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特開2024-5778漏洩磁束検査プローブおよび亀裂評価システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005778
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】漏洩磁束検査プローブおよび亀裂評価システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/83 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
G01N27/83
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106146
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000134925
【氏名又は名称】株式会社ニチゾウテック
(71)【出願人】
【識別番号】597010972
【氏名又は名称】株式会社ネクスコ・エンジニアリング北海道
(71)【出願人】
【識別番号】597007710
【氏名又は名称】ACTUNI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小畠 卓也
(72)【発明者】
【氏名】古田 久人
(72)【発明者】
【氏名】原田 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】後藤 壮善
(72)【発明者】
【氏名】村松 潤
(72)【発明者】
【氏名】小原 史郎
【テーマコード(参考)】
2G053
【Fターム(参考)】
2G053AA11
2G053AB22
2G053BA13
2G053BA30
2G053BC14
2G053CA01
2G053CB10
2G053CB25
2G053DA01
2G053DA10
(57)【要約】
【課題】金属柱の溶接止端部から柱母材部へ進展した亀裂を初期段階で検出することのできる漏洩磁束検査プローブを提供する。
【解決手段】漏洩磁束検査プローブ10は、コの字型磁化コア11の中央部に設けられた磁気センサ15と、コの字型磁化コア11を収容する直方体状のセンサケース13と、センサケース13内において、磁気センサ15をセンサケース13の端部近傍に位置するようにコの字型磁化コア11を斜めに配置した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コの字型磁化コアの中央部に設けられた磁気センサと、
前記コの字型磁化コアを収容する直方体状のセンサケースと、
前記センサケース内において、前記磁気センサを前記センサケースの端部近傍に位置するように前記コの字型磁化コアを斜めに配置した、漏洩磁束検査プローブ。
【請求項2】
磁化コイルの巻き数は、300回以上である、請求項1に記載の漏洩磁束検査プローブ。
【請求項3】
前記センサケースの前記磁気センサが位置する側の端部は、面取りがなされている、請求項1に記載の漏洩磁束検査プローブ。
【請求項4】
漏洩磁束検査プローブで亀裂を検出するステップと、
検出データを直交検波するステップと、
一定量のY軸成分が検出された時点でX軸成分を0となるように調整するステップと、
調整された検出データに基づいて、位相を検出するステップと、
検出された位相に基づいて亀裂深さを判断するステップと、を含む、
亀裂評価システム。
【請求項5】
一定量のY軸成分は、0.2Vである、請求項4に記載の亀裂評価システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は漏洩磁束検査プローブおよび亀裂評価システムに関し、特に、亀裂を初期段階で検出できる漏洩磁束検査プローブおよび亀裂評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属柱の亀裂を含む損傷の発生が予想される部位における点検は、目視点検を主体としており、目視点検の結果、亀裂の疑いがある場合については、当該部位において浸透探傷試験または磁粉探傷試験を実施して亀裂の有無を確認している。いずれの非破壊試験においても事前に塗膜・メッキなどを除去しておく必要がある。また、目視点検では点検員の経験・技量などに点検結果が左右される場合がある上、塗膜上から亀裂を発見することが困難な場合がある。
【0003】
