(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057776
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】プロジェクター
(51)【国際特許分類】
G03B 21/00 20060101AFI20240418BHJP
H04N 5/74 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
G03B21/00 D
H04N5/74 A
H04N5/74 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164670
(22)【出願日】2022-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(72)【発明者】
【氏名】安田 政紀
【テーマコード(参考)】
2K203
5C058
【Fターム(参考)】
2K203FA23
2K203FA32
2K203FA62
2K203GB42
2K203GB62
2K203GC14
2K203HB22
2K203KA63
2K203MA32
5C058BA35
5C058EA02
5C058EA12
5C058EA26
(57)【要約】
【課題】レンズシフト機能を備えながら小型化を実現したプロジェクターを提供する。
【解決手段】本発明のプロジェクターは、画像光を表示する画像表示領域を有する画像表示装置を含む画像生成部と、画像表示装置から射出された画像光を被投射面に投射する投射光学系と、投射光学系の光軸に直交する面内において当該投射光学系の位置をシフト可能とするレンズシフト機構と、レンズシフト機構が投射光学系を移動する場合に画像表示装置を制御して、画像表示領域のうちの一部である縮小表示領域に画像光を縮小状態で表示させる制御装置と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像光を表示する画像表示領域を有する画像表示装置を含む画像生成部と、
前記画像表示装置から射出された前記画像光を被投射面に投射する投射光学系と、
前記投射光学系の光軸に直交する面内において当該投射光学系の位置をシフト可能とするレンズシフト機構と、
前記レンズシフト機構が前記投射光学系を移動する場合に前記画像表示装置を制御して、前記画像表示領域のうちの一部である縮小表示領域に前記画像光を縮小状態で表示させる制御装置と、を備える
プロジェクター。
【請求項2】
前記制御装置は、前記レンズシフト機構による前記投射光学系のシフト量を検出し、検出した前記シフト量に基づいて前記縮小表示領域の面積を決定する
請求項1に記載のプロジェクター。
【請求項3】
前記レンズシフト機構は、前記投射光学系を移動させるステッピングモーターを含み、
前記制御装置は、前記ステッピングモーターに供給されるパルス信号に基づいて前記投射光学系の前記シフト量を検出する
請求項2に記載のプロジェクター。
【請求項4】
前記制御装置は、前記画像表示装置を制御し、前記画像表示領域における前記縮小表示領域の外側領域を非表示状態とする
請求項1から請求項3のうちのいずれか一項に記載のプロジェクター。
【請求項5】
前記制御装置は、前記縮小表示領域のアスペクト比を前記画像表示領域のアスペクト比に等しくするように、前記縮小表示領域の面積を決定する
請求項1から請求項3のうちのいずれか一項に記載のプロジェクター。
【請求項6】
前記画像表示装置は液晶パネルを有し、
前記画像生成部は、前記液晶パネルに光を照射する光源を有する
請求項1から請求項3のうちのいずれか一項に記載のプロジェクター。
【請求項7】
前記液晶パネルはカラーフィルターを有し、
前記光源が射出する前記光は白色光である
