてもよい。図示しないが、第1方向D
1において、対向する2つの端部B
3が、それぞれ、先端T
1より内側に配置されていてもよい。また、
図4(a)に示すように、第2方向D
2において、第2電極層3の外縁O
2に該当する端部B
3は、先端T
1より内側に配置されていてもよい。図示しないが、第2方向D
2において、対向する2つの端部B
3が、それぞれ、先端T
1より内側に配置されていてもよい。また、
図4(a)に示すように、電極体10を厚さ方向から見た場合に、先端T
1が、第1電極層2の外縁O
1の全周に沿って配置されていてもよい。さらに、第2電極層3の外縁O
2の全周が、先端T
1の全周より内側に配置されていてもよい。
【0054】
図4(b)に示すように、突起Pの幅をW
Dとする。W
Dは、例えば、0.1mm以上、10mm以下であり、1mm以上、3mm以下であってもよい。
【0055】
図5(a)に示すように、第1電極層2の厚さをT
1とし、突起Pの厚さをT
11とする。T
1は、突起P以外の平坦面での厚さであり、具体的には、第1電極層2における主面21および主面22の距離(厚さ方向D
3における距離)である。一方、T
11は、第1電極層2における主面21および突起Pの先端T
1の距離(厚さ方向D
3における距離)である。T
1に対するT
11の割合(T
11/T
1)は、例えば1.1以上であり、1.3以上であってもよい。一方、T
11/T
1は、例えば2以下であり、1.8以下であってもよい。
【0056】
図5(a)に示すように、端部B
2は、厚さ方向D
3において、突起Pの先端T
1より突出していてもよい。この場合、通常、端部B
2より外側(図面右側)に、端部B
3が配置される。
【0057】
図5(b)に示すように、突起Pの先端T
1は、厚さ方向D
3において、端部B
2より突出していてもよい。また、
図5(c)に示すように、突起Pの先端T
1の位置と、端部B
2の位置と、が一致していてもよい。これらの場合、端部B
2が、端部B
3と一致する。また、
図5(d)に示すように、突起Pの先端T
1は、曲線形状であってもよい。
【0058】
2.電極体の部材
本開示における電極体は、集電体と、上記集電体上に配置された電極層と、を有する。集電体の材料としては、例えば、アルミニウム、銅、SUS、ニッケル等の金属材料が挙げられる。集電体の形状は、例えば箔状である。
【0059】
電極層は、活物質を少なくとも含有する。電極層は、活物質として、正極活物質を含有していてもよく、負極活物質を含有していてもよい。正極活物質としては、例えば酸化物活物質が挙げられる。酸化物活物質としては、具体的には、LiCoO2、LiMnO2、LiNiO2、LiVO2、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2等の岩塩層状型活物質、LiMn2O4、Li(Ni0.5Mn1.5)O4等のスピネル型活物質、LiFePO4、LiMnPO4、LiNiPO4、LiCoPO4等のオリビン型活物質が挙げられる。一方、負極活物質としては、例えば、Li、Li合金等のLi系活物質、グラファイト等のカーボン活物質、Si、SiO等のSi系活物質が挙げられる。
【0060】
電極層は、導電材を含有していてもよい。導電材としては、例えば、炭素材料が挙げられる。炭素材料としては、例えば、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック(KB)等の粒子状炭素材料、炭素繊維、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノファイバー(CNF)等の繊維状炭素材料が挙げられる。電極層は、導電材を1種のみ含有していてもよく、2種以上含有していてもよい。
【0061】
電極層は、バインダを含有していてもよい。バインダとしては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)等のセルロース系バインダ、スチレンブタジエンゴム(SBR)等のゴム系バインダ、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のフッ素系バインダが挙げられる。電極層は、バインダを1種のみ含有していてもよく、2種以上含有していてもよい。
【0062】
3.電極体の製造方法
本開示においては、上述した電極体を製造する電極体の製造方法であって、上記集電体に第1スラリーを塗工し、第1塗工層を形成する第1塗工層形成工程と、上記第1塗工層に第2スラリーを塗工し、第2塗工層を形成する第2塗工層形成工程と、上記第1塗工層および上記第2塗工層を乾燥し、上記第1電極層および上記第2電極層を形成する乾燥工程と、を有する、電極体の製造方法を提供できる。
【0063】
図6は、本開示における電極体の製造方法を説明する概略断面図である。
図6に示すように、集電体1を搬送しつつ、ダイコータ60aを用いて、第1スラリーを、ローラー50上に配置された集電体1に塗工し、第1塗工層2xを形成する(第1塗工層形成工程)。次に、集電体1を搬送しつつ、ダイコータ60bを用いて、第2スラリーを、ローラー50上に配置された第1塗工層2xに塗工し、第2塗工層3xを形成する(第2塗工層形成工程)。その後、特に図示しないが、第1塗工層および第2塗工層を乾燥し、第1電極層および第2電極層を形成する(乾燥工程)。
【0064】
(1)第1塗工層形成工程
第1塗工層形成工程は、上記集電体に第1スラリーを塗工し、第1塗工層を形成する工程である。第1スラリーは、活物質および分散媒を少なくとも含有する。また、第1スラリーは、導電材およびバインダの少なくとも一方を含有することが好ましい。