図10(A)~図10(D)は、金属柱の亀裂発生が懸念される部位とその具体的な位置を示す図である。図10(A)は、溶接部軸方向の亀裂27を示す図であり、図10(B)は、溶接部周方向の亀裂28を示す図であり、図10(C)は、図10(A)や図10(B)に示した溶接部軸方向の断面を示す断面図であり、図10(D)は、周方向の断面を示す断面図である。図10(A)~図10(D)を参照して、金属柱125とリブ29との溶接部30近くに亀裂27,28が発生し、亀裂27,28には、溶接止端部に沿って発生する亀裂(支柱母材へは進展しない亀裂)と、支柱板厚方向に発生する亀裂(支柱母材へ進展する亀裂)がある。図には、亀裂の発生が予想される部位に発生方向もあわせて示している。この中で、漏洩磁束検査プローブでは、溶接止端部から柱母材部へ進展した初期段階の亀裂を検出対象とする。
【0004】
また、従来の溶接部の亀裂検査を行う装置が、例えば、特開2019-20273号公報(特許文献1)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-20273号公報(要約等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図11(A)は、一般的な漏洩磁束検査プローブ110を示す斜視図であり、図11(B)は、一般的な漏洩磁束検査プローブ110で、突出した部分118を溶接した検査対象の亀裂121の存在する部分を検出する状態を示す図である。図11(A)と図11(B)とを参照して、一般的な漏洩磁束検査プローブ110は、立方体状のセンサケース113に鉛直方向に収容されたコの字型の磁化コア111と、コの字型の磁化コア111の中央部に巻き付けられた磁化コイル112とを含み、コの字型の磁化コア111の中央部に形成される矩形状の磁気センサ115で亀裂を検出する。
【0007】
図12は、図11で説明した漏洩磁束検査プローブ110で隅肉溶接部120の端部から横方向に延びる亀裂を検出する場合のイメージを示す図である。図12(A)は、亀裂の長さが短くて、磁気センサ115で亀裂121が検出できない場合を示す図であり、図12(B)は、亀裂121の長さが長くて、磁気センサ115で亀裂121が検出できる場合を示す図である。
【0008】
図12(A)を参照して、隅肉溶接部120の溶接止端部122に近接して、平面視で矩形状の漏洩磁束検査プローブ110がそれぞれの長手方向が沿うように配置されて亀裂121を検出する。ここで、亀裂121を検出する磁気センサ115は検査プローブ110の中央の小さな矩形状の部分に存在し、矩形の漏洩磁束検査プローブ110の溶接止端部122に近接する位置から磁気センサ115の検出部までの間は亀裂121の検出できない不感帯123となる。したがって、亀裂121の長さが、不感帯123より短ければ、この亀裂121は検出できない。
【0009】
一方、図12(B)は、亀裂121の長さが不感帯123を越えて存在する場合を示す図である。図12(B)を参照して、ここでは、亀裂121の長さが、不感帯123より長いため、この亀裂121は検出可能になる。
【0010】
図13は、漏洩磁束検査プローブ110を用いて金属柱の溶接止端部から柱母材部へ進展した亀裂を検出する方法を示す図である。図13(A)は、漏洩磁束検査プローブ110の移動方向を示す図であり、図13(B)は、亀裂によって検出された漏洩磁束密度を示す図である。図13(A)及び図13(B)を参照して、金属柱125に設けられた矩形状の電気設備用開口部126及びベースプレート部リブ124の隅肉溶接部120の溶接止端部122に沿って漏洩磁束検査プローブ110を走査させ、磁化コイル112で材料の表面を磁化し、材料表面の亀裂から漏洩する磁束を磁気センサ115で検出する。このとき、中央にある磁気センサ115を挟むコの字状の磁化コア111のN極116とS極117とを、電気設備用開口部126及びベースプレート部リブの隅肉溶接部120の溶接止端部122に沿って移動させる。
【0011】
なお、従来の磁化コイル112の巻き数は各検査対象に応じたコイルを製作する際に適正な巻き数があり、今回の対象であれば300以上が最適であった。
【0012】
すなわち、亀裂121の検出は、磁気センサ115が亀裂121上を通過した際に漏洩磁束を検知し検出する(図13(B))。亀裂121の長さが短い場合(図12(A))は、亀裂検出不可のため、初期段階のより短い亀裂を検出するためには、磁気センサ115を、センサケース113の端部に寄せて不感帯を減少させる必要があった。
【0013】
一般的に漏洩磁束検査プローブ110の磁化コア111は検査対象面に対して垂直なコの字型コアを用いる。S/Nを向上させるために磁化コイル112の巻き数を増やすことで、物理的にセンサケース113の端部から磁気センサ115までの距離が離れ、不感帯が大きくなり、センサケース113の端部から磁気センサ115までの距離を小さくすることができないため、金属柱125の溶接止端部122から柱母材部へ進展した亀裂121を初期段階で検出することができない、という問題があった。