請求項6に記載のプロジェクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載のプロジェクターは、1つの液晶パネルを含む画像形成ユニットに対して投射光学系を移動させるレンズシフト機構を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記レンズシフト機構を用いる場合、投射光学系の有効光学範囲であるイメージサークルを大きくする必要がある。一般的にイメージサークルを大きくすると投射光学系の径が大型化するため、レンズシフト機能を採用しつつ装置構成の小型化を図ることは難しかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明の一つの態様のプロジェクターは、画像光を表示する画像表示領域を含む画像表示パネルを有する画像生成部と、前記画像表示パネルから射出された前記画像光を被投射面に投射する投射光学系と、前記投射光学系の光軸に直交する面内において当該投射光学系の位置をシフト可能とするレンズシフト機構と、前記レンズシフト機構が前記投射光学系を移動する場合に前記画像表示パネルを制御して、前記画像表示領域のうちの一部である縮小表示領域に前記画像光を縮小状態で表示させる制御装置と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図3】レンズシフト時のイメージサークルと画像表示領域との位置関係を示す図である。
【
図4】レンズシフト時に画像表示装置から射出された画像光の振舞いを示す図である。
【
図5】3板方式のプロジェクターの要部構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0008】
図1は、本実施形態のプロジェクター1の概略構成を示す図である。
図1に示すように、本実施形態のプロジェクター1は、被投射面であるスクリーンSCR上にカラー画像を表示する投射型画像表示装置である。
プロジェクター1は、画像生成部2と、投射光学系3と、レンズシフト機構4と、制御装置7と、を備えている。
【0009】
以下、図面中に示すXYZ座標系を用いて各部材の配置関係を説明する場合がある。各図面において、Y軸はプロジェクター1における光学部品が並ぶ基準軸である光軸AXに沿う軸である。X軸はY軸に直交し、スクリーンSCRに投射される画像光LTの横幅方向に沿う軸である。Z軸はX軸およびY軸に直交する軸であり、プロジェクター1の上下に沿う軸である。
【0010】
本実施形態では、例えば、Z軸に沿う両方向をまとめてプロジェクター1における「上下方向Z」、+Z方向に向かう方向を「上側」、-Z方向に向かう方向を「下側」と称す。また、X軸に沿う両方向をまとめてプロジェクター1における「左右方向X」、+X方向に向かう方向を「右側」、-X方向に向かう方向を「左側」と称す。また、Y軸に沿う両方向をまとめてプロジェクター1における「前後方向Y」、+Y方向に向かう方向を「前側」、-Y方向に向かう方向を「後側」と称する。
なお、上下方向Z、左右方向Xおよび前後方向Yとは、単にプロジェクター1の各構成部材の配置関係を説明するための名称であって、プロジェクター1における実際の設置姿勢や向きを規定するものではない。
【0011】
画像生成部2は、光源20と、集光光学系21と、画像表示装置22と、平行化光学系23と、を有する。光源20は白色光Lを射出する。本実施形態の光源20は、例えば、発光ダイオード(LED)から構成される。このように光源20としてLEDを用いることでプロジェクター1の小型化および軽量化が可能となる。
【0012】
集光光学系21は光源20から放射状に射出される白色光Lを集光する。集光光学系21は、例えば、2個の凸レンズ21a,21bで構成される。なお、集光光学系21を構成するレンズの個数については特に限定されず、1個あるいは3個以上であってもよい。また、集光光学系21は、例えば、レンズに限らず、リフレクターやロッド状のレンズであってもよい。
【0013】
集光光学系21により集光された白色光Lは平行化光学系23に入射する。
平行化光学系23は、集光光学系21と画像表示装置22との間に配置される。平行化光学系23は集光光学系21から入射する白色光Lを平行化して画像表示装置22に入射させる。本実施形態において、平行化光学系23はフレネルレンズで構成され、正のパワーを有する凸レンズとして機能する。このため、平行化光学系23は光軸方向の厚さを抑えることでプロジェクター1の光軸AXに沿う前後方向Yの寸法が抑えられている。
【0014】