【0065】
第1スラリーの固形分におけるバインダの割合(重量%)は、後述する第2スラリーの固形分におけるバインダの割合(重量%)より多いことが好ましい。第1スラリーの固形分におけるバインダの割合(重量%)をC1´とし、第2スラリーの固形分におけるバインダの割合(重量%)をC2´とする。C2´に対するC1´の比率(C1´/C2´)は、例えば3以上であり、5以上であってもよい。一方、C1´/C2´は、例えば10以下である。なお、C1´およびC2´の関係については、上述したC1およびC2の関係と同様であってもよい。
【0066】
集電体に第1スラリーを塗工する方法は、特に限定されないが、例えば、スリットダイコータ等のダイコータを用いる方法が挙げられる。
【0067】
(2)第2塗工層形成工程
第2塗工層形成工程は、上記第1塗工層に第2スラリーを塗工し、第2塗工層を形成する工程である。第2スラリーは、活物質および分散媒を少なくとも含有する。また、第2スラリーは、導電材およびバインダの少なくとも一方を含有することが好ましい。
【0068】
第1塗工層に第2スラリーを塗工する方法は、特に限定されないが、例えば、スリットダイコータ等のダイコータを用いる方法が挙げられる。
【0069】
例えば、
図1(a)における第1方向D
1を、
図6における集電体1の搬送方向とする。この場合、
図1(b)に示す構造は、例えば、
図6におけるダイコータ60bが第2スラリーの塗工を開始するタイミングを調整することで、形成することができる。また、第2方向D
2において、
図1(b)に示す構造と同様の構造を形成するために、例えば、
図6におけるダイコータ60bのダイヘッドの幅(第2方向D
2における長さ)を、ダイコータ60aのダイヘッドの幅より小さくする方法を採用してもよい。
【0070】
例えば、
図4(a)における第1方向D
1を、
図6における集電体1の搬送方向とする。この場合、
図4(b)に示す構造は、例えば、
図6におけるダイコータ60aのスラリー塗工量を、端面において一時的に増加させることで、形成することができる。また、第2方向D
2において、
図4(b)に示す構造と同様の構造を形成するために、例えば、
図6におけるダイコータ60aにおいて、ダイヘッドの幅方向における端部のスラリー塗工量を、中央部のスラリー塗工量より多く方法を採用してもよい。また、突起Pを形成するために、別途、ダイコータを用いてもよい。
【0071】
(3)乾燥工程
乾燥工程は、上記第1塗工層および上記第2塗工層を乾燥し、上記第1電極層および上記第2電極層を形成する工程である。乾燥方法および乾燥条件については、特に限定されず、公知の方法および公知の条件を採用できる。
【0072】
B.電池
本開示における電池は、上記「A.電極体」に記載された電極体を有する。
【0073】
本開示によれば、上述した電極体を用いることで、電極層の端面における欠陥の発生を抑制した電池となる。
【0074】
図7は、本開示における電池を例示する概略断面図である。
図7に示す電池100は、電極体10A、電極体10Bおよび電極体10Cを有する。電極体10A、電極体10Bおよび電極体10Cの少なくとも一つが、上記「A.電極体」に記載された電極体である。
【0075】
電極体10Aは、集電体11と、集電体11上に配置された正極層12とを有する。電極体10Aにおける集電体11は、正極集電体として機能する。また、電極体10Bは、集電体11と、集電体11の一方の面上に配置された正極層12と、集電体11の他方の面上に配置された負極層13と、を有する。電極体10Bにおける負極層13と、電極体10Aにおける正極層12とは、セパレータ14を介して、対向するように配置されている。また、電極体10Cは、集電体11と、集電体11上に配置された負極層13とを有する。電極体10Cにおける集電体11は、負極集電体として機能する。また、電極体10Cにおける負極層13と、電極体10Bにおける正極層12とは、セパレータ14を介して、対向するように配置されている。
【0076】
本開示における電池は、上記「A.電極体」に記載された電極体を、一つのみ有していてもよく、複数有していてもよい。本開示における電池は、セパレータおよび電解液を有していてもよい。セパレータおよび電解液の種類は特に限定されず、公知のセパレータおよび公知の電解液を用いることができる。また、本開示における電池は、ゲル電解質、ポリマー電解質等の固体電解質を含有していてもよい。
【0077】
本開示における電池の種類は、特に限定されないが、例えば、リチウムイオン二次電池が挙げられる。電池の用途としては、例えば、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、電気自動車(BEV)、ガソリン自動車、ディーゼル自動車等の車両の電源が挙げられる。特に、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)または電気自動車(BEV)の駆動用電源に用いられることが好ましい。また、本開示における電池は、車両以外の移動体(例えば、鉄道、船舶、航空機)の電源として用いられてもよく、情報処理装置等の電気製品の電源として用いられてもよい。
【0078】
本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示における特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示における技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0079】
1…集電体
2…第1電極層
3…第2電極層
10…電極体
100…電池