【0014】
この発明は上記のような問題点を解消するためになされたもので、金属柱の溶接止端部から柱母材部へ進展した亀裂を初期段階で検出することのできる漏洩磁束検査プローブを提供することを目的とする。
【0015】
また、この発明の他の目的は、金属柱の倒壊に至る部位の亀裂を、点検員の経験・技量などに左右されることなく判断できる亀裂評価システムを開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明に係る、漏洩磁束検査プローブは、コの字型磁化コアの中央部に設けられた磁気センサと、コの字型磁化コアを収容する直方体状のケースと、ケース内において、磁気センサをケースの端部近傍に位置するようにコの字型磁化コアを斜めに配置した。
【0017】
好ましくは、磁化コイルの巻き数は、300回以上である。
【0018】
さらに好ましくは、ケースの磁気センサが位置する側の端部は、面取りがなされている。
【0019】
この発明の他の局面においては、亀裂評価システムは、漏洩磁束検査プローブで亀裂を検出するステップと、検出データを直交検波するステップと、一定量のY軸成分が検出された時点でX軸成分を0となるように調整するステップと、調整された検出データに基づいて、位相を検出するステップと、検出された位相に基づいて亀裂深さを判断するステップと、を含む。
【0020】
好ましくは、一定量のY軸成分は、0.2Vである。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、斜めに配置された磁化コアを有するため、磁化コイルの巻き数に依存せずに磁気センサをケース端部に寄せることができ、不感帯を減少させることができる。
【0022】
その結果、金属柱の溶接止端部から柱母材部へ進展した亀裂を初期段階で検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】この発明の一実施の形態に係る改良された漏洩磁束検査プローブを示す斜視図である。
図2】改良された漏洩磁束検査プローブを用いた場合の亀裂検出のイメージを示す図である。
図3】漏洩磁束検査プローブを示す図である。
図4】装置本体を示す図である。
図5】亀裂評価システムの構成を示すブロック図である。
図6】亀裂評価システムの動作を示すフローチャートである。
図7】亀裂深さの評価方法を示す図である。
図8】X軸原点補正機能を示す図である。
図9】測定結果の表示画面の例を示す図である。
図10】金属柱の亀裂発生事例を示す図である。
図11】一般的な漏洩磁束検査プローブを示す図である。
図12】一般的な漏洩磁束検査プローブを用いた場合の亀裂検出のイメージを示す図である。
図13】漏洩磁束検査プローブを用いた亀裂点検システムのイメージを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、この発明の一実施の形態を、図面を参照して説明する。まず、この実施の形態においては、斜めに配置された磁化コア(以下、「斜め型磁化コア」という)を有する漏洩磁束検査プローブを使用するため、この、斜め型磁化コアを有する漏洩磁束検査プローブについて説明する。
【0025】
図1(A)は、この発明の一実施の形態に係る検査プローブである、漏洩磁束検査プローブ(傾斜プローブ)10を示す斜視図であり、図1(B)は、漏洩磁束検査プローブ10を用いて、隅肉溶接部120の溶接止端部122から発生している亀裂121を検出する状態を示す図である。
【0026】
まず、図1(A)を参照して、漏洩磁束検査プローブ10は、漏洩磁束検査プローブ10の内部にある磁化コア11を傾けることで、従来の検査プローブ110より磁気センサ15をセンサケース13の端に寄せたものである。すなわち、漏洩磁束検査プローブ10は、立方体状のセンサケース13に収容された斜め型磁化コア11を含み、コの字型の磁化コア11は、その中央部に巻き付けられた磁化コイル12を含み、コの字型の磁化コア11の中央部に形成される矩形状の磁気センサ15で亀裂を検出する。
【0027】
斜め型磁化コア11を有する漏洩磁束検査プローブ10は、センサケース13の底部の一つの辺の近傍の中央部に磁気センサ15の検出部が位置するように、コの字型の磁化コアが斜めに配置される。
【0028】