画像表示装置22は、カラーフィルターを備えた液晶パネル221と、入射側偏光板222と、射出側偏光板223と、を有している。本実施形態のプロジェクター1は、画像表示装置22を1つ用いた単板方式を採用することで装置構成の小型化を図っている。
【0015】
カラーフィルターを備えた液晶パネル221は、光源20からの白色光Lを画像情報に応じて変調して所望の画像光LTをフルカラー表示する画像表示領域GAを有する。入射側偏光板222は、液晶パネル221の光入射側に設けられている。射出側偏光板223は、液晶パネル221の光射出側に設けられている。入射側偏光板222と射出側偏光板223とは、互いの偏光軸が直交するように配置されている。
【0016】
投射光学系3は、集光光学系24と、複数のレンズからなる投射レンズ群30とを含み、画像表示装置22から射出された画像光LTをスクリーンSCRに向けて拡大投射する。これにより、スクリーンSCR上には、拡大されたカラー画像が表示される。
【0017】
集光光学系24は、画像表示装置22の光射出側に配置される。具体的に集光光学系24は、射出側偏光板223の光射出側に配置される。集光光学系24は、画像表示装置22から射出された光を集光させる。本実施形態において、集光光学系24はフレネルレンズで構成され、正のパワーを有する凸レンズとして機能する。このため、集光光学系24は光軸方向の厚さを抑えることで投射光学系3の光軸3aに沿う前後方向Yの寸法が抑えられている。
本実施形態の投射光学系3では、集光光学系24により画像表示装置22から射出された画像光LTを集光させることで後段に配置される投射レンズ群30のレンズ径を小型化することができる。これにより、投射光学系3自体の小型化を図っている。
【0018】
レンズシフト機構4は、レンズシフト部材42と、レンズ駆動部43と、を有する。レンズシフト部材42は投射光学系3を保持する部材でありプロジェクター1の筐体部に対して移動可能に連結される。レンズ駆動部43は、ステッピングモーター43aやギヤを含み、レンズシフト部材42を移動する駆動力を発生させる。つまり、レンズ駆動部43は、投射光学系3を移動させる駆動力を発生する。また、レンズシフト機構4は、投射レンズの光軸3aの移動と合致するように、集光光学系24の光軸をシフトさせることができる。集光光学系24の光軸のシフト方法としては、上述のレンズシフト部材42と同様に、プロジェクター1の筐体部に対して、モーター等を用いてシフトさせることができる。
【0019】
レンズシフト機構4は、制御装置7から送信される信号に基づいて、投射光学系3の光軸3aに直交するXZ面に沿う面内で投射光学系3の位置を所定方向にシフト可能となっている。つまり、レンズシフト機構4は、投射光学系3の光軸3aを、例えば上下方向Z、左右方向Xあるいは上下方向Zおよび左右方向Xに交差する斜め方向に移動させることでスクリーンSCR上に表示される画像位置を調整することができる。本実施形態のプロジェクター1は、レンズシフト機構4を備えることで、スクリーンSCR上の所望の位置に画像をシフトさせて表示可能である。
【0020】
図2は本実施形態の制御装置7の構成の一例を示す図である。
図2に示すように、本実施形態の制御装置7は、制御部70と、記憶部71と、通信部72と、を備える。これらの構成要素は、バスを介して相互に通信可能に接続されている。また、制御装置7は、通信部72を介して画像生成部2、レンズシフト機構4、他の装置等のそれぞれと通信を行う。プロジェクター1は、制御装置7の通信部72を介して外部機器から送信された画像信号を画像生成部2に送信する。
【0021】
制御部70は、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。なお、制御部70は、CPUに代えて、DSP(Digital Signal Processor)、マイコン等の他のプロセッサーであってもよい。制御部70は、記憶部71に格納された各種のプログラムを実行する。なお、制御部70は、複数のハードウェアにより構成されてもよく、単一のプロセッサーで構成されてもよい。また、制御部70は、プロジェクター1の各機能を実現するようプログラムされた各種のプログラムをハードウェア回路として搭載した構成であってもよい。この場合、例えば、制御部70は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等によって構成される。
【0022】
記憶部71は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、ROM(Read-Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を含む。なお、記憶部71は、制御装置7に内蔵されるものに代えて、USB等のデジタル入出力ポート等によって接続された外付け型の記憶装置であってもよい。記憶部71は、制御装置7が処理する各種の情報、各種の画像、動作プログラム等を格納する。なお、記憶部71は、1つの記憶装置によって構成されてもよく、複数の記憶装置によって構成されてもよい。また、当該複数の記憶装置には、制御装置7と別体の情報処理装置が備える記憶装置が含まれる構成であってもよい。本実施形態の場合、記憶部71には、制御部70により実行される制御プログラムや、プロジェクター1の動作に関する各種の設定値を含む設定データ等が記憶されている。
【0023】
通信部72は、例えば、USB等のデジタル入出力ポート、イーサネット(登録商標)ポート等を含んで構成される。
【0024】
本実施形態のプロジェクター1において、制御装置7は画像生成部2およびレンズシフト機構4と電気的に接続され、画像生成部2およびレンズシフト機構4の動作を制御する。制御装置7は、画像生成部2における液晶パネル221の駆動、および、レンズシフト機構4におけるレンズ駆動部43のステッピングモーター43aの駆動を制御する。なお、制御装置7による詳しい動作の説明は後述する。
【0025】
一般に投射レンズの位置をシフトさせるレンズシフト機構を採用する場合、投射レンズのシフト範囲は投射レンズのイメージサークルの大きさに基づいて設定される。
ここで、投射レンズのイメージサークルとは、投射レンズを通過した光が、所定の品質条件を満たして結像する円形状の範囲である。すなわち、液晶パネルから射出された画像光が、投射レンズのイメージサークル内を通過すれば、投射レンズを通過した画像光がスクリーン上で結像される。
【0026】
このため、本実施形態のプロジェクター1の場合、投射光学系3のレンズシフト範囲は、液晶パネル221から射出された画像光LTが投射光学系3のイメージサークル内を通過するように設定されている。これは、投射光学系3のイメージサークルの外側にはみ出した画像光LTはスクリーンSCR上に結像できないためである。
【0027】
一般にイメージサークルのサイズを大きくするほど投射光学系のレンズシフト範囲が大きくなる。このため、レンズシフト機構を採用する場合、出来るだけイメージサークルの大きい投射光学系を用いることが好ましい。しかしながら、投射光学系はイメージサークルを大きくするほどレンズ径が大きくなって大型化し、プロジェクターの重量増加や大型化といった新たな問題を生じさせてしまう。
【0028】
特に本実施形態のプロジェクター1は単板方式の構成を採用するため、三板方式のプロジェクターに比べてサイズの大きい液晶パネル221を用いている。一般にサイズの大きい液晶パネルを用いると、イメージサークル内に占める画像光の割合が大きくなる。このため、単板方式とレンズシフト機構とを組み合わせる場合、投射レンズのイメージサークルを大きくする必要があり、投射光学系の大型化ひいてはプロジェクターの大型化を招いてしまう。
【0029】
これに対して、本実施形態のプロジェクター1では、後述のようにレンズシフト時において、画像表示装置22の液晶パネル221における画像表示領域GAのうちの一部の領域に画像光LTを縮小状態で表示させるようにしている。本明細書において、画像光LTを縮小状態で表示する画像表示領域GAの一部の領域を縮小表示領域と称し、縮小表示領域に縮小状態で表示される画像光LTを縮小画像光と称す。
【0030】
縮小表示領域は、レンズシフト時において画像表示領域GAのうちイメージサークルの内側に収まる領域である。このため、縮小表示領域に表示された縮小画像光は投射光学系3のイメージサークル内を通過し、スクリーンSCR上に良好に表示される。