また、図1(B)に示すように、漏洩磁束検査プローブ10のセンサケース13は、磁気センサ15が位置する端部側で所定の厚さを有しており、測定時に、磁気センサ15を、可能な限り測定部である溶接止端部122に近づけるために、センサケース13の磁気センサ15が位置する側の端部は、図中角度αで示すように面取りがなされている。なお、ここで、α=30°以下であるのが好ましい。
【0029】
このように配置されることによって、コの字型の磁化コア11の中央部に巻かれる磁化コイル12が大きくなっても、センサケース13内に漏洩磁束検査プローブ10を収容できる。
【0030】
なお、この実施の形態においては、磁化コイル12の巻き数は300回以上である。
【0031】
次に、この漏洩磁束検査プローブ10を用いて亀裂を検出する状態について説明する。ここでは、測定の困難な、溶接止端部122から発生した初期段階の亀裂の検出について説明する。図1(B)を参照して、溶接止端部122に近接して漏洩磁束検査プローブ10を配置する。このとき、斜めに配置された磁化コア11が溶接止端部122に近接するように配置する。
【0032】
図2は、この実施の形態における亀裂検出のイメージを示す図である。図2を参照して、斜めに配置された磁化コア11が溶接止端部122に近接するように配置したため、亀裂長さaが、磁気センサ15の検出部に到達するため、磁気センサ15の検出部は亀裂21を検出できる。
【0033】
次に、漏洩磁束検査プローブ用の走査治具について説明する。図3は、図1で示した漏洩磁束検査プローブ10を収容した走査治具35が、円柱状の検査面40上に設置された状態を示す図である。図3を参照して、漏洩磁束検査プローブ10を収容した走査治具35は、漏洩磁束検査プローブ10を保持するプローブホルダ37と、メインブロック39とを含み、メインブロック39は、磁石を内蔵し、検査面40に吸着可能である。
【0034】
また、漏洩磁束検査プローブ10をプローブホルダ37に固定する手締めノブ36を含み、プローブホルダ37を検査面40上に押さえつけるために、メインブロック39と磁束プローブ10とは、押さえバネ41で接続されている。メインブロック39は、円柱状の検査面40の軸方向に移動するために、ベアリング42が設けられている。
【0035】
ここで、図示は省略するが、上記したように、磁気センサが溶接部に近接するように、コの字型の磁化コイルは斜めに配置されている。
【0036】
次に、装置本体について説明する。図4は、装置本体47を示す図である。装置本体47は、漏洩磁束法及び渦電流探傷法の両方で適用することが可能である。装置本体47は、漏洩磁束法及び渦電流探傷法のプローブとで、共通であり、それぞれの探傷において、漏洩磁束検査プローブ10と渦電流探傷プローブ17とを付け替える付け替え口48を有する。また、表示部としては、携帯電話49を使用しても良い。ここでは、携帯電話49を装置本体47の中央に取付けた状態を示している。
【0037】
次に、漏洩磁束法を用いた亀裂を評価する方法について説明する。図7は、この実施の形態における漏洩磁束法を用いた亀裂評価を示す図である。図7を参照して、漏洩磁束検査プローブの磁気センサのセンサ出力を直交検波することで、磁気センサ走査時のリフトオフノイズと亀裂検出時の信号を分離することができる。加えて、亀裂深さにより位相が異なることを利用して亀裂深さを評価する。評価の具体的方法は後述する。
【0038】
ここで、リフトオフとは、磁気センサと検査面が離れたり傾いたりすること、あるいは、磁気センサと検査面の間隔のことを言う。また、リフトオフ信号とは、リフトオフ変化時に発生する信号のことであり、磁気センサと検査面が接触している状態で原点補正し、その状態から磁気センサを検査面から離すとリフトオフ信号が発生する。通常、リフトオフ信号はX軸方向と水平になるよう調整している。
【0039】
また、リフトオフノイズとは、漏洩磁束検査プローブ走査時にリフトオフが発生することにより生じるノイズのことをいい、X軸方向に信号が振れることを言う。
【0040】
次に、漏洩磁束検査プローブを用いた場合のX軸原点補正を行う測定装置47の構成と、その制御内容について説明する。図5は、測定装置47の構成を示すブロック図である。図5を参照して、測定装置47は、制御部50と、制御部50に接続された、漏洩磁束検査プローブ10や渦電流探傷プローブ17からの検出データを受信し制御部50に送信する送受信装置56とを含む。制御部50は、測定装置全体を制御するCPU51と、インターフェース52と、入出力部(I/O)53と、メモリ54と表示部55とを含む。
【0041】