【0031】
続いて、本実施形態のプロジェクター1の動作について説明する。具体的に制御装置7による画像表示装置22の制御について説明する。
制御装置7は、レンズシフト機構4による投射光学系3のシフト量を検出する。
制御装置7は、レンズシフト機構4のステッピングモーター43aと電気的に接続されている。このため、制御装置7は、ステッピングモーター43aに供給されるパルス信号を取得可能であり、取得したパルス信号に基づいてレンズシフト機構4によるレンズシフト量を検出する。
【0032】
具体的に制御装置7は、ステッピングモーター43aに供給するパルス信号とパルス信号に対応するステッピングモーター43aによる投射光学系3のシフト位置との関係に関する情報を予め記憶部71に記憶している。
【0033】
制御装置7は、検出したパルス信号と、記憶部71に記憶されたパルス信号およびシフト量の関係に関する情報とを比較することで、レンズシフト機構4による投射光学系3のシフト量を検出し、投射光学系3のイメージサークルに対する画像表示装置22の画像表示領域GAの位置を算出する。
【0034】
図3はレンズシフト機構4により投射光学系3をシフトさせた際のイメージサークルIMと液晶パネル221の画像表示領域GAとの位置関係を示した概念図である。
図3では画像表示装置22に対して投射光学系3を上下方向Zの上側にシフトさせ、イメージサークルIMの外側に画像表示領域GAの一部がはみ出した状態を示している。
【0035】
図3に示すように、制御装置7は、画像表示領域GAの外周辺とイメージサークルIMとの交点位置から画像表示領域GAにおけるイメージサークルIMに対する位置を求め、イメージサークルIM内に収まる縮小画像光LT1を表示するための縮小表示領域GA1の面積を決定する。
このようにして制御装置7は、投射光学系3のシフト量に基づいて縮小表示領域GA1の面積を決定するため、縮小表示領域GA1の面積が過剰に小さくなり過ぎることを抑制できる。つまり、縮小表示領域GA1の面積を適正な大きさに設定できる。
以下、画像表示領域GAのうち縮小表示領域GA1の外側に位置する領域を外側領域GA2と称し、外側領域GA2のうちイメージサークルIMからはみ出した領域をはみ出し領域GA3と称す。
【0036】
本実施形態の制御装置7は、レンズシフト機構4が投射光学系3を移動する場合に画像表示装置22を制御し、画像表示領域GAのうちの一部である縮小表示領域GA1に画像光LTを縮小した縮小画像光LT1を表示する。
【0037】
図4は投射光学系3をシフトさせた際の画像表示装置22から射出された画像光LTにおける振舞いを示した図である。
図4は
図3のIV-IV線矢視による断面に対応する図である。なお、
図4では説明を単純化するため、投射光学系3のイメージサークルIMを画像表示装置22の画像表示領域GAと投射光学系3の入射面との間の任意の位置に示した。
【0038】
図4に示すように、投射光学系3のイメージサークルIMに収まる縮小表示領域GA1から射出された縮小画像光LT1は、投射光学系3を介してスクリーンSCR上に良好に結像される。一方、投射光学系3のイメージサークルIMの外側にはみ出した画像表示領域GAのはみ出し領域GA3から射出された画像光LTは投射光学系3を介して良好に射出されないため、プロジェクター内部で乱反射されることで迷光として投射光学系3に入射する。このような迷光はゴースト成分としてスクリーンSCR上の投射画像の視認性を低下させるおそれがあった。また、乱反射された光が鏡筒内で吸収されることによる鏡筒の発熱や、プロジェクター内の光学部品に入射して発熱させるおそれがあった。
【0039】
また、矩形状の縮小表示領域GA1の外側、かつ、イメージサークルIM内に位置する、
図3に示す縮小表示領域GA1の周辺成分Gaから射出された画像光は投射光学系3を介してスクリーン上に投射可能である。
【0040】
ここで、縮小表示領域GA1の周辺成分Gaから射出された画像光がスクリーンSCR上に投射された場合、スクリーンSCRに投射される画像光の外形はイメージサークルIM内に位置する画像表示領域GAの外形と相似、つまり非矩形状となる。このため、レンズシフト前にスクリーンSCRに投射されていた矩形状の画像から非矩形状へと変化するため、レンズシフトの前後においてスクリーンSCRを視聴するユーザーに画像の外形が変化したことによる違和感を与えてしまう。
【0041】
これに対して本実施形態のプロジェクター1の場合、制御装置7は、画像表示装置22を制御し、画像表示領域GAにおける縮小表示領域GA1以外の領域を非表示状態で表示させている。具体的に制御装置7は、画像表示装置22を制御し、イメージサークルIMの外側、つまり画像表示領域GAのうち縮小表示領域GA1の外側領域GA2を非表示状態とする。
【0042】
本実施形態において、画像表示領域GAの外側領域GA2を非表示状態とするとは、外側領域GA2の各画素に対して画像信号を入力せず、外側領域GA2の各画素を非発光状態とすること、あるいは、外側領域GA2の各画素に対して黒表示の画像信号を入力し、外側領域GA2の各画素を黒表示状態とすることを意味する。
【0043】
本実施形態のプロジェクター1によれば、画像表示領域GAの外側領域GA2を非表示状態とするため、外側領域GA2から画像光が射出されず、外側領域GA2から射出された光によるゴースト成分や発熱を抑制できる。また、外側領域GA2を非表示状態とすることで縮小表示領域GA1から射出された縮小画像光LT1の外形を矩形状とすることができる。これにより、レンズシフトの前後においてスクリーンSCRに投射されている画像光の外形が大きく変形しないため、レンズシフト前後においてスクリーンSCR上の映像を視聴しているユーザーに与える違和感を低減できる。
【0044】
ここで、縮小表示領域GA1の横幅W1と縦幅H1との比であるW1/H1を縮小表示領域GA1のアスペクト比とし、画像表示領域GAの横幅Wと縦幅Hとの比であるW/Hを画像表示領域GAのアスペクト比と規定する。
【0045】
本実施形態のプロジェクター1において、制御装置7は、縮小表示領域GA1のアスペクト比W1/H1が画像表示領域GAのアスペクト比W/Hと等しくなるように、縮小表示領域GA1の面積を決定している。本実施形態の場合、制御装置7は、縮小表示領域GA1のアスペクト比が画像表示領域GAのアスペクト比、例えば、16:9を維持するように、縮小表示領域GA1の面積を決定する。また、制御装置7は、例えばフルHDからHD等のように、縮小表示領域GA1に縮小して表示する縮小画像光LT1の解像度を低く調整する。
【0046】
本実施形態のプロジェクター1では、上述のように縮小表示領域GA1のアスペクト比を画像表示領域GAのアスペクト比と等しくするため、縦方向および横方向に等倍率で画像光LTを縮小した縮小画像光LT1を縮小表示領域GA1の全域に表示できる。よって、本実施形態のプロジェクター1によれば、縮小表示領域GA1の全体のアスペクト比を維持しつつ効率良く画像表示に利用することができる。これにより、縮小表示領域GA1が画像表示領域GAのアスペクト比と等しくされるため、縮小表示領域GA1と画像表示領域GAとの縦横比が維持される。これにより、レンズシフト前後における画像光のアスペクト比、すなわち縦横比の変化が抑制されるため、レンズシフト前後における違和感の少ない映像をユーザーに視認させることができる。
【0047】
以上のように本実施形態のプロジェクター1は、画像光LTを表示する画像表示領域GAを含む画像表示装置22を有する画像生成部2と、画像表示装置22から射出された画像光LTをスクリーンSCRに投射する投射光学系3と、投射光学系3の光軸3aに直交する面内において投射光学系3の位置をシフト可能とするレンズシフト機構4と、レンズシフト機構4が投射光学系3を移動する場合に画像表示装置22を制御して、画像表示領域GAのうちの一部である縮小表示領域GA1に画像光LTを縮小状態で表示させる制御装置7と、を備える。
【0048】
本実施形態のプロジェクター1によれば、イメージサークルIMが小さい小型の投射光学系3をレンズシフト機構4でシフトさせる場合において、イメージサークルIM内に収まる縮小表示領域GA1に画像光LTを縮小した縮小画像光LT1を表示させることができる。これにより、イメージサークルIMが小さい投射光学系3を備えたプロジェクターにおいてもスクリーンSCR上の所望の位置に画像をシフトさせて投射できる。