図6は、図5に示した制御部50のCPU51が行う亀裂評価システムの動作を示すフローチャートである。図6を参照して、亀裂評価システムは漏洩磁束検査プローブで亀裂を検出し、検出データを直交検波する(S11)。これによって、センサ走査時のリフトオフノイズと亀裂検出時の信号を分離することができる。加えて、亀裂深さにより位相が異なることを利用し亀裂深さを評価する。具体的には、リフトオフ信号をX軸方向(0°)となるように調整しているため、亀裂信号はY軸成分を持ち位相差が生じる。しかし、単純に位相から亀裂深さ評価を行うと、センサ走査時に生じるリフトオフノイズにより、原点がX軸方向にずれて正確に位相を求めることができない。そこで、ここでは、一定量のY軸成分が検出されるか否かを判断し、一定量のY軸成分が検出されたときは(S12でYES)、X軸成分を0とし(S13)、その後、位相を求めて(S14)、亀裂深さを判断する(S15)。
【0042】
なお、このS13の処理をX軸原点補正機能という。このX軸原点補正機能により、センサ走査時に生じるリフトオフノイズをキャンセルして正確に位相を求め、亀裂深さを評価することができる。
【0043】
次に、具体的な評価について説明する。図7は実際の測定例を示す図である。図7を参照して、ここでは、X軸はリフトオフが0°であり、貫通は25°であり、d=0.5mmで55°であり、d=1.0mmで、50度であり、d=2.0mmで、45度であり、d=4.0mmで、38度である。
【0044】
次に、この実施の形態におけるX軸原点補正について説明する。図8は、この補正方法を示す図である。図8を参照して、図中矢印で示すように、リフトオフノイズ16が発生する。しかし、単純に位相から亀裂深さ評価を行うと、センサ走査時に生じるリフトオフノイズ16により、原点がX軸方向にずれて正確に位相を求めることができない。
【0045】
本システムでは、このリフトオフ信号が、図において点線で示すX軸原点補正用の閾値を超えたかどうかを判断し、閾値を超えたときにX信号を0に補正する。すなわち、一定量のY軸成分が検出された時点でX軸成分を0とするX軸原点補正機能を開発した。X軸原点補正機能により、センサ走査時に生じるリフトオフノイズ16をキャンセルして正確にY軸成分である位相を求め、亀裂深さを評価することができる。
【0046】
なお、この一定量のY軸成分は、0.2Vが好ましい。
【0047】
次に、測定結果の表示画面の例について説明する。図9は、漏洩磁束法による亀裂信号の測定結果を示す図である。漏洩磁束検査プローブを用いた漏洩磁束法による亀裂信号は、リフトオフ信号を水平になるように位相設定をしたとき、亀裂深さによりおおよそ25°~55°となることから、極座標方式で閾値を設定し、亀裂信号以外の信号を除去し、また、位相の違いから亀裂深さを推定して評価する。
【0048】
図9(A)は平板の試験片の測定結果を極座標形式で示したグラフであり、図9(B)は亀裂深さごとの信号強度を示すデータであり、図9(C)はX軸成分(実線)とY軸成分(点線)とを示すデータであり、図9(D)及び図9(E)は、測定装置における表示結果を示す図であり、図9(D)は図9(A)に示したデータの表示例であり、図9(E)は、図9(B)や図9(C)の測定結果を示す図である。
【0049】
図9(A)を参照して、図中実線で測定データを示し、一点鎖線で閾値を示し、点線でX軸原点補正用の閾値を示している。又、点線の下にX軸に沿った実線でリフトオフ信号を示している。また、図中、実線に付与した数値や「貫通」の文字は、亀裂深さを示している。
【0050】
図9(B)を参照して、ここには、図9(A)に示した測定データごとの亀裂深さを示している。
【0051】
また、図9(D)を参照して、測定装置には、バランスボタンと開始/停止ボタンが設けられ、バランスボタンで原点補正を行ない、開始/停止ボタンで測定の開始と停止が行われる。
【0052】
図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、本発明は、図示した実施形態に限定されるものではない。本発明と同一の範囲内において、または均等の範囲内において、図示した実施形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
この発明によれば、金属柱の溶接止端部から柱母材部へ進展した亀裂を初期段階で検出することができるため、漏洩磁束検査プローブとして有利に利用される。
【符号の説明】
【0054】
10 漏洩磁束検査プローブ
11 磁化コア
12 磁化コイル
13 センサケース
14 センサ基板
15 磁気センサ
16 リフトオフノイズ
20 突出部
29 リブ
30 溶接部
121 亀裂
122 溶接止端部
125 金属柱
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13