よって、本実施形態のプロジェクター1は、小型の投射光学系3を搭載できるため、投射光学系3のレンズシフトを可能としつつ小型化および軽量化を実現したプロジェクターを提供できる。
【0049】
本実施形態のプロジェクター1では、単板方式を採用するため、画像表示装置22のパネルサイズが大きい。このため、本実施形態のプロジェクター1では、イメージサークルIMの小さい投射光学系3を用いるため、投射光学系3を少しシフトさせただけで画像表示装置22から射出された画像光LTがイメージサークルIMからはみ出し易くなる。
【0050】
本実施形態のプロジェクター1によれば、レンズシフト時に画像表示装置22を制御して、イメージサークルIM内に収まる縮小表示領域GA1に画像光LTを縮小した縮小画像光LT1を表示させることができる。このため、本発明のプロジェクターは、本実施形態のプロジェクター1のようにイメージサークルIMの大きさに対する液晶パネル221の画像表示領域GAの大きさの余裕度が小さい構成において特に有効と言える。
【0051】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。また、本発明の一つの態様は、上記の各実施形態の特徴部分を適宜組み合わせた構成とすることができる。
【0052】
例えば、上記実施形態のプロジェクター1では、画像生成部2として画像表示装置22を1つ用いた単板方式を採用する場合を例に挙げたが、画像生成部として画像表示パネルを3つ用いた3板方式のものを採用してもよい。
【0053】
図5は3板方式のプロジェクターの要部構成を示す概略図である。
図5に示すように、3板方式のプロジェクター100における画像生成部102は、RGB各色に対応した液晶パネル221R,221G,221Bを含む画像表示装置220R,220G,220Bと、各液晶パネル221R,221G,221Bから射出された画像光を合成するクロスダイクロイックプリズム225と、を備える。
図5では図示を簡略化し、画像生成部102において各液晶パネル221R,221G,221Bに光を照射する光源を省略している。
【0054】
投射光学系3は、レンズシフト機構4を介して、クロスダイクロイックプリズム225において合成した画像光を射出する光射出面225aに対向して配置される。制御装置7は、各液晶パネル221R,221G,221Bの画像表示領域と投射光学系3のイメージサークルIMとの位置情報に基づいて、各液晶パネル221R,221G,221Bおよびレンズシフト機構4を制御する。
このプロジェクター100によれば、3板方式を採用する場合においても、装置構成を小型化しつつ投射レンズのレンズシフトを可能とする構成を実現できる。
【0055】
また、上記実施形態では、レンズシフト時に投射光学系3を上下方向Zの上側にシフトさせる場合を例に挙げて説明したが、本発明は投射レンズを上下方向の下側の他、左右方向の右側あるいは左側にシフトさせる場合にも適用可能である。また、本実施形態のレンズシフト機構4は投射光学系3の光軸3aに直交するXZ面に沿う面内であればいずれの方向にも投射光学系3をシフト可能であるため、本発明は投射レンズをXZ面に沿う面内のいずれの方向、例えば斜め上方向等にシフトさせる場合にも適用可能である。
【0056】
また、上記実施形態では、レンズシフト機構4のステッピングモーター43aのパルス信号に基づいて制御装置7が画像表示装置22の駆動を制御する場合を例に挙げたが、本発明はユーザーの手動操作によるダイヤル回転量に基づいて制御装置が画像表示パネルの駆動を制御する場合も適用可能である。
【0057】
その他、プロジェクターの各構成要素の形状、数、配置、材料等の具体的な記載については、上記実施形態に限らず、適宜変更が可能である。また、上記実施形態では、画像表示装置として液晶パネルを用いた例を示したが、デジタルマイクロミラーデバイスや有機ELパネル等の自発光パネルを用いてもよい。
【0058】
以下、本開示のまとめを付記する。
(付記1)
画像光を表示する画像表示領域を含む画像表示装置を有する画像生成部と、
前記画像表示装置から射出された前記画像光を被投射面に投射する投射光学系と、
前記投射光学系の光軸に直交する面内において当該投射光学系の位置をシフト可能とするレンズシフト機構と、
前記レンズシフト機構が前記投射光学系を移動する場合に前記画像表示装置を制御して、前記画像表示領域のうちの一部である縮小表示領域に前記画像光を縮小状態で表示させる制御装置と、を備える
プロジェクター。
【0059】
この構成のプロジェクターによれば、イメージサークルが小さい小型の投射光学系をレンズシフト機構でシフトさせる場合において、イメージサークル内に収まる縮小表示領域に画像光を縮小させた縮小画像光を表示させることができる。これにより、イメージサークルが小さい投射光学系を備えたプロジェクターにおいても被投射面上の所望の位置に画像をシフトさせて投射できる。
この構成の構成によれば、小型の投射光学系を搭載できるため、レンズシフトを可能としつつ小型かつ軽量なプロジェクターを実現できる。
【0060】
(付記2)
前記制御装置は、前記レンズシフト機構による前記投射光学系のシフト量を検出し、検出した前記シフト量に基づいて前記縮小表示領域の面積を決定する
付記1に記載のプロジェクター。
【0061】
この構成によれば、投射光学系のシフト量に基づいて縮小表示領域の面積を設定するため、縮小表示領域の面積が過剰に小さくなり過ぎることを抑制できる。つまり、縮小表示領域の面積を適正な大きさに設定できる。
【0062】
(付記3)
前記レンズシフト機構は、前記投射光学系を移動させるステッピングモーターを含み、
前記制御装置は、前記ステッピングモーターに供給されるパルス信号に基づいて前記投射光学系の前記シフト量を検出する
付記2に記載のプロジェクター。
【0063】
この構成によれば、パルス信号に基づいて投射光学系のシフト量を高精度に検出することができる。
【0064】
(付記4)
前記制御装置は、前記画像表示装置を制御し、前記画像表示領域における前記縮小表示領域の外側領域を非表示状態とする
付記1から付記3のうちのいずれか一つに記載のプロジェクター。
【0065】
この構成によれば、縮小表示領域の外側領域を非表示状態とすることで縮小表示領域から射出された縮小画像光の外形を矩形状とすることができる。これにより、レンズシフトの前後において投射面上に投射される画像光の外形が大きく変形しないため、レンズシフト前後において投射面上の投射画像を視聴するユーザーに与える違和感を低減できる。
【0066】
(付記5)
前記制御装置は、前記縮小表示領域のアスペクト比を前記画像表示領域のアスペクト比に等しくするように、前記縮小表示領域の面積を決定する
付記1から付記4のうちのいずれか一つに記載のプロジェクター。
【0067】
この構成によれば、縮小表示領域が画像表示領域のアスペクト比と等しくされるため、縮小表示領域と画像表示領域との縦横比を維持される。これにより、レンズシフト前後における画像光のアスペクト比、すなわち縦横比の変化が抑制されるため、レンズシフト前後における違和感の少ない映像をユーザーに視認させることができる。
【0068】
(付記6)
前記画像表示装置は液晶パネルを有し、
前記画像生成部は、前記液晶パネルに光を照射する光源を有する
付記1から付記5のうちのいずれか一つに記載のプロジェクター。
【0069】
この構成によれば、光源から照射した光を液晶パネルで変調することで所望の画像光を生成する画像生成部を実現できる。
【0070】
(付記7)
前記液晶パネルはカラーフィルターを有し、
前記光源が射出する前記光は白色光である
付記6に記載のプロジェクター。
【0071】
この構成によれば、カラーフィルターを備えた液晶パネルと白色光とを組み合わせた画像生成部を備えるため、フルカラーの画像光を生成できる。
【符号の説明】
【0072】
1,100…プロジェクター、2,102…画像生成部、3…投射光学系3a…光軸、4…レンズシフト機構、7…制御装置、20…光源、22,220R,220G,220B…画像表示装置、43a…ステッピングモーター、221,221R,221G,221B…液晶パネル、GA…画像表示領域、GA1…縮小表示領域、GA2…外側領域、L…白色光、LT…画像光。